(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027611
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20250220BHJP
H02K 3/51 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K3/51 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132522
(22)【出願日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】安中 智彦
(72)【発明者】
【氏名】中林 慶太
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604CC01
5H604QB01
5H611AA01
5H611AA09
5H611BB01
5H611PP07
5H611QQ01
5H611QQ02
5H611QQ03
5H611RR03
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】コイルやロータの発する熱によるセンサユニットの性能低下を抑制することができる電動モータを提供する。
【解決手段】電動モータは、ステータ10、ロータ11及びセンサユニットを備える。ロータ11は、回転軸を有する。センサユニットは回転軸の軸方向の一端側の端面に対向して配置される。ステータ10は、ステータコア34、インシュレータ32及びコイル33を備える。ステータコア34は、径方向内側に突出する複数のティース31bを有する。インシュレータ32は、ティース31bの外周部に装着される。コイル33はインシュレータ32を介して各ティース31bに巻回される。インシュレータ32のセンサユニットの配置される側と同側の軸方向の端部には、ロータ11とセンサユニットの間において、ロータ11の外周面よりも径方向内側に張り出す壁部39が設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステータと、
回転軸を有し前記ステータの径方向内側に回転可能に配置されるロータと、
前記回転軸の軸方向の一端側の端面に対向して配置されるとともに、前記回転軸の回転を検出する回転センサ、及び当該回転センサを実装するセンサ基板を有するセンサユニットと、を備え、
前記ステータは、
当該ステータの周方向に沿って配列され径方向内側に突出する複数のティースを有するステータコアと、
各前記ティースの外周部に装着されるインシュレータと、
前記インシュレータを介して各前記ティースに巻回されるコイルと、を備え、
前記インシュレータの前記センサユニットの配置される側と同側の軸方向の端部には、前記ロータと前記センサユニットの間において、前記ロータの外周面よりも径方向内側に張り出す壁部が設けられていることを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
前記壁部は、各前記インシュレータの軸方向の前記端部から、前記ロータの外周面よりも径方向内側に突出する突出片を含むことを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記壁部は、複数の前記突出片に固定されるとともに、少なくとも一部が前記ロータの外周縁部と軸方向で重なる位置に配置される環状ブロックを備えていることを特徴する請求項2に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記環状ブロックは、複数のバスバーが絶縁樹脂に埋設されたバスバーユニットによって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記バスバーユニットは、前記インシュレータの各前記突出片と対向するように軸方向に突出する複数のボス部を有し、
前記インシュレータの各前記突出片には、前記バスバーユニットの対応する前記ボス部が挿入される凹部が設けられ、
各前記ボス部は、対応する前記凹部に挿入された状態において、当該凹部に充填される接着剤によって前記突出片に固定されていることを特徴とする請求項4に記載の電動モータ。
【請求項6】
前記バスバーユニットは、各前記バスバーの板厚方向が前記回転軸の軸方向を向き、かつ、複数の前記バスバーが前記軸方向に直列に並んで配列され、
各前記バスバーに接続される電源ターミナルは、前記バスバーの前記軸方向の延在領域において、前記軸方向と略直交する方向に突出していることを特徴する請求項4に記載の電動モータ。
【請求項7】
前記壁部は、軸方向視において、前記ロータに配置される永久磁石と少なくとも一部が重なる位置まで径方向内側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
【請求項8】
前記回転軸は、前記センサユニットの配置される側と逆側の軸方向の端部が回転出力部として外部に突出していることを特徴する請求項1に記載の電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源等に用いられる電動モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動源等に用いられる電動モータとして、ロータの回転状態を、磁気抵抗素子等から成る回転センサによって検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載される電動モータは、ハウジング内に固定される環状のステータと、ステータの径方向内側に回転可能に配置されるロータと、ロータの回転を検出するためのセンサユニットと、を備えている。センサユニットは、磁気抵抗素子等からなる回転センサと、その回転センサを実装するセンサ基板と、を備えている。
【0004】
ステータは、磁性材料から成るステータコアと、ステータコアに装着されるインシュレータと、インシュレータを介してステータコアに巻回される複数のコイルと、各コイルに電力を供給するためのバスバーユニットと、を備えている。ステータコアは、環状のコア本体と、コア本体から径方向内側に突出する複数のティースと、を備えている。インシュレータは、絶縁性の樹脂材から成り、ステータコアの各ティースの外周部に巻回される。バスバーユニットは、U相用,V相用,W相用の略C字状の三つのバスバーを有し、これらのバスバーの一部が環状の絶縁樹脂ブロックに埋設されている。三相の各バスバーは、ティースに巻回された対応するコイルに電気的に接続されるとともに、三相の各電源ターミナルに接続されている。バスバーユニットは、複数のインシュレータの軸方向の端部に載置された状態でステータコアに固定されている。
【0005】
また、ロータは軸心部に回転軸を有し、その回転軸が軸受を介してハウジングに回転可能に支持されている。回転軸は、軸方向の一端部(以下、「基端部」と称する。)側がハウジング内に収容され、軸方向の他端部(以下、「先端部」と称する。)がハウジングから外部に突出している。回転軸の先端部は、外部に動力を出力するための回転出力部とされている。また、回転軸の基端部の端面には、センサマグネットが取り付けられている。
センサユニットは、回転軸の基端部の端面に対向するようにハウジング内に固定設置されている。センサユニットの回転センサは、ロータ(回転軸)の回転に伴うセンサマグネットの磁極の変化を検知し、その検知情報を基にしてロータの回転状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の電動モータは、連続運転等によってステータのコイルやロータが発熱し、その熱が周囲の部材に伝達され易い。特に、特許文献1に記載の電動モータは、ハウジングの内部において、回転軸の基端部に対向するようにセンサユニット(回転センサ及びセンサ基板)が配置されているため、コイルやロータの熱がセンサユニットに伝達されることが懸念される。そして、センサユニットのセンサ基板に実装される電子部品は、高熱によって性能が低下する虞があり、コイルやロータからの熱伝達をより抑制することが望まれる。
【0008】
そこで本発明は、コイルやロータの発する熱によるセンサユニットの性能低下を抑制することができる電動モータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る電動モータは、環状のステータと、回転軸を有し前記ステータの径方向内側に回転可能に配置されるロータと、前記回転軸の軸方向の一端側の端面に対向して配置されるとともに、前記回転軸の回転を検出する回転センサ、及び当該回転センサを実装するセンサ基板を有するセンサユニットと、を備え、前記ステータは、当該ステータの周方向に沿って配列され径方向内側に突出する複数のティースを有するステータコアと、各前記ティースの外周部に装着されるインシュレータと、前記インシュレータを介して各前記ティースに巻回されるコイルと、を備え、前記インシュレータの前記センサユニットの配置される側と同側の軸方向の端部には、前記ロータと前記センサユニットの間において、前記ロータの外周面よりも径方向内側に張り出す壁部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成により、コイルの通電よってステータに回転磁界が生じると、ロータがその回転磁界から力を受けて所定方向に回転する。このときのロータの回転は、回転軸の一端側に配置されたセンサユニットによって検出される。こうしてコイルの通電によるロータの回転が続くと、ステータのコイルやロータが発熱し、これらの温度が上昇する。このとき、ステータのインシュレータの軸方向の一方の端部には、ロータとセンサユニットの間でロータの外周面よりも径方向内側に張り出す壁部が設けられているため、コイルやロータの熱は壁部に遮られ、センサユニットの回転センサやセンサ基板に伝達されにくくなる。
【0011】
前記壁部は、各前記インシュレータの軸方向の前記端部から、前記ロータの外周面よりも径方向内側に突出する突出片を含むものであっても良い。
【0012】
この場合、各インシュレータの軸方向の端部に突出片を予め形成しておけば、そのインシュレータを対応するティースに装着するだけで、壁部の少なくとも一部を容易に構成することができる。したがって、本構成を採用した場合には、壁部の製造の容易化を図ることができる。
【0013】
前記壁部は、複数の前記突出片に固定されるとともに、少なくとも一部が前記ロータの外周縁部と軸方向で重なる位置に配置される環状ブロックを備えるものであっても良い。
【0014】
この場合、各インシュレータに突設された突出片に加えて、ロータとセンサユニットの間に環状ブロックが介装されるため、コイルやロータの発する熱がセンサユニット側に伝達されるのをより確実に抑制することが可能になる。
【0015】
前記環状ブロックは、複数のバスバーが絶縁樹脂に埋設されたバスバーユニットによって構成されるようにしても良い。
【0016】
この場合、コイルに電力を供給するためのバスバーユニットが壁部の一部を構成することになる。このため、本構成を採用した場合には、壁部とバスバーユニットを個別に設ける場合に比較して部品点数を削減することができ、かつ、電動モータの小型・軽量化を図ることができる。
【0017】
前記バスバーユニットは、前記インシュレータの各前記突出片と対向するように軸方向に突出する複数のボス部を有し、前記インシュレータの各前記突出片には、前記バスバーユニットの対応する前記ボス部が挿入される凹部が設けられ、各前記ボス部は、対応する前記凹部に挿入された状態において、当該凹部に充填される接着剤によって前記突出片に固定されるようにしても良い。
【0018】
この場合、バスバーユニットの複数のボス部が、対応する突出片の凹部に挿入された状態で突出片に接着固定される。このため、本構成を採用した場合には、バスバーユニットが複数の突出片に強固に固定されるとともに、インシュレータを介して剛性の高いステータコアに安定して支持されることになる。
【0019】
前記バスバーユニットは、各前記バスバーの板厚方向が前記回転軸の軸方向を向き、かつ、複数の前記バスバーが前記軸方向に直列に並んで配列され、各前記バスバーに接続される電源ターミナルは、前記バスバーの前記軸方向の延在領域において、前記軸方向と略直交する方向に突出するようにしても良い。
【0020】
この場合、コイルやロータの熱をバスバーユニットで遮る構造を採用しつつも、バスバーユニットと電源ターミナルが電動モータの軸長を増大させるのを抑制することができる。即ち、バスバーユニットは、各バスバーの板厚方向が回転軸の軸方向を向き、かつ、複数のバスバーが軸方向に直列に並んで配列されているため、バスバーユニットの軸方向の薄型化を図ることができる。また、バスバーユニットの各バスバーに接続される電源ターミナルは、バスバーの軸方向の延在領域において、軸方向と略直交する方向に突出しているため、バスバーユニットよりも軸方向に突出することがない。このため、電動モータの軸長の短縮化を図ることができる。
【0021】
前記壁部は、軸方向視において、前記ロータに配置される永久磁石と少なくとも一部が重なる位置まで径方向内側に突出していることが望ましい。
【0022】
この場合、少なくとも一部がロータの延久磁石と軸方向で重なる位置に壁部が配置されるため、ロータの発する熱がセンサユニットにより伝達されにくくなる。したがって、本構成を採用した場合には、ロータの発する熱によるセンサユニットの性能低下をより抑制することができる。
【0023】
前記回転軸は、前記センサユニットの配置される側と逆側の軸方向の端部が回転出力部として外側に突出するようにしても良い。
【0024】
この場合、回転出力部である回転軸の端部に軸方向に沿う大荷重が外部から入力されたときに、ロータが壁部に当接することによって回転軸の軸方向の過剰な変位を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る電動モータは、コイルやロータの発する熱が壁部に遮られてセンサユニットに伝達されにくくなるため、コイルやロータの発する熱によるセンサユニットの性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】実施形態の電動モータの一部の部品を取り去った平面図。
【
図5】実施形態の電動モータの一部の部品を取り去った斜視図。
【
図6】実施形態のバスバーユニットを軸方向の一側から見た斜視図。
【
図7】実施形態のバスバーユニットを軸方向の他側から見た斜視図。
【
図8】実施形態の電動モータを搭載した電動式の自動二輪車の一例を示す側面図。
【
図9】実施形態の電動モータを搭載した電動式の自動二輪車の他の例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電動モータ1の側面図であり、
図2は、一部の部品を取り去った電動モータ1の平面図である。また、
図3は、電動モータ1の
図2のIII-III線に沿う断面図である。
これらの図に示す本実施形態の電動モータ1は、例えば、電動式の自動二輪車の駆動源等として用いられる。電動式の自動二輪車の駆動源として用いる場合には、電動モータ1は、例えば、
図8に示すように、駆動輪である後輪Wrの側部に配置することができる。この場合、電動モータ1の動力は、図示しないギヤ機構等を介して後輪Wrに伝達される。なお、電動モータ1の配置はこれに限定されるものではなく、電動モータ1は、
図9に示すように、前輪Wfと後輪Wrの間の車体フレームに搭載することも可能である。この場合、電動モータ1の動力は、チェーン2やベルトを介して後輪Wrに伝達される。
【0028】
電動モータ1は、環状のステータ10と、そのステータ10の径方向内側に回転可能に配置されるロータ11と、を備えている。ロータ11の外周面とステータ10の間には、微少隙間(エアギャップ)が確保されている。ロータ11は、軸心位置に回転軸12を有する。
以下では、特別に方向を規定しない場合には、回転軸12の軸心oに沿う方向を「軸方向」と称し、軸心oと直交する方向を「径方向」と称し、軸心oを中心とした周方向を「周方向」と称する。図面の適所には、軸方向を示す矢印Aと、径方向を示す矢印Rと、周方向を示す矢印Cが記されている。
【0029】
ステータ10と、その内側のロータ11の主要部はハウジング13の内部に収容されている。ハウジング13は、略円筒状のケース体14と、ケース体14の軸方向の一端側を閉塞するリヤカバー15と、ケース体14の軸方向の他端側を閉塞するフロントカバー16と、を備えている。リヤカバー15とフロントカバー16はケース体14に対してボルト締結等によって固定されている。
以下の説明では、ケース体14に対してフロントカバー16が位置される側を「フロント側」と称し、リヤカバー15の位置される側を「リヤ側」と称する。なお、図面の適所には、フロント側を指す矢印FRが記されている。
【0030】
図4は、電動モータ1の
図2のIV-IV線に沿う断面図であり、
図5は、リヤカバー15等の一部の部品を取り去った電動モータ1の斜視図である。
ステータ10は、
図2~
図5に示すように、同形状の複数の分割コア30を環状となるように連結することで略筒状に形成されている。本実施形態では、ステータ10は、合計12個の分割コア30を連結して形成されている。なお、
図2においては、12個の分割コア30のうちの二つ分割コア30のみが点線で詳細に示されている。分割コア30は、コア部31と、インシュレータ32と、コイル33と、を備えている。
【0031】
コア部31は、軸方向視が略T字形状の複数の鋼板(磁性体)を軸方向に積層して形成されている。コア部31は、軸方向視が円弧状のコアバック分割片31aと、コアバック分割片31aの周方向の略中央位置から径方向内側に突出するティース31bと、を備えている。上記の略T字形状は、これらのコアバック分割片31aとティース31bによって形成されている。複数の分割コア30のコア部31は、コアバック分割片31aの周方向の両端部を隣接するコアバック分割片31aの端部に連結することにより、環状のステータコア34を形成している。各ティース31bは、この状態において、軸心o側に向かって径方向に突出している。
【0032】
インシュレータ32は、絶縁性の樹脂材によって形成されている。インシュレータ32は、対応するコア部31のティース31bの外周面に被着されている。コア部31のコアバック分割片31aから径方向内側に突出するティース31bは、径方向と直交する断面が略矩形状に形成されている。インシュレータ32は、ティース31bのこの略矩形状の断面の軸方向に沿う二面と軸方向の一端側と他端側の二面とを被覆している。つまり、インシュレータ32は対応するティース31bの略矩形状の断面の周域を被覆している。各インシュレータ32は、軸方向で二分割された二つの分割ブロック32bによって構成されている。
図4では、リヤ側の分割ブロック32bのみが示されている。
【0033】
インシュレータ32は、
図4に示すように、対応するティース31bの外周面を囲繞する角筒状の囲繞部35と、囲繞部35の径方向外側(コアバック分割片31a側)の端部から外側(周方向及び軸方向の外側)に張り出す外側フランジ部36oと、囲繞部35の径方向内側の端部から外側(周方向及び軸方向の外側)に張り出す内側フランジ部36iと、を有する。囲繞部35の外周面には、対応するコイル33が巻回されている。各コイル33は、内側フランジ部36iと外側フランジ部36oによって径方向に位置規制された状態において、囲繞部35の外周面に巻回されている。各コイル33は、インシュレータ32の囲繞部35を介して、対応するティース31bの外周に巻回されている。
なお、本実施形態では、各コイル33は、断面が略矩形状の平角線が用いられている。
【0034】
図2,
図4,
図5に示すように、各インシュレータ32のリヤ側の分割ブロック32bのうちの、内側フランジ部36iのリヤ側の軸方向の端部には、径方向内側に向かって突出する突出片37が延設されている。突出片37は、軸方向視が略矩形状のブロックであり、軸方向のリヤ側に向く面には、軸方向視が略矩形状の凹部38が形成されている。凹部38は、軸方向のリヤ側に向かって開口している。本実施形態では、全インシュレータ32の突出片37が後に詳述する壁部39の一部を構成している。
【0035】
また、
図4,
図5に示すように、各インシュレータ32のリヤ側の分割ブロック32bのうちの、外側フランジ部36oの周方向の略中央部には、径方向外側に矩形状に膨出するサーミスタ収容部40が設けられている。サーミスタ収容部40は、リヤ側の分割ブロック32bの外側フランジ部36oのうちの、ステータコア34のリヤ側の端面より軸方向外側(リヤ側)に配置されている。複数のインシュレータ32のうちの一のインシュレータ32のサーミスタ収容部40には、コイル33の温度を検出するためのサーミスタ41が取り付けられている。サーミスタ収容部40の径方向内側の内壁には図示しない切欠き部が設けられ、サーミスタ収容部40に収容されたサーミスタ41の温度検出部がコイル33の外面に当接するようになっている。
図4,
図5中の符号42は、サーミスタ41をコイル33の外面に押し付けるための板バネ材である。
【0036】
各分割ブロック32bの外側フランジ部36oのリヤ側の端縁には、
図5に示すように、リヤ側に向かって開口する一対のコイル嵌合溝43s,43eが形成されている。これらのコイル嵌合溝43s,43eは、サーミスタ収容部40を間に挟む周方向の両側位置に設けられている。各コイル嵌合溝43s,43eは、外側フランジ部36oを厚み方向に貫通している。一方のコイル嵌合溝43sには、インシュレータ32を介して対応するティース31bに巻回されたコイル33の始線部33sが嵌合されて仮係止される。他方のコイル嵌合溝43eには、インシュレータ32を介して対応するティース31bに巻回されたコイル33の終線部33eが嵌合されて仮係止される。コイル嵌合溝43s,43eに嵌合されたコイル33の始線部33sと終線部33eは、外側フランジ部36oの径方向に引き出される。
外側フランジ部36oの径方向外側に引き出されたコイル33の始線部33sと終線部33eは、複数の分割ブロック32bが環状に組付けられた後に、後述するバスバー51U,51V,51Wに結線される。
【0037】
ステータ10の径方向内側に配置されるロータ11は、
図3に示すように、複数の鋼板(磁性体)を軸方向に積層して略筒状に形成されたロータ本体20を備えている。ロータ本体20の回転中心(軸心部)には、回転軸12が圧入固定されている。ロータ本体20の内部には、略板状の複数の永久磁石21が埋設されている。複数の永久磁石21は、ロータ本体20の周方向において、N極とS極が径方向外側に向いて交互に現れるように配置されている。
本実施形態のロータ11は、ロータ本体20の内部に複数の永久磁石を埋め込んだ所謂「IPM(Interior Permanent Magnet)構造」を採用しているが、ロータ11の構造はこれに限定されない。ロータ11は、ロータ本体20の外表面に永久磁石21を装着した所謂「SPM(Surface Permanent Magnet)構造」を採用することも可能である。
【0038】
回転軸12は、ロータ本体20に対して、軸方向の一端側(リヤ側)と他端側(フロント側)に夫々突出している。回転軸12の軸方向の一端側は、軸受22Rを介してリヤカバー15に回転可能に支持されている。回転軸12の軸方向の他端側は、フロントカバー16を貫通し、その状態で軸受22Fを介してフロントカバー16に回転可能に支持されている。フロントカバー16を貫通した回転軸12の一端部は、出力用のギヤやスプロケットが取り付けられる回転出力部12oとされている。回転出力部12oは、電動モータ1のハウジング13から軸方向外側に突出し、
図8,
図9に示すように、自動二輪車の車体に取り付けられた状態では、車体の幅方向外側に向かって突出することになる。
【0039】
リヤカバー15のリヤ側の面には、リヤ側に向かって開口する凹形状部23(
図3参照。)が形成されている。回転軸12の一端部は、リヤ側の端面12eが凹形状部23内に露出するようにリヤカバー15を厚み方向に貫通している。回転軸12の端面12eには、略円板状のセンサマグネット24が固定されている。センサマグネット24は、後述する回転センサ25によってロータ11(回転軸12)の回転状態を検出する際に回転状態を検出するための検出ターゲットとなる。
【0040】
図3に示すように、リヤカバー15の凹形状部23内には、リヤカバー15の貫通孔26を取り囲むように複数の支柱部27が突設されている。これらの支柱部27の先端部分には、センサユニット45が固定されている。センサユニット45は、磁気抵抗素子から成る回転センサ25と、回転センサ25を実装するセンサ基板46と、を備えている。センサ基板46は、回転センサ25が回転軸12の端面12eのセンサマグネット24と微少隙間を介して対向するように支柱部27に固定されている。
【0041】
センサ基板46上の回路は、
図2に示すように、ハウジング13に設置されたセンサコネクタ47にセンサハーネス48を介して電気的に接続されている。センサコネクタ47のターミナル部は、図示しない配線によって電動モータ1の図示しないコントローラに接続されている。
なお、上述のように内部にセンサユニット45が取り付けられたリヤカバー15の凹形状部23は、
図1,
図3に示す蓋部材49によって閉じられている。
【0042】
また、
図2~
図4に示すように、インシュレータ32(ステータ10)のリヤ側の端部には略円環状のバスバーユニット50が取り付けられている。バスバーユニット50は、ステータコア34の各ティース31bに巻回されたコイル33に駆動電流を供給するためのバスバー51U,51V,51Wを備えている。
【0043】
ハウジング13のケース体14には、駆動用コネクタ52が取り付けられている。駆動用コネクタ52は、ケース体14のリヤ側寄りの周壁を貫通してケース体14に取り付けられている。駆動用コネクタ52には、
図2に示すようにU相の電源ターミナルTUとV相の電源ターミナルTVとW相の電源ターミナルTWが設置されている。これらの電源ターミナルTU,TV,TWは、ケース体14の周壁を貫通し、ケース体14の内側の端部が夫々バスバー51U,51V,51Wに電気的に接続されている。各電源ターミナルTU,TV,TWは、導電性の金属板によって形成され、板厚方向が軸方向を向くようにケース体14に取り付けられている。各電源ターミナルTU,TV,TWは、後述するバスバーユニット50の軸方向の厚みの範囲内(バスバーユニット50の軸方向の延在領域の範囲内)において、軸方向と略直交する方向に突出している。また、各電源ターミナルTU,TV,TWのケース体14の外側の端部は、図示しないコントローラの駆動回路に接続されている。ステータ10の各ティース31bに巻回されたコイル33には、駆動回路から電源ターミナルTU,TV,TWとバスバー51U,51V,51Wを介して駆動電流が供給される。
【0044】
図6は、バスバーユニット50をリヤ側から見た斜視図であり、
図7は、バスバーユニット50をフロント側から見た斜視図である。
バスバーユニット50は、絶縁性の樹脂材から成る円環状の樹脂ブロック53に三つのバスバー51U,51V,51Wのバスバー本体51Ua,51Va,51Wa(
図3,
図4参照)が軸方向に離間した状態で埋設されている。各バスバー本体51Ua,51Va,51Waは、軸方向視が略C字状の導電性の金属板によって形成されている。これらのバスバー本体51Ua,51Va,51Waは、板厚方向が軸方向を向き、かつ、全てのバスバー本体51Ua,51Va,51Waが軸方向に直列に並んで配列されている。円環状の樹脂ブロック53は、環状に組付けられた分割コア30の各インシュレータ32のリヤ側の端部に固定されている。樹脂ブロック53は、この状態において、ステータコア34と同心になるように配置されている。インシュレータ32に対する樹脂ブロック53の具体的な固定形態については後に詳述する。
【0045】
略C字状の各バスバー本体51Ua,51Va,51Waの外周縁部には、径方向外側に向かって突出するバスバー端子51Ub,51Vb,51Wbが夫々四つ設けられている。U相用,V相用,W相用の各四つのバスバー端子51Ub,51Vb,51Wbは、樹脂ブロック53の周方向において等間隔に離間して配置されている。各バスバー端子51Ub,51Vb,51Wbは、対応するバスバー本体51Ua,51Va,51Waと一体に導電性の金属板によって形成されている。三つのバスバー51U,51V,51Wは、各バスバー51U,51V,51Wの板厚方向が軸方向を向き、かつ、全てのバスバー51U,51V,51Wが軸方向に直列に並んで配列されている。
【0046】
U相の四つのバスバー端子51Ubのうちの三つは、樹脂ブロック53の周方向に沿って一定幅を持つ略矩形状に形成されている。U相の四つのバスバー端子51Ubのうちの残余の一つは、樹脂ブロック53の周方向に沿って一定幅を持つ略矩形状の端子基部51Ub1に径方向外側に山形状に膨出するターミナル接続部51Ub2が連設された形状とされている。同様に、V相用とW相用の各四つのバスバー端子51Vb,51Wbのうちの三つは、樹脂ブロック53の周方向に沿って一定幅を持つ略矩形状に形成され、V相用とW相用の各四つのバスバー端子51Vb,51Wbのうちの残余の一つは、樹脂ブロック53の周方向に沿って一定幅を持つ略矩形状の端子基部51Vb1,51Wb1に径方向外側に山形状に膨出するターミナル接続部51Vb2,51Wb2が連設された形状とされている。ターミナル接続部51Ub2,51Vb2,51Wb2を持つバスバー端子51Ub,51Vb,51Wbの端子基部51Ub1,51Vb1,51Wb1は、他のバスバー端子51Ub,51Vb,51Wbと略同形状とされている。
【0047】
U相の各バスバー端子51Ubの周方向の一側には、V相のバスバー端子51Vbが配置され、V相の各バスバー端子51Vbの周方向の一側には、W相のバスバー端子51Wbが配置され、W相の各バスバー端子51Wbの周方向の一側には、U相のバスバー端子51Ubが配置されている。隣接して配置されるU相のバスバー端子51UbとV相のバスバー端子51VbとW相のバスバー端子51Wbは、樹脂ブロック53の周方向において等間隔に離間している。ターミナル接続部51Ub2,51Vb2,51Wb2を持つ各相のバスバー端子51Ub,51Vb,51Wbは、樹脂ブロック53の周方向の特定領域に集約して配置されている。これらのバスバー端子51Ub,51Vb,51Wbのターミナル接続部51Ub2,51Vb2,51Wb2は、駆動用コネクタ52の対応する電源ターミナルTU,TV,TWに電気的に接続されている(
図2参照)。
【0048】
図6,
図7に示すように、U相用,V相用,W相用の各バスバー端子51Ub,51Ub,51Ubには、ステータコア34の各ティース31bに巻回されたコイル33の始線部33sと終線部33e(
図5参照)を夫々接続するための始線用接続部54sと終線用接続部54eが設けられている。始線用接続部54sは、各バスバー端子51Ub,51Ub,51Ubの径方向外側の縁部の周方向の一側寄りに設けられている。また、終線用接続部54eは、各バスバー端子51Ub,51Ub,51Ubの径方向外側の縁部の周方向の他側寄りに設けられている。始線用接続部54sと終線用接続部54eは、いずれも係合溝28と切起こし片29とを備えた構成とされている。
【0049】
係合溝28は、各バスバー端子51Ub,51Ub,51Ubの径方向外側の端部から径方向内側に向かって窪み溝であり、切起こし片29は係合溝28の底部からリヤ側に向かって切り起こされている。係合溝28には、前述したインシュレータ32のコイル嵌合溝43s,43eから引き出されたコイル33の始線部33sや終線部33eが挿入係合される。係合溝28に挿入された始線部33sや終線部33eは、軸方向に沿ってリヤ側に引き出される。始線部33sや終線部33eは、この状態において、対応する切起こし片29に溶接固定される。ティース31bに巻回された各コイル33の始線部33sと終線部33eは、こうして対応するバスバー端子51Ub,51Ub,51Ubの始線用接続部54sと終線用接続部54eに接続される。
【0050】
ここで、環状の樹脂ブロック53から放射状に突出する各バスバー端子51Ub,51Ub,51Ubは、軸方向視において、周方向で隣接する二つのコイル33の巻線部(ティース31b)の軸中心のほぼ中間位置に配置されている。つまり、各バスバー端子51Ub,51Ub,51Ubは、軸方向視において、周方向で隣接する二つのコイル33の巻線部(ティース31b)に跨るように配置されている。各バスバー端子51Ub,51Ub,51Ubの始線用接続部54sには、軸方向視において、周方向で隣接する一方の巻線部のコイル33の始線部33sが接続され、終線用接続部54eには、軸方向視において、周方向で隣接する他方の巻線部のコイル33の終線部33eが接続されている。
【0051】
また、バスバーユニット50の樹脂ブロック53は、
図4,
図6,
図7に示すように、略C字状のバスバー本体51Ua,51Va,51Waが軸方向に離間して埋設される円環状のブロック本体部55と、ブロック本体部55の内周部から径方向内側に延出する相対的に肉厚の薄い内フランジ部56と、を備えている。内フランジ部56は、円環状に形成され、ブロック本体部55の厚み方向(軸方向)のフロント寄り位置において、径方向内側に突出している。内フランジ部56のリヤ側の面の基部(径方向外側の端部)とブロック本体部55の間には、段差部57r(
図4参照)が設けられている。
【0052】
図6に示すように、樹脂ブロック53の内フランジ部56のリヤ側面には、周方向に等間隔に離間して12個の補強リブ58が設けられている。各補強リブ58は、内フランジ部56のリヤ側面から所定厚みにリヤ側に膨出するとともに、ブロック本体部55と内フランジ部56の間の段差部57rから径方向内側に向かって延びている。これにより、内フランジ部56のうちの補強リブ58の配置される部位は、径方向の曲げ剛性が高められている。
【0053】
各補強リブ58は、周方向で隣接する各バスバー端子51Ub,51Vb,51Wbの中間位置と対応する周上位置に配置されている。各補強リブ58の延出方向(径方向)の略中央位置には、樹脂ブロック53を上下に貫通する接着剤充填口59が形成されている。接着剤充填口59の詳細については後に説明する。
【0054】
図4,
図7に示すように、樹脂ブロック53のブロック本体部55のフロント側面には、環状の突条部60が設けられている。突条部60は、ブロック本体部55の内周縁部に沿って設けられている。突条部60のフロント側の端面には、周方向に等間隔に離間して12個の係止突起61が設けられている。突条部60のフロント側の端面は、ステータ10の各インシュレータ32の外側フランジ部36o(
図4,
図5参照。)のリヤ側の端面に当接可能とされている。
【0055】
また、周方向で隣接する各インシュレータ32の外側フランジ部36oの間には、リヤ側に向かって開口する係合凹部44(
図5参照。)が形成されている。樹脂ブロック53の突条部60に突設された複数の係止突起61は、各インシュレータ32間の係合凹部44に嵌合可能とされている。樹脂ブロック53(バスバーユニット50)は、複数の係止突起61が各インシュレータ32間の係合凹部44に嵌合されることにより、ステータコア34に対して周方向に位置決めされる。
なお、樹脂ブロック53は、複数の係止突起61が各インシュレータ32間の係合凹部44に嵌合された状態において、内フランジ部56と補強リブ58がステータ10の各ティース31bの先端部よりも径方向内側に膨出する。
【0056】
図4,
図7に示すように、樹脂ブロック53の内フランジ部56のフロント側面には、周方向に等間隔に離間して12個の角柱状のボス部62がフロント側に向かって突設されている。各ボス部62は、内フランジ部56のリヤ側面に設けられた各補強リブ58と軸方向で重なる位置に設けられている。各ボス部62は、周方向で隣接する各バスバー端子51Ub,51Vb,51Wbの中間位置と対応する周上位置に配置されている。また、各ボス部62は、複数のインシュレータ32のリヤ側に突設された各突出片37と対向するように先端側が軸方向に突出している。各ボス部62の先端部は、インシュレータ32の突出片37に形成された凹部38(
図4,
図5参照。)に挿入される。突出片37の凹部38は、挿入されるボス部62の先端部よりも充分に大容量に形成されている。凹部38とボス部62の間の隙間は、接着剤63(
図4参照)の充填される充填部とされている。突出片37の凹部38に挿入された各ボス部62は、凹部38に充填される接着剤63(
図4参照)によって対応する突出片37に夫々固定される。
【0057】
樹脂ブロック53の各ボス部62には、内フランジ部56の補強リブ58に設けられた接着剤充填口59が連続して形成されている。接着剤充填口59は、各ボス部62のフロント側の端面に達するように形成されている。接着剤充填口59は、補強リブ58のリヤ側の端面からボス部62のフロント側の端面に向かって開口面積が次第に窄まるようにロート状に形成されている。インシュレータ32側の突出片37の凹部38には、樹脂ブロック53側の対応するボス部62が挿入された状態において、接着剤充填口59を通して樹脂ブロック53のリヤ側から接着剤63が充填される。こうして凹部38に充填された接着剤63が硬化すると、バスバーユニット50の樹脂ブロック53がインシュレータ32(ステータ10)のリヤ側の端部に固定される。
【0058】
バスバーユニット50は、上述のように樹脂ブロック53がインシュレータ32のリヤ側の端部に固定されると、樹脂ブロック53の補強リブ58を含む内フランジ部56とボス部62がステータコア34のティース31bよりも径方向内側に膨出するようになる。内フランジ部56とボス部62は、後に詳述するようにステータ10とロータ11がバスバーユニット50やセンサユニット45等とともにハウジング13内に組付けられると、ロータ11とセンサユニット45の間において、ロータ11の外周面よりも径方向内側に所定量張り出す。このとき、各インシュレータ32の突出片37もロータ11とセンサユニット45の間において、ロータ11の外周面よりも径方向内側に所定量張り出す。
本実施形態では、各インシュレータ32の突出片37と樹脂ブロック53の一部が壁部39を構成している。壁部39は、ロータ11とセンサユニット45の間に介在されて、ステータ10のコイル33やロータ11の熱がセンサユニット45に伝達されるのを遮断する。また、本実施形態の場合、壁部39は、軸方向視において、ロータ11に配置される永久磁石21と少なくとも一部が重なる位置まで径方向内側に突出している。
【0059】
<電動モータ1の組付け>
ステータ10に関しては、予め、インシュレータ32を装着した各ステータコア34のティース31bにコイル33を巻回し、複数の分割コア30を用意しておく。そして、こうして用意した複数の分割コア30を円環状に組付け、ステータ10を形成する。
【0060】
この後、円環状のステータ10の各インシュレータ32のリヤ側の端面(軸方向の一端側の端面)に、バスバーユニット50を同軸に配置する。このとき、樹脂ブロック53のフロント側に突設された複数の係止突起61を、ステータ10の隣接するインシュレータ32間の係合凹部44に嵌合する。これにより、樹脂ブロック53は、ステータ10に対して位置決めされる。
【0061】
こうして、樹脂ブロック53がステータに対して位置決めされると、樹脂ブロック53の径方向内側に配置された各ボス部62がインシュレータ32の対応する突出片37に対しても位置決めされ、各ボス部62の先端部が対応する突出片37の凹部38内に挿入される。
【0062】
この後、樹脂ブロック53のリヤ側から径方向内側の補強リブ58の接着剤充填口59に順次接着剤63の充填ノズル(図示せず)を挿入し、接着剤充填口59を通して、突出片37の凹部38とボス部62の間の隙間に接着剤63を充填する。こうして接着剤63の硬化を待ち、接着剤63が硬化すると、樹脂ブロック53(バスバーユニット50)がインシュレータ32(ステータ10)のリヤ側の端部に接着固定されることになる。
【0063】
上述のようにして固定されたステータ10とバスバーユニット50の組付体は、ハウジング13の筒状のケース体14の内部に固定される。ケース体14に固定されたステータ10の内周側にはロータ11が挿入配置される。この後、各部の電気配線や部品の組付けが行われた後に、ケース体14の軸方向の両端部にリヤカバー15とフロントカバー16が組付けられる。このとき、ロータ11の回転軸12は軸受22R,22Fを介してリヤカバー15とフロントカバー16に回転可能に支持される。また、このときリヤカバー15の中央の貫通孔26に挿通された回転軸12のリヤ側の端部のセンサマグネット24は、リヤカバー15に支持されたセンサユニット45(サーミスタ41及びセンサ基板46)と対向する。この後、リヤカバー15の凹形状部23は蓋部材49によって閉じられる。
【0064】
<電動モータ1の動作>
ステータ10の複数のコイル33には、コントローラの駆動回路を通して三相の駆動電流が供給される。こうしてコイル33に駆動電流が供給されると、ステータ10に回転磁界が生じる。これにより、ロータ11がその回転磁界からトルクを受け、所定の方向に回転するようになる。
このとき、ロータ11の回転は、回転軸12のリヤ側に対向して配置されたセンサユニット45によって検出される。センサユニット45で検出された回転軸12の回転情報はコントローラに出力され、コントローラはその回転情報を基にして駆動電流を制御する。
【0065】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態の電動モータ1は、インシュレータ32のセンサユニット45の配置される側と同側の軸方向の端部(リヤ側の端部)に、ロータ11とセンサユニット45の間でロータ11の外周面よりも径方向内側に張り出す壁部39が設けられている。このため、コイル33の通電によるロータ11の回転が続いてステータ10のコイル33やロータ11が発熱しても、その熱は壁部39に遮られてセンサユニット45に伝達されにくくなる。
したがって、本実施形態の電動モータを採用した場合には、コイル33やロータ11の発する熱によるセンサユニット45の性能低下を抑制することができる。
【0066】
よって、本実施形態の電動モータ1を採用することにより、簡単な構成によって電動モータ1の安定した運転性能を維持することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態の電動モータ1は、壁部39の一部が各インシュレータ32のリヤ側の端部から、ロータ11の外周面よりも径方向内側に突出する突出片37によって構成されている。このため、各インシュレータ32のリヤ側の端部に突出片37を予め形成しておけば、そのインシュレータ32を対応するティース31bに装着するだけで、壁部39の一部を容易に構成することができる。したがって、本構成を採用した場合には、壁部39の製造の容易化を図ることができる。
なお、インシュレータ32は熱伝導率の低い樹脂によって形成されている。このため、コイル33やロータ11からリヤカバー15への熱伝達も抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態の電動モータ1は、壁部39が、複数のインシュレータ32の上記の突出片37と、複数の突出片37に固定されるとともに、ロータ11の外周縁部と軸方向で重なる位置に配置される環状ブロック(バスバーユニット50)と、を備えた構成とされている。このため、環状ブロック(バスバーユニット50)がロータ11とセンサユニット45の間を広範囲に亘って(360°の範囲に亘って)遮るようになる。したがって、本構成を採用した場合には、コイル33やロータ11の発する熱がセンサユニット45側に伝達されるのをより確実に抑制することができる。
【0069】
さらに、本実施形態の電動モータ1は、ロータ11の外周縁部と軸方向で重なる位置に配置される環状ブロックが、複数のバスバー51U,51V,51Wが絶縁樹脂に埋設されたバスバーユニット50によって構成されている。本実施形態では、コイル33に電力を供給するためのバスバーユニット50が壁部39の一部を構成するため、壁部39とバスバーユニット50を個別に設ける場合に比較して部品点数を削減することができ、かつ、電動モータ1の小型・軽量化を図ることができる。
なお、バスバーユニット50の樹脂ブロック53は熱伝導率の低い樹脂によって形成されている。このため、コイル33やロータ11からリヤカバー15への熱伝達については、環状の樹脂ブロック53によってより抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態の電動モータ1は、バスバーユニット50がインシュレータ32の各突出片37と対向するように軸方向に突出する複数のボス部62を有し、インシュレータ32の各突出片37に、バスバーユニット50の対応するボス部62が挿入される凹部38が設けられている。そして、バスバーユニット50の各ボス部62は、対応する凹部38に挿入された状態において、凹部38に充填される接着剤63によって突出片37に固定されている。このため、本実施形態の電動モータ1を採用した場合には、バスバーユニット50を複数の突出片37に強固に固定することができるとともに、インシュレータ32を介してバスバーユニット50を剛性の高いステータコア34に安定して支持させることができる。
【0071】
また、本実施形態の電動モータ1は、バスバーユニット50の各バスバー51U,51V,51Wの板厚方向が軸方向を向き、かつ、全ての(複数の)バスバー51U,51V,51Wが軸方向に直列に並んで配列されている。そして、各バスバー51U,51V,51Wに接続される電源ターミナルTU,TV,TWは、三つのバスバー51U,51V,51Wの軸方向の延在領域において、軸方向と略直交する方向に突出している。このため、本実施形態の電動モータ1は、バスバーユニット50を含む壁部39によってコイル33やロータ11の熱を遮る構造を採用しつつも、バスバーユニット50と電源ターミナルTU,TV,TWが電動モータ1の軸長を増大させるのを抑制することができる。
【0072】
即ち、本構成の場合、バスバーユニット50は、各バスバー51U,51V,51Wの板厚方向が軸方向を向き、かつ、全てのバスバー51U,51V,51Wが軸方向に直列に並んで配列されているため、バスバーユニット50の軸方向の薄型化を図ることができる。一方、電源ターミナルTU,TV,TWは、バスバー51U,51V,51Wの軸方向の延在領域において、軸方向と略直交する方向に突出しているため、バスバーユニット50よりも軸方向に突出することがない。したがって、本実施形態の電動モータ1を採用した場合には、コイル33やロータ11の熱を遮る構造を採用しつつも、電動モータ1の軸長の短縮化を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態の電動モータ1は、壁部39が、軸方向視において、ロータ11に配置される永久磁石21と少なくとも一部が重なる位置まで径方向内側に突出している。ロータ11の発する熱が壁部39に遮られてセンサユニット45により伝達されにくくなる。したがって、本構成を採用した場合には、ロータ11の発する熱によるセンサユニット45の性能低下をより抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態の電動モータ1は、回転軸12の回転出力部12oがセンサユニット45の配置される側と逆側の軸方向の端部に設けられ、その回転出力部12oがハウジング13の外側に突出している。このため、自動二輪車の転倒時等に回転出力部12oに軸方向に沿う大荷重が入力されたときに、ロータ11が壁部39に当接することによって回転軸12の軸方向の過剰な変位を抑制することができる。
図3に示す本実施形態の電動モータ1では、ロータ11と壁部39の軸方向の離間幅が回転軸12とセンサユニット45の軸方向の離間幅よりも充分に大きく設定されているが、回転軸12とセンサユニット45の間の離間幅をロータ11と壁部39の間の離間幅よりも狭めることも可能である。この場合、回転出力部12oに軸方向に沿う大荷重が入力されたときに、ロータ11が壁部39に当接することにより、回転軸12がセンサユニットと干渉するのを抑制することができる。また、軸受22F,22Rに過大な荷重が入力されることも、ロータ11と壁部39の当接によって抑制することができる。
【0075】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、ステータ10が12個の分割コア30によって形成されているが、ステータ10を構成する分割コア30の個数は12個以外であっても良い。ステータ10は、複数の分割コア30に代えて、円環状の単一のコアによって構成することも可能である。この場合、インシュレータは連続した一体構造のものを採用することもできる。
【0076】
また、上記の実施形態では、壁部39が複数のインシュレータ32に突設された突出片37と、複数の突出片37に固定されるバスバーユニット50によって形成されているが、壁部39の構成はこれに限定されない。例えば、壁部39は、複数の突出片37のみによって構成するようにしても良い。この場合、複数の突出片37は、周方向で隣接するもの同士を隙間なく密着させ、全体が環状形状となる形状としても良い。
また、壁部39は、インシュレータ32やバスバーユニット50と別体の環状ブロックによって構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…電動モータ、2…チェーン、10…ステータ、11…ロータ、12…回転軸、12e…端面、12o…回転出力部、13…ハウジング、14…ケース体、15…リヤカバー、16…フロントカバー、20…ロータ本体、21…永久磁石、22F,22R…軸受、23…凹形状部、24…センサマグネット、25…回転センサ、26…貫通孔、27…支柱部、28…係合溝、29…切起こし片、30…分割コア、31…コア部、31a…コアバック分割片、31b…ティース、32…インシュレータ、32b…分割ブロック、33…コイル、34…ステータコア、35…囲繞部、36i…内側フランジ部、36o…外側フランジ部、37…突出片、38…凹部、39…壁部、40…サーミスタ収容部、41…サーミスタ、42…板バネ、43s,43e…コイル嵌合溝、44…係合凹部、45…センサユニット、46…センサ基板、47…センサコネクタ、48…センサハーネス、49…蓋部材、50…バスバーユニット、51U,51V,51W…バスバー、51Ua,51Va,51Wa…バスバー本体、51Ub,51Vb,51Wb…バスバー端子、51Ub1,51Vb1,51Wb1…端子基部、51Ub2,51Vb2,51Wb2…ターミナル接続部、52…駆動用コネクタ、53…樹脂ブロック、54s…始線用接続部、54e…終線用接続部、55…ブロック本体部、56…内フランジ部、57r…段差部、58…補強リブ、59…接着剤充填口、60…突条部、61…係止突起、62…ボス部、63…接着剤、TU,TV,TW…電源ターミナル、o…軸心、Wf…前輪、Wr…後輪。