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特開2025-27618波長変換部材、センシングデバイス、及び紫外線検知デバイス
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  • 特開-波長変換部材、センシングデバイス、及び紫外線検知デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027618
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】波長変換部材、センシングデバイス、及び紫外線検知デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20250220BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20250220BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20250220BHJP
   G01J 1/58 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/22
G01J1/02 G
G01J1/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132541
(22)【出願日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】中川 采恵
【テーマコード(参考)】
2G065
2H148
【Fターム(参考)】
2G065AB05
2G065BA09
2G065BA29
2G065BB27
2G065CA08
2G065CA25
2H148AA00
2H148AA07
2H148AA12
2H148AA18
2H148AA24
2H148CA05
2H148CA13
2H148CA23
(57)【要約】
【課題】紫外光をより長波長の変換光に効率よく変換することができ、しかも紫外光の外部への漏出を抑制することができる、波長変換部材を提供する。
【解決手段】紫外光Aを紫外光Aより長波長の変換光Bに変換する、波長変換部材1であって、紫外光Aが入射する第1の主面2aと、該第1の主面2aと対向しており、変換光Bを出射する第2の主面2bとを有する、無機マトリクス4と、無機マトリクス4中に分散しており、紫外光Aを変換光Bに変換する蛍光体5とを含有する、波長変換部材本体2と、波長変換部材本体2の第2の主面2b上に設けられており、変換光Bを透過させ、紫外光Aを遮蔽する機能膜3とを備える、波長変換部材1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を該紫外光より長波長の変換光に変換する、波長変換部材であって、
前記紫外光が入射する第1の主面と、該第1の主面と対向しており、前記変換光を出射する第2の主面とを有する、無機マトリクスと、前記無機マトリクス中に分散しており、前記紫外光を前記変換光に変換する蛍光体とを含有する、波長変換部材本体と、
前記波長変換部材本体の前記第2の主面上に設けられており、前記変換光を透過させ、前記紫外光を遮蔽する機能膜と、
を備える、波長変換部材。
【請求項2】
前記機能膜が、紫外線吸収膜である、請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記紫外線吸収膜が、ZnOを含む、請求項2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記紫外線吸収膜が、ZnOからなる膜である、請求項2に記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記紫外線吸収膜の厚みが、0.1μm以上、50μm以下である、請求項2~4のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記波長変換部材本体の前記第1の主面上に、紫外線を選択的に透過させるバンドパスフィルタが設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記波長変換部材の波長250nm~365nmにおける全光線透過率が、80%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記変換光が、可視光である、請求項1~4のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の波長変換部材と、
前記波長変換部材本体の前記第2の主面側に配置されており、前記波長変換部材本体の前記第2の主面側から出射される前記変換光を検出する、フォトダイオードと、
を備える、センシングデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のセンシングデバイスと、
前記波長変換部材本体の前記第1の主面側に配置されている、紫外光発生源と、
を備える、紫外線検知デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材、並びに該波長変換部材を用いたセンシングデバイス及び紫外線検知デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外光は、UV洗浄、UV殺菌、UV硬化などの様々な用途での利用が検討されており、紫外光を用いたデバイスの開発も益々盛んになってきている。しかしながら、紫外光は、人間の目では検出できない光であるため、紫外光源の強度や劣化度合いを確認することが難しいという問題がある。また、紫外光を検出するためのモジュールとして、窒化ガリウム(GaN)のフォトダイオード(PD)などが知られているが、高価であることから、汎用化が難しいという問題がある。
【0003】
そこで、下記特許文献1では、波長変換素子を用いて紫外線を可視光に変換し、変換された可視光の光量を検出する、紫外線検出器が提案されている。特許文献1に記載の紫外線検出器では、紫外線を可視光に変換する材料として蛍光ガラス(組成中に蛍光成分がドープされたガラス)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/11440号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、紫外光をより長波長の光に変換する波長変換部材では、出射光として紫外光を漏出すると、樹脂製の周辺部材等を劣化させるおそれがある。一方で、紫外光の漏出を抑制しようとすると、変換光の出射効率が低下することがある。
【0006】
本発明の目的は、紫外光をより長波長の変換光に効率よく変換することができ、しかも紫外光の外部への漏出を抑制することができる、波長変換部材、並びに該波長変換部材を用いたセンシングデバイス及び紫外線検知デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する波長変換部材、センシングデバイス、及び紫外線検知デバイスの各態様について説明する。
【0008】
本発明の態様1に係る波長変換部材は、紫外光を該紫外光より長波長の変換光に変換する、波長変換部材であって、前記紫外光が入射する第1の主面と、該第1の主面と対向しており、前記変換光を出射する第2の主面とを有する、無機マトリクスと、前記無機マトリクス中に分散しており、前記紫外光を前記変換光に変換する蛍光体とを含有する、波長変換部材本体と、前記波長変換部材本体の前記第2の主面上に設けられており、前記変換光を透過させ、前記紫外光を遮蔽する機能膜とを備えることを特徴としている。
【0009】
態様2の波長変換部材は、態様1において、前記機能膜が、紫外線吸収膜であることが好ましい。
【0010】
態様3の波長変換部材は、態様2において、前記紫外線吸収膜が、ZnOを含むことが好ましい。
【0011】
態様4の波長変換部材は、態様2において、前記紫外線吸収膜が、ZnOからなる膜であることが好ましい。
【0012】
態様5の波長変換部材は、態様2~態様4のいずれかの態様において、前記紫外線吸収膜の厚みが、0.1μm以上、50μm以下であることが好ましい。
【0013】
態様6の波長変換部材は、態様1~態様5のいずれかの態様において、前記波長変換部材本体の前記第1の主面上に、紫外線を選択的に透過させるバンドパスフィルタが設けられていてもよい。
【0014】
態様7の波長変換部材は、態様1~態様6のいずれかの態様において、前記波長変換部材の波長250nm~365nmにおける全光線透過率が、80%以下であることが好ましい。
【0015】
態様8の波長変換部材は、態様1~態様7のいずれかの態様において、前記変換光が、可視光であることが好ましい。
【0016】
本発明の態様9に係るセンシングデバイスは、態様1~態様8のいずれかの態様の波長変換部材と、前記波長変換部材本体の前記第2の主面側に配置されており、前記波長変換部材本体の前記第2の主面側から出射される前記変換光を検出する、フォトダイオードとを備えることを特徴としている。
【0017】
本発明の態様10に係る紫外線検知デバイスは、態様9のセンシングデバイスと、前記波長変換部材本体の前記第1の主面側に配置されている、紫外光発生源とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、紫外光をより長波長の変換光に効率よく変換することができ、しかも紫外光の外部への漏出を抑制することができる、波長変換部材、並びに該波長変換部材を用いたセンシングデバイス及び紫外線検知デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的斜視図である。
図2図2は、図1のX-X線に沿う部分の模式的断面図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る紫外線検知デバイスを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0021】
[波長変換部材]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的斜視図である。また、図2は、図1のX-X線に沿う部分の模式的断面図である。
【0022】
波長変換部材1は、紫外光Aを紫外光Aよりも長波長の変換光Bに変換する部材である。本実施形態の波長変換部材1は、矩形板状の形状を有している。もっとも、波長変換部材1は、略矩形板状、略円板状、多角形板状、球状、半球状、半球ドーム状等の形状を有していてもよく、その形状は特に限定されない。
【0023】
波長変換部材1は、波長変換部材本体2と、機能膜3とを備える。波長変換部材本体2は、対向している第1の主面2a及び第2の主面2bを有する。第1の主面2aは、紫外光Aが入射する主面である。また、第2の主面2bは、変換光Bを出射する主面である。
【0024】
波長変換部材本体2は、無機マトリクス4と、無機マトリクス4中に分散している蛍光体(蛍光体粒子5)とを含む。蛍光体粒子5は、紫外光Aを紫外光Aよりも長波長の変換光Bに変換することのできる粒子である。
【0025】
波長変換部材本体2の第2の主面2b上には、機能膜3が設けられている。機能膜3は、変換光Bを透過させ、紫外光Aを遮蔽する膜である。例えば、機能膜3は、変換光Bとしての可視光を透過させ、紫外光Aを遮蔽する膜である。変換光Bは、可視光であることが望ましいが、赤外光であってもよい。
【0026】
本実施形態においては、図2に示すように、光源からの紫外光Aが波長変換部材1に入射する。より具体的には、紫外光Aは、第1の主面2a側から波長変換部材本体2に入射する。紫外光Aが、波長変換部材本体2に含まれる蛍光体粒子5に照射されると、紫外光Aが、紫外光Aよりも長波長の変換光Bに変換される。変換光Bは、波長変換部材本体2の第2の主面2b及び機能膜3を通って、波長変換部材1から出射される。
【0027】
本実施形態の波長変換部材1は、波長変換部材本体2の第2の主面2b上に、変換光Bを透過させ、紫外光Aを遮蔽する機能膜3が設けられているので、紫外光Aをより長波長の変換光Bに効率よく変換することができ、しかも紫外光Aの外部への漏出を抑制することができる。
【0028】
従って、波長変換部材1によれば、樹脂製の周辺部材等の劣化を抑制しつつ、高効率で変換光Bを出射させることができる。そのため、波長変換部材1は、例えば、紫外光Aを可視光に変換し、変換された可視光の光量を検出する、センシングデバイスや紫外線検知デバイス等に用いたときに、センシングの感度を高めることができる。
【0029】
波長変換部材1の波長250nm~365nmにおける全光線透過率は、特に限定されないが、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下、さらにより好ましくは50%以下、さらにより好ましくは40%以下、さらにより好ましくは30%以下、さらにより好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。この場合、樹脂製の周辺部材等の劣化をより一層抑制することができる。なお、波長変換部材1の波長250nm~365nmにおける全光線透過率は、0%であってもよいが、現実的には、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。
【0030】
なかでも、波長変換部材1の波長315nm~365nmにおける全光線透過率は、特に限定されないが、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下、さらにより好ましくは50%以下、さらにより好ましくは40%以下、さらにより好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。この場合、樹脂製の周辺部材等の劣化をより一層抑制することができる。なお、波長変換部材1の波長315nm~365nmにおける全光線透過率は、0%であってもよいが、現実的には、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。
【0031】
本実施形態の波長変換部材1は、波長変換部材本体2と、機能膜3とを備えているため、例えば、波長315nm~365nmの波長域において、波長変換部材本体2だけでは紫外光Aを遮蔽する効果が不十分な場合でも、機能膜3により紫外光Aの外部への漏出を確実に抑制することが可能となる。
【0032】
また、波長変換部材1の波長400nm~700nmにおける全光線透過率は、特に限定されないが、好ましくは81%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。この場合、波長変換部材1を上述のセンシングデバイスや紫外線検知デバイス等に用いたときに、センシングの感度をより一層高めることができる。また、波長変換部材1の波長400nm~700nmにおける全光線透過率は、100%であってもよいが、現実的には、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは97%以下である。
【0033】
なお、波長変換部材1の上記全光線透過率は、図1に示すように、波長変換部材本体2の第1の主面2a側から光を入射させ、機能膜3の波長変換部材本体2とは反対側の主面3aから光を出射させた場合の透過率である。
【0034】
波長変換部材1の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上、2mm以下とすることができ、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.2mm以下である。
【0035】
以下、波長変換部材1における各部材の詳細を説明する。
【0036】
波長変換部材本体;
波長変換部材本体2の第1の主面2a及び第2の主面2bの面積は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上、10000mm以下とすることができる。波長変換部材本体2の第1の主面2a及び第2の主面2bの面積は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、波長変換部材本体2の形状は、特に限定されず、例えば、略矩形板状や、略円形板状、多角形板状、球状、半球状、半球ドーム状とすることができる。
【0037】
波長変換部材本体2の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上、2mm以下とすることができ、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.2mm以下である。
【0038】
波長変換部材本体2は、無機マトリクス4と、無機マトリクス4中に分散している蛍光体粒子5とを含む。
【0039】
無機マトリクス4の波長250nm~365nmにおける全光線透過率は、特に限定されないが、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは79%以下、さらに好ましくは78%以下である。無機マトリクス4の上記全光線透過率が上記下限値以上である場合、変換光Bの出射効率をより一層高めることができる。また、無機マトリクス4の上記全光線透過率が上記上限値以下である場合、紫外光Aの外部への漏出をより一層抑制することができる。
【0040】
無機マトリクス4としては、特に限定されず、ガラスマトリクスやセラミックスマトリクスなどを用いることができる。
【0041】
ガラスマトリクスとしては、例えば、モル%で、SiO 30%~85%、B 0%~35%、Al 0%~25%、LiO+NaO+KO 0%~10%、MgO+CaO+SrO+BaO 0%~45%を含有するものが挙げられる。このようにガラス組成を限定した理由を以下に説明する。なお、以下の各成分の説明において、特に断りのない限り「%」は「モル%」を意味する。
【0042】
SiOはガラスネットワークを形成する成分であり、紫外線透過率と耐失透性を向上させる効果を有する。また、耐候性や機械的強度を向上させる効果も有する。SiOの含有量は、好ましくは30%~85%、より好ましくは40%~80%、さらに好ましくは50%~75%、特に好ましくは55%~70%である。SiOの含有量が少なすぎると、上記効果が得にくくなる。一方、SiOの含有量が多すぎると、焼結温度が高温になるため、波長変換部材本体2の製造時に蛍光体粒子5が劣化しやすくなる。また、焼成時におけるガラス粉末の流動性に劣り、焼成後のガラスマトリクス中に気泡が残存しやすくなる。さらに、紫外線透過率が高くなりすぎるおそれがある。
【0043】
は溶融温度を低下させて溶融性を改善する成分である。また、Bは紫外線透過率をあまり低下させず、かつ、アルカリ金属成分やアルカリ土類金属成分による紫外線吸収を抑制する効果がある。Bの含有量は、好ましくは0%~35%、より好ましくは0%~20%、さらに好ましくは1%~15%、さらに好ましくは2%~10%、特に好ましくは3%~8%、最も好ましくは4%~7%である。Bの含有量が多すぎると、耐候性が低下しやすくなる。また、紫外線透過率が高くなりすぎるおそれがある。
【0044】
Alは耐候性や機械的強度を向上させる成分である。また、Bと同様に、アルカリ金属成分やアルカリ土類金属成分による紫外線吸収を抑制する効果がある。Alの含有量は、好ましくは0%~25%、より好ましくは0.1%~20%、さらに好ましくは1%~10%、特に好ましくは2%~8%である。Alの含有量が多すぎると、溶融性が低下する傾向がある。また、紫外線透過率が高くなりすぎるおそれがある。
【0045】
LiO、NaO及びKOは溶融温度を低下させて溶融性を改善するとともに、軟化点を低下させる成分である。しかしながら、これらの成分の含有量が多すぎると、耐候性が低下しやすくなり、かつ、励起光である紫外光Aの照射により発光強度が経時的に低下しやすくなる。よって、LiO+NaO+KOの含有量は、好ましくは0%~10%、より好ましくは0%~5%、さらに好ましくは0%~3%、さらに好ましくは0%~2%、特に好ましくは0%~1%であり、含有しないことが最も好ましい。また、LiO、NaO及びKOの各成分の含有量は、それぞれ、好ましくは0%~7%、より好ましくは0%~5%、さらに好ましくは0%~3%、さらに好ましくは0%~2%、特に好ましくは0%~1%であり、含有しないことが最も好ましい。
【0046】
なお、後述するように、ガラス組成中にCeOを含有させる場合は、LiO、NaOまたはKOを含有させても、紫外光Aの照射による発光強度の経時的な低下を抑制することができる。よって、ガラス組成中にCeOを含有させる場合は、LiO、NaOまたはKOを積極的に含有させてもかまわない。この場合、LiO、NaO及びKOの含有量(合量)は、好ましくは0.1%~7%、より好ましくは1%~6.5%、さらに好ましくは2%~6%である。また、LiO、NaO及びKOの含有量は、それぞれ、好ましくは0%~7%、より好ましくは0.1%~5%、さらに好ましくは0.5%~4%、特に好ましくは1%~3%である。LiO、NaO及びKOは、2種以上、特に3種を混合して用いることが好ましい。具体的には、LiO、NaO及びKOを、それぞれ、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、特に1%以上含有することが好ましい。このようにすれば、混合アルカリ効果により、発光強度の経時的な低下を抑制しつつ、軟化点を効率よく低下させることが可能になる。また、各アルカリ酸化物の含有量を等量にすると、混合アルカリ効果が得られやすい。
【0047】
MgO、CaO、SrO及びBaOは溶融温度を低下させて溶融性を改善し、軟化点を低下させる成分である。なお、これらの成分はアルカリ金属成分と異なり、波長変換部材1における発光強度の経時的な低下に影響を与えない。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは0%~45%、より好ましくは1%~45%、さらに好ましくは5%~40%、さらに好ましくは10%~35%、特に好ましくは20%~33%である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が少なすぎると、軟化点が低下しにくくなる。一方、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多すぎると、耐候性が低下しやすくなる。なお、MgO、CaO、SrO及びBaOの各成分の含有量は、それぞれ、好ましくは0%~35%、より好ましくは0.1%~33%、さらに好ましくは1%~30%である。これらの成分の含有量が多すぎると、耐候性が低下する傾向がある。
【0048】
ZnOは溶融温度を低下させて溶融性を改善する成分である。また、ZnOはガラスマトリクスの紫外線透過率を低下させる成分である。ZnOの含有量は、好ましくは0%~15%、より好ましくは0%~10%、さらに好ましくは0%~5%、特に好ましくは0.1%~4.5%、最も好ましくは1%~4%である。ZnOの含有量が多すぎると、耐候性が低下する傾向がある。また分相して透過率が低下し、結果として発光強度が低下する傾向がある。
【0049】
CeOはガラスマトリクスの紫外線透過率を低下させる成分である。CeOを含有させることにより、紫外光Aが波長変換部材1の外部へ漏出することをより一層抑制できる。また、CeOは、LiO、NaOまたはKOによる発光強度の経時的な低下を抑制する効果を有する。CeOの含有量は、好ましくは0%~10%、より好ましくは0.001%~10%、さらに好ましくは0.001%~5%、さらに好ましくは0.01%~3%、特に好ましくは0.05%~1%、最も好ましくは0.1%~0.5%である。CeOの含有量が多すぎると、ガラスマトリクスの可視光透過率が低下して、発光強度が低下する傾向がある。
【0050】
また、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で種々の成分を含有させることができる。例えば、P、La、Ta、TeO、TiO、Nb、Gd、Y、Sb、SnO、Bi、As及びZrO等を、それぞれ、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、合量で30%以下の範囲で含有させてもよい。また、Fを含有させることもできる。Fは、軟化点を低減する効果があるため、着色中心形成の原因の1つであるアルカリ金属成分の代わりに含有させることにより、低軟化点を維持したまま、発光強度の経時的な低下を抑制することができる。Fの含有量は、アニオン%で、好ましくは0%~10%、より好ましくは0%~8%、さらに好ましくは0.1%~5%である。
【0051】
また、ガラスマトリクスとして、上記したものの他に、例えば、SiO-B-RO系ガラス(ROはMgO、CaO、SrO、BaOを表す)系ガラス、SiO-B-RO(ROはLiO、NaO、KOを表す)系ガラス、SiO-B-Al系ガラス、SiO-B-RO-Al系ガラス、SiO-B-ZnO系ガラス、ZnO-B系ガラス、又はSnO-P系ガラスを用いることができる。
【0052】
なお、材料を低温で焼成したい場合は、ガラスマトリクスとして、比較的容易に軟化点を低下させることが可能なZnO-B系ガラス、SnO-P系ガラスを選択すればよく、発光色変換部材(波長変換部材1)の耐候性を向上させたい場合は、ガラスマトリクスとして、SiO-B-RO系ガラス、SiO-B-RO系ガラス、SiO-B-Al系ガラス、SiO-B-RO-Al系ガラス、SiO-B-ZnO系ガラスを選択すればよい。
【0053】
ガラスマトリクスの軟化点は、好ましくは600℃以上、より好ましくは630℃以上、さらに好ましくは650℃以上である。ガラスマトリクスの軟化点が低すぎると、機械的強度及び耐候性が低下しやすくなる。一方、ガラスマトリクスの軟化点が高すぎると焼結温度も高くなるため、製造時の焼成工程において蛍光体粒子5が劣化しやすくなる。よって、ガラスマトリクスの軟化点は、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1050℃以下、さらに好ましくは1000℃以下である。
【0054】
なお、ガラスマトリクスの原料であるガラス粉末の平均粒子径D50は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。ガラス粉末の平均粒子径D50が大きすぎると、得られる波長変換部材1において、焼成後のガラスマトリクス中に気泡が残存しやすくなり、波長変換部材1の光取出し効率が低下するおそれがある。ガラス粉末の平均粒子径D50の下限値は、特に限定されないが、生産コストや取扱い性を考慮し、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した平均粒子径D50のことをいうものとする。
【0055】
セラミックスマトリクスを構成するセラミックスとしては、例えば、Al、MgO、AlN等が挙げられる。
【0056】
また、蛍光体粒子5としては、特に限定されず、波長200nm~380nmの紫外光Aを照射した場合に、該紫外光Aより長波長の蛍光を発するものであればよく、400nm以上の蛍光を発するものであることがより好ましく、450nm以上の蛍光を発するものであることがさらに好ましく、可視域(例えば、波長500nm~600nm)の蛍光を発するものであることが特に好ましい。もっとも、蛍光体粒子5は、波長200nm~380nmの紫外光Aを照射した場合に赤外域(例えば、波長780nm~30000nm)の蛍光を発するものであってもよい。
【0057】
具体的に、蛍光体粒子5としては、例えば、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、塩化物蛍光体、酸塩化物蛍光体、ハロゲン化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ハロリン酸塩化物蛍光体等が挙げられる。
【0058】
なかでも、蛍光体粒子5は、ガーネット蛍光体、特にLuAl12:Ceや、サイアロン蛍光体、特にSi6-zAl8-z:Eu(0<z<4.2)(β-SiAlON:Eu)、LaSi11:Ce、(Sr,Ca)AlSiN:Euであれば、波長200nm~380nmの紫外光Aを効率よく可視域の蛍光に変換することができるため好ましい。また、可視域に励起帯を持たない蛍光体粒子5を用いることで、紫外光Aのみを変換することができる。その場合、可視光と紫外光Aが照射されている環境下でも紫外光Aのみを変換することができるため、出射効率をより一層高めることができる。
【0059】
蛍光体粒子5の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。蛍光体粒子5の平均粒子径が小さすぎると、量子効率が悪く発光強度が低下する傾向がある。一方、蛍光体粒子5の平均粒子径が大きすぎると、無機マトリクス4内での分散状態が悪くなり、発光色が不均一になる傾向がある。よって、蛍光体粒子5の平均粒子径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下である。
【0060】
波長変換部材本体2中における蛍光体粒子5の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01体積%以上、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、さらにより好ましくは20体積%以上であり、好ましくは70体積%以下、より好ましくは65体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下である。蛍光体粒子5の含有量が上記範囲内にある場合、波長変換部材1を上述のセンシングデバイスや紫外線検知デバイス等に用いたときに、センシングの感度をより一層高めることができる。
【0061】
なお、波長変換部材本体2は、無機マトリクス4と、無機マトリクス4中に分散している蛍光体粒子5の他の実施形態として、YAGセラミックス等のセラミックス(セラミックス蛍光体)からなるものであってもよい。
【0062】
機能膜;
機能膜3は、波長変換部材本体2の第2の主面2bにおける少なくとも一部に設けられていてもよいし、波長変換部材本体2の第2の主面2b全体に設けられていてもよい。
【0063】
機能膜3は、波長変換部材本体2の第2の主面2b全体の面積に対して面積が10%以上の部分に設けられていることが好ましく、面積が30%以上の部分に設けられていることがより好ましく、面積が50%以上の部分に設けられていることがさらに好ましい。
【0064】
機能膜3の厚みは、特に限定されず、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上、さらにより好ましくは5μm以上、さらにより好ましくは10μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。この場合、紫外光Aの外部への漏出をより一層確実に抑制することができる。
【0065】
機能膜3としては、特に限定されず、例えば、紫外線吸収膜や、紫外線反射膜等の紫外線遮蔽膜を用いることができる。
【0066】
紫外線吸収膜としては、例えば、ZnOを含む膜を用いることができる。なかでも、紫外線吸収膜としては、ZnOを主成分とする膜であることが好ましく、ZnOからなる膜であることがより好ましい。
【0067】
なお、本明細書において、主成分とする膜とは、膜中にその材料が50質量%以上含まれている膜のことをいうものとする。主成分とする膜においては、膜中にその材料が80質量%以上含まれていることが好ましく、90質量%以上含まれていることがより好ましい。当然ながら、主成分とする膜は、膜中にその材料を100質量%含む膜であってもよい。
【0068】
なお、紫外線吸収膜には他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば、セラミックス微粒子又は金属微粒子が挙げられる。膜中における他の成分の含有量は、例えば、膜全体の材料(100質量%)に対し、5質量%以下とすることができ、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0069】
また、紫外線吸収膜としては、無機材料膜及び有機材料膜のいずれを用いてもよい。無機材料膜としては、上述したZnO膜の他、例えば、TiO膜等が挙げられる。また、有機材料膜としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤膜や、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤膜等が挙げられる。
【0070】
紫外線吸収膜の厚みは、特に限定されず、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。この場合、紫外光Aの外部への漏出をより一層確実に抑制することができる。
【0071】
紫外線反射膜としては、バンドパスフィルタ等の誘電体多層膜を用いることができる。紫外線反射膜としては、例えば、酸化物、窒化物、フッ化物等からなる多層膜を用いることができる。具体的には、誘電体多層膜は、屈折率が相対的に低い低屈折率誘電体層と、屈折率が相対的に高い高屈折率誘電体層とが交互に積層された構成を含む多層膜を用いることができる。低屈折率誘電体層は、例えば、酸化ケイ素等により形成することができる。高屈折率誘電体層は、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム等によって形成することができる。
【0072】
低屈折率誘電体層の層数は、例えば、1層以上、20層以下とすることができる。低屈折率誘電体層の厚みは、例えば、10nm以上、200nm以下とすることができる。
【0073】
高屈折率誘電体層の層数は、例えば、1層以上、20層以下とすることができる。高屈折率誘電体層の厚みは、例えば、10nm以上、200nm以下とすることができる。
【0074】
誘電体多層膜全体の層数は、例えば、2層以上、40層以下とすることができる。
【0075】
紫外線反射膜の厚みは、特に限定されず、好ましくは15nm以上、より好ましくは20nm以上、好ましくは5000nm以下、より好ましくは2000nm以下である。この場合、紫外光Aの外部への漏出をより一層確実に抑制することができる。
【0076】
以下、波長変換部材1の製造方法の一例について説明する。
【0077】
製造方法;
まず、波長変換部材本体2を作製する。波長変換部材本体2は、例えば、無機マトリクス4がガラスマトリクスである場合には、ガラスマトリクスの原料であるガラス粉末と、蛍光体粒子(蛍光体粉末)とを含有する混合物を焼成し、得られた焼成体を所望の大きさに切断することにより、製造することができる。
【0078】
ガラス粉末と蛍光体粉末との混合粉末の焼成温度は、ガラス粉末の軟化点±200℃以内であることが好ましく、特にガラス粉末の軟化点±150℃以内であることが好ましい。焼成温度が低すぎると、ガラス粉末が十分に流動せず、緻密な焼結体が得にくい。一方、焼成温度が高すぎると、蛍光体成分が熱劣化して発光強度が低下するおそれがある。
【0079】
焼成は減圧雰囲気中で行うことが好ましい。具体的には、焼成中の雰囲気内の圧力が、好ましくは1.013×10Pa未満、より好ましくは1000Pa以下、さらに好ましくは400Pa以下である。これにより、波長変換部材本体2中に残存する気泡の量を少なくすることができ、上述の理由から、発光強度を向上させることができる。なお、焼成工程全体を減圧雰囲気中で行ってもよいし、例えば、焼成工程のみを減圧雰囲気中で行い、その前後の昇温工程や降温工程を、減圧雰囲気ではない雰囲気(例えば、大気圧下)で行ってもよい。
【0080】
次に、波長変換部材本体2の第2の主面2b上に機能膜3を形成する。機能膜3は、例えば、機能膜3がZnOを含む膜である場合には、波長変換部材本体2の第2の主面2b上に、酸化亜鉛前駆体溶液を塗布し、焼成することにより形成することができる。
【0081】
なお、酸化亜鉛前駆体溶液を塗布する前には、予め波長変換部材本体2の第2の主面2bを洗浄することが望ましい。洗浄方法としては、例えば、超音波洗浄やUV洗浄等が挙げられる。
【0082】
酸化亜鉛前駆体溶液としては、例えば、亜鉛オクチレート、亜鉛アルコキシド、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、又はステアリン酸亜鉛等を含む溶液を用いることができる。これらの亜鉛化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
酸化亜鉛前駆体溶液を構成する溶媒としては、例えば、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、イソアミルアルコール、2-メトキシエタノール、又は2-エトキシエタノール等を用いることができる。さらに、上記溶媒として、ジケトン化合物又はケトエステル化合物を用いてもよい。例えば、上記溶媒として、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン、ベンジル、1-フェニルブタン-1,2-ジオン、フェニルアセチルアセトン、フェニルベンゾイルアセトン、エチル-フェニル-ジケトン、又は1-フェニル-1,2-ブタジオン等を用いることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
また、酸化亜鉛前駆体溶液中における亜鉛アセチルアセトナート等の亜鉛化合物の濃度は、例えば、0.1M以上、1.0M以下とすることができる。
【0085】
酸化亜鉛前駆体溶液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法が挙げられる。スピンコート法における回転速度は、例えば、100rpm以上、1000rpm以下とすることができる。また、その回転速度における回転時間は、例えば、10秒以上、10分以下とすることができる。
【0086】
焼成温度は、例えば、100℃以上、400℃以下とすることができる。焼成時間は、例えば、10分以上、3時間以下とすることができる。
【0087】
また、機能膜3が上述した誘電体多層膜等である場合は、スパッタリング法や、蒸着法により成膜してもよく、機能膜3の成膜方法は特に限定されない。
【0088】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。
【0089】
図3に示すように、波長変換部材21においては、波長変換部材本体2の第1の主面2a上に、バンドパスフィルタ23が設けられている。バンドパスフィルタ23は、紫外線を選択的に透過させるフィルタである。より具体的には、バンドパスフィルタ23は、紫外光Aを透過させ、かつ可視光を吸収又は反射するフィルタである。波長変換部材本体2の第1の主面2a上に、バンドパスフィルタ23を設けることにより、蛍光灯などの可視光が照射されている環境下で波長変換部材21を使用した際に、可視光によって励起される蛍光体粒子5を用いた場合であっても、蛍光体粒子5が励起されて蛍光が発せられることをより確実に防ぐことができる。
【0090】
バンドパスフィルタ23の特性として、バンドパスフィルタ23の波長250nm~380nmにおける全光線透過率は、好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上である。また、バンドパスフィルタ23の波長380nm~780nmの波長域における全光線透過率は、好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、バンドパスフィルタ23の波長400nm~700nmの波長域における全光線透過率は、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。また、バンドパスフィルタ23の波長420nm~600nmの波長域における全光線透過率は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0091】
バンドパスフィルタ23としては、ガラスからなるもの(ガラス板)が挙げられる。具体的には、バンドパスフィルタ23としては、ガラス中に可視光を吸収する元素を含有させた紫外透過可視吸収ガラスからなるものが挙げられる。可視光を吸収する元素としては、Ni、Co、Ti等が挙げられる。これらは通常、NiO、CoO、TiOといった成分としてガラス組成中に含まれる。なかでも、NiO及びCoOは紫外光Aの吸収が比較的少なく、可視光を吸収することができるため好ましい。ガラス組成中におけるNiO、CoO及びTiOの含有量(質量%)は、合量で、好ましくは1%~25%、より好ましくは3%~20%、さらに好ましくは5%~15%である。これらの成分の含有量が少なすぎると、十分な可視光吸収性能が得にくくなる場合がある。一方、これらの成分の含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる場合がある。なお、NiO、CoO及びTiOのうちの1種の含有量、及び、2種の合量は、好ましくは1%~25%、より好ましくは3%~20%、さらに好ましくは5%~15%である。
【0092】
バンドパスフィルタ23がガラスからなる場合、その厚みは、好ましくは0.2mm~3.0mm、より好ましくは0.3mm~2.0mm、さらに好ましくは0.4mm~1.0mmである。バンドパスフィルタ23の厚みが小さすぎると、十分な可視光吸収性能を得にくくなる傾向がある。また、バンドパスフィルタ23の機械的強度が不十分になる傾向がある。一方、バンドパスフィルタ23の厚みが大きすぎると、波長変換部材21の小型化が困難になる傾向がある。
【0093】
バンドパスフィルタ23として、可視光を反射する誘電体多層膜(例えば、ガラス板表面に誘電体多層膜を形成したもの)を使用することもできる。誘電体多層膜は、屈折率が相対的に低い低屈折率誘電体層と、屈折率が相対的に高い高屈折率誘電体層とが交互に積層された構成を有する。低屈折率誘電体層は、例えば、酸化ケイ素等により形成することができる。高屈折率誘電体層は、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、又は酸化ジルコニウム等によって形成することができる。ただし、誘電体多層膜は入射角度によって可視光の反射率が変化してしまうため、フィルタ面に対して垂直方向以外から可視光が入射する環境下では、十分なフィルタ機能を得られないおそれがある。一方、紫外透過可視吸収ガラスであれば、そのような問題が生じにくいため、所望のバンドパス機能を得やすい。なお、紫外透過可視吸収ガラスと誘電体多層膜とを組み合わせて使用してもよい。この場合、紫外透過可視吸収ガラスの厚みを小さくした場合の可視光吸収性能の低下を、誘電体多層膜により補完することができるため、バンドパスフィルタ23の厚みの薄型化による波長変換部材21の小型化を図ることができる。
【0094】
本実施形態の波長変換部材21においても、波長変換部材本体2の第2の主面2b上に、変換光Bを透過させ、紫外光Aを遮蔽する機能膜3が設けられているので、紫外光Aをより長波長の変換光Bに効率よく変換することができ、しかも紫外光Aの外部への漏出を抑制することができる。
【0095】
従って、波長変換部材21によれば、樹脂製の周辺部材等の劣化を抑制しつつ、高効率で変換光Bを出射させることができる。そのため、波長変換部材21は、例えば、紫外光Aを可視光に変換し、変換された可視光の光量を検出する、センシングデバイスや紫外線検知デバイス等に用いたときに、センシングの感度を高めることができる。
【0096】
なお、図示はしていないが、波長変換部材本体2の側面2cにも機能膜3を設けてもよい。このようにすると、紫外光Aの外部への漏出をより一層確実に抑制することができ、樹脂製の周辺部材等の劣化をより一層確実に抑制することができる。
【0097】
[センシングデバイス及び紫外線検出デバイス]
図4は、本発明の一実施形態に係る紫外線検知デバイスを示す模式的断面図である。
【0098】
紫外線検知デバイス30は、光源40と、センシングデバイス31とを備える。光源40としては、波長250nm~380nmに強度を有する紫外光発生源を用いることができる。このような、紫外光発生源としては、例えば、UVLED、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、又は重水素ランプ等を用いることができる。
【0099】
センシングデバイス31は、波長変換部材1と、検出器50とを備える。波長変換部材1は、波長変換部材の欄で説明したものを用いることができる。また、検出器50としては、波長変換部材本体2の第2の主面2b側から出射される変換光Bを検出する、フォトダイオードを用いることができる。なお、フォトダイオードとしては、Siフォトダイオード又はGeフォトダイオード等が挙げられる。
【0100】
本実施形態においては、図4に示すように、光源40からの紫外光Aが波長変換部材1に入射する。より具体的には、紫外光Aは、第1の主面2a側から波長変換部材本体2に入射する。紫外光Aが、波長変換部材本体2に含まれる蛍光体粒子5に照射されると、紫外光Aが、紫外光Aよりも長波長の変換光Bに変換される。変換光Bは、波長変換部材本体2の第2の主面2b及び機能膜3を通り、波長変換部材1から出射される。波長変換部材1から出射された変換光Bは、検出器50においてモニタリングすることができる。
【0101】
本実施形態のセンシングデバイス31及び紫外線検知デバイス30は、波長変換部材1を備えるので、紫外光Aの外部への漏出を抑制することができ、樹脂製の周辺部材等の劣化を抑制することができる。また、本実施形態のセンシングデバイス31及び紫外線検知デバイス30は、紫外光Aをより長波長の変換光Bに効率よく変換することができるので、センシングの感度を高めることができる。センシングデバイス31及び紫外線検知デバイス30によれば、微弱な光に対してもノイズレスで検出することができ、光源40(紫外光発生源)の微小な劣化などを確認することもできる。
【0102】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0103】
(実施例1)
波長変換部材本体の作製;
ガラスマトリクスとなるガラス粉末として、質量%で、SiO 68%、Al 4%、B 19%、NaO 7%、KO 1%、F 1%の組成を有するガラス粉末(軟化点700℃、熱膨張係数:41.9×10-7/℃、平均粒子径:2.5μm)を準備した。
【0104】
準備したガラス粉末に対し、LaSi11:Ce3+蛍光体粒子(蛍光ピーク波長538nm)を混合して、750℃で焼成することにより焼結体を得た。なお、蛍光体粒子は、波長変換部材本体中における含有量が0.1体積%となるように混合した。焼結体に加工を施すことにより、縦30mm、横30mm、厚み:0.3mmである矩形板状の波長変換部材本体を作製した。
【0105】
機能膜の形成;
まず、波長変換部材本体の一方側主面を洗浄した。具体的には、イソプロピルアルコールを染み込ませたウエスで波長変換部材本体の一方側主面を拭き取った後、イソプロピルアルコールに波長変換部材本体を浸し、10分間で、2セット超音波洗浄を行った。その後、アルカリ光学洗浄剤を用い、10分間、波長変換部材本体の超音波洗浄を行った。次に、煮沸させた2-プロパノールに波長変換部材本体を10分間浸した。次に、高圧水銀ランプ(岩崎電気社製、品番「QOL 25SY」)を波長変換部材本体に30分間照射し、洗浄を完了させた。
【0106】
次に、波長変換部材本体の洗浄後の一方側主面に、酸化亜鉛前駆体溶液をスピンコート法により塗布した。なお、酸化亜鉛前駆体溶液は、亜鉛アセチルアセトナート1.75×10-4mol、アセチルアセトン5.33×10-4mol、及び2-メトキシエタノール5.63×10-3molを、ホットスターラー上で50℃及び500rpmの条件で一晩撹拌することにより作製した(酸化亜鉛前駆体溶液中の亜鉛アセチルアセトナートの濃度:0.350M)。また、スピンコートに際しては、スピンコーター(協栄セミコンダクター社製、品番「SPINNER-1H-3」)を用い、回転速度1000rpmで60秒間行った。次に、大気下で250℃及び1時間の条件でスピンコート後の波長変換部材本体の焼成を行った。以上のようにして、波長変換部材本体の一方側主面上に、機能膜としてのZnO膜(厚み:1μm)を形成し、波長変換部材を作製した。
【0107】
(比較例1)
機能膜としてのZnO膜を成膜しなかったこと以外は、実施例1と同様にして波長変換部材を作製した。
【0108】
[評価]
実施例1及び比較例1で作製した波長変換部材それぞれに対して、UVLED(波長265nm)を照射し、出射面側に受光部をエポキシ樹脂で封止したSiフォトダイオードを設置し、UVLED(波長265nm)の変換光を検出できるか確認した。なお、Siフォトダイオードは、波長350nm~1000nmの光を検知可能なダイオードである。
【0109】
また、実施例1及び比較例1で作製した波長変換部材それぞれに対して、UVLED(波長265nm)を500時間連続で照射し、出射面側から10mm離間させてアクリル試験片を設置し、試験片の劣化の有無を評価した。なお、実施例1の波長変換部材では、波長変換部材の機能膜とは反対側の主面を入射面とし、機能膜が設けられる面を出射面とした。
【0110】
劣化の有無の評価は、実施例1及び比較例1それぞれにおいて、UVLED(波長265nm)を照射した前後の試験片を目視で比較することで行った。
【0111】
(評価結果)
実施例1については、波長変換部材による変換光を検出でき、波長変換部材によって紫外光をより長波長の変換光に効率よく変換できていることが確認できた。また、実施例1の試験片は、試験前後の試験片に変化は見られず、紫外光の外部への漏出を抑制できていることが確認できた。
【0112】
一方、比較例1についても、波長変換部材による変換光を検出できたものの、比較例1の試験片は、黄変し、劣化していた。このように、比較例1では、紫外光が外部へ漏出していた。
【符号の説明】
【0113】
1,21…波長変換部材
2…波長変換部材本体
2a…第1の主面
2b…第2の主面
2c…側面
3…機能膜
3a…主面
4…無機マトリクス
5…蛍光体粒子
23…バンドパスフィルタ
30…紫外線検知デバイス
31…センシングデバイス
40…光源
50…検出器
A…紫外光
B…変換光
図1
図2
図3
図4