(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027622
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
B62J35/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132552
(22)【出願日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベ,チャンミン
(72)【発明者】
【氏名】榊原 愼ノ介
(57)【要約】
【課題】開口部の周囲を排水し易く、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減し易い鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗り型車両は、ヘッドパイプ(18)と、ヘッドパイプ(18)から後方に延びる車体フレーム(11)と、シート(17)と、シート(17)の前方かつ上方に配置されたエネルギー貯蔵部(29)と、貯蔵部カバー(51)と、を備える鞍乗り型車両において、貯蔵部カバー(51)は、センター貯蔵部カバー(60)と、左右一対のサイド貯蔵部カバー(70)と、を備え、センター貯蔵部カバー(60)には、エネルギー貯蔵部(29)にアクセスするための開口部(68)と、開口部(68)の周囲の凹部(67)と、凹部(67)の左右方向両側の凸部(69)と、が形成され、凹部(67)の底面(67a)と、凸部(69)の上面(69a)とは、車体後方に向けて上方に傾斜している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(18)と、前記ヘッドパイプ(18)から後方に延びる車体フレーム(11)と、前記車体フレーム(11)に支持されたシート(17)と、前記シート(17)の前方且つ上方に配置されたエネルギー貯蔵部(29)と、前記エネルギー貯蔵部(29)を覆う貯蔵部カバー(51)と、を備える鞍乗り型車両において、
前記貯蔵部カバー(51)は、前記エネルギー貯蔵部(29)の上方に配置され前後方向に延びるセンター貯蔵部カバー(60)と、前記センター貯蔵部カバー(60)の左右方向両側に接続され前記エネルギー貯蔵部(29)を左右方向外側から覆う左右一対のサイド貯蔵部カバー(70)と、を備え、
前記センター貯蔵部カバー(60)には、前記エネルギー貯蔵部(29)にアクセスするための開口部(68)と、前記開口部(68)の周囲に設けられ前後方向に延びる凹部(67)と、前記凹部(67)の左右方向両側に設けられ前後方向に延びる凸部(69)と、が形成され、
前記凹部(67)は底面(67a)を備え、前記底面(67a)は、車体後方に向けて上方に傾斜し、
前記凸部(69)は上面(69a)を備え、前記上面(69a)は、車体後方に向けて上方に傾斜している
ことを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記凸部(69)の前記上面(69a)は、前記上面(69a)から前記底面(67a)までの上下方向における長さが最も大きい最深部(67d)よりも後方まで、車体後方に向けて上方に傾斜している
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記凸部(69)の前記上面(69a)は、前記最深部(67d)よりも後方から、車体後方に向けて下方に傾斜している
ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記凸部(69)は、前記開口部(68)の後部まで、車体後方に向けて車幅方向外側に延びる
ことを特徴とする請求項2または3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記センター貯蔵部カバー(60)は、カバー頂部(63)を備え、
前記カバー頂部(63)には前記最深部(67d)が形成され、
前記カバー頂部(63)が、最も上方且つ最も幅広である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記凸部(69)は、少なくとも前記カバー頂部(63)まで、車体後方に向けて車幅方向外側に延びる
ことを特徴とする請求項5に記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記最深部(67d)よりも前方において、前記凹部(67)の前記底面(67a)の傾斜角度(θ2)は、前記凸部(69)の前記上面(69a)の傾斜角度(θ1)に比べて小さい
ことを特徴とする請求項2または3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
前記最深部(67d)よりも後方において、前記凹部(67)の底面(67a)の傾斜角度(θ3、θ4)は、前記最深部(67d)よりも前方の前記底面(67a)の傾斜角度(θ2)に比べて大きい
ことを特徴とする請求項7に記載の鞍乗り型車両。
【請求項9】
前記開口部(68)に設けられ前記開口部(68)を開閉可能に閉塞するリッド(29a)と、
前記開口部(68)よりも後方に形成された前記最深部(67d)と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートの前方に配置されるエネルギー貯蔵部を覆う貯蔵部カバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、貯蔵部カバーとしてのタンクカバーが開示されており、エネルギー貯蔵部としての燃料タンクをタンクカバーが覆う構成が開示されている。特許文献1のタンクカバーでは、タンクカバーの頂部に給油穴が設けられている。特許文献1には、特に背面視においては、給油穴の周囲はタンクカバーと面一状に形成された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯蔵部カバーはシートの前方に配置されるため、貯蔵部カバーに沿って流れる走行風は運転者の疲労に影響を与え易い。また、貯蔵部カバーには、エネルギー貯蔵部にアクセスするための開口部もあるので、貯蔵部カバーの水は速やかに排水することが望ましい。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、開口部の周囲を排水し易く、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減し易い鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両は、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びる車体フレームと、前記車体フレームに支持されたシートと、前記シートの前方且つ上方に配置されたエネルギー貯蔵部と、前記エネルギー貯蔵部を覆う貯蔵部カバーと、を備える鞍乗り型車両において、前記貯蔵部カバーは、前記エネルギー貯蔵部の上方に配置され前後方向に延びるセンター貯蔵部カバーと、前記センター貯蔵部カバーの左右方向両側に接続され前記エネルギー貯蔵部を左右方向外側から覆う左右一対のサイド貯蔵部カバーと、を備え、前記センター貯蔵部カバーには、前記エネルギー貯蔵部にアクセスするための開口部と、前記開口部の周囲に設けられ前後方向に延びる凹部と、前記凹部の左右方向両側に設けられ前後方向に延びる凸部と、が形成され、前記凹部は底面を備え、前記底面は、車体後方に向けて上方に傾斜し、前記凸部は上面を備え、前記上面は、車体後方に向けて上方に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
開口部の周囲を排水し易く、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減し易い鞍乗り型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図2】実施の形態に係るタンクカバーの周辺部を示す鞍乗り型車両の平面図である。
【
図3】実施の形態に係るタンクカバーの正面図である。
【
図4】実施の形態に係るタンクカバーの背面図である。
【
図5】実施の形態に係るセンタータンクカバーの斜視図である。
【
図6】実施の形態に係るセンタータンクカバーの側面図である。
【
図7】実施の形態に係るセンタータンクカバーの車幅中央線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
本実施の形態のフロントフレーム19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びる一本のメインフレーム31と、メインフレーム31の後端部から下方に延びる一本のピボットフレーム32と、ヘッドパイプ18においてメインフレーム31の前端の下方の位置から下方に延びる一本のダウンフレーム33と、ヘッドパイプ18とメインフレーム31とダウンフレーム33との接続部を補強するガセット34と、を備える。
【0016】
リアフレーム20は、メインフレーム31の後部から車体後端部まで延びる左右一対のシートフレーム41と、左右のピボットフレーム32の上下方向中間部からシートフレーム41の後端部まで延びる左右一対のリアサブフレーム42と、左右一対のシートフレーム41の前部を左右方向に接続するリア前部クロスメンバ(不図示)と、左右一対のシートフレーム41の後端部を左右方向に接続するリア後部クロスメンバ(不図示)と、リア前部クロスメンバとリア後部クロスメンバとの間に形成されたシート係合部45と、を備える。
【0017】
ダウンフレーム33の下端部には、ユニットブラケット35が形成される。ユニットブラケット35は、後方が開放された折り曲げ板状である。ユニットブラケット35には、パワーユニット12が固定される。詳細には、ユニットブラケット35には、車幅方向に延びる軸状の固定具により、パワーユニット12のクランクケース23の前端部が固定される。
【0018】
ピボットフレーム32の下端部には、ユニットブラケット36が形成される。ユニットブラケット36には、パワーユニット12が固定される。詳細には、ユニットブラケット36には、車幅方向に延びる軸状の固定具により、パワーユニット12のクランクケース23の後端部が固定される。
【0019】
よって、車体フレーム11では、ダウンフレーム33とピボットフレーム32とが剛性部材の一例としてのパワーユニット12で接続される。ダウンフレーム33とピボットフレーム32との間がパワーユニット12を介して接続されており、本実施の形態の車体フレーム11は、バックボーンフレームである。
【0020】
車体フレーム11には、車体カバー50が支持される。車体カバー50は、燃料タンク(エネルギー貯蔵部)29を覆うタンクカバー(貯蔵部カバー)51と、タンクカバー51の下方に設けられて車体を左右方向外側から覆う左右一対のセンターカバー52と、センターカバー52の後方でシート17の下方を左右方向外側から覆う左右一対のリアカバー53と、センターカバー52から下方に離間して配置されパワーユニット12の前端部を前方から覆うロアカバー54と、を備える。
【0021】
フロントフォーク14には、ヘッドライト56が支持される。ヘッドライト56の後上方には、メータユニット57が支持される。
【0022】
図2は、実施の形態に係るタンクカバー51の周辺部を示す鞍乗り型車両10の平面図である。
図3は、実施の形態に係るタンクカバー51の正面図である。
図4は、実施の形態に係るタンクカバー51の背面図である。
タンクカバー51は、前後方向に延びる帯板状のセンタータンクカバー(センター貯蔵部カバー)60と、センタータンクカバー60の左右に接続される左右一対のサイドタンクカバー(サイド貯蔵部カバー)70と、左右のサイドタンクカバー70の前面を閉塞する左右一対の前面タンクカバー(前面貯蔵部カバー)80と、前面タンクカバー80の下端に接続され前後方向に延びる枠形状の左右一対のガーニッシュ90と、ガーニッシュ90を左右方向外側から覆う左右一対のアウターサイドタンクカバー100と、を有する。
【0023】
タンクカバー51では、左右の前面タンクカバー80が燃料タンク29の前方でメインフレーム31の左右に配置される。前面タンクカバー80は、燃料タンク29を前方から覆う。センタータンクカバー60は、燃料タンク29の上方に配置される。センタータンクカバー60は、燃料タンク29を上方から覆う。サイドタンクカバー70は、燃料タンク29の左右方向外側に配置される。サイドタンクカバー70は、燃料タンク29を、左右方向外側および上方から覆う。タンクカバー51の後端部はシート17に上方から覆われる(
図2参照)。
【0024】
図5は、実施の形態に係るセンタータンクカバー60の斜視図である。
図6は、実施の形態に係るセンタータンクカバー60の側面図である。
図7は、実施の形態に係るセンタータンクカバー60を車幅中央線に沿って切断した断面図である。
センタータンクカバー60は、後上方に延びるカバー前端部61と、カバー前端部61よりも緩やかな傾斜でカバー前端部61から後上方に延びるカバー前部62と、カバー前部62から後方に延びて後上方に延びた後に後下方に延びるカバー頂部63と、カバー頂部63から後方に延びて後下方に傾斜するカバー後部64と、カバー後部64の下端から下方に延びるカバー後端部65と、を有する。カバー頂部63は、センタータンクカバー60において上下方向で最も高い位置である頂上位置(頂上部)63aを含む。
【0025】
カバー前端部61には、ハンドルロックカバー部66が形成される。ハンドルロックカバー部66の後方には、凹部67が形成される。凹部67は、前後方向に延びる。凹部67は、カバー前部62およびカバー頂部63に形成される。凹部67は、凹み形状を構成する底面67aを有する。底面67aは、前端部67bが、後方からハンドルロックカバー部66の左右に進入する。底面67aは、前端部67bが、カバー前端部61の上面61aに滑らかに接続される。凹部67の後端67cは、カバー頂部63の後端に位置する。本実施の形態では、凹部67の後端67cが、カバー頂部63の後端を規定する。凹部67の底面67aは、背面視では、カバー頂部63、カバー後部64に重複して隠れる(
図4参照)。
【0026】
底面67aには、円筒状のリッド開口部(開口部)68が形成される。リッド開口部68は、軸線68aがやや後下方に延びる円筒状に形成される。リッド開口部68には、燃料タンク29の給油口を開閉可能に閉塞するフューエルリッド(リッド)29a(
図2参照)が下方から装着される。リッド開口部68を通じて燃料タンク29の給油口にアクセス可能となる。フューエルリッド29aは、凹部67に収容された状態である。フューエルリッド29aは、タンクカバー51のセンタータンクカバー60に対して上方に突出せず、車体側面視では見えない(
図1参照)。
【0027】
凹部67の左右には、凹部67に対して相対的に上方に突出したエッジ部(凸部)69が形成される。エッジ部69は、前後方向に延びる。エッジ部69は、上面69aを有する。上面69aは、前後方向に延びる。上面69aは、前端部69bが、カバー前端部61の上面61aに滑らかに接続される。すなわち、エッジ部69は前方に進むに連れて突出量が小さくなり、凹部67の底面67aおよびカバー前端部61の上面61aと面一状に接続される。
【0028】
上面69aは、凹部67の後方で、カバー後部64の上面64aに滑らかに接続される。換言すれば、カバー後部64の上面64aが平面視で略Yの字状に形成されることにより(
図2参照)、センタータンクカバー60のカバー前部62およびカバー頂部63における車幅方向中央部には、前後方向に延びる凹部67が形成される。カバー前部62およびカバー頂部63においては、エッジ部69以外の部分が凹部67ということもできる。エッジ部69は、カバー前部62では、後方に進むに連れて車幅方向外側に傾斜する(
図2参照)。エッジ部69は、リッド開口部68の後部まで、後方に進むに連れて車幅方向外側に傾斜する。エッジ部69は、カバー頂部63では、左右方向最外端を経た後に、後方に進むに連れて車幅方向内側に傾斜する。
【0029】
図7に示すように、カバー前部62では、車幅方向中央部の凹部67の底面67aが水平面H0に対してなす傾斜角度θ2は、エッジ部69の上面69aが水平面H0に対して成す傾斜角度θ1よりも小さい。よって、後方になるほど、底面67aから上面69aまでの上下方向の長さ、いわゆる、凹部67の深さは深くなる。深さが最大となる最深位置(最深部)67dは、頂上位置63aよりも前方に位置する。最深位置67dおよび頂上位置63aは、カバー頂部63に形成される。最深位置67dよりも後方では、車幅方向中央部の凹部67の底面67aが水平面H0に対してなす傾斜角度θ3は、最深位置67dよりも前方の傾斜角度θ2よりも大きい。さらに、凹部67の後端部では、車幅方向中央部の凹部67の底面67aが水平面H0に対してなす傾斜角度θ4は、傾斜角度θ3よりも大きくなって後端67cに到達する。すなわち、最深位置67dよりも後方では、徐々に後ろ上がりの傾斜角度θ3、θ4が大きくなる。なお、カバー頂部63は、センタータンクカバー60の頂上位置63aから前後の所定範囲の部位を意味するものとする。本実施の形態では、頂上位置63aから凹部67の後端67cまでがカバー頂部63の後部を構成するものとする。カバー頂部63の前部は、前後方向の長さが後部と同じだけ頂上位置63aから前側の部位とする。
【0030】
センタータンクカバー60の左右には、適宜に孔状の爪係合部60aが形成される。爪係合部60aには、サイドタンクカバー70が接続される。サイドタンクカバー70の上面70aは、エッジ部69の上面69aよりも下方に位置する。すなわち、エッジ部69はサイドタンクカバー70よりも上方に突出している(
図3、
図4参照)。
【0031】
ここで、鞍乗り型車両10では、洗車や雨天走行により、タンクカバー51は被水する。このとき、タンクカバー51では、凹部67は凹んでいるため周囲から水が流れ込み易いが、凹部67の底面67aの傾斜形状により、車体前方に排水を促すことができる。特に、凹部67の底面67aは、前下がり形状であって前端部67bが滑らかにカバー前端部61の上面61aに接続されるため、凹部67から排水され易くなっている。本実施の形態では、リッド開口部68は凹部67に形成されているため、リッド開口部68の周囲は排水され易くなっている。
【0032】
また、タンクカバー51では、エッジ部69は、サイドタンクカバー70の上面70aよりも上方に突出する(
図3、
図4参照)。よって、ヘッドライト56の側方やハンドル21の下方を流れてサイドタンクカバー70に到達した走行風は、エッジ部69により車体中央に流れ込むのが抑制された状態で後方に流れ易い。したがって、ヘッドライト56の側方やハンドル21の下方を流れた走行風は、運転者の正面ではなく運転者の側方を流れ易くなっており、運転者の疲労蓄積が軽減され易くなっている。
【0033】
以上説明したように、本発明を適用した本実施の形態によれば、ヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18から後方に延びる車体フレーム11と、車体フレームに支持されたシート17と、シート17の前方且つ上方に配置された燃料タンク29と、燃料タンク29を覆うタンクカバー51と、を備える鞍乗り型車両10において、タンクカバー51は、燃料タンク29の上方に配置され前後方向に延びるセンタータンクカバー60と、センタータンクカバー60の左右方向両側に接続され燃料タンク29を左右方向外側から覆う左右一対のサイドタンクカバー70と、を備え、センタータンクカバー60には、燃料タンク29にアクセスするためのリッド開口部68と、リッド開口部68の周囲に設けられ前後方向に延びる凹部67と、凹部67の左右方向両側に設けられ前後方向に延びるエッジ部69と、が形成され、凹部67は底面67aを備え、底面67aは、車体後方に向けて上方に傾斜し、エッジ部69は上面69aを備え、上面69aは、車体後方に向けて上方に傾斜している。
この構成によれば、凹部67に被水があったとしても、リッド開口部68がある凹部67は車体後方に向けて上方に傾斜しているので、前下がり形状であり車体前方に排水を促すことができる。また、エッジ部69は凹部67の左右両側で車体後方に向けて上方に傾斜しているので、ヘッドライト56の側方やハンドル21の下方を流れる走行風が車体中央に流れてくるのを抑制でき、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。よって、上記構成によれば、リッド開口部68の周囲を排水し易く、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減し易い鞍乗り型車両10を提供することができる。
【0034】
本実施の形態では、エッジ部69の上面69aは、上面69aから底面67aまでの上下方向における長さが最も大きい最深位置67dよりも後方まで、車体後方に向けて上方に傾斜している。
この構成によれば、ヘッドライト56の側方やハンドル21の下方を流れる走行風を車体中央から遠ざけることが可能な斜め上方に流すことができるので、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。
【0035】
また、本実施の形態では、エッジ部69の上面69aは、最深位置67dよりも後方から、車体後方に向けて下方に傾斜している。
この構成によれば、シート17に近い部分を車体後方に向けて下方に傾斜させたので、運転者が前かがみで運転した場合にも、運連姿勢を阻害することを抑制できる。
【0036】
また、本実施の形態では、エッジ部69は、開口部68の後部まで、車体後方に向けて車幅方向外側に延びる。
この構成によれば、左右のエッジ部69の左右幅が車体後方に向けて幅広となるので、ヘッドライト56の側方やハンドル21の下方を流れる走行風が車体中央に流れてくるのを抑制でき、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。
【0037】
また、本実施の形態では、センタータンクカバー60は、カバー頂部63を備え、カバー頂部63には最深位置67dが形成され、カバー頂部63が、最も上方且つ最も幅広である。
この構成によれば、ヘッドライト56の側方やハンドル21の下方を流れる走行風を車体中央から遠ざけることが可能な斜め上方や斜め後方に流すことができるので、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。
【0038】
また、本実施の形態では、エッジ部69は、少なくともカバー頂部63まで、車体後方に向けて車幅方向外側に延びる。
この構成によれば、左右のエッジ部69の左右幅が車体後方に向けて幅広となるので、ヘッドライト56の側方やハンドル21の下方を流れる走行風が車体中央に流れてくるのを抑制でき、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。
【0039】
また、本実施の形態では、最深位置67dよりも前方において、凹部67の底面67aの傾斜角度θ2は、エッジ部69の上面69aの傾斜角度θ1に比べて小さい。
この構成によれば、最深位置67dよりも前方において、後方に進むに連れて凹部67を深くすることができ、運転者が前かがみで運転した場合に、凹部67を、運転者の顎部分にフィットさせ易くして、運転者に運転させ易くできる。
【0040】
また、本実施の形態では、最深位置67dよりも後方において、凹部67の底面67aの傾斜角度θ3、θ4は、最深部67dよりも前方の底面67aの傾斜角度θ2に比べて大きい。
この構成によれば、凹部67の後端67c付近から凹部67に水が侵入した場合には急な傾斜角度θ3、θ4により水を速やかに前方に誘導し、凹部67の前方に排水させ易くできる。
【0041】
また、本実施の形態では、リッド開口部68に設けられリッド開口部68を開閉可能に閉塞するフューエルリッド29aと、リッド開口部68よりも後方に形成された最深位置67dと、を備える。
この構成によれば、凹部67により排水され易いのでフューエルリッド29aの操作時に運転者が被水し難くできる。また、運転者が前かがみで運転した場合に、運転者の顎部分に最深位置67dを位置させ易く、運転者に運転させ易くできる。
【0042】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0043】
上記実施の形態では、内燃機関を有する鞍乗り型車両10を例示し、エネルギー貯蔵部の一例としての燃料タンク29を有する構成を説明したが、鞍乗り型車両は、エネルギーとしての電力を貯蔵するバッテリで駆動する電動車両でもよい。すなわち、鞍乗り型車両は、内燃機関に代えて電動モータをパワーユニットとして備え、エネルギー貯蔵部としては、電動モータに供給する駆動用の電力が貯蔵された駆動用のバッテリを備え、貯蔵部カバーとしては、バッテリを覆うカバーでもよい。よって、リッド開口部68には、燃料タンク29の給油口を開閉可能に閉塞するフューエルリッド29aが装着される構成を説明したが、カバーに設けられる開口部としては、バッテリの充電端子が接続可能な給電口に通ずる開口部でもよく、給電口を開閉可能に閉塞するリッドがその開口部に設けられてもよい。
【0044】
上記実施の形態では、鞍乗り型車両10として前輪13と後輪15とを有する自動二輪車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の鞍乗り型車両や4輪以上を備えた鞍乗り型車両に適用可能である。
【0045】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0046】
(構成1)ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びる車体フレームと、前記車体フレームに支持されたシートと、前記シートの前方且つ上方に配置されたエネルギー貯蔵部と、前記エネルギー貯蔵部を覆う貯蔵部カバーと、を備える鞍乗り型車両において、前記貯蔵部カバーは、前記エネルギー貯蔵部の上方に配置され前後方向に延びるセンター貯蔵部カバーと、前記センター貯蔵部カバーの左右方向両側に接続され前記エネルギー貯蔵部を左右方向外側から覆う左右一対のサイド貯蔵部カバーと、を備え、前記センター貯蔵部カバーには、前記エネルギー貯蔵部にアクセスするための開口部と、前記開口部の周囲に設けられ前後方向に延びる凹部と、前記凹部の左右方向両側に設けられ前後方向に延びる凸部と、が形成され、前記凹部は底面を備え、前記底面は、車体後方に向けて上方に傾斜し、前記凸部は上面を備え、前記上面は、車体後方に向けて上方に傾斜していることを特徴とする鞍乗り型車両。
この構成によれば、凹部に被水があったとしても、開口部がある凹部は車体後方に向けて上方に傾斜しているので、前下がり形状であり車体前方に排水を促すことができる。また、凸部は凹部の左右両側で車体後方に向けて上方に傾斜しているので、ヘッドライトの側方やハンドルの下方を流れる走行風が車体中央に流れてくるのを抑制でき、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。よって、上記構成によれば、開口部の周囲を排水し易く、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減し易い鞍乗り型車両を提供することができる。
【0047】
(構成2)前記凸部の前記上面は、前記上面から前記底面までの上下方向における長さが最も大きい最深部よりも後方まで、車体後方に向けて上方に傾斜していることを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ヘッドライトの側方やハンドルの下方を流れる走行風を車体中央から遠ざけることが可能な斜め上方に流すことができるので、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。
【0048】
(構成3)前記凸部の前記上面は、前記最深部よりも後方から、車体後方に向けて下方に傾斜していることを特徴とする構成2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、シートに近い部分を車体後方に向けて下方に傾斜させたので、運転者が前かがみで運転した場合にも、運連姿勢を阻害することを抑制できる。
【0049】
(構成4)前記凸部は、前記開口部の後部まで、車体後方に向けて車幅方向外側に延びることを特徴とする構成2または3に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、左右の凸部の左右幅が車体後方に向けて幅広となるので、ヘッドライトの側方やハンドルの下方を流れる走行風が車体中央に流れてくるのを抑制でき、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。
【0050】
(構成5)前記センター貯蔵部カバーは、カバー頂部を備え、前記カバー頂部には前記最深部が形成され、前記カバー頂部が、最も上方且つ最も幅広であることを特徴とする構成2から4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ヘッドライトの側方やハンドルの下方を流れる走行風を車体中央から遠ざけることが可能な斜め上方や斜め後方に流すことができるので、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。
【0051】
(構成6)前記凸部は、少なくとも前記カバー頂部まで、車体後方に向けて車幅方向外側に延びることを特徴とする構成5に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、左右の凸部の左右幅が車体後方に向けて幅広となるので、ヘッドライトの側方やハンドルの下方を流れる走行風が車体中央に流れてくるのを抑制でき、走行風による運転者の疲労蓄積を軽減できる。
【0052】
(構成7)前記最深部よりも前方において、前記凹部の前記底面の傾斜角度は、前記凸部の前記上面の傾斜角度に比べて小さいことを特徴とする構成2から6のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、最深部よりも前方において、後方に進むに連れて凹部を深くすることができ、運転者が前かがみで運転した場合に、凹部を、運転者の顎部分にフィットさせ易くして、運転者に運転させ易くできる。
【0053】
(構成8)前記最深部よりも後方において、前記凹部の底面の傾斜角度は、前記最深部よりも前方の前記底面の傾斜角度に比べて大きいことを特徴とする構成7に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、凹部の後端付近から凹部に水が侵入した場合には急な傾斜角度により水を速やかに前方に誘導し、凹部の前方に排水させ易くできる。
【0054】
(構成9)前記開口部に設けられ前記開口部を開閉可能に閉塞するリッドと、前記開口部よりも後方に形成された前記最深部と、を備えることを特徴とする構成2から8のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、凹部により排水され易いのでリッドの操作時に運転者が被水し難くできる。また、運転者が前かがみで運転した場合に、運転者の顎部分に最深部を位置させ易く、運転者に運転させ易くできる。
【符号の説明】
【0055】
10 鞍乗り型車両
11 車体フレーム
17 シート
18 ヘッドパイプ
29 燃料タンク(エネルギー貯蔵部)
29a フューエルリッド(リッド)
51 タンクカバー(貯蔵部カバー)
60 センタータンクカバー(センター貯蔵部カバー)
63 カバー頂部
67 凹部
67a 底面
67d 最深位置(最深部)
68 リッド開口部(開口部)
69 エッジ部(凸部)
69a 上面
70 サイドタンクカバー(サイド貯蔵部カバー)
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度
θ3 傾斜角度
θ4 傾斜角度