(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027642
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20250220BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
F25B1/00 321J
F25B1/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132601
(22)【出願日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東宮 武史
(72)【発明者】
【氏名】張 洪銘
(72)【発明者】
【氏名】黄 雲生
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 靖則
(72)【発明者】
【氏名】都丸 高洋
(72)【発明者】
【氏名】馮 興文
(72)【発明者】
【氏名】間島 裕大
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA22
3L211BA23
3L211CA16
3L211DA26
3L211DA27
3L211DA50
3L211EA50
3L211EA51
3L211EA56
3L211FB12
3L211GA26
3L211GA49
(57)【要約】
【課題】極低外気温環境下であっても、圧縮機内の潤滑油が固まることなく、圧縮機を正常な状態で起動することが可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る車両用空調装置は、圧縮機、室内熱交換部、及び、外部熱交換部を含む冷媒回路と、室内熱交換部を内部に配置した空調ユニットと、冷媒回路及び空調ユニットを制御する制御装置とを備える。この車両用空調装置は、圧縮機の停止時に、圧縮機内の潤滑油の温度を推定する潤滑油温度推定部を有し、潤滑油温度推定部により、潤滑油の温度が規定値以下であると判断すると、圧縮機内の潤滑油を加熱する潤滑油加熱モードを実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室内熱交換部、及び、外部熱交換部を含む冷媒回路と、
前記室内熱交換部を内部に配置した空調ユニットと、
前記冷媒回路及び前記空調ユニットを制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、
前記圧縮機の停止時に、前記圧縮機内の潤滑油の温度を推定する潤滑油温度推定部を有
し、
前記潤滑油温度推定部により、前記潤滑油の温度が規定値以下であると判断すると、前記圧縮機内の前記潤滑油を加熱する潤滑油加熱モードを実行することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記潤滑油温度推定部は、前記冷媒回路中の冷媒の状態、及び、外気温度の少なくとも1つから、前記潤滑油の温度を推定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記潤滑油加熱モードは、前記冷媒回路において、前記圧縮機の停止前に行っていた運転モードで冷媒を通過させた熱交換部に冷媒を流すことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記潤滑油加熱モードでは、冷媒が熱交換されることを禁止することを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記圧縮機から吐出された冷媒が前記室内熱交換部を迂回して前記圧縮機の吸入側に流れるバイパス経路を有し、
前記潤滑油加熱モードでは、前記冷媒回路において、前記圧縮機の停止前に行っていた運転モードで冷媒を通過させた熱交換部に冷媒を流した後、前記圧縮機から吐出された冷媒の全てを前記バイパス経路に流すことを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の燃焼系の熱源を備えない電動車両(EV:Electric Vehicle)や燃焼系の熱源の熱量が少ない車両用空調装置として、ヒートポンプ(冷媒回路)を熱源とする空調装置が知られている。
【0003】
一般に、ヒートポンプを利用した空調装置は、暖房運転時に外部熱交換器を吸熱器として機能させ、外気から暖房熱源を得ている。このため、外気温が極低温(例えば-40℃以下)になると、外気からの吸熱が難しくなり、暖房能力が大きく低下してしまう。
【0004】
このような極低外気温環境下では、例えばPTCヒータ等の電気式加熱器を用いて熱源を確保することが広く行われている。しかしながら、このような熱源を使用すると、バッテリの消費量が大きくなり、電動車両等の場合には航続可能距離への悪影響が懸念されると共に、PTCヒータの装備によって空調装置の製造コストが増加することになる。
【0005】
一方で、冷媒回路の圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を利用するホットガス暖房は、吸熱を行わない暖房方式であり、極低温環境下で有効な暖房として期待されている。このホットガス暖房は、車両用空調装置の車室内熱交換器を放熱器(室内コンデンサ)として機能させ、これに圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を直接流入させ、放熱器から出た冷媒を、減圧させた後に外部熱交換器を経由させることなく、アキュムレータを介して圧縮機に戻すものである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、極低外気温環境下(例えば-40℃以下)では、車両用空調装置が前述の何れの暖房運転を行ったとしても、その後に停車等により圧縮機を停止させると、その圧縮機内の潤滑油が冷却されて粘性が高まり、固まった潤滑油が圧縮機内の各部に付着してしまい、これにより、次に圧縮機を起動する際にトルク異常等を生じさせて起動不良となる虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、極低外気温環境下であっても、圧縮機内の潤滑油が固まることなく、圧縮機を正常な状態で起動することが可能な車両用空調装置を提供すること、を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用空調装置は、圧縮機、室内熱交換部、及び、外部熱交換部を含む冷媒回路と、前記室内熱交換部を内部に配置した空調ユニットと、前記冷媒回路及び前記空調ユニットを制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、前記圧縮機の停止時に、前記圧縮機内の潤滑油の温度を推定する潤滑油温度推定部を有し、前記潤滑油温度推定部により、前記潤滑油の温度が規定値以下であると判断すると、前記圧縮機内の前記潤滑油を加熱する潤滑油加熱モードを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、極低外気温環境下であっても、圧縮機内の潤滑油が固まることなく、圧縮機を正常な状態で起動することが可能な車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る車両用空調装置のシステム構成の例を示した説明図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用空調装置の制御装置の例を示す説明図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用空調装置の潤滑油加熱モードの実行制御処理について説明するためのフローチャートである。
【
図4】本実施形態に係る車両用空調装置の潤滑油加熱モード(第1例)について説明するためのフローチャートである。
【
図5】潤滑油加熱モード(第1例)におけるチラー冷媒回収運転における回路動作を説明するための説明図である。
【
図6】潤滑油加熱モード(第1例)における外部熱交換器冷媒回収運転における回路動作を説明するための説明図である。
【
図7】潤滑油加熱モード(第1例)におけるバイパス運転モードでの回路動作を説明するための説明図である。
【
図8】本実施形態に係る車両用空調装置の潤滑油加熱モード(第2例)について説明するためのフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係る車両用空調装置の潤滑油加熱モード(第3例)について説明するためのフローチャートである。
【
図10】滑油加熱モード(第3例)での回路動作を説明するための説明図である。
【
図11】本実施形態に係る車両用空調装置の潤滑油加熱モード(第4例)について説明するためのフローチャートである。
【
図12】本実施形態に係る車両用空調装置の潤滑油加熱モード(第5例)について説明するためのフローチャートである。
【
図13】滑油加熱モード(第5例)での回路動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は、同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
[システム構成]
図1に示すように、車両用空調装置1は、冷媒回路10及び空調ユニット20を備える。冷媒回路10は、圧縮機2と、空調ユニット20の内部に配置された室内熱交換器21,22(室内熱交換部)と、車室外に設けられる外部熱交換器11(外部熱交換部)を含み、これらが冷媒流路に沿って配置されている。室内熱交換器21,22は、空調ユニット20の空気流通路26を流れる空気と冷媒が熱交換するために設けられる。また、外部熱交換器11は、車室外にて外気と冷媒が熱交換するために設けられる。
【0014】
冷媒回路10の圧縮機2は、冷媒を圧縮して循環させる。圧縮機2にて圧縮された冷媒は、適宜選択される冷媒流路において、例えば膨張弁である、第1減圧部V1、第2減圧部V2、第3減圧部V3、第4減圧部V4を経由することで必要な圧力に減圧される。冷媒回路10には、冷媒流路を切り替えるための流路切替弁12,13が設けられ、また、冷媒の流通方向を規制するための逆止弁14,15が設けられている。そして、冷媒回路10における圧縮機2の直ぐ上流側には、液状冷媒を回収して冷媒を気液分離するアキュムレータ16が設けられている。
【0015】
空調ユニット20は、前述したように、室内熱交換器21,22を内部に備えており、送風機23によって室内又は室外から導入された空気が、室内熱交換器21,22を選択的に通過して室内に吹き出される。空調ユニット20は、空気流通路26内にエアダンパ24が設けられている。
図1に示すように、エアダンパ24の全開時には、送風機23によって導入された空気は、室内熱交換器21,22の両方を通過して室内に吹き出され、エアダンパ24の全閉時(図示せず)には、送風機23によって導入された空気は、室内熱交換器22のみを通過して室内に吹き出される。空調ユニット20に設けられるもう一つのエアダンパ25は、送風機23に導入する空気を室内外で切り替えるものであり、室外に繋がる空気導入口25Aと室内に繋がる空気導入口25Bを選択的に閉止する。
【0016】
なお、前述した外部熱交換器11及び室内熱交換器21,22では、冷媒と空気とが直接熱交換する例について説明したが、冷媒と熱交換した熱媒体を介して冷媒と空気とが間接的に熱交換してもよい。すなわち、熱媒体を介して空気の熱を冷媒に吸熱させたり、熱媒体を介して冷媒の熱を空気に放熱したりする構成としてもよい。
【0017】
また、車両用空調装置1は、熱媒体回路30を備える。熱媒体回路30は、循環ポンプ31を稼働して熱媒体流路(熱媒体配管)C1において熱媒体を循環させ、ヒータ(ECH:Electric Coolant Heater)32にて熱媒体を加熱したり、温調対象熱交換器33にてバッテリ等の温調対象物の廃熱回収等を行ったりする。また、冷媒回路10と熱媒体回路30には、冷媒が流れる流路34Aと熱媒体が流れる流路34Bにて冷媒と熱媒体との熱交換を行う冷媒熱媒体熱交換器(チラー熱交換器)34が設けられている。
【0018】
また、
図1のPTS42,43に示すように、冷媒回路10には、圧縮機2に吸入される側の冷媒温度を検出する冷媒温度センサ42(
図2)、及び、圧縮機2に吸入される側の冷媒圧力を検出する冷媒圧力センサ43(
図2)が設けられている。
【0019】
[制御装置]
車両用空調装置1は、
図2に示す制御装置(空調コントローラ)100を備える。制御装置100は、各種の入力信号G(空調指示信号や充電機接続信号等)とセンサ部40からの検出信号に基づいて、冷媒回路10、空調ユニット20及び熱媒体回路30を制御する。
【0020】
制御装置100に検出信号を入力するセンサ部40は、例えば、外気温度を検出する外気温度センサ41、冷媒回路10における冷媒温度を検出する冷媒温度センサ42、及び、冷媒回路10における冷媒圧力を検出する冷媒圧力センサ43を備えている。また、センサ部40は、制御装置100が各種制御を行う際に必要な情報を検出するその他の各種センサ(図示せず)が備えられている。
【0021】
制御装置100は、
図2に示すように、冷媒回路10においては、圧縮機2、第1減圧部V1、第2減圧部V2、第3減圧部V3、第4減圧部V4、流路切替弁12,13等を制御し、空調ユニット20においては、送風機23、エアダンパ24,25等を制御し、熱媒体回路30においては、循環ポンプ31等を制御する。また、制御装置100は、制御装置100の処理結果に従って、車両用空調装置1を制御する。
【0022】
[外気吸熱暖房運転]
車両用空調装置1は、制御装置(空調コントローラ)100の制御により、外気からの吸熱を行う外気吸熱暖房運転を実行可能である。
図1において、外気吸熱暖房運転では、制御装置100の制御により、流路切替弁12が閉、流路切替弁13が開に制御され、第1減圧部V1が適正開度に制御され、第2減圧部V2、第3減圧部V3及び第4減圧部V4が全閉に制御されていると共に、外部熱交換器11が備えるグリルシャッタ(図示せず)が開の状態に制御されている。
【0023】
これにより、冷媒回路10を循環する冷媒は、圧縮機2から吐出されると冷媒配管R1,R2を流れ、室内熱交換器21を経由して冷媒配管R3から冷媒配管R5に入り、第1減圧部V1を経由して外部熱交換器11を通過する。外部熱交換器11において外気(空気)と熱交換された冷媒は、冷媒配管R6から冷媒配管R7に入り、流路切替弁13及び逆止弁14を通過した後に冷媒配管R10からアキュムレータ16に入る。そして、アキュムレータ16にて気液分離がなされた冷媒は、冷媒配管R1から圧縮機2に戻る。よって、この外部吸熱暖房運転では、チラー熱交換器34への冷媒の流入は遮断されている。
【0024】
この外気吸熱暖房運転では、圧縮機2にて圧縮された高温高圧冷媒が、放熱器として機能する空調ユニット20内の室内熱交換器21に送られ、送風機23の駆動で空気導入口25Bから空調ユニット20内に取り込まれた空気が、室内熱交換器21を通過することで加熱されて車室内に吹き出される。この際、空調ユニット20の空気導入口25Aは、エアダンパ25によって閉じられており、空気流通路26内のエアダンパ24は、室内熱交換器21に向かう空気の流路のみを開放している。
【0025】
[ホットガス暖房運転]
また、車両用空調装置1は、制御装置(空調コントローラ)100の制御により、ホットガス暖房運転を実行可能である。このホットガス暖房運転は、外部熱交換器11において冷媒に吸熱させず、圧縮機2で圧縮した冷媒の一部又は全部を室内熱交換器21で放熱させて車室内を暖房するものである。
【0026】
図1において、ホットガス暖房運転では、制御装置100の制御により、流路切替弁12が開に制御され、第3減圧部V3が適正開度に制御されている。また、制御装置100の制御により、流路切替弁13が閉、第1減圧部V1が全閉に制御され、外部熱交換器11に冷媒を流さない状態とされている。また、制御装置100の制御により、第4減圧部V4が全閉に制御され、室内熱交換器22に冷媒を流さない状態とされている。
【0027】
このホットガス暖房運転では、制御装置100の制御により、圧縮機2から吐出された高温高圧冷媒は、冷媒配管R1を流れ、その一部が分岐点P1から冷媒配管R2を流れて室内熱交換器21を通った後、冷媒配管R3から流路切替弁12を通って冷媒配管R4,R8を流れ、第3減圧部V3にて減圧されて低圧冷媒になり、冷媒配管R8からチラー熱交換器34の流路34Aに入り、冷媒配管R9,R10を流れてアキュムレータ16に入り、このアキュムレータ16にて気液分離がなされた後、冷媒配管R1から圧縮機2に戻る。
【0028】
このホットガス暖房運転を行う車両用空調装置1において、冷媒回路10は、圧縮機2から吐出された冷媒の少なくとも一部を、室内熱交換器21(室内熱交換部)及び外部熱交換器11(外部熱交換部)を経由させることなく(迂回して)減圧し、圧縮機2の吸入側に流すホットガスバイパス10V(バイパス経路)を有する。ホットガスバイパス10Vでは、圧縮機2の直ぐ下流の分岐点P1で高温高圧冷媒の一部を分岐し、第2減圧部V2(ホットガス弁)で減圧し、アキュムレータ16の直ぐ上流側の合流点P2で、第3減圧部V3で減圧された低圧冷媒に合流させる。
【0029】
このようなホットガスバイパス10Vを設けることで、室内熱交換器21での放熱で凝縮した液冷媒に、ホットガスバイパス10Vを経由したガス冷媒を混合させて、ガスリッチの冷媒にしてから圧縮機2に戻すことができるようになる。また、ホットガスバイパス10Vを流れる冷媒流量を増やすことで、室内熱交換器21での放熱量を抑制することができ、制御装置100の制御により第2減圧部V2(ホットガス弁)を開閉させて、ホットガスバイパス10Vを流れる冷媒流量を調整することで、冷媒回路10の放熱量と圧縮機2の入熱量のバランスを維持させることができる。
【0030】
ホットガス暖房運転時の冷媒の流れは、室内熱交換器21を経由する流路では、第3減圧部V3で減圧されるので、それより上流側は高圧冷媒になり、それより下流側は低圧冷媒になる。この際、暖房能力を維持するために、低圧側流路におけるチラー熱交換器34では熱交換がなされない。そして、空調ユニット20においては、送風機23にて導入された空気が、室内熱交換器21での放熱で加熱されて、車室内に吹き出される。
【0031】
[潤滑油加熱モードの実行制御処理]
通常、極低外気温(例えば-40℃以下)の環境下で、停車等により空調等の運転モードが停止(すなわち圧縮機2が停止)した状態であると、圧縮機2内に存在する潤滑油(オイル)は、その粘度が高まり凝固することから、その固まった潤滑油が圧縮機2内の各部に付着してトルク異常等を生じさせ、起動不良となる虞がある。そこで、本実施形態における車両用空調装置1では、このような極低外気温環境下で運転モードを停止している状態(すなわち圧縮機2の停止時)において、制御装置(空調コントローラ)100の制御に基づいて、圧縮機2内の潤滑油を加熱して固まらせないようにする潤滑油加熱モードを実行する。以下、この潤滑油加熱モードの実行制御処理(
図3)について説明する。
【0032】
制御装置(空調コントローラ)100は、潤滑油加熱モードの実行制御処理を開始すると、ステップS101において、潤滑油加熱モードを実行する必要があるかを判断するために、外気温度センサ41にて検出された外気温度から、現在の圧縮機2停止中となっている環境が、予め設定した極低外気温(-40℃以下)下であるか否かを判断する。
【0033】
制御装置100は、現在の圧縮機2停止中となっている環境がこの極低外気温(-40℃以下)下であると判断すると(ステップS101でYES)、潤滑油加熱モードを実行する必要があるかを更に判断するためにステップS102に進み、現在の圧縮機2停止中となっている環境がこの極低外気温(-40℃以下)下でないと判断すると(ステップS101でNO)、潤滑油加熱モードを実行する必要がないと判断して
図3の一連の処理を終了する。なお、ここでは極低外気温を-40℃以下としたが、この温度値は一例であり、例えば極低外気温を-35℃以下としてもよい。
【0034】
制御装置(空調コントローラ)100は、ステップS101に続くステップS102において、圧縮機2内の潤滑油の状態が、液体から固体になりそうな状態(固まりそうな状態)になっているか又は既に固体の状態(固まった状態)になっているかを推定するために、圧縮機2内の潤滑油の温度を推定し、その推定した温度が予め設定した規定値以下であるか否かを判断する。なお、圧縮機2内の潤滑油の温度を推定する制御装置100は、潤滑油温度推定部を構成する。
【0035】
ここで、規定値は、例えば、圧縮機2内の潤滑油の凝固点よりも2.5℃高い流動点であってよい。この場合、制御装置100(潤滑油温度推定部)により推定される潤滑油の温度が、凝固点よりも高く流動点以下であるときには、潤滑油は固体になる少し手前の既に流動性が失われかけている状態になっていると推定してよい。また、制御装置100(潤滑油温度推定部)により推定される潤滑油の温度が凝固点以下であるときには、潤滑油は既に固体の状態(固まっている状態)になっていると推定してよい。なお、規定値の定義は、これに限定されず、凝固点より予め定められた所定値(数℃)だけ高い温度としてよい。
【0036】
制御装置100は、推定した圧縮機2内の潤滑油の温度が規定値以下であると判断することで、潤滑油が固まりそうな状態又は既に固まっている状態になっていると判断すると(ステップS102でYES)、潤滑油を加熱するためにステップS103に処理を進める。その一方、制御装置100は、推定した圧縮機2内の潤滑油の温度が規定値以下でない(すなわち規定値よりも高い)と判断することで、潤滑油が未だ固まりそうな状態になっていないと判断すると(ステップS102でNO)、潤滑油を加熱する必要がないため、
図3に示す一連の処理を終了する。
【0037】
このステップS102において、制御装置100は、冷媒回路10中の冷媒の状態、及び、外気温度センサ41にて検出する外気温度の少なくとも1つから、圧縮機2内の潤滑油の温度を推定してよい。冷媒回路10中の冷媒の状態の例としては、例えば、冷媒温度センサ42にて検出される、圧縮機2に吸入される冷媒の温度(冷媒温度)、及び、冷媒圧力センサ43にて検出される、圧縮機2に吸入される冷媒の温度を推定可能な冷媒圧力の少なくとも一方又は両方であってよい(
図1の「PTS42,43」)。なおこの例に限定されず、冷媒回路10内のその他の箇所に、冷媒温度センサ42及び冷媒圧力センサ43の少なくとも一方を設けるようにしてよく、そのセンサによって検出される冷媒温度又及び冷媒圧力の少なくとも一方又は両方から、制御装置100によって圧縮機2内の潤滑油の温度を推定してもよい。
【0038】
またこの例に限定されず、制御装置100は、例えば、ステップS102において、先のステップS101で外気温度センサ41にて検出された外気温度が極低外気温(-40℃以下)中の特定値(例えば-45℃)以下であることを確認することで、圧縮機2内の潤滑油の温度が規定値以下であると推定してよい。
【0039】
或いは、制御装置100は、例えばステップS101でYESであると判断することで(すなわち極低外気温(-40℃以下)の環境下であることにより)、圧縮機2内の潤滑油の温度が規定値以下であると推定してもよい。この場合、制御装置100は、ステップS101後、ステップS102の処理を省略してステップS103に処理を進める。
【0040】
ステップS102に続くステップS103において、制御装置100は、圧縮機2内の潤滑油を加熱する潤滑油加熱モードを実行する。制御装置100は、ステップS103の処理後、
図3に示す一連の処理を終了する。なお、制御装置100は、
図3の一連の処理を終了すると、所定の時間間隔(例えば、数秒毎又は数分毎)に、
図3の一連の処理を開始する。以下に、ステップS103における潤滑油加熱モードの処理例について説明する。
【0041】
[潤滑油加熱モード(第1例)]
第1例の潤滑油加熱モード(ステップS103)の処理内容について説明する。この第1例の潤滑油加熱モードは、圧縮機2を稼働することで圧縮機2内の潤滑油を加熱する際、冷媒回路10において、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードで通過させた熱交換部に冷媒を流す冷媒回収運転を行うものである。この圧縮機2の停止前に行っていた運転モードで冷媒を通過させた熱交換部は、その運転モード終了後、比較的冷却され易い箇所であるため、その熱交換部内には冷媒が溜まり易くなっている。そのため、この冷媒回収運転において、その熱交換部に溜まっていると推定される冷媒をアキュムレータ16に回収する。
【0042】
また、この第1例の潤滑油加熱モードは、冷媒回収後にはバイパス経路に冷媒を流すバイパス運転モードで圧縮機2を稼働するものである。この第1例の潤滑油加熱モードでは、冷媒が熱交換されることを禁止しており、この冷媒回収運転では、冷媒回路10において、圧縮機2から吐出された冷媒が熱交換されない状態で流れ、アキュムレータ16に回収される。
【0043】
具体的に、この第1例の潤滑油加熱モードでは、
図4に示すステップS201において、制御装置100は、今回の潤滑油加熱モード実行前の運転モードが同じく潤滑油加熱モードであるか(すなわち、既に冷媒回収運転を実行したか)否かを判断することにより、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードにより、その運転モード終了後に熱交換部に溜まったと推定される冷媒が、既にアキュムレータ16に回収されているか(冷媒回収済みであるか)否かを判断する。
【0044】
制御装置100は、未だ冷媒回収運転を実行していないと判断することで、未だ冷媒回収済みでないと判断すると(ステップS201でNO)、圧縮機2内の潤滑油を加熱しつつ、冷媒回路10において、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードで通過させた熱交換部に冷媒を流すことで、その熱交換部に溜まっていると推定される冷媒をアキュムレータ16に回収するために、ステップS202に処理を進める。その一方、制御装置100は、既に冷媒回収運転を実行していたと判断することで、冷媒回収済みであると判断すると(ステップS201でYES)、冷媒回路10内の冷媒をアキュムレータ16に回収する必要がないため、潤滑油の加熱に必要な消費エネルギーの低減化を目的として、圧縮機2の稼働時に冷媒が流れる冷媒流路を可能な限り短くするため、ステップS206に処理を進める。
【0045】
ステップS201に続くステップS202において、制御装置100は、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードが外気吸熱暖房運転であったか否かを判断する。制御装置100は、この圧縮機2の停止前に行っていた運転モードが外気吸熱暖房運転でないと判断することで、この圧縮機2の停止前に行っていた運転モードがホットガス暖房運転であったと判断すると(ステップS202でNO)、このホットガス暖房運転で通過させた熱交換部であるチラー熱交換器34の流路34Aに冷媒を流すために、ステップS203に処理を進める。その一方で、制御装置100は、この圧縮機2の停止前に行っていた運転モードが外気吸熱暖房運転であったと判断すると(ステップS202でYES)、この外気吸熱暖房運転で通過させた熱交換部である外部熱交換器11に冷媒を流すために、ステップS204に処理を進める。
【0046】
前述のステップS202でNOの場合、制御装置100は、その後のステップS203にて熱媒体回路30の循環ポンプ31が停止状態であることを確認することで、冷媒とチラー熱交換器34の流路34B内の熱媒体との熱交換が禁止されることを確認する。その上で、制御装置100は、続くステップS205にて圧縮機2を稼働することで、チラー冷媒回収運転を行う。なお、
図4で図示しないが、このチラー冷媒回収運転では、制御装置100により、流路切替弁12、第3減圧部V3、流路切替弁13、第1減圧部V1、第4減圧部V4等の状態は、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードであるホットガス暖房運転時と同一状態に制御されており、第2減圧部V2は全閉に制御される(なお、第3減圧部V3は全開に制御してもよい)。また、制御装置100により、熱媒体回路30及び空調ユニット20は、動作しない状態とされている。
【0047】
このチラー冷媒回収運転では、圧縮機2を稼働することで、圧縮機2内における摩擦や通電による発熱(自己発熱)で圧縮機2内の潤滑油を加熱する。これと共に、このチラー冷媒回収運転では、
図5の黒色太線に示すように、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードであるホットガス暖房運転で冷媒を通過させた熱交換部であるチラー熱交換器34の流路34Aに冷媒を流す。チラー熱交換器34の流路34Aには、この圧縮機2の停止前に行っていた運転モードであるホットガス暖房運転により、その運転終了後に冷媒が溜まったと推定される。そのため、チラー冷媒回収運転では、チラー熱交換器34の流路34Aに冷媒を流すことで、流路34Aから冷媒をアキュムレータ16に回収する。
【0048】
また、チラー冷媒回収運転では、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードであるホットガス暖房運転において、仮に、圧縮機2から冷媒に混入した状態で微量の潤滑油が吐出されたとしても、このチラー冷媒回収運転によって、この冷媒に混入している潤滑油もアキュムレータ16に回収することができる。
【0049】
図5に示すように、圧縮機2から吐出された冷媒は、冷媒配管R1,R2を流れて室内熱交換器21を通った後、冷媒配管R3から流路切替弁12を通って冷媒配管R4,R8を流れ、第3減圧部V3を通過し、冷媒配管R8からチラー熱交換器34の流路34Aに入り、冷媒配管R9,R10を流れてアキュムレータ16に回収される。
【0050】
前述のステップS202でYESの場合、制御装置100は、その後のステップS204にて外部熱交換器11が備えるグリルシャッタ(図示せず)を閉鎖して冷媒と外気(空気)との熱交換を禁止する。その上で、制御装置100は、続くステップS205にて圧縮機2を稼働することで、外部熱交換器冷媒回収運転を行う。なお、
図4で図示しないが、この外部熱交換器冷媒回収運転では、制御装置100により、流路切替弁12、流路切替弁13、第1減圧部V1、第3減圧部V3、第4減圧部V4の状態は、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードである外部吸熱暖房運転時と同一状態に制御されている(なお、第1減圧部V1は全開に制御してもよい)。また、制御装置100により、熱媒体回路30及び空調ユニット20は、動作しない状態とされている。
【0051】
この外部熱交換器冷媒回収運転では、圧縮機2を稼働することで、圧縮機2内における摩擦や通電による発熱(自己発熱)で圧縮機2内の潤滑油を加熱する。これと共に、この外部熱交換器冷媒回収運転では、
図6の黒色太線に示すように、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードである外気吸熱暖房運転で冷媒を通過させた熱交換部である外部熱交換器11に冷媒を流す。外部熱交換器11には、この圧縮機2の停止前に行っていた運転モードである外気吸熱暖房運転により、その運転終了後に冷媒が溜まったと推定される。そのため、外部熱交換器冷媒回収運転では、外部熱交換器11に冷媒を流すことで、外部熱交換器11から冷媒をアキュムレータ16に回収する。
【0052】
また、外部熱交換器冷媒回収運転では、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードである外部吸熱暖房運転において、仮に、圧縮機2から冷媒に混入した状態で微量の潤滑油が吐出されたとしても、この外部熱交換器冷媒回収運転によって、この冷媒に混入している潤滑油もアキュムレータ16に回収することができる。
【0053】
図6に示すように、圧縮機2から吐出された冷媒は、冷媒配管R1,R2を流れて室内熱交換器21を通った後、冷媒配管R3を流れて冷媒配管R5に入り、第1減圧部V1を通過した後にグリルシャッタが閉鎖されている外部熱交換器11を通過し、その後冷媒配管R6から冷媒配管R7に入り、流路切替弁13及び逆止弁14を通過して冷媒配管R10からアキュムレータ16に回収される。
【0054】
制御装置100は、このように、冷媒回路10において、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードで通過させた熱交換部に冷媒を(熱交換が禁止された状態で)流し、その冷媒がアキュムレータ16に回収された後には、圧縮機2から吐出された冷媒の全てをバイパス経路に流すバイパス運転モードで圧縮機2を稼働させる。すなわち、前述のステップS201でYESの場合(冷媒回収済みである場合)、制御装置100は、続くステップS206において、潤滑油を加熱するための消費エネルギーを低減させるために、圧縮機2稼働時に冷媒が流れる冷媒流路を可能な限り短くしたバイパス運転モードで圧縮機2を稼働するようにする。
【0055】
このバイパス運転モードでは、制御装置100の制御により、第2減圧部V2を全開とし、流路切替弁12及び流路切替弁13を閉、第1減圧部V1、第3減圧部V3及び第4減圧部V4を全閉とする。これにより、バイパス運転モードでは、圧縮機2を稼働することで、圧縮機2内における摩擦や通電による発熱(自己発熱)で圧縮機2内の潤滑油を加熱し、この際に、
図7の黒色太線に示すように、前述したホットガスバイパス10V(バイパス経路)に冷媒が流れるようになる。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、冷媒配管R1,R11から第2減圧部V2(ホットガス弁)を通過し、冷媒配管R10からアキュムレータ16を通過した後、冷媒配管R1から圧縮機2に戻る。
【0056】
ステップS205又はステップS206に続くステップS207において、制御装置100は、圧縮機2内の潤滑油が固まっていない状態になったかを推定するために、圧縮機2内の潤滑油の温度を推定し、その推定した温度が先のステップS102で述べた規定値よりも高いか否かを判断する。なお、このステップS207での潤滑油の温度の推定は、前述のステップS102と同様の方法で推定するようにしてよい。
【0057】
制御装置100は、推定した圧縮機2内の潤滑油の温度が規定値よりも高いと判断することで、圧縮機2内の潤滑油が固まっていない状態になったと判断すると(ステップS207でYES)、潤滑油加熱モードを終了するためにステップS208に処理を進める。その一方、制御装置100は、推定した圧縮機2内の潤滑油の温度が規定値よりも高くない(すなわち規定値以下である)と判断することで、圧縮機2内の潤滑油が未だ固まりそうな状態又は固まっている状態にあると判断すると(ステップS207でNO)、再びステップS207の処理を行う。すなわち、制御装置100により、圧縮機2内の潤滑油が固まっていない状態になったと判断されるまで、ステップS207の処理は繰り返される。
【0058】
ステップS207に続くステップS208において、制御装置100は、圧縮機2の稼働を停止する処理を行う。制御装置100は、このステップS208の処理後、
図4に示す一連の処理を終了する。
【0059】
このような第1例の潤滑油加熱モードによれば、極低外気温環境下において圧縮機2を停止した状態であっても、次に空調等の運転モードを開始する場合に、圧縮機2内の潤滑油が固まることなく圧縮機2を正常な状態で起動することができる。これと共に、この第1例の潤滑油加熱モードによれば、圧縮機2の停止前に行っていた運転モードによって熱交換部に溜まった冷媒を、その熱交換部に冷媒を流すことでアキュムレータ16に回収するため、次の空調等の運転モードで冷媒回路10に流す冷媒が不足することを防止することができる。また、この第1例の潤滑油加熱モードによれば、アキュムレータ16に冷媒が既に回収済みである場合には、バイパス運転モードで圧縮機2を稼働することにより、潤滑油を加熱するための消費エネルギーを低減させることができる。
【0060】
[潤滑油加熱モード(第2例)]
第2例の潤滑油加熱モード(ステップS103)の処理内容について説明する。この第2例の潤滑油加熱モードは、第1例の潤滑油加熱モードと異なり、バイパス運転モードによる圧縮機2の稼働のみを行うものである。すなわち、第2例の潤滑油加熱モードでは、冷媒の回収処理を行うことなく、前述の
図7の黒色太線に示す冷媒流路に冷媒を流すバイパス運転モードによって圧縮機2内の潤滑油の加熱のみを行うようにする。
【0061】
具体的に、
図8に示すように、ステップS301において、制御装置100は、前述のステップS206(
図4)と同様の処理を行い(つまり
図7の黒色太線の冷媒流路に冷媒を流すバイパス運転モードで圧縮機2を稼働し)、続くステップS302において、前述のステップS207と同様の処理(規定値<潤滑油温度か否かの判断)を行う。制御装置100は、ステップS302でNOの場合には、再びステップS302の処理を行い、ステップS302でYESの場合には、続くステップS303において前述のステップS208と同様の処理(圧縮機2の停止)を行った後に
図8に示す一連の処理を終了する。このような第2例の潤滑油加熱モードによれば、バイパス運転モードで圧縮機2を稼働することから、圧縮機2内の潤滑油を加熱するための消費エネルギーを低減させることができる。
【0062】
[潤滑油加熱モード(第3例)]
第3例の潤滑油加熱モード(ステップS103)の処理内容について説明する。この第3例の潤滑油加熱モードは、第1例及び第2例の潤滑油加熱モードと異なり、冷媒回路10に冷媒を流すことなく、圧縮機2内に設けられたモータの巻線(図示せず)に通電を行うことで圧縮機2内の潤滑油を加熱するものである。
【0063】
この第3例の潤滑油加熱モードでは、
図9に示すように、制御装置100は、ステップS401において、圧縮機2の稼働に際し、その内部に備えるモータ(図示せず)を回転させないロック状態とするように圧縮機2を制御する。この際、
図10の破線に示すように、冷媒回路10は、冷媒が流れない状態である。勿論、この際に熱媒体回路30及び空調ユニット20は、動作しない状態である。この状態で、続くステップS402において、制御装置100は、このロック状態の圧縮機2内のモータの巻線に通電を行うことで圧縮機2内の潤滑油を加熱する。このように、第3例の潤滑油加熱モードでは、圧縮機2をロック状態で稼働することで、圧縮機2自体をヒータとして使用し、冷媒回路10に冷媒を流すことなく圧縮機2内の潤滑油の加熱のみを行うようにする。
【0064】
続くステップS403において、制御装置100は、前述のステップS207と同様の処理(規定値<潤滑油温度か否かの判断)を行う。制御装置100は、ステップS403でNOの場合には、再びステップS403の処理を行い、ステップS403でYESの場合には、続くステップS404において、圧縮機2内に設けられたロック状態のモータの巻線への通電を停止した後に、ステップS405において前述のステップS208と同様の処理(圧縮機2の停止)を行い、その後
図9に示す一連の処理を終了する。
【0065】
このような第3例の潤滑油加熱モードによれば、圧縮機2自体をヒータとして使用するといった簡易な構成及び簡易な処理により、容易に圧縮機2内の潤滑油を加熱して、潤滑油の固まりを防止することができる。そして、この第3例の潤滑油加熱モードによれば、冷媒回路10に冷媒を流さないことから、圧縮機2内の潤滑油を加熱するための消費エネルギーを低減させることができる。
【0066】
[潤滑油加熱モード(第4例)]
第4例の潤滑油加熱モード(ステップS103)の処理内容について説明する。この第4例の潤滑油加熱モードは、第1例及び第2例の潤滑油加熱モードと異なり、冷媒回路10に冷媒を流さず、また第3例の潤滑油加熱モードと異なり、圧縮機2の外面に圧縮機用ヒータ(図示せず)を設け、その圧縮機用ヒータに通電を行うことで圧縮機2内の潤滑油を加熱するものである。圧縮機用ヒータとしては、例えば、圧縮機2の外面に巻き付けて使用するリボンヒータ(図示せず)が使用可能であるが、これに限定されず、他のヒータを使用してもよい。
【0067】
この第4例の潤滑油加熱モードでは、制御装置100の制御により圧縮機2は停止しており、冷媒回路10には冷媒が流れない状態となっている。また、熱媒体回路30は、熱媒体が流れない状態であり、空調ユニット20は、動作しない状態である。その上で、この第4例の潤滑油加熱モードでは、
図11に示すステップS501において、制御装置100は、圧縮機2の外面に設けた圧縮機用ヒータに通電を行うことで圧縮機2内の潤滑油を加熱する。
【0068】
そして、続くステップS502において、制御装置100は、前述のステップS207と同様の処理(規定値<潤滑油温度か否かの判断)を行う。制御装置100は、ステップS502でNOの場合には、再びステップS502の処理を行い、ステップS502でYESの場合には、続くステップS503において、圧縮機用ヒータへの通電を停止し、
図11に示す一連の処理を終了する。
【0069】
このような第4例の潤滑油加熱モードによれば、圧縮機2の外面に設けたヒータ(圧縮機用ヒータ)に通電するといった簡易な構成及び簡易な処理により、容易に圧縮機2内の潤滑油を加熱して、潤滑油の固まりを防止することができる。そして、この第4例の潤滑油加熱モードによれば、冷媒回路10に冷媒を流さないことから、圧縮機2内の潤滑油を加熱するための消費エネルギーを低減させることができる。
【0070】
[潤滑油加熱モード(第5例)]
第5例の潤滑油加熱モード(ステップS103)の処理内容について説明する。この第5例の潤滑油加熱モードは、第1例、第2例の潤滑油加熱モードと異なり、冷媒回路10に冷媒を流さず、また
図12を用いて後述するように、第3例、第4例の潤滑油加熱モードと異なり、圧縮機2が、熱媒体回路30のヒータ(ECH:Electric Coolant Heater)32にて加熱された熱媒体の熱を受けることで、圧縮機2内の潤滑油を加熱するものである。すなわち、この第5例の潤滑油加熱モードは、第4例の潤滑油モードの圧縮機用ヒータに代えてヒータ(ECH)32にて加熱された熱媒体を熱源として使用するものである。
【0071】
この第5例の潤滑油加熱モードを実行する車両用空調装置1において、熱媒体回路30は、
図13に示すように、熱媒体流路(熱媒体配管)C1の他に、圧縮機2に接触する熱媒体流路(熱媒体配管)C2を備えると共に、三方弁35,36を備える。また、熱媒体流路C2を循環する熱媒体を加熱する熱媒体用ポンプ37を備える。なお、三方弁35とヒータ32との間、及び、三方弁36とヒータ(ECH)32との間は、熱媒体流路(熱媒体配管)C1,C2は共通の配管となっている。
【0072】
この第5例の潤滑油加熱モードでは、制御装置100の制御により圧縮機2は停止しており、冷媒回路10には冷媒が流れない状態となっている。また、制御装置100の制御により、三方弁35,36のヒータ(ECH)32に繋がる側の弁と熱媒体用ポンプ37に繋がる側の弁とが開とされ、三方弁35の循環ポンプ31に繋がる側の弁と三方弁36のチラー熱交換器34の流路34Bに繋がる側の弁とが閉とされる。また制御装置100の制御により、循環ポンプ31及び温調対象熱交換器33が動作しない状態とされ、ヒータ32と熱媒体用ポンプ37が稼働した状態とされる。これにより、熱媒体は、熱媒体流路C1でなく熱媒体流路C2を循環するようになる。この熱媒体流路C2と接触する圧縮機2内の潤滑油が加熱される。
【0073】
具体的に、この第5例の潤滑油加熱モードでは、
図12に示すように、制御装置100は、ステップS601にてヒータ(ECH)32を稼働した後、ステップS602にて熱媒体用ポンプ37を稼働することで、熱媒体流路C2において、ヒータ32によって加熱された熱媒体を循環させる。これにより、圧縮機2は、この加熱された熱媒体が流れる熱媒体流路C2から熱を受け、圧縮機2内の潤滑油が加熱される。
【0074】
そして、続くステップS603において、制御装置100は、前述のステップS207と同様の処理(規定値<潤滑油温度か否かの判断)を行う。制御装置100は、ステップS603でNOの場合には、再びステップS603の処理を行う。その一方、制御装置100は、ステップS603でYESの場合には、続くステップS604において熱媒体用ポンプ37の稼働を停止した後、ステップS605においてヒータ(ECH)32の稼働を停止する。これにより、加熱された熱媒体の熱による圧縮機2内の潤滑油の加熱が停止される。
【0075】
このような第5例の潤滑油加熱モードによれば、簡易な処理により、容易に圧縮機2内の潤滑油を加熱して、潤滑油の固まりを防止することができる。そして、この第5例の潤滑油加熱モードによれば、冷媒回路10に冷媒を流さないことから、圧縮機2内の潤滑油を加熱するための消費エネルギーを低減させることができる。
【0076】
以上、本実施形態及びその変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は前述の例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0077】
例えば、前述の第1例~第5例の潤滑油加熱モードにおいて、更に圧縮機2の外面全体を保温材(図示せず)で覆うようにしてもよい。保温材は、例えば不燃性の保温シート(図示せず)であってよいが、その他の構成であってもよい。圧縮機2の外面全体を保温材(図示せず)で覆うことで、圧縮機2表面からの放熱を抑制して圧縮機2を冷え難い状態とすることができ、また、圧縮機2を加熱するための消費エネルギーをより低減することができる。
【符号の説明】
【0078】
1:車両用空調装置、2:圧縮機、10:冷媒回路、10V:ホットガスバイパス、11:外部熱交換器、12,13:流路切替弁、14,15:逆止弁、16:アキュムレータ、20:空調ユニット、21,22:室内熱交換器、23:送風機、24,25:エアダンパ、25A,25B:空気導入口、26:空気流通路、30:熱媒体回路、31:循環ポンプ、32:ヒータ、33:温調対象熱交換器、34:冷媒熱媒体熱交換器、34A,34B:流路、35,36:三方弁、37:熱媒体用ポンプ、40:センサ部、41:外気温度センサ、42:冷媒温度センサ、43:冷媒圧力センサ、100:制御装置