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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027645
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20250220BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
F25B1/00 341C
F25B1/00 341U
F25B1/00 341S
F25B1/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132604
(22)【出願日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 洪銘
(72)【発明者】
【氏名】黄 雲生
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 靖則
(72)【発明者】
【氏名】都丸 高洋
(72)【発明者】
【氏名】馮 興文
(72)【発明者】
【氏名】間島 裕大
(72)【発明者】
【氏名】東宮 武史
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA02
3L211BA22
3L211BA23
3L211DA26
3L211DA27
3L211EA50
3L211EA51
3L211EA56
3L211FB02
3L211FB05
3L211GA34
(57)【要約】
【課題】ホットガス暖房運転を安定的かつ効果的に継続させると共に、圧縮機の耐久性を向上させる。
【解決手段】圧縮機と、室内熱交換部と、外部熱交換部と、圧縮機で圧縮した冷媒の少なくとも一部を室内熱交換部及び外部熱交換部を経由することなく減圧して圧縮機に戻すホットガスバイパスと、を含む冷媒回路と、冷媒回路を制御し、圧縮機で圧縮した冷媒の一部を室内熱交換部に流すと共に残りをホットガスバイパスに流すホットガス暖房モードを実行可能である制御装置と、を備え、制御装置は、ホットガス暖房モードの実行時に、圧縮機に対して、吸入冷媒圧力に基づく第1目標回転数と吸入冷媒温度に基づく第2目標回転数をそれぞれ算出し、吸入冷媒圧力が第1閾値圧力を超える場合、又は、吸入冷媒温度が第1閾値温度を超える場合に、第1目標回転数又は第2目標回転数の何れか小さい方を目標回転数として圧縮機を制御する、車両用空調装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室内熱交換部と、外部熱交換部と、前記圧縮機で圧縮した冷媒の少なくとも一部を前記室内熱交換部及び前記外部熱交換部を経由することなく減圧して前記圧縮機に戻すホットガスバイパスと、を含む冷媒回路と、
前記冷媒回路を制御し、前記圧縮機で圧縮した冷媒の一部を前記室内熱交換部に流すと共に残りを前記ホットガスバイパスに流すホットガス暖房モードを実行可能である制御装置と、を備えた車両用空調装置において、
前記制御装置は、前記ホットガス暖房モードの実行時に、
前記圧縮機に対して、吸入冷媒圧力に基づく第1目標回転数と、吸入冷媒温度に基づく第2目標回転数をそれぞれ算出し、
吸入冷媒圧力が第1閾値圧力を超える場合、又は、吸入冷媒温度が第1閾値温度を超える場合に、第1目標回転数又は第2目標回転数の何れか小さい方を目標回転数として前記圧縮機を制御する、車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1閾値圧力及び前記第1閾値温度を外気温に基づいて変更可能であり、外気温が下がるほど前記第1閾値圧力及び前記第1閾値温度を下げるように調整する、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御装置は、吸入冷媒圧力が前記第1閾値圧力よりも大きい第2閾値圧力を超える場合、又は、吸入冷媒温度が前記第1閾値温度よりも大きい第2閾値温度を超える場合に、前記圧縮機の駆動を停止させる、請求項1又は請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御装置は、吸入冷媒圧力が前記第2閾値圧力を下回り、かつ、吸入冷媒温度が前記第2閾値温度を下回った場合に、前記圧縮機を再度駆動させる、請求項3記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されたバッテリから供給される電力によって走行用モータを駆動するハイブリッド自動車や電気自動車等の車両が普及している。このような車両に搭載される車両用空調装置として、ヒートポンプ(冷媒回路)を熱源とするものが知られている。
【0003】
ヒートポンプを利用した車両用空調装置は、暖房運転時に、外部熱交換器を吸熱器として機能させ、外気から暖房熱源を得ている。このため、外気温が極低温になると、外気からの吸熱が難しくなり、暖房能力が大きく低下することになる。これに対し、極低温環境下で有効な暖房として、外気等から吸熱を行わずに、圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を利用するホットガス暖房が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1の車両用空調装置では、ヒートポンプにおいて、次のように冷媒を循環させてホットガス暖房運転を行っている。すなわち、ヒートポンプでは、圧縮機から吐出した高温高圧冷媒のうち、一部をバイパス流路に流して減圧した後に圧縮機に戻し、残りを室内熱交換器において車室内への送風空気と熱交換させた後に減圧させ、外部熱交換器を経由させることなく圧縮機に戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-46604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような車両用空調装置では、外気等から吸熱する吸熱暖房運転はもちろん、前述のホットガス暖房運転においても、安定的かつ効果的な運転を継続するために、圧縮機における吸入側及び吐出側の圧力や温度が目標値を含む所定範囲に収まるように、冷媒回路の各構成機器を制御している。特に、吸入冷媒圧力が低下すると、圧縮比が増大して吐出冷媒温度が上昇し、体積効率の低下を招くことから、吸熱暖房運転においては、吸入冷媒圧力が予め定められた下限値を下回らないように各構成機器を制御している。
【0007】
一方、ホットガス暖房運転では、圧縮機から吐出した高温高圧冷媒の一部をバイパス流路に流して圧縮機に戻すため、圧縮機への吸入冷媒圧力が吸熱暖房運転に比して高圧になりやすく、吸入冷媒圧力が所定の上限値を超えてしまう場合がある。このような場合、車両用空調装置では、冷媒回路の各構成機器を制御、例えば、膨張弁の開度や室内熱交換器における放熱量など制御して吸入冷媒圧力を調整するが、そのような調整を行っても吸入冷媒圧力が上限値を超えてしまう場合がある。吸入冷媒圧力が上限値を超えると、安定したホットガス運転の継続が困難になったり、圧縮機の耐久性が低下したりするなどの不具合が生じてしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ホットガス暖房運転を安定的かつ効果的に継続させると共に、圧縮機の耐久性を向上させること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧縮機と、室内熱交換部と、外部熱交換部と、前記圧縮機で圧縮した冷媒の少なくとも一部を前記室内熱交換部及び前記外部熱交換部を経由することなく減圧して前記圧縮機に戻すホットガスバイパスと、を含む冷媒回路と、前記冷媒回路を制御し、前記圧縮機で圧縮した冷媒の一部を前記室内熱交換部に流すと共に残りを前記ホットガスバイパスに流すホットガス暖房モードを実行可能である制御装置と、を備えた車両用空調装置において、前記制御装置は、前記ホットガス暖房モードの実行時に、前記圧縮機に対して、吸入冷媒圧力に基づく第1目標回転数と、吸入冷媒温度に基づく第2目標回転数をそれぞれ算出し、吸入冷媒圧力が第1閾値圧力を超える場合、又は、吸入冷媒温度が第1閾値温度を超える場合に、第1目標回転数又は第2目標回転数の何れか小さい方を目標回転数として前記圧縮機を制御する、車両用空調装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホットガス暖房運転を安定的かつ効果的に継続させると共に、圧縮機の耐久性を向上させること、ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置のシステム構成例を示した説明図。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の制御装置を示した説明図。
図3】本発明の実施形態に係る電動車両(EV)における制御装置等の構成を示す図。
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置におけるホットガス暖房運転時の冷媒回路の動作を示した説明図。
図5】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の制御装置による圧縮機の制御ブロック図である。
図6】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、ホットガス暖房運転じの制御装置による圧縮機の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。なお、図中の冷媒回路10における黒太線は、高圧冷媒が流れる冷媒流路を示し、白抜き線は減圧後の冷媒が流れる冷媒流路を示す。また、冷媒回路10における破線は、冷媒が流れない冷媒流路を示す。
【0013】
[冷媒回路等の構成]
図1に、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の構成例を示す。ここに示す構成例は一例であり、具体的な構成に特に限定されるものでは無い。
【0014】
車両用空調装置1は、冷媒回路10と空調ユニット20を備えている。冷媒回路10は、圧縮機2と、空調ユニット20の内部に設けられる室内熱交換器21,22と、車室外に設けられる外部熱交換器11を含み、これらが冷媒流路に沿って配備されている。室内熱交換器21,22は、空調ユニット20内を流れる空気と冷媒が熱交換するために設けられ、外部熱交換器11は、車室外にて外気と冷媒が熱交換するために設けられる。室内熱交換器21は空気の加熱用であり、室内熱交換器22は空気の冷却用である。室内熱交換器21の直ぐ下流側には、室内熱交換器21から出た出口冷媒圧力Pci(高圧側冷媒圧力)を検出する冷媒圧力センサ44Bと出口冷媒温度Tc(高圧側冷媒温度)を検出する冷媒温度センサ43Bが設けられている。
【0015】
圧縮機2は、冷媒を圧縮して冷媒回路10内を循環させる。圧縮機2にて圧縮された冷媒は、適宜選択される冷媒流路において、例えば膨張弁である、第1減圧部V1、第2減圧部V2、第3減圧部V3、第4減圧部V4を経由することで必要な圧力に減圧される。冷媒回路10には、冷媒流路を切り替えるための流路切替弁12,13と、冷媒の流通方向を規制するための逆止弁14,15が設けられている。冷媒回路10における圧縮機2の直ぐ上流側には、液状冷媒を回収して冷媒を気液分離するアキュムレータ16が設けられている。アキュムレータ16と圧縮機2との間には、圧縮機2に吸入される吸入冷媒圧力Ps(低圧側冷媒圧力)を検出する冷媒圧力センサ44Aと吸入冷媒温度Ts(低圧側冷媒温度)を検出する冷媒温度センサ43Aが設けられている。
【0016】
空調ユニット20は、前述したように、室内熱交換器21,22を内部に備えており、送風機23によって室内又は室外から導入された空気が、室内熱交換器21,22を通過して室内に吹き出される。空調ユニット20には、エアダンパ24が設けられている。図1に示したエアダンパ24の全開時には、送風機23によって導入された空気は、室内熱交換器21,22の両方を通過して室内に吹き出される。
【0017】
また、エアダンパ24の全閉時には室内熱交換器21の流入側を塞ぎ、送風機23によって導入された空気は、室内熱交換器22のみを通過して室内に吹き出される。空調ユニット20に設けられるもう一つのエアダンパ25は、送風機23に導入する空気を室内外で切り替える。エアダンパ25は、室外に繋がる空気導入口25Aと室内に繋がる空気導入口25Bを選択的に閉止してどちらか一方から空気を取り入れることができる。また、エアダンパ25を中間位置にする等により、空気導入口25Aと空気導入口25Bの両方から空気を取り入れることもできる。
【0018】
なお、前述した外部熱交換器11及び室内熱交換器21,22では、冷媒と空気とが直接熱交換する例について説明したが、冷媒と熱交換した熱媒体を介して冷媒と空気とが間接的に熱交換してもよい。すなわち、熱媒体を介して空気の熱を冷媒に吸熱させたり、熱媒体を介して冷媒の熱を空気に放熱したりする構成としてもよい。
【0019】
図1に示すように、車両用空調装置1は、熱媒体回路30を備えている。熱媒体回路30は、循環ポンプ31により熱媒体を循環させ、ヒータ(ECH:Electric Coolant Heater)32で熱媒体を加熱したり、温調対象熱交換器33でバッテリ等の温調対象物から廃熱回収を行ったりする。そして、冷媒回路10と熱媒体回路30には、冷媒が流れる流路34Aと熱媒体が流れる流路34Bで冷媒と熱媒体との熱交換を行う冷媒熱媒体熱交換器34が設けられている。熱媒体回路30は必要に応じて設けられる。
【0020】
[制御装置]
車両用空調装置1は、図2に示す制御装置100を備える。制御装置100は、各種の入力信号(空調指示信号や充電機接続信号など)とセンサ部40からの検出信号に基づいて、前述した、冷媒回路10と空調ユニット20、熱媒体回路30を制御する。
【0021】
制御装置100に検出信号を入力するセンサ部40は、例えば、外気温度や外気湿度等の外気状態を検出する外気センサ41、圧縮機2の消費電力(消費エネルギー)を検出するため圧縮機電流センサ42、冷媒の状態を検出する冷媒温度センサ43と冷媒圧力センサ44、車室内の乗員の有無を検出する乗員センサ45、空調ユニット20の送風温度を検出する送風温度センサ46などを備えている。
【0022】
特に、冷媒温度センサ43には、圧縮機2に吸入される吸入冷媒温度Ts(低圧側冷媒温度)を検出する冷媒温度センサ43Aと、室内熱交換器21の出口冷媒温度Tc(高圧側冷媒温度)を検出する冷媒温度センサ43Bとが含まれるが含まれる(図1参照)。
【0023】
また、冷媒圧力センサ44には、圧縮機2に吸入される吸入冷媒圧力Ps(低圧側冷媒圧力)を検出する冷媒圧力センサ44Aと、室内熱交換器21の出口冷媒圧力Pci(高圧側冷媒圧力)を検出する冷媒圧力センサ44Bとが含まれる(図1参照)。これらのセンサは、一例であり、センサ部40として、制御装置100が各種制御を行う際に必要な情報を検出する各種のセンサが備えられている。
【0024】
制御装置100の制御対象は、冷媒回路10においては、圧縮機2、第1減圧部V1、第2減圧部V2、第3減圧部V3、第4減圧部V4、流路切替弁12,13などであり、空調ユニット20においては、送風機23、エアダンパ24,25などであり、熱媒体回路30においては、循環ポンプ31などである。また、制御装置100は、制御装置100の処理結果に従って、車両用空調装置1を制御する。車両用空調装置1では、制御装置100により、外部熱交換器11で冷媒に吸熱させる吸熱暖房運転と、外部熱交換器11で冷媒に吸熱させずに圧縮機2で圧縮した冷媒を室内熱交換器21で放熱させて車室内を暖房するホットガス暖房運転を、切り替えて実行可能である。
【0025】
[電動車両(EV)における制御装置の構成]
車両用空調装置1が備える制御装置100は、図3に示すように、電動車両EVの制御を行う各種ECU(Electronic Control Unit)に車載ネットワークLを介して接続された一つのECUとして構成される。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、入出力用のI/F(Interface)104、車内通信用のI/F(Interface)105などを備え、各ハードウェアは、バス106を介して相互に接続されている。
【0026】
CPU101は、ROM102に記憶されている各種プログラムを実行することにより、制御装置100の制御を実行する。ROM102は、不揮発性メモリである。例えば、ROM102は、CPU101により実行されるプログラム、CPU101がプログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。RAM103は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の主記憶装置である。
【0027】
例えば、RAM103は、CPU101がプログラムを実行する際に利用する作業領域として機能する。入出力用のI/F104は、EVに設置される各種センサやモニタに接続され、CPU101にデータを入力すると共に、CPU101が演算処理したデータを出力する。車内通信用のI/F105は、車載ネットワークLに接続されることで、EVに設定された他のECUとのデータ送受信を制御する。
【0028】
制御装置100は、入出力用のI/F104や車内通用のI/F105を介して、周辺の環境情報関するデータ或いはEVの運転状況に関するデータが入力されることで、CPU101が実行するプログラムによって、前述した車両用空調装置1の制御を実行する。
【0029】
EVには、バッテリBが搭載されている。バッテリBには、バッテリプラグBPに充電機のプラグPSを接続することで充電が行われ、バッテリBを介して車両用空調装置1への給電が行われる。バッテリプラグBPにプラグPSが接続されている状態は、充電機接続信号として、車載ネットワークLを介して制御装置100に送信される。
【0030】
[ホットガス暖房運転]
極低温時には外部熱交換器11による吸熱が難しいため、ホットガス暖房を用いる。ホットガス暖房運転は、外部熱交換器11において冷媒に吸熱させず、圧縮機2で圧縮した冷媒の一部又は全部を室内熱交換器21で放熱させて車室内を暖房する。
【0031】
図4にて、ホットガス暖房運転における冷媒回路10の動作を説明する。この動作では、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒の一部は、室内熱交換器21と流路切替弁12を通り、第3減圧部V3にて減圧されて低圧冷媒になり、冷媒熱媒体熱交換器34を通り、アキュムレータ16にて気液分離がなされて、圧縮機2に戻る。この際、冷媒回路10では、第1減圧部V1を全閉にすることで、外部熱交換器11には冷媒を流さない。また、第4減圧部V4を全閉にして、室内熱交換器22には冷媒を流さない。
【0032】
冷媒回路10は、圧縮機2で圧縮した冷媒の少なくとも一部を、室内熱交換器21及び外部熱交換器11を経由することなく減圧して圧縮機2に戻すホットガスバイパス10Vを有する。ホットガスバイパス10Vでは、圧縮機2の直ぐ下流の分岐点P1で高温高圧の冷媒の一部を分岐し、第2減圧部V2で減圧して、アキュムレータ16の直ぐ上流側の合流点P2で、第3減圧部V3で減圧された低圧冷媒に合流させる。
【0033】
このようなホットガスバイパス10Vを設けることで、室内熱交換器21での放熱で凝縮した液冷媒に、ホットガスバイパス10Vを経由したガス冷媒を混合させて、ガスリッチの冷媒にしてから圧縮機2に戻すことができるようになる。また、ホットガスバイパス10Vを流れる冷媒流量を増やすことで、室内熱交換器21での放熱量を抑制することができ、第2減圧部V2の開閉で、ホットガスバイパス10Vを流れる冷媒流量を調整することで、冷媒回路10の放熱量と圧縮機2への入熱量のバランスを維持させることができる。つまり、第2減圧部V2がホットガスバイパス10Vを流通する冷媒の流量を調整する流量調整部として機能する。
【0034】
ホットガス暖房運転時の冷媒の流れは、室内熱交換器21を経由する流路では、第3減圧部V3で減圧されるので、それより上流側は高圧冷媒になり、それより下流側は低圧冷媒になる。この際、低圧側流路における冷媒熱媒体熱交換器34では熱交換がなされないことが、暖房能力を維持する上で重要になる。そして、空調ユニット20においては、送風機23にて導入された空気が、室内熱交換器21での放熱で加熱されて、車室内に吹き出される。
【0035】
なお、吸熱暖房運転における冷媒回路10の冷媒の流れについては図示を省略するが、吸熱暖房運転時の冷媒回路10では、第2減圧部V2、第3減圧部V3、第4減圧部V4、流路切替弁12は、全閉になる。一方、流路切替弁13は全開であり、第1減圧部V1は開いている。
【0036】
そして、吸熱暖房運転では、圧縮機2から吐出された高温高圧冷媒は、空調ユニット20内の室内熱交換器21を通過し、第1減圧部V1にて減圧され、低圧冷媒が外部熱交換器11を通過し、流路切替弁13、逆止弁14、アキュムレータ16を経由して、圧縮機2に戻される。この際、圧縮機2から出た高圧冷媒は、室内熱交換器21にて凝縮・放熱し、第1減圧部V1で減圧され低圧冷媒になり、外部熱交換器11にて吸熱・蒸発して、圧縮機2に戻る。そして、空調ユニット20においては、送風機23にて導入された空気が、室内熱交換器21での放熱で加熱されて、車室内に吹き出される。
【0037】
[制御装置による圧縮機の制御]
以下、本実施形態に係る車両用空調装置における圧縮機の制御について説明する。図5は、制御装置100による圧縮機2の制御ブロック図である。
制御装置100では、所定の周期で、高圧側冷媒圧力として室内熱交換器21を出た出口冷媒圧力Pci、低圧側冷媒圧力として圧縮機2の吸入冷媒圧力Ps、及び、圧縮機2の吸入冷媒温度Tsを取得し、これらに基づいて圧縮機2を制御する。
【0038】
すなわち、制御装置100では、出口冷媒圧力Pci、吸入冷媒圧力Ps及び吸入冷媒温度Tsに基づいて、制限判定部200により圧縮機2の目標回転数の制限を要するかの判定を行うと共に(図5の下段)、保護判定部300により圧縮機2に対する保護を要するかの判定を行う(図5の上段)。
【0039】
制限判定部200及び保護判定部300による判定の結果はセレクタ400に入力され、セレクタ400からの出力に従って圧縮機2が制御される。なお、制限判定部200、保護判定部300及びセレクタ400は、制御装置100に備えられたCPU101がROM102に格納されたプログラムをRAM103に読み込んで実行することで実現される。
【0040】
制限判定部200には、Pci制限判定部201、Ps制限判定部202、Psu制限判定部203、Ts制限判定部204及び最小値選択部205が含まれている。制限判定部200には、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASE、出口冷媒圧力Pci、吸入冷媒圧力Ps及び吸入冷媒温度Tsが入力され、これらに基づいて圧縮機2の目標回転数の制限を要するか否かの判定が行われると共に、目標回転数TGNCが算出される。
【0041】
Pci制限判定部201では、入力された出口冷媒圧力Pciが所定の上限値を超える場合に、出口冷媒圧力Pciに基づいて算出された目標回転数TGNC_LPciを最小値選択部205に出力する。出口冷媒圧力Pciが所定の上限値を超えない場合には、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASEを目標回転数TGNC_LPciとして最小値選択部205に出力する。
【0042】
Ps制限判定部202では、入力された吸入冷媒圧力Psが所定の下限値を下回る場合に、吸入冷媒圧力Psに基づいて算出された目標回転数TGNC_LPsを最小値選択部205に出力する。吸入冷媒圧力Psが所定の下回らない場合には、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASEを目標回転数TGNC_LPsとして最小値選択部205に出力する。
【0043】
Psu制限判定部203では、入力された吸入冷媒圧力Psが所定の上限値を超える場合に、吸入冷媒圧力Psに基づいて算出された目標回転数TGNC_LPsuを最小値選択部205に出力する。吸入冷媒圧力Psが所定の上限値を超えない場合には、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASEを目標回転数TGNC_LPsuとして最小値選択部205に出力する。
【0044】
同様に、Ts制限判定部204では、入力された吸入冷媒温度Tsが所定の上限値を超える場合に、吸入冷媒温度Tsに基づいて算出された目標回転数TGNC_LTsを最小値選択部205に出力する。吸入冷媒温度Tsが所定の上限値を超えない場合には、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASEを目標回転数TGNC_LTsとして最小値選択部205に出力する。
【0045】
最小値選択部205には、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASE、目標回転数TGNC_LPci、目標回転数TGNC_LPs、目標回転数TGNC_LPsu、及び、目標回転数TGNC_LTsが入力され、これらのうち最小値が目標回転数TGNCとして出力される。
【0046】
保護判定部300は、Pci保護判定部301、Ps保護判定部302、Psu保護判定部303、Ts保護判定部304及びOR回路305が含まれている。保護判定部300には、出口冷媒圧力Pci、吸入冷媒圧力Ps及び吸入冷媒温度Tsが入力され、これらに基づいて圧縮機2の保護の要否が判定される。
【0047】
Pci保護判定部301では、入力された出口冷媒圧力Pciが前述の上限値よりも大きい値であり、圧縮機2を保護すべきとして予め定めた保護値を超える場合に、保護信号をOR回路305に出力する。出口冷媒圧力Pciが保護値を超えない場合には、OR回路305への信号出力は行われない。
【0048】
Ps保護判定部302では、入力された吸入冷媒圧力Psが前述の下限値よりも小さい値であり、圧縮機2を保護すべきとして予め定めた保護値を下回る場合に、保護信号をOR回路305に出力する。吸入冷媒圧力Psが保護値を下回らない場合には、OR回路305への信号出力は行われない。
【0049】
Psu保護判定部303では、入力された吸入冷媒圧力Psが前述の上限値よりも大きい値であり、圧縮機2を保護すべきとして予め定めた保護値を超える場合に、保護信号をOR回路305に出力する。吸入冷媒圧力Psが保護値を超えない場合には、OR回路305への信号出力は行われない。
【0050】
同様に、Ts制限判定部204では、入力された吸入冷媒温度Tsが前述の上限値よりも大きい値であり、圧縮機2を保護すべきとして予め定めた保護値を超える場合に、保護信号をOR回路305に出力する。吸入冷媒温度Tsが保護値を超えない場合には、OR回路305への信号出力は行われない。
【0051】
OR回路305は、Pci保護判定部301、Ps保護判定部302、Psu保護判定部303及びTs保護判定部304からの保護信号の入力を受け付け、何れか1つ以上の保護信号が入力された場合には圧縮機2に対する保護を要すると判定し、保護信号をセレクタ400に出力する。また、OR回路305は、Pci保護判定部301、Ps保護判定部302、Psu保護判定部303及びTs保護判定部304のいずれからも保護信号が入力されない場合には、圧縮機2に対する保護を要しないと判定し、セレクタ400への保護信号を出力しない。
【0052】
セレクタ400には、制限判定部200から目標回転数が入力されると共に、保護判定部300において圧縮機2の保護を要する場合にのみ保護信号が入力される。保護判定部300から保護信号を受け付けなかった場合には、制限判定部200によって算出された目標回転数TGNCに従って圧縮機2を制御し、保護判定部300によって圧縮機2の保護信号が出力された場合には、圧縮機2を保護、すなわち圧縮機2の駆動を停止させる。
【0053】
車両用空調装置1の暖房運転において、制御装置100では、冷媒回路10の吸入冷媒圧力Psが低下すると、圧縮比が増大して吐出冷媒温度が上昇し、体積効率の低下を招いてしまうため、通常は、吸入冷媒圧力が予め定められた下限値を下回らないように圧縮機2を含む各構成機器を制御している。
【0054】
従って、車両用空調装置1の暖房運転において、特に、吸熱暖房運転においては、主として、Pci制限判定部201及びPs制限判定部202によって圧縮機2の制限の要否及び制限時の目標回転数TGNCを算出し、Pci保護判定部301及びPs保護判定部302によって圧縮機2の保護の要否を判定する。
【0055】
一方、前述のように、ホットガス暖房運転では、圧縮機2から吐出した高温高圧冷媒の一部がホットガスバイパス10Vを介して圧縮機2に戻るため、圧縮機2への吸入冷媒圧力が吸熱暖房運転に比して高圧になりやすい。吸入冷媒圧力が上限値(後述する閾値圧力)を超える場合には、ホットガス暖房運転の安定的かつ効果的な継続が困難になったり、圧縮機2の耐久性が低下したりするなどの不具合が生じかねない。
【0056】
そこで、制御装置100は、ホットガス暖房運転において、主として、Psu制限判定部203及びTs制限判定部204によって圧縮機の制限の要否及び制限時の目標回転数TGNCを算出し、Psu保護判定部303及びTs保護判定部304によって圧縮機2の保護の要否を判定する。
【0057】
つまり、ホットガス暖房運転においては、Psu制限判定部203は、入力された吸入冷媒圧力Psが所定の上限値である第1閾値圧力Ps_th1を超える場合に、吸入冷媒圧力Psに基づいて算出された目標回転数TGNC_LPsuを最小値選択部205に出力する。
【0058】
また、Ts制限判定部204は、入力された吸入冷媒温度Tsが所定の上限値である第1閾値温度Ts_th1を超える場合に、吸入冷媒温度Tsに基づいて算出された目標回転数TGNC_LTsを最小値選択部205に出力する。
【0059】
最小値選択部205では、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASE、目標回転数TGNC_LPci、目標回転数TGNC_LPs、目標回転数TGNC_LPsu、及び、目標回転数TGNC_LTsが入力され、これらのうち最小値が目標回転数TGNCとして出力される。
【0060】
ここで、第1閾値圧力Ps_th1は、例えば、圧縮機2の仕様によって定められる最大吸入冷媒圧力UL_Psuと外気温度に基づいて決定される値LON_Psuに基づいて、以下の式(1)によって定めることができる。
Ps_th1=UL_Psu-LON_Psu・・・(1)
【0061】
そして、Psu制限判定部203では、吸入冷媒圧力Psが、第1閾値圧力Ps_th1を超える場合には、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASEと、第1閾値圧力Ps_th1と、吸入冷媒圧力Psと、圧縮機2に対するゲインに基づいて、すなわち、以下の式(2)に従って目標回転数TGNC_LPsuを算出する。
【0062】
TGNC_LPsu=TGNC_BASE+
((UL_Psu-LON_Psu)-Ps)*GUL_Psu
・・・(2)
【0063】
なお、Psu制限判定部203では、吸入冷媒圧力Psが、第1閾値圧力Ps_th1を超えない場合には、目標回転数TGNC_LPsuを圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASEとする。
【0064】
同様に、第1閾値温度Ts_th1は、例えば、圧縮機2の仕様によって定められる最大吸入冷媒温度UL_Tsと外気温度に基づいて決定される値LON_Tsuに基づいて、以下の式(3)によって定めることができる。
Ts_th1=UL_Ts-LON_Ts・・・(3)
【0065】
つまり、第1閾値圧力Ps_th1及び第1閾値温度Ts_th1は、外気温度に基づいて変更可能であり、外気温が下がるほど第1閾値圧力Ps_th1及び第1閾値温度Ts_th1を下げ、外気温が上がるほど第1閾値圧力Ps_th1及び第1閾値温度Ts_th1を上げることが好ましい。
【0066】
外気温の変動に伴って室内熱交換器21における放熱量が変動し、吸入冷媒圧力Psも変動するが、第1閾値圧力Ps_th1及び第1閾値温度Ts_th1を外気温度に基づいて変更することで、外気温の変動に起因する吸入冷媒圧力Psの変動に対応したより適切な第1閾値圧力Ps_th1及び第1閾値温度Ts_th1を決定することができる。
【0067】
そして、Ts制限判定部204では、吸入冷媒温度Tsが、第1閾値温度Ts_th1を超える場合には、圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASEと、第1閾値温度Ts_th1と、吸入冷媒温度Tsと、圧縮機2に対するゲインに基づいて、すなわち、以下の式(4)に従って目標回転数TGNC_LTsを算出する。
【0068】
TGNC_LTs=TGNC_BASE+
((UL_Ts-LON_Ts)-Ts)*GUL_Ts
・・・(4)
【0069】
なお、Ts制限判定部204では、吸入冷媒温度Tsが、第1閾値温度Ts_th1を超えない場合には、目標回転数TGNC_LTsを圧縮機2の現在の目標回転数TGNC_BASEとする。
【0070】
一方、Psu保護判定部303は、入力された吸入冷媒圧力Psが第1閾値圧力Ps_th1よりも大きい第2閾値圧力Ps_th2を超える場合に、保護信号をOR回路305に出力する。同様に、Ts保護判定部304では、入力された吸入冷媒温度Tsが第1閾値温度Ts_th1よりも大きい第2閾値温度Ts_th2を超える場合に、保護信号をOR回路305に出力する。
【0071】
OR回路305は、Psu保護判定部303及びTs保護判定部304からの保護信号の入力を受け付け、何れか一方から保護信号が入力された場合に圧縮機2に対する保護を要すると判定し、Psu保護判定部303及びTs保護判定部304のいずれからも保護信号が入力されない場合には、圧縮機2に対する保護を要しないと判定する。
【0072】
ここで、第2閾値圧力Ps_th2は、第1閾値圧力Ps_th1よりも大きい値であって、圧縮機2を保護すべきとして予め定めた保護値であり、例えば、圧縮機2の仕様によって定められる最大吸入冷媒圧力UL_Psuとヒステリシスを考慮した値HYS_Psuに基づいて、以下の式(5)によって定めることができる。
Ps_th2=UL_Psu-HYS_Psu・・・(5)
【0073】
同様に、第2閾値温度Ts_th2は、第1閾値温度Ts_th1よりも大きい値であって、圧縮機2を保護すべきとして予め定めた保護値であり、例えば、圧縮機2の仕様によって定められる最大吸入冷媒温度UL_Tsとヒステリシスを考慮した値HYS_Tsに基づいて、以下の式(6)によって定めることができる。
Ts_th2=UL_Ts-HYS_Ts・・・(6)
【0074】
このように構成された車両用空調装置におけるホットガス暖房運転の、制御装置100による圧縮機2の制御について、図6のフローチャートに従って説明する。
【0075】
図6に示すように、車両用空調装置1において、ホットガス暖房運転が実行されると(ステップS11)、制御装置100は、圧縮機2の吸入側に設けられた冷媒圧力センサ44Aから吸入冷媒圧力Psを取得すると共に、冷媒温度センサ43Aから吸入冷媒温度Tsを所定の周期で取得する(ステップS12)。
【0076】
制御装置100では、入力された吸入冷媒圧力Psが第1閾値圧力Ps_th1以下(ステップS13のNo)であり、吸入冷媒温度Tsも第1閾値温度Ts_th1以下である場合(ステップS14のNo)には、圧縮機2は現在の目標回転数TGNC_BASEに基づいて制御される(ステップS15)。
【0077】
一方、吸入冷媒圧力Psが第1閾値圧力Ps_th1以下(ステップS13のNo)であっても吸入冷媒温度Tsが第1閾値温度Ts_th1より大きい(ステップS14のYes)場合は、ステップS17に進み、圧縮機2の目標回転数を制限するか(ステップS18に進むか)、あるいは、圧縮機2を保護するか(ステップS21に進むか)、を吸入冷媒温度Tsによって判断する。
【0078】
これは、吸入冷媒圧力Psが第1閾値圧力Ps_th1以下(ステップS13のNo)であっても、吸入冷媒温度Tsが飽和温度より上昇した過熱状態となる場合があることから、安全性を担保するために吸入冷媒温度Tsと第1閾値温度Ts_th1や第2閾値温度Ts_th2との関係も勘案して圧縮機2を制御することが好ましいためである。
【0079】
また、吸入冷媒圧力Psが第1閾値圧力Ps_th1より大きく(ステップS13のYes)、かつ、第2閾値圧力Ps_th2以下である場合(ステップS16のNo)は、ステップS17に進み、圧縮機2の目標回転数を制限するか(ステップS18に進むか)、あるいは、圧縮機2を保護するか(ステップS21に進むか)、を吸入冷媒温度Tsによって判断する。
【0080】
ステップS17では、吸入冷媒温度Tsが第1閾値温度Ts_th1より大きく(ステップS14のYes)、第2閾値温度Ts_th2以下である場合(ステップS17のNo)には、目標回転数TGNC_LPsu及び目標回転数TGNC_LTsを取得し(ステップS18、ステップS19)、何れか小さい方を目標回転数TGNCとして圧縮機2を制御する(ステップS20)。
【0081】
吸入冷媒圧力Psが第2閾値圧力Ps_th2を超える場合(ステップS16のYes)、及び、吸入冷媒温度Tsが第2閾値温度Ts_th2を超える場合(ステップS17のYes)は、いずれも圧縮機2を保護、すなわち、圧縮機2の駆動を停止する(ステップS21)。
【0082】
制御装置100は、圧縮機2を停止させた後、吸入冷媒圧力Psが第2閾値圧力Ps_th2を下回るかを監視すると共に(ステップS22)、吸入冷媒温度Tsが第2閾値温度Ts_th2を下回るかを監視する(ステップS23)。制御装置100は、吸入冷媒圧力Ps及び吸入冷媒温度Tsが第2閾値圧力Ps_th2を下回り(ステップS22のYes)、かつ、第2閾値温度Ts_th2を下回った場合に(ステップS23のYes)、圧縮機2を再起動させ(ステップS24)、ホットガス暖房運転が終了するまで上記処理を繰り返す(ステップS25)。
【0083】
このように、本実施形態に係る車両用空調装置1では、ホットガス暖房運転の際に、圧縮機2に対して、吸入冷媒圧力Psに基づく第1目標回転数TGNC_LPsuと、吸入冷媒温度に基づく第2目標回転数TGNC_LTsをそれぞれ算出している。そして、吸入冷媒圧力Psが第1閾値圧力Ps_th1を超える場合、又は、吸入冷媒温度Tsが第1閾値温度Ts_th1を超える場合に、第1目標回転数TGNC_LPsu又は第2目標回転数TGNC_LTsの何れか小さい方を目標回転数TGNCとして圧縮機2を制御する。
【0084】
また、制御装置100において、第1閾値圧力Ps_th1及び第1閾値温度Ts_th1を、外気温の変動に対応させて変更するので、外気温の変動に起因する吸入冷媒圧力Psの変動に応じた第1閾値圧力Ps_th1及び第1閾値温度Ts_th1を定めることができ、外気温の変動に拘わらず、最適な目標回転数TGNCで圧縮機2を制御することができる。
【0085】
特に、外気温が低下すると吸入冷媒圧力Psも低下するが、これに伴って第1閾値圧力Ps_th1及び第1閾値温度Ts_th1を下げることで、外気温に応じた最適な目標回転数TGNCで圧縮機2を制御することができ、ホットガス暖房運転が用いられる極低温下の厳しい環境においてもより安定的かつ効果的に継続させることができる。
【0086】
このように吸入冷媒圧力Ps及び吸入冷媒温度Tsをそれらの目標値を含む所定範囲に収まるように制御して、ホットガス暖房運転を安定的かつ効果的に継続させると共に、圧縮機の耐久性を向上させることができる。
【0087】
そして、制御装置100では、上述のような制御を行った場合であっても、吸入冷媒圧力Psが第1閾値圧力Ps_th1よりも大きい第2閾値圧力Ps_th2を超える場合、又は、吸入冷媒温度Tsが第1閾値温度Ts_th1よりも大きい第2閾値温度Ts_th2を超える場合には、圧縮機2の駆動を停止させるので、圧縮機2の耐久性を確保すると共に、安全性を担保することができる。
【0088】
その後、制御装置100は、吸入冷媒圧力Psが第2閾値圧力Ps_th2を下回り、かつ、吸入冷媒温度Tsが第2閾値温度Ts_th2を下回った場合に、圧縮機2を再度駆動させるので、圧縮機2の耐久性を確保し、中断したホットガス暖房運転を安定的かつ効果的に継続可能な条件で再度運転することができる。
【0089】
以上述べた如く、本実施形態によれば、ホットガス暖房運転において、ホットガス暖房運転を安定的かつ効果的に継続させると共に、圧縮機の耐久性を向上させることができる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれら実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1:車両用空調装置、2:圧縮機、10:冷媒回路、10V:ホットガスバイパス
11:外部熱交換器、12,13:流路切替弁、14,15:逆止弁
16:アキュムレータ、20:空調ユニット、21,22:室内熱交換器
23:送風機、24,25:エアダンパ、25A,25B:空気導入口
30:熱媒体回路、31:循環ポンプ、33:温調対象熱交換器
34:冷媒熱媒体熱交換器、34A,34B:流路、40:センサ部
41:外気センサ、42:圧縮機電流センサ、43,43A:冷媒温度センサ
44,44A,44B:冷媒圧力センサ、45:乗員センサ、46:送風温度センサ
100:制御装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6