IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

特開2025-27706水性レジンインク乾燥装置、及び水性レジンインクの乾燥制御方法
<>
  • 特開-水性レジンインク乾燥装置、及び水性レジンインクの乾燥制御方法 図1
  • 特開-水性レジンインク乾燥装置、及び水性レジンインクの乾燥制御方法 図2
  • 特開-水性レジンインク乾燥装置、及び水性レジンインクの乾燥制御方法 図3
  • 特開-水性レジンインク乾燥装置、及び水性レジンインクの乾燥制御方法 図4
  • 特開-水性レジンインク乾燥装置、及び水性レジンインクの乾燥制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027706
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】水性レジンインク乾燥装置、及び水性レジンインクの乾燥制御方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/10 20060101AFI20250220BHJP
   F26B 21/12 20060101ALI20250220BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
F26B21/10 A
F26B21/12
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132761
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】324012246
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】松本 將
【テーマコード(参考)】
2C056
3L113
【Fターム(参考)】
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB30
2C056EC14
2C056EC29
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA47
3L113AA03
3L113AB02
3L113AC07
3L113AC52
3L113BA28
3L113CA04
3L113CB04
3L113CB24
3L113DA02
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】 熱によるメディアのダメージを抑制し、高温処理による画像劣化を抑制するように適切な乾燥処理を実施する。
【解決手段】 水性レジンインク乾燥装置100は、印刷されたメディア10が平置きに載置される載置台212と、メディアの周囲空間を構成すると共に、熱風によりメディアの全体を乾燥させることが可能な乾燥室203と、少なくとも1つのファンヒータユニットFHと、ファン制御値、ヒータ制御値、及び乾燥時間の少なくとも1つを変更して乾燥条件を可変に制御可能な制御部350と、を有し、制御部350は、樹脂のガラス転移温度以上となるヒータ制御値を設定でき、メディアの載置状態を変更することなく乾燥条件を変更し、乾燥条件が異なる複数の乾燥工程を順次、実施可能である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性レジンインクにより印刷されたメディアが平置きに載置される載置台と、
前記メディアの周囲空間を構成すると共に、熱風により前記メディアの全体を乾燥させることが可能な乾燥室と、
前記熱風を生成するファン、及びヒータを備える少なくとも1つのファンヒータユニットと、
前記ファンの動作を制御するファン制御部と、前記ヒータの動作を制御するヒータ制御部と、を備えると共に、前記ファン制御部のファン制御値、前記ヒータ制御部のヒータ制御値、及び乾燥時間の少なくとも1つを変更して乾燥条件を可変に制御可能である制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記ヒータ制御値として、前記水性レジンインクに含まれる樹脂のガラス転移温度以上となるヒータ制御値を設定可能であると共に、
前記載置台に載置されている前記メディアに対して、その載置状態を変更することなく前記乾燥条件を変更することで、乾燥条件が異なる複数の乾燥工程を順次、実施可能である、
水性レジンインク乾燥装置。
【請求項2】
前記水性レジンインク乾燥装置は、オーブン型の乾燥装置であると共に、前記水性レジンインクを前記メディアに印刷する印刷装置とは別体である、
請求項1に記載の水性レジンインク乾燥装置。
【請求項3】
前記乾燥室は、前記メディアの前記周囲空間を略閉じた空間とすることで構成される、略密閉の乾燥室であり、
前記水性レジンインク乾燥装置は、前記水性レジンインクを前記メディアに印刷する印刷装置と一体的である、
請求項1に記載の水性レジンインク乾燥装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記メディアの乾燥工程を、
前記水性レジンインクの水分を乾燥させることを主とする第1の工程と、
前記水性レジンインクに含まれる樹脂成分を溶解して硬化させることを主とする第2の工程と、
前記第2の工程後の前記メディアを冷却することを主とする第3の工程と、
に区分し、
前記載置台に載置されている前記メディアの載置状態を変更することなく、前記乾燥条件を、前記第1乃至第3の工程毎に切り替えることで、前記第1乃至第3の各工程を順次、実施する、
請求項1に記載の水性レジンインク乾燥装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1の工程では、
乾燥時間を第1の時間に設定し、前記ファン制御値を、第1のファン制御値に設定し、前記ヒータ制御値を、前記メディアの表面付近の温度が、前記水性レジンインクに含まれる樹脂成分のガラス転移温度よりも低くなる第1のヒータ制御値に設定し、
前記第2の工程では、
乾燥時間を第2の時間に設定し、前記ファン制御値を、前記1のファン制御値よりも小さい第2のファン制御値に設定し、前記ヒータ制御値を、前記メディアの表面付近の温度が、前記水性レジンインクに含まれる樹脂のガラス転移温度以上となる第2のヒータ制御値に設定し、
前記第3の工程では、
乾燥時間を第3の時間に設定し、前記ファン制御値を、前記第2のファン制御値よりも大きい第3のファン制御値に設定し、前記ヒータ制御値を、前記ヒータがオフとなる第3のヒータ制御値に設定する、
請求項4に記載の水性レジンインク乾燥装置。
【請求項6】
水性レジンインクによる印刷がなされたメディアを、乾燥室内の載置台に平置きに載置し、熱風によって前記水性レジンインクの乾燥工程を実施する場合に、前記乾燥工程を、
前記水性レジンインクの水分を乾燥させることを主とする第1の工程と、
前記水性レジンインクに含まれる樹脂成分を溶解して硬化させることを主とする第2の工程と、
前記第2の工程後の前記メディアを冷却することを主とする第3の工程と、
に区分し、
前記メディアの載置状態を変更することなく、前記第1乃至第3の工程毎に乾燥条件を切り替え、前記第1乃至第3の各工程を順次、実施する、水性レジンインクの乾燥制御方法。
【請求項7】
熱風を生成するファン、及びヒータを備える少なくとも1つのファンヒータユニットを用いると共に、前記第1の工程では、
乾燥時間を第1の時間に設定し、
前記ファンの風量を第1のファン風量値に設定し、
前記ヒータの温度を、前記メディアの表面付近の温度が、前記水性レジンインクに含まれる樹脂成分のガラス転移温度よりも低くなる第1の温度値に設定し、
前記第2の工程では、
乾燥時間を第2の時間に設定し、
前記ファンの風量を、前記1のファン風量値よりも小さい第2のファン風量値に設定し、
前記ヒータの温度を、前記メディアの表面付近の温度が、前記水性レジンインクに含まれる樹脂のガラス転移温度以上となる第2の温度値に設定し、
前記第3の工程では、
乾燥時間を第3の時間に設定し、前記ファンの風量を、前記第2のファン風量値よりも大きい第3のファン風量値に設定し、前記ヒータはオフする、
請求項6に記載の、水性レジンインクの乾燥制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性レジンインク乾燥装置、及び水性レジンインクの乾燥制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、屋内外の装飾やパネルの制作には、従来、溶剤インクを使ったインクジェット方式の印刷が広く用いられてきたが、溶剤インクにはVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)が多く含まれており、人体への悪影響が懸念されるという課題を抱えており、この課題を解消するべく、近年、水性の熱硬化性インクである水性レジンインク、言い換えれば、樹脂を含有するラテックスインクが開発され、ロールメディアを取り扱うインクジェットプリンタの実機での使用例もみられるようになった。
【0003】
水性レジンインクは、水性インクではあるが、耐候性を有し、また、多様なメディア(記録媒体)に印刷が可能であるという利点をもつ。
【0004】
また、水性レジンインクは、載置部の載置面に平置きされて印刷、乾燥が実施される多様なメディア(すなわち、フラットベッド型の印刷装置で印刷され、フラットベッド型の乾燥装置で印刷される多様なメディア)への適用も期待されている。
【0005】
水性レジンインク(ラテックスインク)は、インクジェットプリンタによるメディアへの塗布後、熱乾燥によって、水分を蒸発させると共に、樹脂を溶解、硬化させて塗膜を定着させる必要がある。水性レジンインクの乾燥においては、樹脂を溶解、硬化させるという、かなり高温(具体的にはガラス転移温度:一般に70℃以上)の加熱工程が必要である。メディアの乾燥には乾燥装置が使用される。
【0006】
下記特許文献1の[0069]には、樹脂の転移温度(ガラス転移温度)に関し、「好ましくは120℃以下であり、印刷物の耐擦性をより向上させる観点から、より好ましくは90℃未満であり、さらに好ましくは80℃以下である」との記載がある。
【0007】
また、特許文献1の請求項1には、「凝集剤を含む処理液を記録媒体に付着する処理液付着工程と、色材を含む水系インク組成物を、インクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着するインク付着工程と、処理液及び水系インク組成物が付着した記録媒体を、第1加熱機構により、第1表面温度に加熱する第1加熱工程と、第1加熱工程の後に冷却機構により記録媒体を冷却する冷却工程と、冷却工程の後に記録媒体を、第1加熱機構よりも記録媒体搬送方向の下流側に設けた第2加熱機構により、第1表面温度よりも高い第2表面温度に加熱する第2加熱工程と、を実施するインクジェット記録装置」が示されている。
【0008】
また、この特許文献1の[0004]には、「凝集剤を含有する処理液を使用した場合、印刷画像に白いもやが発生すること」が記載されている。そして、特許文献1の[0005]には、第1加熱工程後(かつ第2加熱工程前)に、記録媒体を冷却する冷却工程を設けることで、白もやの発生が抑制できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-070244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
印刷後におけるメディアの乾燥工程は、例えば、UVインク等を用いた印刷の後においても実施されるが、しかし、水性レジンインクの乾燥においては、上述のとおり、樹脂を溶解、硬化させるという、かなり高温の加熱工程が必要である。
よって、乾燥工程においては、UVインク等の乾燥と比べて、かなりの電力が必要となり、乾燥装置の高パワー化、大型化が必要となると想定され、この場合、現状の印刷装置では対応できない場合も予想され得る。
【0011】
また、屋内あるいは屋外にて設置される、広告、看板、のぼり、垂れ幕、バナー、カーマーキング、ディスプレイ等(これらは一般にサイングラフィックスと称される)をフラットベッド型の印刷装置にて印刷することも想定され得る。この場合、印刷後のメディアは、フラットベッド型の乾燥装置で乾燥されることになる。
【0012】
また、水性レジンインクを用いた印刷に用いられるメディアは、例えば70℃~90℃の高温に耐えることができる熱に強い性質をもつ必要がある。
但し、メディアが熱に耐えることができても、印刷された画像の品質が高温処理により劣化したのでは、実用に耐える乾燥を実現することはできない。
使用されるメディアの種類は多種多様である。その多様なメディアに対して、熱によるダメージを抑制し、高温処理による画像劣化を抑制するように、適切な乾燥処理を実施する必要がある。
【0013】
このような課題に関しては、上記特許文献1には何ら開示されておらず、その解決手段についても言及されていない。
また、特許文献1には、第1表面温度にて第1加熱工程を実施し、次に冷却工程を実施し、次に、第1表面温度よりも高い第2表面温度に加熱する第2加熱工程を実施する旨が記載されているが、これは、凝集剤を含む処理液を使用することによる「白もや」の発生を防止するためであり、凝集剤による「白もや」の発生は、本発明とは関係がない。
【0014】
また、本発明では、水性レジンインクにより印刷されたメディアを、乾燥室内に平置きに載置して乾燥処理を施す、いわゆるフラットベッドタイプの乾燥手段を用いる。これに対して、特許文献1は、巻取り可能なロール状のメディアを搬送しながら印刷や乾燥を実施するタイプであり、本発明とは乾燥手法が根本的に異なる。
【0015】
一方、本発明者は、メディアに水性レジンインクにて画像を印刷し、その後フラットベッド型の乾燥装置によって適切な乾燥処理を実施することについて種々、検討し、以下の知見を得た。
【0016】
(1)水性レジンインクに含まれる水分を乾燥させる乾燥プロセスと、樹脂を溶解させる乾燥プロセスとが必要であり、各乾燥プロセスを最適化しないと、所望の品質の画像が得られない場合があり、また、無駄な電力消費が生じて電力の抑制が困難化する場合がある。
(2)乾燥処理を終了したメディアに、さらに印刷を施す場合は、メディアを印刷装置に戻す(あるいは印刷可能状態に戻す)必要があるが、メディアが高温の状態のままであると、メディアが膨張して変形している可能性が高く、その状態でメディアを搬送すればその膨張して変形した形状が固定されてしまったり、変形がさらに助長されたりする可能性がある。
これを防止するためには、メディアの温度が下がって搬送可能な状態になるまで待つ必要があるが、この場合は、待ち時間の分だけ、次の印刷の開始が遅延するという課題が生じる。
また、メディアが高温の状態のままで印刷を無理に施せば、印刷面が変形していること等に起因して、良好な印刷ができない場合がある。
本発明は、このような本発明者の知見に基づいてなされたものである。
【0017】
本発明の一つの目的は、熱によるメディアのダメージを抑制し、高温処理による画像劣化を抑制するように適切な乾燥処理を実施できる、水性レジンインク乾燥装置を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0020】
本発明に従う態様において、水性レジンインク乾燥装置は、水性レジンインクにより印刷されたメディアが平置きに載置される載置台と、前記メディアの周囲空間を構成すると共に、熱風により前記メディアの全体を乾燥させることが可能な乾燥室と、前記熱風を生成するファン、及びヒータを備える少なくとも1つのファンヒータユニットと、前記ファンの動作を制御するファン制御部と、前記ヒータの動作を制御するヒータ制御部と、を備えると共に、前記ファン制御部のファン制御値、前記ヒータ制御部のヒータ制御値、及び乾燥時間の少なくとも1つを変更して乾燥条件を可変に制御可能である制御部と、を有すし、前記制御部は、前記ヒータ制御値として、前記水性レジンインクに含まれる樹脂のガラス転移温度以上となるヒータ制御値を設定可能であると共に、前記載置台に載置されている前記メディアに対して、その載置状態を変更することなく前記乾燥条件を変更することで、乾燥条件が異なる複数の乾燥工程を順次、実施可能である。
【0021】
本発明に従う態様によれば、水性レジンインクの乾燥を適切に実施し得る燥装置を実現することができる。
この乾燥装置は、樹脂のガラス転移温度以上の高温処理を実施することができる。
また、一台の乾燥装置の載置台にメディアを平置きし、例えば、そのメディアに対して、乾燥条件を変更しつつ複数の乾燥工程を順次、実施することができる。
【0022】
メディアを乾燥装置から取り出すことなく、種々の乾燥工程を、例えば連続的に実施することができるため効率的な、乾燥が可能である。
【0023】
また、乾燥工程を適切に管理できることから、例えば、熱によるメディアのダメージを抑制し、高温処理による画像劣化を抑制するように適切な乾燥処理が実現される。
【0024】
また例えば、乾燥工程が終了した後に適切な冷却期間を設けることも可能である。この場合は、メディアの温度が下がって例えば搬送可能な状態になるまでの時間(冷却待ち時間)を十分に短くすることができる。また、高温の乾燥処理によって、かなりの高温になっているメディアを効率的に冷却することができ、高温によるメディアの変形、画質低下等も抑制され得る。
【0025】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、水性レジンインクを使用する、フラットベッド型のインクジェットプリンタの一例の主要な構成例を示す図である。
図2図2(A)、(B)、(C)は各々、水性レジンインク乾燥装置の構成例を示す図である。
図3図3は、印刷装置とは別体で、かつ印刷装置との接続がオフラインである水性レジンインク乾燥装置の構成例を示す図である。
図4図4(A)は、印刷装置と一体で、かつ印刷装置との接続がオフラインである水性レジンインク乾燥装置の外観の一例を示す図、図4(B)は、その水性レジンインク乾燥装置の断面構造の一例を示す図である。
図5図5は、水性レジンインクの乾燥制御方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0028】
なお、本明細書において「インクジェットプリンタ」には、従来公知のインクジェット技術による印刷方式、例えば、2値偏向方式あるいは連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用したプリンタ全般を含めることができる。
【0029】
また、「プリンタ(インクジェットプリンタ)」には、2次元の画像を印刷する2Dプリンタと、3次元の造形物を造形する3Dプリンタ(3次元造形装置)とを含めることができる。
【0030】
また、「インク」という用語は広義に解釈することができる。例えば、「液体」と表現することもできる。例えば、「インクジェットプリンタ」という用語は、「液体吐出装置」、あるいは「印刷装置」と表現することも可能である。
【0031】
(第1の実施形態)
以下の説明では、メディア(記録媒体)という用語を使用するが、メディアの典型的な一例としては、厚みがあって平坦な形状のメディア(リジッドメディア)が想定され得る。但し、これは一例であり、この例に限定されるものではない。
フラッドベッド型の印刷装置、及び乾燥装置で取り扱うメディアは多様であり、例えば、紙を載置台に固定する場合もあり、また、表面の少なくとも一部に凹凸を有するメディアを使用する場合もあり得る。
【0032】
図1を参照する。図1は、水性レジンインクを使用する、フラットベッド型のインクジェットプリンタの一例の主要な構成例を示す図である。
図1において、x方向は主走査方向(左右方向)、y方向は副走査方向(奥行き方向、)、z方向は高さ方向である。
なお、図1に示されるフラットベッド型のインクジェットプリンタの構成は一例であり、図1の例に限定されるものではない。例えば、フラットベッド型のインクジェットプリンタの他の構成としては、テーブルが副走査方向に移動し、キャリッジが主走査方向に移動するものが想定され得る。
【0033】
図1には、水性レジンインクを使用するフラットベッド型のインクジェットプリンタ1(以下、単に、インクジェットプリンタと称する場合がある)の一例(ガントリー型)が示されている。
【0034】
図1の水性レジンインクを使用するフラットベッド型のインクジェットプリンタ1は、支持部20と、メディア(単にメディアと称する場合がある)10が載置される載置面23を有するフラットベッド載置部(以下、単に載置部と称する)22と、Y方向に移動可能であるガイドレール24と、ガイドレール24にガイドされてx方向に可動であり、かつ印刷ヘッド26を備えるインクジェット印刷ユニット(以下、単に印刷ユニットと称する)28と、を有する。
【0035】
印刷ヘッド26は、例えば、透明素材あるいは有色素材への印刷に際し、下地として使用可能なW(ホワイト)の水性レジンインク、オプティマイザとして機能するプライマ(図5では「PR」と表記される)、及び、プロセスカラーインクとしてのC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色の水性シアンインクをメディア10の表面(言い換えれば、メディア10の印刷面)に吐出可能である。
【0036】
なお、オプティマイザは、例えば無色透明な正電荷ポリマーと水性の補助溶媒(例えば80%以上が水)で構成される。例えば、メディア10の表面にオプティマイザが塗布されると、正電荷のオプティマイザと、負電荷の水性レジンインクの顔料粒子との間に静電引力が働き、顔料粒子がメディア10の表面(印刷面)に素早く固定され得る。
【0037】
また、印刷ユニット28は、簡易構成の、補助的な乾燥ユニット(不図示)を搭載してもよい。
【0038】
次に、図2を参照する。図2(A)、(B)、(C)は各々、水性レジンインク乾燥装置の構成例を示す図である。なお、図2(A)、(B)、(C)において、共通する部分には同じ符号を付している。
なお、「水性レジンインク乾燥装置」は、以下の説明では、単に「乾燥装置」と称する場合がある。
図2(A)において、水性レジンインク乾燥装置100は、印刷装置とは別体で、印刷装置との接続がオフラインのオーブン型の乾燥装置である。
オーブン型の乾燥装置は、閉じた空間である乾燥室(恒温槽)の内部にて熱風を生じさせ、その熱風をメディア10の上方(+Y方向)からメディア10に吹き付けて水性レジンインクを乾燥させる。なお、図中、熱風は斜線が施された矢印にて示されている。
【0039】
図2(A)において、水性レジンインク乾燥装置100は、箱状の筐体201と、水性レジンインクにより印刷されたメディア10が平置きに載置される載置台212と、メディアの周囲空間を構成すると共に、熱風によりメディアの全体を乾燥させることが可能な乾燥室203と、熱風を生成するファン230、及びヒータ220を備える少なくとも1つのファンヒータユニットFHと、ファン230の動作を制御するファン制御部330と、ヒータ220の動作を制御するヒータ制御部320と、を備えると共に、ファン制御部330のファン制御値、ヒータ制御部320のヒータ制御値、及び乾燥時間の少なくとも1つを変更して乾燥条件を可変に制御可能である制御部350と、ほこり等の異物の飛散(移動)を抑制するフィルタ(メッシュフィルタ等)199と、を有する。
【0040】
次に、図2(B)を参照する。図2(B)では、メディア10のサイズが、図2(A)に比べて大きい。これに対応するために、ファンヒータユニットFHにおいて、複数のファン及び複数のヒータが用いられる。
【0041】
図2(B)において、複数のファン230a、230b、230cがX方向に沿って配置されている。同様に、複数のヒータ220a~220cが、X方向に沿って配置されている。これにより、熱風による乾燥範囲が拡大され、よって、メディア10の全体を乾燥させることができる。
【0042】
次に、図2(C)を参照する。図2(C)には、より小型で、かつ省電力の乾燥装置の構成例を示している。
図2(C)の例では、乾燥機構30が設けられる。この乾燥機構30は、ファンヒータユニットFHと、通風部31と、を有する。
【0043】
ファンヒータユニットFHは、構造自体は図2(A)で示したものと同じであるが、そのサイズをより小さくして小型化し、かつ省電力化している。但し、図2(C)では、説明の便宜上、制御部350は不図示である。
【0044】
通風部31は、メディア10に向けて熱風を送風する、複数の送風部35a~35cを有する。1つの小型、かつ省電力のファンヒータユニットFHにより熱風を生成し、その熱風を、通風部31(中空の一本の通風管ということができる)を介して通風し、そして、異なる位置に設けられた送風部35a~35cから下方(-Z方向)に熱風を噴出(送風)させる。これにより、メディア10の全体を乾燥させることができる。
【0045】
図2(A)~(C)の乾燥装置によれば、メディアを乾燥装置から取り出すことなく、種々の乾燥工程を、例えば連続的に実施することができるため効率的な、乾燥が可能である。
また、乾燥工程を適切に管理できることから、例えば、熱によるメディアのダメージを抑制し、高温処理による画像劣化を抑制するように適切な乾燥処理が実現される。
【0046】
また例えば、乾燥工程が終了した後に適切な冷却期間を設けることも可能である。この場合は、メディアの温度が下がって例えば搬送可能な状態になるまでの時間(冷却待ち時間)を十分に短くすることができる。
また、高温の乾燥処理によって、かなりの高温になっているメディアを効率的に冷却することができ、高温によるメディアの変形、画質低下等も抑制され得る。
【0047】
図2(A)~(C)の乾燥装置によれば、熱によるメディアのダメージを抑制し、高温処理による画像劣化を抑制するように適切な乾燥処理を実施できる、水性レジンインク乾燥装置が実現される。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、図3を参照する。図3は、印刷装置とは別体で、かつ印刷装置との接続がオフラインである水性レジンインク乾燥装置の構成例を示す図である。
なお、図3の一部において、図2と共通する部分があり、この部分については同じ符号を付している。
図3の水性レジンインク乾燥装置100は、熱流によって乾燥対象を乾燥させる、箱状のオーブン型の乾燥装置である。
【0049】
例えば、先に図1に示したフラットベッド型のインクジェットプリンタ1による水性レジンインクによる印刷が終了すると、作業者は、メディア10をインクジェットプリンタ1から取り出し、インクジェットプリンタ1の近傍に設置されている水性レジンインク乾燥装置100の内部に設置する。
【0050】
水性レジンインク乾燥装置100は、恒温槽200と、乾燥装置本体300と、を有する。
【0051】
恒温槽200は、筐体202と、取っ手206が設けられた開閉扉204と、恒温槽200の内部空間208を上下に分離する隔壁210と、メディア10を載置する載置台212と、ヒータ220、及び、吸気口232を備えるファン230とを含む、少なくとも1つのファンヒータユニットFHと、メディア10の表面(言い換えれば印刷面)付近の温度を測定する熱電対等の温度計242と、を有する。
【0052】
ファンヒータユニットFHにおいて、ヒータ220がオンされ、ファン230が回転されると、ヒータ220で加熱された空気が、ファン230の吸気口232から吸い込まれて熱風(熱流)の循環が開始される。
【0053】
熱風(熱流)は、恒温槽200の内部空間208において、反時計回りに循環する。これにより、メディア10が載置されている上側の空間においては、メディア10の平面に平行に流れる安定した層流240が形成される。この層流である熱風(熱流)によって、メディア10における水分の蒸発、樹脂成分の溶解、硬化等の処理がなされる。
【0054】
また、恒温槽200によるメディア10の乾燥が実施されているときは、乾燥吸気弁244、及び排気弁250が開かれて、恒温槽200の内部空間208が強制的に換気される。すなわち、乾燥吸気弁244が開かれることで、吸気ダクト246を介して恒温槽200の内部空間208に乾燥空気が送入され、また、排気弁250が開かれることで、恒温槽200の内部の空気の一部が排気ダクト248を介して恒温槽200の外に排気される。
【0055】
なお、メディア10の乾燥が終了すると、乾燥吸気弁244は閉じられ、一方、排気弁250が開かれ、排気が実施される。その後、開閉扉204が開かれ、メディア10は、作業者によって、恒温槽200の外に搬送される。
【0056】
また、乾燥装置本体300は、入出力インタフェース(I/F)310と、恒温槽200による乾燥処理動作を制御する制御部350と、ファン230の回転を制御するモータユニット340と、を有する。
【0057】
なお、モータユニット340は、モータ342と、このモータ342とファン230とを結合するカップリング部344と、を有する。
【0058】
また、入出力インタフェース(I/F)310には、乾燥処理の内容を設定するために使用可能なコンピュータ等の入出力装置400と、実施中の乾燥処理の状態等をモニタするために使用可能な表示装置500と、が接続されている。
【0059】
制御部350は、ヒータ制御部320と、ファン制御部330と、を有する。
【0060】
ヒータ制御部320は、恒温槽200におけるメディア10の表面付近の温度を自在に制御するための制御データCOM1を設定可能、すなわちプログラミング可能なプログラマブル調節計322を有する。このプログラマブル調節計322には、温度計242で測定された温度データTMPが入力される。
【0061】
このプログラマブル調節計322に設定された制御データCOM1に基づいて、ヒータ220のヒータパワー(言い換えれば、メディア10の表面付近の温度)や、そのヒータパワーの継続時間等が、適宜、調整され得る。例えば、温度計242で測定される温度データTMPが、制御データCOM1に基づく目標値となるように負帰還制御が実施され、これにより、メディア10の表面付近の温度が所定温度に保たれる。
【0062】
また、ファン制御部330は、モータ342を制御するモータ制御装置334と、モータの回転数等を自在に制御するための制御データCOM2を設定可能、すなわちプログラミング可能なプログラマブルROM332と、を有する。
【0063】
モータ制御装置334は、ファンパワー(例えばファンの単位時間当たりの回転数)や、そのファンパワーの継続時間等が、適宜、制御され得る。モータ制御装置334には、モータ342の回転数の計測信号RTが入力される。モータ制御装置334は、入力される回転数の計測信号RTが、制御データCOM2に基づく目標値となるように負帰還制御を実施する。これにより、モータ342の回転数が所定の回転数に保たれる。
【0064】
また、プログラマブル調節計322と、モータ制御装置334とは、同期して動作可能である。この同期した動作(以降、同期動作と称する)のために、プログラマブル調節計322はモータ制御装置334に同期信号SYN1を供給し、一方、モータ制御装置334は、プログラマブル調節計322に同期信号SYN2を供給する。同期信号SYN1、SYN2により、プログラマブル調節計322とモータ制御装置334の同期動作、言い換えれば、同期制御が実現される。
【0065】
また、プログラマブル調整計322は、入出力インタフェース(I/F)310に、随時、現状の恒温槽の温度(メディア10の表面、つまり印刷面付近の温度)を示す温度モニタ信号VCを供給する。現状の恒温槽の温度は、モニタ情報として表示装置500に表示される。
【0066】
また、モータ制御装置334は、入出力インタフェース(I/F)310に、随時、現状のファンの回転数等を示すファンモニタ信号MCを供給する。現状のファンの回転数等は、随時、モニタ情報として表示装置500に表示される。
【0067】
制御部350は、ファン制御部330のファン制御値(例えば、ファンの回転数により定まるファンパワー値)、ヒータ制御部320のヒータ制御値(例えば、メディア10の表面付近の温度値により表されるヒータパワー値)、及び乾燥時間を変数として含む乾燥条件を可変に制御することができる。言い換えれば、上記の乾燥条件を、適宜、切り替えることができる。
【0068】
図3の例によれば、水性レジンインクが塗布されたメディア10を、恒温槽200内にインクが垂れないように平置きし、安定した層流の熱流(熱風)によって水性レジンインクを乾燥させることができる。
【0069】
言い換えれば、恒温槽200の載置台に載置されたメディア10に対して、ファンヒータユニットFHにより循環する熱風を生成することで、メディア10全体を均一に乾燥させることができる。
【0070】
また、その乾燥に際して、制御部350は、ファン制御値、ヒータ制御値、及び乾燥時間を変数として含む乾燥条件を可変に制御することができる。例えば、乾燥工程を複数の工程に分け、各工程において乾燥条件を切り替える、といった制御を実施することができる。
【0071】
これにより、メディア10の材質、熱耐性等の特性を十分に考慮して、メディア10の熱ダメージを十分に抑制しつつ、所望の乾燥特性を実現するために、ファン制御値、ヒータ制御値、及び、乾燥時間の各々を独立に制御し、それらの組み合わせを最適化することができる。よって、メディア10の熱ダメージの抑制と、良好な乾燥性とを両立させることが可能となる。
【0072】
(第3の実施形態)
次に、図4を参照する。図4(A)は、印刷装置と一体で、かつ印刷装置との接続がオフラインである水性レジンインク乾燥装置の外観の一例を示す図、図4(B)は、その水性レジンインク乾燥装置の断面構造の一例を示す図である。
図4(A)の水性レジン乾燥装置は、水性レジンインクを用いたインクジェットプリンタ6と一体化されているため、見方を変えれば、「乾燥装置付きの印刷装置」ということもできる。図4(A)に示されるカバー12を閉じると、その内部に、略式の乾燥室205が構成されることになる。
なお、「略式」は、略閉じた空間、すなわち、完全な密閉空間ではなく、厳密には恒温槽にはなっていないが、概ね内部の温度が所定温度に保たれる構成である、という意味である。
また、図4(B)において、熱風の移動が矢印にて示されている。
【0073】
図4(A)において、水性レジンインクを用いたインクジェットプリンタ6は、レール8と、このレール8に沿って移動可能な印刷ヘッド9と、載置面15を有するプラテン(載置部)14と、プラテン14の載置面15上に載置されるメディア10と、乾燥機構40と、乾燥機構40の一部を構成する通風部41と、カバー12と、を有する。
図4(A)では、カバー12は開かれており、略式の乾燥室は構成されていない。
【0074】
図4(B)は、インクジェットプリンタ6のカバー12が閉じられることで、略式の乾燥室205が構成され、また、熱流(熱風)37を反時計回りに循環させる循環流路207も構成される。
なお、図4(B)において構成される、印刷装置と一体の(略式の)乾燥装置には、説明の便宜上、符号209を付している。以下の説明では、「乾燥装置209」と称する場合がある。
【0075】
図4(B)では、先に説明した図2(C)の乾燥機構30と同様の構成の乾燥機構40が採用されている。この乾燥機構40は、ファンヒータユニットFH’と、通風部41と、を有する。なお、図2(C)の場合と同様に、説明の便宜上、制御部は不図示である。
【0076】
通風部41は、メディア10に向けて熱風を送風する、複数の送風部36a~36cを有する。1つの小型、かつ省電力のファンヒータユニットFH’により熱風を生成し、その熱風を、通風部41(中空の一本の通風管ということができる)を介して通風し、そして、異なる位置に設けられた送風部36a~36cから下方(-Z方向)に熱風を噴出(送風)させる。これにより、メディア10の全体を乾燥させることができる。
【0077】
熱風による乾燥処理が実施されている期間においては、循環流路207を経由して、熱風が反時計回りに循環する。
これにより、乾燥装置209における+Y側の、外部と内部と境界付近(下側の隙間)においては、下降する循環流である熱流(熱風)37aが空気を巻き込むように流れている。よって、+Y側の端部における内部の気圧の一部が、外気に対して負圧となり、よって外部から乾燥装置209内に吸気流39aが流れる。
【0078】
また、乾燥装置209内のメディア10の表面には、メディア10の表面付近を+Y側から-Y側に流れる熱流37b、37cが存在する。
【0079】
ここで、熱流(熱風)37cの一部は、排気流39bとなって外部に排出されるが、その他の部分は、-Y側の乾燥装置209の内壁によって進行を阻まれ、上方へと向きを変え、熱流(熱風)37dが生じる。これによって、反時計回りに流れる循環流(熱流37)が生成される。
【0080】
また、+Y側において、下降する循環流である熱流(熱風)37a、及び、-Y側において、上昇する循環流である熱流(熱風)37dは、共に、時間的に連続して生じる。この連続的な熱流(熱風)37a、37dがエアカーテンの役割を果たして、略閉じた空間となり、乾燥室205内の温度の変動が抑制される。すなわち、乾燥室205内の温度は、若干の誤差(但し、許容範囲内である)は生じるが、概ね、所定(一定)の温度に維持できているとみなすことが可能である。
【0081】
(第4の実施形態)
図5を参照する。図5は、水性レジンインクの乾燥制御方法の一例を示す図である。
【0082】
なお、以下の説明では、「樹脂(あるいは樹脂成分)の溶解、硬化」という用語を使用する。
本発明で使用される水性レジンインクには、ラテックス樹脂(単に樹脂と記載する場合がある)と称される水溶性ポリマー(分子量が大きく、水に溶ける性質をもつ分子)が含まれている。
このラテックス樹脂は、塗布された当初は水に溶けていないが、加熱することで水に溶解して硬化する。本実施形態では、水性レジンインクに含まれる水分を蒸発させて乾燥させる工程と、樹脂(樹脂成分)を溶解、硬化させる工程とを区別し、各工程において、メディアに与えられる熱ダメージ(熱的な損傷:例えば、熱による変形や変色等)を抑制する。この点の詳細については、後述する。
【0083】
また、水に溶けて液状(あるいはゴム状)の状態となったラテックス樹脂は、加温が継続されると、やがてガラス転移して、ガラス状の状態となる。ガラス転移するときの温度を「ガラス転移温度」と称する。
樹脂を溶解させて硬化するためには、ガラス転移温度以上の温度で、樹脂を加熱する必要がある。但し、樹脂のガラス転移温度は、例えば、70℃程度であり、かなり高いため、加熱に際しては、メディアに変形や変色等を生じさせないように、適切な乾燥条件の設定がなされることが好ましい。この点についても後述する。
【0084】
メディア10に水性レジンインクによる印刷をする場合の印刷工程は、図5のA-1に示す白インクの印刷工程と、A-2に示す乾燥工程と、A-3に示すC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色の印刷工程と、A-4に示す乾燥工程と、に区分される。ただし、白インクの印刷工程とC、M、Y、Kの各色の印刷工程とのうち、いずれか一方だけでもよいし、さらに別のインクの印刷工程が含まれていてもよい。なお、以下では白インクの印刷工程の後にC、M、Y、Kの各色の印刷工程を行う場合を説明するが、工程の順序はこれに限定されない。
【0085】
また、図5のA-2、A-4に示される乾燥工程においては、先に図2図3に示した制御部350は、乾燥工程を、水性レジンインクの水分を乾燥させることを主とする第1の工程と、水性レジンインクに含まれる樹脂成分を溶解して硬化させることを主とする第2の工程と、メディアを冷却することを主とする第3の工程とに区分し、乾燥条件を、第1乃至第3の工程毎に切り替える制御を実施する。
【0086】
以下の説明では、図3に示した、水性レジンインク乾燥装置100を使用することとする。
但し、図2(A)~(C)に示した乾燥装置100を使用してもよい。また、図4の(A)、(B)に示したものも、必要に応じて使用してもよい。
【0087】
例えば、図3に示した水性レジンインク乾燥装置100の使用者が、上記の制御データCOM1、COM2を事前に制御部350に与えることで、メディア10の熱ダメージを抑制しつつ、水性レジンインクの良好な乾燥特性が実現されるように、水性レジンインク乾燥装置100を制御する。
【0088】
以下、印刷工程に沿って、順を追って説明する。
【0089】
ステップS1において、メディア10上に、オプティマイザとしてのプライマPR、及び、下地形成のためのホワイトインク(WH)を塗布(印刷)する。プライマPRを塗布することで、水性レジンインクの定着性が向上し、印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【0090】
ステップS1が終了した状態では、図5のA-5に示すように、プライマPRの層上に、水性顔料PIG、樹脂RSN、水分WATを含む、水性レジンインクであるホワイトインクWHが塗布(印刷)されている。
【0091】
続いて、ステップS2では、作業者によって、ホワイトインクの塗布後のメディア10が、フラットベッド型のインクジェットプリンタ1から取り出され、そのメディア10が、乾燥装置100の恒温槽200内にセットされる。すなわち、メディア10が、恒温槽200の載置台212上に平置きに載置される。
【0092】
続いて、乾燥工程が実施される。乾燥工程では、上述のとおり、水分の乾燥を主とする第1の工程としての水分乾燥工程(ステップS3)と、樹脂成分の溶解と硬化を主とする第2の工程としての樹脂溶解工程(ステップS4)と、メディアを冷却することを主とする第3の工程としての冷却工程(ステップS5)に分けて、各工程にて、ファン制御値、ヒータ制御値、及び乾燥時間を変数として含む乾燥条件が可変に制御される。
【0093】
本実施形態において、乾燥条件は、ファン制御値としてのファンパワー値、ヒータ制御値としてのヒータパワー値、及び乾燥時間の3つの変数によって表現することができる。
言い換えれば、本実施形態での乾燥条件は、ファン制御値、ヒータ制御値、及び乾燥条件を変数として含む。本実施形態では、その乾燥条件を、工程毎に切り替える制御が実施される。
本実施形態では、例えば、水分乾燥工程は、樹脂の溶解及び硬化の工程とは明確に区別される。よって、水分乾燥工程では、水分の蒸発による乾燥に特化した乾燥条件を設定することができる。
【0094】
このため、多様な材質からなるメディアの熱特性を十分に考慮して、そのメディアの熱ダメージを抑制しつつ、水分の効率的な蒸発に的を絞った乾燥を実現することができる。
【0095】
一方、樹脂の溶解及び硬化の工程では、樹脂の溶解、硬化で重要となる温度管理を重視した乾燥条件を設定することで、メディアの熱ダメージを抑制しつつ、樹脂の溶解、硬化に的を絞った乾燥を実現することができる。
【0096】
また、乾燥後にメディアを冷却する工程を設けることで、膨張したメディアが元に戻り、メディアの取り出しの際に変形等が生じる可能性も十分に低減される。よって、次の印刷を早く始めることが可能となる。
【0097】
以下、具体的に説明する。
ファン230の風量は、ファンの回転数(言い換えれば、モータ342の回転数)に比例する。すなわち、ファンのパワー(ファンパワー)は、ファンの風量で示され、そのファンの風量はファンの回転数により定まることから、ファンのパワーは、ファンの回転数に基づいて定義することができる。
【0098】
例えば、図5のA-2のステップS3では、水分乾燥工程でのファンパワーが80%と示されている。これは、ファンの最大パワー(言い換えれば、ファンの最大の回転数)を100%としたとき、ステップS3では、最大パワーの80%に相当するファンパワー(ファンの回転数)が選択される、ということである。この場合の「80%」が「ファン制御値」に相当する。
【0099】
また、例えば、ファンの風量を一定に保った状態で、ヒータ220自体の温度(ヒータ温度)を上昇させると、熱流(熱風)の温度が上昇し、メディア10の表面付近の温度が上昇する。すなわち、ヒータ温度とメディア10の表面付近の温度とは一対一の対応関係にある。よって、ヒータのパワー(ヒータパワー)は、メディアの表面付近の温度によって表すことができる。
【0100】
ステップS3では、水分乾燥工程でのヒータパワーが60℃と示されているが、これは、言い換えれば、メディアの表面付近の温度が60℃になるようなヒータ温度が選択されている、ということである。この場合の「60℃」が、「ヒータ制御値」に相当する。
【0101】
ステップS3の水分乾燥工程では、ファンパワー80%、ヒータパワー60℃(メディアの表面付近温度)、及び、乾燥時間がT1(時刻t1~t2)に設定されている。
【0102】
上述のとおり、水分乾燥工程(ステップS3)は、樹脂の溶解及び硬化の工程(ステップS4)とは明確に区別されており、ステップS3では、メディアに対する熱ダメージを十分に抑制しつつ、水分の効率的な蒸発に的を絞って乾燥条件を設定することができる。
【0103】
すなわち、ステップS3では、ヒータパワーは、樹脂のガラス転移温度を70℃とすると、そのガラス転移温度未満となるように「60℃」に設定し、メディアに対する熱ダメージを低減している。
【0104】
一方、温度を低下させると、飽和蒸気圧が下がって水分の乾燥の点では不利となるが、ここでは、ファンパワーを「80%」と高めに設定することで、送風量を増やし、湿度(水蒸気の飽和度)を下げることで水分の蒸発を促進し、良好な水分の乾燥特性を確保している。
【0105】
また、上記の適切なファンパワー、ヒータパワーの制御が実施されるため、水分乾燥工程における乾燥時間は、比較的短いT1に設定でき、よって、乾燥時間が長くなることが抑制される。時間T1は、例えば「5分」である。
【0106】
このステップS3では、図5のA-6に示されるように、水性レジンインクの水分WATが蒸発により減少し、一方、レジンRSNの粒子は凝集して粒子径が大きくなる。
【0107】
ステップS4では、樹脂溶解、硬化の工程が実施される。ステップS4では、樹脂を溶解させた後、ガラス転移させてガラス状にする必要があるため、ヒータパワーは、樹脂のガラス転移温度(70℃)を超える「80℃」に設定される。
【0108】
一方、ファンパワーは、「30%」に設定される。ファンパワーが大きすぎると、送風量が増大し、メディアからの放熱量が増え、メディアの表面付近を80℃という高い温度に維持できなくなり、一方、送風量が小さすぎる場合は、メディアを加熱するのに必要な熱エネルギーを、メディア10の表面に十分に伝達することができなくなる。これらの点を考慮して、ステップS4では、ファンパワーは弱めの「30%」に設定している。
【0109】
この結果、ステップS4の樹脂溶解、硬化工程での乾燥時間は、比較的短いT2(時刻t2~t3)に設定でき、乾燥時間が長くなることが抑制される。時間T2は、例えば「5分」である。
【0110】
このステップS4では、図5のA-7に示されるように、レジンRSNが溶解、硬化して、メディアの表面を覆う塗膜が形成される。
【0111】
ステップS5では、メディアの冷却工程が実施される。このステップS5では、ヒータパワーは必要ではなく、よって、ヒータは「オフ」される。一方、ファンパワーは、ステップS4におけるファンパワーよりも大きくする。好ましい一例として、ステップS5では、最大のファンパワーとしている。言い換えれば、メディアからの放熱を促進するために、好ましい一例では、ファンパワーが「100%」に設定される。また、ステップS5の時間T3は、例えば、「3分」である。
【0112】
乾燥後にメディアを冷却することで、膨張したメディアが元に戻り、メディアの取り出しの際に変形等が生じる可能性も十分に低減される。よって、次の印刷(CMYKの印刷)を早く始めることが可能となる。
【0113】
ステップS5では、図5のA-8に示されるように、メディアの冷却に伴い、レジンの塗膜に残存していた水分が蒸発し、メディアの表面を隙間なく覆う耐久性の高い塗膜が形成される。
【0114】
図5のA-3に示されるCMYK印刷工程では、メディア10は、再び、フラットベッド型のインクジェットプリンタ1にセットされる。ステップS6は、プライマ、及び、C、M、Y、K各色のインクがメディア10上に塗布される。
【0115】
ステップS7では、メディアの乾燥装置へのセッティングが実施される。すなわち、メディア10は、作業者によって、フラットベッド型のインクジェットプリンタ1から取り出され、再び、水性レジンインク乾燥装置100における恒温槽200の載置台212に、平置きに載置される。
【0116】
図5のA-4に示される乾燥工程では、C、M、Y、Kの各色のインクが塗布されたメディアに対して、水分乾燥(ステップS8)、樹脂溶解と硬化(ステップS9)、メディア冷却(ステップS10)の各乾燥工程が実施される。各工程(ステップS8~S10の内容は、先に説明したステップS3~S5と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0117】
ステップS8では、ファンパワーは「80%」に設定され、ヒータパワーは「60℃」に設定され、時間T4(時刻t5~t6)は「5分」に設定される。
【0118】
ステップS9では、ファンパワーは「30%」に設定され、ヒータパワーは「80℃」に設定され、時間T5(時刻t6~t7)は「5分」に設定される。
【0119】
ステップS10では、好ましい例としてファンパワーは「100%」に設定される(但し、これに限定されない。広義には、ステップS9におけるファンパワー値よりも大きく設定される)。また、ヒータパワーは「オフ」に設定され、時間T6(時刻t7~t8)は「3分」に設定される。
【0120】
以上説明したように、本発明の1つの態様によれば、水性レジンインクにより印刷されたメディア10が平置きに載置される載置台212と、メディア10の周囲空間を構成すると共に、熱風によりメディアの全体を乾燥させることが可能な乾燥室203と、熱風を生成するファン、及びヒータを備える少なくとも1つのファンヒータユニットFHと、ファン230の動作を制御するファン制御部330と、ヒータ220の動作を制御するヒータ制御部320と、を備えると共に、ファン制御部330のファン制御値、ヒータ制御部320のヒータ制御値、及び乾燥時間の少なくとも1つを変更して乾燥条件を可変に制御可能である制御部350と、を有し、制御部350は、ヒータ制御値として、水性レジンインクに含まれる樹脂のガラス転移温度以上となるヒータ制御値を設定可能であると共に、載置台212に載置されているメディア10に対して、その載置状態を変更することなく乾燥条件を変更することで、乾燥条件が異なる複数の乾燥工程を順次、実施することができる。
【0121】
第1の態様によれば、水性レジンインクの乾燥を適切に実施し得る燥装置を実現することができる。
本態様の乾燥装置は、樹脂のガラス転移温度以上の高温処理を実施することができる。よって、水性レジンインクの乾燥が可能である。
また、一台の乾燥装置の載置台にメディアを平置きし、例えば、そのメディアに対して、乾燥条件を変更しつつ複数の乾燥工程を順次、実施することができる。
メディアを平置きできるため、例えば、厚みのある、硬いメディア等に対しても印刷が可能である。
また、メディアを乾燥装置から取り出すことなく、種々の乾燥工程を、例えば連続的に実施することができるため、効率的な、乾燥が可能である。
また、乾燥工程を適切に管理できることから、例えば、熱によるメディアのダメージを抑制し、高温処理による画像劣化を抑制するように適切な乾燥処理が実現される。
また例えば、乾燥工程が終了した後に適切な冷却期間を設けることも可能である。この場合は、メディアの温度が下がって例えば搬送可能な状態になるまでの時間(冷却待ち時間)を十分に短くすることができる。また、高温の乾燥処理によって、かなりの高温になっているメディアを効率的に冷却することができ、高温によるメディアの変形、画質低下等も抑制され得る。
【0122】
第1の態様に従属する第2の態様において、水性レジンインク乾燥装置は、オーブン型の乾燥装置であると共に、水性レジンインクをメディアに印刷する印刷装置とは別体であってもよい。
【0123】
第2の態様によれば、印刷装置と別体の、オーブン型の乾燥装置により、多様なメディアを乾燥することができる。
印刷装置とは別体であるため、メディアの大型化にも対応でき、また、乾燥装置の高パワー化(高出力化)にも対応可能である。
【0124】
第1の態様に従属する第3の態様において、乾燥室は、メディアの周囲空間を略閉じた空間とすることで構成される、略密閉の乾燥室であり、水性レジンインク乾燥装置は、水性レジンインクをメディアに印刷する印刷装置と一体的であってもよい。
【0125】
第3の態様によれば、水性レジンインク乾燥装置を、印刷装置と一体化することができる。言い換えれば、例えば、乾燥装置付きの、水性レジンインクに対応したインクジェットプリンタが実現される。
【0126】
第1乃至第3の何れか1つの態様に従属する第4の態様において、制御部は、メディアの乾燥工程を、水性レジンインクの水分を乾燥させることを主とする第1の工程と、水性レジンインクに含まれる樹脂成分を溶解して硬化させることを主とする第2の工程と、メディアを冷却することを主とする第3の工程と、に区分し、載置台に載置されているメディアの載置状態を変更することなく、乾燥条件を、第1乃至第3の工程毎に切り替えることで、前記第1乃至第3の各工程を順次、実施してもよい。
【0127】
第4の態様では、乾燥工程を3つの工程に明確に区分し、各工程において乾燥条件を切り替える。水分乾燥工程では、水分の蒸発による乾燥に特化した乾燥条件を設定することができる。よって、多様な材質からなるメディアの熱特性を十分に考慮して、そのメディアの熱ダメージを抑制しつつ、水分の効率的な蒸発に的を絞った乾燥を実現することができる。
樹脂の溶解及び硬化の工程では、樹脂の溶解、硬化で重要となる温度管理を重視した乾燥条件を設定することで、メディアの熱ダメージを抑制しつつ、樹脂の溶解、硬化に的を絞った乾燥を実現することができる。
また、乾燥後にメディアを冷却する工程を設けることで、高温処理にて高い温度となったメディアを効率的に冷やすことができ、冷却待ち時間が短縮される。よって、次の印刷を早く始めること等が可能となる。また、膨張したメディアが元に戻り、メディアの取り出しの際に変形等が生じる可能性も十分に低減される。
【0128】
第4の態様に従属する第5の態様において、制御部は、第1の工程では、乾燥時間を第1の時間に設定し、ファン制御値を、第1のファン制御値に設定し、ヒータ制御値を、メディアの表面付近の温度が、水性レジンインクに含まれる樹脂成分のガラス転移温度よりも低くなる第1のヒータ制御値に設定し、第2の工程では、乾燥時間を第2の時間に設定し、ファン制御値を、第1のファン制御値よりも小さい第2のファン制御値に設定し、ヒータ制御値を、メディアの表面付近の温度が、水性レジンインクに含まれる樹脂のガラス転移温度以上となる第2のヒータ制御値に設定し、第3の工程では、乾燥時間を第3の時間に設定し、ファン制御値を、第2のファン制御値よりも大きい第3のファン制御値に設定し、ヒータ制御値を、ヒータがオフとなる第3のヒータ制御値に設定してもよい。
【0129】
第5の態様では、水分の乾燥工程においては、メディアへの熱ダメージを低減するためにメディアの表面付近の温度を樹脂のガラス転移温度未満に設定し、その一方、ファンパワーを強めに設定して送風量を増やすことで、湿度(水蒸気の飽和度)を下げて水分の蒸発を促進させる。乾燥時間は第1の時間に短縮でき、この点でもメディアに与える熱ダメージが低減される。
樹脂の溶解、硬化工程においては、樹脂の溶解、硬化のために、温度を樹脂のガラス転移温度以上に設定し、一方、送風量が多すぎると、メディアの表面温度が下がり、逆に送風量が少なすぎると、メディアの表面に伝達する熱エネルギーが減って温度を維持できないため、これらを考慮し、温度を維持できる程度の送風量は確保しつつ、ファンパワーは弱めに設定する。乾燥時間は第2の時間に短縮でき、この点でもメディアに与える熱ダメージが低減される。
また、メディアの冷却工程では、ヒータパワーは必要ではなく、よって、ヒータはオフされる。一方、ファンパワーは、第2のファン制御値よりも大きい第3のファン制御値とする(好ましい一例では、例えば送風量を最大化する)ことで、メディアからの放熱を促進し、メディアの冷却を早める。乾燥時間は第3の時間に短縮でき、この点でもメディアに与える熱ダメージが低減される。
【0130】
第6の態様において、水性レジンインクの乾燥制御方法は、水性レジンインクによる印刷がなされたメディアを、乾燥室内の載置台に平置きに載置し、熱風によって水性レジンインクの乾燥工程を実施する場合に、乾燥工程を、水性レジンインクの水分を乾燥させることを主とする第1の工程と、水性レジンインクに含まれる樹脂成分を溶解して硬化させることを主とする第2の工程と、メディアを冷却することを主とする第3の工程と、に区分し、メディアの載置状態を変更することなく、第1乃至第3の工程毎に乾燥条件を切り替え、第1乃至第3の各工程を順次、実施する。
【0131】
第6の態様の水性レジンインクの乾燥制御方法によれば、乾燥工程を3つの工程に明確に区分し、各工程において乾燥条件を切り替える。水分乾燥工程では、水分の蒸発による乾燥に特化した乾燥条件を設定することができる。よって、多様な材質からなるメディアの熱特性を十分に考慮して、そのメディアの熱ダメージを抑制しつつ、水分の効率的な蒸発に的を絞った乾燥を実現することができる。
樹脂の溶解及び硬化の工程では、樹脂の溶解、硬化で重要となる温度管理を重視した乾燥条件を設定することで、メディアの熱ダメージを抑制しつつ、樹脂の溶解、硬化に的を絞った乾燥を実現することができる。
また、乾燥後にメディアを冷却する工程を設けることで、高温処理にて高い温度となったメディアを効率的に冷やすことができ、冷却待ち時間が短縮される。よって、次の印刷を早く始めること等が可能となる。また、膨張したメディアが元に戻り、メディアの取り出しの際に変形等が生じる可能性も十分に低減される。
【0132】
第6の態様に従属する第7の態様において、熱風を生成するファン、及びヒータを備える少なくとも1つのファンヒータユニットを用いると共に、第1の工程では、乾燥時間を第1の時間に設定し、ファンの風量を第1のファン風量値に設定し、ヒータの温度を、メディアの表面付近の温度が、水性レジンインクに含まれる樹脂成分のガラス転移温度よりも低くなる第1の温度値に設定し、第2の工程では、乾燥時間を第2の時間に設定し、記ファンの風量を、第1のファン風量値よりも小さい第2のファン風量値に設定し、ヒータの温度を、メディアの表面付近の温度が、前記水性レジンインクに含まれる樹脂のガラス転移温度以上となる第2の温度値に設定し、第3の工程では、乾燥時間を第3の時間に設定し、ファンの風量を、第2のファン風量値よりも大きい第3のファン風量値に設定し、ヒータはオフしてもよい。
【0133】
第7の態様では、水分の乾燥工程においては、メディアへの熱ダメージを低減するためにメディアの表面付近の温度を樹脂のガラス転移温度未満に設定し、その一方、ファンパワーを強めに設定して送風量を増やすことで、湿度(水蒸気の飽和度)を下げて水分の蒸発を促進させる。乾燥時間は第1の時間に短縮でき、この点でもメディアに与える熱ダメージが低減される。
樹脂の溶解、硬化工程においては、樹脂の溶解、硬化のために、温度を樹脂のガラス転移温度以上に設定し、一方、送風量が多すぎると、メディアの表面温度が下がり、逆に送風量が少なすぎると、メディアの表面に伝達する熱エネルギーが減って温度を維持できないため、これらを考慮し、温度を維持できる程度の送風量は確保しつつ、ファンパワーは弱めに設定する。乾燥時間は第2の時間に短縮でき、この点でもメディアに与える熱ダメージが低減される。
また、メディアの冷却工程では、ヒータパワーは必要ではなく、よって、ヒータはオフされる。一方、ファンパワーは、第2のファン風量値よりも大きい第3のファン風量値とする(好ましい一例では、例えば最大の風量値とする)ことで、メディアからの放熱を促進し、メディアの冷却を早める。乾燥時間は第3の時間に短縮でき、この点でもメディアに与える熱ダメージが低減される。
【0134】
以上説明したように、本実施形態によれば、一台の乾燥装置で、多様なメディアに対して、多様な乾燥条件での乾燥を実現できる乾燥装置を提供することができる。
例えば、水性レジンインク(ラテックスインク)による印刷がなされたメディアにおける、主たる目的が異なる複数の乾燥工程に、一台の乾燥装置で対応可能となる。
【0135】
また、乾燥工程毎に乾燥条件を切り替えることができ、各乾燥工程を最適化することができる。これにより、多様な材質のメディアに印刷された水性レジンインクの熱乾燥に際し、メディアの熱ダメージの抑制と、良好な乾燥性とを両立させることが可能となる。
【0136】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0137】
1、6・・・水性レジンインクを使用するフラットベッド型のインクジェットプリンタ(インクジェットプリンタ、プリンタ、印刷装置)、8・・・レール、9・・・印刷ヘッド、10・・・メディア(リジッドメディア)、12・・・カバー、14・・・プラテン、15・・・載置面、20・・・支持部、22・・・フラットベッド載置部(載置部)、23・・・載置面、24・・・ガイドレール、26・・・印刷ヘッド、28・・・インクジェット印刷ユニット(印刷ユニット)、30、40・・・乾燥機構、31、41・・・通風部、100・・・水性レジンインク乾燥装置(乾燥装置)、200・・・恒温槽(乾燥炉)、201、202・・・筐体(箱状の筐体)、203・・・箱状の筐体、206・・・取っ手、204・・・開閉扉、208・・・恒温槽の内部空間、209・・・印刷装置と一体の乾燥装置(略式の乾燥装置)、210・・・隔壁、212・・・載置台、220(220a~220c)・・・ヒータ、230(230a~230c)・・・ファン(循環ファン)、232・・・吸気口、240・・・層流、242・・・温度計(熱電対等)、244・・・乾燥吸気弁、246・・・吸気ダクト、248、250、300・・・乾燥装置本体、310・・・入出力インタフェース(I/F)、320・・・ヒータ制御部、322・・・プログラマブル調節計、330・・・ファン制御部、334・・・モータ制御装置、332・・・プログラマブルROM、340・・・モータユニット、342・・・モータ、344・・・カップリング部、350・・・制御部、400・・・入出力装置、500・・・表示装置、FH(FH1~FH3)・・・ファンヒータユニット、PR・・・プライマ(オプティマイザ)、PIG・・・水性顔料、RSN・・・樹脂(ラテックス樹脂、樹脂成分)、WAT・・・水(水分)。
図1
図2
図3
図4
図5