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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027718
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】プリンタおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/01 213
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132780
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】324012246
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 文良
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB12
2C056EB29
2C056EC08
2C056EC12
2C056EC34
2C056EC37
2C056EC79
2C056EE10
2C056FA13
2C056HA22
(57)【要約】
【課題】ラインヘッドを被印刷物に対して往復移動させて、当該被印刷物に対してラインヘッドを往路と復路との双方向に走査して印刷する際に、往路と復路とで適正な印刷を行うことを可能にする。
【解決手段】復路において印刷する際には、往路において一番遅れてインクを吐出する吐出口の列を基準にして、この基準とした吐出口の列から往路とは逆の順番で吐出口の各列の印刷を開始することにより、吐出口の各列から吐出されたインクが重なるようにし、かつ、画像データを往路の画像データに対してミラー反転する。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された間隔を開けて配列された吐出口の列を複数備えるとともに、前記列が延長する方向と直交する方向において往路と復路とに往復移動して、印刷対象として供給された画像データに応じて前記吐出口の列毎に順番にインクを吐出するラインヘッドと、
前記ラインヘッドが前記復路において前記吐出口から前記インクを吐出するときに、前記往路において一番遅れて前記インクを吐出する前記吐出口の列を基準にして、前記基準とした吐出口の列から前記往路とは逆の順番で、前記複数の列の吐出口から列毎に前記インクを吐出するように制御するラインヘッド吐出順反転手段と、
前記印刷対象として供給された前記画像データに空データを付加して、前記複数の列の吐出口から列毎に吐出されたインクが重なる画像データとなるように変換するとともに、前記印刷対象として供給された前記画像データを前記往路の画像データに対してミラー反転した画像データとなるように変換する画像データ変換手段と
を有し、
前記ラインヘッドが前記復路において前記吐出口から前記インクを吐出する際に、前記画像データ変換手段により変換された画像データに応じて、前記ラインヘッド吐出順反転手段による制御に基づき前記吐出口からインクを吐出する
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタにおいて、
前記往路における前記ラインヘッドによる印刷処理動作開始位置を示す往路印刷処理動作開始位置マーカーと、
前記復路における前記ラインヘッドによる印刷処理動作開始位置を示す復路印刷処理動作開始位置マーカーと、
前記ラインヘッドに設けられ、前記往路印刷処理動作開始位置マーカーと前記復路印刷処理動作開始位置マーカーとを検知するセンサーと
を有し、
前記マーカーが前記往路印刷処理動作開始位置マーカーまたは前記復路印刷処理動作開始位置マーカーを検知すると、予め設定された距離だけ移動した後に印刷処理を開始する
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載のプリンタにおいて、
前記複数の列の間の前記間隔は、等間隔であり、
前記ラインヘッドは、前記間隔分だけ移動する毎に、前記吐出口の列毎に順番にインクを吐出する
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のプリンタにおいて、
前記複数の列は、ブラックインクを吐出する第1列と、シアンインクを吐出する第2列と、マゼンダインクを吐出する第3列と、イエローインクを吐出する第4列とであり、
前記往路においては、前記第1列、前記第2列、前記第3列、前記第4列の順番で列毎にインクを吐出し、
前記復路においては、前記第4列、前記第3列、前記第2列、前記第1列の順番で列毎にインクを吐出する
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
予め設定された間隔を開けて配列された吐出口の列を複数備えるとともに、前記列が延長する方向と直交する方向において往路と復路とに往復移動するラインヘッドにより、印刷対象として供給された画像データに応じて前記吐出口の列毎に順番にインクを吐出する印刷方法であって、
前記印刷対象として供給された前記画像データに空データを付加して、前記複数の列の吐出口から列毎に吐出されたインクが重なる画像データとなるように変換するとともに、前記印刷対象として供給された前記画像データを前記往路の画像データに対してミラー反転した画像データとなるように変換し、
前記ラインヘッドが前記復路において前記吐出口から前記インクを吐出するときに、前記往路において一番遅れて前記インクを吐出する前記吐出口の列を基準にして、前記基準とした吐出口の列から前記往路とは逆の順番で、前記変換された画像データに応じて前記複数の列の吐出口から列毎に前記インクを吐出する
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷方法において、
前記複数の列の間の前記間隔は、等間隔であり、
前記間隔分だけ移動する毎に、前記吐出口の列毎に順番にインクを吐出する
ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタおよび印刷方法に関する。さらに詳細には、本発明は、ラインヘッドを搭載したプリンタおよび当該プリンタにおける印刷方法に関する。
【0002】
なお、本明細書ならびに本特許請求の範囲において、「プリンタ」には、ラインヘッドの吐出口から被印刷物であるメディアに向けて印刷用のインクを吐出して当該メディア上に2次元の画像を印刷する、所謂、2次元プリンタと、ラインヘッドの吐出口から被印刷物である粉体材料などに向けてバインダーや水などの硬化液を吐出することにより当該粉体材料などを硬化させて3次元造形物を造形する、所謂、3次元プリンタ(三次元造形装置)との双方が含まれるものとする。
【0003】
また、本明細書ならびに本特許請求の範囲において、被印刷物には、2次元プリンタに関しては、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)やポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)などの樹脂材料、織物、布、アルミ、鉄あるいは木材などのような各種材料などからなる種々のメディアが含まれ、また、3次元プリンタに関しては、3次元造形物の原材料となる粉体材料や粉末材料などの種々の材料が含まれるものとする。
【0004】
さらに、本明細書ならびに本特許請求の範囲において、「インク」とは、例えば、溶剤系顔料インク、水性顔料インク、水性染料インク、紫外線硬化型顔料インクなどのような各種の印刷用のインクはもとより、三次元造形の際に用いる硬化液などのような液体なども含むものであって、「インク」の用語によりラインヘッドへ送液される各種の液体全般を意味するものとする。
【0005】
さらにまた、本明細書ならびに本特許請求の範囲において、ラインヘッドにおけるインクの吐出機構は特に制限されるものではなく、例えば、インクジェット方式を用いることができる。
【0006】
なお、以下においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を用いて各種の方向などについて説明するが、これらの方向については、説明の便宜上定めた方向に過ぎないものであって、本発明によるプリンタおよび印刷方法の設置態様や使用態様などを何ら限定するものではないことは勿論であって、また、本発明を何ら限定するものではない。
【背景技術】
【0007】
従来の三次元造形装置として、例えば、特開2017-125393号公報に示すように、被印刷物としての粉体材料にインクを吐出する複数の吐出口を備えたラインヘッドを搭載したものが知られている。
【0008】
こうしたラインヘッドは、上記したような三次元造形装置は勿論のこと、2次元プリンタにも広く搭載されている。
【0009】
ここで、図1には、従来より知られたラインヘッドを模式的に示す概念構成説明図があらわされている。
【0010】
ラインヘッド100は、被印刷物200に対してインクを吐出する装置であり、被印刷物200の幅方向をX方向とし、長手方向をY方向とし、高さ方向をZ方向とすると、被印刷物200よりも高さ方向(Z方向)において上方に位置するように配置される。ラインヘッド100は、被印刷物200に対して固定的に配置されており、一方、被印刷物200は、ラインヘッド100に対してY方向の一方の方向(例えば、前方向である。)に走査される。
【0011】
ラインヘッド100のX方向の寸法は、被印刷物200のX方向の寸法よりも長く設定されている。ラインヘッド100の下面100aには、被印刷物200に向けてインクを吐出する複数の吐出口102が備えられている。ラインヘッド100の吐出口102は、被印刷物200の走査方向であるY方向と直交するX方向に沿って延長するようにして直線状に配列されている。ラインヘッド100においては、X方向に沿って直線状に配列された吐出口102の列として、走査方向であるY方向に沿って前方から後方にむかって第1列102A、第2列102B、第3列102Cおよび第4列102Dの4列がそれぞれ予め設定された間隔を開けて配設されている。
【0012】
ここで、第1列102A、第2列102B、第3列102Cおよび第4列102DのX方向における長さは、被印刷物200のX方向の寸法に対応している。また、第1列102Aと第2列102Bとの間のY方向における間隔W1と、第2列102Bと第3列102Cとの間のY方向における間隔W2と、第3列102Cと第4列102Dとの間のY方向における間隔W3とは、それぞれ同一の間隔β(間隔β=間隔W1=間隔W2=間隔W3)、即ち、等間隔に寸法設定されている。
【0013】
なお、吐出口102をX方向に沿って直線状に配列する際の「直線状」とは、幾何学的に厳密な直線のみならず、おおよそ直線とみなせる点の配列を包含する。例えば、X方向に配列された吐出口102は、X方向における各吐出口102間のピッチ以下程度の寸法であれば、Y方向にずれて配置されていてもよい。
【0014】
また、ラインヘッド100におけるインクの吐出機構は特に制限されず、例えばインクジェット方式を用いることができる。
【0015】
以上の構成において、固定的に配置されたラインヘッド100に対して、被印刷物200をY方向における一方の方向(例えば、前方向である。)へ向けて移動して走査することにより、第1列102A、第2列102B、第3列102Cおよび第4列102Dの吐出口102から被印刷物200に向けてインクを吐出する。
【0016】
このように、吐出口102の列として、第1列102A、第2列102B、第3列102Cおよび第4列102Dの複数の列が設けられていることで、例えば、ラインヘッド100を三次元造形装置に搭載した場合には、ラインヘッド100全体で供給されるインクの吐出精度を高め、より高精度な造形物の造形が可能となる。また、一回の走査で供給するインクの量を増大させることができ、より堅固な三次元造形物を造形することができるようになる。
【0017】
ところで、上記したようなラインヘッド100の利用形態を拡張して生産性を向上するために、ラインヘッド100を被印刷物200に対してY方向に往復移動させて、被印刷物200に対してラインヘッド100をY方向における双方向(図1においては前方向と後方向である。)に走査して印刷する手法が考慮されている。こうした手法を採用するとともに、被印刷物200をX方向に走査することにより、より広い面積を備えた被印刷物200に対して効率よく印刷することが可能となる。
【0018】
ここで、図2には、被印刷物200に対してラインヘッド100をY方向における双方向(図2おいては左方向と右方向とである。)に走査して印刷するように構成するプリンタの一例として考えられるものを模式的に示す概念構成説明図があらわされている。なお、図2は、ラインヘッド100を図1のA矢視により配置した状態を示している。
【0019】
被印刷物200に対してラインヘッド100をY方向における双方向(図2おける左方向と右方向とである。)に走査して印刷するように構成するプリンタ300においては、ラインヘッド100は、Y方向に沿って延長するベース部材302に対して、Y方向に沿って左方向ならびに右方向に往復移動自在に構成されている。
【0020】
ラインヘッド100は、例えば、マイクロコンピュータにより構成される制御装置(図示せず。)により、当該制御装置に供給された画像データに応じてモーターなどの駆動手段(図示せず。)を制御することにより、Y方向に沿って左方向へ移動する往路とY方向に沿って右方向に移動する復路とを往復移動して印刷を行う。
【0021】
ベース部材302の予め設定された箇所には、ラインヘッド100による印刷処理動作開始位置を示す印刷処理動作開始位置マーカー304が配設されている。一方、ラインヘッド100の予め設定された箇所、例えば、Y方向における左方側端部100Lには、印刷処理動作開始位置マーカー304を検出するためのセンサー306が配設されている。なお、センサー306と印刷処理動作開始位置マーカー304とは、例えば、センサーとしてフォトインターラプターを用い、印刷処理動作開始位置マーカー304として遮光プレートを用いることができる。
【0022】
ラインヘッド100における吐出口102の列は、左方側から右方側に向けて第1列102A、第2列102B、第3列102C、第4列102Dの順に配置されている。
【0023】
ここで、ラインヘッド100による印刷動作の理解を容易にするために、ラインヘッド100は、第1列102Aによりブラックインク(BK)を吐出し、第2列102Bによりシアンインク(C)を吐出し、第3列102Cによりマゼンダインク(M)を吐出し、第4列102Dによりイエローインク(Y)を吐出するものとする。また、間隔βについては、11mmに設定されているものとする。
【0024】
プリンタ300においては、センサー306が印刷処理動作開始位置マーカー304を検知すると、制御装置の制御によって、ラインヘッド100は予め設定された移動距離たる初期移動距離α(初期移動距離αは、例えば、「固定値+最小余白」である。プリンタ300においては、「固定値=16.1mm」とし、「余白=1.5mm」とするものとし、従って、「初期移動距離α=17.6mm」となる。)だけ移動した後に第1列102Aによるブラックインクの吐出を開始する。その後、さらにラインヘッド100が間隔W1(間隔β)分の移動距離(11mm)だけ移動した後に、即ち、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm=28.6mm」だけ移動した後に、第2列102Bによるシアンインクの吐出を開始する。その後、さらにラインヘッド100が間隔W2(間隔β)分の移動距離(11mm)だけ移動した後に、即ち、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm+11mm=初期移動距離α+22mm=39.6mm」だけ移動した後に、第3列102Cによるマゼンダインクの吐出を開始する。その後、さらにラインヘッド100が間隔W3(間隔β)分の移動距離(11mm)だけ移動した後に、即ち、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm+11mm+11mm=初期移動距離α+33mm=50.6mm」だけ移動した後に、第4列102Dによるイエローインクの吐出を開始するように、吐出口102の列毎に順番にインクを吐出するように制御される。
【0025】
ここで、画像「<」を印刷するための画像データとして、図3に示す画像1データが制御装置に供給されるものとする。即ち、ブラックインク(BK)とシアンインク(C)とマゼンダインク(M)とイエロ-インク(Y)とを四層に重ねた画像「<」を形成するための画像データとして、第1列102Aによりブラックインク(BK)を吐出するためのBK1データと、第2列102Bによりシアンインク(C)を吐出するためのC1データと、第3列102Cによりマゼンダインク(M)を吐出するためのM1データと、第4列102Dによりイエローインク(Y)を吐出するためのY1データとよりなる画像1データが、制御装置に供給されるものとする。この画像1データの処理順は、「BK1データ→C1データ→M1データ→Y1データ」となる。
【0026】
図4(a)(b)(c)(d)(e)(f)には、図2に示すプリンタ300による往路におけるラインヘッド100の動作を模式的に示す説明図があらわされている。
【0027】
即ち、図3に示す画像1データが制御装置に供給されると、ラインヘッド100がY方向に沿って左方向へ移動する往路においては、センサー306が印刷処理動作開始位置マーカー304を検知すると(図4(a))、制御装置は、ラインヘッド100が初期移動距離αだけ左方向へ移動した後に、BK1データに基づき第1列102Aによるブラックインクの吐出を開始し、被印刷物200にブラックインクによる印刷を行う(図4(b))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm=28.6mm」だけ左方向へ移動した後に、C1データに基づき第2列102Bによるシアンインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたブラックインクに重ねてシアンインクの印刷を行う(図4(c))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+22mm=39.6mm」だけ左方向へ移動した後に、M1データに基づき第3列102Cによるマゼンダインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたシアンインクに重ねてマゼンダインクの印刷を行う(図4(d))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+33mm=50.9mm」だけ左方向へ移動した後に、Y1データに基づき第4列102Dによるイエローインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたマゼンダインクに重ねてイエローインクの印刷を行う(図4(e))。
【0028】
このため、上記したラインヘッド100がY方向に沿って左方向へ移動する往路においては、画像1データに基づいて、ブラックインク(BK)とシアンインク(C)とマゼンダインク(M)とイエロ-インク(Y)とを四層に重ねた正確な画像「<」が形成される(図4(f))。
【0029】
次に、図5(a)(b)(c)(d)(e)(f)は、図2に示すプリンタ300による復路におけるラインヘッド100の動作を模式的に示す説明図があらわされている。
【0030】
即ち、往路の場合と同様に、図3に示す画像1データが制御装置に供給されると、ラインヘッド100がY方向に沿って右方向へ移動する復路においては、センサー306が印刷処理動作開始位置マーカー304を検知すると(図5(a))、制御装置は、ラインヘッド100が初期移動距離αだけ右方向へ移動した後に、BK1データに基づき第1列102Aによるブラックインクの吐出を開始し、被印刷物200にブラックインクによる印刷を行う(図5(b))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm=28.6mm」だけ右方向へ移動した後に、C1データに基づき第2列102Bによるシアンインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたブラックインクから22mm(間隔W1(間隔β)+ラインヘッド100の11mmの移動距離=22mm、即ち、間隔βの2倍の距離である。)離れた位置にシアンインクの印刷を行う(図5(c))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+22mm=39.6mm」だけ右方向へ移動した後に、M1データに基づき第3列102Cによるマゼンダインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたシアンインクから22mm(間隔W2(間隔β)+11mmの移動距離=22mm、即ち、間隔βの2倍の距離である。)離れた位置にマゼンダインクの印刷を行う(図5(d))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+33mm=50.9mm」だけ右方向へ移動した後に、Y1データに基づき第4列102Dによるイエローインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたマゼンダインクから22mm(間隔W3(間隔β)+11mmの移動距離=22mm、即ち、間隔βの2倍の距離である。)離れた位置にイエローインクの印刷を行う(図5(d))。
【0031】
このため、上記したラインヘッド100がY方向に沿って右方向へ移動する復路においては、画像1データに基づいて、ブラックインク(BK)とシアンインク(C)とマゼンダインク(M)とイエロ-インク(Y)とを四層に重ねて印刷することができないとともに、印刷される画像もミラー反転した画像「>」となってしまい、正確な画像「<」を形成することができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2017-125393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明は、従来の技術に対する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ラインヘッドを被印刷物に対して往復移動させて、当該被印刷物に対してラインヘッドを往路と復路との双方向に走査して印刷する際に、往路と復路とで適正な印刷を行うことを可能にして、ラインヘッドの利用形態の拡張を図って生産性を向上させたプリンタおよび印刷方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記目的を達成するために、本発明によるプリンタおよび印刷方法は、復路において印刷する際には、往路において一番遅れてインクを吐出する吐出口の列を基準にして、この基準とした吐出口の列から往路とは逆の順番で吐出口の各列の印刷を開始することにより、吐出口の各列から吐出されたインクが重なるようにし、かつ、画像データを往路の画像データに対してミラー反転するようにしたものである。
【0035】
従って、本発明によるプリンタおよび印刷方法によれば、往路と復路との双方において適正な印刷を行うことができるようになる。
【0036】
即ち、本発明によるプリンタは、予め設定された間隔を開けて配列された吐出口の列を複数備えるとともに、上記列が延長する方向と直交する方向において往路と復路とに往復移動して、印刷対象として供給された画像データに応じて上記吐出口の列毎に順番にインクを吐出するラインヘッドと、上記ラインヘッドが上記復路において上記吐出口から上記インクを吐出するときに、上記往路において一番遅れて上記インクを吐出する上記吐出口の列を基準にして、上記基準とした吐出口の列から上記往路とは逆の順番で、上記複数の列の吐出口から列毎に上記インクを吐出するように制御するラインヘッド吐出順反転手段と、上記印刷対象として供給された上記画像データに空データを付加して、上記複数の列の吐出口から列毎に吐出されたインクが重なる画像データとなるように変換するとともに、上記印刷対象として供給された上記画像データを上記往路の画像データに対してミラー反転した画像データとなるように変換する画像データ変換手段とを有し、上記ラインヘッドが上記復路において上記吐出口から上記インクを吐出する際に、上記画像データ変換手段により変換された画像データに応じて、上記ラインヘッド吐出順反転手段による制御に基づき上記吐出口からインクを吐出するようにしたものである。
【0037】
また、本発明によるプリンタは、上記した本発明によるプリンタにおいて、上記往路における上記ラインヘッドによる印刷処理動作開始位置を示す往路印刷処理動作開始位置マーカーと、上記復路における上記ラインヘッドによる印刷処理動作開始位置を示す復路印刷処理動作開始位置マーカーと、上記ラインヘッドに設けられ、上記往路印刷処理動作開始位置マーカーと上記復路印刷処理動作開始位置マーカーとを検知するセンサーとを有し、上記マーカーが上記往路印刷処理動作開始位置マーカーまたは上記復路印刷処理動作開始位置マーカーを検知すると、予め設定された距離だけ移動した後に印刷処理を開始するようにしたものである。
【0038】
また、本発明によるプリンタは、上記した本発明によるプリンタにおいて、上記複数の列の間の上記間隔は、等間隔であり、上記ラインヘッドは、上記間隔分だけ移動する毎に、上記吐出口の列毎に順番にインクを吐出するようにしたものである。
【0039】
また、本発明によるプリンタは、上記した本発明によるプリンタにおいて、上記複数の列は、ブラックインクを吐出する第1列と、シアンインクを吐出する第2列と、マゼンダインクを吐出する第3列と、イエローインクを吐出する第4列とであり、上記往路においては、上記第1列、上記第2列、上記第3列、上記第4列の順番で列毎にインクを吐出し、上記復路においては、上記第4列、上記第3列、上記第2列、上記第1列の順番で列毎にインクを吐出するようにしたものである。
【0040】
また、本発明による印刷方法は、予め設定された間隔を開けて配列された吐出口の列を複数備えるとともに、上記列が延長する方向と直交する方向において往路と復路とに往復移動するラインヘッドにより、印刷対象として供給された画像データに応じて上記吐出口の列毎に順番にインクを吐出する印刷方法であって、上記印刷対象として供給された上記画像データに空データを付加して、上記複数の列の吐出口から列毎に吐出されたインクが重なる画像データとなるように変換するとともに、上記印刷対象として供給された上記画像データを上記往路の画像データに対してミラー反転した画像データとなるように変換し、上記ラインヘッドが上記復路において上記吐出口から上記インクを吐出するときに、上記往路において一番遅れて上記インクを吐出する上記吐出口の列を基準にして、上記基準とした吐出口の列から上記往路とは逆の順番で、上記変換された画像データに応じて上記複数の列の吐出口から列毎に上記インクを吐出するようにしたものである。
【0041】
また、本発明による印刷方法は、上記した本発明による印刷方法において、上記複数の列の間の上記間隔は、等間隔であり、上記間隔分だけ移動する毎に、上記吐出口の列毎に順番にインクを吐出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、以上説明したように構成されているので、ラインヘッドを被印刷物に対して往復移動させて、当該被印刷物に対してラインヘッドを往路と復路との双方向に走査して印刷する際に、往路と復路とで適正な印刷を行うことが可能になり、ラインヘッドの利用形態が拡張されて生産性を向上させることができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、従来より知られたラインヘッドを模式的に示す概念構成説明図である。
図2図2は、被印刷物に対してラインヘッドをY方向における双方向に走査して印刷するように構成するプリンタの一例として考えられるものを模式的に示す概念構成説明図である。なお、図2は、ラインヘッドを図1のA矢視により配置した状態を示している。
図3図3は、画像データの一例としての画像1データを示す説明図である。
図4図4(a)(b)(c)(d)(e)(f)は、図2に示すプリンタによる往路におけるラインヘッドの動作を模式的に示す説明図である。
図5図5(a)(b)(c)(d)(e)(f)は、図2に示すプリンタによる復路におけるラインヘッドの動作を模式的に示す説明図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の一例によるプリンタを模式的に示す概略構成斜視説明図である。
図7図7(a)(b)(c)は、図6に示すプリンタの要部を模式的に示す説明図である。より詳細には、図7(a)は、往路におけるラインヘッドによる印刷処理動作開始位置を示す往路印刷処理動作開始位置マーカーおよび復路におけるラインヘッドによる印刷処理動作開始位置を示す復路印刷処理動作開始位置マーカーとセンサーとの位置関係を模式的に示す図6のB矢視における説明図である。図7(b)は、図7(a)のC矢視における説明図である。図7(c)は、センサーとして用いるフォトインターラプターの説明図である。
図8図8は、図6に示すプリンタにおけるラインヘッドの往復動作にかかる各種寸法の一例を示す説明図である。
図9図9は、図6に示すプリンタにおける制御装置の本発明の実施に関連する機能的構成をあらわすブロック構成説明図である。
図10図10(a)(b)(c)(d)(e)(f)は、図6に示すプリンタによる往路におけるラインヘッドの動作を模式的に示す説明図である。
図11図11(a)(b)(c)は、図6に示すプリンタによる復路における印刷開始時のラインヘッドの動作と画像データとの関係を模式的に示す説明図である。
図12図12(a)(b)(c)(d)(e)(f)は、図6に示すプリンタによる復路における印刷結果を模式的に示す説明図である。
図13図13(a)(b)(c)は、図6に示すプリンタによる復路における印刷終了時のラインヘッドの動作と画像データとの関係を模式的に示す説明図である。
図14図14は、往路印刷処理動作開始位置マーカーおよび復路印刷処理動作開始位置マーカーとセンサーとの位置関係の他の例を示す説明図である。
図15図15は、往路印刷処理動作開始位置マーカーおよび復路印刷処理動作開始位置マーカーとセンサーとの位置関係の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるプリンタおよび印刷方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0045】
なお、以下の説明においては、図1乃至図5を参照しながら説明した各構成と同一または相当する構成については、図1乃至図5を参照する説明において用いた符号と同一の符号を付して示すことにより、その構成ならびに作用の説明は適宜に省略する。
【0046】
(I) 本発明の実施の形態の一例によるプリンタの構成の説明
図6には、本発明の実施の形態の一例によるプリンタ10を模式的に示す概略構成斜視説明図があらわされている。
【0047】
即ち、本発明の実施の形態の一例によるトプリンタ10は、固定系部材である基台部12にY方向に沿って延長して配設された固定系のベース部材14と、ベース部材14に対してY方向に沿って左右方向に往復移動自在に配置されたラインヘッド100と、基台部12にX方向に沿って延長して配設されたXレール16と、Xレール16上をX方向に往復移動自在な被印刷物載置テーブル18と、プリンタ10の各部の動作を包括的に制御する制御装置20とを有している。被印刷物200は、被印刷物載置テーブル18上に載置されてX方向に沿って走査される。ラインヘッド100における吐出口102の第1列102A、第2列102B、第3列102Cおよび第4列102Dは、Y方向と直交するX方向に沿ってそれぞれ間隔βを開けて、左方側から右方側に向けて第1列102A、第2列102B、第3列102C、第4列102Dの順に配置されている。
【0048】
なお、ラインヘッド100をベース部材14に対してY方向に沿って往復移動自在とする構成や、被印刷物載置テーブル18をXレール16上において往復移動自在とする構成などについては、制御装置20によりモーターなどの駆動手段(図示せず。)を制御することにより実現することができ、こうした技術は上記した特開2017-125393号公報などに開示された従来より公知の技術であるので、それらの詳細な説明については省略する。
【0049】
ベース部材14の予め設定された箇所、例えば、Y方向における右方側部位14Rには、往路(ラインヘッド100が、Y方向における左方向へ移動する経路である。)におけるラインヘッド100による印刷処理動作開始位置を示す往路印刷処理動作開始位置マーカー22が配設されており、Y方向における左方側部位14Lには、復路(ラインヘッド100が、Y方向における右方向へ移動する経路である。)におけるラインヘッド100による印刷処理動作開始位置を示す復路印刷処理動作開始位置マーカー24が配設されている。
【0050】
一方、ラインヘッド100の予め設定された箇所、例えば、Y方向における左方側端部100Lには、往路印刷処理動作開始位置マーカー22ならびに復路印刷処理動作開始位置マーカー24を検出するためのセンサー306が配設されている。
【0051】
センサー306と往路印刷処理動作開始位置マーカー22ならびに復路印刷処理動作開始位置マーカー24とは、例えば、図7(a)(b)(c)に示すように、センサー306として発光部306aと受光部306bとを有するフォトインターラプターを用い、往路印刷処理動作開始位置マーカー22ならびに復路印刷処理動作開始位置マーカー24として遮光プレートを用いることができる。この場合には、遮光プレートとして機能する往路印刷処理動作開始位置マーカー22または復路印刷処理動作開始位置マーカー24が、フォトインターラプターとして機能するセンサー306の発光部306aと受光部306bとの間に入ると、受光部306bにおいて発光部306aから発光された光の受光が不可となり、センサー306は往路印刷処理動作開始位置マーカー22または復路印刷処理動作開始位置マーカー24を検知する。
【0052】
ここで、図8には、図6に示すプリンタ10におけるラインヘッド100の往復動作にかかる各種寸法の一例を示す説明図あらわされている。ラインヘッド100にかかる各種の寸法として、「背景技術」の項で説明したように間隔W1、間隔W2ならびに間隔W3、即ち、間隔βについては11mmであり、センサー306が往路印刷処理動作開始位置マーカー22または復路印刷処理動作開始位置マーカー24を検知した際の初期移動距離αが17.6mmである場合には、図8に示す例のように寸法設定することが好ましい。
【0053】
(II) 本発明の実施の形態の一例によるプリンタにおける制御装置の本発明の実施に関連する機能的構成の説明
制御装置20は、上記したようにプリンタ10の各部の動作を包括的に制御するものであるが、その構成は特に限定されるものではない。制御装置20は、例えば、マイクロコンピュータにより構成される。また、マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されるものではないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から画像データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)と、上記した制御プログラムなどの各種データを格納する記憶部などを備えている。
【0054】
ここで、図9には、図6に示すプリンタ10における制御装置20の本発明の実施に関連する機能的構成をあらわすブロック構成説明図が示されており、制御装置20は、ラインヘッド吐出順反転部20aと、画像データ変換部20bとを有している。
【0055】
ラインヘッド吐出順反転部20aは、ラインヘッド100が復路において印刷する際に、往路において一番遅れてインクを吐出する吐出口の列である第4列102Dを基準にして、この基準とした第4列102Dから往路とは逆の順番、即ち、「第4列102D→第3列102C→第2列102B→第1列102A」の順番で吐出口の各列の印刷を開始するようにラインヘッド100を制御する。
【0056】
画像データ変換部20bは、調整部20b-1とミラー反転部20b-2とを有して構成されており、印刷対象として供給された画像データを復路での印刷に用いる画像データに変換する。
【0057】
調整部20b-1は、ラインヘッド100が復路において印刷する際に、センサー306が往路印刷処理動作開始位置マーカー22を検知して初期移動距離αだけ移動したときの第1列102Aの位置から、さらに「間隔β×6=66mm」だけ離れた位置で第4列102Dからイエローインク(Y)の吐出を開始するとともに、第4列102Dから吐出されたイエローインク(Y)と第3列から吐出されたマゼンダインク(M)と第2列から吐出されたシアンインク(C)と第1列から吐出されたブラックインク(BK)とが重なるように、画像データの先頭に空データを付加するとともに、空データの終了後における吐出口の各列の処理順が往路における処理順とは逆になるように調整する(図11(b)を参照する。)。
【0058】
ミラー反転部20b-2は、印刷対象として制御装置20に供給された画像データによる画像がミラー反転された画像となるように処理する(図11(c)を参照する。)。
【0059】
(III) 本発明の実施の形態の一例によるプリンタおよび印刷方法における動作の説明
以上の構成において、プリンタ10においては、制御装置20の制御により、ラインヘッド100の吐出口の第1列102A、第2列102B、第3列102Cならびに第4列102Dからインクを吐出して、被印刷物200への印刷処理を行う。
【0060】
ここで、ラインヘッド100は、「背景技術」の項で説明したと同じく第1列102Aによりブラックインク(BK)を吐出し、第2列102Bによりシアンインク(C)を吐出し、第3列102Cによりマゼンダインク(M)を吐出し、第4列102Dによりイエローインク(Y)を吐出するものとする。また、間隔W1、間隔W2ならびに間隔W3、即ち、間隔βについては、「背景技術」の項で説明したと同じく11mmに設定されているものとする。
【0061】
プリンタ10においては、ラインヘッド100が左方向へ移動する往路において印刷する際には、センサー306が往路印刷処理動作開始位置マーカー22を検知すると、「背景技術」の項で説明したセンサー306が印刷処理動作開始位置マーカー304を検知した場合と同様に、制御装置20の制御によって、ラインヘッド100は予め設定された移動距離たる初期移動距離α(初期移動距離αは、例えば、「固定値+最小余白」である。プリンタ300においては、「固定値=16.1mm」とし、「余白=1.5mm」とするものとし、従って、「初期移動距離α=17.6mm」となる。)だけ左方向へ移動した後に、第1列102Aによるブラックインクの吐出を開始する。その後、さらに、ラインヘッド100が間隔W1(間隔β)分の移動距離(11mm)だけ左方向へ移動した後に、即ち、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm=28.6mm」だけ左方向へ移動した後に、第2列102Bによるシアンインクの吐出を開始する。その後、さらに、ラインヘッド100が間隔W2(間隔β)分の移動距離(11mm)だけ左方向へ移動した後に、即ち、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm+11mm=初期移動距離α+22mm=39.6mm」だけ左方向へ移動した後に、第3列102Cによるマゼンダインクの吐出を開始する。その後、さらに、ラインヘッド100が間隔W3(間隔β)分の移動距離(11mm)だけ左方向へ移動した後に、即ち、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm+11mm+11mm=初期移動距離α+33mm=50.6mm」だけ左方向へ移動した後に、第4列102Dによるイエローインクの吐出を開始するように、吐出口102の列毎に順番にインクを吐出するように制御される。
【0062】
ここで、図10(a)(b)(c)(d)(e)(f)には、図6に示すプリンタ10による往路におけるラインヘッド100の動作を模式的に示す説明図があらわされている。
【0063】
即ち、図3に示す画像1データが制御装置20に供給されると、ラインヘッド100がY方向に沿って左方向へ移動する往路においては、センサー306が往路印刷処理動作開始位置マーカー22を検知すると(図10(a))、制御装置20は「背景技術」の項で説明したと同様に、ラインヘッド100が初期移動距離αだけ左方向へ移動した後に、BK1データに基づき第1列102Aによるブラックインクの吐出を開始し、被印刷物200にブラックインクの印刷を行う(図10(b))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+11mm=28.6mm」だけ左方向へ移動した後に、C1データに基づき第2列102Bによるシアンインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたブラックインクに重ねてシアンインクの印刷を行う(図10(c))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+22mm=39.6mm」だけ左方向へ移動した後に、M1データに基づき第3列102Cによるマゼンダインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたシアンインクに重ねてマゼンダインクの印刷を行う(図10(d))。その後に、ラインヘッド100が「初期移動距離α+33mm=50.9mm」だけ左方向へ移動した後に、Y1データに基づき第4列102Dによるイエローインクの吐出を開始し、被印刷物200に印刷されたマゼンダインクに重ねてイエローインクの印刷を行う(図10(e))。
【0064】
このため、プリンタ10においては、上記したラインヘッド100がY方向に沿って左方向へ移動する往路においては、「背景技術」の項で説明したと同様に、画像1データに基づいて、ブラックインク(BK)とシアンインク(C)とマゼンダインク(M)とイエロ-インク(Y)とを四層に重ねた正確な画像「<」が形成される(図10(f))。
【0065】
次に、プリンタ10においては、ラインヘッド100が右方向へ移動する復路において印刷する際には、制御装置20のラインヘッド吐出順反転部20aの制御によって、往路において一番遅れてインクを吐出する吐出口の列である第4列102Dを基準にして、この基準とした第4列102Dから往路とは逆の順番、即ち、「第4列102D→第3列102C→第2列102B→第1列102A」の順番で吐出口102の列毎にインクを吐出するようにして、吐出口102の各列の印刷を開始させる。
【0066】
また、画像データについては、画像データ変換部20bにより、図11(b)(c)に示すように変換される。即ち、画像データ変換部20bの調整部20b-1により、ラインヘッド100が復路において印刷する際に、センサー306が往路印刷処理動作開始位置マーカー22を検知して初期移動距離αだけ移動したときの第1列102Aの位置から、さらに「間隔β×6=66mm」だけ離れた位置で第4列102Dからイエローインク(Y)の吐出を開始するとともに、第4列102Dから吐出されたイエローインク(Y)と第3列から吐出されたマゼンダインク(M)と第2列から吐出されたシアンインク(C)と第1列から吐出されたブラックインク(BK)とが重なるように、画像データの先頭に空データを付加するとともに、空データの終了後における吐出口の各列の処理順が往路における処理順とは逆になるように調整される(図11(b)を参照する。)。また、画像データ変換部20bのミラー反転部20b-2により、印刷対象として制御装置20に供給された画像データによる画像がミラー反転された画像となるようにされる(図11(c)を参照する。)。
【0067】
具体的には、プリンタ10においては、ラインヘッド100が右方向へ移動する復路において印刷する際には、センサー306が復路印刷処理動作開始位置マーカー24を検知すると((図11(a)(a-1))、ラインヘッド100は予め設定された移動距離たる初期移動距離α(初期移動距離αは、例えば、「固定値+最小余白」である。プリンタ300においては、「固定値=16.1mm」とし、「余白=1.5mm」とするものとし、従って、「初期移動距離α=17.6mm」となる。)だけ右方向へ移動した後に、画像データは空データであるので第1列102Aはブラックインク(BK)を吐出しない((図11(a)(a-2))。その後に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、画像データは空データであるので第2列102Bはシアンインク(C)を吐出しない((図11(a)(a-3))。その後に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、画像データは空データであるので第3列102Cはマゼンダインク(M)を吐出しない((図11(a)(a-4))。その後に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、画像データは空データではないので第4列102Dからイエローインク(Y)の吐出を開始する((図11(a)(a-5))。
【0068】
つまり、図12(b)に示すように、センサー306が復路印刷処理動作開始位置マーカー24を検知した後に(図12(a))、ラインヘッド100が「17.6mm+11mm+11mm+11m=50.6mm移動したとき、即ち、第4列102Dが、初期移動距離αだけ移動したときの第1列102Aの位置から「間隔β×6=66mm」だけ離れた位置となるときに、イエローインク(Y)の吐出を開始して印刷する。
【0069】
次に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、画像データは空データではないので第3列102Cからマゼンダインク(M)の吐出を開始する((図11(a)(a-6))。即ち、ラインヘッド100が「50.6mm+11mm=61.6mm移動したときに、マゼンダインク(M)の吐出を開始して印刷する(図12(c))。
【0070】
次に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、画像データは空データではないので第2列102Bからシアンインク(C)の吐出を開始する((図11(a)(a-7))。即ち、ラインヘッド100が「61.6mm+11mm=72.6mm移動したときに、シアンインク(C)の吐出を開始して印刷する(図12(d))。
【0071】
次に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、画像データは空データではないので第1列102Aからブラックインク(BK)の吐出を開始する((図11(a)(a-8))。即ち、ラインヘッド100が「72.6mm+11mm=83.6mm移動したときに、ブラックインク(BK)の吐出を開始して印刷する(図12(e))。
【0072】
従って、プリンタ10においては、上記したラインヘッド100がY方向に沿って右方向へ移動する復路においても、画像データに基づいて、イエロ-インク(Y)とマゼンダインク(M)とシアンインク(C)とブラックインク(BK)とを四層に重ねた正確な画像「<」を形成することができる(図12(f))。
【0073】
ここで、図13(a)(b)(c)には、図6に示すプリンタによる復路における印刷終了時のラインヘッドの動作と画像データとの関係を模式的に示す説明図があらわされている。なお、図13(a)(b)は、図11(b)(c)にそれぞれ示す画像データである。
【0074】
印刷終了時には、まず、第4列102Dにかかる画像データの読み出しを完了してイエローインクの吐出を終了し、第4列102Dによる印刷を終了する(図13(c)(c-1))。その後に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、第3列102Cにかかる画像データの読み出しを完了してマゼンダインクの吐出を終了し、第3列102Cによる印刷を終了する(図13(c)(c-2))。その後に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、第2列102Bにかかる画像データの読み出しを完了してシアンインクの吐出を終了し、第2列102Bによる印刷を終了する(図13(c)(c-3))。その後に、ラインヘッド100が間隔β分の移動距離(11mm)だけ右方向へ移動した後に、第1列102Aにかかる画像データの読み出しを完了してブラックインクの吐出を終了し、第1列102Aによる印刷を終了する(図13(c)(c-4))。
【0075】
(IV) 本発明の実施の形態の一例によるプリンタおよび印刷方法の作用効果の説明
上記において説明したように、本発明の実施の形態の一例によるプリンタ10および印刷方法によれば、ラインヘッド100が復路において印刷する際においても、ラインヘッド100の往路における印刷と同様に、往路において用いる画像データを使用しながら、ブラックインク(BK)とシアンインク(C)とマゼンダインク(M)とイエロ-インク(Y)とを四層に重ねた正確な画像を印刷することができる。
【0076】
(V) その他の実施の形態および変形例の説明
上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。
【0077】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(V-1)乃至(V-6)に示すように変形するようにしてもよい。
【0078】
(V-1) 上記した実施の形態においては、センサー306としてフォトインターラプターを設けるようにしたが、センサー306はこれに限られるものではないことは勿論である。センサー306は、往路印刷処理動作開始位置マーカー22ならびに復路印刷処理動作開始位置マーカー24を検知することができるものであればどのような構成でもよい。センサー306として、例えば、フォトインターラプター以外の光センサー(例えば、反射式の光センサーである。)や磁気式のセンサー、あるいは、往路印刷処理動作開始位置マーカー22ならびに復路印刷処理動作開始位置マーカー24と接触すると反応するタッチセンサーなどを用いるようにしてもよい。
【0079】
(V-2) 上記した実施の形態においては、往路印刷処理動作開始位置マーカー22と復路印刷処理動作開始位置マーカー24とを別体として構成したが、これに限られるものではないことは勿論であり、両者が繋がっていてもよい。また、往路印刷処理動作開始位置マーカー22と復路印刷処理動作開始位置マーカー24とは、センサー306が検知することができるものであればどのような構成でもよい。
【0080】
(V-3) 上記した実施の形態においては、吐出口102の列として、第1列102A、第2列102B、第3列102Cおよび第4列102Dの4列を設けた場合について説明したが、吐出口102の列は4列に限られるものではないことは勿論である。吐出口102の列は、2列以上の複数列あればよい。
【0081】
(V-4) 上記した実施の形態においては、第1列102Aによりブラックインクを吐出し、第2列102Bによりシアンインクを吐出し、第3列102Cによりマゼンダインクを吐出し、第4列102Dを吐出するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、吐出口の列から吐出されるインクの種類や色は限定されるものではない。
【0082】
(V-5) 上記した実施の形態においては、ベース部材14の右方側部位14Rに往路印刷処理動作開始位置マーカー22を配設し、ベース部材14左方側部位14Lに復路印刷処理動作開始位置マーカー24が配設し、ラインヘッド100の左方側端部100Lにセンサー306を配設した場合について説明したが、往路印刷処理動作開始位置マーカー22、復路印刷処理動作開始位置マーカー24ならびにセンサー306の配置は、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、図14に示すように、ラインヘッド100のY方向の中央部にセンサー306を設けるようにしてもよいし、また、図15に示すように、ラインヘッド100からY方向へ突出した位置にセンサー306を設けるようにしてもよい。
【0083】
(V-6) 上記した実施の形態ならびに上記した(V-1)乃至(V-5)に示す各種の他の実施の形態や変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、メディアに向けて印刷用のインクを吐出して当該メディア上に2次元の画像を印刷する、所謂、2次元プリンタと、粉体材料などに向けてバインダーや水などの硬化液を吐出することにより当該粉体材料を硬化させて3次元造形物を造形する、所謂、3次元プリンタ(三次元造形装置)に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 プリンタ
12 基台部
14 ベース部材
14R 右方側部位
14L 左方側部位
16 Xレール
18 被印刷物載置テーブル
20 制御装置
20a ラインヘッド吐出順反転部(ラインヘッド吐出順反転手段)
20b 画像データ変換部(画像データ変換手段)
20b-1 調整部(画像データ変換手段)
20b-2 ミラー反転部(画像データ変換手段)
22 往路印刷処理動作開始位置マーカー
24 復路印刷処理動作開始位置マーカー
100 ラインヘッド
100a 下面
102 吐出口
102A 第1列
102B 第2列
102C 第3列
102D 第4列
100L 左方側端部
200 被印刷物
300 プリンタ
302 ベース部材
304 印刷処理動作開始位置マーカー
306 センサー
306a 発光部
306b 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15