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2025-27757ポリエステル樹脂組成物、フィルムおよびポリエステル樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027757
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物、フィルムおよびポリエステル樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/85 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
C08G63/85
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132863
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野田 百恵
(72)【発明者】
【氏名】原田 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】松本 麻由美
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB04
4J029AB05
4J029AC01
4J029AE03
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA10
4J029BB13A
4J029BB13B
4J029BD06A
4J029BD09A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC05A
4J029FC05
4J029FC08
4J029JA091
4J029JA121
4J029JA253
4J029JB131
4J029JB171
4J029JC433
4J029JF131
4J029JF141
4J029JF181
4J029JF321
4J029JF361
4J029JF541
4J029JF571
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】触媒元素由来の異物が少ないポリエステル樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【達成手段】Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を含むポリエステル樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を含むポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
有機ゲルマニウム化合物が(化1)の構造を有する請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【化1】
はC元素を介してGe元素と結合した官能基であり、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含んでもよい。RはC元素、Ge元素、O元素、H元素から選ばれる元素を介してO元素と結合した官能基である。
【請求項3】
有機ゲルマニウム化合物が(化2)の構造を有する請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【化2】
、RはC元素を介してGe元素と結合した官能基であり、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含んでもよい。
【請求項4】
ポリエステル樹脂組成物に対してゲルマニウム元素の含有量が3質量ppm以上100質量ppm以下である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエステル樹脂組成物に対してリン元素の含有量が5質量ppm以上200質量ppm以下である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
有機ゲルマニウム化合物がビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1のポリエステル樹脂組成物を含むポリエステルフィルム。
【請求項9】
請求項1のポリエステル樹脂組成物を含む離型用ポリエステルフィルム。
【請求項10】
ドライフィルムレジスト支持体用フィルムとして用いられる請求項1のポリエステル樹脂組成物を含む離型用フィルム。
【請求項11】
ジカルボン酸成分とジオール成分でのエステル化反応、またはジカルボン酸エステル形成誘導体成分とジオール成分でのエステル交換反応を実施し、次いで重縮合反応してポリエステルを製造するに際して、ポリエステルのIV(固有粘度)が0.4以下の段階で、Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を添加するポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
有機ゲルマニウム化合物が(化1)の構造を有する請求項11記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化3】
【請求項13】
有機ゲルマニウム化合物が(化2)の構造を有する請求項11記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化4】
【請求項14】
ポリエステル樹脂組成物に対してゲルマニウム元素の含有量が3質量ppm以上100質量ppm以下である請求項11記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
ポリエステル樹脂組成物に対してリン元素の含有量が5質量ppm以上200質量ppm以下である請求項11記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
有機ゲルマニウム化合物がビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドである請求項11記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項11記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物、フィルムおよびポリエステル樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。ポリエステルの中でも、特にポリエチレンテレフタレート(以降PETと記す)は、透明性や加工性に優れていることから、光学用フィルムや離型用フィルムなど高品位性が求められる用途に幅広く使われている。
【0003】
一般にポリエステル樹脂組成物、特にPETの製造方法としては、テレフタル酸などのジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールまたはこれを主体とするグリコールとからエステル化反応物を製造し、このエステル化反応物を重縮合触媒の存在下、高温、高真空下で重縮合する方法により製造されている。
【0004】
ポリエステル樹脂組成物を製造する際の重縮合触媒としては、従来からゲルマニウム化合物、チタン化合物、アンチモン化合物などが用いられているが、安価でかつ触媒活性が優れているアンチモン化合物が最も広く使用されている。しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として用いると、PETの製造段階において不溶な金属粒子として析出しやすく、最終的に得られるPETを成形加工した際に欠点を生じさせる。近年、光学用フィルムや離型用フィルムなどは品位の要求がますます高くなっており、機械特性や熱特性を維持しながら上記のような欠点を抑制する技術が望まれている。上記のような背景からアンチモン含有量が少ないか、あるいは含有しないポリエステルが求められている。これらの課題に対して、以下の文献に示されるような検討がされてきている。
【0005】
特許文献1では、アンチモン化合物の添加量を減少することによって、金属アンチモンの生成を抑制する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2では、特定量のマンガン化合物とアルカリ金属化合物、リン化合物、有機チタン化合物を用い、ポリマー中の不溶性異物の生成を抑制したポリエステルの製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献3では、ゲルマニウム化合物を触媒としてマグネシウム化合物、リン化合物を用いた、ポリエステルの透明性や結晶性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3-146707号
【特許文献2】特開昭63―278927号公報
【特許文献3】特開2003―137992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1は減少したとはいえ、アンチモン化合物を含有していることから金属アンチモンの生成を皆無にすることは不可能であった。特許文献2ではチタン化合物の活性が高く、ポリエステル重合反応中に変質・凝集し異物が発生する課題があった。特許文献3ではゲルマニウム化合物に適した金属化合物やリン化合物を添加しないとポリエステルの分解を促進して耐熱性が悪化する課題があった。以上のように耐熱性を維持しつつ異物を極限まで減らしたポリエステルを得ることが困難であった。また、一般的にゲルマニウム化合物として用いられる二酸化ゲルマニウムは溶解性が低いことから、触媒溶液としての保存安定性が低く、析出が生じるため異物発生につながる課題があった。
【0010】
本発明の目的は、触媒元素由来の異物が少ないポリエステル樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく検討した結果、有機ゲルマニウム化合物を触媒として用いることで触媒元素由来の異物が少ないポリエステル樹脂組成物およびその製造方法を見出し、本発明に到達した。
【0012】
本発明の目的は以下の手段によって達成される。
(1)Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を含むポリエステル樹脂組成物。
(2)有機ゲルマニウム化合物が(化1)の構造を有する請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【0013】
【化1】
【0014】
はC元素を介してGe元素と結合した官能基であり、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含んでもよい。RはC元素、Ge元素、O元素、H元素から選ばれる元素を介してO元素と結合した官能基である。
(3)有機ゲルマニウム化合物が(化2)の構造を有する(1)記載のポリエステル樹脂組成物。
【0015】
【化2】
【0016】
、RはC元素を介してGe元素と結合した官能基であり、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含んでもよい。
(4)ポリエステル樹脂組成物に対してゲルマニウム元素の含有量が3質量ppm以上100質量ppm以下である(1)記載のポリエステル樹脂組成物。
(5)ポリエステル樹脂組成物に対してリン元素の含有量が5質量ppm以上200質量ppm以下である(1)記載のポリエステル樹脂組成物。
(6)有機ゲルマニウム化合物がビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドである(1)記載のポリエステル樹脂組成物。
(7)ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
(8)(1)のポリエステル樹脂組成物を含むポリエステルフィルム。
(9)(1)のポリエステル樹脂組成物を含む離型用ポリエステルフィルム。
(10)ドライフィルムレジスト支持体用フィルムとして用いられる(1)のポリエステル樹脂組成物を含む離型用フィルム。
(11)ジカルボン酸成分とジオール成分でのエステル化反応、またはジカルボン酸エステル形成誘導体成分とジオール成分でのエステル交換反応を実施し、次いで重縮合反応してポリエステルを製造するに際して、ポリエステルのIV(固有粘度)が0.4以下の段階で、Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を添加するポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(12)有機ゲルマニウム化合物が(化1)の構造を有する(11)記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0017】
【化3】
【0018】
(13)有機ゲルマニウム化合物が(化2)の構造を有する(11)記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0019】
【化4】
【0020】
(14)ポリエステル樹脂組成物に対してゲルマニウム元素の含有量が3質量ppm以上100質量ppm以下である(11)記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(15)ポリエステル樹脂組成物に対してリン元素の含有量が5質量ppm以上200質量ppm以下である(11)記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(16)有機ゲルマニウム化合物がビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドである(11)記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(17)ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである(11)記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、触媒元素由来の異物が少ないポリエステル樹脂組成物、フィルムおよびポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を詳細に説明する。なお、本発明において元素は原子と同じ意味で用いることがある。
【0023】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物とは、ジカルボン酸成分とジオール成分を重縮合して得られるポリエステル樹脂を指す。
【0024】
本発明におけるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸など種々のジカルボン酸成分を用いることができる。その中でも、ポリエステル樹脂組成物の機械的特性、耐熱性、耐加水分解性の観点から、芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成誘導体成分であることが好ましい。特には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらのエステル形成誘導体成分が重合性、機械的特性から好ましい。
【0025】
本発明におけるジオール成分としては、各種ジオールを用いることができる。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの各種脂環式ジオールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS、スチレングリコール、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。またジオール以外にもトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールも用いることができる。
【0026】
この中で、重合反応系外に留出させやすいことから、沸点230℃以下のジオールであることが好ましく、低コストであり反応性が高いことから、脂肪族ジオールがより好ましい。さらに、機械的特性の観点からエチレングリコールが特に好ましい。
なお、本発明の効果の範囲を損なわない程度に、他のジカルボン酸成分やヒドロキシカルボン酸誘導体、ジオール成分が共重合されていてもよい。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を含有していることが必要である。好ましくは、(化1)の構造を有する有機ゲルマニウム化合物である。
【0028】
【化5】
【0029】
はC元素を介してGe元素と結合した官能基であり、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含んでもよい。RはC元素、Ge元素、O元素、H元素から選ばれる元素を介してO元素と結合した官能基である。
【0030】
そして、より好ましくは(化2)の構造を有する有機ゲルマニウム化合物である。
【0031】
【化6】
【0032】
、RはC元素を介してGe元素と結合した官能基であり、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含んでもよい。
【0033】
具体的には、ビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシド、トリメチルゲルマニウムメトキシド、ジメチルゲルマニウムジアセテートなどが挙げられるがこれらに限定されない。これらの化合物は溶媒に対する溶解性が二酸化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウムと比較して優れているため、異物抑制効果が得られる。また、十分な重合活性を有しており、色調の優れたポリマーが得られる点からビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドが最も好ましい。
【0034】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ゲルマニウム元素をポリエステル樹脂組成物の重量に対し3質量ppm以上100質量ppm以下含有していることが好ましい。
下限として好ましくは5質量ppm以上である。また、上限として好ましくは70質量ppm以下であり、より好ましくは50質量ppm以下である。ゲルマニウム化合物はポリエステルの重合触媒として利用されるが、上記下限以上とすることで、重縮合反応を遅延なく進行させることが可能となる。また、ゲルマニウム元素は触媒活性に優れており、過剰に存在するとポリエステルの熱分解や酸化分解、加水分解に寄与する。したがって、上記上限以下のゲルマニウム元素量を満たすことで、各種分解を抑制することが可能となる。
【0035】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、リン元素をポリエステル樹脂組成物の重量に対し5質量ppm以上200質量ppm以下含有していることが好ましい。下限として好ましくは7質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上である。上限として好ましくは150質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下である。上記範囲とすることで、重合反応性を損なうことなく、耐熱性を良好とすることができる。
【0036】
本発明のポリエステル樹脂組成物を構成するポリエステルは、耐熱性を十分有する点からPETであることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で共重合成分が含まれていてもよい。
【0037】
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法について記載する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ジカルボン酸成分とジオール成分でのエステル化反応、またはジカルボン酸エステル形成誘導体成分とジオール成分でのエステル交換反応を実施し、次いで重縮合反応してポリエステルを製造するに際して、ポリエステルのIV(固有粘度)が0.4以下の段階で、Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を添加することで得ることができる。
【0038】
本発明の製造方法において、エステル化反応の工程は、ジカルボン酸とジオールとを所定温度でエステル化反応させ、所定量の水が留出するまで反応を行い、低重合体を得る工程である。エステル化反応により低重合体を得る場合、エステル化反応性、耐熱性の観点から、エステル化反応開始前のジカルボン酸とジオールのモル比(ジオール/ジカルボン酸)は、1.05以上1.40以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは1.05以上1.30以下、さらに好ましくは1.05以上1.20以下である。上記範囲とすることで、良好な反応性を有し、またジオールの2量体などの副生成物の生成を抑制でき、耐熱性を良好にすることができる。
【0039】
また、エステル交換反応の工程は、ジカルボン酸アルキルエステルとジオールとをエステル交換反応させ、所定量のアルコールが留出するまで反応を行い、低重合体を得る工程である。エステル交換反応にて低重合体を得る場合、反応性、耐熱性の観点から、ジカルボン酸アルキルエステルとジオールのモル比(ジオール/ジカルボン酸アルキルエステル)は1.7以上2.3以下の範囲であることが好ましい。上記範囲とすることで、エステル交換反応を効率的に進行させることができ、ジオールの2量体の副生を抑えることができることから、耐熱性を良好にすることができる。
【0040】
重縮合反応は、エステル化反応またはエステル交換反応で得られた低重合体からポリエステル樹脂組成物を得る工程である。
【0041】
また、本発明の製造方法は、バッチ重合、半連続重合、連続重合が適用できる。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、エステル化反応に用いられる触媒は、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウムなどの化合物を用いても構わないが、重縮合反応段階での熱分解や異物の発生などの観点から、エステル化反応は無触媒で実施することが好ましい。ここで、エステル化反応は無触媒においてもカルボン酸の自己触媒作用によって、反応は十分に進行する。また、エステル交換反応に用いられる触媒としては、公知のエステル交換触媒を用いることができる。エステル交換触媒としては、有機マンガン化合物、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機コバルト化合物、有機リチウム化合物などが挙げられ、具体的には、炭酸塩、酢酸塩、安息香酸塩などあり、さらに酸化物、水酸化物などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を添加することが必要である。好ましくは、(化1)の構造を有する有機ゲルマニウム化合物を添加することが好ましい。
【0044】
【化7】
【0045】
はC元素を介してGe元素と結合した官能基であり、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含んでもよい。RはC元素、Ge元素、O元素、H元素から選ばれる元素を介してO元素と結合した官能基である。
【0046】
そして、より好ましくは(化2)の構造を有する有機ゲルマニウム化合物の添加である。
【0047】
【化8】
【0048】
、RはC元素を介してGe元素と結合した官能基であり、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含んでもよい。
【0049】
具体的には、ビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシド、トリメチルゲルマニウムメトキシド、ジメチルゲルマニウムジアセテートなどが挙げられるがこれらに限定されない。これらの化合物は溶媒に対する溶解性が二酸化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウムと比較して優れているため、異物抑制効果が得られる。また、十分な重合活性を有しており、色調の優れたポリマーが得られる点からビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドが最も好ましい。ポリエステル樹脂組成物に含まれるゲルマニウム化合物の種類を特定するには、XAFSによるGe-O元素間、Ge-C元素間距離の測定や、GeNMR測定を実施すればよい。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、ゲルマニウム元素をポリエステル樹脂組成物の重量に対し含有量が3質量ppm以上100質量ppm以下となるように添加することが好ましい。下限として好ましくは5質量ppm以上である。また、上限として好ましくは70質量ppm以下であり、より好ましくは50質量ppm以下である。ゲルマニウム化合物はポリエステルの重合触媒として利用されるが、上記下限以上とすることで、重縮合反応を遅延なく進行させることが可能となる。また、ゲルマニウム元素は触媒活性に優れており、過剰に存在するとポリエステルの熱分解や酸化分解、加水分解に寄与する。したがって、上記上限以下のゲルマニウム元素量を満たすことで、ポリエステルの各種分解を抑制することが可能となる。
【0051】
上記Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物の添加形態は、粉体、スラリー、溶液のいずれでもよく、異物抑制の点から溶液として添加することが好ましい。このときの溶媒はポリエステル樹脂組成物のジオール成分と同一にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートの場合はエチレングリコールを用いることが好ましい。エチレングリコールだけで溶けない場合は、アルカリ水溶液で溶かした後にエチレングリコールを添加するとよい。アルカリ水溶液に限定はないが、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液や水酸化カリウム水溶液などを使用することができる。
【0052】
また、スラリー又は溶液濃度は溶解性の点から溶液に対するGe-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物の濃度として、20質量%以下が好ましく、より好ましくは13質量%以下、8質量%以下がさらに好ましい。 また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、リン元素をポリエステル樹脂組成物の重量に対し含有量が5質量ppm以上200質量ppm以下となるように添加されてなることが好ましい。下限として好ましくは7質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上である。上限として好ましくは150質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下である。上記範囲とすることで、ポリエステルに耐熱性を付与させることができる。
【0053】
リン元素を含む化合物は、リン酸やリン酸エステル、亜リン酸、ジエチルホスホノ酢酸エチルなどが挙げられるがこれらに限定されない。ポリマー色調の点からリン酸が最も好ましい。リン元素を含む化合物を添加する際の形態は粉体、スラリー、溶液のいずれでもよく、分散性の点から溶液として添加することが好ましい。このときの溶媒は、ポリエステル樹脂組成物のジオール成分と同一にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートの場合はエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0054】
また、ゲルマニウム化合物やリン化合物は重合中にグリコール成分とともに留出することから、好ましい含有量となるように、留出する分を考慮し添加量を調整することが必要である。
【0055】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、高分子量のポリエステル樹脂組成物を得るため、固相重合を行ってもよい。固相重合は、装置・方法は特に限定されないが、ポリエステル樹脂組成物を不活性ガス雰囲気下または減圧下で加熱処理することで実施される。不活性ガスはポリエステル樹脂組成物に対して不活性なものであればよく、例えば窒素、ヘリウム、炭酸ガスなどを挙げることができるが、経済性から窒素が好ましく用いられる。また、減圧条件では、より高真空にすることが固相重合反応に要する時間を短くできるため有利であり、具体的には110Pa以下を保つことが好ましい。また、ポリエスエル樹脂に残存する触媒の失活処理を行う場合は、固相重合を効率よく行うため、固相重合後に行うのが好ましい。
【0056】
本発明のポリエステル樹脂組成物を各製品に加工する際に、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、顔料および染料を含む着色剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、核剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤などの添加剤を1種以上添加することもできる。
【0057】
以下、本発明におけるポリエステル樹脂組成物の製造方法の具体例を挙げるが、これに制限されない。
250℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸とエチレングリコール(テレフタル酸に対し1.15倍モル)のスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させる。反応系内の温度は245~250℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とする。
【0058】
こうして得られた255℃のエステル化反応物を重合装置に移送し、マンガン化合物、Ge-C結合およびGe-O結合を有する有機ゲルマニウム化合物を添加する。その後、リン酸を添加する。これらの操作の際は、エステル化物が固化しないように、系内の温度を240~255℃に保つことが好ましい。
【0059】
その後、重合装置内の温度を290℃まで徐々に昇温しながら、重合装置内の圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させる。所定の撹拌トルクに到達した段階で反応を終了とし、反応系内を窒素ガスで常圧にし、溶融ポリエステルを冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得る。
【0060】
フィルムの製造方法を以下に記載するがこれに限られない。上記の手法により得られたポリエステル樹脂組成物を180℃で3時間真空乾燥し、窒素雰囲気下で押出機に供給する。押出温度280℃でTダイから吐出させ、キャスティングドラム(20℃)にて急冷し、静電印加法にてシート化する。このシートを縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.6倍、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.6倍で延伸し、熱処理を210℃で3秒行い、厚み約40μmのフィルムを得る。
【0061】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、溶融成形や加工工程にて発生する触媒由来の異物の発生が少ない。したがってフィルム、繊維、ボトル、射出成形品など各種用途に好適に用いることができ、特に光学フィルムや離型フィルムなどの高品位フィルムに用いることが可能である。
【0062】
フィルムとしては、本発明のポリエステル樹脂組成物から構成される単膜フィルムでも本発明のポリエステル樹脂組成物を少なくとも1層有する積層フィルムでもよい。
【実施例0063】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。以下記載する方法は、本発明のポリエステル樹脂組成物単成分の場合の測定方法を記載しているが、積層フィルムなどのように複数樹脂からなる成形品の場合、各層の樹脂を削り出すなどして単離し、分析を行う。
【0064】
(1)ポリエステル樹脂組成物のゲルマニウムの定量(単位:質量ppm)
試料5gを白金皿にとり、電熱器で溶融炭化後、電気炉(700℃)にて1.5時間かけて完全に灰化させ、次に灰化物を濃塩酸5mLに溶かし、10%塩酸水溶液となるように純水を加え、測定試料とした。上記の溶液を測定試料として、原子吸光分析法(フレーム:アセチレン-一酸化二窒素)にて定量を行った。
なお、原子吸光分光光度計は(株)日立ハイテクサイエンス製「ZA-3300」を使用した。
【0065】
(2)ポリエステル樹脂組成物のリン元素の定量(単位:質量ppm)
ポリエステル樹脂組成物を溶融プレス機で円柱状に成型し、理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定した。
【0066】
(3)ポリエステル樹脂組成物の色調
ポリエステル樹脂組成物チップを色差計(スガ試験機社製SMカラーコンピュータ型式SM-T45)を用いて、ハンター値(b値)として測定し判定した。この数値が小さいほど黄みが少なく、良好な色調となる。下記の基準で判定し、×を不合格とした。
◎:0≦b値≦5
〇:5<b値≦8
△:8<b値≦10
×:10<b値
【0067】
(4)ポリエステル樹脂組成物中の異物評価
ポリエステル樹脂組成物0.1mgを290℃に加熱したホットプレート上でカバーガラス2枚に挟み溶融し、ポリマー薄膜が形成されたプレパラートを作成した。このプレパラートを光学顕微鏡(オリンパス(株)製:BX53-FL、400倍、明視野)で観察し、観察できるすべての異物欠点を数えた。その後、同じ倍率で蛍光を当てて観察し、観察される光点を数えた。蛍光顕微鏡で観察される光点はゲル由来であり、光学顕微鏡で観察される異物個数から差し引くことで触媒由来の粒子状物の個数を求めた。その個数より下記の通り判定し、×を不合格とした。
◎:0~2個/0.1mg
〇:3~5個/0.1mg
△:6~8個/0.1mg
×:9個以上/0.1mg。
【0068】
(5)フィルムの内部異物評価
得られたポリエステル樹脂組成物を180℃で3時間真空乾燥し、窒素雰囲気下で押出機に供給した。押出温度280℃でTダイから吐出させ、キャスティングドラム(20℃)にて急冷し、静電印加法にてシート化した。このシートを縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.6倍、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.6倍で延伸し、熱処理を210℃で3秒行い、厚み約40μmのフィルムを得た。
【0069】
このフィルムサンプルに10cm角の正方形のマーキングを入れ、マーキング内の任意の10箇所について50倍の偏光顕微鏡を用い偏光で異物の周りのフィルムが玉虫色でひずんで見える異物欠点の核のサイズを測定し、長径が1μm以上の個数をカウントした。さらに蛍光顕微鏡にてマーキング部を確認し、光点を内部異物とし、個数の平均値を算出し、その個数より判定した。内部異物は主にポリマー劣化物(ゲル等)であり、×を不合格とした。
◎:0~15個/mm
〇:16~20個/mm
△:21~30個/mm
×:31個以上/mm
【0070】
また、蛍光顕微鏡観察で光らなかった異物欠点は主に触媒由来の異物である。触媒由来異物をSEM-EDXで元素分析することで異物の金属種を特定することが可能である。
【0071】
(実施例1)
250℃にて溶融したビスヒドロキシエチルテレフタレート(以降BHTと記す)105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245~250℃になるようにコントロールし、水留出量から算出される反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
【0072】
エステル化反応器から105重量部(PET100重量部相当)のBHTを重合装置へ溶融状態で仕込み、温度を255℃とした。酢酸マンガン4水和物のエチレングリコール溶液(ポリエステル樹脂組成物の重量に対しマンガン元素として23質量ppm)、ビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシド(ポリエステル樹脂組成物の重量に対しゲルマニウム元素として45質量ppm)を添加した。その後、リン酸(ポリエステル樹脂組成物の重量に対しリン元素として38質量ppm)のエチレングリコール溶液を添加した。なお、ビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドは、ビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシド1重量部をテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド20%水溶液3.75重量部で完溶させた後、エチレングリコールを加えたエチレングリコール溶液を使用した。
【0073】
その後、重合装置内を290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を常圧から133Pa以下まで減圧し、290℃で所定の攪拌トルクを示すまで重合反応させた。重合反応終了後、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置内の溶融ポリエステルをストランド状に水槽へ吐出して冷却後、カッティングしてペレット状のポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
【0074】
実施例1で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物が少なく、色調も良好で離型フィルムに好適な物性を有していた。
【0075】
(実施例2~8)
ゲルマニウム元素含有量が表1の通りとなるようゲルマニウム化合物の添加量を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
【0076】
実施例2にて得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲルマニウム化合物の添加量が比較的少ないため重合時間がやや長くなったことで、フィルムの内部異物量が若干増加し、色調がやや悪化した。
【0077】
実施例3~4にて得られたポリエステル樹脂組成物は、異物が少なく、色調も良好で離型フィルムに好適な物性を有していた。
【0078】
実施例5にて得られたポリエステル樹脂組成物は、異物が少ないものの色調がやや悪化した。
【0079】
実施例6で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲルマニウム化合物の添加量が比較的多いため、耐熱性がやや悪化したことに起因して異物の発生と色調が悪化する傾向があった。
【0080】
実施例7で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲルマニウム化合物の添加量が少ないため重合時間が長くなり、フィルムの内部異物の発生量と色調がやや悪化した。
【0081】
実施例8で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲルマニウム化合物の添加量が多いため異物の発生量が増加し色調がやや悪化した。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例9、10)
表2のようにリン化合物の種類を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表2に示す。
実施例9、10で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物が少なく、色調も良好で離型フィルムに好適な物性を有していた。
【0084】
(実施例11、12)
表2のようにゲルマニウム化合物の種類を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表2に示す。
実施例11、12で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物が少なく、色調も良好で離型フィルムに好適な物性を有していた。
【0085】
(比較例1)
ビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドの代わりに、テトラ-n-ブトキシチタンのエチレングリコール溶液(ポリエステル樹脂組成物の重量に対しチタン元素として10質量ppm)を添加した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表2に示す。
比較例1で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物の発生量が多く、チップの黄みが強く、不合格であった。
【0086】
(比較例2)
ビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドの代わりに、三酸化二アンチモンのエチレングリコールスラリー(ポリエステル樹脂組成物の重量に対しアンチモン元素として70質量ppm)を添加した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表2に示す。
比較例2で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物化しやすいアンチモン化合物を添加したため、異物が多く発生し、不合格であった。
【0087】
(比較例3~6)
表2のようにビス[2-カルボキシエチルゲルマニウム(IV)]セスキオキシドを他のゲルマニウム化合物の変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表2に示す。
【0088】
比較例3で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲルマニウム触媒溶液の溶解性が低いために重合時間が長めとなり、またゲルマニウム触媒溶液の溶解性が低く析出し、異物が発生しやすく不合格であった。
【0089】
比較例4~6で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物の発生量が多く、色調もやや黄みが強く、不合格であった。
【0090】
【表2】
【0091】
(実施例13~21)
リン元素含有量が表3の通りとなるようリン酸の添加量を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表3に示す。
【0092】
実施例13で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物の発生量は少ないが、リン酸の添加量が比較的少ないため耐熱性がやや劣り、チップの黄みとフィルムの内部異物増加があった。
【0093】
実施例14~17で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物の発生量が少なく色調も良好で離型フィルムに好適な物性を有していた。
【0094】
実施例18で得られたポリエステル樹脂組成物は、異物の発生量は少ないが、リン酸の添加量が比較的多いため重合時間が少し長く、やや黄みがあった。
【0095】
実施例19で得られたポリエステル樹脂組成物は、リン酸の添加量が比較的多いため重合時間が長くなることで少し黄みがあり、フィルムの内部異物の発生量がやや増加した。
【0096】
実施例20で得られたポリエステル樹脂組成物は、リン酸の添加量が少ないため、耐熱性が悪化したことにより異物が増え、色調もやや悪化した。た。
【0097】
実施例21で得られたポリエステル樹脂組成物は、リン酸の添加量が多いため重合時間が長くなり、黄みがやや強く、異物が増加した。
【0098】
【表3】