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  • -二次圧制御機構、及び制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027832
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】二次圧制御機構、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/06 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
G05D16/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132987
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅之
【テーマコード(参考)】
5H316
【Fターム(参考)】
5H316BB05
5H316DD03
5H316EE12
5H316EE18
5H316ES02
5H316GG01
5H316JJ01
5H316KK02
(57)【要約】
【課題】較的簡易な構成を維持しつつシンプルな制御でありながらも、二次圧の制御不良を良好に防止する。
【解決手段】ガス通流路L0において整圧器60をバイパスするバイパス路Laと、当該バイパス路Laの開閉状態を切り換えるバイパス路開閉弁VD2と、パイロット流路開閉弁VD1及びバイパス路開閉弁VD2の開閉状態を制御する制御装置Sとを備え、制御装置Sは、パイロット流路開閉弁VD1を閉止状態とし整圧器60の弁体V1を遮断状態とした後で、パイロット流路開閉弁VD1を開放状態とし整圧器60の弁体V1を開放状態とする前に、バイパス路開閉弁VD2を開放状態とする復帰前バイパス路開放制御と、復帰前バイパス路開放制御を実行した後に、バイパス路開閉弁VD2を閉止状態とすると共にパイロット流路開閉弁VD1を開放状態とする復帰開閉制御とを、記載の順に実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを通流するガス通流路に設けられる弁体の開度を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧が設定圧となるよう制御する整圧器と、
前記整圧器のパイロット流路の開閉状態を切り換えるパイロット流路開閉弁とを備えた二次圧制御機構であって、
前記ガス通流路において前記整圧器をバイパスするバイパス路と、当該バイパス路の開閉状態を切り換えるバイパス路開閉弁と、
前記パイロット流路開閉弁及び前記バイパス路開閉弁の開閉状態を制御する制御装置とを備え、
前記バイパス路の流路径は、前記ガス通流路の流路径よりも小さく構成され、
前記制御装置は、
前記パイロット流路開閉弁を閉止状態とし前記整圧器の前記弁体を遮断状態とした後で、前記パイロット流路開閉弁を開放状態とし前記整圧器の前記弁体を開放状態とする前に、前記バイパス路開閉弁を開放状態とする復帰前バイパス路開放制御と、
前記復帰前バイパス路開放制御を実行した後に、前記バイパス路開閉弁を閉止状態とすると共に前記パイロット流路開閉弁を開放状態とする復帰開閉制御とを、記載の順に実行する二次圧制御機構。
【請求項2】
前記復帰前バイパス路開放制御における前記バイパス路開閉弁の前記開放状態は、前記バイパス路開閉弁の開度を所定の開度に維持した状態である請求項1に記載の二次圧制御機構。
【請求項3】
前記二次圧を計測する圧力計測部を備え、
前記制御装置は、
前記復帰前バイパス路開放制御を実行しているときに、
予め定められた所定の計測期間において、前記圧力計測部にて計測される最大圧力と最小圧力との差が、予め定められた圧力差判定閾値以上となった場合に、前記バイパス路開閉弁を一時的に閉止状態とする一時閉止制御を実行する請求項1又は2に記載の二次圧制御機構。
【請求項4】
前記制御装置に電気通信回線を介して接続される監視サーバが設けられ、
前記制御装置は、前記監視サーバからの制御信号に基づいて、前記復帰前バイパス路開放制御及び前記復帰開閉制御を実行する請求項1又は2に記載の二次圧制御機構。
【請求項5】
ガスを通流するガス通流路に設けられる弁体の開度を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧が設定圧となるよう制御する整圧器の制御方法であって、
前記整圧器のパイロット流路の開閉状態を切り換えるパイロット流路開閉弁と、
前記ガス通流路において前記整圧器をバイパスするバイパス路と、当該バイパス路の開閉状態を切り換えるバイパス路開閉弁とを備え、
前記バイパス路の流路径は、前記ガス通流路の流路径よりも小さく構成された二次圧制御機構において、
前記パイロット流路開閉弁を閉止状態とし前記整圧器の前記弁体を遮断状態とした後で、前記パイロット流路開閉弁を開放状態とし前記整圧器の前記弁体を開放状態とする前に、前記バイパス路開閉弁を開放状態とする復帰前バイパス路開放制御と、
前記復帰前バイパス路開放制御を実行した後に、前記バイパス路開閉弁を閉止状態とすると共に前記パイロット流路開閉弁を開放状態とする復帰開閉制御とを、記載の順に実行する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを通流するガス通流路に設けられる弁体の開度を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧が設定圧となるよう制御する整圧器を備えた二次圧制御機構、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス通流路を通流するガスの二次圧を所定の設定圧に制御する整圧器には、パイロット流路と、当該パイロット流路の開閉状態を切り換えるパイロット流路開閉弁とを備えたものが知られている(特許文献1を参照)。
当該特許文献1に開示の整圧器では、例えば、地震等が発生した際に、パイロット流路開閉弁を開放状態から閉止状態へ切り換えることで、ガス通流路を遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-053047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の整圧器では、例えば、地震が収束した後の復帰時においては、遮断した整圧器を復帰させガス通流路にガスを通流させるべく、パイロット流路開閉弁を閉止状態から開放状態へ移行させるのであるが、圧力検出部へ二次圧が導入され制御装置の弁体が急激に開くと、二次圧が設定圧に到達する際にオーバーシュートするといった制御不良が発生する虞がある。
そこで、パイロット流路開閉弁を閉止状態から開放状態へ徐々に開く等といった制御をとることが考えられるが、圧力検出部へ二次圧が徐々に導入されると整圧器に急激な変化を与えないというメリットがある一方、タイムリーに正確な二次圧を伝えることができないというデメリットも有し、整圧器によっては、正常に働かない場合がある等の問題があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、整圧器によるガス通流路の遮断時からガス通流路を開放する際に、比較的簡易な構成を維持しつつシンプルな制御でありながらも、二次圧の制御不良を良好に防止できる二次圧制御機構、及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための二次圧制御機構は、
ガスを通流するガス通流路に設けられる弁体の開度を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧が設定圧となるよう制御する整圧器と、
前記整圧器のパイロット流路の開閉状態を切り換えるパイロット流路開閉弁とを備えた二次圧制御機構であって、その特徴構成は、
前記ガス通流路において前記整圧器をバイパスするバイパス路と、当該バイパス路の開閉状態を切り換えるバイパス路開閉弁と、
前記パイロット流路開閉弁及び前記バイパス路開閉弁の開閉状態を制御する制御装置とを備え、
前記バイパス路の流路径は、前記ガス通流路の流路径よりも小さく構成され、
前記制御装置は、
前記パイロット流路開閉弁を閉止状態とし前記整圧器の前記弁体を遮断状態とした後で、前記パイロット流路開閉弁を開放状態とし前記整圧器の前記弁体を開放状態とする前に、前記バイパス路開閉弁を開放状態とする復帰前バイパス路開放制御と、
前記復帰前バイパス路開放制御を実行した後に、前記バイパス路開閉弁を閉止状態とすると共に前記パイロット流路開閉弁を開放状態とする復帰開閉制御とを、記載の順に実行する点にある。
【0007】
上記目的を達成するための二次圧制御機構の制御方法は、
ガスを通流するガス通流路に設けられる弁体の開度を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧が設定圧となるよう制御する整圧器と、
前記整圧器のパイロット流路の開閉状態を切り換えるパイロット流路開閉弁とを備えた二次圧制御機構の制御方法であって、その特徴構成は、
前記ガス通流路において前記整圧器をバイパスするバイパス路と、当該バイパス路の開閉状態を切り換えるバイパス路開閉弁とを備え、
前記バイパス路の流路径は、前記ガス通流路の流路径よりも小さく構成された二次圧制御機構において、
前記パイロット流路開閉弁を閉止状態とし前記整圧器の前記弁体を遮断状態とした後で、前記パイロット流路開閉弁を開放状態とし前記整圧器の前記弁体を開放状態とする前に、前記バイパス路開閉弁を開放状態とする復帰前バイパス路開放制御と、
前記復帰前バイパス路開放制御を実行した後に、前記バイパス路開閉弁を閉止状態とすると共に前記パイロット流路開閉弁を開放状態とする復帰開閉制御とを、記載の順に実行する点にある。
【0008】
本構成によれば、復帰前バイパス路開放制御により、パイロット流路開閉弁を閉止状態とし整圧器の弁体を遮断状態とした後で、パイロット流路開閉弁を開放状態とし整圧器の弁体を開放状態とする前に、バイパス路開閉弁を開放状態とするから、バイパス路を介してガス通流路の一次側から二次側へガスが導かれる形態で、二次圧が昇圧していくことになるから、二次圧の昇圧時に、整圧器のパイロット流路を介して二次圧を導入する必要がなく、パイロット流路開閉弁の開度を徐々に開放する等の複雑な制御をしなくてよい。
更に、本構成では、復帰前バイパス路開放制御を実行した後に、バイパス路開閉弁を閉止状態とすると共にパイロット流路開閉弁を開放状態とする復帰開閉制御を実行するから、例えば、二次圧が設定圧近傍まで昇圧した後に、パイロット流路開閉弁が開放状態とされることで、整圧器の弁体の開度が比較的小さい開度で制御される、もしくは整圧器の弁体が目標開度であり制御開度でもある閉止状態から制御が開始されるから、二次圧のオーバーシュートを効果的に防止できる。
尚、本構成では、バイパス路の流路径は、ガス通流路の流路径よりも小さく構成されているから、復帰前バイパス路開放制御において、バイパス路を介してガス通流路の二次圧を昇圧させるときに、昇圧勾配を比較的緩慢なものにできるから、二次圧の急激な上昇や二次圧が設定圧を超えてオーバーシュートが発生し難く、制御不良の発生を抑制できる。
以上より、整圧器によるガス通流路の遮断時からガス通流路を開放する際に、比較的簡易な構成を維持しつつシンプルな制御でありながらも、二次圧の制御不良を良好に防止できる二次圧制御機構、及びその制御方法を良好に実現できる。
【0009】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、
前記復帰前バイパス路開放制御における前記バイパス路開閉弁の前記開放状態は、前記バイパス路開閉弁の開度を所定の開度に維持した状態である点にある。
【0010】
本構成によれば、復帰前バイパス路開放制御におけるバイパス路開閉弁の開放状態は、バイパス路開閉弁の開度を所定の開度に維持した状態であるから、シンプルな制御にてバイパス路開閉弁を駆動することができる。
また、復帰前バイパス路開放制御において、バイパス路開閉弁の開度が変化したり、開放状態と閉止状態とが切り替わったりすることがないため、弁の制御不良による二次圧の振れが生じない。
【0011】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、
前記二次圧を計測する圧力計測部を備え、
前記制御装置は、
前記復帰前バイパス路開放制御を実行しているときに、
予め定められた所定の計測期間において、前記圧力計測部にて計測される最大圧力と最小圧力との差が、予め定められた圧力差判定閾値以上となった場合に、前記バイパス路開閉弁を一時的に閉止状態とする一時閉止制御を実行する点にある。
【0012】
ガスを通流するガス通流路では、路内のガスが振動する気柱振動が発生する場合がある。
本構成によれば、復帰前バイパス路開放制御を実行しているときに、一時閉止制御により、所定の計測期間における圧力計測部にて計測される最大圧力と最小圧力との差が圧力差判定閾値以上となった場合に、バイパス路開閉弁を一時的に閉止状態とするから、気柱振動を適切に抑制しながら、二次圧を昇圧することができる。
【0013】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、
前記制御装置に電気通信回線を介して接続される監視サーバが設けられ、
前記制御装置は、前記監視サーバからの制御信号に基づいて、前記復帰前バイパス路開放制御及び前記復帰開閉制御を実行する点にある。
【0014】
本構成によれば、地震等の発生時であって、パイロット流路開閉弁を閉止状態とし整圧器の弁体を遮断状態とした後で、復帰前バイパス路開放制御及び復帰開閉制御の実行対象の二次圧制御機構が設置されえる現場へ人員が復帰作業へ向かい難い状況であっても、監視サーバからの指令による遠隔操作にて、復帰前バイパス路開放制御及び復帰開閉制御を必要なタイミングで適切に実行して、二次側へのガスの供給を再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る二次圧制御機構の全体構成図である。
図2】実施形態に係る二次圧制御機構による整圧を行う場合の二次圧の経時変化を示すグラフ図である。
図3】別実施形態に係る二次圧制御機構による整圧を行う場合の二次圧の経時変化を示すグラフ図である。
図4】実施形態に係る二次圧制御機構による整圧を行う場合の制御フローである。
図5】別実施形態に係る二次圧制御機構による整圧を行う場合の制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態に係る二次圧制御機構100、及びその制御方法は、整圧器によるガス通流路の遮断時からガス通流路を開放する際に、比較的簡易な構成を維持しつつシンプルな制御でありながらも、二次圧の制御不良を良好に防止できるものに関する。
【0017】
実施形態に係る二次圧制御機構100は、ガス(例えば、都市ガス13A)を通流するガス通流路L0に設けられる主弁体V1(弁体の一例)の開度を制御して当該主弁体V1の二次側の圧力である二次圧が設定圧となるよう制御する整圧器60を備えている。
整圧器60は、図1に示すように、ガス通流路L0の二次圧P2を設定圧に調整する主ガバナ10と、その主ガバナ10へ駆動圧を導入するパイロットガバナ50とを備えて構成されている。
主ガバナ10は、ダイヤフラムプレート14に沿って設けられる第1ダイヤフラムD1を備えており、その内部空間が第1ダイヤフラムD1にて第1室H1と駆動圧室H2とに区画されている。そして、主ガバナ10は、ガス通流路L0に設けられる主開口部K1を開閉する主弁体V1を備えており、この主弁体V1は弁軸16にて第1ダイヤフラムD1と連結され第1ダイヤフラムD1と連動して動く形態で、開閉される構成となっている。即ち、当該実施形態に係る整圧器60では、弁軸16が連結される主弁体V1の天部側と反対側の底部が、流体が通流するガス通流路L0の二次側へ向けられる状態で、主開口部K1の周囲に形成される主開口部K1に対して主弁体V1が着座する閉止状態と主開口部K1から主弁体V1が離間する開放状態との間での主弁体V1の開度を調整して二次圧を制御する。
また、第1室H1には、第1ダイヤフラムD1を主弁体V1の開弁方向側に付勢する第1バネG1が配設されている。
【0018】
パイロットガバナ50は、ダイヤフラムプレート34に沿って設けられる副ダイヤフラムD0を備えており、その内部空間が副ダイヤフラムD0にて第5室H5と第6室H6(圧力検知部の一例)とに区画されている。そして、当該パイロットガバナ50の第6室H6は、ガス通流路L0の二次側(主ガバナ10の下流側)に接続される二次圧導入路L2(パイロット流路の一例)に接続されている。更に、パイロットガバナ50は、ガス通流路L0の一次側(主ガバナ10の上流側)に接続される一次圧導入路L4と、主ガバナ10の駆動圧室H2に接続される駆動圧導入路L3との間に設けられる副開口部K0を開閉する副弁体V0を備えており、この副弁体V0は連結棒36にて副ダイヤフラムD0と連結され副ダイヤフラムD0と連動して動く形態で、開閉される構成となっている。また、第5室H5には、副ダイヤフラムD0を副弁体V0の開弁方向側に付勢する第2バネG2が配設されている。
尚、二次圧導入路L2と駆動圧導入路L3とを連通接続する接続流路L5が設けられ、当該接続流路L5には、流路径を絞る絞り部Siが設けられている。
【0019】
当該構成を採用することにより、ガス通流路L0の二次圧P2が設定圧よりも低下すると、二次圧導入路L2と連通するパイロットガバナ50の第6室H6の圧力が低下し、第2バネG2の付勢力により副ダイヤフラムD0が第6室H6側へ変位する。
これにより、パイロットガバナ50の副弁体V0が開き側に動作し、主ガバナ10の駆動圧室H2内に一次圧が導入される。これにより、駆動圧室H2の圧力が昇圧するため第1バネG1の付勢力に抗して駆動圧室H2の圧力にて第1ダイヤフラムD1が第1室H1の側へ付勢されることにより、第1ダイヤフラムD1が第1室H1側に変位して、主ガバナ10の主弁体V1が開き側に動作され、ガス通流路L0の二次圧P2を上昇させて二次圧P2を設定圧に調整する。
一方、ガス通流路L0の二次圧P2が設定圧よりも上昇すると、二次圧導入路L2と連通するパイロットガバナ50の第6室H6の圧力が上昇し、第2バネG2の付勢力に抗して第6室H6の圧力により副ダイヤフラムD0が第5室H5側へ変位する。
これにより、パイロットガバナ50の副弁体V0が閉じ側に動作し、駆動圧導入路L3と接続流路L5と二次圧導入路L2を介して主ガバナ10の駆動圧室H2内の流体がガス通流路L0の二次側へ排出される。これにより、駆動圧室H2の圧力が降圧するため第1バネG1の付勢力により、第1ダイヤフラムD1が駆動圧室H2側に変位して、主ガバナ10の主弁体V1が閉じ側に動作され、ガス通流路L0の二次圧P2を低下させて二次圧P2を設定圧に調整する。
【0020】
さて、当該実施形態に係る二次圧制御機構100は、地震等によりガス通流路L0が遮断された後に開放される際に、比較的簡易な構成を維持しつつシンプルな制御でありながらも、二次圧の制御不良を良好に防止するべく、特に、以下の構成を備える。
二次圧制御機構100では、二次圧導入路L2の開閉状態を切り換える二次圧導入路開閉弁VD1(パイロット流路開閉弁の一例)と、ガス通流路L0において整圧器60をバイパスするバイパス路Laと、当該バイパス路Laの開閉状態を切り換えるバイパス路開閉弁VD2と、二次圧導入路開閉弁VD1及びバイパス路開閉弁VD2の開閉状態を制御する制御装置Sとを備える。更に、ガス通流路L0の二次側(整圧器60の二次側で、且つバイパス路Laの二次側端部より下流側)には、二次圧を測定する圧力計S1(圧力計測部の一例)を備える。
ここで、二次圧導入路開閉弁VD1及びバイパス路開閉弁VD2は、制御装置Sにより開放状態と閉止状態の切り換え制御が可能な電磁弁である。
尚、当該主ガバナ10の第1室H1は、二次圧導入路L2のうち二次圧導入路開閉弁VD1よりも上流側(一次側)に接続される第2接続流路L6が設けられている。
【0021】
更に、バイパス路Laの流路径(流路の内径)は、ガス通流路L0の流路径よりも小さく構成されている。詳細には、バイパス路Laの流路径に対するガス通流路L0の流路径の比は、2倍以上60倍以下であり、ガス通流路L0の流路径は、50A以上600A以下程度であり、バイパス路Laの流路径は、10A以上25A以下程度である。このように、バイパス路Laの流路径をガス通流路L0の流路径に比べて小さいものもとすることで、復帰前バイパス路開放制御での二次圧の昇圧時における昇圧勾配を比較的緩慢なものとして、二次圧の制御不良の発生を良好に抑制できる。
因みに、ガス通流路L0を通流するガス流量は、1000m/h以上3000m/h以下程度であり、バイパス路Laを通流するガス流量は、数m/h以上数十m/h以下程度である。
【0022】
尚、当該実施形態における制御装置Sは、電気通信回線等のネットワークNを介して監視サーバCに接続されており、当該監視サーバCからの制御信号に基づいて、バイパス路開閉弁VD2を開閉制御可能に構成されている。
例えば、当該二次圧制御機構100が設けられる地域、及び当該二次圧制御機構100にてガスが供給される地域において、所定以上の震度(又は最大加速度)の地震が発生した場合、監視サーバCは、二次圧導入路開閉弁VD1を閉止する制御信号を送信し、制御装置Sが当該制御信号に基づいて二次圧導入路開閉弁VD1を閉止する。これにより、駆動圧導入路L3の内部の相対的に高圧の流体が絞り部Siを介してパイロットガバナ50の第6室H6と主ガバナ10の第1室H1へ流入し、パイロットガバナ50の副弁体V0が閉止すると共に、主ガバナ10の第1室H1と駆動圧室H2とが同圧となって主ガバナ10の主弁体V1が閉止され、ガス通流路L0が遮断される。
以上の如く、ガス通流路L0が遮断された状態において、地震等が収束して復帰処理する場合、バイパス路開閉弁VD2を閉止状態から開放状態として、主ガバナ10の主弁体V1の開度を大開度で二次圧を昇圧すると、昇圧勾配が大きいため、二次圧が設定圧を超えてオーバーシュートする虞がある。
【0023】
そこで、制御装置Sは、二次圧導入路開閉弁VD1を閉止状態とし主ガバナ10の主弁体V1を遮断状態とした後で復帰処理する場合に、二次圧導入路開閉弁VD1を開放状態とし主ガバナ10の主弁体V1を開放状態とする前に、バイパス路開閉弁VD2を開放状態とする復帰前バイパス路開放制御と、復帰前バイパス路開放制御を実行した後に、バイパス路開閉弁VD2を閉止状態とすると共に二次圧導入路開閉弁VD1を開放状態とする復帰開閉制御とを、記載の順に実行する。
【0024】
これにより、図2に示すように、主ガバナ10の主弁体V1が開放する前(図2で時刻t2以前)に、復帰前バイパス路開放制御(時刻t1から時刻t2までの間の期間T1で実行される制御)が実行されることで、二次圧の昇圧勾配が比較的緩やか状態で、二次圧が昇圧する。この後、例えば、圧力計S1にて計測される二次圧が設定圧まで昇圧した時点(図2で時刻t2)で、復帰開閉制御が実行されることになるから、バイパス路開閉弁VD2が閉止状態となり且つ二次圧導入路開閉弁VD1が開放状態となり、主ガバナ10の主弁体V1は、大開度になりすぎることなく開放状態になるから、二次圧のオーバーシュートが好適に回避できる。
【0025】
尚、制御装置Sは、復帰前バイパス路開放制御におけるバイパス路開閉弁VD2の開放状態は、バイパス路開閉弁VD2の開度を所定の開度に維持した状態とする。これにより、二次圧の昇圧時に、バイパス路開閉弁VD2の開閉による圧力振動が生じることを防止する。
因みに、復帰前バイパス路開放制御におけるバイパス路開閉弁VD2が開放状態の場合、二次圧の昇圧勾配は0.033kPa/分以上2.000kPa/分以下となる。
【0026】
次に、当該実施形態に係る二次圧制御機構100の制御方法を、図4の制御フローに基づいて説明する。
制御装置Sは、監視サーバCから感震遮断に係る制御信号を受信すると(#01でYes)、二次圧導入路開閉弁VD1を閉止する(#02)。これにより、主ガバナ10の主弁体V1は閉止され、ガス通流路L0が遮断される。一方、制御装置Sは、監視サーバCからの感震遮断に係る制御信号を受信しない場合(#01でYes)、所定時間毎に、ステップ#01の判定を実行する。
ステップ#02の後、制御装置Sは、監視サーバCから復帰処理の指令があった場合(#03でYes)、復帰前バイパス路開放制御を実行し(#04)、復帰処理の指令がない場合(#03でNo)、所定時間待機後に、ステップ#03の判定を実行する。
これにより、ガス通流路L0よりも流路径の小さいバイパス路Laを介して、比較的低い昇圧勾配で二次圧が徐々に昇圧する。
その後、制御装置Sは、圧力計S1にて計測される二次圧が設定圧以上であると判定した場合(#05でYes)、復帰開放制御を実行する(#06)。
詳細には、制御装置Sは、バイパス路開閉弁VD2を閉止状態とし且つ二次圧導入路開閉弁VD1を開放状態とすることで、主ガバナ10の主弁体V1の開度を大開度にしすぎることなく開放状態とし、整圧器60の復帰処理を終了する。
一方、制御装置Sは、圧力計S1にて計測される二次圧が設定圧未満であると判定した場合(#05でNo)、ステップ#05の判定を所定時間毎に実行する。
【0027】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、二次圧導入路開閉弁VD1は、電気通信回線等のネットワークNにより制御装置Sと通信可能に接続された監視サーバCからの遠隔制御指令により、閉止制御される構成例を示した。
しかしながら、当該構成に限定されることはなく、二次圧導入路開閉弁VD1は、所定以上の震度を検知した場合に自身で閉止可能な感震遮断弁としても良い。この場合、二次圧導入路開閉弁VD1の開放制御については、上記実施形態と同様、制御装置Sからの復帰開閉制御により実現されることになる。当該構成の場合、監視サーバCを設ける必要なく、二次圧制御機構100は、ネットワークNに接続されることのない独立した制御機構として構成可能である。
【0028】
(2)上記実施形態では、バイパス路開閉弁VD2は、開状態と閉状態とが切り換えられる電磁弁である例を示したが、制御装置Sにより、その開度を制御可能な流量調整弁としても構わない。
【0029】
(3)上記実施形態では、制御装置Sが、復帰前バイパス路開放制御、復帰開閉制御を実行する構成を例示した。
しかしながら、復帰前バイパス路開放制御、復帰開閉制御の実行指令をも含めて監視サーバCが行い、制御装置Sが当該実行指令に基づいて、二次圧導入路開閉弁VD1及びバイパス路開閉弁VD2の開閉制御を実行するように構成しても良い。
【0030】
(4)図3に示すように、制御装置Sが復帰前バイパス路開放制御を実行している場合、ガス通流路L0の二次側において二次圧に気柱振動が生じる場合がある。
そこでこのような気柱振動を抑制するべく、制御装置Sは、上記実施形態に係る制御フロー(図4に図示)に替えて、図5に示す制御フローに基づいた制御を実行することもできる。ちなみに、当該図5に示す制御フローは、図4に示す制御フローに加え、ステップ#04-1及びステップ#04-2、及びステップ#05-1及びステップ#05-2を実行するものであるため、以下、当該制御に重点をおいて説明する。
図5の制御フローに示すように、制御装置Sは、時刻t1以降で、ステップ#04の復帰前バイパス路開放制御(図3でT1aの期間で実行される制御)の実行しているときに、予め定めらえた所定の計測期間(図3でT2)において、圧力計S1にて計測される最大圧力Pmaxと最小圧力Pminとの差が予め定められた圧力差判定閾値ΔP以上であると判定した場合(#04-1でYes)、バイパス路開閉弁VD2を一時的に閉止状態とする一時閉止制御を実行する(#04-2)。一時閉止制御を実行後は、所定時間の待機後、ステップ#04-1の前に戻る。一方、制御装置Sは、所定の計測期間(図3でT2)において、最大圧力Pmaxと最小圧力Pminとの差が圧力差判定閾値ΔP未満であると判定した場合(#04-1でNo)、ステップ#05の判定へ移行する。
制御装置Sは、圧力計S1にて計測される二次圧が設定圧以上であると判定した場合(#05でYes)、復帰開放制御を実行する(#06)。
一方、制御装置Sは、圧力計S1にて計測される二次圧が設定圧未満であると判定した場合(#05でNo)で、バイパス路開閉弁VD2が開放状態である場合(#05-1でYes)、ステップ#04-1の前へ戻り、バイパス路開閉弁VD2が開放状態でない場合(閉止状態である場合)(#05-1でNo)、バイパス路開閉弁VD2を開放状態とし(#05-2)、ステップ#04-1の前へ戻る。
【0031】
上記実施形態では、パイロット流路開閉弁の一例として、二次圧導入路L2を開閉する二次圧導入路開閉弁VD1を備える構成を示した。しかしながら、当該構成に限定されることなく、二次圧導入路開閉弁VD1に替えて、パイロット流路である一次圧導入路L4を開閉する一次圧導入路開閉弁(図示せず)を、パイロット流路開閉弁として設ける構成としても良い。
【0032】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の二次圧制御機構、及びその制御方法は、整圧器によるガス通流路の遮断時からガス通流路を開放する際に、比較的簡易な構成を維持しつつシンプルな制御でありながらも、二次圧の制御不良を良好に防止できる二次圧制御機構、及びその制御方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
60 :整圧器
100 :二次圧制御機構
C :監視サーバ
L0 :ガス通流路
L2 :二次圧導入路(パイロット流路)
La :バイパス路
N :ネットワーク
P2 :二次圧
Pmax :最大圧力
Pmin :最小圧力
S :制御装置
S1 :圧力計
Si :絞り部
V1 :主弁体
VD1 :二次圧導入路開閉弁(パイロット流路開閉弁)
VD2 :バイパス路開閉弁
ΔP :圧力差判定閾値
図1
図2
図3
図4
図5