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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027907
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】人工魚礁
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/78 20170101AFI20250220BHJP
   A01G 33/00 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
A01K61/78
A01G33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133169
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】523312956
【氏名又は名称】アイエスエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】石 坂 靖 子
【テーマコード(参考)】
2B003
2B026
【Fターム(参考)】
2B003AA01
2B003BB03
2B003BB04
2B003CC01
2B003CC04
2B003DD01
2B003EE04
2B026AB05
2B026AC01
(57)【要約】
【課題】 自然水流(ゆらぎなど)を利用した、自然発生的な流れを意図的に作り出し、魚礁表面に常に新鮮な水を供給し、藻や水草及び魚介類に適した環境を造る人工魚礁を提供する。
【解決手段】 六角形又は八角形の断面形とされ、該断面幅Wの3乃至10倍の長さに設定された多角柱形の礁ブロック5の複数本が組み合わせられてなり、複数本の礁ブロック5が、同一面上に平行状に配列され、互いに隣り合う断面幅W同士の間に、該一定幅の0.3乃至1倍の流水隙間6が設けられた並列礁ユニット30、又は、複数本の礁ブロック5が、同一面上に多角環状に配された多角環礁ユニット40の何れかを有する魚礁ユニット2を備えた人工魚礁1。魚礁ユニット2は、前記並列礁ユニット30の複数が複数段に積み上げられ、上下段が互いに垂直軸心回りに90°向きを変えられて配されたものとしてなる、多段並列礁ユニット3とされた人工魚礁1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設置される人工魚礁であって、
一定幅の六角形又は八角形の断面形に形成された長尺な礁ブロックの複数本を、相互に平行又は交差する向きに並べて配置するとともに、
同一面上に並べて配置した礁ブロック同士の間には流水隙間を確保した礁ユニットを用いて形成したことを特徴とする人工漁礁。
【請求項2】
前記魚礁ユニットは、並べて配置した各礁ブロックの長さ方向が、水流の方向に対し、30°乃至150°傾けて配置され、各礁ブロックの長さ方向の端壁が互いに対峙して連なり、複数条に配列された、請求項1記載の人工魚礁。
【請求項3】
前記魚礁ユニットは、複数本の小ブロックを同一面上に多角環状に配置した多角環礁ユニットを構成しており、当該多角環礁ユニットの複数が、上下複数段に積み上げられ、上下何れか一方の多角環礁ユニットの各頂角が、上下何れか他方の多角環礁ユニットの各礁ブロックの長さの1/2相当の位置に配された多段環礁ユニットとされた、請求項1記載の人工魚礁。
【請求項4】
更に、水底に設置された台枠を備えており、前記礁ユニットは当該台枠の上に、横架して載置され、
該台枠は、前記礁ユニットを構成する礁ブロックを横架状態で支持する梁と、当該梁を水底から立設支持する支柱とからなる1~3何れか記載の人工魚礁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川及び海洋に沈設され、魚介類の繁殖や生活の場、集合場所、隠れ家、魚道、藻や水草の藻場等となり、水流に変化を与えて水底の養分を巻き上げ、栄養塩の豊富な水質へと導く魚礁の外、水生工、堤防の一部や消波ブロック等にもなり得る人工魚礁に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、水域に魚介類を繁殖させる為に、水底に起伏を作り、魚介類の餌場や棲息場所となり、藻や水草の藻場とするために人工魚礁が沈設されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開昭60-251828号公報)には、海中に沈設する魚礁ブロックに固定する数本の取付け脚と、これら脚に支えられて前記ブロック上に展開する傘状の天板とからなり、前記天板が、通水孔を有する育藻床とされ、天板の繁殖藻の遮光作用によって魚類の好む居住空間を確保するものとされた藻魚用礁材が示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2013-13357号公報)には、適宜な長さを有する棒状体として形成され、横にする状態で順に上方向に積み重ねて立方体の人工魚礁を形成する魚礁用ブロックであって、上底と下底が平行な概略台形断面を有してなる構造とし、微小な小魚や稚魚が隠れる棲息場所と大形魚が棲息する場所を簡単に形成することができる。魚が住みやすい絶好の場所を簡単に形成することができる。また、微小な小魚や稚魚が隠れる棲息場所を作ることにより、稚魚の生存率を向上させることができる。これにより、水産資源全体の拡大を図ることができる魚礁用ブロック及び人工魚礁が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-251828号公報
【特許文献2】特開2013-13357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に示された藻魚用礁材は、天板に繁殖した藻が、寿命を迎えて枯死した後、更新が起こらず、遮光作業が得られなくなり、魚礁として機能が損なわれてしまうことが懸念される。機能が低下した人工魚礁は、水中で清掃するか、陸揚げして洗浄し、水底に沈設し直す等のメンテナンスを要し、この為維持経費が膨らむ。
【0007】
また、前記特許文献2に示された魚礁用ブロック及び人工魚礁は、概略台形断面を有してなる。該魚礁用ブロック単体が水底に沈設された場合に、全ての側壁が夫々一平面からなり、藻や水草が定着し難い形状となっている。また、固定部材とナットとによって複数個の魚礁用ブロックが連結され立体的な人工魚礁とされているが、立体的に組み立てられていない魚礁用ブロックを水底に沈設する技術は示されていない。単体の魚礁用ブロックをそのまま沈設した場合には、短期間のうちに土砂に埋没してしまう懸念があった。
【0008】
更に、前記特許文献2に開示された魚礁用ブロックには、アミノ酸が添加されており、魚介類や藻等を誘引する機能が与えられている。しかしながら、生物を誘引する栄養素はアミノ酸のみに留まるものではなく、その他にもより有効な成分が有り得る。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、生命のゆりかご、藻場産生、魚類の隠れ家としての人工魚礁、魚道としての人工魚礁、藻や水草などの栄養源となり得る人工魚礁を提供すること。更に、海、河川、湖等様々な水域における水流の特徴を活かし、魚礁の表面に常に新鮮な水を供給するように、また、外界の自然流(ゆらぎなど)を利用した、自然発生的な流れを意図的に作り出し、藻や水草、及び魚介類の夫々の特性に応じて、棲息及び繁殖に適した環境を造り出すことができる人工魚礁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題の何れかを解決するべく、本発明では、水中に設置される人工魚礁であって、一定幅の六角形又は八角形の断面形に形成された長尺な礁ブロックの複数本を、相互に平行又は交差する向きに並べて配置するとともに、同一面上に並べて配置した礁ブロック同士の間には流水隙間を確保した礁ユニットを用いて形成したことを特徴とする人工漁礁を提供する。
また、一定幅の六角形又は八角形の断面形とされ、該一定幅の3乃至10倍の長さに設定された多角柱形の礁ブロックの複数本を組み合わせてなり、複数本の礁ブロックが、同一面上に平行状に配列され、互いに隣り合う断面形の該一定幅同士の間に、該一定幅の0.3乃至2倍の流水隙間が設けられた並列礁ユニット、又は、複数本の礁ブロックが、同一面上に多角環状に配された多角環礁ユニット、の何れかを有する魚礁ユニットを備えた人工魚礁を提供する。
【0011】
前記礁ブロックは、断面形が六角形又は八角形の多角柱形に形成される。水底に沈設された該礁ブロックは、その断面形(多角形)の一辺側の側壁が底壁となって接地されると、該一辺の対辺側の側壁が天壁となる。該礁ブロックの側壁に水流が当たると、下側に流れる下降流と上昇される上昇流とが発生され、下降流が水底に沈んでいる栄養塩や藻類の胞子や水草類の種などを巻き上げ、上昇流が、天壁に沿って円滑に流れ、舞い上げられた栄養塩や胞子、種等が、水中に拡散され、水域を栄養豊富な環境に変える。特に当該礁ブロックは、断面形が正六角形又は正八角形が望ましく、また角部(エッジ部)は丸めた形状として形成することもできる。ただし、当該角を丸める程度は、前記自然発生的な流れ(層流、乱流、ベルヌーイ、コアンダ効果など)を意図的に作り出すことができ、また藻類や水草等がより定着しやすい程度とすることが望ましい。
【0012】
前記礁ブロックは、断面形が六角形又は八角形の多角柱形であり、そのエッジ部分には攪乱(渦流)が発生するため、海藻が定着し易い。水の動きのある場所、流れのあるところに生物郡(海藻など)は定着し易い傾向にあるためである。新鮮な動きのある流体にはエネルギー(酸素、窒素、炭酸ガス)なども含まれる。水に動きが加わる箇所には多様な生物群が発生し易い。特に生態系の中の食物連鎖を作り出すきっかけになるのは、植物プランクトンの増殖から、該植物プランクトンを餌とする動物プランクトンの増殖という流れが必須である。当該礁ブロックは、生命のゆりかごとしての役割を担う。そのために、当該礁ブロックの断面形は、六角形又は八角形であり、望ましくは六角形とするものである。仮に当該礁ブロックの断面形が、三角形であれば、その断面(表面積)は、その面積比や傾斜各などから外界の応力など影響を受けやすくなるため、流れのエネルギーを強く受けすぎる可能性がある。この点、断面形が六角形(六面)であれば、三角形(三面)に比べて攪乱(エネルギー)の分散におけるバランスがとりやすくなり、設置時の安定性を高めることができる。また四角形(特に正四角形)であれば並べた礁ブロックの側面同士が密着することも危惧され、五角形(特に正五角形)であれば上下に積載したときの安定感が失われることも危惧される。そして十角形(特に正十角形)であればエッジ部分における攪乱(渦流)の発生が減少してしまう。
【0013】
前記並列礁ユニットは、平行状に配列された複数本の礁ブロックの間に、流水隙間が設けられており、各流水隙間は、これに沿って水が流れ込み円滑に排出される流路となり、常に新鮮な水が供給される。かかる流水隙間は前記礁ブロックの断面形の幅寸法の0.3乃至2倍、望ましくは当該幅寸法の0.3乃至1倍、特に望ましくは当該幅寸法の0.4乃至0.6倍とすることができる。更に、各流水隙間は魚介類の棲息環境としての役割を果たす。各流水隙間に面するエッジ部分にも海藻郡が定着し、更にその後、その側壁も安定的な藻場として機能する。流水隙間の幅が、礁ブロックの断面形の幅寸法の0.3倍未満では、水流の流れ込む量が減り、円滑な水流が得られなくなる虞がある。また、2倍を超えると、魚介類の隠れ家としての機能が低下してしまう虞がある。
【0014】
前記多角環礁ユニットは、多角環状に配置された複数本の礁ブロックが、水底に環状に連なる隆起を形成し、例えば、海のように360°(前後上下左右)方向からの潮流、風、波浪、潮位等の影響を受ける場合に、何れの方向からの水流であっても、水流を上昇し、下降させて該該多角環礁ユニット内外の水流を撹拌状として栄養豊富な水質を造りだす。また、該多角環礁ユニット内側縁が魚介類の棲息場所としての役割を果たす。
【0015】
前記魚礁ユニットは、並列礁ユニット又は多角環礁ユニットの何れか一方のみか、又は、並列礁ユニット又は多角環礁ユニットの少なくとも何れか一方を有するものかの何れかとすることができる。
【0016】
本発明は、前記魚礁ユニットが、前記並列礁ユニットの複数を複数段に積み上げ、上下段が互いに垂直軸心回りに90°向きを変えて配置した人工魚礁とすることができる。
【0017】
立体格子状の積み上げは、2段積み以上(3段等)が効果的と考えられる。水底に立体的に積み上げることで礁ブロックの上下間にも隙間(空間)ができる。小魚や回遊魚などの棲息場所としての役割を果たすとともに、海藻郡が定着した後に、より安定的な藻場として機能する。海藻類などの定着面積の効率を考えれば、表面積を多くし、密になり過ぎない方が良い。
【0018】
並列礁ユニットの複数が複数段積み上げられた魚礁ユニットは、360°(前後上下左右)方向(即ち全周方向)からの水流に、乱流や渦流を発生させて水底の栄養塩を水中に巻き上げて水質を改善する。複数段積み上げられた並列礁ユニットの内側は、常に新鮮な水流が流動する。魚介類の棲息場所となる。複数段の各並列礁ユニットは、一段毎に90°の向きに回転させて積み重ねた場合には水流に対しても安定させることができるが、90°以外の角度で回転させて積み重ねた場合には、水流の影響を受けて早期に安定感が失われ、寿命よりも早く倒壊してしまうことが懸念される。
【0019】
本発明は、前記魚礁ユニットが、前記並列礁ユニットの各礁ブロックの長さ方向を、水流の方向に対し、30°乃至150°傾けて配置した人工魚礁とすることもできる。例えば、河川など急流の場合に設置する際には、各礁ブロックの長さ方向を水流の方向に対し直角(90°)にすることができる。
【0020】
河川では、標高差により流下する一方向の水流のエネルギーが生じ易い。魚礁ユニットは、並列礁ユニットの各礁ブロックが、水流に対し、30°乃至150°傾けて配置されているから、水流に対して抵抗を生じ、水流を攪乱する。流れ方向に対して直角に配置されると、その抵抗は最大となる。30°乃至150°の範囲で、ケレップ水制と同様の機能を発揮する。各礁ブロックの長さ方向が、水流に対して平行(0°)にならないようにするのが良い。
【0021】
並列礁ユニットは、各礁ブロックの長さ方向を、水流の方向に対し、30°未満の角度に傾けた場合に、流水隙間を通過する水流が激しくなり、魚介類の棲息に適さない可能性が高まる。また、水流の攪乱が少ないという欠点を生じる。150°を超えた角度に傾けられた場合にも同様に流水隙間を通過する水流が激しくなり易く、水流の攪乱効果も低いことが懸念される。
【0022】
本発明は、前記魚礁ユニットが、前記並列礁ユニットを複数設け、各礁ブロックの長さ方向の端壁が互いに対峙して連なり、複数条に配列された人工魚礁とすることもできる。
【0023】
各礁ブロックの長さ方向の端壁が互いに対峙して連なり、複数条に配列された魚礁ユニットは、魚道を形成する。主に河川両脇(護岸)の保護的役割を果たし得る。ウナギなどの細長い降河性回遊魚の棲息場所とすることもできる。各流水隙間の底部に魚の棲息場所が出来る。急流での流れ速度を緩やかにする機能も果たす。各礁ブロックの前後端壁の間にも流水隙間と同じ隙間寸法であって、該流水隙間に直交する向きの隙間が設けられたものとすることができる。水流方向の経線状流水隙間と、水流に直交する方向の緯線状流水隙間とが、相互に網状に繋がるようにすることができる。
【0024】
魚礁ユニットは、主に、3次元立体的な隙間を重視する。理想としては、自然界に存在する上流河川域における自然岩郡(ビオトープ景観)が望ましい。主に魚の棲息場所となる状態にある岸辺、草の生い茂った繁みなどである。急流においても魚の休憩できる流れの緩やかな場所は必須である。このような条件を満たす上で、礁ブロックは正六角形又は正八角形の断面形とすることが望ましい。
【0025】
本発明は、前記魚礁ユニットが、前記多角環礁ユニットの複数を、上下複数段に積み上げ、上下何れか一方の多角環礁ユニットの各頂角が、上下何れか他方の多角環礁ユニットの各礁ブロックの長さの1/2相当の位置に配された多段環礁ユニットとした人工魚礁とすることもできる。
【0026】
海洋中での積み上げは様々な形が考えられるが、空間を確保することに意味がある。回遊魚などの棲息場所としての役割と、海藻類繁茂の相乗効果を狙う。しかしながら、海藻郡には光が重要であって、透視度(透明度)の低い海洋では浅瀬に、透視度の高い海では深く設置するなど、水深と植生のバランスも考えなければならない。
【0027】
多段環礁ユニットは、水底からの隆起をより高く設定し、水流への影響をより大きくする。より大型の魚介類が棲息、蝟集する場所となり得る。多角環礁ユニットの複数が、上下複数段に積み上げられた構造は、上下何れか一方の多角環礁ユニットの各頂角が、上下何れか他方の多角環礁ユニットの各礁ブロックの長さの1/2相当の位置に配されたものが最も安定したものとなる。上下何れか一方の多角環礁ユニットの各頂角が、上下何れか他方の多角環礁ユニットの各礁ブロックの長さの1/2相当以外の位置に配されたものは、安定を失い易く、倒壊し易い。
【0028】
本発明は、前記魚礁ユニットが、礁ブロックの使用数の異なる大小の多段環礁ユニットを複数設け、小な多段環礁ユニットの外周囲を大きな多段環礁ユニットが囲むように配置した人工魚礁とすることができる。
【0029】
適切な隙間を作ることにより、無数の大小の空間の確保、積み重なった時のランダムな空間の確保を目的とする。小な多段環礁ユニットと大きな多段環礁ユニットとの組み合わせにより、構造が複雑化し、より複雑な水流を発生し得る。小な多段環礁ユニットと大きな多段環礁ユニットとの間にも、魚介類の棲息域が形成される。
【0030】
本発明は、前記礁ブロックが無機物と有機物との混合体からなり、無機物としてはセメント砂、石など、有機物としては熟成腐植土などを使用する事ができる。該有機物が、海藻や水草等の定着を促し、海藻や水草等の寿命と共に崩壊し、砂に戻るよう礁ブロックの経年劣化を促進する人工魚礁となる。
【0031】
前記有機物は海を耕すための栄養(補助)剤として機能する。経年変化(劣化)しながら砂に戻る(還元)状態を作り出す。構造体でありながらそれほど強度は必要でないため、藻類のサイクルに合わせた耐用年数、5乃至8年程度で海や河川に還元するもの(主に砂)とするのがよい。自然界における海藻や水草等の生育には、生物由来の有機体(熟成腐植土など)およびイオン類が関係していることが知られている。
【0032】
礁ブロックの経年劣化を促進し、海藻や水草等の寿命と共に崩壊する構造は、前述の如く熟成腐植土等の有機物が添加された構造の外、コンクリートよりも経年劣化し易い素材の粒状物又は粉状物が添加された構造とすることができる。
【0033】
有機物としての熟成腐植土を含む礁ブロックは、熟成腐植土中の成分を水中に溶出し、海藻や水草等の生育を促進し、該有機物が礁ブロックの経年劣化を促し、海藻や水草等が寿命を迎える頃に崩壊し、水底の砂となる。清掃や整備等のメンテナンスが不要となる。利用後は崩壊してしまうので新たに設置するのが容易になる。
ものとする。
【0034】
本発明は、前記魚礁ユニットが、水底に設置された台枠の上に、横架して載置することができる。かかる台枠は、前記礁ユニットを構成する礁ブロックを横架状態で支持する梁と、当該梁を水底から立設支持する支柱とで構成することができる。更に該台枠は、4本の支柱と、各4本の支柱の上端から礁ブロックの断面形の一辺の長さに相当する下方間に横架された4本の梁と、が一体化された構造物とすることができる。
【0035】
海洋中では、海の垂直360°及び水平360°(前後上下左右)方向の潮流、風、波浪、潮位などが影響して常に攪乱の状態にある。海中等では台座(前記台枠)等に配置する。空間(隙間)を作り、あまり密には並べない。隙間を作る理由として、表面に常に新鮮な水を供給する為である。また、外界の自然流(ゆらぎなど)を利用した、自然発生的な流れを意図的に作り出す(層流、乱流、ベルヌーイ、コアンダ効果など)方が望ましい為である。
【0036】
六角形又は八角形の断面形とした多角柱を横転させた形状の礁ブロックは、その天壁を長さ方向に水流が流れることによって、台枠の接地部に上昇流が発生し、水底に溜まった胞子類を上昇させ、礁ブロックへの藻類の定着を促進する。海藻郡を定着誘引し易くし、成長した後にも栄養を供給し続けることができる。
【0037】
台枠は、並列礁ユニットを水中に支持し、並列礁ユニットの上下を水流が通過可能とする。並列礁ユニットの上部に日光が届き、藻類や水草等がより定着し易くなる。藻類や水草等が定着し、日差しが遮られた並列礁ユニットの下部が魚介類の棲息場所となる。台枠は、礁ブロックと同じ素材で形成し、経年劣化し、藻類や水草等が枯れる時期と同時期に崩壊するように構成することができる。台枠は、4本の梁の中の対峙する二本間の上に、並列礁ユニットを横架状態で搭載することができる。また、台枠は、各4本の支柱の上下端間寸法の1/2よりも下方間に横架された4本の貫を有することができる。台枠は、4本の梁の中の対峙する二本間と、4本の貫の中の対峙する二本間との夫々の上に、並列礁ユニットを横架して搭載することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の人工魚礁によれば、外界の自然流(ゆらぎなど)を利用した、自然発生的な流れを意図的に作り出すことができ、藻類や水草等が定着し易くなる。礁ブロック間の流水隙間が、魚介類の棲息場所となり得る。水流を撹拌し、水底に沈む栄養塩、胞子及び種子などを巻き上げて周辺の水質を改善するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】(a)台枠に並列礁ユニットが載置された人工魚礁の斜視図。 (b)台枠の三面図。
図2】(a)台枠に一段の並列礁ユニット(魚礁ユニット)が載置された人工魚礁の写真。 (b)台枠に二段重ねの並列礁ユニット(魚礁ユニット)が載置された人工魚礁の写真。
図3】(a)並列礁ユニットが二段重ねされた魚礁ユニットの写真。 (b)並列礁ユニットが三段重ねされた魚礁ユニットの写真。 (c)複数本の礁ブロックが密に配列され三段重ねされた魚礁ユニットの写真。
図4】(a)4段重ねの小な多段環礁ユニットの写真。 (b)2段重ねの大きな多段環礁ユニットの写真。 (c)大小の多段環礁ユニットが組み合わせられた人工魚礁の写真。
図5】(a)河川の流れ方向Fに対して傾斜された並列礁ユニットの人工魚礁の写真。 (b)一部に勾配(隆起)がある水底に沈設された並列礁ユニットの人工魚礁の写真。
図6】(a)望ましく無い人工魚礁8の写真。 (b)望ましく無い人工魚礁8の写真。 (c)望ましく無い人工魚礁8の写真。 (d)望ましく無い人工魚礁8の写真。
図7】(a)望ましく無い人工魚礁8の写真。 (b)望ましく無い人工魚礁8の写真
図8】(a)礁ブロックの正六角形の断面図。 (b)礁ブロックの正八角形の断面図。 (c)望ましく無い礁ブロックの正三角形の断面図。 (d)望ましく無い礁ブロックの正方形の断面図。 (e)望ましく無い礁ブロックの正五角形の断面図。 (f)望ましく無い礁ブロックの正七角形の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる人工魚礁を具体的に説明する。特に本実施の形態は、山間の沢、平野を流れる河川、側溝や用水路、湖、沼、海等の様々な水中に設置することができる。そして、少人数の人手か、又は、小規模の起重機等を用いて沈設可能とした人工魚礁である。ただし本発明の人工魚礁は、以下の実施の形態に限定されることなく、大型のもの、又は小型のものとすることができる。
【0041】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の人工魚礁1は、並列礁ユニットを有する魚礁ユニット2が、水底に設置された台枠7の上に、横架して載置することができる。魚礁ユニット2の各礁ブロック5は、同一水平面上に配列された姿勢に搭載することができる。
【0042】
図1及び図2(a)に示すように、魚礁ユニット2は、複数本の礁ブロック5が、同一面上に平行状に配列され、互いに隣り合う断面形の該一定幅W同士の間に、該一定幅Wの0.3乃至2倍の流水隙間6が設けられた並列礁ユニット30とすることができる。
【0043】
図1及び図8(a),(b)に示すように、礁ブロック5は、一定幅Wの正六角形又は正八角形の断面形であり、該一定幅Wの3乃至10倍の長さLに設定された多角柱形とすることができる。例えば、正六角形の断面形とされ、一定幅Wは、100乃至300mm、望ましくは200mm、長さLは、300乃至2,000mm、望ましくは1,000mmとすることができる。
【0044】
礁ブロック5は、無機物と有機物との混合体であり、無機物としてのセメント及び砂と、有機物としての熟成腐植土を含むことができる。
【0045】
礁ブロック5は、その材料となるセメントペーストが、該セメントに対する該砂及び該有機物の混合比が、通常のコンクリートのセメントに対する骨材との混合比よりも多くなるように配合することが望ましい。通常よりも骨材相当分を多く含み、水中に沈設された場合に、海藻や水草等の寿命と共に(5乃至8年で)崩壊するよう、経年劣化を促進させることができる。
【0046】
礁ブロック5は、その材料となるセメントペーストが、該セメントに対する該水の混合比が、通常のコンクリートのセメントに対する水との混合比よりも多く配合することができる。通常よりも水を多く含み、海藻や水草等の寿命と共に(5乃至8年で)崩壊するよう、製造後の経年劣化を促進させることができる。
【0047】
図8(b)に示すように、礁ブロック5は、正八角形の断面形状とすることもできる。かかる正八角形とした場合には、側面に、上下方向に展張する平面部分が存在することから、当該面が水流の抵抗面となり、水流の影響を受けやすくなってしまう。
【0048】
図8(c),(d)に示すように、断面形状が正三角形又は正方形(四角形)とされた礁ブロック9は、側壁90が平面であり、エッジが少なく海藻や水草等が定着し難い。図8(e),(f)のように、断面形状が正五角形や正七角形の礁ブロック9は、天壁91に頂角92があり、積み重ねられた場合に安定し難い。更に、断面形状が正八角形を超えた多角形状の場合には、底壁93の面積が狭くなり、安定した設置が困難となる。
【0049】
図8(a)に示すように、断面形状が正六角形の六角柱状の礁ブロック5は、両側壁52に側頂角52aを有する。天壁53及び底壁54を水平に設置できる。天壁53及び底壁54の面積をより大きく設定できる。
【0050】
図8(b)に示すように、断面形状が正八角形の八角柱状の礁ブロック5は、両側壁52の合計4箇所に側頂角52aを有する。天壁53及び底壁54を水平に設置できる。
【0051】
図2(b)及び図3(a),(b)に示すように、魚礁ユニット2は、前記並列礁ユニット30の複数が複数段に積み上げられ、上下段が互いに垂直軸心回りに90°向きを変えて配置した多段並列礁ユニット3とすることができる。例えば、図3(a)の上下2段、又は、図3(b)の上下3段とすることができる。また、図3(c)に示すように、各礁ブロック5同士間に流水隙間6が設けられていないものは、水の流動が得られず余り有効ではない。
【0052】
本実施の形態にかかる台枠7は、奥行きD7が、礁ブロック5の長さLの55%乃至90%(550乃至900mm)であり、例えば750mmとすることができる。横幅W7は、礁ブロック5の長さLの90%乃至160%(900乃至1600mm)であり、例えば1500mmとすることができる。
【0053】
該台枠7は、長方形状の四角夫々に礁ブロック5に相当する長さL(1,000mm)の4本の支柱70が立設されている。各4本の支柱70の上下端間寸法の1/2よりも僅かに下方寄りとなる中途部間に4本の貫71が横架結合されている。各4本の支柱70の上端から礁ブロック5の断面形の一辺の長さS(100mm)に相当する下方位置間に4本の梁72が横架結合されている。支柱70,貫71及び梁72の各骨格は、何れも一辺が100mmの正方形断面の四角柱であってよい。該台枠7は、礁ブロック5と同じ材質とすることができる。ただし当該台枠の大きさは設置場所や目的に応じて任意に変更することができる。
【0054】
図1及び図2(a)に示した、並列礁ユニット30は、それ自体が人工魚礁1となり得る。図2(b)及び図3(a),(b)に示した、多段並列礁ユニット3(魚礁ユニット2)は、それ自体が人工魚礁1となり得る。
【0055】
魚礁ユニット2は、複数本の礁ブロック5が、同一面上に多角環状に配された多角環礁ユニット40を有することができる。該多角環礁ユニット40は、それ自体が人工魚礁1となり得る。魚礁ユニット2は、前記多角環礁ユニット40の複数が、上下複数段に積み上げられ、上下何れか一方の多角環礁ユニット40の各頂角401が、上下何れか他方の多角環礁ユニット40の各礁ブロック5の長さLの1/2相当の位置に配された多段環礁ユニット4とすることができる。該多段環礁ユニット4は、それ自体が人工魚礁1となり得る。
【0056】
図4(a)に示すように、多段環礁ユニット4は、3本の礁ブロック5が、平面三角形状をなすよう配置された3個の多角環礁ユニット40が、上下に3段重ねとすることができる。また、図4(b)に示すように、多段環礁ユニット4は、6本の礁ブロック5が、平面六角形状をなすよう配置された2個の多角環礁ユニット40を、上下に2段重ねとすることができる。
【0057】
図4(c)に示すように、魚礁ユニット2は、礁ブロック5の使用数の異なる大小の多段環礁ユニット4が複数設けられ、小な多段環礁ユニット4の外周囲を大きな多段環礁ユニット4が囲むよう配置することができる。小な多段環礁ユニット4は、3本の礁ブロック5を平面三角形状をなすよう配置した多角環礁ユニット40を、上下に2段重ねとすることができる。大きな多段環礁ユニット4は、6本の礁ブロック5を平面六角形状をなすよう配置した多角環礁ユニット40を、上下に2段重ねとすることができる。
【0058】
図5(a)に示すように、魚礁ユニット2は、前記並列礁ユニット30が複数設けられ、各礁ブロック5の長さ方向の端壁50が互いに対峙して連なり、複数条に配列された人工魚礁1とすることができる。各並列礁ユニット30は、隣り合う礁ブロック5同士を、長さ方向にずらして配置することができる。該魚礁ユニット2は、前記並列礁ユニット30の各礁ブロック5の長さ方向が、水流の方向Fに対し、30°乃至150°傾けて配置した人工魚礁1とすることができる。各礁ブロック5の前後端壁50の間にも流水隙間60と同じ寸法の隙間を設けることができる。水流方向に沿った経線状流水隙間6と、水流に交叉する方向の緯線状流水隙間60(図5(b)には隙間が設けられていないので配設位置のみを示す。)とで、相互に繋がった流路を構成とすることができる。例えば、図5(b)の写真に伏せた金属製容器で模して示すように、人工魚礁1の並列礁ユニット30が水底の岩などの凸部地形に載り、一部または全体を地形に沿って傾斜させた状態に沈設することができる。
【0059】
図6(a)に示すように、複数本の礁ブロック5が概略三角柱状に積み上げられた人工魚礁8とすることも可能であるが、海藻類などの定着面積の効率や、魚介類の棲息空間を考えれば、表面積を多くし、密になり過ぎない方が良い。図6(b),(c),(d)及び、図7(a),(b)に示す、あまり有効ではない人工魚礁8は、何れも流水隙間(6)がなく礁ブロック5同士が密になり過ぎている。砂にすぐ埋まってしまうものや、抵抗体(水流攪乱体)としてあまり機能しないもの等の例である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の人工魚礁は、海や河川などにおいて人工漁礁を構築する以外にも、水制工、床固め、消波、砂防、植生護岸、魚道等に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 人工魚礁
2 魚礁ユニット
3 多段並列礁ユニット
30 同 並列礁ユニット
4 多段環礁ユニット
40 同 多角環礁ユニット
401 同 頂角
5 礁ブロック
50 同 端壁
51 同 多層膜
52 同 側壁
52a 同 側頂角
53 同 天壁
54 同 底壁
W 同 一定幅
L 同 礁ブロック5の長さ
S 同 断面形の一辺の長さ
6 流水隙間
F 河川の流れ方向
α 傾斜角度
7 台枠
D7 同 奥行き
W7 同 横幅
70 同 支柱
71 同 貫
72 同 梁
8 有効でない人工魚礁
9 有効でない礁ブロック
90 同 側壁
91 同 天壁
92 同 頂角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8