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特開2025-27921コンタクト及びこれを用いたICソケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027921
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】コンタクト及びこれを用いたICソケット
(51)【国際特許分類】
   H01R 33/76 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
H01R33/76 503B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023143265
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】523335726
【氏名又は名称】市村 義昭
(72)【発明者】
【氏名】市村 義昭
【テーマコード(参考)】
5E024
【Fターム(参考)】
5E024CA12
5E024CB04
(57)【要約】
【課題】小型高密度化が容易であり、高いバネ性が得られると共に、2つの接触対象のいずれに対しても安定した電気的接触が可能であり、且つ、ICソケットへの取り付けが容易なコンタクト及びこれを用いたICソケットを提供することにある。
【解決手段】一片が長く他片が短いほぼ「くの字形」のコンタクトの、長片の先端は平板状のソケット本体を斜めに貫くコンタクト収容部出口から突出し第1の接点となり、「くの字形」屈曲部の円弧状突出部はソケット本体のコンタクト収容部入口より外側に広がるコーナー部に接し、それに繋がる短片の先端は第2の接点としてソケット本体より突出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一片が長く他片が短いほぼ「くの字形」のコンタクトの、長片の先端は平板状のソケット本体を斜めに貫くコンタクト収容部出口から突出し第1の接点となり、「くの字形」屈曲部の円弧状突出部はソケット本体のコンタクト収容部入口より外側に広がるコーナー部に接し、それに繋がる短片の先端は第2の接点としてソケット本体より突出する。
【請求項2】
請求項1と同じ構成のコンタクトで、
長片部の中間で根本部より先端側が外側に屈曲しまた内側に屈曲し根本部とほぼ平行に延びているが、この屈曲部はコンタクト収容部の壁面間よりわずかに小さく設定される。
第1、第2の接点が対象と接触しコンタクトの「くの字形」が深く変形するとき長片部は中間屈曲部がコンタクト収容部の壁面と接しそこを支点として先端側が傾きを深くする方向に変形、短片側は円弧状突出部コーナー接蝕部を支点に先端側が傾きを深くする方向に変形する。
この時長片部の中間屈曲部と円弧状突出部コーナー接蝕部の間は外側に円弧状に変形するがコンタクト収容部の壁面には当接しないように設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクト及びこれを用いたICソケットに関し、より詳細には上下に2つの接触対象を有するコンタクトと、このようなコンタクトを用いるICソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体パッケージ(以下、「ICパッケージ」という。)を搭載し、試験するためのICソケットのコンタクトとして、特許文献1に開示されるような上下に2つの接触対象(例えば、上方はICパッケージであり、下方はプリント配線板である。)を有するコンタクトが用いられてきた。このようなコンタクトは、ICソケットに搭載されるICパッケージとテストボードのようなプリント配線板のいずれにも弾性的に接触することで、ICパッケージとプリント配線板を電気的に接続し得るように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008-21459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、このようなコンタクトは、ICソケットに搭載されるICパッケージやプリント配線板の外部接点の挟ピッチ化に伴い、コンタクト自身の小型化が要求されている。
従ってコンタクトの小型化にもかかわらず、ICソケットに搭載されるICパッケージやプリント配線板のような2つの接触対象に対して安定した電気的接続を得るために、特許文献1に示されるように、コンタクトのバネ性を高くする工夫がなされてきている。
【0005】
本発明の目的は、コンタクト及びそれを用いたICソケットにおいて、コンタクトの大きさがほぼ同じであってもさらにそのバネ性を向上させ、2つの接触対象の外部接点と電気的に接触するコンタクトの接点部の弾性変位量を大きくすることにある。より具体的にはコンタクト内の全領域において材料の弾性限界にまで曲げ応力が一様の曲げ変形をすることである。
それにより、ICソケットに搭載されるICパッケージやプリント配線板の反りによって生ずるコンタクトの接点部と外部接点との間の電気的接触の不均一化を防止することが可能となる。 結果として、接触対象としてのICパッケージやプリント配線板に反りがあったとしても、本発明に係るコンタクト及びそれを用いたICソケットは、より安定した電気的接続を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一片が長く他片が短いほぼ「くの字形」のコンタクトの、長片の先端は平板状のソケット本体を斜めに貫くコンタクト収容部出口から突出し第1の接点となり、「くの字形」屈曲部の円弧状突出部はソケット本体のコンタクト収容部入口より外側に広がるコーナー部に接し、それに繋がる短片の先端は第2の接点としてソケット本体より突出する。
【0007】
上記と同じ構成のコンタクトで、
長片部の中間で根本部より先端側が外側に屈曲しまた内側に屈曲し根本部とほぼ平行に延びているが、この屈曲部はコンタクト収容部の壁面間よりわずかに小さく設定される。
第1、第2の接点が対象と接触しコンタクトの「くの字形」が深く変形するとき長片部は中間屈曲部がコンタクト収容部の壁面と接しそこを支点として先端アーム部が傾きを深くする方向に変形、短片側は円弧状突出部コーナー接蝕部を支点に先端側が傾きを深くする方向に変形する。
この時長片部の中間屈曲部と円弧状突出部コーナー接蝕部の間中央弾性変形部は外側に円弧状に変形するがコンタクト収容部の壁面には当接しないように設定される。
【発明の効果】
【0008】
実際の使用状態は図5のようで、コンタクトの第1の接点部は上の接触対象から、第2の接点部は下の接触対象から、長片部の中間屈曲部と円弧状突出部はソケット本体から力を受けて釣り合っている。
本構造の理論的な考え方を分かりやすくするために、コンタクトの形を長片部中間屈曲部と円弧状突出部を省略するなど単純化しまた力の向きも垂直であるとして、コンタクトの受ける力の関係と変形と接点間変位を図1、2で説明する。
ここでは長片の先端第1の接点部はA点、中間屈曲部はB点、円弧状突出部はC点、短片の先端第2の接点部はD点で現わされている。
【0009】
図1においてコンタクトの受ける力とモーメントの関係を説明する。
A点とD点は外から受ける力で釣り合っておりこの力をPとする。B点とC点はソケット本体から力を受けて釣り合っておりこの力をFとする。長片部の先端アーム部ABの長さをS、短片CD長さをS、中央弾性変形部BCの長さを2Lとすると、C点におけるモーメントの釣合からP(2L+S)-2FL=PS
ここでS=S=SとするとF=Pとなる、すなわちABCD点に加わる力は全部同じPであることが分かる。
BC上の任意の点Xでの曲げモーメント M=P(2L+S-x)-F(2L-x)であるが、F=Pなので M=PSで一定になる。 なおAB上とCD上では曲げモーメントはそれより小さい。つまり中央弾性変形部BC上で曲げモーメントMが最大で一定になる。
【0010】
図2においてコンタクトの変形を説明する
計算を容易にするため先ずB点C点を回転支点(位置は動かない)とみなしたときの変形形状を求める。破線は原形、実線は変形後、二点鎖線は中央弾性変形部BC部のみが変形したときの接点Aと接点Dの位置を示す。
BC間で曲げモーメント一定なので中央では水平であり
(なおここでEはコンタクト材料の縦弾性係数、Iは断面二次モーメントと呼ばれるもの
ある。)
ABは断面一様とする)
これを▲1▼式とする。
この式から曲げモーメントが最大で一定である中央弾性変形部BC部の変形が先端アー
( 例えばL=Sのとき3倍)
なおi=iであるからC点に対するD点のトータルの変位量も δDC=δABである。
【0011】
コンタクトに働く曲げ応力について説明する。
中央弾性変形部BC上の曲げモーメントが一定で断面が一様である、すなわち板厚b と板幅cが一定とするとBC間任意の点Xでは材力の公式から曲げ応力が
円弧状に均一に変形することを示している。
中央弾性変形部BC上の曲げ応力が一定なので力を加えて行くと、全域が円弧状に均一に変形しながら曲げ応力も同じ大きさで増大し、最後に同時に弾性限界点σ (これ以上高くなるとばねとして永久変形をしはじめ元の形状に戻らなくなる)に達する、これがコンタクトの使用限度となる。一般に構造物は力を加えて行くと、どこか一部で弾性限界点σに達しても他の部分はまだそれ以内のままで変形できる余裕を残している、つまり弾性変形が全域に十分になされないものである。
それに対して曲げ応力一定の区間中央弾性変形部BCが長いということが弾性変形量を大きく取れる構造であるということであり、▲1▼式がこれを現わしているのである。
なお補足的なことであるが、本実施例では先端アーム部ABと短片CDも先端ほど曲げモーメントが小さいので、曲げ応力が一定になるように板幅は先端に向かって細くなって
(以上実際は全体ACは傾いているので、式は正確ではないが理論的な考え方の証明には影響は無い)
【0012】
本発明に係るコンタクトは、中央弾性変形部全域BCで曲げ応力が最大で一定になり、その結果接点間の弾性変位量を大きくとることが可能となった。
それにより、接触対象としてのICパッケージやプリント配線板に反りがあったとしても、本発明に係るコンタクト及びそれを用いたICソケットは、より安定した電気的接続を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図3ないし9を用いて本発明の好ましい実施態様について説明する。
【0014】
図3は、本発明の一つの実施例に係るコンタクトの斜視図であり、図4は、図3に示されるコンタクトがICソケットのソケット本体に装着され、2つの接触対象が取り付けられていない状態を示す部分断面図である。図5は、ICソケットに2つの接触対象が取り付けられ、図3に示されるコンタクトが該2つの接触対象と電気的に接触している状態を示す図4と同様の部分断面図である。図6は、本発明に係るコンタクトを使用するICソケットの概略分解斜視図であり、図7は、図6のICソケットの概略分解断面図である。
図8、9はコンタクトをソケット本体から抜け出ないようにする係止部材の説明図である。
【0015】
最初に、本発明に係る2つの接触対象を有するコンタクトが使用されるICソケットについて図6及び7を用いて説明する。
【0016】
図6、7に示されるように、ICソケット100は、概略、ソケット本体20及び押圧部材10を備えている。ICソケット100は、ネジなどの固定手段90により直接プリント配線板60に、又は該プリント配線板60を貫通してベース部材70に固定される。
【0017】
押圧部材10は、ICソケット100に搭載されるICパッケージ80をコンタクト40に向けて上から押圧する。本実施態様では、該押圧部材10の下面がICパッケージ80を押圧するための押圧部として形成されている。押圧部材10は、また、図6、7に示されるように、熱を放散させるためのヒートシンク11を備えていることが好ましい。
【0018】
ソケット本体20には、ICパッケージ80とプリント配線板60とを電気的に接続する複数のコンタクト40が配置される。該ソケット本体20は例えば、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホンのような電気的に絶縁性の合成樹脂から作られており、上から見て概略正方形状の六面体をなしている。 ソケット本体20の外郭は、上面21、該上面21に平行な底面23、及びこれらの面21、23に直交し、これらの面21、23を連結する4つの側面を有する。
【0019】
ソケット本体20の上面21の略中央には、上から見て略正方形状をした有底のICパッケージ載置用凹部22が形成されている。 本実施態様では、ICパッケージ載置用凹部22は、ソケット本体20の上面21に直交する4つの側面と、ソケット本体20の上面21に平行な水平断面略矩形状の底面22aを有する。該底面22aは、ICパッケージ80の載置面を構成する。 なお、水平断面略矩形状の底面22aの4隅又は4辺に載置部材を設けて、ICパッケージ80の載置面を形成してもよい。ソケット本体20の4隅には、ソケット本体20を、例えば、プリント配線板60に固定するとき、固定手段90が通り抜けることのできる取り付け孔38がソケット本体20を貫通するように形成されている。
【0020】
なおこのときソケット本体20とプリント配線板60の水平方向の位置関係を正確に保つため固定手段90とソケット本体取り付け孔38とプリント配線板の取り付け孔39の隙間を極小にするか、別途ソケット本体20とプリント配線板60の間に位置の基準となる突起と穴を設けて水平方向に動かないようにしてもいい。これによりソケット本体20とプリント配線板60は垂直に移動する。
またICパッケージ80とソケット本体20のICパッケージ載置用凹部22の間でも水平方向の位置関係を正確に保つため、両者の側壁の間にスプリングを入れ(図示せず)水平2方向の基準となる壁に接するようにする。これにより両者は基準側壁で密着しながら垂直に移動するのである。
【0021】
ICパッケージ載置用凹部22の底面22aには、ICパッケージ80の外部接点としての接触パッド81(図5)に対応して、複数のコンタクト40をそれぞれ収容する複数のコンタクト収容室25がマトリックス状に配列されている。コンタクト収容室25それぞれには、図7に示されるように、コンタクト40が同方向を向いて1つずつ収容される。
【0022】
コンタクト収容室25は、図4に示されるように、ICパッケージ載置凹部22の底面22aからソケット本体20の底面23に向けてソケット本体20を貫通している。
該コンタクト収容室25は、ICパッケージ載置凹部22の底面22aに対して略45°の角度をなしていることが好ましい。
【0023】
コンタクト収容室25の構造について、図4、5を用いてさらに説明する。
コンタクト収容室25は、図4に示される断面線A-A方向に見て方形状であり、したがって、コンタクト収容室25は4つの側壁により画定されている。
そして、この4つの側壁のうち、図4において左右に対向する側壁は、それぞれ、第1の上傾斜側壁29aと第1の下傾斜側壁29b及び第2の傾斜側壁31を有する。
第1の上傾斜側壁29aと第2の傾斜側壁31の斜面間寸法Wは中央弾性変形部BCの円弧の高さHよりわずかに大きく設定される、そしてまたコンタクトの長片の中間屈曲部(後述図面3で示すT)は収容室をスムースに通過できるようWよりわずかに小さく設定される。
収容室の斜面間寸法Wは小さくて済むので、隣り合う収容室間の樹脂部分の肉厚も薄くすれば、挟ピッチ化するのに非常に適した構造であるといえる。
【0024】
第1の上傾斜側壁29aと第1の下傾斜側壁29bとの間には、水平段部30が設けられている。 該水平段部30は、ICパッケージ載置凹部22の底面22a又はソケット本体20の底面23にほぼ平行であり、コンタクト40の円弧状突出部44の上方向を支持する。
また円弧状突出部44から繋がる中央弾性変形部43が第2の傾斜側壁31に密着するとき、円弧状突出部44と下傾斜側壁29b間に小さな隙間を設定すれば水平段部30と下傾斜側壁29bでコーナーを形成しコンタクト40の円弧状突出部44の上方と左方への移動を系止する壁となる。
【0025】
図4において、紙面に対して前後に位置して対向する残りの2つの側壁は、第1の上傾斜側壁29aと第1の下傾斜側壁29b及び第2の傾斜側壁31及びICパッケージ載置凹部22の底面22aのいずれに対しても直角をなしている。
【0026】
コンタクト収容部25をこのように構成することで、後述するコンタクト40の第1及び第2の接点部41a、45aが、図4に示されるように、コンタクト収容室25を画定する4つの側壁と干渉することなく上下に突出するように配置され得る。
なおコンタクトは長片先端部41aが押されると円弧状突出部44がコーナーから抜け出てしまうので、係止部材50の凹み51の下縁によりコンタクト突出片47の抜けを封じる。なお係止部材50の構造については後で説明する。
【0027】
コンタクト40は、例えば、ベリリウム銅(BeCu)のような導電性の金属製薄板から所定形状の細長い帯状体として打ち抜かれ、該帯状体を折り曲げ加工することにより図3に示されるような上下に2つの接触対象と接触可能な形状に形成される。
【0028】
本実施態様においては、これに限られるものではないが、コンタクトに関し、図3ないし5の実施例が示される。
【0029】
本実施例に係るコンタクト40は、一片が長く他片が短いほぼ「くの字形」で、長片の先端は第1の接点41aとなる。「くの字形」屈曲部は円弧状突出部44を持ち、それに繋がる短片45の先端には第2の接点45aを有する。
長片部の中間で根本部より先端側が外側に屈曲しまた内側に屈曲し根本部とほぼ平行に延びて先端アーム部41となる、この中間屈曲部42の高さTは、上述したようにコンタクト収容空間25の斜面間寸法Wより小さい。なおこの中間屈曲部42と円弧状突出部44の間中央弾性変形部43は断面が一様になっている。
【0030】
円弧状突出部44もその曲率中心Gが第1の上傾斜側壁29aより外側に突出するように形成し円弧の頂点が水平段部30と下傾斜側壁29bより成るコーナーに接することが望ましい。
それによりコンタクト40が下方から何らかの力を受けても、円弧状突出部44と対応するコーナーとの係合が外れ難くなる。
【0031】
第1の接点部41aは、長片の先端において上に凸に形成され、第2の接点部45aは、短辺45の先端において下に凸に円弧状に形成される。
図4及び5に示されるように、第1の接点部41aは中間屈曲部42を中心に、第2の接点部45aは、円弧状突出部44の曲率中心Gを中心として円を描くように上下及び左右に変位することが可能である。
【0032】
次に、コンタクト40を備えるICソケット100がプリント配線板60に実装され、続いてICパッケージ80が装着されたときのコンタクト40の動作について説明する。
【0033】
コンタクト40は、図5に示されるように、ソケット本体20のコンタクト収容室25に収容された後、係止部材50で抜けが防止され、ICソケット100にプリント配線板60及びICパッケージ80が取り付けられる。この時、コンタクト40の第1の接点部41aはICパッケージ80の外部接点である接触パッド81に当接するとともに、ICパッケージ80により弾性的に下降する。
また、先端アーム部41と中央弾性変形部の復帰力が、第1の接点部41aとICパッケージ80の接触パッド81とを所定の接圧で電気的に接触させる。
【0034】
同時に、コンタクト40の第2の接点部45aは、プリント配線板60の外部接点である接触パッド61に当接すると共に、プリント配線板60により押し上げられる。 短片部45が円弧状突出部44の曲率中心Gの周りに回転し、弾性変形することで、第2の接点部45aは弾性的に上昇する。また、短片部45の復帰力が第2の接点部45aとプリント配線板60の接触パッド61とを所定の接圧で電気的に接触させる。
なおここでは説明上第1のアーム部41と中央弾性変形部43、短片部45が個別に動くように述べたが、図1、2で説明したように全体の力が釣り合いながら弾性変形するのである。
【0035】
このときコンタクト40に働く垂直力は図1で示すよう釣り合っている。すなわち円弧状突出部44は第1の水平段部30と接するように垂直方向に支持される。
【0036】
第1の接点部41aは中間屈曲部42を中心に、第2の接点部45aは、円弧状突出部44の曲率中心Gを中心として円を描くように上下及び左右に変位する。
それに伴い、第1の接点部41aと第2の接点部45aは共に右方向にも動くが、ICパッケージ80とソケット本体20とプリント配線板60は水平方向の位置関係を正確に保ちながら相互に垂直に近づくので、ICパッケージ80の接触パッド81とプリント配線板60の接触パッド61から左方向に摩擦力を受けることになる。 したがって、コンタクト40は円弧状突出部44が第1の下傾斜側壁29bに突き当たり水平方向に支持される。
まとめると、コンタクト40は円弧状突出部44が第1の水平段部30と下傾斜側壁29bのなすコーナーに突き当たりながら、コンタクト収容部25内に安定して保持される。
【0037】
係止部材50の構造について図8と9で説明する。図8図4の側面図で係止部材50がソケット本体20の下面に設けられた溝28に嵌入し固定されることを示す。
図9はソケット本体にコンタクトが収納され、係止部材が対応する位置に押し込まれる直前の状態を示す。(押し込まれ固定された状態が図4である)
なおこの溝28はコンタクト収容室25と空間が繋がっており、コンタクトが収容室に納まったとき抜け止め突起47が溝28に突出する。
係止部材50にはコンタクト抜け止め突起47をその縁が囲む凹み51が設けられている、コンタクト抜け止め突起47間Mは収容室の壁間Nより大きく凹み51の下縁によりコンタクトが下方へ抜け出るのが防止されることが分かる。(図4も参照)
なおこの51の凹み深さはコンタクト抜け止め突起47が当たらない程度の深さである。(51の凹みは両側が繋がり貫通してもよい)
ソケット本体20と係止部材50の正確な位置決めは図9における突起52と凹部26のような組み合わせで行われる。
またソケット本体20と係止部材50は溝28で適当な間隔で圧入結合され強固に固定される。
【0038】
係止部材50の凹み51縁とコンタクト抜け止め突起47の間にはコンタクト変形時の動きを許す少し大きな空間となっているが、接触時は上に述べたようにコンタクト40は円弧状突出部44が第1の水平段部30と下傾斜側壁29bのなすコーナーに突き当たりながら、コンタクト収容部25内に安定して保持されるので問題は無い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】コンタクトに働く力とモーメントの関係である。
図2】コンタクトの変形である。
図3】本発明の一つの実施例に係るコンタクトの斜視図である。
図4図3に示されるコンタクトがICソケットのソケット本体に装着され、2つの接触対象が取付けられていない状態を示す部分断面図である。
図5】ICソケットに2つの接触対象が取り付けられ、図3に示されるコンタクトが該2つの接触対象と電気的に接触している状態を示す図4と同様の部分断面図である。
図6】本発明に係るコンタクトを使用するICソケットの概略分解斜視図である。
図7図6のICソケットの概略分解断面図である。
図8】[図9]はコンタクトをソケット本体から外れないようにする係止部材の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
20 ソケット本体 25 コンタクト収容部
29a 第1の上傾斜側壁 29b 第1の下傾斜側壁
30 水平段部 31 第2の上傾斜側壁
40 コンタクト 41 先端アーム部
42 中間屈曲部 42a 第1の接点部
43 中央弾性変形部 44 円弧状突出部
45 短片 45a 第2の接点部
50 係止部材
60 プリント配線板 80 ICパッケージ
100 ICソケット
G 円弧状突出部の曲率中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9