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特開2025-2793計測システム、計測方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002793
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】計測システム、計測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20241226BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20241226BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20241226BHJP
   G01J 5/0802 20220101ALI20241226BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01B11/26 H
G01J5/48 D
G01J5/0802
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103147
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敦史
【テーマコード(参考)】
2F065
2G066
【Fターム(参考)】
2F065AA35
2F065AA53
2F065FF04
2F065FF09
2F065FF69
2F065GG04
2F065HH05
2F065HH13
2F065JJ03
2F065JJ08
2F065JJ26
2F065LL22
2F065MM03
2F065PP16
2F065QQ41
2F065QQ42
2F065SS13
2G066BC15
2G066CA01
2G066CA02
(57)【要約】
【課題】表面に凹凸を持つ物体に対しても形状と温度とを並行して計測可能な計測システム、計測方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】計測システムは、ラインレーザ光源からのラインレーザ光が照射された計測対象面をラインレーザ光が描画された部分を含むようにカメラにより撮影した画像を取得する取得部151と、取得部151により取得された画像に描画されたラインレーザ光の画素位置に基づいて、計測対象面の形状を演算する形状演算部152と、取得部151により取得された画像においてラインレーザ光が描画されていない領域の輝度に基づいて、計測対象面の温度を演算する温度演算部153と、を備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインレーザ光源からのラインレーザ光が照射された計測対象面を前記ラインレーザ光が描画された部分を含むようにカメラにより撮影した画像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素位置に基づいて、前記計測対象面の形状を演算する形状演算部と、
前記取得部により取得された画像において前記ラインレーザ光が描画されていない領域の輝度に基づいて、前記計測対象面の温度を演算する温度演算部と、
を備える計測システム。
【請求項2】
前記カメラは、前記ラインレーザ光源から出射される前記ラインレーザ光の波長を透過する波長フィルタを備える、
請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記温度演算部は、
前記取得部により取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素に隣接する領域に温度計測領域を設定し、
設定された前記温度計測領域における複数の画素の平均輝度を演算し、
演算された平均輝度に基づいて前記計測対象面の温度を演算する、
請求項1又は2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記温度演算部は、
設定された前記温度計測領域における全ての画素を対象に平均輝度と輝度の標準偏差とを演算し、
演算された平均輝度から標準偏差以上離れている輝度を有する画素を除外して前記温度計測領域における複数の画素の平均輝度を演算する、
請求項3に記載の計測システム。
【請求項5】
前記温度演算部は、前記取得部により取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素位置から予め設定された画素数だけ離れた領域に矩形状の前記温度計測領域を設定する、
請求項3に記載の計測システム。
【請求項6】
前記形状演算部により演算された前記計測対象面の形状に基づいて、前記温度計測領域に存在する画素の輝度を補正する輝度補正部をさらに備え、
前記温度演算部は、前記輝度補正部により補正された輝度に基づいて前記計測対象面の補正された温度を演算する、
請求項3に記載の計測システム。
【請求項7】
前記輝度補正部は、前記形状演算部により演算された前記計測対象面の3次元形状に基づいて、基準面に対する前記温度計測領域の面の傾きを演算し、演算された面の傾きに基づいて前記温度計測領域に存在する画素の輝度を補正する、
請求項6に記載の計測システム。
【請求項8】
計測システムが実行する計測方法であって、
ラインレーザ光源からのラインレーザ光が照射された計測対象面を前記ラインレーザ光が描画された部分を含むようにカメラにより撮影した画像を取得するステップと、
取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素位置に基づいて、前記計測対象面の形状を演算するステップと、
取得された画像において前記ラインレーザ光が描画されていない領域の輝度に基づいて、前記計測対象面の温度を演算するステップと、
を含む計測方法。
【請求項9】
コンピュータを、
ラインレーザ光源からのラインレーザ光が照射された計測対象面を前記ラインレーザ光が描画された部分を含むようにカメラにより撮影した画像を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素位置に基づいて、前記計測対象面の形状を演算する形状演算手段、
前記取得手段により取得された画像において前記ラインレーザ光が描画されていない領域の輝度に基づいて、前記計測対象面の温度を演算する温度演算手段、
として機能させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測システム、計測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の形状と温度とを並行して計測する技術が知られている。例えば、特許文献1には、炉の排出口から流下する溶融スラグを異なる方向から並行して観測して溶融スラグの3次元形状を測定する3次元形状測定手段と、溶融スラグの温度を測定する温度測定手段と、を備える監視装置が開示されている。3次元形状測定手段では、溶融スラグの周方向に間隔をあけて少なくとも3箇所以上に配置したCCDカメラにより得られた画像を用いて溶融スラグの3次元形状を求め、温度測定手段では、CCDカメラにより得られた画像の輝度分布を用いて溶融スラグの3次元の表面温度分布を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-118744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の監視装置では、溶融スラグがへこみのない楕円形状の断面を持つ柱状物体であることが前提となっており、その他の形状を持つ物体の形状を計測できない。このため、形状計測時に物体表面の凹凸を検出できないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、表面に凹凸を持つ物体に対しても形状と温度とを並行して計測可能な計測システム、計測方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る計測システムは、
ラインレーザ光源からのラインレーザ光が照射された計測対象面を前記ラインレーザ光が描画された部分を含むようにカメラにより撮影した画像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素位置に基づいて、前記計測対象面の形状を演算する形状演算部と、
前記取得部により取得された画像において前記ラインレーザ光が描画されていない領域の輝度に基づいて、前記計測対象面の温度を演算する温度演算部と、
を備える。
【0007】
前記カメラは、前記ラインレーザ光源から出射される前記ラインレーザ光の波長を透過する波長フィルタを備えてもよい。
【0008】
前記温度演算部は、
前記取得部により取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素に隣接する領域に温度計測領域を設定し、
設定された前記温度計測領域における複数の画素の平均輝度を演算し、
演算された平均輝度に基づいて前記計測対象面の温度を演算してもよい。
【0009】
前記温度演算部は、
設定された前記温度計測領域における全ての画素を対象に平均輝度と輝度の標準偏差とを演算し、
演算された平均輝度から標準偏差以上離れている輝度を有する画素を除外して前記温度計測領域における複数の画素の平均輝度を演算してもよい。
【0010】
前記温度演算部は、前記取得部により取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素位置から予め設定された画素数だけ離れた領域に矩形状の前記温度計測領域を設定してもよい。
【0011】
前記形状演算部により演算された前記計測対象面の形状に基づいて、前記温度計測領域に存在する画素の輝度を補正する輝度補正部をさらに備え、
前記温度演算部は、前記輝度補正部により補正された輝度に基づいて前記計測対象面の補正された温度を演算してもよい。
【0012】
前記輝度補正部は、前記形状演算部により演算された前記計測対象面の3次元形状に基づいて、基準面に対する前記温度計測領域の面の傾きを演算し、演算された面の傾きに基づいて前記温度計測領域に存在する画素の輝度を補正してもよい。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る計測方法は、
計測システムが実行する計測方法であって、
ラインレーザ光源からのラインレーザ光が照射された計測対象面を前記ラインレーザ光が描画された部分を含むようにカメラにより撮影した画像を取得するステップと、
取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素位置に基づいて、前記計測対象面の形状を演算するステップと、
取得された画像において前記ラインレーザ光が描画されていない領域の輝度に基づいて、前記計測対象面の温度を演算するステップと、
を含む。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
ラインレーザ光源からのラインレーザ光が照射された計測対象面を前記ラインレーザ光が描画された部分を含むようにカメラにより撮影した画像を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された画像に描画された前記ラインレーザ光の画素位置に基づいて、前記計測対象面の形状を演算する形状演算手段、
前記取得手段により取得された画像において前記ラインレーザ光が描画されていない領域の輝度に基づいて、前記計測対象面の温度を演算する温度演算手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面に凹凸を持つ物体に対しても形状と温度とを並行して計測可能な計測システム、計測方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係る計測システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るラインレーザ光源とカメラとの関係を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る処理ユニットのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】(a)は、画像データ記憶部に記憶されるデータテーブルの一例を示す図であり、(b)は、パラメータ記憶部に記憶されるデータテーブルの一例を示す図であり、(c)は、相関データ記憶部に記憶されたデータテーブルの一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るカメラにより撮像された撮影画像におけるラインレーザ光と温度計測領域との関係を示す図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態1に係る形状演算処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態1に係る温度演算処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態2に係る処理ユニットのハードウェア構成を示すブロック図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る補正データ記憶部に記憶されるデータテーブルの一例である。
図11】XY平面と点群にフィットする平面とのなす角を説明する図である。
図12】本発明の実施の形態2に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
図13】本発明の実施の形態2に係る温度補正処理の流れを示すフローチャートである。
図14】実施例における鉄片を撮影したデジタルカメラ画像、温度計測用画像、光切断センサ用画像を示す図である。
図15】実施例における鉄片の輝度と温度との関係を示すグラフである。
図16】実施例におけるコントラスト調整前後の撮影画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る計測システム、計測方法及びプログラムを、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。実施の形態では、ラインレーザ光源から出射されたラインレーザ光が広がる方向をY軸方向、ラインレーザ光の出射方向をZ軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に対して直交する方向をX軸方向とする空間座標系を用いる。
【0018】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る計測システムは、光切断法を用いて計測対象面の3次元形状を計測すると共に、当該計測対象面の温度を並行して計測するシステムである。計測対象は、例えば、製鋼工程の中間製品であるビレットである。実施の形態1に係る計測システムでは、三角測量法の原理を用い、計測対象面のうちラインレーザ光源から照射されたラインレーザ光により描画されたスリット状の部分(光切断線)を撮影し、撮影画像に基づいて計測対象面の3次元形状(プロファイル)を示すデータを演算する。
【0019】
また、実施の形態1に係る計測システムでは、計測対象を加熱することで熱放射が発生し、計測対象の撮影により得られた画像の輝度が変化する現象を用いて計測対象の温度を演算する。熱放射により画像の輝度が変化する現象は、特に計測対象が高温、例えば、800℃以上に加熱された場合に顕著に現れる。計測対象からの熱放射による輝度と計測対象の温度との間には相関関係があるため、光切断法により得られた計測対象の撮影画像の輝度を計測することで、計測対象面の温度を合わせて演算できる。実施の形態1に係る計測システムでは、上記の手法を用いることで光切断法による形状計測を妨げることなく、計測対象面の温度計測を行うことができる。
【0020】
図1は、実施の形態1に係る計測システム1の構成を示す正面図である。計測システム1は、計測対象面に照射することによりY軸方向に延びるスリット状のラインレーザ光を描画するラインレーザ光源2と、ラインレーザ光源2によりラインレーザ光が描画された計測対象面を撮影するカメラ3と、計測対象面に描画されたラインレーザ光が相対的に移動するように光計測対象をX軸方向に移動させる搬送装置4と、カメラ3により撮影された画像に基づいて計測対象面の3次元形状を示すデータと計測対象の温度を示すデータとを演算する処理ユニット100と、を備える。
【0021】
ラインレーザ光源2及びカメラ3は互いの位置関係を固定した状態で支持手段(図示せず)により支持されている。ラインレーザ光源2及びカメラ3は同一の支持手段により支持されてもよく、異なる支持手段により別々に支持されてもよい。
【0022】
ラインレーザ光源2は、計測対象面の上方に設置され、Y軸方向に延びると共にZ軸方向に向けて出射されるラインレーザ光を計測対象面上に照射する。このラインレーザ光は、レーザ光の照射中に計測対象面に描画され、レーザ光の照射を停止すると計測対象面から消滅する。ラインレーザ光源2では、例えば、レーザ光がY軸方向に延びる直線上のスリットを通過することでスリット状のラインレーザ光を生成する。
【0023】
カメラ3は、ラインレーザ光源2からのラインレーザ光に対して光軸が傾くように設置され、ラインレーザ光源2からのラインレーザ光が計測対象面に描画された部分を含むように計測対象面を撮影する。カメラ3には、波長フィルタ3aが取り付けられている。波長フィルタ3aは、ラインレーザ光源2から出射されるレーザ光の波長を含む波長域の光を透過するバンドパスフィルタである。波長フィルタ3aを介してカメラ3により撮影された画像は、ほぼラインレーザ光だけが描画される。ラインレーザ光が描画された計測対象の画像データは、カメラ3から処理ユニット100に送信され、処理が施される。
【0024】
カメラ3としては、計測対象の温度に合わせて機種を選択するとよい。計測対象の温度が高温領域、例えば、800℃~1000℃である場合には、波長帯600nm~700nmの光の放射が強くなるため、可視域での撮影が可能なカメラを用いることが好ましい。また、計測対象の温度が低温領域、例えば、800℃未満での計測を実施する場合には、より波長の長い放射光に感度が必要となるため、近赤外領域での撮影が可能な赤外線カメラを用いることが好ましい。
【0025】
なお、ラインレーザ光源2が出射するレーザ光の波長については、カメラ3による撮影が可能な波長域に含まれるように選択する。一例として800℃~1000℃の高温鋼材を計測対象とする場合には、可視域対応のカメラを使用することからラインレーザ光源2も波長が可視域のレーザを用いる。なお、赤色域のレーザ光、例えば、波長600nm~700nmのレーザ光を出射するレーザ光源を用いる場合は、前述のとおり高温物体放射光と同一又は同等範囲の波長となることから、その影響を低減するため、波長フィルタ3aを用いればよい。
【0026】
搬送装置4は、例えば、計測対象を載せた状態で計測対象を一定速度でX軸方向に移動させる搬送テーブルである。搬送装置4が駆動した状態で計測対象面にラインレーザ光を照射し、ラインレーザ光が描画された部分を含むように計測対象面を撮影することで、X軸方向の異なる位置におけるYZ平面で切断した計測対象の2次元形状を順次計測できる。
【0027】
処理ユニット100は、例えば、汎用コンピュータであり、ラインレーザ光源2及びカメラ3のそれぞれに対して通信可能に接続されている。処理ユニット100は、カメラ3により撮影された画像におけるラインレーザ光が描画された部分の画素位置に基づいて、計測対象面の3次元形状を示す形状データを演算すると共に、カメラ3による撮影画像のラインレーザ光が描画された部分以外の画素における輝度に基づいて、計測対象の温度を演算する。
【0028】
図2に示すように、計測システム1では、カメラ3による撮影画像においてラインレーザ光が描画された部分を構成する各画素cの画素位置u、vを、空間座標系における計測対象面上にラインレーザ光が描画された部分を構成する各点pの2次元座標値y、zに変換する。これによりYZ平面で切断された計測対象の2次元断面形状を2次元座標値y、zで表現することができる。搬送装置4により計測対象に対してラインレーザ光をX軸方向に相対的に移動させ、計測対象に設定されたx座標値x0、x1、x2、…に対して順番に上記の処理を繰り返すことで、計測対象面を構成する多数の点群の位置を示す3次元座標値x、y、zを得ることができる。
以上が、計測システム1の構成である。
【0029】
次に、図3を参照して、実施の形態1に係る処理ユニット100のハードウェア構成を説明する。処理ユニット100は、操作部110と、表示部120と、通信部130と、記憶部140と、制御部150と、を備える。処理ユニット100の各部は、内部バス(図示せず)を介して相互に接続されている。
【0030】
操作部110は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号を制御部150に供給する。操作部110は、例えば、マウス、キーボードを備える。
【0031】
表示部120は、ディスプレイと表示駆動回路とを備え、制御部150から供給されるデータに基づいて、ユーザに向けて各種の画像を表示する。
【0032】
通信部130は、処理ユニット100が外部の機器と通信するための通信インタフェースである。通信部130は、インターネットといった通信ネットワークを介して外部の機器と通信する。また、通信部130は、USB(Universal Serial Bus)といった入出力端子を備え、通信ケーブルを介して外部の機器と通信する。
【0033】
記憶部140は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクを備える。記憶部140は、制御部150で実行されるプログラムや各種のデータを記憶する。また、記憶部140は、各種の情報を一時的に記憶し、制御部150が処理を実行するためのワークメモリとしても機能する。さらに、記憶部140は、画像データ記憶部141と、パラメータ記憶部142と、相関データ記憶部143と、を備える。
【0034】
図4(a)に示すように、画像データ記憶部141は、ラインレーザ光が描画された部分を含むように計測対象面を撮影した画像に関するデータを、計測対象面に設定されたx座標値x0、x1、x2、…に対応付けて順番に記憶する。計測対象面に設定されたx座標値は、計測対象に設定された基準点のx座標値x0を基準とするX軸方向の座標である。基準点は、例えば、図2に示すように計測対象を搬送方向に移動させた場合に最初に撮影が開始される計測対象の先端に設定し、基準点から順番にx0、x1、x2、…と設定すればよい。x座標値x0、x1、x2、…は、互いに一定間隔で並べられていることが好ましい。
【0035】
図4(b)に示すように、パラメータ記憶部142は、カメラ3の内部パラメータ及び外部パラメータを記憶する。カメラ3の外部パラメータは、例えば、図2に示すようにラインレーザ光源2の光軸からカメラ3に取り付けたレンズの主点までのY軸方向の距離l、ラインレーザ光源2の光軸とカメラ3の光軸との角度θである。カメラ3の内部パラメータは、例えば、レンズ焦点距離fである。
【0036】
図4(c)に示すように、相関データ記憶部143は、計測対象の種類やラインレーザ光源2の波長を考慮して設定された撮影画像の輝度L1、L2、…と温度T1、T2、…との関係を示す相関データを記憶する。計測対象の種類は、例えば、材料により区分されている。輝度L1、L2、…と温度T1、T2、…との関係は、予め実験により求めておくとよい。
【0037】
図3に戻り、制御部150は、プロセッサを備え、処理ユニット100の各部の制御を行う。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部150は、記憶部140に記憶されているプログラムを実行することにより、図6の計測処理、図7の形状演算処理及び図8の温度演算処理を実行する。制御部150は、機能的には、取得部151と、形状演算部152と、温度演算部153と、出力部154と、を備える。
【0038】
取得部151は、ラインレーザ光が描画された部分を含む計測対象面を撮影した画像に関する画像データを取得し、当該画像データを計測対象面に設定されたx座標値x0、x1、…に対応付けて図4(a)の画像データ記憶部141に記憶させる。カメラ3によりラインレーザ光が描画された部分を含むように計測対象面を撮影すると、撮影画像では、波長フィルタ3aの作用により図5に示すようにほぼ光切断線のみが描画されている。図5の破線で示される温度計測領域は、実際には描画されていない領域であり、その用い方は後述する。なお、取得部151によるデータの取得には、記憶部140に記憶された各種のデータを読み出すことも含まれる。
【0039】
形状演算部152は、取得部151により取得された撮影画像に基づいて計測対象面の3次元断面形状を示すデータを演算する。具体的には、三角測量の原理を用い、図4(b)のパラメータ記憶部142に記憶されたパラメータを参照して、カメラ3による撮影画像においてラインレーザ光が描画された部分を構成する各画素cの画素位置u、vを、空間座標系における計測対象面上にラインレーザ光が描画された部分を構成する各点pの2次元座標値y、zに変換する。
【0040】
その手順を説明すると、まず、撮影画像のu方向の延びる画素の列において輝度がピークとなる画素を探索する。撮影画像の各列において輝度がピークとなる画素は、ラインレーザ光源2から出射されたラインレーザ光が描画された部分である。この処理により画像上でラインレーザ光が描画された部分を構成する各画素cの画素位置u、vのセットを特定できる。
【0041】
次に、画像上でラインレーザ光が描画された部分の各画素cの画素位置u、vを、空間座標系における計測対象面上にラインレーザ光が描画された部分を構成する各点pの2次元座標値y、zに変換する。この変換処理では、図4(b)のパラメータ記憶部142に記憶されたパラメータを読み出し、読み出したパラメータを用いて各画素cの画素位置u、vを各点pの2次元座標値y、zに変換する。画像上の点cの画素位置u、vと空間座標系の点pの3次元座標値x、y、zとの関係は、以下の式(1)で表現される。
【0042】
【数1】
【0043】
cx、cyは、カメラ3の主点(画像中心)であり、fx、fyは、ピクセル単位で表される焦点距離である。これらのパラメータは内部パラメータ行列を構成する。r11~r33は、回転行列Rを構成するパラメータであり、t1~t3は、並進ベクトルtを構成するパラメータである。回転行列R及び並進ベクトルtは、基準座標系とカメラ座標系との相対位置を表している。
【0044】
上記の手順で空間座標系においてラインレーザ光が描画された部分を構成する2次元座標値y、zを計測対象面に設定されたx座標値毎に繰り返し演算し、x座標値毎に演算した空間座標系の2次元座標値y、zを並べることで計測対象面の3次元断面形状を示す形状データを得ることができる。3次元形状を示す形状データは、計測対象面を構成する多数の点群の位置を示す3次元座標値x、y、zで構成されている。
【0045】
温度演算部153は、取得部151により取得された撮影画像に基づいて計測対象面の温度を演算する。具体的には、撮影画像のラインレーザ光が描画されていない領域に図5に示す温度計測領域を設定し、設定された温度計測領域における平均輝度に基づいて計測対象面の温度を演算する。
【0046】
その手順を説明すると、まず、撮影画像において温度計測領域を設定する。温度計測領域は、ラインレーザ光が照射されていない領域、例えば、輝度のピークが検出された画素からv方向に予め設定された画素数rだけ離れた位置に設定する。温度計測領域は、ラインレーザ光による影響を避けるため、画素の輝度が閾値以下である領域に設定すればよい。温度計測領域は、例えば、図5の破線で示すように矩形状の領域である。矩形状の領域は、u方向の画素数をp、v方向の画素数をqとすると、p=qであってもよくp≠qであってもよい。また、温度計測領域は、計測対象面に付着物、例えば、スケールができるだけ付着していない領域に設定することが好ましい。
【0047】
次に、温度計測領域の画像から除外対象の画素を探索して除去する。除外対象画素は、温度計測領域の画像から除去する画素であり、例えば、温度計測領域において輝度が平均輝度よりも標準偏差以上離れている画素を除去する。これにより平均輝度の演算において大きな影響を与える輝度が大きな画素と小さな画素とが除去される。除外対象画素の除去では、例えば、除外対象画素の画素を隠すマスク処理を実施すればよい。
【0048】
次に、温度計測領域において除去画素を除いた他の全ての画素を対象にして平均輝度を演算する。次に、図4(c)の相関データ記憶部143に記憶された相関データを参照して平均輝度から温度を演算する。
【0049】
出力部154は、形状演算部152により演算された計測対象面の3次元形状を示す形状データと温度演算部153により演算された計測対象面の温度データとを出力する。出力部154は、例えば、形状データと温度データとをそれぞれ記憶部140に記憶させ、表示部120のディスプレイに表示させる。
以上が、処理ユニット100の構成である。
【0050】
(計測処理)
次に、図6を参照して、実施の形態1に係る処理ユニット100が実行する計測処理の流れを説明する。計測処理は、光切断法を用いて計測対象面の3次元形状を計測すると共に、当該計測対象面の温度を並行して計測する処理である。計測処理は、計測システム1が搬送装置4を駆動して計測対象を移動させている最中にラインレーザ光源2からラインレーザ光を照射すると共にカメラ3が計測対象の撮影を開始した時点で開始する。計測処理の実行前には、計測対象のx座標値と空間座標系のx座標値との関係を特定する。例えば、計測対象に設定された基準点がラインレーザ光を通過した時点でx座標値の計測を開始し、その後は搬送装置4の搬送速度に基づいてx座標値を演算すればよい。
【0051】
まず、取得部151は、カメラ3により撮影された画像を取得し、計測対象面に照射されたラインレーザ光が描画された部分のx座標値x0、x1、x2,…のいずれかに対応付けて図4(a)の画像データ記憶部141に記憶する(ステップS1)。
【0052】
次に、形状演算部152は、ステップS1の処理で取得した画像に基づいて、YZ平面で切断された計測対象の2次元形状を示すデータを演算する形状演算処理を実行する(ステップS2)。以下、図7を参照して、形状演算部152が実行する形状演算処理の流れを説明する。
【0053】
まず、形状演算部152は、撮影画像の各列で輝度がピークとなる画素を探索する(ステップS11)。撮影画像の各列で輝度値がピークとなる画素は、ラインレーザ光が描画された部分である。この処理により図5に示すように撮影画像におけるラインレーザ光が描画された部分を示す各画素cの画素位置u、vを特定できる。
【0054】
次に、形状演算部152は、撮影画像においてラインレーザ光が描画された部分を示す各画素cの画素位置u、vを、空間座標系における計測対象面上にラインレーザ光が描画された部分の各点pの2次元座標値y、zに変換する(ステップS12)。この変換処理では、図4(b)のパラメータ記憶部142に記憶されたパラメータを読み出し、読み出したパラメータを用いて撮影画像上の画素位置u、vを空間座標系の2次元座標値y、zに変換する。
【0055】
次に、空間座標系における計測対象面上にラインレーザ光が描画された部分の各点pの2次元座標値y、zを記憶部140に記憶し(ステップS13)、処理をリターンする。
以上が、形状演算処理の流れである。
【0056】
図6に戻り、温度演算部153は、ステップS2の処理と並行して、ステップS1の処理で取得した画像に基づいて計測対象面の温度を演算する温度演算処理を実行する(ステップS3)。以下、図8を参照して、温度演算部153が実行する温度演算処理の流れを説明する。
【0057】
まず、温度演算部153は、撮影画像において温度計測領域を設定する(ステップS21)。温度計測領域は、例えば、図5に示すようにu方向の画素数p、v方向の画素数qの矩形状の領域である。温度計測領域は、例えば、ステップS2の処理で撮影画像の各列で輝度がピークとなる画素からv方向に予め設定された画素数rだけ離れた位置に設定する。
【0058】
次に、温度演算部153は、ステップ21の処理で設定された温度計測領域の画像から除外対象画素を探索して除外する(ステップS22)。具体的には、温度計測領域において平均輝度と輝度の標準偏差とを演算し、温度計測領域において輝度が平均輝度よりも標準偏差以上離れている画素を除去する。除外対象画素の除去では、例えば、除外対象画素の画素を隠すマスク処理を実施すればよい。
【0059】
次に、温度計測領域において除去画素を除いた他の全ての画素を対象にして平均輝度を演算する(ステップS23)。
【0060】
次に、図4(c)の相関データ記憶部143に記憶された相関データを参照して平均輝度から温度を演算し(ステップS24)、処理をリターンする。
以上が、温度演算処理の流れである。
【0061】
図6に戻り、取得部151は、画像データ記憶部141に未処理の画像データが存在しているかどうかを判定する(ステップS4)。未処理の画像データが存在していると判定された場合(ステップS4;Yes)、ステップS1の処理に戻る。他方、未処理の画像データが存在していないと判定された場合(ステップS4;No)、形状演算部152は、ステップS2の処理で演算された計測対象面の2次元座標値y、zを計測対象面に設定されたx座標値の順番に並べて計測対象面の3次元形状を示す形状データを生成する(ステップS5)。
【0062】
次に、出力部154は、ステップS5の処理で演算された計測対象面の3次元形状を示す形状データと、ステップS2の処理で演算された計測対象面の温度データとを出力し(ステップS6)、処理を終了する。
以上が計測処理の流れである。
【0063】
以上説明したように、実施の形態1に係る計測システム1は、ラインレーザ光源2からのラインレーザ光が照射された計測対象面をラインレーザ光が描画された部分を含むようにカメラ3により撮影した画像を取得する取得部151と、取得部151により取得された画像に描画されたラインレーザ光の画素位置に基づいて、計測対象面の形状を演算する形状演算部152と、取得部151により取得された画像においてラインレーザ光が描画されていない領域の輝度に基づいて、計測対象面の温度を演算する温度演算部153と、を備える。このため、表面に凹凸を持つ物体に対しても形状と温度とを並行して計測できる。
【0064】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る計測システム、計測方法及びプログラムを説明する。実施の形態2では、基準面に対する計測対象面の傾きに基づいて温度を補正する手法を説明する。このような手法が有用であるのは、放射率の低い計測対象から放射される熱放射の輝度が、計測対象面が向く方向に依存するためである。以下、実施の形態1の場合と相違する点を中心に説明する。
【0065】
実施の形態2に係る計測システム1では、光切断法により計測された計測対象面の3次元形状を示すデータに基づいて温度計測領域における面の傾きを演算し、演算された面の傾きに基づいて計測対象の温度を補正する演算を行う。以下、図9を参照して、実施の形態2に係る計測システムの構成を説明する。
【0066】
処理ユニット100の記憶部140は、補正データ記憶部144をさらに備える。図10に示すように、補正データ記憶部144は、XY平面(基準面)に対する点群にフィットした仮想平面の角度φ1、φ2、…と重み係数w1、w2、…との関係を示す補正データを記憶する。補正データは、計測対処の種類毎に設定され、実験により予め求められている。この重み係数w1、w2、…を温度演算部153により演算された平均輝度に乗算することで、平均輝度の補正値を得ることができる。
【0067】
図9に戻り、制御部150は、記憶部140に記憶されているプログラムを実行することにより、図12の計測処理、図7の形状演算処理、図8の温度演算処理及び図13の温度補正処理を実行する。制御部150は、機能的には、輝度補正部155をさらに備える。
【0068】
輝度補正部155は、形状演算部152により演算された計測対象面の3次元形状データに基づいて、温度計測領域に存在する画素の輝度を補正する。具体的には、まず、形状演算部152により演算された計測対象の3次元形状を示すデータに基づいて、XY平面に対する温度計測領域の面の傾きを演算する。XY平面に対する温度計測領域の面の傾きは、例えば、図11に示すように温度計測領域に存在する点群にフィットする平面を生成し、このフィットする面とXY平面とのなす角φとして演算される。点群にフィットする平面は、例えば、最小二乗法を用いて生成すればよい。
【0069】
次に、演算されたXY平面に対する面の傾きに基づいて、温度計測領域における輝度を補正する。具体的には、図10の補正データ記憶部144を参照して面の傾きに対応する重み係数を読み取り、図8の温度演算処理で演算した平均輝度に読み取った重み係数を乗算することで、平均輝度の補正値を得る。
【0070】
温度演算部153は、輝度補正部155により補正された平均輝度に基づいて計測対象面の補正された温度を演算する。具体的には、図4(c)の相関データ記憶部143に記憶された相関データを参照して平均輝度の補正値を温度に変換する。
以上が、処理ユニット100のハードウェア構成である。
【0071】
次に、図12を参照して、実施の形態2に係る処理ユニット100の制御部150が実行する計測処理の流れを説明する。
まず、制御部150は、ステップS1の処理を実行し、次に、ステップS2、S3の処理を並行して実行する。ステップS2の形状演算処理では、図7のフローチャートに示す処理を実行し、ステップS3の温度演算処理では、図8のフローチャートに示す平均輝度を演算する処理(ステップS23)まで実行し、ステップS24の処理は省略する。次に、ステップS4、S5の処理を順次実行する。
【0072】
次に、制御部150は、ステップS5の処理で演算された計測対象面の3次元形状データに基づいて、温度計測領域に存在する画素の輝度を補正し、補正された輝度に基づいて計測対象面の温度を演算する温度補正処理を実行する(ステップS5A)。以下、図13を参照して、制御部150が実行する温度補正処理の流れを説明する。
【0073】
まず、輝度補正部155は、記憶部140に記憶された計測対象面の3次元形状を示すデータに基づいて、撮影画像毎にXY平面に対する温度計測領域の面の傾きを演算する(ステップS31)。XY平面に対する温度計測領域の面の傾きは、例えば、図11に示すように温度計測領域に存在する点群にフィットする平面を生成し、このフィットする面とXY平面とのなす角として演算される。
【0074】
対象とする撮影画像に設定された温度計測領域の位置は、計測対象に設定された光切断線が描画された部分のx座標値と、撮影画像における光切断線と温度計測領域との間の画素数rとに基づいて特定すればよい。画素数rは、空間座標系におけるX軸方向の距離に変換すればよい。
【0075】
次に、輝度補正部155は、ステップS31の処理で演算されたXY平面に対する面の傾きに基づいて、撮影画像毎に温度計測領域における平均輝度を補正する(ステップS32)。具体的には、図10の補正データ記憶部144を参照して面の傾きに対応する重み係数を読み取り、図8の温度演算処理で演算した平均輝度に読み取った重み係数を乗算することで、平均輝度の補正値を得る。
【0076】
次に、温度演算部153は、図4(c)の相関データ記憶部143に記憶された相関データを参照して、ステップS32の処理で演算された平均輝度の補正値から温度を演算(ステップS33)、処理をリターンする。
【0077】
図12に戻り、出力部154がステップS6の処理を実行し、全ての処理を終了する。
以上が、計測処理の流れである。
【0078】
以上説明したように実施の形態2に係る計測システム1は、演算された計測対象面の形状に関するデータに基づいて、温度計測領域に存在する画素の輝度を補正する輝度補正部155を備え、温度演算部153が補正された輝度に基づいて計測対象面の補正された温度を演算する。このため、計測対象面における温度計測の精度を向上させることができる。
【0079】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0080】
(変形例)
上記実施の形態では、ラインレーザ光源2がレーザ光を放射していたが、本発明はこれに限られない。カメラ3により計測対象面におけるラインレーザ光が描画された部分の撮影が可能であれば、ラインレーザ光源2以外の光源を用いてもよい。
【0081】
上記実施の形態では、ラインレーザ光源2から出射される可視域のレーザ光として赤色光を用いていたが、本発明はこれに限られない。計測対象の温度を考慮して、例えば、緑色、青色などの他の波長のレーザ光を出射してもよい。
【0082】
上記実施の形態では、搬送装置4が計測対象をX軸方向に移動させていたが、本発明はこれに限られない。計測対象を静止させておき、互いに位置決めされたラインレーザ光源2及びカメラ3を一体としてX軸方向に移動させてもよい。また、計測対象面の2次元形状を示すデータを取得する場合には、計測対象面とラインレーザ光源2及びカメラ3とを相対的に移動させる必要がないため、搬送装置4のような計測対象面とラインレーザ光源2及びカメラ3とを相対的に移動させる装置を省略してもよい。
【0083】
上記実施の形態では、温度計測領域が矩形状であったが、本発明はこれに限られない。温度計測領域は、例えば、円形、楕円形であってもよい。
【0084】
上記実施の形態では、撮影画像の輝度と温度との相関データを用いて計測対象面の撮影画像の輝度から計測対象面の温度を演算していたが、本発明はこれに限られない。例えば、各画素の輝度の差分を求め、輝度の変化の差分に基づいて計測対象面の温度変化を演算してもよい。
【0085】
上記実施の形態では、温度計測領域において輝度が平均輝度よりも標準偏差以上離れている画素を除去していたが、本発明はこれに限られない。例えば、温度計測領域において輝度が平均輝度から標準偏差を引いた輝度以下である画素を削除してもよい。また、温度計測領域から画素を除去せずに、全ての画素を用いて平均輝度を演算してもよい。
【0086】
上記変形例に関連して、温度計測領域のおける除去対象画素の除去処理において標準偏差以外の数値を用いて除去を行ってもよい。例えば、温度計測領域において輝度が平均輝度よりも標準偏差の2倍、3倍、…離れている画素を除去してもよい。また、温度計測領域において輝度が平均輝度よりも標準偏差とは無関係に設定した基準値だけ離れている画素を除去してもよい。
【0087】
上記実施の形態では、計測対象面における形状と温度とを計測し、その計測結果をディスプレイに表示していたが、本発明はこれに限られない。例えば、計測対象をビレットした場合において、計測システム1により互いに並行して計測した形状データと温度データとを圧延機に送信し、圧延機が形状データと温度データとに基づいてビレットに対するローラの押圧力やローラ間の距離を調整するか、加熱炉におけるビレットの加熱温度を上昇させてもよい。
【0088】
上記実施の形態2では、計測対象面の3次元形状データを生成した後に温度補正処理を実行していたが、本発明はこれに限られない。例えば、撮影画像の温度計測領域における輝度を読み取った後、当該撮影画像の温度計測領域に対応する計測対象面の領域における3次元形状データを生成し、生成された3次元形状データに基づいて当該撮影画像の温度計測領域のXY平面に対する面の傾きを演算してもよい。
【0089】
上記実施の形態2では、温度計測領域における平均輝度を温度計測領域における面の傾きに基づいて補正していたが、本発明はこれに限られない。温度計測領域における各画素において対象画素に隣接する画素(例えば、対象画素の上下左右にある8つの画素)を含む領域を設定し、当該領域における面の傾きを演算し、演算された面の傾きに基づいて対象画素の輝度を補正してもよい。
【0090】
上記実施の形態では、処理ユニット100の記憶部140に各種データが記憶されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各種データは、その全部又は一部が通信ネットワークを介して外部の制御装置やコンピュータに記憶されていてもよい。
【0091】
上記実施の形態では、処理ユニット100は、それぞれ記憶部140に記憶されたプログラムに基づいて動作していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プログラムにより実現された機能的な構成をハードウェアにより実現してもよい。
【0092】
上記実施の形態では、処理ユニット100は、例えば、汎用コンピュータであったが、本発明はこれに限られない。例えば、処理ユニット100は、クラウド上に設けられたコンピュータで実現してもよい。
【0093】
上記実施の形態では、処理ユニット100が実行する処理は、上述の物理的な構成を備える装置が記憶部140に記憶されたプログラムを実行することによって実現されていたが、本発明は、プログラムとして実現されてもよく、そのプログラムが記録された記憶媒体として実現されてもよい。
【0094】
また、上述の処理動作を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical Disk)のようなコンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理動作を実行する装置を構成してもよい。
【0095】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【実施例0096】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
実施例1では、電気炉に試験片として鉄片を入れ、常温から1000℃まで加熱しながら、実施の形態で説明した方法により鉄片の形状と温度とを並行して計測できるかどうかを検証した。ラインレーザ光源からラインレーザ光を鉄片に照射し、カメラによりラインレーザ光が照射された部分を含むように加熱中の鉄片表面を撮影した。カメラによる撮影時には、660nm付近の波長の光を透過するレーザ透過フィルタをカメラに着脱して鉄片を撮影した。フィルタを取り付けた場合の画像は、光切断センサ用画像として用い、フィルタを取り外した場合の画像は、光切断センサ用画像を用いた温度計測結果と比較するための温度計測用画像として用いる。また、鉄片の外観を肉眼で観察するため、デジタルカメラを用いて鉄片を撮影した。
【0098】
以下に実験結果を説明する。図14に示すデジタルカメラ画像から理解できるように鉄片は温度上昇と共に赤熱した。温度計測用画像は、温度上昇に伴い面全体の輝度が大きく増加したのに対し、光切断センサ用画像は、ラインレーザ光が描画された部分を明瞭に撮影できるが、温度上昇に伴う輝度の変化が非常に小さかった。
【0099】
光切断センサ用画像の一部にラインレーザ光が描画された部分と重ならないように温度計測領域を設定した。温度計測領域のサイズは、縦51pix×横351pixである。この温度計測領域において平均輝度と輝度の標準偏差とを算出した。
【0100】
その結果を図15のグラフに示す。予想していたとおり輝度の変化は、温度計測用画像(フィルタなし)の方が大きく、光切断センサ用画像(フィルタあり)の輝度変化は相対的に小さかった。とはいえ、下側のグラフから理解できるように、鉄片を温度800℃~1000℃まで加熱すると、光切断センサ用画像にも輝度変化が見られることが判明した。
【0101】
(実施例2)
実施例2では、製鋼工程において中間素材であるビレット表面に発生するスケールが光切断センサ用画像の平均輝度や標準偏差に影響を及ぼすかどうかを検証した。スケールは、黒皮とも呼ばれ、熱処理により鋼材表面に発生する酸化被膜である。
【0102】
計測システムのカメラでは、露光時間300μsで高温のビレットを撮影し、図16の模式図(コントラスト調整前)に示すような画像を取得した。肉眼での表面観察のため画像のコントラストを調整すると、図16の模式図(コントラスト調整後)に示すような黒い斑点状にスケールが点在していた。コントラスト調整前の画像の対象領域に対してスケールを示す画素を隠すマスク処理を人手により行った。次いで、マスク処理の前後における対象領域の画素の平均輝度及び輝度の標準偏差σをそれぞれ算出した。対象領域は、ラインレーザ光が描画された部分と重ならない900pix×300pixの領域である。
【0103】
その結果、スケールの除去前では、対象領域の画素の平均輝度が9.215で、2σが3.290あるのに対し、スケールの除去後では、対象領域の画素の平均輝度が9.7601で、2σが2.4080であった。以上から画像上に点在するスケールを示す画素にマスク処理を施すことで、スケールの影響を除外した正確な温度を演算できることが理解できる。
【符号の説明】
【0104】
1 計測システム
2 ラインレーザ光源
3 カメラ
3a 波長フィルタ
4 搬送装置
100 処理ユニット
110 操作部
120 表示部
130 通信部
140 記憶部
141 画像データ記憶部
142 係数記憶部
143 相関データ記憶部
144 補正データ記憶部
150 制御部
151 取得部
152 形状演算部
153 温度演算部
154 出力部
155 輝度補正部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16