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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027939
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】積層型電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/36 20100101AFI20250220BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20250220BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250220BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250220BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20250220BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20250220BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20250220BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20250220BHJP
   H01M 10/38 20060101ALI20250220BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20250220BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20250220BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20250220BHJP
【FI】
H01M10/36 A
H01M10/054
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M10/0565
H01M4/583
H01M4/02 Z
H01M10/0585
H01M10/38
H01G11/56
H01G11/30
H01G11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216577
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2023132259
(32)【優先日】2023-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720008759
【氏名又は名称】渡辺 明
(71)【出願人】
【識別番号】723011208
【氏名又は名称】三輪 崇夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】三輪 崇夫
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA02
5E078AA03
5E078AB01
5E078BA12
5E078BA30
5E078BA38
5E078DA11
5E078DA12
5H029AJ06
5H029AK06
5H029AL11
5H029AM07
5H029AM16
5H029DJ08
5H029DJ15
5H029EJ12
5H050AA12
5H050BA18
5H050CA16
5H050CB11
5H050DA11
5H050EA23
5H050FA16
(57)【要約】
【課題】充放電特性おけるIRドロップを低下させることのできる、積層構造型の非液体電解質を有した二次電池を提供する。
【解決手段】すくなくとも、負極となる金属電極10と、第一非液体電解質層20とを備える半電池と、正極となるカーボン電極11と、第二非液体電解質層21とを備える半電池とからなる二次電池であって、前記第二非液体電解質層21が、前記第一非液体電解質層20とは異なるイオン種を含み、前記金属電極10表面に、第一カーボン層30が設けられ、前記第一カーボン層30表面と、前記第一電解質層20表面とが接しており、前記第一非液体電解質層20表面に、第二カーボン層31が設けられ、前記第二カーボン層31表面と、前記第二非液体電解質層21表面とが接していることを特徴とする、積層構造型の非液体電解質を有した二次電池。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、負極となる金属電極と、第一非液体電解質層とを備える半電池と、
正極となるカーボン電極と、第二非液体電解質層とを備える半電池とからなる
二次電池であって、
前記第二非液体電解質層が、前記第一非液体電解質層とは異なるイオン種を含むことを
特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記金属電極表面に、第一カーボン層が設けられ、
前記第一カーボン層表面と、前記第一電解質層表面とが接していることを
特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第一非液体電解質層表面に、第二カーボン層が設けられ、
前記第二カーボン層表面と、前記第二非液体電解質層表面とが接していることを
特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記金属電極表面に、前記第一カーボン層が設けられ、
前記第一カーボン層表面と、前記第一電解質層表面とが接しており、
前記第一非液体電解質層表面に、前記第二カーボン層が設けられ、
前記第二カーボン層表面と、前記第二非液体電解質層表面とが接していることを
特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
請求項1記載の二次電池において、
前記第一非液体電解質層に代えて、カーボン微粒子を均一に分散させた、
前記第一非液体電解質層と同じハロゲン塩を含む非液体電解質層を備えることを
特徴とする二次電池。
【請求項6】
前記金属電極が、マグネシウムであることを
特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記金属電極が、亜鉛であることを
特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
前記金属電極が、アルミニウムであることを
特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記金属電極が、第一金属電極と、前記第一金属電極とは異なる金属材料からなる第二金属電極とが、同一面上に設けられた構造を備えた、
異種金属材料からなる複合金属電極であることを
特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
前記金属電極が、前記第一金属電極を前記マグネシウムとし、前記第二金属電極を前記亜鉛とした、前記複合金属電極であることを
特徴とする請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記金属電極が、前記第一金属電極を前記マグネシウムとし、前記第二金属電極を前記アルミニウムとした、前記複合金属電極であることを
特徴とする請求項9に記載の二次電池。
【請求項12】
前記カーボン電極が、カーボン微粉末を、樹脂からなるバインダーとともに、
不織布に塗布したものであることを
特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第一非液体電解質層が、ハロゲン塩として、ヨウ化カリウムを含むことを
特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の二次電池。
【請求項14】
前記第一非液体電解質層が、ハロゲン塩として、ヨウ化カリウムを含み、
前記第二非液体電解質層が、ヨウ素塩以外のアルカリ金属ハロゲン塩を含むことを
特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の二次電池。
【請求項15】
前記第一非液体電解質層が、高分子ゲル電解質であることを
特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の二次電池。
【請求項16】
前記第二非液体電解質層が、高分子ゲル電解質であることを
特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の二次電池。
【請求項17】
前記第一非液体電解質層と、前記第二非液体電解質層との間に、
前記第二カーボン層が設けられたことを
特徴とする積層型非液体電解質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層型の非液体電解質を用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
充電と放電を繰り返して再利用できる二次電池は、現在様々な分野において必須のものとなっており、なかでも、リチウムイオン二次電池が広く用いられている。しかし、リチウムイオン二次電池の普及に伴い、それに起因する発火・炎上がたびたび問題となっている。また、小型電子機器においては、内部にリチウムイオン二次電池が組み込まれていることに気づかずに、廃棄処理が行われ、発火が起こってしまうようなことも起こってきている。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池の原料となるリチウムはレアメタルであり、資源不足や安定供給の面での課題があることから、他のベースメタルからなる電池の開発が求められている。そのため、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等を負極とした多価イオン二次電池の研究開発が進められている。その中でも、卑な酸化還元電位(-2.363V vs. NHE)を有し、資源量が豊富で、コストが安く、安全性が高いという利点を有しているマグネシウムを負極とした電池に関する研究開発が精力的に行われている。これまでは主に、一次電池としての検討が行われてきたが、最近では、マグネシウム二次電池の実現に向けた検討が進められている(例えば、特許文献1、非特許文献1又は2参照)。
【0004】
ウェアラブル型の小型電子機器が今後ますます普及することが予想され、より安全な二次電池の開発が求められている。二次電池の安全性の面からは、液体電解質に代わる、固体電解質やゲル電解質等の非液体電解質からなる二次電池の開発が求められ、マグネシウム等の多価イオン二次電池においても、固体電解質(例えば、特許文献2参照)やゲル電解質(例えば、特許文献3参照)等の非液体電解質が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-142048号公報
【特許文献2】特開2019-79790号公報
【特許文献3】特開2020-43062号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pei Li etal. “Metal-Iodine and Metal-Bromine Batteries: A Review” Bull.Chem.Soc.Jpn.94,2036(2021)
【非特許文献2】Huajun Tian etal. “High power rechargeable magnesium/iodine battery Chemistry” NATURE COMMUNICATIONS, 8:14083,DOI:10.1038/ncomms14083(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マグネシウム等のベースメタルを負極とした二次電池は、資源量、コスト、及び安全性の面で、リチウムイオン二次電池に対して優位性を有しているが、さらに安全性を上げるためには、電解質は液体電解質ではなく、固体電解質やゲル電解質等の非液体電解質であることが必要となる。
【0008】
非液体電解質では、液体電解質の場合よりもイオン種の拡散が起こりづらいことや、電解質と電極との間の界面抵抗の増加等の様々な因子によって過電圧が生じ、それによって、放電直後に電圧が降下するIRドロップ(IR損)が顕著となりやすい。IRドロップの増加によって、二次電池の放電電圧の低下や、充放電サイクル特性等の、電池性能の劣化が起こるという課題があった。
【0009】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであり、充放電特性おけるIRドロップを低下させることのできる、積層構造型の非液体電解質を有した二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
二次電池の充放電においては、酸化と還元という化学反応が利用されている。化学反応においては、エネルギー障壁を越えて化学反応を起こすための、活性化エネルギーが必要であり、電気化学反応においては、これが過電圧となり、それによってIRドロップ(IR損)が生じる。
【0011】
一方、電気二重層キャパシタ(スーパーキャパシタ)の充放電においては、電極の電気二重層への、イオン種の物理吸着が利用されているため、酸化還元反応に基づく二次電池に比べて、過電圧によるIRドロップは抑制される。しかし、電気二重層キャパシタでは、酸化還元電位がないために、充放電における電圧は変動し、二次電池のような安定した放電電圧を得ることはできない。
【0012】
本開示に係る二次電池は、少なくとも、負極となる金属電極と、第一非液体電解質層とを備える半電池と、正極となるカーボン電極と、第二非液体電解質層とを備える半電池とからなる二次電池であって、前記第二非液体電解質層が、前記第一非液体電解質層とは異なるイオン種を含むことを特徴とする。
【0013】
本開示に係る二次電池では、前記金属電極と前記第一非液体電解質とは、酸化還元反応に基づく二次電池としての特性を有した半電池として働き、前記カーボン電極と前記第二非液体電解質とは、イオン種の物理吸着に基づく電気二重層キャパシタ的な特性を有する半電池として働き二次電池の特性を阻害する化学反応を抑制することで、IRドロップを低減している。
【0014】
本開示に係る二次電池においては、前記第一非液体電解質は、前記金属電極と化学反応を起こしやすいイオン種からなり、前記第二非液体電解質は、化学反応を起こしづらく、前記カーボン電極の電気二重層に物理吸着しやすいイオン種からなっている。また、前記第二非液体電解質は、前記カーボン電極のカーボン層間へのインターカレーションを起こしやすいイオン種からなるものでもよい。
【0015】
本開示に係る二次電池において、例えば、前記金属電極としてマグネシウムを用い、前記第一非液体電解質が、金属ハロゲン化物の一種であるヨウ化カリウムからなる場合には、前記マグネシウム金属電極では、放電時には、マグネシウムとヨウ素イオンとの化学反応によってヨウ化マグネシウムが生じ、充電時には、ヨウ化マグネシウムのマグネシウム及びヨウ素イオンへの還元反応が起こる。
【0016】
上記の二次電池の構造において、前記第一非液体電解質層がヨウ化カリウムからなり、第二非液体電解質層を備えない場合には、ヨウ素イオンと、ヨウ素イオンの酸化反応で生じたヨウ素分子との間での、種々の酸化還元反応が、前記カーボン電極で起こり、化学反応由来の過電圧の発生、及び前記金属電極近傍でのヨウ素イオン濃度の低下等によるIRドロップが生じてしまう。
【0017】
本開示の一態様では、二次電池は、前記金属電極と前記第一非液体電解質層とからなる半電池と、前記カーボン電極と前記第二非液体電解質層とからなる電気二重層キャパシタ的な半電池を備えた構造となっているが、前記第一非液体電解質層と前記第二非液体電解質層との間でのイオン種の物質移動によって、IRドロップが生じる場合があることから、その低減のために、前記金属電極と前記第一非液体電解質層との間に、イオン種の吸着保持のための第一カーボン層を設けた構造であってもよい。
【0018】
本開示の一態様では、二次電池は、前記金属電極と前記第一非液体電解質層とからなる半電池と、前記カーボン電極と前記第二非液体電解質層とからなる電気二重層キャパシタ的な半電池を備えた構造となっているが、前記第一非液体電解質層と前記第二非液体電解質層との間でのイオン種の物質移動によって、IRドロップが生じる場合があることから、その低減のために、前記第一非液体電解質層と前記第二非液体電解質層との間に、第二カーボン層を設けた構造であってもよい。
【0019】
本開示の一態様では、二次電池は、前記金属電極と前記第一非液体電解質層とからなる半電池と、前記カーボン電極と前記第二非液体電解質層とからなる電気二重層キャパシタ的な半電池を備えた構造となっているが、前記第一非液体電解質層と前記第二非液体電解質層との界面でのイオン種の物質移動によって、IRドロップが生じる場合があることから、その低減のために、前記金属電極と前記第一非液体電解質層との間に、前記第一カーボン層を設け、さらに、前記第一非液体電解質層と前記第二非液体電解質層との間に、前記第二カーボン層を設けた構造であってもよい。
【0020】
本開示の一態様では、二次電池は、前記金属電極と前記第一非液体電解質層とからなる半電池と、前記カーボン電極と前記第二非液体電解質層とからなる電気二重層キャパシタ的な半電池を備えた構造となっているが、前記第一非液体電解質層と前記第二非液体電解質層との界面でのイオン種の物質移動によって、IRドロップが生じる場合があることから、その低減のために、前記第一非液体電解質層に代えて、カーボン微粒子を均一に分散させた、前記第一非液体電解質層と同じハロゲン塩を含む非液体電解質層を備えた構造でもよい。
【0021】
本開示に係る二次電池では、前記金属電極として、アルミニウム又は亜鉛を用いた場合にも、前記マグネシウムの場合と同様に、金属電極とヨウ素イオンとの間での酸化還元反応が起こる。それによって、本開示に係る二次電池においては、前記第一非液体電解質、前記第二非液体電解質、及び前記カーボン電極からなる構造を同様として、負極となる金属種を変えることで、種々の金属二次電池、例えば、マグネシウム二次電池、亜鉛二次電池、又はアルミニウム二次電池とすることができる。
【0022】
本開示に係る二次電池では、負極となる金属が異なっても、前記第一非液体電解質、前記第二非液体電解質、及び前記カーボン電極からなる構造を共通とした二次電池とすることができる。このような特徴によって、前記金属電極は、前記カーボン電極に対して並列回路となるように、複数の異種金属を同一表面に配置した、複合金属電極とすることができる。これによって、それぞれの金属電極の特徴を組み合わせることで、マグネシウムの卑な酸化還元電位を生かしつつ、IRドロップを低減することができる。
【0023】
本開示の一態様では、前記金属電極が、前記第一金属電極を前記マグネシウムとし、前記第二金属電極を前記亜鉛とした、マグネシウム―亜鉛複合金属電極であってもよい。
【0024】
本開示の一態様では、前記金属電極が、前記第一金属電極を前記マグネシウムとし、前記第二金属電極を前記アルミニウムとした、マグネシウム―アルミニウム複合金属電極であってもよい。
【0025】
本開示に係る二次電池は、前記第一非液体電解質層と前記第二非液体電解質層からなる積層構造となっており、多価金属イオンが正極と負極の間を移動するような従来の多価イオン二次電池とは異なり、また、電解質にヨウ素分子を加えておらず、電解質中のヨウ素分子の酸化還元反応を利用した従来の金属―ヨウ素二次電池とも異なっており、金属負極側の電気化学反応から見れば、金属―ヨウ素イオン二次電池と呼ぶべき構造の二次電池となっている。
【発明の効果】
【0026】
本開示の一態様によれば、充放電特性おけるIRドロップを低下させることのできる、積層構造型の非液体電解質を有した、安全性の高い、二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態1に係る二次電池(構造A)、比較例1に係る二次電池(構造B)、比較例2に係る二次電池(構造C)、実施の形態2に係る二次電池(構造D)、及び実施の形態3に係る二次電池(構造E)の断面の模式図である。
図2】実施の形態4に係る二次電池(構造F)及び実施の形態5に係る二次電池(構造G)の断面の模式図である。
図3】実施の形態1に係る二次電池(構造A)の(a)平面図及び(b)断面図である。
図4】実施の形態1に係る二次電池(構造A)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図5】比較例1に係る二次電池(構造B)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図6】比較例2に係る二次電池(構造C)(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図7】実施の形態2に係る二次電池(構造D)(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図8】実施の形態3に係る二次電池(構造E)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図9】実施の形態4に係る二次電池(構造F)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図10】実施の形態5に係る二次電池(構造G)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図11】実施の形態1に係る二次電池(構造A)、比較例1に係る二次電池(構造B)、比較例2に係る二次電池(構造C)、実施の形態2に係る二次電池(構造D)、実施の形態3に係る二次電池(構造E)、実施の形態4に係る二次電池(構造F)、及び実施の形態5に係る二次電池(構造G)のIRドロップの値をまとめた表である。IRD0は充電から放電に切り替え直後のIRドロップの最大値、IRD1は充電から放電に切り替え1分後のIRドロップである。
図12】実施の形態6に係る二次電池(構造D)において(a)純マグネシウム及び(b)マグネシウム合金AZ91Dを負極として用いた場合の充放電曲線である。
図13】実施の形態7に係る二次電池(構造D)において亜鉛を負極として用いた場合の(a)電流密度25μA/cm、(b)50μA/cm、(c)100μA/cm、及び(d)200μA/cmでの充放電曲線である。
図14】実施の形態8に係る二次電池(構造D)においてアルミニウムを負極として用いた場合の(a)電流密度25μA/cm、(b)50μA/cm、(c)100μA/cm、及び(d)200μA/cmでの充放電曲線である。
図15】実施の形態9に係る異種金属を同一表面に配置した複合金属電極の構造の模式図である。
図16】実施の形態9に係るマグネシウム―亜鉛複合金属電極を負極とした二次電池(構造D)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図17】実施の形態9に係るマグネシウム―アルミニウム複合金属電極を負極とした二次電池(構造D)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線である。
図18】実施の形態10に係るマグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極とした二次電池(構造D)において第二非液体電解質層に含まれる無機塩を(a)塩化ナトリウム及び(b)塩化カリウムとした場合の充放電曲線である。
図19】実施の形態10に係るアルミニウムを負極とした二次電池(構造D)において第二非液体電解質層に含まれる無機塩を(a)塩化ナトリウム及び(b)塩化カリウムとした場合の充放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一の又は共通する部分については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向、ならびに、同一及び等しいなどの用語には、実施形態の作用及び効果を損なわない程度のずれが許容される。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。
【0029】
本開示に係る二次電池は、負極としての金属電極と、正極としてのカーボン電極を備え、それらの間に、非液体電解質層を複数備えている。液体電解質と異なり、非液体電解質は積層構造の形成が可能であり、上記の複数の非液体電解質層の積層構造を制御することで、金属電極側を酸化還元反応に基づく二次電池としての特性を有する半電池として機能させ、カーボン電極側をイオン種の物理吸着に基づく電気二重層キャパシタ的な特性を有する半電池として機能させることで、充放電特性おけるIRドロップを低下させることのできる、積層構造型の非液体電解質を有した二次電池を実現できるという着想に至った。
【0030】
次に、上記の二次電池の各要素を詳述する。
【0031】
[実施の形態1]
図1の構造Aは、本開示の実施の形態1に係る二次電池の断面の模式図であり、すくなくとも、負極となる金属電極10と、第一非液体電解質層20とを備える半電池と、正極となるカーボン電極11と、第二非液体電解質層21とを備える半電池とからなり、前記第二非液体電解質層21が、前記第一非液体電解質層20とは異なるイオン種を含み、前記金属電極10表面に、第一カーボン層30が設けられ、前記第一カーボン層30表面と、前記第一電解質層20表面とが接しており、第一非液体電解質層20表面に、第二カーボン層31が設けられ、前記第二カーボン層31表面と、前記第二非液体電解質層21表面とが接した構造となっている。
【0032】
負極10の金属は、特に限定はされないが、Li、Na、K、Al,Zn,Mg等の金属が挙げられるが、安全性の点から、Al,Zn又はMgが好ましく、酸化還元電位の点から、Mgがさらに好ましい。また、それらの金属を含む合金やセラミックス等を用いることができる。
【0033】
マグネシウム電池においては、純マグネシウムに限らずマグネシウム合金も電極として用いられており、ここでいうマグネシウムとは、純マグネシウムのみならず、マグネシウム合金も含んでいる。また、ここでいうアルミニウム又は亜鉛の場合にも、純金属のみならず、不純物を含むものや、アルミニウム合金、亜鉛合金であってもよい。
【0034】
正極10のカーボン材料は、特に限定はされないが、表面積の大きなカーボン微粉末である、グラファイト微粉末、カーボンブラック、グラフェン、活性炭、又はそれらの混合物等を、樹脂等からなるバインダーとともに、不織布等の多孔質な構造を有する基材等に塗布したものを用いることができる。
【0035】
第一非液体電解質層20は、ハロゲン塩を含むゲル状の電解質である。ハロゲン塩としては、金属ハロゲン塩、非金属ハロゲン塩等が挙げられる。前記金属ハロゲン塩としては、特に限定はされないが、アルカリ金属ハロゲン塩、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の金属のハロゲン塩、アルカリ土類金属ハロゲン塩等があげられる。前記非金属ハロゲン塩としては、特に限定はされないが、例えば、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級アンモニウム塩、第1級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン塩を構成するハロゲンとしては、F、Cl、Br又はIが好ましく、より好ましくはCl、Br又はIであり、さらに好ましくはBr又はIであり、最も好ましくはIである。これは、原子番号の大きなハロゲンであるヨウ素の塩ほど、イオン結合性が強く、ゲル状物質中に、より高濃度で均一に取り込んで、非液体電解質とすることができるためである。
【0037】
第二非液体電解質層21は、無機塩又は有機塩を含むゲル状の電解質である。無機塩としては、金属ハロゲン塩、非金属ハロゲン塩等が挙げられる。前記金属ハロゲン塩としては、特に限定はされないが、アルカリ金属ハロゲン塩、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の金属のハロゲン塩、アルカリ土類金属ハロゲン塩等があげられる。前記非金属ハロゲン塩としては、特に限定されないが、例えば、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級アンモニウム塩、第1級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
ハロゲン塩を構成するハロゲンとしては、F、Cl、Br又はIが好ましく、より好ましくはCl、Br又はIであり、さらに好ましくは Cl又はBrであり、最も好ましくはClである。これは、ハロゲンイオンがヨウ素イオンの場合には、カーボン電極11でのヨウ素イオンの酸化還元反応が起こりやすいために、化学反応による過電圧が生じてIRドロップが増加するためである。ハロゲンイオンが臭素イオンの場合には、カーボン電極11で臭素イオンの酸化反応が起こった場合には、毒性の高い臭素の発生が起こり、安全性の面で問題となるためである。
【0039】
無機塩としては、特に限定はされないが、ハロゲン塩以外にも、例えば、アルカリ金属カチオンとPF6、BF4、AsF6、CF3SO3、N(CF3SO22、C(CF3SO23、SbF6、SiF6、AlF4、SCN、ClO4、AlCl4アニオンとからなる塩等が挙げられる。有機塩としては、特に限定はされないが、例えば、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23等が挙げられる。
【0040】
上記の無機塩又は有機塩を取り込んで非液体電解質とするためのゲル状物質としては、特に限定はされないが、高分子系のゲルとしては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)系ゲル、PEO(ポリエチレンオキシド)系ゲル、PPO(ポリプロピレンオキシド)系ゲル、PAN(ポリアクリロニトリル)系ゲル、PVC(ポリビニルクロライド)系ゲル、PVdF(ポリビニリデンフルオライド)系ゲル、PMMA(ポリメチルメタクリレート)系ゲル、PVdF-HEP(ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)系ゲル、PDMS(ポリジメチルシロキサン)系ゲル等が挙げられる。低分子系ゲルとしては、例えば、互いに強い水素結合をとりやすい構造を有する各種単糖類から誘導された糖誘導体をゲル化剤とするもの、アミノ酸誘導体をゲル化剤とするもの、セルロースゲル、超分子ゲル等が挙げられる。
【0041】
第一カーボン層30は、図1の構造A又は構造Eに示されるように、金属電極10と第一非液体電解質層20との間に備えられる。第一カーボン層30は、特に限定はされないが、例えば、導電性カーボンの微粒子のインクを金属電極10に塗布すること等で形成される。カーボン微粒子表面に、第一非液体電解質層20からのハロゲンイオンやカチオンを吸着して蓄えることができる。これによって、二次電池の充電から放電への切り替え時に、非液体電解質層内でのイオン種の拡散性の低さに由来するイオン濃度の偏りを緩和し、それによって、IRドロップを低減することができる。また、第一カーボン層30で金属電極10が被覆されることで、金属電極表面での酸化被膜等の不動体被膜の形成を低減することができる。
【0042】
金属電極10上に形成する第一カーボン層30の厚さが過剰である場合には、金属電極10へのハロゲンイオンの拡散が妨げられ、第一カーボン層30へのイオン種の物理吸着による電気二重層キャパシタとしての特性が主となってしまう。このため、金属電極10上に形成する第一カーボン層30の厚さは、0.01μm以上かつ1000μm以下の範囲が好ましく、0.01μm以上かつ500μm以下の範囲がより好ましく、0.01μm以上かつ140μm未満の範囲がさらに好ましい。
【0043】
第二カーボン層31は、図1の構造A又は図2の構造Fに示されるように、第一非液体電解20と第二非液体電解21との間に備えられる。第二カーボン層31は、第一非液体電解20と第二非液体電解21との間の物質移動の抑制と、イオン種の移動に伴う電流を通電する役割を担っている。第二カーボン層31は、特に限定はされないが、例えば、導電性カーボンの微粒子等からからなっており、それらカーボン微粒子間の空隙にゲル状の非液体電解が入り込んだ構造となっている。
【0044】
図4は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極として用いた場合の、実施の形態1に係る二次電池(構造A)の充放電曲線であり、曲線(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ、5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、及び100サイクル目の充放電曲線である。充電から放電に切り替え直後のIRドロップの最大値IRD0及び充電から放電に切り替え1分後のIRドロップIRD1を、充放電の各サイクルに対して計測し、図11に示した。いずれのサイクルにおいても、IRドロップは0.05V以下で、小さな値であった。また、サイクル数の増加に伴う充放電曲線の変化は、100サイクル目まで、ほとんど起こらなかった。
【0045】
図1の構造Bは、本開示の実施の形態1の比較例1に係る二次電池の断面の模式図である。実施の形態1に係る二次電池(構造A)と比較例1に係る二次電池(構造B)との違いは、構造Bが、第一カーボン層30、第二非液体電解質層21,及び第二カーボン層31を有していない点である。比較例1に係る二次電池(構造B)は、正極と負極とで、第一非液体電解質層20を挟んだ構造となっている。
【0046】
図5は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極として用いた場合の、比較例1に係る二次電池(構造B)の充放電曲線であり、曲線(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ、5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、及び100サイクル目の充放電曲線である。充電から放電に切り替え直後のIRドロップの最大値IRD0及び充電から放電に切り替え1分後のIRドロップIRD1は、いずれも大きな値となった。また、実施の形態1に係る二次電池(構造A)の充放電曲線に比べて、電圧の変動が大きかった。
【0047】
図1の構造Cは、本開示の実施の形態1の比較例2に係る二次電池の断面の模式図である。実施の形態1に係る二次電池(構造A)と比較例2に係る二次電池(構造C)との違いは、構造Cが、第一カーボン層30、第一非液体電解質層20,及び第二カーボン層31を有していない点である。比較例2に係る二次電池(構造C)は、正極と負極とで、第二非液体電解質層21を挟んだ構造となっている。
【0048】
図6は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極として用いた場合の、比較例2に係る二次電池(構造C)の充放電曲線であり、曲線(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ、5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、及び100サイクル目の充放電曲線である。充電から放電に切り替え直後のIRドロップの最大値IRD0及び充電から放電に切り替え1分後のIRドロップIRD1は、いずれも大きな値となった。また、実施の形態1に係る二次電池(構造A)の充放電曲線に比べて、電圧の変動が大きかった。
【0049】
[実施の形態2]
図1の構造Dは、本開示の実施の形態2に係る二次電池の断面の模式図であり、負極10、第一非液体電解質層20、第二非液体電解質層21、正極11からなる積層構造となっている。実施の形態1に係る二次電池(構造A)と実施の形態2に係る二次電池(構造D)との違いは、構造Dが、第一カーボン層30及び第二カーボン層31を有していない点である。実施の形態2に係る二次電池(構造D)は、正極と負極とで、第一非液体電解質層20と第二非液体電解質層21の積層構造を挟んだものとなっている。
【0050】
図7は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極として用いた場合の、実施の形態2に係る二次電池(構造D)の充放電曲線であり、曲線(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ、5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、及び100サイクル目の充放電曲線である。充電から放電に切り替え直後のIRドロップの最大値IRD0及び充電から放電に切り替え1分後のIRドロップIRD1は、実施の形態1の二次電池(構造A)よりも大きな値となっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善できた。
【0051】
[実施の形態3]
図1の構造Eは、本開示の実施の形態3に係る二次電池の断面の模式図であり、負極10、第一カーボン層30,第一非液体電解質層20、第二非液体電解質層21、正極11からなる積層構造となっている。実施の形態1に係る二次電池(構造A)と実施の形態3に係る二次電池(構造E)との違いは、構造Eが、第二カーボン層31を有していない点である。実施の形態3に係る二次電池(構造E)は、第一カーボン層を備えた正極と、負極とで、第一非液体電解質層20と第二非液体電解質層21の積層構造を挟んだものとなっている。
【0052】
図8は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極として用いた場合の、実施の形態3に係る二次電池(構造E)の充放電曲線であり、曲線(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ、5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、及び100サイクル目の充放電曲線である。充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップは、5サイクル目及び10サイクル目では、ほぼ無視できるものであったが、サイクル数が増えるにつれて顕著となった。IRドロップは、実施の形態1の二次電池(構造A)よりも大きな値なっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善できた。
【0053】
[実施の形態4]
図2の構造Fは、本開示の実施の形態4に係る二次電池の断面の模式図であり、負極10、第一非液体電解質層20、第二カーボン層31,第二非液体電解質層21、正極11からなる積層構造となっている。実施の形態1に係る二次電池(構造A)と実施の形態4に係る二次電池(構造F)との違いは、構造Fが、第一カーボン層30を有していない点である。実施の形態4に係る二次電池(構造F)は、正極と負極とで、第二カーボン層31を介して接合している第一非液体電解質層20と第二非液体電解質層21の積層構造を挟んだものとなっている。
【0054】
図9は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極として用いた場合の、実施の形態4に係る二次電池(構造F)の充放電曲線であり、曲線(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ、5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、及び100サイクル目の充放電曲線である。第二カーボン層31のみの場合には、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップは低減されなかった。IRドロップは、実施の形態1の二次電池(構造A)よりも大きな値なっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善できた。
【0055】
[実施の形態5]
図2の構造Gは、本開示の実施の形態5に係る二次電池の断面の模式図であり、負極10、カーボン/第一非液体電解質混合層32,第二非液体電解質層21、正極11からなる積層構造となっている。実施の形態1に係る二次電池(構造A)と実施の形態5に係る二次電池(構造G)との違いは、構造Gが、第一カーボン層30及び第一非液体電解質層20の代わりに、カーボンと第一非液体電解質とが均一に混合された、カーボン/第一非液体電解質混合層32を有しており、また、第二カーボン層21を有していない点である。
【0056】
図10は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極として用いた場合の、実施の形態5に係る二次電池(構造G)の充放電曲線であり、曲線(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ、5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目、及び100サイクル目の充放電曲線である。カーボン/第一非液体電解質混合層32では、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップは低減されなかった。IRドロップは、実施の形態1の二次電池(構造A)よりも大きな値なっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善できた。
【0057】
本開示の二次電池の一態様では、図1又は2の二次電池の断面の模式図において不図示の、多孔質構造を有したセパレータが備えられてもよい。また、本開示の二次電池の一態様では、図1、2又は3の二次電池の模式図において不図示の、金属材料等からなる集電体が、前記金属電極及び/又は前記カーボン電極に備えられてもよい。
【0058】
[実施の形態6]
図12は、マグネシウム(純マグネシウム)及びマグネシウム(マグネシウム合金AZ91D)を負極として用い場合の、実施の形態6に係る二次電池(構造D)の充放電曲線であり、曲線(a)にはマグネシウム(純マグネシウム)を負極とした場合の充放電曲線を、曲線(b)にはマグネシウム(マグネシウム合金AZ91D)を負極とした場合の充放電曲線を示した。いずれの場合にも、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)の場合と同様に、充電から放電に切り替え直後にスパイク状のIRドロップ(IRD0)が起こっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性が改善されている。
【0059】
[実施の形態7]
図13は、亜鉛を負極として用いた二次電池(構造D)の(a)電流密度25μA/cm、(b)50μA/cm、(c)100μA/cm、及び(d)200μV/cmでの充放電曲線である。マグネシウムを負極とした二次電池(構造D)と比較して、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)を無くすことができている。亜鉛負極の場合の放電電位は、1.1V付近であり、1.6V付近に放電電圧を有するマグネシウム負極の場合よりも低くなっているが、これは、マグネシウムのほうが亜鉛よりも、より卑な酸化還元電位を有しているためである。
【0060】
[実施の形態8]
図14は、アルミニウムを負極として用いた二次電池(構造D)の(a)電流密度25μA/cm、(b)50μA/cm、(c)100μA/cm、及び(d)200μA/cmでの充放電曲線である。マグネシウムを負極とした二次電池(構造D)と比較して、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)を、ほぼ無くすことができている。アルミニウムを負極として用いた二次電池(構造D)に特徴的なのは、充放電の電流密度の増加によっても充放電曲線がほとんど変化しないことであり、これは二次電池として好ましい特性となっている。アルミニウム負極の場合の放電電位は、0.85V付近であり、1.6V付近に放電電圧を有するマグネシウム負極の場合よりも低くなっているが、これは、マグネシウムのほうがアルミニウムよりも、より卑な酸化還元電位を有しているためである。
【0061】
アルミニウム二次電池(構造D)においては、充電から放電に切り替え1分後のIRドロップ(IRD1)は、マグネシウムや亜鉛を負極とした二次電池(構造D)に比べて大きくなっている。アルミニウムの場合、自然酸化等によって形成される酸化被膜によってIRドロップ(IRD1)は大きくなるものの、その酸化被膜は非常に薄く安定であり、厚い酸化皮膜が容易に成長してしまうマグネシウムとは異なる特性となっている。アルミニウムでは、充放電過程での酸化皮膜の成長が起こりづらく、電流密度の増加によっても充放電曲線がほとんど変化しない特性になると考えられる。マグネシウムの場合には、アルミニウムに比べて厚い酸化皮膜が形成されるために、放電電流が流れる経路が形成されるまでに時間を要するため、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)が顕著になると考えられる。
【0062】
[実施の形態9]
本開示に係る二次電池における特徴の一つは、負極となる金属が異なっても、前記第一非液体電解質、前記第二非液体電解質、及び前記カーボン電極を共通とした二次電池構造とすることができることであり、このような特徴によって、前記カーボン電極に対して並列回路となるように、複数の異種金属を同一表面に配置した、複合金属電極を用いることができる。これによって、それぞれの金属電極の特徴を組み合わせることで、マグネシウムの卑な酸化還元電位を生かしつつ、IRドロップを低減することができる。
【0063】
図15には、異種金属を同一表面に配置した複合金属電極の構造の一例を、模式的に示した。第一金属電極と第二金属電極とが、同一の基材表面に配置され、導体で電気的に接続された構造となっている。本開示の二次電池用の異種金属からなる複合金属電極においては、異種金属電極の数や、それら金属の電極面積の比は限定されない。また、第一金属電極及び/又は第二金属電極は、前記第一カーボン層のような、金属電極表面での酸化被膜等の不動体被膜の形成を低減すための構造を備えたものであってもよい。また、第一金属電極及び/又は第二金属電極は、図15の模式図において不図示の、金属材料等からなる集電体を備えたものであってもよい。
【0064】
図16に、マグネシウム―亜鉛複合金属電極を負極とした二次電池(構造D)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線を示した。充放電サイクル初期の放電電圧は1.6V付近にあり、図7に示されるようなマグネシウム電極の特性が支配的となっている。また、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)を無くすことができており、図13に示されるような亜鉛電極の特性が反映されている。これは、マグネシウム電極表面で放電電流が流れる経路が形成されるまでの間、亜鉛電極側の放電電流が流れることで、過電圧の上昇が低減されることによると考えられる。マグネシウム―亜鉛複合金属電極によって、マグネシウムの卑な酸化還元電位と、充電から放電に切り替え直後にスパイク状のIRドロップ(IRD0)が起こらない亜鉛電極の特性を生かした二次電池を得ることができる。
【0065】
図17に、マグネシウム―アルミニウム複合金属電極を負極とした二次電池(構造D)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線を示した。放電電圧は1.6V付近にあり、図7に示されるようなマグネシウム電極の特性が支配的となっている。また、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)を無くすことができており、図14に示されるようなアルミニウム電極の特性が反映されている。これは、マグネシウム電極表面で放電電流が流れる経路が形成されるまでの間、アルミニウム電極側の放電電流が流れることで、過電圧の上昇が低減されることによると考えられる。マグネシウムーアルミニウム複合金属電極によって、マグネシウムの卑な酸化還元電位と、充電から放電に切り替え直後にスパイク状のIRドロップ(IRD0)が起こらないアルミニウム電極の特性を生かした二次電池を得ることができる。さらに、マグネシウムーアルミニウム複合金属電極を負極とした二次電池(構造D)では、充放電曲線の平坦性が向上し、充電から放電に切り替え1分後のIRドロップであるIRD1も低減できている。
【0066】
[実施の形態10]
実施の形態1から9においては、第二非液体電解質層に含まれる無機塩としては塩化リチウムを用いている。資源量やコストの面からは、リチウムを含まない無機塩であることが好ましい。本開示の二次電池においては、アルカリ金属塩として、リチウム以外のカチオン塩であるナトリウム塩又はカリウム塩を用いることができる。
【0067】
図18は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極とした二次電池(構造D)において第二非液体電解質層に含まれる無機塩を(a)塩化ナトリウム及び(b)塩化カリウムとした場合の充放電曲線である。IRドロップの増加は見られたものの、第二非液体電解質層に含まれる無機塩が塩化リチウムの場合(図7)と同様に、充放電曲線における電圧の平坦性が改善された特性を示した。
【0068】
図19は、アルミニウムを負極とした二次電池(構造D)において第二非液体電解質層に含まれる無機塩を(a)塩化ナトリウム及び(b)塩化カリウムとした場合の充放電曲線である。第二非液体電解質層に含まれる無機塩が塩化リチウムの場合(図14)と比較して、IRドロップの増加はほとんど見られず、充放電曲線における電圧の平坦性が改善された特性を示した。
【0069】
本開示により、金属電極、カーボン電極、複数の非液体電解質層及び/又はカーボン層からなる積層構造によって、充電から放電への切り替え時のIRドロップが低減され、充電及び放電曲線における電圧の平坦性が改善された二次電池を提供できる。また、リチウムに比べて、資源量が豊富で、コストが安く、安全性が高いという利点を有しているマグネシウム、アルミニウム、亜鉛を負極として、前記非液体電解質層にリチウム塩以外の金属イオン塩用いることのできる二次電池を提供できる。
【0070】
[具体例]
次に、本開示の実施の形態の具体的な実施例及び比較の形態の具体的な比較例について説明する。本開示は、これらの具体例に限定されるものではない。なお、具体例で使用した材料及び装置は、以下のとおりである。
【0071】
[材料]
(1)マグネシウム板材(マグネシウム合金AZ31圧延材):アズワン製;厚さ略0.2mm、150x300mm。
(2)ヨウ化カリウム:双葉化学薬品株式会社製。
(3)塩化リチウム:Merck製。
(4)ポリビニルアルコール(PVA)溶液:ELMER‘S;PVA14%以上、水溶液。
(5) PVA用架橋剤:ELMER‘S;重炭酸ナトリウム1%以上、水溶液。
(6) グリセリン:林純薬工業製。
(7) 水溶性カーボン導電塗料:プラスコート株式会社製;ポリカーム WCP-EG163CG、表面抵抗率28.2Ω/□(膜厚25μmのとき)、樹脂バインダー成分 アクリル系、希釈材成分 アルコール・水系、カーボン微粒子 グラファイト及びカーボンブラック。
(8) 精製水:健栄製薬株式会社製。
(9) 無水エタノール:マツモトキヨシホールディングス製;99.5%。
(10)ミクロファイバークロス:エツミ製 クリーンクロスプラス、材質 アクリル+ポリエステル。厚さ 略0.1mm。
(11)ポリイミドテープ:Doyeemei製;幅30mm、厚さ0.05mm。
(12)ポロプロピレン(PP)シート:サンノート株式会社製;厚さ 0.05mm。
(13)導電性銅箔テープ:3M製、No.CU-18C、10mm幅x3m;導電性粘着剤塗布タイプ。
(14)マグネシウム板材(純マグネシウム99.9%):マグネヤ製;厚さ略3mm、60x60mm。
(15)マグネシウム板材(マグネシウム合金AZ91D):株式会社スタンダードテストピース製;厚さ略2.0mm、25x75mm。
(16)亜鉛ホイル:YTGZS社製;厚さ略0.01mm、100x1000mm。
(17)アルミホイル:株式会社エムエーパッケージンング製;厚さ略11μm、25cmx10m。
(18)塩化ナトリウム:(株)ジャパンマテリアル製。
(19)塩化カリウム:(株)ジャパンマテリアル製。
(20)研磨紙:エコー金属株式会社製;#600、#1200、#1500。
(21)精密仕上げ用研磨フィルム:3M製;#4000,#10000。
【0072】
[測定]
(22)電池充放電装置;北斗電工製 HJ1020mSD8。
(23)ホットプレート・スターラー:アズワン製 CHPS-170DF。
【実施例0073】
[金属電極の調製]
マグネシウム板材(圧延材、厚さ0.2mm)を、37.5mm x 15mmにカットし、表面を研磨後にエタノール洗浄することで、金属電極10を調製した。
【0074】
金属電極が、マグネシウム板材(純マグネシウム又はマグネシウム合金AZ91D)の場合には、40mmx15mmにカットし、表面を研磨後にエタノール洗浄することで、金属電極10を調製した。
【0075】
金属電極が、亜鉛又はアルミニウムの場合には、40mmx15mmにカットし、表面を研磨後にエタノール洗浄することで、金属電極10を調製した。
【0076】
[カーボン電極の調製]
多孔質な構造のミクロファイバークロスの片面にポリイミドテープを粘着し、矩形形状(縦15mmx横40mm)にカットし、長手方向の片端に、電極端子として用いる銅テープ42を張り付けた。前記クロファイバークロス及び前記銅テープ上に、水溶性カーボン導電塗料を塗布し乾燥する工程を3度繰り返すことで、カーボン電極11を調製した。水溶性カーボン導電塗料は、ミクロファイバークロスの多孔質構造へ浸透するため、多孔質な構造のミクロファイバークロスとカーボン層とは、相互侵入した構造となっている。
乾燥後の表面抵抗は、略6.71Ω/□であった。
【0077】
本開示の二次電池の一態様では、図1、2,3,又は15の二次電池の模式図において不図示の、金属材料等からなる集電体が、前記金属電極及び/又は前記カーボン電極に備えられてもよい。
【0078】
[第一非液体電解質の調製]
ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(PVA14%以上)20gに、ヨウ化カリウム5gを添加して溶解した後に、グルセリン5gを加えて攪拌した。この混合液に、PVA用架橋剤水溶液を10g添加して、均一な電解質溶液1を得た。この溶液を塗布し、ホットプレートで加熱(60~80℃)することで、粘着性のあるゲル状の第一非液体電解質を調製した。
【0079】
[第二非液体電解質の調製]
ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(PVA14%以上)2.65gに、塩化リチウム2g、精製水2gを加え、70℃で5時間攪拌して均一な電解質溶液2を得た。この溶液を塗布し、ホットプレートで加熱(60~80℃)することで、粘着性のあるゲル状の第二非液体電解質を調製した。
【0080】
第二非液体電解質の無機塩が塩化ナトリウムである場合には、塩化ナトリウム0.5gを精製水1gに溶解・分散させ、これにグルセリン2gを加えて攪拌した後、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(PVA14%以上)2gを加えてさらに撹拌して調製した。この溶液を塗布し、ホットプレートで加熱(60~80℃)することで、粘着性のあるゲル状の第二非液体電解質を調製した。
【0081】
第二非液体電解質の無機塩が塩化カリウムである場合には、塩化カリウム0.5gを精製水1gに溶解・分散させ、これにグルセリン2gを加えて攪拌した後、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(PVA14%以上)2gを加えてさらに撹拌して調製した。この溶液を塗布し、ホットプレートで加熱(60~80℃)することで、粘着性のあるゲル状の第二非液体電解質を調製した。
【0082】
[第一カーボン層の調製]
水溶性カーボン導電塗料にエタノールを加えて希釈し(体積比略1:1)、マグネシウム電極に塗布・乾燥することで、実施例1(構造A)又は実施例5(構造E)の二次電池に用いた、第一カーボン層30を調製した。乾燥後の膜厚は略20μmであった。
【0083】
マグネシウム電極に、水溶性カーボン導電塗料を塗布し乾燥する工程を3度繰り返すことで、比較例3の第一カーボン層を調製した。乾燥後の膜厚は略140μmであった。
【0084】
[第二カーボン層の調製]
水溶性カーボン導電塗料にエタノールを加えて希釈し(体積比略1:1)、PPシートに塗布乾燥することで、乾燥後の厚さが略30μmのカーボン膜を作成した。PPシート上のカーボン膜面を、粘着性のあるゲル状の第一非液体電解質層に張り付けることで、PPシートから第一非液体電解質層上への、カーボン膜の転写を行い、第二カーボン層31として用いた。
【0085】
[カーボン/第一非液体電解質混合層の調製]
前記電解質溶液1に、水溶性カーボン導電塗料を略5%添加し攪拌して、混合液を得た。この溶液を塗布し、ホットプレートで加熱(60~80℃)することで、粘着性のあるゲル状の非液体電解質32を調製した。
【0086】
[二次電池セルの組み立て]
二次電池セルの組み立て工程について、構造Aの二次電池セル(図3)の場合を例にして具体的に説明する。他の構造の二次電池も、以下の各工程を組み合わせることで作成した。
【0087】
ポリイミドテープ(縦30mmx横40mm)41の中央部に、縦10mmx横20mmの矩形状の開口を設け、ミクロファイバークロス(縦20mmx横30mm)に、それぞれの中心の位置を合わせて張り付けた。これを前記第一カーボン層が表面に形成されたマグネシウム電極(縦15mmx横37.5mm、厚さ0.2mm)に張り付け、セパレータ40とした。第一カーボン層30が表面に形成されたマグネシウム電極10上の、矩形状(縦10mmx横20mm)に露出したミクロファイバークロス部分に、前記電解質溶液1を滴下塗布し、ホットプレート(60~80℃)で加熱・乾燥する工程を3回繰り返し、粘着性のあるゲル状の第一非液体電解質層(厚さ略0.6mm)20を形成した。
【0088】
前記電解質溶液1は、多孔質なミクロファイバークロス部分に浸透するため、加熱・乾燥によって、多孔質なミクロファイバークロスにゲル状の第一非液体電解質層が相互侵入し、ミクロファイバークロス表面は、第一非液体電解質に覆われた状態となる。本開示の一態様では、ミクロファイバークロスからなるセパレータ40は、金属電極10又は第一カーボン層20を備える金属電極10と、第一非液体電解質層20を隔離するものではなく、金属電極10又は第一カーボン層20を備える金属電極10と、正極となるカーボン電極11とが、電池の折り曲げ時等に接触することを防止するために備えられている。
【0089】
本開示の一態様では、金属電極10又は第一カーボン層20を備える金属電極10の表面と、ミクロファイバークロスからなるセパレータ40に相互侵入した第一非液体電解質層20の表面とは、電気的に接続されている。本開示の二次電池の一態様では、図1又は2の二次電池の断面の模式図において不図示の多孔質構造を有したセパレータが備えられてもよい。
【0090】
前記第一カーボン層30が表面に形成されたマグネシウム電極上の第一非液体電解質層20に、前記PPシート状に形成したカーボン膜を張り付けることで、PPシートから第一非液体電解質層上への、カーボン膜の転写を行い、第二カーボン層31を形成した。
【0091】
前記カーボン電極11に、前記電解質溶液2を滴下塗布し、ホットプレート(60~80℃)で加熱・乾燥することで、粘着性のあるゲル状の第二非液体電解質層(厚さ略0.2mm)を前記カーボン電極11上に形成した。
【0092】
前記の第二カーボン層及び第一非液体電解質層を表面に形成した第一カーボン層を備えるマグネシウム電極と、前記の粘着性のあるゲル状の第二非液体電解質層を表面に形成したカーボン電極11とを張り合わせることで、構造Aの二次電池セル(図3)を形成した。これをさらにポリイミドテープで覆って封止し測定用の二次電池セルとしたが、この部分の図示は図3では省略されている
【0093】
[充放電曲線の測定]
以下の実施例2~実施例6及び比較例1~3においては、電極面積を2cmとして、定電流(50μA)条件下で、充電(10min)と放電(10min)を繰り返し、充放電曲線を測定することで、充電から放電に切り替わる際のIRドロップの評価を行った。
【0094】
以下の実施例7及び実施例11~実施例13においては、電極面積を2cmとして、定電流(50μA)条件下で、充電(10min)と放電(10min)を繰り返し、充放電曲線を測定することで充放電曲線の測定を行った。以下の実施例8,実施例9、及び実施例14においては、電極面積を1cmとして、定電流条件下(25μA)で充電(10min)と放電(10min)を4サイクル繰り返し後に、電流密度を順次上げていくことで、充放電曲線の測定を行った。
【実施例0095】
構造Aの二次電池の充放電特性を測定し、図4に示した。構造Aの二次電池は、起電力が略1.5Vの一次電池としての特性も有しており、これはマグネシウム電極と第一非液体電解質層のヨウ素イオンとの反応で、ヨウ化マグネシウムが形成されることによる。本開示の二次電池の充電時には、ヨウ化マグネシウムが、ヨウ素イオンとマグネシウムへ還元され、放電時には、マグネシウムがヨウ化マグネシウムに酸化される。この時、カーボン電極側では、カーボン多孔質構造の電気二重層界面への、塩素イオンやリチウムイオンの吸脱着、又はカーボン層へのリチウムイオンのインターカレーションが起こる。
【0096】
図4及び図11に示したように、第一カーボン層30(膜厚 略20μm)、第一非液体電解質層20、第二カーボン層31(膜厚 略30μm)、第二非液体電解質層21からなる積層構造を、マグネシウム電極10とカーボン電極11との間に備える構造Aの二次電池では、充電から放電に切り替わる際の、スパイク状のIRドロップは起こらず、また、充電から放電に切り替え1分後のIRドロップは0.05V以下と小さく、非常に良好な特性であった。
【0097】
[比較例1:二次電池(構造B)]
図1の構造Bで示される、第一非液体電解質層20の単層のみからなり、積層構造を有さない二次電池の充放電特性を、図5及び図11に示した。充電から放電に切り替わる際に、スパイク状のIRドロップが顕著に起こり、また充電から放電に切り替え1分後のIRドロップは、略0.2Vと大きかった。また、充放電曲線の電圧は、経時的な変化が大きかった。これは、充電時に、ヨウ素イオンの非液体電解質層中での分布がカーボン電極側に偏り、非液体電解質層におけるイオン拡散性の低さから、マグネシウム電極近傍のヨウ素イオンの濃度が減少し、充電から放電に切り替わる直後においては、ヨウ素イオンとマグネシウムとがヨウ化マグネシウムになる反応が阻害されるためであると考えられる。また、マグネシウム電極表面での酸化被膜等の不動体被膜形成の影響も考えられる。
【0098】
上記のような、非液体電解質中でのヨウ素イオンの偏在に加えて、カーボン電極側へのヨウ素イオンの物質移動によって起こる、ヨウ素イオンの酸化によるヨウ素分子の生成と、ヨウ素イオンとヨウ素分子が係る酸化還元反応も、充電電圧と放電電圧とが異なるIRドロップに影響する。ヨウ素分子の酸化還元電位は、0.536Vであり、臭素(1.065V)や塩素(1.36V)に比べて低いことが原因となっている。
【0099】
これに対して、構造Aの二次電池では、マグネシウム電極近傍におけるヨウ素イオンの偏在や、カーボン電極側へのヨウ素イオンの物質移動が、第一カーボン層、第二カーボン層、及び第二非液体電解質層を積層することで抑制され、IRドロップを良好に低減することができる。
【0100】
Mg―I系の金属―ヨウ素二次電池の先行研究では、電解質溶液内にヨウ素分子Iが添加され、二次電池の充放電において、ヨウ素分子の酸化還元反応が起こっていたが、本開示の非液体電解質層を備えたマグネシウム二次電池においては、ヨウ素分子の存在が二次電池の阻害因子として働く場合もあり得るため、第一非液体電解質は、ヨウ素分子を含まない、ヨウ化カリウムからなるものとした。
【0101】
[比較例2:二次電池(構造C)]
図1の構造Cで示される、第二非液体電解質層21の単層のみからなり、積層構造を有さない二次電池の充放電特性を、図6及び図11に示した。充電から放電に切り替わる際に、スパイク状のIRドロップが顕著に起こり、また充電から放電に切り替え1分後のIRドロップは、略0.2Vと大きかった。また、充放電曲線の電圧は、経時的な変化が大きかった。これは、充電時に、塩素イオンの非液体電解質層中での分布がカーボン電極側に偏り、非液体電解質層におけるイオン拡散性の低さから、マグネシウム電極近傍の塩素イオンの濃度が減少するためであると考えられる。また、マグネシウム電極表面での酸化被膜等の不動体被膜形成の影響も考えられる。この結果からも、積層型の非液体電解質からなる構造の有用性が確認できる。
【実施例0102】
構造Dの二次電池の充放電特性を測定し、図7及び図11に示した。構造Aの二次電池と構造Dの二次電池との違いは、構造Dが、第一カーボン層30及び第二カーボン層31を有していない点である。充電から放電に切り替え直後のIRドロップの最大値IRD0及び充電から放電に切り替え1分後のIRドロップIRD1は、構造Aの二次電池よりも大きな値なっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善できた。
【0103】
構造Dの二次電池において、カーボン電極側に接合した塩化リチウムを含む第二非液体電解質層は、第一非液体電解質層に含まれるヨウ素イオンのカーボン電極側への拡散を抑制し、マグネシウム電極近傍でのヨウ素イオン濃度の減少と、カーボン電極でのヨウ素イオンの酸化反応によるヨウ素分子Iの生成を低減する。それによって、比較例1又は2に係る、非液体電解質が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善することができた。
【実施例0104】
構造Eの二次電池の充放電特性を測定し、図8及び図11に示した。構造Aの二次電池と構造Eの二次電池との違いは、構造Eが、第二カーボン層31を備えていない点である。充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップは、5サイクル目及び10サイクル目では、ほぼ無視できるものであったが、サイクル性が増えるにつれて顕著となった。IRドロップは、第二カーボン層31を有する二次電池(構造A)よりも大きな値なっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善できた。
【0105】
[比較例3:第一カーボン層の膜厚の影響]
構造A又はEの二次電池において、第一カーボン層の膜厚を略140μmとした場合、充放電特性には、充放電時間とともに電位変化が顕著に起こる電気二重層キャパシタ的な容量性の電流が観測され、充放電の電位の平坦性が失われた。
【0106】
第一カーボン層の膜厚が薄い場合には、微粒子カーボンからなる多孔質カーボン層の空隙を通して、第一非溶液電解質層20のイオン種がマグネシウム電極表面に拡散して酸化還元反応が起こるのに対して、第一カーボン層の膜厚が厚い場合には、第一非溶液電解質層20のイオン種がマグネシウム電極表面に拡散することが難しく、マグネシウムとヨウ素イオンとの酸化還元反応が抑制されるため、充放電の電位の平坦性が失わる。
【実施例0107】
構造Fの二次電池の充放電特性を測定し、図9及び図11に示した。構造Aの二次電池と構造Fの二次電池との違いは、構造Fが、第一カーボン層30を有していない点である。充電から放電に切り替え直後のIRドロップの最大値IRD0及び充電から放電に切り替え1分後のIRドロップIRD1は、構造Aの二次電池よりも大きな値なっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善できた。
【実施例0108】
構造Gの二次電池の充放電特性を測定し、図10及び図11に示した。構造Aの二次電池と構造Gの二次電池との違いは、構造Gが、第一カーボン層30及び第一非液体電解質層の代わりに、カーボンと第一非液体電解質とが均一に混合された、カーボン/第一非液体電解質混合層32を備えており、また、第二カーボン層を備えていない点である。充電から放電に切り替え直後のIRドロップの最大値IRD0及び充電から放電に切り替え1分後のIRドロップIRD1は、構造Aの二次電池よりも大きな値なっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦性を格段に改善できた。
【実施例0109】
図12には、二次電池(構造D)において、カーボン電極、第一非液体電解質、及び第二非液体電解質は実施例2~実施例6と同様で、負極となる金属電極のみを、(a)マグネシウム(純マグネシウム)又は(b)マグネシウム(マグネシウム合金AZ91D)に変えた場合の充放電曲線を示した。いずれの場合にも、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)の場合と同様に、充電から放電に切り替え直後にスパイク状のIRドロップ(IRD0)が起こっているものの、比較例1又は2に係る、非液体電解質層が単層である二次電池(構造B又はC)に比べて、充放電曲線における電圧の平坦は改善された。
【実施例0110】
図13には、カーボン電極、第一非液体電解質、及び第二非液体電解質は実施例2~実施例6と同様な二次電池(構造D)で、負極となる金属電極のみを亜鉛に変えた場合の充放電曲線を示した。マグネシウムを負極とした二次電池(構造D)との比較において、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)は消失している。
【実施例0111】
図14には、カーボン電極、第一非液体電解質、及び第二非液体電解質は実施例2~実施例6と同様な二次電池(構造D)で、負極となる金属電極のみをアルミニウムに変えた場合の充放電曲線を示した。マグネシウムを負極とした二次電池(構造D)との比較おいて、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)は、ほぼ消失している。アルミニウムを負極として用いた二次電池(構造D)は、充放電の電流密度の増加によっても充放電曲線の変化をほとんど示さず、二次電池として好ましい特性を有している。
【実施例0112】
図15には、異種金属を同一表面に配置した複合金属電極の構造を模式的に示した。基材44のポリイミドテープ上に、第一金属電極50及び第二金属電極51を、それらを1mmの間隔をあけて張り付けて配置し、それら金属電極の片端に導電性の粘着面を有した銅テープ貼り付けて電気的な導通を取った。さらにそれらの上面に、貫通孔(11x20cm)を有したポリイミドテープを張り付けることで、第一金属電極及び第二金属電極と第一非液体電解質層との接合部の面積を、それぞれ、1cm及び1cmとした。
【実施例0113】
図16には、第一金属電極にしてマグネシウムを、第二金属電極に亜鉛を用いた場合の、二次電池(構造D)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線を示した。カーボン電極、第一非液体電解質、及び第二非液体電解質は実施例2~実施例6と同様としている。充放電サイクル初期の放電電圧は1.6V付近にあり、図7に示されるようなマグネシウム電極の特性が支配的となっている。また、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)を無くすことができており、図13に示されるような亜鉛電極の特性が反映されたものとなっている。
【実施例0114】
図17には、第一金属電極にしてマグネシウムを、第二金属電極にアルミニウムを用いた場合の、二次電池(構造D)の(a)5サイクル目、(b)10サイクル目、(c)20サイクル目、及び(d)100サイクル目の充放電曲線を示した。カーボン電極、第一非液体電解質、及び第二非液体電解質は実施例2~実施例6と同様としている。放電電圧は1.6V付近にあり、図7に示されるようなマグネシウム電極の特性が支配的となっている。また、充電から放電に切り替え直後のスパイク状のIRドロップ(IRD0)を無くすことができており、図14に示されるようなアルミニウム電極の特性が反映されている。さらに、マグネシウムーアルミニウム複合金属電極を負極とした二次電池(構造D)では、充放電曲線の平坦性が向上し、充電から放電に切り替え1分後のIRドロップであるIRD1も低減できている。
【実施例0115】
図18は、マグネシウム(マグネシウム合金AZ31)を負極とした二次電池(構造D)において第二非液体電解質層に含まれる無機塩を(a)塩化ナトリウム及び(b)塩化カリウムとした場合の充放電曲線を示した。カーボン電極及び第一非液体電解質は実施例2~実施例6と同様としている。IRドロップの増加は見られたものの、第二非液体電解質層に含まれる無機塩が塩化リチウムの場合(図7)と同様な充放電挙動を示した。
【実施例0116】
図19には、アルミニウムを負極とした二次電池(構造D)において第二非液体電解質層に含まれる無機塩を(a)塩化ナトリウム及び(b)塩化カリウムとした場合の充放電曲線を示した。カーボン電極及び第一非液体電解質は実施例2~実施例6と同様としている。第二非液体電解質層に含まれる無機塩が塩化リチウムの場合(図14)と比較して、IRドロップの増加はほとんど見られず、同様な充放電挙動を示した。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本開示により、充放電特性おけるIRドロップを低下させることのできる、積層構造型の非液体電解質を有した二次電池を提供することができ、安全性の面で問題のない金属電極及び非液体電解質からなる構造であることから、ウェアラブル型の小型電子機器をはじめとして、様々な電子機器の二次電池として、好適に利用できる。
【0118】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0119】
10 金属電極
11 カーボン電極
20 第一非液体電解質層
21 第二非液体電解質層
30 第一カーボン層
31 第二カーボン層
32 カーボン/第一非液体電解質混合層
40 セパレータ
41 ポリイミドフィルム
42 銅テープ
43 電極/非液体電解質層接合部面積
44 基材
45 導体
46 貫通孔を有するポリイミドフィルム
47 電極/非液体電解質層接合部貫通孔
50 第一金属電極
51 第二金属電極


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19