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特開2025-27947廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法及びそれから得られるリチウムイオン二次電池用電極物質
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  • 特開-廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法及びそれから得られるリチウムイオン二次電池用電極物質 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027947
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法及びそれから得られるリチウムイオン二次電池用電極物質
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20250220BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20250220BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20250220BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B1/02
C22B3/04
H01M10/54
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040879
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】10-2023-0107681
(32)【優先日】2023-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0183276
(32)【優先日】2023-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】524101696
【氏名又は名称】エーケー ツリー カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524101700
【氏名又は名称】リバス987 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヒョ ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウン ジョン
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA07
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA11
4K001DB07
5H031EE01
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH06
5H031HH09
5H031RR02
(57)【要約】
【課題】本発明は、廃リチウムイオン二次電池を熱分解して作製され、経済的かつ環境にやさしく廃リチウムイオン二次電池から正極及び負極用電極物質を回収できる方法及びそれから得られる正極及び負極用電極原料物質を提供することを目的とする。
【解決手段】前記のような目的を達成するために、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、(a)廃リチウムイオン二次電池を熱分解炉内に装入する段階、(b)前記熱分解炉の内部温度を上昇させて前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱を誘導する段階、(c)前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応を持続させる段階、(d)前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応が完了した後に作製される第1の粉末を排出する段階及び(e)前記第1の粉末を水に投入し、前記第1の粉末に含まれるリチウム成分を溶解してリチウム水溶液と、前記リチウム水溶液に沈む沈殿物と、前記リチウム水溶液の表面に浮上する浮遊物をそれぞれ分離して回収する段階を含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)廃リチウムイオン二次電池を熱分解炉内に装入する段階と、
(b)前記熱分解炉の内部温度を上昇させて前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱を誘導する段階と、
(c)前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応を持続させる段階と、
(d)前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応が完了した後に作製される第1の粉末を排出する段階と、
(e)前記第1の粉末を水に投入し、前記第1の粉末に含まれるリチウム成分を溶解して、リチウム水溶液と、前記リチウム水溶液に沈む沈殿物と、前記リチウム水溶液の表面に浮上する浮遊物をそれぞれ分離して回収する段階と、を含む、廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項2】
前記(e)段階で前記第1の粉末が投入される前記水の温度は30℃以下である、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項3】
前記(e)段階で前記第1の粉末が前記水に投入された後に作製されるスラリーに20ミクロン以下の微細気泡を注入する、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項4】
前記リチウム水溶液の水を蒸発させて炭酸リチウムを回収する段階をさらに含む、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項5】
前記リチウム水溶液にアルカリを投入し、pHを高めて前記リチウム成分を水酸化リチウムとして沈殿させて回収する段階をさらに含む、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項6】
前記沈殿物を酸性水溶液に投入し、前記沈殿物に含まれる金属成分が溶解した金属水溶液を回収する段階をさらに含む、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項7】
前記沈殿物は、金属のニッケルとコバルトを含む、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項8】
前記沈殿物は、金属の鉄を含む、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項9】
前記(a)段階で熱分解炉に水とともに投入する、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項10】
前記(a)段階で投入される水の量は、熱分解炉に装入される廃リチウムイオン電池に含まれる正極物質の重量100質量部に対して1~10質量部の範囲である、請求項9に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項11】
前記(a)段階で廃リチウムイオン二次電池は、放電処理していない状態である、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項12】
前記(a)段階で廃リチウムイオン二次電池は、粉砕工程を経ていない状態である、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項13】
前記(a)段階で廃リチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池の製造工程中に不良で廃棄される廃リチウムイオン二次電池を含む、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項14】
前記(a)段階で前記廃リチウムイオン二次電池は、分解及び粉砕されて粉末状態の廃リチウムイオン二次電池を含む、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項15】
前記(b)段階で前記内部温度は、400℃以下である、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項16】
前記段階(c)で熱分解炉は加熱していない、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項17】
前記段階(c)は、10~24時間持続される、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項18】
前記段階(c)は、不活性ガス雰囲気中で行われる、請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項19】
請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて回収される前記沈殿物として、金属のNiとCoを含み、磁性を有する、廃リチウムイオン二次電池から回収される金属粉末。
【請求項20】
前記金属粉末の飽和磁化値は、15emu/g以上である、請求項19に記載の廃リチウムイオン二次電池から回収される金属粉末。
【請求項21】
レーザー回折を用いた粒度分析器を通じて測定した前記金属粉末の平均粒度は20μm以下であり、粒度分布における標準偏差は、10μm以下である、請求項19に記載の廃リチウムイオン二次電池から回収される金属粉末。
【請求項22】
前記金属粉末において前記金属Coに対する前記金属Niのモル比(MNi/MCo、MNiとMCoは、それぞれ前記金属粉末内で前記金属Niのモル分率と前記金属Coのモル分率)を第1のモル比(M)とし、熱分解前である前記廃リチウムイオン二次電池の正極材において、Coに対するNiのモル比(mNi/mCo、mniとmCoは、それぞれ前記正極材内で前記Niのモル分率と前記Coのモル分率)を第2のモル比(M)とするとき、第1のモル比と第2のモル比の差は、第2のモル比の値の10%以下である、請求項19に記載の廃リチウムイオン二次電池から回収される金属粉末。
【請求項23】
前記金属粉末は、Li、Ni、Co、Fe及びAl以外の金属イオンを含まず、F及びClのアニオンを含まない、請求項19に記載の廃リチウムイオン二次電池から回収される金属粉末。
【請求項24】
請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて回収される前記沈殿物として、金属の鉄または酸化鉄を含む、廃リチウムイオン二次電池から回収される鉄粉末。
【請求項25】
請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて分離して回収される前記浮遊物として、黒鉛または黒鉛とシリカを含む、廃リチウムイオン二次電池から回収される炭素粉末。
【請求項26】
レーザー回折を用いた粒度分析器を通じて測定した前記炭素粉末の平均粒度は20μm以下であり、粒度分布における標準偏差は10μm以下である、請求項25に記載の廃リチウムイオン二次電池から回収される炭素粉末。
【請求項27】
請求項1に記載の廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて製造される前記第1の粉末として、炭酸リチウム、金属ニッケル及び金属コバルトを含む廃リチウムイオン二次電池のリサイクル粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃リチウムイオン電池をリサイクルするための方法及びそれから得られるリチウムイオン二次電池用電極物質に関し、特に、廃リチウムイオン二次電池の低温熱分解及び水による分離方法を通じて環境にやさしく経済的に電極物質を回収できるリサイクル方法及びそれから得られる電極物質に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関自動車から電気自動車に自動車産業が転換するにつれて、グローバル電気自動車及び二次電池の成長軸である欧州と中国は、二酸化炭素規制案及び環境にやさしい自動車ロードマップを通じて電気自動車の普及拡大と競争力確保を推進している。これにより、グローバル電気自動車市場の高速成長が予想されている。
【0003】
電気自動車のバッテリーは、通常5~10年使用後に廃棄されることにより、廃バッテリー市場も本格化すると見込まれている。グローバル電気自動車の廃バッテリーの発生量は、2030年までに約160万トンに達すると予想され、ヨーロッパを中心に様々な国々は、廃バッテリーから有価金属を回収する段階開発に対する大規模投資が行われている。
【0004】
廃バッテリーリサイクル産業は、再使用とは異なり、廃バッテリーから有価金属を回収して原料としてリサイクルすることで、環境問題の解決及び安定的な有価資源の確保が同時に可能になる。
【0005】
廃バッテリーリサイクルは、一般に放電、解体及び粉砕後の湿式製錬または乾式製錬工程を通じて有価金属を抽出することになるが、大容量処理に適しており回収率の高い乾式製錬工程が注目されている。
【0006】
乾式製錬は、粉砕して得られた粉末を高温で加熱して粉砕された粉末に含まれる有機化合物とポリマー成分を焼却して除去した後、再び粉砕し、強酸を通じて湿式で有価金属を抽出する。
【0007】
このような乾式製錬工程は、放電と粉砕のために多くの時間と装置が必要であり、その後も複雑な工程を経ることになり経済性が低下し、高温で加熱して排出された結果物には多量の不純物を含んでおり、全体の粉末から得られる有価成分の抽出比率が低くなり、塊状化した状態で存在することにより、これから有価成分を抽出するためには、再び粉砕及び強酸の使用が避けられず、環境的な問題が台頭している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、廃リチウムイオン二次電池を熱分解して作製され、経済的かつ環境にやさしく廃リチウムイオン二次電池から正極及び負極用電極物質を回収できる方法及びそれから得られる正極及び負極用電極原料物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するために、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、(a)廃リチウムイオン二次電池を熱分解炉内に装入する段階、(b)前記熱分解炉の内部温度を上昇させて前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱を誘導する段階、(c)前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応を持続させる段階、(d)前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応が完了した後に作製される第1の粉末を排出する段階及び(e)前記第1の粉末を水に投入し、前記第1の粉末に含まれるリチウム成分を溶解してリチウム水溶液と、前記リチウム水溶液に沈む沈殿物と、前記リチウム水溶液の表面に浮上する浮遊物をそれぞれ分離して回収する段階を含んでもよい。
【0010】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(e)段階で前記第1の粉末が投入される前記水の温度は、30℃以下であってもよい。
【0011】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(e)段階で前記第1の粉末が前記水に投入された後に作製されるスラリーに20ミクロン以下の微細気泡を注入してもよい。
【0012】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記リチウム水溶液の水を蒸発させて炭酸リチウムを回収する段階をさらに含んでもよい。
【0013】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記リチウム水溶液にアルカリを投入し、pHを高めて前記リチウム成分を水酸化リチウムとして沈殿させて回収する段階をさらに含んでもよい。
【0014】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記沈殿物を酸性水溶液に投入し、前記沈殿物に含まれる金属成分が溶解した金属水溶液を回収する段階をさらに含んでもよい。
【0015】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において、前記沈殿物は、金属のニッケルとコバルトを含んでもよい。
【0016】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において、前記沈殿物は、金属の鉄を含んでもよい。
【0017】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(a)段階で熱分解炉に水とともに投入してもよい。
【0018】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(a)段階に投入される水の量は、熱分解炉に装入される廃リチウムイオン電池に含まれる正極物質の重量100質量部に対して1~10質量部の範囲であってもよい。
【0019】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(a)段階で廃リチウムイオン二次電池は、放電処理していない状態であってもよい。
【0020】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(a)段階で廃リチウムイオン二次電池は、粉砕工程を経ていない状態であってもよい。
【0021】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(a)段階で廃リチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池の製造工程中に不良で廃棄される廃リチウムイオン二次電池を含んでもよい。
【0022】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(a)段階で前記廃リチウムイオン二次電池は、分解及び粉砕されて粉末状態の廃リチウムイオン二次電池を含んでもよい。
【0023】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記(b)段階で前記内部温度は、400℃以下であってもよい。
【0024】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、前記段階(c)で熱分解炉は加熱しなくてもよい。
【0025】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において、前記段階(c)は、10~24時間持続されてもよい。
【0026】
また、本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において、前記段階(c)は、不活性ガス雰囲気中で行われてもよい。
【0027】
本発明により、上述した廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて回収される前記沈殿物として金属のNiとCoを含み磁性を有する廃リチウムイオン二次電池から回収される金属粉末を提供しうる。
【0028】
本発明の一実施例による前記金属粉末の飽和磁化値は、15emu/g以上であってもよい。
【0029】
本発明の一実施例による前記金属粉末は、レーザー回折を用いた粒度分析器を通じて測定したときの平均粒度は20μm以下であり、粒度分布における標準偏差は、10μm以下であってもよい。
【0030】
本発明の一実施例による前記金属粉末において前記金属Coに対する前記金属Niのモル比(MNi/MCo、MNiとMCoは、それぞれ前記金属還元粉末内で前記金属Niのモル分率と前記金属Coのモル分率)を第1のモル比(M)とし、熱分解前である前記廃リチウムイオン二次電池の正極材において、Coに対するNiのモル比(mNi/mCo、mniとmCoは、それぞれ前記正極材内で前記Niのモル分率と前記Coのモル分率)を第2のモル比(M)とするとき、第1のモル比と第2のモル比の差は、第2のモル比の値の10%以下であってもよい。
【0031】
本発明の一実施例による前記金属粉末は、Li、Ni、Co、Fe及びAl以外の金属イオンを含めなくてもよく、F及びClのアニオンを含まなくてもよい。
【0032】
本発明により、上述した廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて回収される前記沈殿物として、金属の鉄または酸化鉄を含む廃リチウムイオン二次電池から回収される鉄粉末を提供しうる。
【0033】
本発明により、上述した廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて回収される前記浮遊物として、黒鉛または黒鉛とシリカを含む廃リチウムイオン二次電池から回収される炭素粉末を提供しうる。
【0034】
本発明の一実施例による前記炭素粉末は、レーザー回折を用いた粒度分析器を通じて測定したときの平均粒度は20μm以下であり、粒度分布における標準偏差は10μm以下であってもよい。
【0035】
本発明により、上述した廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて回収される第1の粉末として、炭酸リチウム、金属ニッケル及び金属コバルトを含む廃リチウムイオン二次電池のリサイクル粉末を提供しうる。
【発明の効果】
【0036】
本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、経済的かつ環境にやさしいため、廃リチウムイオン二次電池のリサイクル率を高め、リサイクル中に発生し得る環境問題を解決できるようにする。
【0037】
また、本発明により得られる有価元素成分を通じて正極用または負極用の電極原料物質を通じて経済性の高い正極物質または負極物質を製造しうる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を説明するフローチャートである。
図2】本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において炭酸リチウムを得る過程を説明する模式図である。
図3】本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて得られる炭酸リチウムに対するX線回折分析結果を示すグラフである。
図4】本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて得られる沈殿物に対するレーザー回折を用いた粒度分析結果を示すグラフである。
図5】本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて得られる熱分解直後の粉末と水での処理後に回収される沈殿物に対する飽和磁化値測定結果グラフである。
図6】本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて得られる沈殿物の透過電子顕微鏡のイメージ及び回折パターン分析結果である。
図7】本発明の一実施例による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じて得られる沈殿物の透過電子顕微鏡のイメージ及び回折パターン分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照し、本願が属する技術分野で通常の知識を持つ者が容易に実施できるように本願の実施例を詳細に説明する。しかし、本願は、様々な異なる形態で具現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0040】
本願明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素を更に含むことができることを意味する。
【0041】
本明細書で使用される程度の用語の「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値で、またはその数値に近い意味で使用され、本願の理解を助けるために正確かつ絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使用される。また、本願明細書の全体において、「~する段階」または「~の段階」は、「~のための段階」を意味しない。
【0042】
本願明細書の全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれる「それらの組み合わせ」という用語は、マクシ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選ばれる1つ以上の混合または組み合わせを意味するものであり、前記構成要素からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことを意味する。
【0043】
本願明細書の全体において、「A及び/又はB」の記載は、「AまたはB」または「A及びB」を意味する。
【0044】
本発明により提供しうる廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、(a)廃リチウムイオン二次電池を熱分解炉に装入する段階、(b)前記熱分解炉の内部温度を上昇させて前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱を誘導する段階、(c)前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応を持続させる段階、(d)前記廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応が完了した後に作製される第1の粉末を排出する段階及び(e)前記第1の粉末を水に投入し、前記第1の粉末に含まれるリチウム成分を溶解し、リチウム水溶液と、前記リチウム水溶液に沈む沈殿物と、前記リチウム水溶液の表面に浮上する浮遊物とをそれぞれ分離して回収する段階を含む。
【0045】
本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法では、電池を比較的低温で加熱することにより、電池内に含まれる正極物質、バインダー、電解液などによる自己発熱を通じて熱分解を誘導する。特に熱分解炉内に廃リチウムイオン二次電池を装入して内部温度を上昇させるとき、攪拌を通じて電池を回転させながら均一な反応を誘導することもできる。
【0046】
一方、廃リチウムイオン二次電池を分解及び破砕して製造される粉末であるブラックマス(Black Mass)も内部に正極物質、バインダー、電解液などによる自己発熱が可能であるため、低温加熱を通じて反応を誘導できるようになる。この場合、ブラックマスは、廃リチウムイオン電池の処理工程中に熱処理を行わないブラックマスであることが好ましい。
【0047】
自己発熱反応を円滑にするために、廃リチウムイオン二次電池を放電処理しない状態で熱分解炉に装入して温度を昇温しうる。このような放電処理されていない廃リチウムイオン二次電池は、エネルギー状態が高いので、低温の加熱によっても自己発熱が起こりやすく熱分解が可能となる。特に放電処理が不要であるため、従来の熱分解方法と異なり、放電のための装置と放電のための工程が不要となり、プロセスコストを大幅に節減できる。
【0048】
また、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において投入される廃リチウムイオン二次電池は、粉砕されていない状態であってもよい。従来のリサイクル方法では、廃リチウムイオン二次電池を粉砕した後、高温で加熱するが、本発明によるリサイクル方法では電池を粉砕していない状態で熱分解炉に装入することになる。自己発熱反応が完了した後は、廃リチウムイオン二次電池にあった正極物質、負極物質、電解質などは分解して粉末状態になるが、電池のケースや集電体などは形態を維持しうる。これにより、低温の自己発熱以後に粉末化された正極物質、負極物質などは、形態を保持するケースや集電体などから容易に分離される。このように粉砕のための装置と工程が不要となり、プロセスコストの節減が可能となる。
【0049】
一方、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において投入される廃リチウムイオン二次電池は、廃リチウムイオン二次電池を分解及び破砕して製造される粉末であるブラックマス(Black Mass)であってもよい。このようなブラックマスも内部に正極物質、バインダー、電解液などによる自己発熱が可能であるため、低温加熱を通じて反応を誘導できるようになる。この場合、ブラックマスは、廃リチウムイオン電池の処理工程中に熱処理を行わないブラックマスであることが好ましい。
【0050】
また、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において投入される廃リチウムイオン二次電池は、二次電池の製造工程中に不良で廃棄される廃リチウムイオン二次電池を含む。二次電池製造工程は、極板工程、組立工程、化成工程などに分けられるが、これらそれぞれの工程で正極物質が塗布された極板を含む中間廃棄物としての廃リチウムイオン二次電池は、すべて本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法を通じてリサイクルされてもよい。
【0051】
従来の高温熱分解工程は、廃リチウムイオン電池に含まれる正極物質、負極物質だけでなく、ケース、集電体などを含めて全体を塊状化することになる。したがって、これから有価成分を分離するためには、熱処理工程前だけでなく、熱処理工程後にも塊状化した塊に対する粉砕工程が必要であり、ここには多くの不純物が含まれることに対して、本発明によるリサイクル方法は、自己発熱工程を通じて容易に正極物質または負極物質に含まれる有価元素成分のみを粉末化して分離しうる。
【0052】
また、本発明によるリサイクル方法は、廃リチウムイオン二次電池内の物質による自己発熱を通じて熱分解が行われるため、従来のリサイクル方法に比べて高温への昇温が必要なく、これによりエネルギーコストを節減しうる。
【0053】
自己発熱が完了した後に回収される第1の粉末には、廃リチウムイオン二次電池の正極物質に含まれてもよいニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、鉄などの金属元素が金属または酸化物の形態で含まれる。特に、ニッケル、コバルト、鉄などは、一部が廃リチウムイオン二次電池に含まれるセパレータ、負極物質などの炭素成分を通じて熱炭素還元反応で金属のニッケル、コバルト、鉄などに還元され、第1の粉末に含まれてもよい。一方、正極物質及び電解質内のリチウムは、自己発熱反応中に炭酸リチウム(LiCO)に転換され、負極物質の一部は分解及び揮発して除去され、残りはそのまま黒鉛又はシリカ状態で第1の粉末内に残留することになる。
【0054】
このように様々な有価成分が残留する第1の粉末を純水に投入すると、まず含まれる炭酸リチウムは、水に溶解してリチウム水溶液となる。また、第1の粉末に金属または酸化物の形態で含まれるニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、鉄などは沈殿して底部に沈む。そして、負極物質の構成成分である黒鉛とシリカは密度が低いため、水に浮いて表面で浮遊することになる。
【0055】
したがって、(e)段階で廃リチウムイオン二次電池から有価元素成分は、リチウム水溶液、沈殿物、浮遊物としてそれぞれ回収されてもよい。リチウム水溶液からリチウムが回収されてもよく、沈殿物から正極物質原料であるニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムまたは鉄が回収されてもよい。また、水から表面に浮上する浮遊物からは陰極材材料である黒鉛及び/又はシリカを回収しうる。
【0056】
上述した本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法については、図1のフローチャートに示した。
【0057】
一方、(e)段階で第1の粉末が投入される水の温度は低いほど、リチウム水溶液のためには有利であるが、炭酸リチウムの溶解度は、温度が低い水でさらに高くなるためである。したがって、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において第1の粉末を投入する水の温度は、好ましくは、30℃以下、より好ましくは、25℃以下、さらに好ましくは、10℃以下である。温度は低いほど有利であるが、プロセスコストを考慮すると、適正温度以下に調節することが有利である。
【0058】
また、リチウムの効果的かつ迅速な溶解と浮遊物と沈殿物への効果的な分離のために、第1の粉末を水に投入して作製されるスラリーに20ミクロン以下の微細気泡を供給しうる。このように供給される微細気泡を通じてスラリー内でスラリーの流動を起こし、炭酸リチウムの迅速な溶解を誘導し、効果的に沈殿物と浮遊物の分離を助けることができる。微細気泡のサイズは、20ミクロン以下であることが好ましいが、これより大きいサイズでは、すぐにスラリーの表面に浮上して微細気泡の効果を得にくいためである。
【0059】
一方、第1の粉末を水に投入した後に作製されたスラリーは、攪拌または超音波処理を通じて効果的に炭酸リチウムが溶解したリチウム水溶液と浮遊物、沈殿物に分離されてもよい。
【0060】
リチウム水溶液からリチウムを回収するためには、リチウム水溶液に含まれる水をすべて蒸発させて炭酸リチウム(LiCO)として回収しうる。第1の粉末内に含まれる炭酸リチウムを水に溶解してリチウム水溶液に分離した後、再び水を除去して純粋な炭酸リチウムとして回収できるようになる。
【0061】
図2は、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法により熱分解が完了して得られた第1の粉末を低温の水に溶解した後、リチウム水溶液を分離し、このようなリチウム水溶液から水を蒸発させて純粋な炭酸リチウムを得る方法を説明する模式図である。
【0062】
また、リチウム水溶液からリチウムの回収は、水溶液として水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムなどのアルカリを投入してpHを高め、水溶液内に含まれるリチウムイオンを水酸化リチウム(LiOH)の形態で沈殿させて回収してもよい。
【0063】
一方、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法において、前記(a)段階で熱分解炉に廃リチウムイオン二次電池とともに水が投入されてもよい。投入される水は、廃リチウムイオン二次電池内の炭素成分とともに反応してメタン(CH)ガスを生成することができ、これにより廃リチウムイオン電池内の正極物質に含まれるニッケルまたはコバルト成分の還元をより容易に行うことができる。
【0064】
投入される水の量は少量でも十分な効果が得られるが、廃リチウムイオン二次電池に含まれる正極物質の重量100質量部に対して1~10質量部の範囲であってもよい。少なすぎるとメタンガス効果を得ることが困難であり、多すぎると熱分解のためのエネルギーコストが増加するために好ましくない。
【0065】
また、本発明による廃リチウムイオン二次電池のリサイクル方法では、熱分解のための加熱は、400℃以下でも可能であるため、熱分解のためのエネルギーコストも節減しうる。熱分解のための加熱は、300℃以下であってもよく、200℃以下であってもよい。
【0066】
加熱後に自己発熱が始まった後は、熱分解への人為的な加熱を止め、廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応を持続させることができる。このような反応は、10~24時間持続されてもよい。反応時間が短すぎると急激な反応により不純物の生成可能性が高く、長すぎると工程生産性が低下して好ましくない。このような反応時間の調節は、(b)及び段階(c)での内部温度、熱分解炉内の雰囲気調節を通じて行われてもよい。
【0067】
自己発熱が行われた後の熱分解反応は、不活性ガス雰囲気中で行われてもよく、不活性ガスは、窒素、ヘリウムまたはアルゴンが使用されてもよい。
【0068】
一方、(e)段階で回収される沈殿物には、正極物質原料であるニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムまたは鉄などが回収されるが、沈殿物を硫酸、塩酸、硝酸などの酸に溶解して湿式で有価金属成分を分離してもよい。リサイクルの対象となる廃リチウムイオン二次電池が三元系正極物質(NCA、NCMなど)が適用された場合にはニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムが回収されてもよく、リン酸鉄系正極物質(LFP)を使用した場合には鉄が回収されてもよい。
【0069】
高温で熱分解される従来方法では、このような正極物質に含まれる有価金属成分を水を通じて分離することができず、粉砕と強酸による湿式処理を通じて分離するしかないが、本発明によるリサイクル方法では、水によって簡単に正極物質の有価金属成分のみを分離しうる。したがって、本発明による沈殿物は、粉末状であり、Li、Ni、Co、Mn、Al、Fe以外の金属イオンを含まず、湿式処理を行わないため、SO 2-、F、Clなどのアニオンを含まなくてもよい。
【0070】
本発明によるリサイクル方法において対象となる廃リチウムイオン二次電池の正極物質が三元系正極物質である場合、回収される沈殿物は、特に金属のニッケルとコバルトを含み、磁性を有する金属粉末であってもよい。低温の熱分解過程を経て電池内の負極材、導電材などにより熱炭素還元反応が起こり、正極物質に含まれるニッケルとコバルトは、金属相に還元されることがあるためである。
【0071】
このような金属粉末は磁性を有し、その飽和磁化値は15emu/g以上であってもよく、より好ましくは、30emu/g以上であってもよい。
【0072】
本発明による沈殿物として金属粉末に含まれる高含量の金属NiとCoは、強磁性物質であるので、高いレベルの飽和磁化値を有するが、磁性を持たず、一部残留するアルミニウム、マンガン酸化物などは飽和磁化値を下げる役割を果たす。本発明による金属粉末は、Ni及びCo以外の残留物含量が低く、比較的高い飽和磁化値を有するが、好ましくは、15emu/g以上であってもよく、より好ましくは、30emu/g以上であってもよい。このような磁性を用いて磁力選別を通じて沈殿物に含まれる酸化物を除去し、金属成分のみをさらに分類して選別してもよい。
【0073】
また、本発明による金属粉末は、レーザー回折を用いた粒度分析器を通じて測定したときの平均粒度が20μm以下であり、粒度分布における標準偏差は、10μm以下であってもよい。
【0074】
従来の高温熱分解工程では、高温工程のために工程以後、結果物の塊状化がなされており、粉末化するために粉砕工程が避けられなくなる。しかし、本発明による金属粉末は、低温での熱分解工程を通じて得られるため、小さな粒度を有することを特徴とし追加の粉砕工程が不要になる。
【0075】
また、このような廃リチウムイオン二次電池のリサイクルのための金属粉末は、粒度が小さいほど、後処理による有価金属の抽出が有利な側面がある。したがって、本発明の金属粉末は、平均粒度が20μm以下である。また、粒度分布における標準偏差も10μm以下で均一であり、粉末の取り扱いが容易である。
【0076】
一方、本発明による金属粉末に含まれる金属のNiとCoは、廃リチウムイオン二次電池正極物質に含まれるNiとCoに起因するものである。したがって、これらの割合は、熱分解前の廃リチウムイオン二次電池正極物質の割合に従うことになる。本発明による金属粉末は、廃リチウムイオン二次電池からのNiとCoの回収率が非常に高いため、熱分解前に廃リチウムイオン二次電池におけるNiとCoの割合は、熱分解後の金属粉末におけるNiとCoの割合と大きな差を示さない。
【0077】
したがって、本発明による金属粉末において金属Coに対する金属Niのモル比(MNi/MCo、MNiとMCoは、それぞれ金属粉末内において金属Niのモル分率と金属Coのモル分率)を第1のモル比(M)とし、熱分解前である廃リチウムイオン二次電池の正極物質においてCoに対するNiのモル比(mNi/mCo、mniとmCoは、それぞれ正極材内においてNiのモル分率とCoのモル分率)を第2のモル比(M)とするとき、第1のモル比と第2のモル比の差は、第2のモル比の値の10%以下であってもよく、より好ましくは、5%以下であってもよい。
【0078】
また、本発明による金属粉末において有価金属であるニッケルとコバルトは、金属状態であるため、酸化物に比べて弱い酸処理によっても容易に抽出しうる。したがって、本発明による金属還元粉末を湿式抽出してニッケルまたはコバルトを含む硫化物、窒化物または塩化物が効果的に得られる。このような金属化合物は、再びリチウムイオン二次電池のための正極物質の原料として活用されてもよい。
【0079】
また、本発明によるリサイクル方法において対象である廃リチウムイオン二次電池の正極物質がリン酸鉄系正極物質である場合、回収される沈殿物は、特に金属の鉄または酸化鉄を含む金属粉末であってもよい。三元系正極物質と同様に低温の熱分解過程を経て熱炭素還元反応によって正極物質に含まれる鉄が金属相に還元されるか、または酸化鉄の形態で沈殿物に含まれてもよいからである。
【0080】
一方、本発明によるリサイクル方法において回収される浮遊物は負極物質で、密度の低い黒鉛または黒鉛とシリカを含む炭素粉末であってもよい。浮遊物である炭素粉末を捕集して乾燥することにより、負極物質としてリサイクルできる黒鉛またはシリコンを回収できるようになる。
【0081】
このような炭素粉末は、同様にレーザー回折を用いた粒度分析器を通じて測定したときの平均粒度は、20μm以下であり、粒度分布における標準偏差は、10μm以下であってもよい。
【0082】
[実施例]
三元系(NCM)正極物質で正極が製造された廃リチウムイオン二次電池を本発明によるリサイクル方法によって処理して第1の粉末を回収した。熱分解炉内に放電処理されていない廃リチウムイオン二次電池を装入した後、熱分解炉の熱線温度を300℃以下に調節しながら、廃リチウムイオン二次電池の自己発熱反応が起こるように誘導した。自己発熱反応が開始された後、熱分解反応が12時間持続するように内部温度を調節した。反応が完了した後、粉末化された材料を分離して回収して第1の粉末を得た。
【0083】
得られた粉末に対して4℃に維持される水に第1の粉末を投入し、超音波処理した。処理した溶液を一定時間放置し、溶液内で沈殿物と浮遊物に分離されるようにした。その後、沈殿物、リチウム水溶液と浮遊物をそれぞれフィルタリングして分離した。
【0084】
得られたリチウム水溶液から水を蒸発させて除去し、炭酸リチウムを得た。得られた炭酸リチウム粉末に対して、X線回折分析とICP-OES(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectroscopy)による成分分析を行った。図3は、X線回折分析結果を示すが、2回の実験を通じて得られた炭酸リチウム粉末は、すべて純粋な炭酸リチウムであることが分かり、ICP-OES結果からもリチウム以外に他の不純物がないことが分かった(表1参照)。
【0085】
【表1】
【0086】
図4は、回収された沈殿物の粒度を測定した結果である。沈殿物である金属粉末は概して球状の粉末であり、金属還元粉末の平均粒度は14.8μmであり、分布が広くなかった。
【0087】
図5は、熱分解炉で反応が完了した後に排出された第1の粉末と水に溶解して分離された沈殿物の飽和磁化値の測定結果を示すグラフである。
【0088】
溶解前の粉末に比べて沈殿物である金属粉末の飽和磁化値が大きく上昇したことが分かった。沈殿物には、第1の粉末に比べて炭酸リチウムと負極物質である黒鉛とシリコンがそれぞれリチウム水溶液と浮遊物に分離され、高含量の金属Niと金属Coを含むため、高い飽和磁化値(34.02emu/g)を有する。
【0089】
図6及び図7は、本発明による沈殿物に対する透過電子顕微鏡のイメージ及び回折パターン分析の結果を示す。回折パターンでは、fcc構造の金属Niが確認できた。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7