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2025-27986グラフェン粉末、グラフェン分散液、組成物および形成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027986
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】グラフェン粉末、グラフェン分散液、組成物および形成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20250220BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20250220BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C01B32/194
C08J7/06 A CEZ
C08J5/18
C08J5/18 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111371
(22)【出願日】2024-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2023132862
(32)【優先日】2023-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 善英
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智博
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4G146
【Fターム(参考)】
4F006AA39
4F006AB72
4F006BA07
4F071AA42
4F071AB03
4F071AB10
4F071AE02
4F071AF08
4F071BB02
4F071BB12
4F071BC01
4F071BC12
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC01A
4G146AC27A
4G146AD20
4G146AD37
4G146BA01
4G146CB10
4G146CB22
4G146CB31
4G146CB34
(57)【要約】
【課題】分散性に優れたグラフェン粉末およびバリア性または熱伝導性に優れた組成物を提供すること。
【解決手段】グラフェン表面に、粒径50nm以上1000nm以下の金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着してなるグラフェン粉末。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン表面に、粒径50nm以上1000nm以下の金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着してなるグラフェン粉末。
【請求項2】
前記金属および/または金属化合物を含有する粒子が、グラフェンに対して1重量%以上300重量%以下付着してなる請求項1記載のグラフェン粉末。
【請求項3】
前記金属および/または金属化合物を含有する粒子が、グラフェン表面の1%以上70%以下の面積に対して付着してなる請求項2記載のグラフェン粉末。
【請求項4】
前記金属および/または金属化合物を含有する粒子が、グラフェン表面の10%以上50%以下の面積に対して付着してなる請求項3記載のグラフェン粉末。
【請求項5】
前記金属および/または金属化合物が、亜鉛、コバルトおよび鉄から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1記載のグラフェン粉末。
【請求項6】
前記グラフェンの平均厚さが、0.3nm以上10nm以下である請求項1記載のグラフェン粉末。
【請求項7】
前記グラフェン粉末が、窒素を含む化合物を表面に有する請求項6記載のグラフェン粉末。
【請求項8】
前記グラフェン粉末のX線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.05以上0.60以下、かつ炭素に対する窒素の元素比(N/C比)が0.005以上0.200以下である請求項7記載のグラフェン粉末。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のグラフェン粉末が、有機溶媒に分散されてなるグラフェン分散液。
【請求項10】
前記有機溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒および/またはアルコール系溶媒を含む請求項9記載のグラフェン分散液。
【請求項11】
請求項10記載のグラフェン分散液と、硬化性樹脂および/またはその前駆体とを含む組成物。
【請求項12】
前記組成物中の総固形分に対して、グラフェン含有量が0.01重量%以上5.0重量%以下である請求項11記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~8のいずれかに記載のグラフェン粉末を含む形成物。
【請求項14】
バリア性を有する請求項13記載の形成物。
【請求項15】
熱伝導性を有する請求項13記載の形成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン粉末およびそれを用いた分散液、組成物、形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン粉末は、炭素原子からなる二次元結晶であり、2004年に発見されて以来、非常に注目されている素材である。グラフェン粉末の薄層シート構造は、バリア性、熱伝導性、導電性などの機能を有しており、一例として、バリア性では金属腐食原因物質である酸素や水の透過を抑制することができる。かかるグラフェン粉末の機能を活用した用途の一例として耐腐食性塗料が挙げられ、グラフェン粉末を用いることにより、耐腐食性のさらなる向上が期待されている。
【0003】
グラフェン粉末を工業的に利用するために、電気抵抗が低く、塗布性および分散性に優れるグラフェン粉末の分散液が用いられている。グラフェン粉末の分散液としては、例えば、グラフェン粉末がN-メチルピロリドンを50質量%以上含む溶媒に分散された分散液であって、N-メチルピロリドンでグラフェン重量分率0.000013に調整した希釈液の、波長270nmにおける重量吸光係数が25000cm-1以上200000cm-1以下であるグラフェン分散液(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、グラフェン分散液の製造方法としては、例えば、還元工程、微細化工程、有機溶媒混合工程、強撹拌工程、水分除去工程を有するグラフェンを分散液にする製造方法(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/047521号
【特許文献2】国際公開第2017/047523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グラフェン粉末の応用範囲を広げる上では、グラフェン粉末を様々な形状に成形する技術が求められており、そのために、グラフェン粉末を単層または複数層の薄層状態に分散させた分散液とすることが有効である。しかし、分散液中において、薄層状態のグラフェンは積層凝集しやすく、さらに凝集したシート状のグラフェン同士は絡まり合いやすい傾向にある。特許文献1や特許文献2に記載された技術に対しても、様々な組成物中へのさらなる分散性の向上が求められている。
【0006】
また、グラフェンを乾燥粉末の状態にして樹脂や溶媒中に再分散して用いる場合がある。この場合、グラフェンを乾燥等により粉末化すると、強固な積層凝集を起こして再分散することが非常に困難になり、グラフェンの分散性が低下するために所望の効果を発揮しにくいという課題があった。従って、乾燥粉末化後の再分散性に優れたグラフェン粉末が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、再分散性に優れたグラフェン粉末、およびバリア性または熱伝導性に優れる硬化物を得ることのできる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、グラフェン表面に、粒径50nm以上1000nm以下の金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着してなるグラフェン粉末である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグラフェン粉末は再分散性が高く、耐腐食性などのバリア性や熱伝導性に優れる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<グラフェン粉末>
本発明のグラフェン粉末は、グラフェン表面に、粒径50nm以上1000nm以下の金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着してなる。本発明においては、グラフェン粉末の再分散性に影響する指標として、グラフェン表面に付着する金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径に着目した。
【0011】
本発明におけるグラフェン粉末の再分散性は、グラフェン表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径に影響される。グラフェン表面に金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着することで、薄層状に剥離したグラフェン粉末同士がネットワークを形成して積層凝集することを抑制する。かかる積層凝集を抑制することで、グラフェン分散液中での分散性が向上するだけでなく、グラフェンを乾燥粉末化した後のグラフェンの再分散性が向上する。グラフェン表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径が50nm未満の場合、グラフェン粉末同士のネットワークにより積層凝集が強固なものとなり、グラフェン粉末の再分散性が低く、グラフェン分散液としたときの塗布性が低下し、塗膜抵抗が高くなる。100nm以上が好ましく、150nm以上がより好ましい。グラフェン表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径が1000nmより大きい場合、グラフェン粉末の平面方向の大きさに対して金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径が大きくなり、グラフェン粉末の再分散性を阻害することになる。500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。本発明の金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径は、後述する測定例1に記載する方法により測定することができる。
【0012】
本発明のグラフェン表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子は、後述するグラフェン粉末の製造方法におけるいずれかの工程で、酸化グラフェンまたは還元グラフェンと金属および/または金属化合物を含有する粒子とを混合することで付着させることができる。金属および/または金属化合物を含有する粒子の付着状態を制御しやすい観点から、後述するグラフェン粉末の製造方法における還元工程で、酸化グラフェンと金属および/または金属化合物を含有する粒子とを混合することが好ましい。金属および/または金属化合物の一部が溶媒中に溶解し、酸化グラフェンが還元されてなるグラフェン表面に金属単体および/または金属化合物を含有する粒子として析出して付着する。かかる原理による方法は、金属および/または金属化合物を直接的に混合しグラフェンに付着させる方法や、水熱還元法によりグラフェン表面に粒子を析出方法と比べて、付着させる粒子の大きさ、付着量、および付着した面積の比率を簡便に制御できる特長を有する。
【0013】
本発明のグラフェン表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の付着量およびグラフェン表面に対する付着した面積の比率は、混合する金属および/または金属化合物を含有する粒子の大きさで変えることができる。
【0014】
本発明の金属および/または金属化合物を含有する粒子としては、例えば、塗料用に一般的に用いられる顔料などが挙げられる。本発明の組成物を保護用塗料として用いる場合、保護する対象との関係により、犠牲防食効果の高い材料を選択することにより、硬化物の耐腐食性をより向上させることができる。例えば、鉄鋼の保護用塗料に用いる場合には、金属および/または金属化合物を含有する粒子として亜鉛粒子を選択することにより、犠牲防食効果によって硬化物の耐腐食性および耐久性をより向上させることができる。
【0015】
本発明の金属および/または金属化合物を含有する粒子は、第一遷移元素であるスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛を含むことが好ましい。これらを2種以上含んでもよい。亜鉛、コバルト、鉄を含むことがより好ましい。これらの中でも、亜鉛粒子は犠牲防食効果が高く、硬化物の耐腐食性をより向上させることができる。また、亜鉛および鉄は酸化グラフェンを還元する作用を有し、酸化還元反応を伴ってグラフェン粒子表面への金属化合物の析出が起こることから、還元反応と金属および/または金属化合物を含有する粒子の付着を同時に行うことができるため好ましい。
【0016】
本発明における金属および/または金属化合物を含有する粒子の形状としては、例えば、球状、フレーク状、薄片状、繊維状、不定形状などが挙げられる。
【0017】
本発明の金属および/または金属化合物を含有する粒子の付着量は、グラフェンに対して1重量%以上300重量%以下であることが好ましい。グラフェン表面に金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着することで、薄層状に剥離したグラフェン粉末同士がネットワークを形成して積層凝集することを抑制する。グラフェン表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の付着量が、グラフェンに対して1重量%未満の場合、グラフェン粉末同士のネットワークにより積層凝集が強固なものとなり、グラフェン粉末の再分散性が低く、グラフェン分散液としたときの塗布性が低下し、塗膜抵抗が高くなる場合がある。20重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。グラフェン表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の付着量が、グラフェンに対して300重量%より多い場合、グラフェン表面に金属および/または金属化合物を含有する粒子が過剰に付着し、グラフェン粉末の再分散性を阻害する場合がある。250重量%以下が好ましく、150重量%以下がより好ましい。本発明の金属および/または金属化合物を含有する粒子の付着量は、後述する測定例2に記載する方法により測定することができる。
【0018】
本発明の金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着するグラフェン表面の面積の比率は、1%以上70%以下であることが好ましい。グラフェン表面に金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着することで、薄層状に剥離したグラフェン粉末同士がネットワークを形成して積層凝集することを抑制する。金属および/または金属化合物を含有する粒子のグラフェン表面被覆率が1%未満の場合、グラフェン粉末同士のネットワークにより積層凝集が強固なものとなり、グラフェン粉末の再分散性が低く、グラフェン分散液としたときの塗布性が低下し、塗膜抵抗が高くなる傾向がある。グラフェン表面被覆率は、10%以上が好ましい。金属および/または金属化合物を含有する粒子のグラフェン表面被覆率が70%より大きい場合、グラフェン表面に金属および/または金属化合物を含有する粒子が過剰に付着し、グラフェン粉末の再分散性を阻害する場合がある。グラフェン表面被覆率は、50%以下が好ましい。本発明の金属および/または金属化合物を含有する粒子が付着するグラフェン表面被覆率は、後述する測定例3に記載する方法により測定することができる。
【0019】
本発明のグラフェン粉末の1層の厚さは、0.3nm以上10nm以下であることが好ましい。グラフェン粉末の1層の厚さの理論上最小値は0.3nmであり、単層のグラフェンであることを示している。一方、グラフェン粉末の1層の厚さを10nm以下とすることで、グラフェン粉末が厚く積層凝集して再分散性が低下することを防止できる。8nm以下がより好ましく、7nm以下がさらに好ましい。本発明のグラフェン粉末の1層の厚さは、後述する測定例4に記載する方法により測定することができる。
【0020】
本発明のグラフェン粉末においては、窒素を含む化合物を表面に有していることが好ましい。窒素原子は化合物に正の電荷をもたらし、グラフェンの有する負電荷に対し、静電的に吸着することができる。窒素を含む化合物は、グラフェン表面の溶媒との親和性を高めることで分散液中での分散性を高めることに寄与する。
【0021】
窒素原子は、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩、含窒素環状化合物に由来することが好ましい。これらに由来する窒素原子を2種以上有してもよいし、それぞれに由来する窒素原子を2つ以上有してもよい。
【0022】
窒素を含む化合物は、低分子であっても高分子であってもよい。耐腐食性をより向上させる観点からは、低分子が好ましく、耐久性をより向上させる観点からは、高分子が好ましい。ここで、低分子とは分子量1000未満の化合物を指し、高分子とは分子量1000以上の化合物を指す。窒素を含む化合物は2種以上用いてもよい。
【0023】
窒素を含む化合物が低分子である場合、窒素を含む化合物をグラフェンに付着させやすくするために、芳香族化合物が好ましく用いられる。芳香族化合物としては、例えば、2-ハロゲン化アニリン、3-ハロゲン化アニリン、4-ハロゲン化アニリン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、アニリン、p-トルイジン、m-トルイジン、o-トルイジン、1-アミノアントラセン、2-アミノアントラセン、9-アミノアントラセン、1-アミノピレン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-イソプロピルアニリン、4-エチルアニリン、4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、4-ニトロアニリン、ジフェニルアミン、N-メチルジフェニルアミン、2,4,6-トリメチルアニリン、4-メトキシアニリン、N-メチルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、ベンズアミド、ドーパミン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジンやこれらの塩類などが挙げられる。
【0024】
また、1,6-ジアミノピレン、1,8-ジアミノピレン、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、1,2,4-トリアミノベンゼンなどのポリアミンも挙げられる。
【0025】
直鎖状または分岐状のポリエーテルアミンも好ましく用いられ、単体で常温において液状またはワックス状であることが好ましい。またポリエーテルアミンは、分散性と耐腐食性と密着性を高める観点から、アミノ基を1つ以上有することが好ましく、2つ以上有していることがより好ましい。
【0026】
前記ポリエーテルアミンの重量平均分子量は140以上10000以下が好ましい。重量平均分子量が140以上であればグラフェン粉末表面への付着性に優れ、200以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。また、重量平均分子量が10000以下であれば付着し過ぎによるダマ化の懸念が少なく、8000以下がより好ましく6000以下がさらに好ましい。
【0027】
前記ポリエーテルアミンはポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン構造を含むことが好ましい。これらの構造は界面活性作用を生じ易くし、溶媒や樹脂とグラフェンとの親和性を高められる。かかる構造を含む市販品の例として、日油株式会社製ポリエチレングリコール#200、#300、#400、#600、#1000、#2000、“ユニオックス”(登録商標)M-400、M-550、M-1000、“ユニオール”(登録商標)D-200、D-250、D-400G、D-700、D-1000、D-1200、D-2000、D-4000などが挙げられる。
【0028】
本発明のグラフェン粉末のX線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)は、0.05以上0.60以下であることが好ましい。O/C比はグラフェン粉末上の官能基量を表し、分散性とグラフェン機能性の指標となる。分散液中での分散性をより高める観点から、O/C比は0.08以上がより好ましい。また、グラフェンの導電性、バリア性、熱伝導性等の機能性をより高める観点から、0.30以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましい。
【0029】
本発明のグラフェン粉末のO/C比は、後述する測定例5に記載する方法により測定することができる。グラフェン粉末のO/C比の調整は、例えば、原料となる酸化グラフェンの酸化度や、還元反応条件による還元度の調整により、前述の範囲に容易に調整することができる。
【0030】
本発明のグラフェン粉末のX線光電子分光法により測定される炭素に対する窒素の原子比(N/C比)は、前述の窒素を含む化合物が含有する窒素の付着量の指標となる。窒素原子を含有する化合物がグラフェンに付着していることにより、グラフェン粉末の溶媒に対する再分散性および分散液中での分散性を高め、塗布性を向上することができる。グラフェン粉末のN/C比は、0.005以上が好ましく、0.007以上がより好ましく、0.010以上がさらに好ましい。一方、グラフェン粉末のN/C比は、意図しない凝集を抑制する観点から、0.200以下が好ましく、0.100以下がより好ましく、0.050以下がさらに好ましい。
【0031】
本発明のグラフェン粉末のN/C比は、後述する測定例6に記載する方法により測定することができる。グラフェン粉末のN/C比は、例えば窒素を含む化合物の付着量により、前述の範囲に容易に調整することができる。
【0032】
<グラフェン分散液>
本発明のグラフェン粉末は、有機溶媒を用いてグラフェン分散液とすることができる。有機溶媒としては後述する硬化性樹脂および/またはその前駆体を溶解可能であり、揮発可能であるものが好ましく、組成物の塗工性に応じて適宜選択することができる。具体的には、鉱油、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、芳香族炭化水素系溶媒およびアルコール系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。芳香族炭化水素系溶媒としては、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、クメン、テトラメチルベンゼン、n-ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、アニソール、フェニルシクロヘキサン、ハロゲン化ベンゼン、などが挙げられ、アルコール系溶媒としては、ヘキサノール、ペンタノール、n-ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0033】
本発明においては、グラフェンの分散性の指標として、グラフェン濃度を0.0065重量%に調整した時の吸光度を測定した。
【0034】
グラフェンの吸光度は、グラフェンの剥離状態および凝集状態によって変化し、単層で凝集のないグラフェンが最も吸光度が高く、積層数の増加や凝集の形成に伴って吸光度は低くなる。波長500nmにおける吸光度が小さいと、グラフェンの剥離度が低く、グラフェンの多くが積層凝集した状態となる。グラフェンの波長500nmにおける吸光度は、1.0以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.6以上がさらに好ましい。一方、グラフェン分散液の過分散による凝集を抑制し、溶媒への分散性を向上させる観点から、グラフェンの波長500nmにおける吸光度は、2.5以下が好ましい。
【0035】
グラフェン分散液の吸光度は、後述する測定例7に記載する方法により測定することができる。また、グラフェン分散液の吸光度を前述の範囲にする手段としては、例えば、前述のグラフェン粉末の項に記載の各条件を調整すること、および後述の製造方法によりグラフェン分散液を得る方法などが挙げられる。
【0036】
<硬化性樹脂および/またはその前駆体>
本発明のグラフェン分散液とともに、硬化性樹脂および/またはその前駆体を含む組成物が好ましく用いられる。硬化性樹脂とは、溶媒の揮発または反応により硬化する樹脂を指し、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂などが挙げられ、塗料組成物用の市販の硬化性樹脂を好適に用いることができる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、塗工性および取り扱い性の観点から、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0037】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂や、これらの変性物として、アクリル変性エポキシ樹脂や、ウレタン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100以上5000以下が好ましい。エポキシ当量が100以上であれば、組成物から得られる塗膜の強度を向上させることができる。一方、エポキシ当量が5000以下であれば、組成物を効率よく硬化させることができる。
【0039】
硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂硬化剤をさらに含有することが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、多官能アミン化合物やポリアミドアミン化合物などが挙げられ、市販のエポキシ樹脂硬化剤を用いることができる。これらを2種以上含有してもよい。エポキシ樹脂硬化剤の活性水素当量は、30以上5000以下が好ましい。活性水素当量が30以上であれば、組成物から得られる塗膜の強度を向上させることができる。一方、活性水素当量が5000以下であれば、組成物を効率よく硬化させることができる。
【0040】
<組成物>
前記組成物に、さらに溶媒や任意の添加剤を含有してもよい。溶媒としては、前記の硬化性樹脂および/またはその前駆体を溶解可能であり、揮発可能であるものが好ましく、組成物の塗工性に応じて適宜選択することができる。
【0041】
本発明の組成物におけるグラフェンの含有量は、組成物の総固形分中、0.01重量%以上5.0重量%以下が好ましい。グラフェンの含有量を0.01重量%以上とすることにより、グラフェンによる遮蔽効果と導電ネットワーク形成により、耐腐食性および耐久性をより向上させることができる。グラフェンの含有量は、組成物の固形分中、0.1重量%以上がより好ましく、0.3重量%以上がさらに好ましい。一方、グラフェンの含有量を5.0重量%以下とすることにより、意図しない凝集を抑制し、耐腐食性および耐久性をより向上させることができる。グラフェンの含有量は、組成物の固形分中、2.5重量%以下がより好ましく、1.0重量%以下がさらに好ましい。
【0042】
<形成物>
本発明のグラフェン粉末を含む形成物は、防錆塗料などのバリア性を有する形成物、または放熱材料などの熱伝導性を有する形成物として好ましく用いられる。一例としては、本発明のグラフェン粉末が有機溶媒に分散されたグラフェン分散液を含む組成物を、シートやフィルムあるいは金属板などを基材とし、前記基材上に膜状に形成して形成物を得ることができる。
【0043】
<グラフェンの製造方法>
本発明のグラフェン粉末は、例えば、酸化グラフェンと窒素を含む化合物とを溶媒中で混合し、金属および/または金属化合物を含有する粒子を添加した後に還元処理を施すことにより作製することができる。
【0044】
[酸化グラフェン]
酸化グラフェンの製造方法としては、例えば、ハマーズ法等が挙げられる。また、市販の酸化グラフェンを購入してもよい。酸化グラフェンの作製方法として、ハマーズ法を用いる場合を以下に例示する。
【0045】
氷浴中、黒鉛(石墨粉)と硝酸ナトリウムを濃硫酸中に入れて撹拌しながら、過マンガン酸カリウムを温度が上がらないように徐々に添加し、25~50℃の温度範囲に保ちながら、0.2~5時間撹拌する。その後、イオン交換水を加えて希釈して懸濁液とし、80~100℃の温度範囲で5~50分間撹拌する。その後、過酸化水素とイオン交換水を加えて1~30分間撹拌して、酸化グラフェン水分散液を得る。得られた酸化グラフェン水分散液を濾過、洗浄し、酸化グラフェンウエットケーキを得る。
【0046】
黒鉛としては、天然黒鉛が好ましく、メッシュ数は5000以下が好ましい。天然黒鉛10gに対して、硝酸ナトリウム添加量は2~8g、濃硫酸添加量は150~300ml、過マンガン酸カリウム添加量は10~40g、過酸化水素添加量は40~80gが好ましく、イオン交換水添加量は過酸化水素添加量の10~20倍が好ましい。酸化グラフェンの酸化度は、例えば、酸化剤である硝酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムの添加量により、所望の範囲に調整することができる。具体的には、黒鉛に対する硝酸ナトリウムの添加量の比(硝酸ナトリウム/黒鉛)は、0.200以上0.800以下が好ましく、黒鉛に対する過マンガン酸カリウムの添加量の比(過マンガン酸カリウム/黒鉛)は、1.0以上4.0以下が好ましい。
【0047】
[表面処理工程]
次に、酸化グラフェンと窒素を含む化合物とを混合し、酸化グラフェンに表面処理剤として窒素を含む化合物を付着させる。酸化グラフェンと窒素を含む化合物を良好に混合するためには、酸化グラフェンと窒素を含む化合物のいずれもが溶媒中に分散している状態で混合することが好ましい。この際、酸化グラフェンと窒素を含む化合物はいずれも完全に溶解している事が好ましいが、一部が溶解せずに固体のまま分散していてもよい。
混合方法としては、ディスパー撹拌式、ローター/ステーター式などを採用した分散機が好ましい。このような分散機としては、例えば、“ラボ・リューション”(登録商標)ホモディスパー2.5型(プライミクス社)、ディスパーサーPH91(エスエムテー社)、“シルバーソンミキサー”(登録商標)L5M-A(シルバーソンニッポン社)などが挙げられる。
【0048】
[還元工程]
次に、溶媒中に金属および/または金属化合物を含有する粒子を混合し、酸化グラフェンを還元する。還元方法としては、化学還元が好ましい。化学還元の場合、還元剤としては、有機還元剤、無機還元剤が挙げられる。これらの中でも、酸化還元作用のある金属および/または金属化合物が好ましく、亜鉛、コバルト、鉄などがより好ましい。亜ジチオン酸ナトリウムや亜ジチオン酸カリウムなどの無機還元剤を併用してもよい。
酸化還元作用の無い金属および/または金属化合物の場合は、無機還元剤として亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウムなどが好ましく用いられる。
【0049】
[濾過濃縮工程]
次に、還元工程で得られたグラフェン分散液を濾過濃縮する。濾過濃縮工程は、還元されたグラフェン分散液の溶媒の一部を吸引濾過により除去する工程である。吸引濾過としては、グラフェンのスタックを抑制する観点から、減圧吸引濾過が好ましい。また、得られたグラフェン分散体を溶媒に再分散して濾過濃縮をするという操作を複数回繰り返してもよい。本発明においては、濾過濃縮工程を2回以上6回以下行うことが好ましい。
【0050】
[乾燥工程]
次に、濾過濃縮工程で得られたグラフェン分散体を乾燥する。乾燥工程は、濾過濃縮工程で残った溶媒を除去して粉末化する工程である。乾燥としては、熱風乾燥や真空乾燥が挙げられるが、グラフェン粉末のスタックを抑制する観点から凍結乾燥が好ましい。
【0051】
<グラフェン分散液の製造方法>
本発明のグラフェン分散液は、例えば、グラフェン粉末を溶媒に再分散することにより作製することができる。
【0052】
[分散工程]
乾燥工程で得られたグラフェン粉末を有機溶媒に再分散させる。本発明においては、分散工程を経たグラフェン分散液は、再度濾過濃縮することが好ましく、グラフェン同士のスタックを解消し、グラフェン粉末の溶媒に対する再分散性および分散液中での分散性をより向上させることができる。
【0053】
分散工程において、グラフェン粉末を有機溶媒に混合したスラリーを、ディスパー撹拌式、ローター/ステーター式などを採用した分散機で撹拌することが好ましい。スラリーを撹拌する時の周速が高いほど、せん断力により積層したグラフェンをより効率的に剥離できるため、スタックを解消し、グラフェン粉末の溶媒に対する再分散性および分散液中での分散性をより向上させることができる。分散工程において得られたグラフェン分散液の固形分濃度は、後述する測定例8に記載する方法により測定することができる。
【0054】
<組成物の製造方法>
次に、グラフェン分散液を用いた組成物の製造方法の例を説明する。例えば、グラフェン分散液を硬化性樹脂および/またはその前駆体、無機粒子、ならびに必要に応じて溶媒や任意の添加剤と混合する方法や、無機粒子、硬化樹脂および/またはその前駆体を含有する市販されている塗料組成物にグラフェンを混合する方法などが挙げられる。前者の方法において、無機粒子とグラフェン分散液を同時に添加して混合してもよいし、別々に添加して混合してもよい。グラフェンの分散性をより高める観点から、硬化性樹脂および/またはその前駆体を溶媒に溶解した溶液に、グラフェンおよび無機粒子を混合することが好ましい。
【0055】
混合装置としては、例えば、ビーズミル、ホモディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー、サンドミルなどのミキサーや混練機などが挙げられる。
【0056】
本発明の組成物が硬化性樹脂前駆体を含有する場合、主剤(例えばエポキシ樹脂)と硬化剤(例えばエポキシ樹脂硬化剤)は、使用直前まで別々の容器に保存されていてもよい。この場合、グラフェンおよび無機粒子は、主剤に含有されていてもよいし、硬化剤に含有されていてもよい。
【0057】
無機粒子としては、塗料用に一般的に用いられる体質顔料などが挙げられる。本発明の組成物を保護用塗料として用いる場合、保護する対象との関係により、犠牲防食効果の高い材料を選択することにより、硬化物の耐腐食性をより向上させることができる。例えば、鉄鋼の保護用塗料に用いる場合には、無機材料として亜鉛粒子を選択することにより、犠牲防食効果により、硬化物の耐腐食性および耐久性をより向上させることができる。
【0058】
無機粒子は、亜鉛、酸化鉄、マイカ、タルク、ベントナイト、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ステンレス、ガラス、アルミニウムを含むことが好ましい。これらを2種以上含んでもよい。
【0059】
無機粒子の形状としては、例えば、球状、フレーク状、薄片状、繊維状、不定形状などが挙げられる。
【0060】
これらの中でも、マイカ、タルク、ベントナイト、薄片状酸化チタン、ステンレスフレーク、ガラスフレーク、アルミフレークは、扁平な形状により遮蔽効果が高く、硬化物の耐腐食性をより向上させることができる。また、亜鉛粒子は、犠牲防食効果が高く、硬化物の耐腐食性をより向上させることができる。亜鉛粒子とともにタルク、ベントナイト、ガラスフレークなどを組み合わせることが好ましく、組成物の粘度や、組成物から得られる塗膜の機械的物性を所望の範囲に容易に調整することができる。
【0061】
無機粒子の平均粒径は、ピンホールなどの欠陥を抑制し、硬化物の耐腐食性をより向上させる観点から、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。一方、無機粒子による遮蔽効果や犠牲防食効果を高め、硬化物の耐腐食性および耐久性をより向上させる観点から、1.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましく、5.0μm以上がさらに好ましい。なお、無機粒子の平均粒径は、既知の粒子粉砕技術を用いて前記範囲に容易に調整できる。また、所望の粒径を有する市販の無機粒子を購入して用いることができる。
【0062】
本発明の形成物は、本発明のグラフェン粉末を含むものであり、本発明の組成物を基材等に所望の形状に成形したものを指す。例えば、乾燥前および乾燥後の塗膜や注型体である。以下にその具体例を示す。
【0063】
本発明のグラフェン分散液を含有する組成物は、塗布や注型などで成形し、乾燥または反応により硬化することで、グラフェンのバリア性、熱伝導性、導電性などの機能を付与したコンポジット材料として利用することができる。また、金属基材に対して膜状に組成物を形成することで効果が得られやすくなる。
【0064】
本発明において、バリア性を有する形成物とは、例えば、耐腐食性を有する塗料等のコーティング材料、ガス等の透過を抑制する物質透過抑制材料などを指す。また、熱伝導性を有する形成物とは、例えば、熱拡散性材料、放熱材料、熱反射材料、発熱材料などを指す。
【0065】
本発明のグラフェンは、樹脂中での混合性と結合性に優れるため、特に塗膜やフィルム形状で用いた場合に、その効果が得られやすい。塗膜やフィルムを形成した際、樹脂の硬化に伴う収縮等の影響によりグラフェンと樹脂との界面に応力がかかり、欠点を生じやすい場合があるが、本発明のグラフェンを用いることでグラフェンと樹脂の結合性が高められ、欠点の発生を抑制することができる。さらに、本発明のグラフェンは分散性・混合性に優れるため、グラフェンが均一に分布することでグラフェンの機能性を効率よく発揮することができる。
【0066】
従って、本発明のグラフェン分散液を含有する組成物は、例えば、コーティング膜、電極、熱伝導体として好適に利用できる。コーティング膜としては、例えば耐腐食塗料、防水塗料、ガスバリア膜、耐衝撃膜などの利用が挙げられる。電極としては、電池用電極、センサー用電極などの利用が挙げられる。熱伝導体としては、電子機器等の放熱材料、配管等の散熱被覆材、建造物の冷却や凍結防止材などの利用が挙げられる。
【0067】
前記金属基材として、例えば、ガスバリア用の金属蒸着フィルム、アルミ箔や銅箔などの電極基材、各種電子部品などの金属筐体や部材、鋼鉄製の筐体や構造物(自動車や船舶などの乗り物、橋梁や鉄橋などの建造物、工場設備等)が挙げられる。
【0068】
本発明の組成物は、基材上に塗布し、乾燥することにより形成される塗膜として好適に用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケーター塗布、バーコート塗布、スピンコート塗布、ローラー塗布、刷毛塗り、スプレー塗布などが挙げられる。乾燥方法は、溶媒と樹脂および用途に応じて適宜選択することができ、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥などが挙げられる。
【0069】
本発明の組成物を、例えば亀裂の中に注入し、乾燥および/または架橋反応により硬化させて用いてもよい。注入および硬化方法としては、既知の手法を用いることができる。
【0070】
本発明の組成物を、基材上に膜状に形成してなる形成物は、耐腐食性および耐久性などのバリア性に優れる。バリア性の指標のひとつとして、水蒸気透過率や酸素透過率が低いことが好ましい。具体的には、後述する測定例11に記載の方法により測定した水蒸気透過率は、300g/m・24h以下が好ましく、250g/m・24h以下がより好ましく、225g/m・24h以下がさらに好ましい。水は酸素のキャリアとなるため、水蒸気透過率が低いほど、酸素透過率も低くなる傾向にある。
【0071】
バリア性の別の指標として、腐食の起きにくさを表す腐食電位が低いことが好ましい。具体的には、後述する測定例12に記載の方法により測定した腐食電位は、-0.9V以下が好ましく、-1.0V以下がより好ましい。
【0072】
バリア性の指標として、後述する測定例13に記載の方法により耐塩水噴霧試験を行ったときの、スコア3(切れ込み部の赤錆の幅が2mm)に到達する時点までの時間がより長いことが好ましい。耐塩水噴霧試験スコア3到達時間は、亜鉛による犠牲防食効果の存在下では大きく延長される。このため、組成物が亜鉛を含まない場合においては、耐塩水噴霧試験スコア3到達時間は、500h以上が好ましく、600h以上がより好ましく、700h以上がさらに好ましい。一方、組成物が亜鉛を含む場合においては、耐塩水噴霧試験スコア3到達時間は、2000h以上が好ましく、2500h以上がより好ましい。
【実施例0073】
以下に実施例を用いて本発明を説明する。まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。
【0074】
[測定例1:金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径(nm)]
各実施例および比較例により作製したグラフェン粉末表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径は、電子顕微鏡観察により測定した。各実施例および比較例により作製したグラフェン粉末を、n-ブタノールを用いて0.0065重量%に希釈し、アルミ箔上に1μLを滴下・乾燥し、アルミ箔上に付着させた。アルミ箔上のグラフェン粉末を電界放出形走査電子顕微鏡FE-SEM S-5500(日立ハイテク社)を用いて2万倍の倍率で観察し、グラフェン粉末表面に付着した個々の金属および/または金属化合物を含有する粒子の最長径と最短径を無作為に30個の粒子について測定し、相加平均を算出した。これを無作為に30個のグラフェン粉末について行い、その平均をグラフェン粉末表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒径とした。
【0075】
[測定例2:金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒子付着量(重量%)]
各実施例および比較例により作製したグラフェン粉末表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子の付着量は、ICP発光分光分析法により測定した。前述のグラフェンの製造方法における濾過濃縮工程で得られたグラフェン分散体を溶媒に再分散し、小型遠心分離機H-112(コクサン社)を用いて5000rpmでグラフェンと金属および/または金属化合物を含有する粒子とに遠心分離し、上澄み液側のグラフェンを凍結乾燥により乾燥してグラフェン粉末を得た。グラフェン粉末4~5mgを白金るつぼに秤量し、硫酸を加えてホットプレートおよびバーナーで加熱灰化した。得られた灰化物を炭酸ナトリウムで溶解し、水を加えて加熱溶解した後、硝酸を加えて水で定容した。この溶液について、ICP発光分光分析法により金属および/または金属化合物の量を測定し、グラフェン粉末表面に付着した金属および/または金属化合物の量を定量した。
【0076】
[測定例3:粒子付着被覆率(%)]
各実施例および比較例により作製したグラフェン粉末表面に付着した金属および/または金属化合物を含有する粒子における粒子付着被覆率は、SEM-EDX分析(走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分析)による元素マッピングからピクセル数で算出した。各実施例および比較例により作製したグラフェン粉末を、n-ブタノールを用いて0.0065重量%に希釈し、マイカ上に1μLを滴下・乾燥し、マイカ上に付着させた。マイカ上のグラフェン粉末を電界放出形走査電子顕微鏡FE-SEM S-5500(日立ハイテク社)を用いてグラフェン粒子1枚が観察視野全面に入るように倍率を調整して観察し、EDAX Genesis(アメテック社)を用いてEDX分析により元素マッピングを行った。得られた対象となる元素マッピング像を2値化処理し、元素マッピング像全体のピクセル数に対する対象となる元素に由来する信号が検出されたピクセル数から、グラフェン表面に対する金属および/または金属化合物を含有する粒子の粒子付着被覆率を算出し、異なる10個のグラフェン粒子の粒子付着被覆率の相加平均を求めた。
【0077】
[測定例4:グラフェン粉末の平均厚さ(nm)]
各実施例および比較例により作製したグラフェン粉末を有機溶媒で0.01重量%に希釈し、“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス社)を用いて、回転速度40m/s(せん断速度:毎秒20000)で60秒間処理してグラフェン希釈液を得た。グラフェン希釈液をマイカ上に滴下、乾燥し、グラフェンをマイカ上に付着させた。マイカ上のグラフェンを、原子間力顕微鏡(Dimension Icon;Bruker社)を用いて、視野範囲1~10μm四方程度に拡大観察して、無作為に選択した10個のグラフェンについて、それぞれ厚さを測定した。各グラフェンの厚さは、それぞれのグラフェンにおいて無作為に選択した5箇所の厚みの測定値の算術平均値とし、さらに10個のグラフェンの厚さの算術平均値を求めることにより、グラフェン粉末の1層の平均厚さを算出した。
【0078】
[測定例5:X線光電子分光法によるO/C比の測定]
各実施例および比較例により作製したグラフェン粉末について、X線光電子分光分析装置Quantera SXM (アルバック・ファイ社)を用いて光電子スペクトル測定した。励起X線は、monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)とし、X線径は200μm、光電子脱出角度は45°とした。炭素原子に基づくC1sメインピークを284.3eVとし、酸素原子に基づくO1sピークを533eV付近のピークに帰属した。O1sピークとC1sピークの面積比からO/Cを算出し、得られた値の小数点第3位を四捨五入して小数点第2位まで求めた。
【0079】
[測定例6:X線光電子分光法によるN/C比の測定]
各実施例および比較例により作製したグラフェン粉末について、X線光電子分光分析装置Quantera SXM (アルバック・ファイ社)を用いて、光電子スペクトル測定した。励起X線は、monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)とし、X線径は200μm、光電子脱出角度は45°とした。炭素原子に基づくC1sメインピークを284.3eVとし、窒素原子に基づくN1sピークを402eV付近のピークに帰属した。N1sピークとC1sピークの面積比からN/Cを算出し、得られた値の小数点第4位を四捨五入して小数点第3位まで求めた。
【0080】
[測定例7:吸光度]
各実施例および比較例により作製したグラフェン分散液について、“UV7”(登録商標)分光光度計(メトラー・トレド社)を用いて吸光度を測定した。セルは光路長10mmの石英製を用いた。各実施例および比較例により作製したグラフェン分散液に、グラフェン濃度が0.0065重量%となるように各実施例および比較例で用いた有機溶媒を加え、出力130W、発振周波数40kHzの超音波洗浄機(ASU-6M、アズワン社)を用いて出力設定Highで10分間処理した希釈液を用いて、濃度調整に用いた有機溶媒で事前にベースライン測定をした上で測定した。
【0081】
[測定例8:固形分濃度(重量%)]
各実施例および比較例により作製したグラフェン分散液を重量既知のアルミカップに乗せて重量を測定した後、温度を120℃に設定したホットプレート上で1.5時間加熱して溶媒を揮発させた。加熱前のグラフェン分散液の重量と、加熱前後の重量差から算出した溶媒揮発量から、グラフェン分散液の固形分濃度を算出した。これを3回繰り返し、平均値を求めた。
【0082】
合成例1により作製した酸化グラフェンウエットケーキの固形分濃度は、温度を100℃に調整する他はグラフェン分散液の固形分濃度測定と同様にして測定した。
【0083】
各実施例および比較例により作製したグラフェン分散液は、還元工程で混合した金属および/または金属化合物を含有する粒子が含まれる。グラフェンのみの固形分濃度に着目する場合は、還元工程で混合した金属および/または金属化合物を含有する粒子の配合比から算出した。
【0084】
[測定例9:塗膜抵抗(Ω・cm)]
各実施例および比較例により作製したグラフェン分散液を、後述する評価例1に記載した方法で塗布し、熱風乾燥炉を用いて80℃で1時間乾燥した後、200℃で2時間乾燥して溶媒を除去し、乾燥塗布膜を得た。乾燥塗布膜にしたグラフェンについて、低抵抗率計“ロレスタ-GX”(登録商標)MCP-T700(日東精工アナリテック社)を用いて塗膜抵抗を測定した。
【0085】
[測定例10:欠陥の数]
各実施例および比較例により作製した組成物を、A4サイズ50μm厚のPETフィルム上に、スプレーを用いて塗布した後、室温で乾燥し、1週間静置して硬化させ、100μm厚の硬化膜を形成した。得られた硬化膜の表面を、光学顕微鏡を用いて、100倍に拡大観察し、無作為に選択した10箇所について、ひび割れ(クラック)、孔(ピンホール)などの欠陥の有無を観察し、欠陥の認められた箇所の数により耐腐食性を評価した。欠陥の認められた箇所が少ないほど、耐腐食性に優れる。
【0086】
[測定例11:水蒸気透過率(g/m・24h)]
測定例10と同様にして、A4サイズ50μm厚のPETフィルム上に100μm厚の硬化膜を形成した。硬化膜面を下に向け、PETフィルム側を引き上げながら硬化膜を剥離した。得られた硬化膜を12cm角に裁断し、チャンバーのパッキンに触れる部位をアルミテープで保護して、水蒸気透過率測定器PERMATRAN-W 3/33MG+(MOCON社)に設置した。等圧法、チャンバー内温度20℃、相対湿度90%の条件下で水蒸気透過率を測定した。水蒸気透過率が低いほど、耐腐食性に優れる。
【0087】
[測定例12:腐食電位(V)]
各実施例および比較例により作製した組成物を、15cm×7cm×0.8cm厚の大きさのサンドブラスト処理した一般構造用圧延鋼板(材質:SS400)に、スプレーガンを用いて塗布し、室温で乾燥し、1日静置し、硬化膜を形成した。硬化膜の厚さは80±10μmとなるように調整した。硬化膜が形成されていない基材露出箇所には、刷毛を用いて、市販の防錆塗料(日本ペイント社“ジンキー”(登録商標)8000HB)を塗り、乾燥後1週間静置して硬化させ、試験板を得た。ポテンショスタットModel1480A(Solartron analytical社)の作用極に試験板、対極に白金電極、参照極に銀塩化銀電極を接続した。試験板を、500mLビーカー中に入れた室温の3.5重量%塩化ナトリウム水溶液(pH=7)300mL中に浸漬し、測定を開始した。測定は、まず初期900秒間Open Circuitで安定化させた後、次に電圧掃引モードで-0.2Vから+0.5Vまで0.003V/sの速度で掃引し、電流値を測定した。得られた電流値の絶対値をプロットし、電流値が極小となった時の電圧を腐食電位とした。腐食電位が低い(絶対値が大きい)ほど、耐腐食性に優れる。
【0088】
[測定例13:耐塩水噴霧時間(h)]
測定例12と同様にして試験板を得た。当該試験板の中央部に、長さ5cm、深さ0.5~1.0mmの直線状の切れ込みを入れ、塩水噴霧試験装置(STP-30 スガ試験機社)にセットした。35℃に加温された5重量%塩化ナトリウム水溶液(pH=7)を用いて、塩水噴霧試験を開始した後、各サンプルの錆の発生状況に応じて下記の通りスコア付けを行い、その経時変化を記録し、スコア3に到達した時間から、耐久性を評価した。
スコア0:初期状態に近く赤錆が観察されない。亜鉛を用いている場合は、犠牲防食効果により白錆が見られるが赤錆は見られない状態を指す。
スコア1:切れ込み箇所全体に赤錆が見られる。
スコア2:切れ込み箇所全体に幅2mm未満の赤錆が見られ、かつ切れ込み部周辺に硬化膜の膨れまたは切れ込み箇所以外に孔食が生じ赤錆が見られる箇所が一つ以上ある。
スコア3:切れ込み部周辺に複数の膨れや孔食が見られ、かつ切れ込み部の赤錆の幅が2mm以上である。
【0089】
[評価例1:ペースト塗布性]
各実施例および比較例により作製したグラフェン分散液を、ドクターブレード(300μm)を用いて厚さ130μmの“カプトン”(登録商標)ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社)上に塗布し、塗布膜表面の目視観察により、分散性の評価指標となる塗布性を5段階で評価した。判断基準は以下の通りとし、3点以上であれば分散性が良好であると判断した。
5点:塗布膜表面の塗布ムラやカスレが認められない
4点:塗布膜表面の面積の概ね95%に塗布ムラやカスレが認められない
3点:塗布膜表面の面積の概ね90%以上95%未満に塗布ムラやカスレが認められない
2点:塗布膜表面の面積の概ね80%以上90%未満に塗布ムラやカスレが認められない
1点:塗布膜表面に塗布ムラやカスレが多い。
【0090】
[合成例1:酸化グラフェン分散液の作製方法]
1500メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社)を原料として、氷浴中の10gの天然黒鉛粉末に、220mlの98%濃硫酸、5gの硝酸ナトリウム、30gの過マンガン酸カリウムを入れ、1時間撹拌し、混合液の温度を20℃以下に保持した。この混合液を氷浴から取り出し、35℃の水浴中で4時間撹拌し、その後イオン交換水500mlを入れて、得られた懸濁液を90℃でさらに15分間撹拌を行った。最後に600mlのイオン交換水と50mlの過酸化水素を入れ、5分間撹拌し、酸化グラフェン分散液を得た。得られた酸化グラフェン分散液を濾過し、希塩酸溶液で金属イオンを洗浄し、イオン交換水で酸を洗浄し、pHが7になるまで洗浄を繰り返し、吸引濾過により濃縮して酸化グラフェンウエットケーキを作製した。作製した酸化グラフェンウエットケーキの、測定例8により測定した固形分濃度は45重量%であった。得られた酸化グラフェンウエットケーキ11.1g(酸化グラフェン固形分5g)にイオン交換水988.9gを混合し、ローター/ステーター式シルバーソンミキサーL5M-Aを用いて、回転数10000rpmで30分間撹拌して、酸化グラフェン濃度0.5重量%の酸化グラフェン分散液1000gを得た。
【0091】
[実施例1]
(グラフェン粉末の作製方法)
表面処理剤混合工程:合成例1により作製した酸化グラフェン分散液1000gに水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整し、表面処理剤としてドーパミン塩酸塩2.5gを混合し、ローター/ステーター式シルバーソンミキサーL5M-Aを使用して、回転数10000rpmで30分間撹拌した。
【0092】
還元工程:表面化処理後の酸化グラフェン分散液に、平均粒径10μmの亜鉛粉末10.0gを入れて、ローター/ステーター式シルバーソンミキサーL5M-Aを使用して回転数10000rpmで30分間撹拌して還元反応を行い、グラフェン分散液を得た。
【0093】
濾過濃縮:得られたグラフェン分散液を、減圧吸引濾過器を用いて濾過し、グラフェン分散体を得た。得られたグラフェン分散体100.0gにイオン交換水1000gを混合し、ローター/ステーター式シルバーソンミキサーL5M-Aを使用して、回転数10000rpmで10分間撹拌し、再分散を実施した。得られたグラフェン再分散液に、2回目の濾過濃縮工程を実施してグラフェン分散体を得た。測定例8により測定したグラフェン分散体の固形分濃度は12.4重量%、グラフェンのみに着目した固形分濃度は3.0重量%であった。
【0094】
乾燥工程:得られたグラフェン分散体10gにイオン交換水90gを混合し、ローター/ステーター式シルバーソンミキサーL5M-Aを使用して、回転数10000rpmで5分間撹拌し、再分散を実施した。得られたグラフェン分散液100gを、1000mLのナス型フラスコに入れ、ナス型フラスコ内壁に薄く付着するように液体窒素で凍結させ、“EYELA”(登録商標)凍結乾燥機FDU-1200(東京理科器械社)を用いて、温度―30℃以下、圧力30Pa以下の条件で12時間凍結乾燥を実施し、グラフェン粉末を得た。必要量のグラフェン粉末が得られるまで、この操作を複数回実施した。
【0095】
得られたグラフェン粉末について、測定例1~6に記載の方法によりグラフェン粉末の物性を測定し、結果を表2に記載した。
【0096】
(グラフェン分散液の作製方法)
得られたグラフェン粉末12.38gとn-ブタノール187.62gを混合し、ローター/ステーター式シルバーソンミキサーL5M-Aを使用して、回転数10000rpmで10分間撹拌してグラフェン分散液を得た。得られたグラフェン分散液の固形分濃度は6.2重量%、グラフェンのみに着目した固形分濃度は1.5重量%であった。
【0097】
得られたグラフェン分散液について、測定例7および測定例9に記載の方法によりグラフェン分散液の物性を測定し、結果を表2に記載した。また、評価例1に記載の方法により、グラフェン分散液を評価し、その結果を表2に記載した。
【0098】
(組成物の作製方法)
エポキシ樹脂としてDIC(株)製“エピクロン”(登録商標)1050(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450-500g/eq)8.2gを秤量し、18gのキシレンおよび2gのn-ブタノールを加え、90℃に加温して溶解させた後、ラボ・リューションホモディスパー2.5型を用いて、回転数3000rpmで20分間撹拌した。得られた溶液に、林純薬工業(株)製亜鉛粉末(平均粒径10μm)79.7gと、前述の方法により得られたグラフェン分散液7.0g(組成物中の固形総重量に対しグラフェン含有量0.1重量%)を添加し、ラボ・リューションホモディスパー2.5型を用いて、回転数3000rpmで30分間撹拌した。エポキシ樹脂硬化剤としてハリマ化成グループ株式会社製ニューマイド515(商品名)11.7g(ポリアミドアミン、活性水素当量185、固形分70重量%、固形重量8.2g)を添加し、ベントナイト3.5gを加えて、さらにラボ・リューションホモディスパー2.5型を用いて、回転数3000rpmで10分間撹拌して均一化し、組成物を作製した。
【0099】
得られた組成物について、測定例10~13に記載の方法により耐腐食性および耐久性を評価し、その結果を表2に記載した。
【0100】
[実施例2]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の平均粒径を2μmに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0101】
[実施例3]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の平均粒径を5μmに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0102】
[実施例4]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の平均粒径を20μmに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0103】
[実施例5]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の平均粒径を30μmに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0104】
[実施例6]
実施例1のグラフェン分散液の作製において、有機溶媒をキシレンに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0105】
[実施例7]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、表面処理工程で表面処理剤をフェニルエチルアミン塩酸塩に変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0106】
[実施例8]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、表面処理工程で表面処理剤を1,4-フェニレンジアミンに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0107】
[実施例9]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、表面処理工程で表面処理剤を混合しなかった以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0108】
[実施例10]
合成例1において酸化度を変更したこと以外は実施例1と同様にして酸化グラフェン分散液を作製し、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0109】
[実施例11]
合成例1において酸化度を変更したこと以外は実施例1と同様にして酸化グラフェン分散液を作製し、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0110】
[実施例12]
実施例1の組成物の作製において、グラフェン分散液の添加量を3.5g(組成物中の固形総重量に対しグラフェン含有量0.05重量%)に変え、亜鉛粉末の添加量を79.9gに変えた以外は同様にして、組成物を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0111】
[実施例13]
実施例1の組成物の作製において、グラフェン分散液の添加量を35.0g(組成物中の固形総重量に対しグラフェン含有量0.5重量%)に変え、亜鉛粉末の添加量を78.1gに変えた以外は同様にして、組成物を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0112】
[実施例14]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の平均粒径を40μmに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0113】
[実施例15]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の平均粒径を50μmに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0114】
[実施例16]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の添加量を5.0gに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0115】
[実施例17]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、表面処理工程で表面処理剤の添加量を0.9gに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0116】
[比較例1]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の平均粒径を80μmに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0117】
[比較例2]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末の平均粒径を1μmに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0118】
[比較例3]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、還元工程で亜鉛粉末を亜ジチオン酸ナトリウムに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0119】
[比較例4]
実施例1のグラフェン粉末の作製において、合成例1により作製した酸化グラフェン分散液1000gを、グラフェンナノプレートレット粉末5.0gをイオン交換水995.0gに混合してローター/ステーター式シルバーソンミキサーL5M-Aを用いて回転数10000rpmで30分間撹拌したグラフェン分散液1000gに変えた以外は同様にして、グラフェン粉末およびグラフェン分散液を作製した。得られたグラフェン粉末、グラフェン分散液および組成物について、前述の方法により評価した結果を表2にまとめた。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】