(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028036
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】多層フィルム、並びにこれを用いた積層体、包装袋及び包装製品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250220BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20250220BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20250220BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/027
B32B7/022
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135704
(22)【出願日】2024-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2023132260
(32)【優先日】2023-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】石井 萌
(72)【発明者】
【氏名】江島 優希
(72)【発明者】
【氏名】落合 信哉
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA26
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA40
3E064BA54
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC13
3E064BC18
3E064EA30
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK04D
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AK69
4F100AK69A
4F100AR00E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00D
4F100EH20
4F100GB15
4F100JA04
4F100JA04A
4F100JB16
4F100JB16A
4F100JD02
4F100JD02E
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK07B
4F100JL11
4F100JL11D
4F100JL12
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】積層体に対して優れた製袋適性を付与でき、優れた視認性を有することが可能な多層フィルム、並びにこれを用いた積層体、包装袋及び包装製品を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含む最表層と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン層とを備える多層フィルムであって、熱可塑性樹脂が160℃以上の融点を有し、ポリエチレン層が、ポリエチレン層の厚さ方向の断面においてナノインデンテーション法により測定される複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層を含む、多層フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む最表層と、
ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン層とを備える多層フィルムであって、
前記熱可塑性樹脂が160℃以上の融点を有し、
前記ポリエチレン層が、前記ポリエチレン層の厚さ方向の断面においてナノインデンテーション法により測定される複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層を含む、多層フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン層全体の厚さに占める前記高弾性率層の厚さの割合が50%以上である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記多層フィルム全体の厚さに占める前記最表層の厚さの割合が3%以上である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した前記ポリエチレン層の結晶化度が35%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
多層フィルム及びシーラント層を備え、
前記シーラント層がポリエチレン系樹脂を含み、
前記多層フィルムが、請求項1に記載の多層フィルムで構成され、
前記多層フィルムにおいて、前記ポリエチレン層が前記シーラント層側に配置されている、積層体。
【請求項6】
前記積層体全体中のポリエチレン系樹脂の質量割合が90質量%以上である、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記多層フィルムと前記シーラント層との間に第1接着層を更に備える、請求項5に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1接着層と前記シーラント層との間に、前記第1接着層側から、中間層及び第2接着層をこの順にさらに備え、
前記中間層がポリエチレン系樹脂を含む、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記多層フィルムと前記中間層との間にガスバリア層を更に備える、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記中間層と前記シーラント層との間にガスバリア層を更に備える、請求項8に記載の積層体。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか一項に記載の積層体を製袋して得られる、包装袋。
【請求項12】
請求項11に記載の包装袋と、前記包装袋内に収容される内容物とを備える、包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層フィルム、並びにこれを用いた積層体、包装袋及び包装製品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装袋は一般に、基材層及びシーラント層を備える積層体を製袋して得られる。このような積層体として、保護層、基材層及びシーラント層をこの順に備える積層体であって、基材層及びシーラント層がポリエチレンを含み、保護層が熱硬化性樹脂又は融点160℃以上の樹脂を含み、積層体全体に占めるポリエチレンの割合が90質量%以上である積層体が知られており(下記特許文献1参照)、この積層体により、リサイクル適性及びヒートシール性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積層体には、層間に印刷層が設けられる場合があり、その場合には、少なくとも基材層において、印刷層に対する高い視認性が求められる。
しかし、上記特許文献1に記載された積層体では、十分に高い視認性が得られない場合があった。また、上記積層体では、十分に高い視認性が得られても、製袋適性が十分でない場合があった。
すなわち、上記特許文献1に記載の積層体は、優れた製袋適性及び視認性を同時に満足させる点で改善の余地を有していた。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、積層体に対して優れた製袋適性を付与でき、優れた視認性を有することが可能な多層フィルム、並びにこれを用いた積層体、包装袋及び包装製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一側面は、熱可塑性樹脂を含む最表層と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン層とを備える多層フィルムであって、前記熱可塑性樹脂が160℃以上の融点を有し、前記ポリエチレン層が、前記ポリエチレン層の厚さ方向の断面においてナノインデンテーション法により測定される複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層を含む、多層フィルムを提供する。
上記多層フィルムによれば、積層体に対して優れた製袋適性を付与でき、優れた視認性を有することが可能となる。
上記多層フィルムによって上記効果が得られる理由は、定かではないが、以下のとおりではないかと考えられる。
すなわち、ポリエチレン層に含まれる高弾性率層の複合弾性率が1.4GPa以上であることで、ポリエチレン層の密度が全体として高くなり、熱に対して軟化しにくくなる。
そのため、ヒートシール時にポリエチレン層の形状を維持でき、ポリエチレン層の収縮や歪み、膜厚の変動が抑制できる。
また、最表層の融点が160℃以上になることで、積層体のヒートシール時に最表層自体が溶融しにくくなる。また、最表層が160℃以上という高い融点を有しており、ヒートシール時に最表層自体が溶融しにくくなることで、最表層がシールバーへ貼りついたり、最表層に皺が入ったりすることを抑制できる。そのため、多層フィルムは、ヒートシール時にヒートシール温度がばらついても、積層体に対して優れた製袋適性を付与できるのではないかと考えられる。
また、ポリエチレン層に含まれる高弾性率層の複合弾性率が2.4GPa未満であることで、高弾性率層の密度が高くなりすぎず、多層フィルムの視認性が低下しにくくなる。
その結果、多層フィルムは、優れた視認性を有することが可能となるのではないかと考えられる。
以上のことから、上記多層フィルムにより上記の効果が得られるのではないかと考えられる。
なお、ポリエチレン層に含まれる高弾性率層の複合弾性率が1.4GPa未満であると、ヒートシール時に押し込まれた部分の膜厚が小さくなり、破断、融着、凹み等による製袋不良が発生しやすくなる。
【0007】
上記多層フィルムにおいては、前記ポリエチレン層全体の厚さに占める前記高弾性率層の厚さの割合が50%以上であることが好ましい。
この場合、ポリエチレン層全体に占める高弾性率層の厚さの割合が高くなることで、高弾性率層の寄与度を高めることができる。このため、多層フィルムは、積層体に対してより優れた製袋適性を付与できる。
【0008】
上記多層フィルムにおいては、前記多層フィルム全体の厚さに占める前記最表層の厚さの割合が3%以上であることが好ましい。
この場合、多層フィルム全体の厚さに占める最表層の厚さの割合が高くなることで、最表層の寄与度を高めることができる。このため、多層フィルムは、積層体に対してより優れた製袋適性を付与できる傾向がある。
上記多層フィルムにおいては、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した前記ポリエチレン層の結晶化度が35%未満であることが好ましい。
ポリエチレン層の結晶化度が35%未満であると、ポリエチレン層の表面近傍の部分が剥離しにくくなり、最表層やポリエチレン層上に形成される接着剤層とポリエチレン層との間の密着強度を向上させることができる。
【0009】
本開示の他の側面は、多層フィルム及びシーラント層を備え、前記シーラント層がポリエチレン系樹脂を含み、前記多層フィルムが、上述した多層フィルムで構成され、前記多層フィルムにおいて、前記ポリエチレン層が前記シーラント層側に配置されている、積層体を提供する。
上記積層体によれば、優れた製袋適性及び視認性を有することが可能となる。
【0010】
上記積層体においては、前記積層体全体中のポリエチレン系樹脂の質量割合が90質量%以上であることが好ましい。
この場合、リサイクル適性をより向上させることができる。
【0011】
上記積層体は、前記多層フィルムと前記シーラント層との間に第1接着層を更に備えてよい。
【0012】
上記積層体は、前記第1接着層と前記シーラント層との間に、前記第1接着層側から、中間層及び第2接着層をこの順にさらに備え、前記中間層がポリエチレン系樹脂を含むことが好ましい。
この場合、積層体全体中のポリエチレン系樹脂の質量割合をより高めやすくなる。
【0013】
上記積層体は、前記多層フィルムと前記中間層との間にガスバリア層を更に備えることが好ましい。
この場合、積層体のガスバリア性をより向上させることができる。
【0014】
上記積層体は、前記中間層と前記シーラント層との間にガスバリア層を更に備えることが好ましい。
この場合、積層体のガスバリア性をより向上させることができる。
【0015】
本開示のさらに他の側面は、上述した積層体を製袋して得られる、包装袋を提供する。
上記包装袋は、上述した積層体を製袋して得られ、積層体は、優れた製袋適性を有するため、優れた外観を有し、かつ、優れた視認性をも有することが可能となる。
【0016】
本開示の別の側面は、上記包装袋と、前記包装袋内に収容される内容物とを備える、包装製品を提供する。
上記包装袋は、上述した積層体を製袋して得られ、積層体は、優れた製袋適性を有するため、優れた外観を有し、かつ、優れた視認性をも有することが可能となる。そのため、包装製品も優れた外観を有し、かつ、内容物を視認しやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、積層体に対して優れた製袋適性を付与でき、優れた視認性を有することが可能な多層フィルム、並びにこれを用いた積層体、包装袋及び包装製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の多層フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本開示の積層体の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】本開示の包装製品の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<多層フィルム>
まず、本開示の多層フィルムの実施形態について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本開示の多層フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図1に示される多層フィルム10は、熱可塑性樹脂を含む最表層11と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン層12とを備える。
最表層11の熱可塑性樹脂は160℃以上の融点を有し、ポリエチレン層12は、ポリエチレン層12の厚さ方向の断面においてナノインデンテーション法により測定される複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層を含む。
【0021】
上記多層フィルム10によれば、当該多層フィルム10及びシーラント層を備える積層体に対して優れた製袋適性を付与でき、優れた視認性を有することが可能となる。
【0022】
以下、最表層11及びポリエチレン層12について詳細に説明する。
【0023】
(最表層)
最表層11は、160℃以上の融点を有する熱可塑性樹脂を含む層である。160℃以上の融点を有する熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂及びポリエチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン及びブロックポリプロピレンなどが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリブチレンナフタレート(PBN)などが挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,ナイロン9T、ナイロン10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11及びナイロン12等が挙げられる。
なお、熱可塑性樹脂は、160℃以上の融点を有していればよく、160℃未満の融点を有する熱可塑性樹脂と160℃以上の融点を有する熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。
また、熱可塑性樹脂の融点とは、熱可塑性樹脂が1種類の樹脂で構成される場合にはその樹脂の融点をいい、熱可塑性樹脂が複数種類の樹脂の混合物で構成され、複数の融点を有する場合には、複数の融点のうち最も高い融点をいう。
【0025】
熱可塑性樹脂の融点は、160℃以上であればよい。熱可塑性樹脂の融点が160℃以上であることで、優れた製袋適性を上記積層体に付与することができる。
熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、特に好ましくは220℃以上である。
熱可塑性樹脂の融点は、270℃以下であってよく、260℃以下又は240℃以下であってよい。
【0026】
最表層11は、必要に応じ、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、光安定剤、滑剤、粘着付与剤、静電防止剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0027】
最表層11の厚さは、特に制限されるものではなく、製造方法や装置に由来する適性、及び他の層との積層適性を考慮しつつ、コストや用途に応じて適宜決定できる。最表層11の厚さは、より優れた製袋適性を上記積層体に付与する観点からは、好ましくは0.7μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、特に好ましくは2μm以上である。
最表層11の厚さは、リサイクル適性をより向上させる観点からは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、特に好ましくは6μm以下である。
【0028】
多層フィルム10全体の厚さに占める最表層11の厚さの割合R1は、特に制限されるものではないが、好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上である。R1が高くなることで、最表層11の寄与度を高めることができる。このため、多層フィルム10は、上記積層体に対してより優れた製袋適性を付与できる傾向がある。
R1は、リサイクル適性をより向上させる観点からは、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、特に好ましくは10%以下である。
【0029】
(ポリエチレン層)
ポリエチレン層12は、ポリエチレン層12の厚さ方向の断面においてナノインデンテーション法により測定される複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層を含む。
高弾性率層の複合弾性率は、1.4GPa以上2.4GPa未満であればよいが、好ましくは1.6GPa以上であり、より好ましくは1.8GPa以上であり、特に好ましくは2.0GPa以上である。
高弾性率層の複合弾性率は、2.3GPa以下又は2.2GPa以下であってもよい。高弾性率層の複合弾性率は、特に手段は限定されるものではないが、例えば高密度ポリエチレン樹脂の単独使用または複数種類での使用、延伸処理、添加剤の使用などによって調整することができる。
【0030】
ポリエチレン層12は、複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層は、単層でも複数の層の積層体でもよい。
【0031】
ポリエチレン層12は、複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層のみで構成されてもよく、複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層と、複合弾性率が1.4GPa未満である低弾性率層との積層体で構成されてもよい。ここで、例えば最表層11に接する層は低弾性率層であっても、高弾性率層であってもよい。
ポリエチレン層12は、複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層と、複合弾性率が2.4GPa以上である超高弾性率層との積層体で構成されてもよい。
【0032】
ポリエチレン層12は、ポリエチレン系樹脂を含む。ポリエチレン系樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリエチレン系樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0033】
ポリエチレン層12は、必要に応じ、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、光安定剤、滑剤、粘着付与剤、静電防止剤をさらに含んでもよい。
【0034】
ポリエチレン層12は、延伸フィルムでもよいし、無延伸フィルムでもよい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムでも二軸延伸フィルムでもよい。
ポリエチレン層12は、最表層11やポリエチレン層12上に形成された接着剤層との密着性を向上させる観点からは、無延伸フィルムであることが好ましい。また、強度や透明性を向上させる観点からは、延伸フィルムであることが好ましい。
【0035】
ポリエチレン層12の結晶化度は特に制限されないが、好ましくは80%未満である。ポリエチレン層12の結晶化度は75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。結晶化度が80%未満であると、ポリエチレン層12の表面近傍の部分が剥離しにくくなり、最表層11やポリエチレン層12上に形成された接着剤層とポリエチレン層12との間で十分な密着強度が得られやすくなる。
結晶化度は、原料樹脂の密度や、延伸前のフィルムの延伸処理により調整することができる。例えば、原料樹脂の密度を大きくしたり、フィルムを一軸延伸又は二軸延伸することにより結晶化度を大きくすることができる。さらには延伸倍率が大きいと、結晶化度も大きくなる。
ポリエチレン層12の結晶化度は、一例によると、10%以上80%未満の範囲内であることが好ましい。ポリエチレン層12と、最表層11やポリエチレン層12上に形成される接着剤層との間の密着強度を向上させる観点からは、結晶化度を小さくするすることが有効であり、より好ましくは35%未満、より一層好ましくは30%以下である。
一方で、ポリエチレン層12の強度や透明性を向上させる観点からは、結晶化度を高めることが有効であり、好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上である。
【0036】
ここで、結晶化度は、平行ビーム法を用いたX線回折法によって求められる。具体的には、結晶化度は以下のようにして求められる。
先ず、フィルムのXRDパターンを、リガク社製の広角X線回折装置を使用し、アウト・オブ・プレーン(Out-of-plane)測定で、回折角度10°~30°の範囲を2θ/θスキャンさせることで得る。X線としては特性X線CuKαを用い、X線は、多層膜ミラーにより平行化してフィルムの表面に入射させ、回折されたX線は、平板コリメータを取り付けたシンチレーション検出器で検出される。このとき、X線は多層フィルム10中のポリエチレン層12側から入射させる。
得られたXRDパターンより、結晶成分のピーク面積A1と非晶成分のハローパターン面積A2とを求め、それら面積の合計(=A1+A2)を基準(100%)としたときの結晶成分のピーク面積(A1)の割合がフィルムの結晶化度(%)として算出される。結晶化度は具体的には下記式に基づいて算出される。結晶化度(%)=100×A1/(A1+A2)
ポリエチレンの場合、回折角度10°~30°の範囲でスキャンを行うと、(110)面と(200)面に対応する2つのシャープな結晶成分のピークとブロードな非晶成分のハローパターンとが観測される。これらを分離解析し、結晶成分のピークの面積(A1)と非晶成分のハローパターンの面積(A2)を算出する。
【0037】
ポリエチレン層12の融点は、特に制限されるものではないが、好ましくは160℃未満である。ここで、ポリエチレン層12の融点とは、多層フィルム10について融点を測定する際に、ポリエチレン系樹脂の融点が観測され得る温度領域のうち最も高い融点をいう。
ポリエチレン層12の融点は、140℃以下、137℃以下又は135℃以下であってよい。
ポリエチレン層12の融点は、125℃以上、129℃以上又は130℃以上であってもよい。
【0038】
ポリエチレン層12の厚さは、特に制限されるものではなく、製造方法や装置に由来する適性、及び他の層との積層適性を考慮しつつ、コストや用途に応じて適宜決定できる。
ポリエチレン層12の厚さは、より優れた製袋適性を上記積層体に付与する観点からは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、特に好ましくは15μm以上である。
ポリエチレン層12の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。
【0039】
ポリエチレン層12全体の厚さに占める高弾性率層の厚さの割合R2は、特に制限されるものではないが、好ましくは50%以上であり、より好ましくは65%以上であり、特に好ましくは80%以上である。R2が高くなることで、高弾性率層の寄与度を高めることができる。このため、多層フィルム10は、上記積層体に対してより優れた製袋適性を付与できる。
R2は、95%以下であっても、90%以下であってもよい。
【0040】
最表層11が無延伸フィルムである場合、ポリエチレン層12も無延伸フィルムであることが好ましい。この場合、最表層11とポリエチレン層12との間の密着性がより向上し、最表層11とポリエチレン層12との間で剥離が起こりにくくなる。
ポリエチレン層12は、最表層11に直接接触していてもよく、接着層を介して接触していてもよい。ポリエチレン層12が最表層11に直接接触している場合には、ポリエチレン層12において最表層11に接触する層が接着性樹脂層であることが好ましい。
【0041】
<積層体>
次に、本開示の積層体の実施形態について
図2を参照して説明する。
図2は、本開示の積層体の一実施形態を示す断面図である。
図2に示されるように、積層体100は、多層フィルム10及びシーラント層50を備える。シーラント層50はポリエチレン系樹脂を含む。多層フィルム10において、ポリエチレン層12がシーラント層50側に配置されている。
積層体100は、多層フィルム10とシーラント層50との間に第1接着層20を更に備えてもよい。また、積層体100は、第1接着層20とシーラント層50との間に、第1接着層20側から、ポリエチレン系樹脂を含む中間層30、及び、第2接着層40をこの順にさらに備えてもよい。さらに、積層体100は、ガスバリア層(図示せず)をさらに備えてもよい。また積層体100は、印刷層をさらに備えてもよい。
上記積層体100によれば、優れた製袋適性及び視認性を有することが可能となる。
【0042】
以下、シーラント層50、中間層30、ガスバリア層、第1接着層20及び第2接着層40について詳細に説明する。
【0043】
(シーラント層)
シーラント層50は、ポリエチレン系樹脂を含む。
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
環境負荷の観点から、ポリエチレン系樹脂は、バイオマス由来の樹脂、又はリサイクルされた樹脂により構成されていてもよい。
【0044】
シーラント層50は、必要に応じて、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、光安定剤、滑剤、粘着付与剤、静電防止剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0045】
シーラント層50は、多層フィルム10の最表層11の融点よりも低い融点を有することが好ましい。この場合、積層体100のヒートシール時に、最表層11の溶融を抑制しながらシーラント層50を熱融着させることが可能となる。
【0046】
シーラント層50は、延伸フィルムでもよいし、無延伸フィルムでもよい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムでも二軸延伸フィルムでもよい。
【0047】
シーラント層50の厚さは、特に制限されるものではなく、積層体100の用途などによって適宜調整される。シーラント層50の厚さは、例えば10μm以上、25μm以上、30μm以上、40μm以上又は50μm以上でよい。また、シーラント層50の厚さは、200μm以下、180μm以下、160μm以下、150μm以下、120μm以下又は100μm以下であってよい。
【0048】
(中間層)
中間層30はポリエチレン系樹脂を含む。中間層30がポリエチレン系樹脂を含むことで、積層体100全体中のポリエチレン系樹脂の質量割合をより高めやすくなる。
中間層30は、複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層を含んでも含んでいなくてもよいが、含んでいることが好ましい。この場合、中間層30の密度が全体として高くなり、中間層30に対して蒸着やドライラミネート、あるいは印刷等の加工を行う際に中間層30にシワが発生しにくくなり、中間層30に対する加工安定性がより優れる。また、積層体100が、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性をより維持しやすく、より優れた耐熱性を有することが可能となる。
中間層30は単層でも多層でもよい。中間層30が多層である場合には、2つの外側層と、2つの外側層の間に配置される内側層とで構成されてよく、内側層は単層でも多層でもよい。外側層の複合弾性率は必要となる特性に合わせて調整することが好ましい。複合弾性率を大きくすると、耐熱性や滑り性などの加工適性を向上させることができ、小さくすると平滑性や透明性などの物性を向上させることができる。
【0049】
中間層30は、必要に応じ、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、光安定剤、滑剤、粘着付与剤、静電防止剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0050】
中間層30は、延伸フィルムでもよいし、無延伸フィルムでもよい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムでも二軸延伸フィルムでもよい。
【0051】
中間層30の厚さは、特に制限されるものではなく、製造方法や装置に由来する適性、及び他の層との積層適性を考慮しつつ、コストや用途に応じて適宜決定できる。中間層30の厚さは、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上であり、特に好ましくは20μm以上である。
中間層30の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、特に好ましくは30μm以下である。
【0052】
(ガスバリア層)
ガスバリア層は、多層フィルム10と中間層30との間に配置されてもよく、中間層30とシーラント層50との間に配置されてもよい。また、中間層30は、有機系ガスバリア層として中間層30の内部に設けられていてもよい。
積層体100がガスバリア層を備えることで、積層体100を用いて包装袋を作製し、包装袋内に内容物を収容して包装製品を作製した場合に水蒸気や酸素等のガスによる内容物の劣化を効果的に抑制できる。
ガスバリア層は、無機化合物で構成される蒸着層を含んでよい。
【0053】
蒸着層を構成する無機化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化錫、酸化マグネシウム、及びこれらの混合物などの無機酸化物が挙げられる。加熱殺菌処理後においてもガスバリア性及び密着性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点、及び視認性の観点から、無機化合物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
蒸着層として、例えば酸化ケイ素を用いる場合、ガスバリア層が透明となるため、積層体100の視認性を高めることができる。
蒸着層は、酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの無機化合物を、真空蒸着法を用いて形成することができる。蒸着層の厚さは例えば15~30nmでよい。
ガスバリア層は、蒸着層のみで構成されても、アンカーコート層及び蒸着層で構成されてもよい。
【0054】
ガスバリア層は、蒸着層のみで構成されてもガスバリア性を有するが、蒸着層の上にさらにコーティング層を重ねて形成してなる複合層で構成されることが好ましい。
【0055】
ガスバリア層が複合層で構成されることにより、ガスバリア層において、蒸着層とコーティング層との界面に両層の反応層が生じるか、或いはコーティング層が蒸着層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥又は微細孔を充填又は補強することによって緻密構造が形成される。そのため、コーティング層と蒸着層を複合した複合層で構成されるガスバリア層は、より高いガスバリア性、耐湿性及び耐水性を実現するとともに、外力による変形に耐えられる可撓性を有するため、積層体100に対して包装材料としての適性を付与することができる。
【0056】
コーティング層は、例えば蒸着層の上にコーティング剤を塗布し、加熱乾燥するコーティング法により形成することができる。コーティング剤は、水溶性高分子と、一種以上のアルコキシド、その加水分解物、又は塩化錫のうち、少なくともいずれかひとつを含む水溶液又は水/アルコール混合水溶液を主剤とすることができる。コーティング剤はさらに、シランモノマーを含んでもよい。この場合、コーティング層と蒸着層との密着性の向上を図ることができる。
【0057】
上記アンカーコート層は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等の樹脂を含む塗液により形成することができる。アンカーコート層は、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン樹脂、又はポリエステル系ポリウレタン樹脂を含む塗液で形成されてもよい。アンカーコート層は、上記樹脂を溶媒に溶解した塗液を、グラビアコーティングなどの印刷手法を応用したコーティング方法又は一般に知られているコーティング方法を用いてコーティングすることによって形成することができる。
【0058】
(第1接着層)
第1接着層20としては、接着剤を用いて形成された接着層が挙げられる。
【0059】
接着剤としては、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤、及びイソシアネート系接着剤などの公知の接着剤が挙げられる。環境への配慮の観点から、高分子成分がバイオマス由来である接着剤や、生分解性を持つ接着剤を使用してもよい。また、接着剤は、バリア性を有する接着剤であってもよい。
【0060】
接着剤は、有機溶剤を含む接着剤でも、有機溶剤を含まない接着剤でもよいが、環境負荷を低減あるいは積層体中に残留する溶剤量を低減する観点から、有機溶剤を含まない接着剤(無溶剤型接着剤)であることが好ましい。更に、無溶剤型接着剤は一般的に溶剤型接着剤に比べて薄い層で十分な接着強度を示すことができ、その結果、印刷柄の視認性の向上に適する。
【0061】
第1接着層20の厚さは特に制限されず、例えば1μm以上であってよく、2μm以上であってもよい。第1接着層20の厚さを2μm以上とすることで、十分な接着強度を得ることができる。 第1接着層20の厚さは50μm以下であってよく、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよい。
【0062】
第1接着層20は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法など従来公知の方法により塗布することで形成し、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法など従来公知の方法により、他のフィルム(シーラント層50)と貼り合わせることで効果を発揮する。
【0063】
(第2接着層)
第2接着層40としては、接着剤を用いて形成された接着層が挙げられる。
【0064】
接着剤としては、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤、及びイソシアネート系接着剤などの公知の接着剤が挙げられる。環境への配慮の観点から、高分子成分がバイオマス由来である接着剤や、生分解性を持つ接着剤を使用してもよい。また、接着剤は、バリア性を有する接着剤であってもよい。
【0065】
接着剤は、有機溶剤を含む接着剤でも、有機溶剤を含まない接着剤でもよいが、環境負荷を低減する、あるいは積層体中に残留する溶剤量を低減する観点から、有機溶剤を含まない接着剤(無溶剤型接着剤)であることが好ましい。
【0066】
第2接着層40の厚さは特に制限されず、例えば1μm以上であってよく、2μm以上であってもよい。第2接着層40の厚さを2μm以上とすることで、十分な接着強度を得ることができる。
第2接着層40の厚さは50μm以下であってよく、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよい。
【0067】
(印刷層)
積層体100は、既に述べたとおり、印刷層を備えてもよい。
印刷層は、多層フィルム10のポリエチレン層12の表面上、又は、中間層30の少なくとも一方の表面上に設けることができる。
印刷層は、内容物に関する情報の表示、内容物の識別、隠蔽性の向上、あるいは包装袋の意匠性向上を目的として、積層体100の外側から見える位置に設けられる。
印刷インキは特に制限されず、既知の印刷インキの中から積層体100中の他の層への印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮して適宜選択される。
印刷方法も特に制限されず、既知の印刷方法の中から適宜選択される。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。中でもグラビア印刷法は生産性や絵柄の高精細度の観点から、好ましく用いることができる。
【0068】
(積層体)
積層体100全体中のポリエチレン系樹脂の質量割合は特に制限されるものではないが、90質量%以上であることが好ましい。積層体100全体に占めるポリエチレン系樹脂の割合を90質量%以上とすることにより、積層体100がより優れたリサイクル適性を有することが可能となる。
積層体100全体に占めるポリエチレン系樹脂の割合は、92質量%以上、95質量%以上、又は97質量%以上であってよい。
【0069】
最表層11及びポリエチレン層12がいずれも無延伸フィルムである場合、シーラント層50も無延伸フィルムであることが好ましい。この場合、シーラント層50が密着性や低温シール性に優れる。
【0070】
<包装製品>
次に、本開示の包装製品の実施形態について
図3を参照しながら説明する。なお、
図3は、本開示の包装製品の一実施形態を示す断面図である。
図3に示すように、包装製品300は、包装袋200と、包装袋200内に収容された内容物Cとを備えている。
図2に示す包装袋200は、一対の積層体100を製袋して得られる。具体的には、包装袋200は、一対の積層体100を用い、シーラント層50同士を対向させた状態で積層体100の周縁部をヒートシールすることによって得られる。
【0071】
上記包装袋200は、積層体100を製袋して得られ、積層体100は、優れた製袋適性を有するため、優れた外観を有し、かつ、優れた視認性をも有することが可能となる。
そのため、包装製品300も優れた外観を有し、かつ、内容物Cを視認しやすくなる。
【0072】
なお、包装袋200は、1つの積層体100を製袋することによっても得られる。具体的には、包装袋200は、1つの積層体100を折り曲げ、シーラント層50同士を対向させた状態で積層体100の周縁部をヒートシールすることによっても得ることができる。
【0073】
内容物Cは、特に限定されるものではなく、内容物Cとしては、食品、液体、医薬品、電子部品などが挙げられる。
【0074】
<本開示の概要>
本開示の概要は以下のとおりである。
[1]熱可塑性樹脂を含む最表層と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン層とを備える多層フィルムであって、前記熱可塑性樹脂が160℃以上の融点を有し、前記ポリエチレン層が、前記ポリエチレン層の厚さ方向の断面においてナノインデンテーション法により測定される複合弾性率が1.4GPa以上2.4GPa未満である高弾性率層を含む、多層フィルム。
[2]前記ポリエチレン層全体の厚さに占める前記高弾性率層の厚さの割合が50%以上である、[1]に記載の多層フィルム。
[3]前記多層フィルム全体の厚さに占める前記最表層の厚さの割合が3%以上である、[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
[4]前記多層フィルムにおいて、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した前記ポリエチレン層の結晶化度が35%未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の多層フィルム。
[5]多層フィルム及びシーラント層を備え、
前記シーラント層がポリエチレン系樹脂を含み、
前記多層フィルムが、[1]~[4]のいずれかに記載の多層フィルムで構成され、
前記多層フィルムにおいて、前記ポリエチレン層が前記シーラント層側に配置されている、積層体。
[6]前記積層体中のポリエチレン系樹脂の質量割合が90質量%以上である、[5]に記載の積層体。
[7]前記多層フィルムと前記シーラント層との間に第1接着層を更に備える、[5]又は[6]に記載の積層体。
[8]前記第1接着層と前記シーラント層との間に、前記第1接着層側から、中間層及び第2接着層をこの順にさらに備え、前記中間層がポリエチレン系樹脂を含む、[7]に記載の積層体。
[9]前記多層フィルムと前記中間層との間にガスバリア層を更に備える、[8]に記載の積層体。
[10]前記中間層と前記シーラント層との間にガスバリア層を更に備える、[8]又は[9]に記載の積層体。
[11][5]~[10]のいずれかに記載の積層体を製袋して得られる、包装袋。
[12][11]に記載の包装袋と、前記包装袋内に収容される内容物とを備える、包装製品。
【実施例0075】
以下、実施例を挙げて本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
<多層フィルム及び中間層を構成する樹脂>
多層フィルム及び中間層を構成する樹脂として下記に示す材料を準備した。
【0077】
・PP:ポリプロピレン樹脂(密度:0.9g/cm3、MFR(190℃):0.8g/10分、融点:160℃)
・PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂(密度:1.35g/cm3、融点:223℃)
・Ny:ポリアミド樹脂(密度:1.13g/cm3、融点:220℃)
・EVOH:エチレンビニルアルコール共重合体(密度:1.19g/cm3、MFR(190℃):1.6g/10分、融点:183℃)
・PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂(密度:1.34g/cm3、融点:255℃)
・PE1:無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体(密度:0.880g/cm3、MFR(190℃):2.6g/10分、複合弾性率:0.3GPa、融点:90℃)
・PE2:無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.910g/cm3、MFR(190℃):2.4g/10分、複合弾性率:0.7GPa、融点:120℃)
・PE3:高密度ポリエチレン(密度:0.960g/cm3、MFR(190℃):0.85g/10分、複合弾性率:2.1GPa、融点:134℃)
・PE4:高密度ポリエチレン(密度:0.963g/cm3、MFR(190℃):1.35g/10分、複合弾性率:2.3GPa、融点:139℃)
・PE5:高密度ポリエチレン(密度:0.944g/cm3、複合弾性率:1.7GPa、融点:131℃)
・PE6:中密度ポリエチレン(密度:0.940g/cm3、MFR(190℃):1.3g/10分、複合弾性率:1.5GPa、融点:129℃)
・PE7:直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm3、複合弾性率:0.7GPa、融点:124℃)
・PE8:高密度ポリエチレン(密度:0.960g/cm3、MFR(190℃):1.0g/10分、複合弾性率:2.4GPa、融点:135℃)
【0078】
(実施例1)
最表層及びポリエチレン(以下「PE」ともいう)層からなる多層フィルムを、共押出法により作製した。最表層用の樹脂としてPPを用い、PE層を構成する接着性樹脂用樹脂としてPE1、PE層1用樹脂としてPE3を用い、それぞれを押出機に投入して共押出多層フィルムを得た。このとき、最表層、接着性樹脂層及びPE層1の厚さはそれぞれ表1に示すとおりとした。
次に、多層フィルムのPE層の上に、所定パターンを表示する印刷層を印刷した。そして、印刷層の表面に、2液型の接着剤(商品名「タケラックA-525/タケネートA-52」、三井化学株式会社製)を用いて、LLDPE(融点:113℃、無延伸フィルム)からなる厚さ60μmのシーラント層を貼り合わせ、積層体を得た。
【0079】
(実施例2)
最表層として、PBTを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0080】
(実施例3)
最表層として、Nyを用い、接着性樹脂層として、PE2を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0081】
(実施例4)
最表層として、EVOHを用い、接着性樹脂層として、PE2を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0082】
(実施例5)
最表層として、PETを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0083】
(実施例6)
最表層として、NyとPE3との混合物(以下「Ny/PE3」ともいう。Ny:PE3=50:50(質量比))、接着性樹脂層として、PE2を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0084】
(実施例7)
最表層として、PPとPE3との混合物(以下「PP/PE3」ともいう。PP:PE3=50:50(質量比))を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0085】
(実施例8)
PE層1として、PE4を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0086】
(実施例9)
PE層1として、PE5を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0087】
(実施例10)
PE層の構成を、PE1からなる接着性樹脂層、PE3からなるPE層1、PE7からなるPE層2、及び、PE3からなるPE層3としたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。このとき、各層の厚さは表4に示すとおりとした。
【0088】
(実施例11)
PE層の構成を、PE1からなる接着性樹脂層、PE3からなるPE層1、PE6からなるPE層2としたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。このとき、各層の厚さは表4に示すとおりとした。
【0089】
(実施例12)
PE層の構成を、PE1からなる接着性樹脂層、PE6からなるPE層1、PE3からなるPE層2、及び、PE6からなるPE層3としたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。このとき、各層の厚さは表5に示すとおりとした。
【0090】
(実施例13)
PE層1として、PE3及びPE7の混合物(以下「PE3/PE7」ともいう。PE3:PE7=70:30(質量比))を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0091】
(実施例14~16)
最表層、接着性樹脂層及びPE層1の厚さを表6及び表7に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして多層フィルムを得た。次に、中間層用フィルムとして、PE6からなる中間層1、PE3からなる中間層2、及び、PE6からなる中間層3をそれぞれ厚さ5μm、15μm、5μmとなるよう共押出法にて積層し、全体が25μmのPEフィルムを作製した。多層フィルムのPE層と中間層用フィルムの中間層1とを、2液型の接着剤(商品名「タケラックA-525/タケネートA-52」、三井化学株式会社製)を用いて貼り合わせた。更に、中間層用フィルムの中間層3とシーラント層とを、同様に貼り合わせて積層体を得た。
【0092】
(実施例17)
最表層、接着性樹脂層及びPE層1の厚さを表7に示すとおりとし、実施例3と同様に多層フィルムを得たこと以外は、実施例14~16と同様にして積層体を得た。
【0093】
(実施例18)
接着剤として、商品名「TSN-4864A/TSN-4864B3」(東洋モートン株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。このとき、接着剤は、塗工量が約2g/m2となるように印刷層の表面に塗工し、LLDPEからなるシーラント層と貼り合わせた。
【0094】
(実施例19)
共押出多層フィルムを更にMD及びTD方向にそれぞれ3倍に延伸することにより2軸延伸処理を行って、最表層、接着性樹脂層及びPE層1の厚さを表8に示すとおりに調整し、この多層フィルムの上に印刷層を印刷したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0095】
(実施例20)
共押出多層フィルムを更にMD及びTD方向にそれぞれ4倍に延伸することにより2軸延伸処理を行って、最表層、接着性樹脂層及びPE層1の厚さを表9に示すとおりに調整し、この多層フィルムの上に印刷層を印刷したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0096】
(実施例21)
共押出多層フィルムを更にMD及びTD方向にそれぞれ5倍に延伸することにより2軸延伸処理を行って、最表層、接着性樹脂層及びPE層1の厚さを表9に示すとおりに調整し、この多層フィルムの上に印刷層を印刷したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0097】
(比較例1)
最表層としてPE3を用い、PE層として、PE7からなるPE層1、及び、PE3からなるPE層2を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0098】
(比較例2)
PE層1としてPE7を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0099】
(比較例3)
PE層1としてPE8を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0100】
(比較例4)
共押出多層フィルムを更にMD及びTD方向にそれぞれ7倍に延伸することにより2軸延伸処理を行って、最表層、接着性樹脂層及びPE層1の厚さを表11に示すとおりに調整し、この多層フィルムの上に印刷層を印刷したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0101】
<複合弾性率>
(測定試料の準備)
実施例及び比較例で得られた積層体の断面におけるPE層及び中間層の複合弾性率を測定するための試料を、以下の手順で作製した。
まず、PE層及び中間層を含む積層体を、短冊型又はくさび型となるようにカミソリで裁断し、得られた裁断片を包埋用樹脂で包埋した。包埋用樹脂としては東亜合成社製のD-800光硬化樹脂を用い、包埋後に裁断片の包埋用樹脂を光照射にて硬化させ、硬化体を得た。硬化体をAFM試料ホルダー用インサートで固定し、常温(25℃)においてガラスナイフでトリミングとフィルムの断面切削を行い、鏡面になるまでダイヤモンドナイフで切削スピード1.0mm/秒、切削膜厚200nm設定で断面切削を実施した。こうして試料を得た。断面切削装置としては、ライカ社製のウルトラミクロトームEMUC7を用いた。また、切削向きは、層界面に対し平行な方向とした。
【0102】
(複合弾性率の測定)
PE層及び中間層の複合弾性率は、ナノインデンテーション法にて算出された複合弾性率を表す。ナノインデンテーション法とは、目的の測定対象に対して準静的な押し込み試験を行い、試料の機械特性を取得する測定法である。測定装置としては、ブルカージャパン株式会社製のHysitron TI-Premier(商品名)を用いた。圧子はブルカージャパン株式会社製のバーコビッチ型ダイヤモンド圧子を用いた。ナノインデンテーション法による測定は以下のようにして行った。まず、ダイヤモンド圧子にて試料断面上を走査することで試料の形状像を取得し、試料における測定位置を指定した。その後、常温(25℃)において変位制御モードにて、押し込み速度80nm/秒にて深さ80nmまでダイヤモンド圧子の押し込みを行った後、最大深さにて1秒間保持後、80nm/秒の速度にて除荷した。その後、除荷時の最大荷重に対して60~95%領域の除荷曲線をOliver-Pharr法にて解析し、変位に対する荷重の変化の割合を示すスティフネス(最大押込み深さ時のスティフネス)と、接触投影面積(最大負荷時の圧子と試料が接している部分の投影面積)を求め、これらのスティフネス及び接触投影面積に基づいて複合弾性率を算出した。このとき、標準試料となる溶融石英について予め試験を行い、圧子と試料の接触深さと、接触投影面積との関係を校正した。複合弾性率の結果を表1~11に示す。
【0103】
<評価>
(1)ヒートシール温度
実施例及び比較例で得られた積層体から幅60mm×長さ50mmのサンプルを2枚切り取り、2枚のサンプルを、シーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、シールバーを用いて以下の条件でヒートシールを行い、融着体を得た。得られた融着体から幅15mmの測定用試料Aを合計3本採取した。
(シール条件)
・シールバー幅:10mm
・シール時間:1s
・シール圧力:0.2MPa
・シール温度:80℃
こうして用意した3本の測定用試料Aの各々について、JIS Z1707:2019「ヒートシール強さ試験」に準拠し、300mm/minの試験速度で2枚のサンプルを剥離する剥離試験を行った。
次に、シール温度を10℃増加させたこと以外は上記と同様にして測定用試料Aを用意し、上記と同様にして剥離試験を行った。以後、上記の操作を繰り返し行った。そして、測定用試料Aの剥離試験の際、シーラント層同士間で剥離せず、PE層とシーラント層との間で剥離が生じたり、測定用試料Aが破断したりした場合、測定を終了し、その測定用試料Aの直前に剥離試験を行った3本の測定用試料Aのシール温度の平均値を「ヒートシール温度」とした。結果を表1~11に示す。
【0104】
(2)製袋適性
実施例及び比較例で得られた積層体について、以下のようにして製袋適性の評価を行った。
【0105】
(2-1)シール部の外観評価
まず、実施例及び比較例で得られた積層体について、以下のようにしてシール部の外観評価を行った。
すなわち、実施例及び比較例で得られた積層体から幅60mm×長さ50mmのサンプルを2枚切り取り、2枚のサンプルを、シーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、シールバーを用いて以下の条件でヒートシールを行い、融着体を得た。得られた融着体から幅15mmの測定用試料Bを合計3本採取した。
(シール条件)
・シールバー幅:10mm
・シール時間:1s
・シール圧力:0.2MPa
・シール温度:80℃
こうして用意した3本の測定用試料Bの各々について、目視にてシール部の外観を観察し、シール部のシールバーへの貼りつき、シワ、気泡、白化、収縮又は破断などの外観の異常の有無を調べた。
次に、シール温度を5℃増加させたこと以外は上記と同様にして測定用試料Bを用意し、上記と同様にしてシール部の外観観察を行った。以後、外観の異常が生じる測定用試料Bが現れるまで上記のシール部の外観観察を繰り返し行った。
そして、外観の異常が生じなかった測定用試料Bのシール温度のうち最も高いシール温度を「最高温度T1(℃)」とした。結果を表1~11に示す。
【0106】
(2-2)最表層融着性評価
まず、実施例及び比較例で得られた積層体について、以下のようにして最表層の融着性評価を行った。
すなわち、実施例及び比較例で得られた積層体から幅60mm×長さ50mmのサンプルを2枚切り取り、2枚のサンプルを、最表層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、これをさらに2枚のPETフィルム(商品名「P60」、東レ株式会社製、12μm)で挟んだ状態で、シールバーを用いて以下の条件でヒートシールを行った。得られた試料から幅15mmの測定用試料Cを合計3本採取し、測定に用いた。
(シール条件)
・シールバー幅:10mm
・シール時間:1s
・シール圧力:0.2MPa
・シール温度:110℃
こうして用意した測定用試料Cについて、JIS Z1707:2019「ヒートシール強さ試験」に準拠し、300mm/minの試験速度で2枚のサンプルの剥離を行い、最表層同士のヒートシール強度測定を行った。
次に、シール温度を5℃増加させたこと以外は上記と同様にして測定用試料Cを用意し、上記と同様にして最表層同士のヒートシール強度測定を行った。以後、測定用試料Cのヒートシール強度が1N/15mm以上となるまで上記の最表層同士のヒートシール強度測定を繰り返し行った。
そして、最表層同士のヒートシール強度が1N/15mm未満となるシール温度のうち最も高いシール温度を「最高温度T2(℃)」とした。結果を表1~11に示す。
【0107】
(2-3)評価
上記の最高温度T1および最高温度T2のうち、より低い温度TL(℃)と、ヒートシール温度T0(℃)との差ΔT(=TL-T0)を算出した。結果を表1~11に示す。ΔTは、ヒートシール許容幅を示すものである。そして、下記評価基準に基づいて、積層体の製袋適性を評価した。結果を表1~11に示す。
(評価基準)
◎:ΔTが30℃以上
〇:ΔTが20℃以上30℃未満
×:ΔTが20℃未満
なお、評価が「◎」である積層体は、ヒートシール温度T0がばらついても製袋不良を生じにくく、製袋を行うことができなくなる可能性は非常に低く、製袋適性が非常に良好であることを示す。評価が「〇」である積層体は、ヒートシール温度T0がばらつくと製袋不良が生じることがあるが、製袋を行うことができなくなる可能性は低く、製袋適性が良好であることを示す。評価が「×」である積層体は、製袋を行うことができず、製袋適性が良好でないことを示す。
【0108】
(3)視認性
実施例及び比較例で得られた積層体について、最表層側から、印刷層が表示するパターンを視認し、下記評価基準に基づいて視認性の評価を行った。
(評価基準)
〇:印刷層が表示するパターンを鮮明に確認できた。
×:印刷層が表示するパターンがぼやけて不鮮明であった。
【0109】
(4)ラミネート強度
実施例及び比較例で得られた積層体について、15mm幅の短冊状試験片を3本採取した。多層フィルム層とシーラント層または中間層とを剥離させ、JIS Z1707に準拠してラミネート強度を測定した。ラミネート強度の測定については、90°剥離(常態90°剥離)及び180°剥離(常態180°剥離)を行い、以下の評価基準に基づいて密着性を評価した。なお、以下の評価基準において、「ラミネート強度」は、90°剥離で測定したラミネート強度および180°剥離で測定したラミネート強度のうち、小さい方のラミネート強度をいい、90°剥離で測定したラミネート強度および180°剥離で測定したラミネート強度が同一のラミネート強度である場合には、そのラミネート強度をいう。
(評価基準)
◎:ラミネート強度が5N/15mm以上
〇:ラミネート強度が2N/15mm以上5N/15mm未満
×:ラミネート強度が2N/15mm未満
【0110】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0111】
表1~11に示す結果より、実施例の積層体はいずれも、優れた製袋適性を有し、視認性にも優れることが分かった。
一方、比較例の積層体は、製袋適性が良好でないか、又は視認性が良好でないことが分かった。比較例1~2では外観評価にてヒートシール温度が比較的低い領域でシールバーへの貼りつきが発生し、比較例4ではヒートシール温度が比較的低い領域でフィルムの収縮が発生し外観不良が生じた。
したがって、本開示の多層フィルムによれば、積層体に対して優れた製袋適性を付与でき、優れた視認性を有することが可能となることが確認された。
10…多層フィルム、11…最表層、12…ポリエチレン層、20…第1接着層、30…中間層、40…第2接着層、50…シーラント層、100…積層体、200…包装袋、300…包装製品、C…内容物。