(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028377
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】スラストフォイル軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 27/02 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
F16C27/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024226542
(22)【出願日】2024-12-23
(62)【分割の表示】P 2024509774の分割
【原出願日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2022046283
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100209657
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 宏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勘
(72)【発明者】
【氏名】中島 雅祐
(72)【発明者】
【氏名】青山 茂一
(57)【要約】
【課題】所望の負荷能力を発揮させる。
【解決手段】スラストフォイル軸受は、回転軸が挿通される挿通孔及び支持面を有するベースプレートと、支持面に支持される複数のトップフォイル片と、支持面に載置され、ベースプレートに対して別体で形成されると共に、複数の段差面によって構成された複数の段差支持部を含む段差部材と、トップフォイル片とベースプレートとの間に配置されると共に複数の段差支持部のそれぞれに配置され、段差面にそれぞれ接する谷部を含む複数のバンプフォイル片と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が挿通される挿通孔及び支持面を有するベースプレートと、
前記支持面に支持される複数のトップフォイル片と、
前記支持面に載置され、複数の段差面によって構成された複数の段差支持部を含む段差部材と、
前記トップフォイル片と前記ベースプレートとの間に配置されると共に前記複数の段差支持部のそれぞれに配置された複数のバンプフォイル片と、を備え、
前記段差部材は、前記支持面上に配置された第1板部材と、前記第1板部材に積層された第2板部材と、を有し、
前記第1板部材は、第1内周縁部と、第2内周縁部とを含み、
前記第1内周縁部は、前記第2内周縁部よりも前記挿通孔の軸線から遠くに位置し、
前記第1板部材は、前記第1内周縁部から前記挿通孔を囲む方向に延びる仮想線と前記第2内周縁部との間に位置する第1段差内周領域を含み、
前記第1段差内周領域は、前記第2板部材と重なる内周面重複領域と、前記第2板部材と重ならない内周面露出領域とを含む、スラストフォイル軸受。
【請求項2】
回転軸が挿通される挿通孔及び支持面を有するベースプレートと、
前記支持面に支持される複数のトップフォイル片と、
前記支持面に載置され、複数の段差面によって構成された複数の段差支持部を含む段差部材と、
前記トップフォイル片と前記ベースプレートとの間に配置されると共に前記複数の段差支持部のそれぞれに配置された複数のバンプフォイル片と、を備え、
前記段差部材は、前記支持面上に配置された第1板部材と、前記第1板部材に積層された第2板部材と、を有し、
前記第2板部材は、第1内周縁部と、前記第1内周縁部よりも前記挿通孔の軸線の近くに位置する第2内周縁部とを含み、
前記第1板部材は、前記挿通孔の前記軸線の方向から見た場合に、前記第1内周縁部よりも前記挿通孔の前記軸線の近くに位置する第1段差内周領域を含み、
前記第1段差内周領域は、前記第2板部材と重なる内周面重複領域と、前記第2板部材と重ならない内周面露出領域とを含む、スラストフォイル軸受。
【請求項3】
回転軸が挿通される挿通孔及び支持面を有するベースプレートと、
前記支持面に支持される複数のトップフォイル片と、
前記支持面に載置され、複数の段差面によって構成された複数の段差支持部を含む段差部材と、
前記トップフォイル片と前記ベースプレートとの間に配置されると共に前記複数の段差支持部のそれぞれに配置された複数のバンプフォイル片と、を備え、
前記段差部材は、前記支持面上に配置された第1板部材と、前記第1板部材に積層された第2板部材と、を有し、
前記第1板部材は、前記挿通孔を囲む方向において互いに隣り合う二つの支持領域を含み、
前記二つの支持領域の間には、外径側から内径側に伸びる溝が形成されており、
前記溝は、拡大部を含み、
前記挿通孔を囲む方向における前記拡大部の幅は、前記外径側から前記内径側に向かって拡大している、スラストフォイル軸受。
【請求項4】
回転軸が挿通される挿通孔及び支持面を有するベースプレートと、
前記支持面に支持される複数のトップフォイル片と、
前記支持面に載置され、複数の段差面によって構成された複数の段差支持部を含む段差部材と、
前記トップフォイル片と前記ベースプレートとの間に配置されると共に前記複数の段差支持部のそれぞれに配置された複数のバンプフォイル片と、を備え、
前記段差部材は、前記支持面上に配置された第1板部材と、前記第1板部材に積層された第2板部材と、を有し、
前記第1板部材は、内周領域を含み、
前記内周領域は、前記第2板部材と重なる内周面重複領域と、前記第2板部材と重ならない内周面露出領域とを含み、
前記内周面重複領域と前記内周面露出領域とは、前記挿通孔を囲む方向に配置されている、スラストフォイル軸受。
【請求項5】
前記複数の段差支持部は、前記挿通孔を囲むように設けられる、請求項1~4の何れか一項に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項6】
前記第1板部材は、
弧状の外周縁を含む第1被挟持部と、
前記挿通孔の軸線の方向から見て、前記第1被挟持部と前記挿通孔との間に設けられた第1支持領域と、を含み、
前記第2板部材は、
弧状の外周縁を含む第2被挟持部と、
前記挿通孔の軸線の方向から見て、前記第2被挟持部と前記挿通孔との間に設けられた第2支持領域と、を含み、
前記段差支持部は、前記第1支持領域と前記第2支持領域とが積層して形成される、請求項1~4の何れか一項に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項7】
前記第2支持領域の形状は、前記挿通孔の軸線の方向から見て前記第1支持領域の形状と異なる、請求項6に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項8】
前記第1被挟持部及び前記第2被挟持部は、前記段差部材を前記ベースプレートに締結するための締結部材が挿通される貫通孔を有する、請求項6に記載のスラストフォイル軸受。
【請求項9】
前記貫通孔の数は、前記段差支持部の数と異なる、請求項8に記載のスラストフォイル軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラストフォイル軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高速回転体用の軸受として用いられるスラストフォイル軸受を開示する。特許文献1が開示するスラストフォイル軸受は、回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置される。スラストフォイル軸受の軸受面は、金属製の薄板である柔軟なフォイルによって構成されている。スラストフォイル軸受は、軸受面を柔軟に支持するためのフォイル構造を有している。回転軸は、振動及び衝撃によって意図しない動きを生じることがある。回転軸の意図しない動きによって、例えば、スラストカラーは、軸方向に動くことがある。また、回転軸の意図しない動きによって、スラストカラーは、傾くこともある。スラストフォイル軸受は、回転軸の動きに起因するスラストカラーの動きを吸収できる。
【0003】
スラストフォイル軸受は、複数のトップフォイル片と、複数のバンプフォイル片と、を備える。トップフォイル片は、バンプフォイル片に支持されている。スラストカラーが回転すると、トップフォイル片とスラストカラーとの間に潤滑流体が導入される。潤滑流体は、トップフォイル片とスラストカラーとの間に楔状の流体潤滑膜を形成する。流体潤滑膜が形成された結果、スラストフォイル軸受の負荷能力が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許第6065917号公報
【特許文献2】特開2006-57652号公報
【特許文献3】特開2004-270904号公報
【特許文献4】特開2009-299748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スラストフォイル軸受の負荷能力は、流体潤滑膜の形態の影響を受ける。従って、所望の負荷能力を発揮させるためには、所望の流体潤滑膜を生じさせる必要がある。所望の流体潤滑膜の形態は、トップフォイル片とスラストカラーとの間の隙間の形状の影響を受ける。楔状の隙間は、ベースプレートに設けられた傾斜面によって形成されている。
【0006】
例えば、傾斜面は、切削加工などによって形成する場合がある。切削加工によって形成された傾斜面は、加工誤差などに起因して、意図した構成とならないこともある。傾斜面が意図した構成とならない場合には、楔状の隙間も意図した構成とならない。その結果、スラストフォイル軸受の負荷能力が、所望の能力に満たないこともあり得る。
【0007】
本開示は、所望の負荷能力を発揮することができるスラストフォイル軸受を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のスラストフォイル軸受は、回転軸が挿通される挿通孔及び支持面を有するベースプレートと、支持面に支持される複数のトップフォイル片と、支持面に載置され、ベースプレートに対して別体で形成されると共に、複数の段差面によって構成された複数の段差支持部を含む段差部材と、トップフォイル片とベースプレートとの間に配置されると共に複数の段差支持部のそれぞれに配置され、段差面に接する接触部を含む複数のバンプフォイル片と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示のスラストフォイル軸受は、所望の負荷能力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示のスラストフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本開示のスラストフォイル軸受を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示のスラストフォイル軸受の一部を分解して示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、トップフォイル片の平面図である。
図4(b)は、バンプフォイル片の平面図である。
【
図5】
図5は、本開示のスラストフォイル軸受の要部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、本開示のスラストフォイル軸受が備える段差部材の斜視図である。
【
図7】
図7は、段差支持部を拡大して示す斜視図である。
【
図8】
図8は、段差部材を構成する第1シムの斜視図である。
【
図9】
図9は、段差部材を構成する第2シムの斜視図である。
【
図10】
図10は、段差部材を構成する第3シムの斜視図である。
【
図11】
図11は、変形例1のスラストフォイル軸受の要部を拡大して示す断面図である。
【
図12】
図12は、変形例1のスラストフォイル軸受の作用効果を説明するための図である。
【
図13】
図13は、変形例2のスラストフォイル軸受の要部を拡大して示す断面図である。
【
図14】
図14は、変形例3のスラストフォイル軸受の要部を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例4のスラストフォイル軸受の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のスラストフォイル軸受は、回転軸が挿通される挿通孔及び支持面を有するベースプレートと、支持面に支持される複数のトップフォイル片と、支持面に載置され、ベースプレートに対して別体で形成されると共に、複数の段差面によって構成された複数の段差支持部を含む段差部材と、トップフォイル片とベースプレートとの間に配置されると共に複数の段差支持部のそれぞれに配置され、段差面に接する接触部を含む複数のバンプフォイル片と、を備える。
【0012】
スラストフォイル軸受は、ベースプレートとは別体とされた段差部材を有する。この段差部材によれば、設計値からの段差寸法のずれを小さくしやすくなる。その結果、段差寸法のずれに起因する負荷能力の低下が抑制される。従って、スラストフォイル軸受は、所望の負荷能力を発揮することができる。
【0013】
上記のスラストフォイル軸受の複数の段差支持部は、挿通孔を囲むように設けられてもよい。このような構成によれば、複数の段差支持部を挿通孔の周囲に設けることができる。
【0014】
上記のスラストフォイル軸受の第1板部材は、弧状の外周縁を含む第1被挟持部と、挿通孔の軸線の方向から見て、第1被挟持部と挿通孔との間に設けられた第1支持領域と、を含んでもよい。第2板部材は、弧状の外周縁を含む第2被挟持部と、挿通孔の軸線の方向から見て、第2被挟持部と挿通孔との間に設けられた第2支持領域と、を含んでもよい。段差支持部は、第1支持領域と第2支持領域とが積層して形成されてもよい。このような構成によっても、所望の負荷能力を発揮することができる。
【0015】
上記のスラストフォイル軸受の第2支持領域の形状は、挿通孔の軸線の方向から見て第1支持領域の形状と異なってもよい。このような構成によれば、バンプフォイル片を支持する仮想的な斜面を形成することができる。
【0016】
上記のスラストフォイル軸受の第1支持領域は、挿通孔を囲むように延びる内周縁を含んでもよい。内周縁は、第1内周縁部と、第2内周縁部と、を含んでもよい。挿通孔の軸線から第1内周縁部までの距離は、挿通孔の軸線から第2内周縁部までの距離と異なってもよい。このような構成によっても、所望の負荷能力を発揮することができる。
【0017】
上記のスラストフォイル軸受の被挟持部は、段差部材をベースプレートに締結するための締結部材が挿通される貫通孔を有してもよい。このような構成によれば、段差部材をベースプレートに締結することができる。
【0018】
上記のスラストフォイル軸受の貫通孔の数は、段差支持部の数と異なってもよい。このような構成によっても、段差部材をベースプレートに固定することができる。
【0019】
以下、添付図面を参照して、本開示のスラストフォイル軸受を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面に図示された同一要素には同一の符号を付す。同一要素に関する重複する説明は、省略する。
【0020】
図1は、本開示のスラストフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。インペラ2は、回転軸1の端部に取り付けられている。チップクリアランス6は、インペラ2とハウジング5との間に存在する。回転軸1は、スラストフォイル軸受3A、3Bと、ラジアルフォイル軸受7と、によって支持されている。
【0021】
ラジアルフォイル軸受7は、回転軸1を軸線Aに対して直交する方向(ラジアル方向)に支持する。スラストフォイル軸受3A、3Bは、回転軸1を軸線Aに沿った方向(スラスト方向)に支持する。円板のスラストカラー4は、回転軸1に取り付けられている。スラストフォイル軸受3A、3Bは、スラストカラー4を挟む。
【0022】
図2に示すように、スラストフォイル軸受3Aは、スラストカラー4とインペラ2との間に配置されている。スラストフォイル軸受3Bは、スラストカラー4とラジアルフォイル軸受7との間に配置されている。スラストフォイル軸受3Aの構成は、スラストフォイル軸受3Bの構成と同じである。スラストフォイル軸受3A、3Bは、複数のトップフォイル片11と、複数のバンプフォイル片21と、ベースプレート30と、段差部材50と、をそれぞれ有する。
【0023】
円筒状の軸受スペーサ40は、スラストフォイル軸受3Aのベースプレート30とスラストフォイル軸受3Bのベースプレート30との間に配置されている。スラストフォイル軸受3Aのベースプレート30は、締結ボルト41によってスラストフォイル軸受3Bに連結されている。締結ボルト41を挿通するための貫通孔42は、ベースプレート30の外周部に形成されている。締結ボルト41の先端は、ハウジング5のネジ孔31にねじ込まれている。スラストフォイル軸受3Aのベースプレート30は、締結ボルト41による締め付けによってハウジング5に当接している。
【0024】
以下、
図3~
図10を参照しながら、スラストフォイル軸受3Aについて詳細に説明する。スラストフォイル軸受3Bの構成は、スラストフォイル軸受3Aの構成と同じである。従って、スラストフォイル軸受3Bの詳細な説明は省略する。
【0025】
なお、以下の説明においては、ベースプレート30に設けられた挿通孔30aを基準に各部材の位置関係を説明する。例えば、「軸方向」とは、挿通孔30aの軸線Aが延びる方向である。「軸方向」とは、回転軸1が挿通される方向である。また、「軸方向」とは、回転軸1が延びる方向である。「径方向」とは、挿通孔30aの直径に沿う方向である。「径方向」は、挿通孔30aの軸線Aの方向に視たときに当該軸線Aと交差する方向である。「周方向」とは、挿通孔30aの内周面に沿う方向である。「周方向」は、挿通孔30aの軸線Aまわりの方向である。上記の説明では、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」は、挿通孔30aの軸線Aを基準にして定義した。「軸方向」、「径方向」及び「周方向」は、挿通孔30aの軸線Aに代えて、回転軸1の軸線を基準にして定義してもよい。
【0026】
図3に示すように、ベースプレート30は、軸方向におけるスラストフォイル軸受3Aの最外部を構成している。スラストフォイル軸受3Aの最外部とは、スラストカラー4から遠い側を意味する。ベースプレート30は、円環状の板部材である。ベースプレート30は、金属板である。一例として、ベースプレート30の厚みは、数mm程度である。ベースプレート30の外形形状は、円板とは異なっていてもよい。ベースプレート30の外形形状は、矩形であってもよい。ベースプレート30は、挿通孔30aと、支持面30bと、裏面30cと、を有する。
【0027】
挿通孔30aは、貫通孔である。挿通孔30aは、支持面30bから裏面30cに至る。挿通孔30aは、必ずしも厳密な円筒形状でなくてもよい。回転軸1(
図2参照)は、挿通孔30aに配置される。挿通孔30aの内径は、回転軸1の外径よりも大きい。
【0028】
支持面30bは、平坦面である。支持面30bは、挿通孔30aの軸方向に直交する方向に広がる。支持面30bは、スラストカラー4に向いている。支持面30bに形成された挿通孔30aの周囲には、複数のトップフォイル片11と、複数のバンプフォイル片21と、段差部材50と、が配置されている。段差部材50は、支持面30bに取り付けられている。トップフォイル片11の一部は、支持面30bに取り付けられている。トップフォイル片11は、バンプフォイル片21に支持されている。トップフォイル片11は、介在物が存在したとしても、トップフォイル片11自体が荷重を受ける部材として機能してよい。バンプフォイル片21は、ベースプレート30及び段差部材50に支持されている。トップフォイル片11は、バンプフォイル片21を介してベースプレート30及び段差部材50に支持されている。
【0029】
トップフォイル片11の数は、7枚である。複数のトップフォイル片11を総称して、トップフォイルと称してもよい。バンプフォイル片21の数も7枚である。複数のバンプフォイル片21を総称して、バンプフォイルと称してもよい。トップフォイル片11及びバンプフォイル片21は、周方向に沿って等間隔に配置されている。トップフォイル片11の数は、7枚に限定されない。トップフォイル片11の数は、7枚より少なくてもよい。トップフォイル片11の数は、7枚より多くてもよい。バンプフォイル片21の数は、7枚に限定されない。バンプフォイル片21の数は、7枚より少なくてもよい。バンプフォイル片21の数は、7枚より多くてもよい。
【0030】
トップフォイル片11は、傾斜部12と、取付部13と、を有している。傾斜部12は、周方向に沿って回転軸1の回転方向Rの上流側から下流側に向かって上方に傾斜する。トップフォイル片11の傾斜部12は、スラストカラー4に対面する。上方に傾斜するとは、回転方向Rの上流側から下流側に向かってベースプレート30から次第に離間する形態である。上方に傾斜するとは、回転方向Rの上流側から下流側に向かってスラストカラー4に近づく形態である。取付部13は、曲げ部14を介して傾斜部12に繋がっている。取付部13は、ベースプレート30に固定される。
【0031】
図4(a)に示すように、傾斜部12は、平面視して扇形である。扇形である傾斜部12の頂点は、切り欠かれている。傾斜部12の内周辺は、円弧である。傾斜部12の外周辺も、円弧である。傾斜部12は、平面視して略台形状である。傾斜部12は、傾斜部前端12aと、傾斜部後端12bと、傾斜部内周端12cと、傾斜部外周端12dと、を有する。傾斜部前端12a及び傾斜部後端12bは、径方向に延びる。例えば、回転軸1の回転方向Rを基準として、下流側が傾斜部後端12bであると定義すると共に、上流側が傾斜部前端12aであると定義してよい。回転軸1の回転方向Rは、反時計周りであるとする。傾斜部前端12a及び傾斜部後端12bの定義は例示である。従って、傾斜部前端12a及び傾斜部後端12bは、上記とは異なる定義に従って決められてもよい。回転軸1の回転方向Rも、時計周りであってもよい。
【0032】
傾斜部後端12bは、自由端である。傾斜部後端12bは、固定されていない。
【0033】
図5に示すように、傾斜部前端12aは、曲げ部14を介して取付部13に繋がっている。曲げ部14は、第1屈曲14aと、第2屈曲14bとを含む。第1屈曲14aは、取付部13が曲げ部14に接続された部分である。第2屈曲14bは、曲げ部14が傾斜部12に接続された部分である。第1屈曲14a及び第2屈曲14bは、いずれも鈍角である。
【0034】
傾斜部12は、バンプフォイル片21に支持されている。傾斜部12は、支持面30bに対して傾いている。例えば、傾斜部12の傾きは、第1屈曲14a及び第2屈曲14bによって決まる初期傾斜角に基づく。その結果、傾斜部12は、回転軸1の回転方向Rに沿って、ベースプレート30から次第に遠ざかる。初期傾斜角とは、荷重がゼロであるとき、トップフォイル片11の傾斜部12がベースプレート30の支持面30bに対してなす角度である。
【0035】
取付部13の径方向の長さは、曲げ部14の長さと同じである。取付部13の形状は、径方向に延びる帯状である。取付部13の長さは、曲げ部14の長さと異なってもよい。取付部13は、ベースプレート30に対して固定要素11fによって固定されている。ベースプレート30に対する取付部13の固定には、例えば、スポット溶接を採用してもよい。ベースプレート30に対する取付部13の固定には、ねじ締結構造を採用してもよい。
【0036】
バンプフォイル片21は、周方向に配列されている。バンプフォイル片21は、トップフォイル片11とベースプレート30との間に配置される。バンプフォイル片21は、後述する複数の段差支持部51のそれぞれに配置される。バンプフォイル片21の形状は、平面視して扇形である。バンプフォイル片21の大きさは、トップフォイル片11の傾斜部12の大きさよりも小さい。従って、バンプフォイル片21は、トップフォイル片11に覆われている。バンプフォイル片21の形状は、トップフォイル片11の形状と同じである。
【0037】
図4(b)に示すように、バンプフォイル片21の形状は、平面視して扇形である。扇形であるバンプフォイル片21の頂点は、切り欠かれている。バンプフォイル片21の内周辺は、円弧である。バンプフォイル片21の外周辺も、円弧である。バンプフォイル片21は、バンプフォイル前端21aと、バンプフォイル後端21bと、バンプフォイル内周端21cと、バンプフォイル外周端21dと、バンプフォイル基端21eと、を有する。バンプフォイル前端21a及びバンプフォイル後端21bは、径方向に延びる。例えば、回転軸1の回転方向Rを基準として、上流側がバンプフォイル前端21aであると定義してよい。さらに、下流側がバンプフォイル後端21bであると定義してよい。バンプフォイル基端21eは、バンプフォイル前端21aとバンプフォイル外周端21dとの間に形成される。
【0038】
バンプフォイル片21は、支持部22を有する。支持部22は、トップフォイル片11の傾斜部12を弾性的に支持する。支持部22は、波型のフォイルである。支持部22は、3個の山部22r1、22r2、22r3と、4個の谷部22s1、22s2、22s3、22s4(接触部)とを有する。以下の説明において、山部22r1、22r2、22r3をそれぞれ区別する必要がない場合には、単に山部22rと称する。谷部22s1、22s2、22s3、22s4をそれぞれ区別する必要がない場合には、単に谷部22sと称する。
【0039】
支持部22は、例えば、特開2006-57652号公報及び特開2004-270904号公報などに記載されているスプリングフォイルを採用してよい。支持部22は、特開2009-299748号公報などに記載されているバンプフォイルなどを採用してもよい。特開2006-57652号公報及び特開2004-270904号公報に記載されているスプリングフォイルは、ラジアル軸受に用いられる。同様に、特開2009-299748号公報に記載されているバンプフォイルも、ラジアル軸受に用いられる。ラジアル軸受に用いられるフォイルを平面状に展開することによって、円環板状のフォイルを得る。このフォイルは、スラストフォイル軸受3Aの支持部22として用いることができる。
【0040】
バンプフォイル基端21eは、内周から外周に向かって延びている。バンプフォイル前端21aを仮想的に延長すると、軸線Aと交差する。バンプフォイル基端21eは、バンプフォイル前端21aとは異なり、バンプフォイル基端21eを仮想的に延長しても軸線Aとは交差しない。バンプフォイル基端21eが延びる方向は、山部22r及び谷部22sが延びる方向と平行である。山部22r及び谷部22sは、バンプフォイル基端21eが延びる方向と直交する方向に沿って交互に並んでいる。
【0041】
図5に示すように、谷部22sは、平坦面を含む。複数の谷部22s1、22s2、22s3、22s4は、等間隔で並んでいる。全ての谷部22sは、トップフォイル片11には接しない。谷部22s1は、ベースプレート30に接する。谷部22s1は、バンプフォイル基端21eを含む。谷部22s1(第1部分)は、ベースプレート30には固定されていない。バンプフォイル基端21eは、自由端である。バンプフォイル基端21eは、固定されていない。バンプフォイル前端21aも、自由端である。バンプフォイル前端21aも、固定されていない。バンプフォイル片21に荷重が作用すると、バンプフォイル基端21e及びバンプフォイル前端21aは、移動することが可能である。
【0042】
谷部22s2、22s3、22s4(第2部分)は、段差部材50に接する。例えば、谷部22s4は、固定要素21fによって段差部材50に固定されている。谷部22s4は、バンプフォイル後端21bを含む。段差部材50に対するバンプフォイル後端21bの固定には、例えば、スポット溶接を採用してもよい。段差部材50に対するバンプフォイル後端21bの固定には、ねじ締結構造を採用してもよい。溶接位置は、周方向におけるバンプフォイル片21の取付位置である。従って、回転方向Rを基準にすると、バンプフォイル片21の取付位置は、下流側の端部である。一方、回転方向Rを基準にすると、トップフォイル片11の取付位置は、上流側の端部である。バンプフォイル片21の取付位置は、トップフォイル片11の位置に対して回転方向Rを基準にして逆である。
【0043】
山部22rは、アーチ状の部位である。山部22rの高さは、一定である。複数の山部22r1、22r2、22r3は、等間隔で並んでいる。山部22rは、トップフォイル片11の傾斜部12に接する。山部22rは、ベースプレート30には接しない。山部22rは、段差支持部51にも接しない。山部22r1は、谷部22s1、22s2をつなぐ。山部22r2は、谷部22s2、22s3をつなぐ。山部22r3は、谷部22s3、22s4をつなぐ。
【0044】
<段差部材>
図6に示すように、段差部材50は、ベースプレート30と別体である。段差部材50は、支持面30bに載置されている。「別体」とは、段差部材50とベースプレート30とが一つの金属塊から削り出しといった加工によって形成されていないことをいう。段差部材50は、ベースプレート30とは別の加工によって準備される。ベースプレート30も段差部材50とは別の加工によって準備される。個別に準備されたベースプレート30及び段差部材50は、それらを一体化する組み立て工程を経て、スラストフォイル軸受1A、1Bを形成する。例えばベースプレート30及び段差部材50がボルトなどの締結部材によって一体化されている場合には、締結を解除することによってベースプレート30から段差部材50を取り外すことができる。ベースプレート30と段差部材50との間には、ベースプレート30と段差部材50とが互いに接すると共にベースプレート30と段差部材50とを区分する境界線が存在する。
【0045】
段差部材50は、複数の段差支持部51と、被挟持部53と、を有する。段差支持部51は、バンプフォイル片21を支持する。段差部材50が有する段差支持部51の数は、7個である。段差支持部51の数は、7個よりも多くてもよい。段差支持部51の数は、7個より少なくてもよい。段差支持部51は、周方向におおよそ等間隔に配置されている。被挟持部53の形状は、平面視して円環である。被挟持部53の外周縁は、弧状である。
図6に示す段差部材50の形状は、平面視して円環である。被挟持部53は、ひとつづきの円弧である外周縁53eを有する。本明細書でいう「弧」とは、
図6に示すように、閉じた円弧を含む。閉じた円弧とは、例えば、中心角が360度である円弧を含む。「弧」とは、後述する変形例3で示すように、円環の一部分も含む。円環の一部分とは、例えば、中心角が360度未満である円弧を含む。中心角が360度未満である円弧であって、外周縁を含んだ被挟持部については、変形例3として例示する。円弧は必ずしも真円形状や、真円形状の一部である必要はない。被挟持部53の内側には、複数の段差支持部51が設けられている。複数の段差支持部51は、被挟持部53と一体である。
【0046】
第1貫通孔55は、被挟持部53に形成されている。第1貫通孔55は、軸受スペーサ40のためのものである。第1貫通孔55の数は、一例として4個である。周方向に沿った第1貫通孔55の配置は、中心角がおおよそ90度であってもよい。
図2に示すように、段差部材50がベースプレート30に配置された状態では、第1貫通孔55からは、ベースプレート30の支持面30bが露出する。第1貫通孔55は、ベースプレート30の貫通孔42と、重なっている。第1貫通孔55には、軸受スペーサ40が挿通される。第1貫通孔55の内径は、軸受スペーサ40の外径と同じである。または、第1貫通孔55の内径は、軸受スペーサ40の外径よりわずかに大きい。第1貫通孔55に配置した軸受スペーサ40の第1端面40aは、スラストフォイル軸受3Aのベースプレート30に当接する。軸受スペーサ40の第2端面40bは、スラストフォイル軸受3Bのベースプレート30に当接する。
【0047】
被挟持部53には、さらに、第2貫通孔56が形成されている。第2貫通孔56は、締結ボルト43のためのものである。第2貫通孔56の数は、一例として2個である。周方向に沿った第2貫通孔56の配置は、中心角がおおよそ180度であってもよい。第2貫通孔56の配置の基準となる第2基準円の直径は、第1貫通孔55の配置の基準となる第1基準円の直径より小さくてもよい。第2貫通孔56は、第1貫通孔55よりも内側に形成されてもよい。
図5に示すように、締結ボルト43は、段差部材50をベースプレート30に固定する。締結ボルト43の先端部分は、ベースプレート30のネジ孔32にねじ込まれる。従って、第2貫通孔56は、ベースプレート30のネジ孔32と重なっている。第2貫通孔56の内径は、第1貫通孔55の内径よりも小さくてよい。
【0048】
図3に示すように、段差部材50は、第1シム60(板部材)と、第2シム70(板部材)と、第3シム80(板部材)と、を有する。第1シム60と、第2シム70と、第3シム80は、金属製の板部材である。第1シム60、第2シム及び第3シム80の厚みは、それぞれ一定である。第1シム60、第2シム及び第3シム80形状は、板状である。第1シム60、第2シム70及び第3シム80は、それらの厚み方向に積層される。
【0049】
段差部材50を構成するシムの数は、バンプフォイル片21の山部22rの数と同じである。
図5に示す構成では、山部22rの数は3個である。従って、シムの数も3枚である。段差部材50を構成するシムの数は、谷部22sの数よりも1つ少ない。
図5に示す構成では、谷部22sの数は、4個である。従って、シムの数は、4個より1つ少ない3枚である。
【0050】
<第1シム>
図7及び
図8に示すように、第1シム60(第1板部材)は、複数の第1段差支持領域61(第1支持領域)と、第1被挟持部63と、含む。
【0051】
第1段差支持領域61は、後述する第2段差支持領域71及び第3段差支持領域81と共に段差支持部51を構成する。第1段差支持領域61は、第1段差支持前端面61aと、第1段差支持後端面61bと、第1段差内周領域61cと、を有する。
【0052】
第1シム60は、第1シム裏面60bと、第1シム主面60fと、を有する。第1シム裏面60bは、ベースプレート30に接する。第1シム主面60fは、第2シム70に接する。第1シム裏面60bの全面は、ベースプレート30の支持面30bに接する。第1シム主面60fは、第2シム70に接する部分と、第2シム70に接しない部分と、を有する。第2シム70に接しない部分は、第1段差支持領域61に含まれる。第1段差支持領域61が含む第2シム70に接しない部分は、第1段差面61sである。第1段差面61sは、第1段差支持前端面61aに繋がっている。第1段差面61sは、バンプフォイル片21の谷部22s2を支持する(
図5参照)。
【0053】
複数の第1段差支持領域61の形状は、それぞれ同じである。複数の第1段差支持領域61は、第1被挟持部63に沿って周方向に配列されている。第1被挟持部63の平面形状は円環である。複数の第1段差支持領域61は、第1被挟持部63の内側に配置されている。外径側から内径側に伸びる溝67は、周方向に隣接する2つの第1段差支持領域61の間に形成されている。溝67は、縮小部67aと拡大部67bとを有する。縮小部67aの周方向の幅は、外径側から内径側に向かって縮小する。縮小部67aでは、軸線Aに近づくに従って、互いに隣接する第1段差支持領域61の間隔が狭くなる。拡大部67bの周方向の幅は、外径側から内径側に向かって拡大する。拡大部67bでは、軸線Aに近づくに従って、互いに隣接する第1段差支持領域61の間隔が広くなる。
【0054】
第1段差支持領域61は、第1切り欠き61pを含む。第1切り欠き61pは、第1段差内周領域61cの一部が切り取られることによって、形成されている。第1切り欠き61pは、回転方向Rに沿って第1段差内周領域61cの上流側に形成されている。第1切り欠き61pは、第1段差支持前端面61a側に形成されている。
【0055】
図7に示すように、第1段差支持領域61は、段差内周縁61dを有する。段差内周縁61dは、円弧状である第1内周縁部61d1と、円弧状である第2内周縁部61d2と、を含む。第1内周縁部61d1は、第1段差支持前端面61aに繋がっている。第2内周縁部61d2は、第1段差支持後端面61bに繋がっている。回転方向Rを基準とした場合に、第1内周縁部61d1は、第2内周縁部61d2よりも上流側である。
【0056】
軸線Aから第1内周縁部61d1までの距離は、第1半径として規定される。軸線Aから第2内周縁部61d2までの距離は、第2半径として規定される。第1内周縁部61d1の第1半径は、第2内周縁部61d2の第2半径より、大きい。第1内周縁部61d1は、第2内周縁部61d2よりも軸線Aから遠い。
【0057】
第1内周縁部61d1は、連結縁部61d3によって第2内周縁部61d2に繋がっている。連結縁部61d3は、径方向に沿って延びてもよい。連結縁部61d3は、径方向に対して傾いていてもよい。連結縁部61d3は、径方向に対して傾いている。第1切り欠き61pは、連結縁部61d3と第1内周縁部61d1とに囲まれた部分である。
【0058】
第2内周縁部61d2の位置は、第1内周縁部61d1よりも内側である。第1段差内周領域61cは、第1内周縁部61d1を径方向に延長した仮想線と、第2内周縁部61d2と、連結縁部61d3と、第1段差支持後端面61bと、に囲まれた領域である。第1段差内周領域61cは、内周面重複領域61c1と、内周面露出領域61c2(
図8参照)と、を含む。内周面重複領域61c1は、後述する第2シム70及び第3シム80と重なる。内周面重複領域61c1と内周面露出領域61c2との境界には、第2シム70及び第3シム80の端面によって構成されるシム2枚分の段差が生じる。
【0059】
内周面露出領域61c2は、第2シム70とは重ならない。内周面露出領域61c2は、露出する。内周面露出領域61c2は、連結縁部61d3を含む。内周面重複領域61c1は、第1段差支持後端面61bを含む。内周面露出領域61c2の位置は、内周面重複領域61c1よりも上流側である。内周面露出領域61c2の面積は、内周面重複領域61c1の面積よりも大きい。
【0060】
図8に示すように、第1被挟持部63は、後述する第2被挟持部73及び第3被挟持部83と共に被挟持部53を構成する。第1被挟持部63は、第1被挟持外周面63aと、第1被挟持内周面63bと、を有する。第1被挟持外周面63aは、外周縁53eを構成する一部分である。第1被挟持外周面63aの平面形状は、閉じた円弧(円環)である。第1被挟持部63は、第1貫通孔55を構成する第1孔部63sと、第2貫通孔56を構成する第2孔部63tと、を有する。
【0061】
<第2シム>
図7及び
図9に示すように、第2シム70(第2板部材)は、複数の第2段差支持領域71(第2支持領域)と、第2被挟持部73と、を含む。
【0062】
第2段差支持領域71は、第2段差支持前端面71aと、第2段差支持後端面71bと、第2段差内周領域71cと、を有する。
【0063】
第2シム70は、第1シム主面60fに接する第2シム裏面70bと、第3シム80に接する第2シム主面70fと、を有する。第2シム裏面70bは、第1シム主面60fに接する。第2シム主面70fは、第3シム80に接する。第2シム裏面70bの全面は、第1シム主面60fに接する。第2シム主面70fは、第3シム80に接する部分と、第3シム80に接しない部分と、を有する。第3シム80に接しない部分は、第2段差支持領域71に含まれる。第2段差支持領域71が含む第3シム80に接しない部分は、第2段差面71sである。第2段差面71sは、バンプフォイル片21の谷部22s3を支持する(
図5参照)。
【0064】
第2段差面71sは、第2段差支持前端面71aを含む。第2段差支持前端面71aから第2段差支持後端面71bまでの周方向の長さは、第1段差支持前端面61aから第1段差支持後端面61bまでの周方向の長さよりも短い。第1段差面61sは、この周方向の長さの差分によって形成されている。周方向の長さの差分によって第2段差支持前端面71aは、第1段差支持前端面61aに対してずらし量P(
図7参照)だけずれている。周方向の長さの差分は、ずらし量Pに相当する。ずらし量Pは、バンプフォイル片21の谷部22sのピッチと同じであってもよい。
【0065】
第2段差支持領域71は、第2切り欠き71pを含む。第2段差内周領域71cの一部が切り取られることによって、第2切り欠き71pが形成されている。第2切り欠き71pは、回転方向Rに沿って第2段差内周領域71cの上流側に形成されている。第2切り欠き71pは、第2段差支持前端面71a側に形成されている。
【0066】
第2段差支持領域71も第1段差支持領域61と同様に、段差内周縁71dを有する。段差内周縁71dは、第1内周縁部71d1と、第2内周縁部71d2と、連結縁部71d3と、を含む。第1内周縁部71d1の形状は、円弧である。第2内周縁部71d2の形状も、円弧である。連結縁部71d3は、第1内周縁部71d1と第2内周縁部71d2とをつなぐ。第2段差支持領域71の第1内周縁部71d1の半径は、第1段差支持領域61の第1内周縁部61d1の半径と同じである。第2段差支持領域71の第2内周縁部71d2の半径も、第1段差支持領域61の第2内周縁部61d2の半径と同じである。第2段差支持領域71の第2内周縁部71d2の周方向の長さは、第1段差支持領域61の第2内周縁部61d2の周方向の長さより短い。その結果、内周面露出領域61c2が形成される。
【0067】
第2段差支持領域71において、第1内周縁部71d1と第2段差支持前端面71aとがつながっている部分には、角部71eが形成される。角部71eは、第1段差支持領域61の連結縁部61d3と第1内周縁部61d1とがつながる角部61eと一致する。
【0068】
第2段差内周領域71cは、第1段差内周領域61cとは異なる。第2段差内周領域71cの全面は、重複領域である。第2段差内周領域71cの全面には、第3シム80が重なる。例えば、第2段差支持領域71の第2内周縁部61d2の周方向の長さは、第1段差支持領域61の第2内周縁部61d2の周方向の長さより短い。
【0069】
第2被挟持部73は、第2被挟持外周面73aと、第2被挟持内周面73bと、を有する。第2被挟持外周面73aは、第1被挟持外周面63aと共に外周縁53eを構成する一部分である。第2被挟持外周面73aの平面形状は、閉じた円弧(円環)である。第2被挟持部73は、孔部73sと、孔部73tと、を有する。孔部73sは、第1貫通孔55を構成する。孔部73tは、第2貫通孔56を構成する。
【0070】
<第3シム>
図7及び
図10に示すように、第3シム80は、複数の第3段差支持領域81と、第3被挟持部83と、を含む。
【0071】
第3段差支持領域81は、第3段差支持前端面81aと、第3段差支持後端面81bと、第3段差内周縁81dと、を有する。
【0072】
第3シム80は、第3シム裏面80bと、第3シム主面80fと、を有する。第3シム裏面80bは、第2シム主面70fに接する。第3シム主面80fは、谷部22s4が固定される。第3シム裏面80bの全面は、第2シム主面70fに接する。第3段差支持領域81は、第3段差面81sを有する。第3段差面81sには、バンプフォイル片21の谷部22s4が固定される(
図5参照)。谷部22s4を固定するための固定要素21fは、第3シム80のみに固定されていてもよい。固定要素21fは、第3シム80だけでなくそのほかの要素に固定されていてもよい。
【0073】
第3段差支持前端面81aから第3段差支持後端面81bまでの周方向の長さは、第2段差支持前端面71aから第2段差支持後端面71bまでの周方向の長さよりも短い。第2段差面71sは、この周方向の長さの差分によって形成されている。第2段差支持前端面71aは、第3段差支持前端面81aに対してずらし量Pだけずれている。
【0074】
第3段差支持領域81は、切り欠きを含まない。段差部材50を構成する複数のシムのうち、最も上に配置されるシムは、切り欠きを含まなくてよい。軸線Aから第3段差内周縁81dまでの距離は、軸線Aから第1段差支持領域61の第2内周縁部61d2までの距離と同じである。軸線Aから第3段差支持領域81の段差内周縁81dまでの距離は、軸線Aから第2段差支持領域71の第2内周縁部61d2までの距離と同じである。
【0075】
第3被挟持部83は、第3被挟持外周面83aと、第3被挟持内周面83bと、を有する。第3被挟持外周面83aは、第1被挟持外周面63a及び第2被挟持外周面73aと共に外周縁53eを構成する一部分である。第3被挟持外周面83aの平面形状は、閉じた円弧(円環)である。第3被挟持部83は、第1貫通孔55を構成する孔部83sと、第2貫通孔56を構成する孔部83tと、を有する。
【0076】
<作用効果>
上述した第1シム60、第2シム70及び第3シム80の積層構造は、仮想的な斜面を構成する。スラストフォイル軸受3A、3Bは、トップフォイル片11とスラストカラー4との間に形成される潤滑流体膜によって支持力を発揮する。潤滑流体膜は、トップフォイル片11とスラストカラー4との間に形成される隙間の形状の影響を受ける。隙間の形状は、トップフォイル片11の傾きによって設定される。トップフォイル片11は、バンプフォイル片21によって支持されている。バンプフォイル片21は、段差部材50によって支持されている。隙間の形状は、段差部材50の形状によって決まる。
【0077】
図5に示すように、バンプフォイル片21は、段差部材50に接している。しかし、バンプフォイル片21の全面は、段差部材50に接していない。バンプフォイル片21は、谷部22sにおいて段差部材50に接している。バンプフォイル片21の傾きは、谷部22sに接する段差部材50の形状によって決まる。例えば、バンプフォイル片21の傾きは、仮想的な斜面200とみなすことができる。仮想的な斜面200とは、谷部22sがそれぞれ接する段差部材50の部分を仮想的に結んだ仮想的な面である。例えば、谷部22s2と谷部22s3の間は、連続的に高さが増加する斜面である必要はない。谷部22s2と谷部22s3の間は、不連続的に高さが増加する段差を含んでいてもよいということに発明者らは想到した。段差によって仮想的な斜面を実現するためには、厚さが精密に制御されたシムを積層させればよいことに、発明者らはさらに想到した。
【0078】
スラストフォイル軸受3A、3Bは、回転軸1が挿通される挿通孔30a及び支持面30bを有するベースプレート30と、支持面30bに支持される複数のトップフォイル片11と、支持面に載置され、ベースプレート30に対して別体で形成されると共に、複数の段差面61s、71s、81sによって構成された複数の段差支持部51を含む段差部材50と、トップフォイル片11とベースプレート30との間に配置されると共に複数の段差支持部51のそれぞれに配置され、段差面61s、71s、81sに接する谷部22sを含む複数のバンプフォイル片と、を備える。
【0079】
スラストフォイル軸受3A、3Bは、ベースプレート30とは別体とされた段差部材50を有する。段差部材50によれば、設計値からの段差寸法のずれを小さくしやすくなる。その結果、段差寸法のずれに起因する負荷能力の低下が抑制される。従って、スラストフォイル軸受3A、3Bは、所望の負荷能力を発揮することができる。
【0080】
スラストフォイル軸受3A、3Bの複数の段差支持部51は、挿通孔30aを囲むように設けられる。このような構成によれば、複数の段差支持部51を挿通孔30aの周囲に設けることができる。
【0081】
スラストフォイル軸受3A、3Bの第1シム60は、弧状の外周縁を含む第1被挟持部63と、挿通孔30aの軸線Aの方向から見て、第1被挟持部63と挿通孔30aとの間に設けられた第1段差支持領域61と、を含む。第2シム70は、弧状の外周縁を含む第2被挟持部73と、挿通孔30aの軸線Aの方向から見て、第2被挟持部73と挿通孔30aとの間に設けられた第2段差支持領域と、を含む。段差支持部51は、第1段差支持領域61と第2段差支持領域71とが積層して形成される。このような構成によっても、所望の負荷能力を発揮することができる。
【0082】
スラストフォイル軸受3A、3Bの第2段差支持領域71の形状は、挿通孔30aの軸線Aの方向から見て第1段差支持領域61の形状と異なる。このような構成によれば、バンプフォイル片21を支持する仮想的な斜面200を形成することができる。
【0083】
スラストフォイル軸受3A、3Bの第1段差支持領域61は、挿通孔30aを囲むように延びる段差内周縁61dを含む。段差内周縁61dは、第1内周縁部61d1と、第2内周縁部61d2と、を含む。挿通孔30aの軸線Aから第1内周縁部61d1までの距離は、挿通孔30aの軸線Aから第2内周縁部61d2までの距離と異なる。このような構成によっても、所望の負荷能力を発揮することができる。
【0084】
上記のスラストフォイル軸受3A、3Bの被挟持部53は、第1シム60、第2シム70及び第3シム80をベースプレート30に固定するための締結ボルト43が挿通される第2貫通孔56を有する。このような構成によれば、段差部材50をベースプレート30に取付ることができる。
【0085】
上記のスラストフォイル軸受3A、3Bの第2貫通孔56の数は、段差支持部51の数と異なる。このような構成によっても、段差部材50をベースプレート30に取り付けることができる。
【0086】
本開示のスラストフォイル軸受は、上記の実施形態に限定されない。
【0087】
<変形例1>
図11は、変形例1のスラストフォイル軸受3Sの要部を示す断面図である。変形例1のスラストフォイル軸受3Sは、段差部材50Sを有する。段差部材50Sは、第1シム60Sと、第2シム70Sと、第3シム80Sと、第4シム90Sと、第5シム100Sと、を有する。バンプフォイル片21Sは、6個の谷部22sを有する。谷部22s1は、支持面30bに接する。谷部22s2は、第1シム60Sに接する。谷部22s3は、第2シム70Sに接する。谷部22s4は、第3シム80Sに接する。谷部22s5は、第4シム90Sに接する。谷部22s6は、第5シム100Sに接する。上記実施形態では、第1シム60の厚さ、第2シム70の厚さ及び第3シム80の厚さは、互いに同じであった。変形例1では、第1シム60Sの厚さ、第2シム70Sの厚さ、第3シム80Sの厚さ、第4シム90Sの厚さ及び第5シム100Sの厚さは、互いに異なる。
【0088】
第1シム60Sの厚みは、厚み(t1)である。第2シム70Sの厚みは、厚み(t2)である。厚み(t2)は、厚み(t1)よりも大きい。第3シム80Sの厚みは、厚み(t3)である。第4シム90Sの厚みは、厚み(t4)である。第5シム100Sの厚みは、厚み(t5)である。第1シム60Sは、最も厚い。第5シム100Sは、最も薄い。段差部材50Sによって実現されるトップフォイル片11Sの傾斜部12Sは、湾曲する。傾斜部12Sは、支持面30bに対する傾きが次第に小さくなるように湾曲している。例えば、傾斜部12Sは、スラストカラー4に向かって凸であるとも言える。
【0089】
図12は、スラストフォイル軸受3Aの負荷能力と変形例1のスラストフォイル軸受3Sの負荷能力と示す。横軸xは周方向の位置を示す。縦軸P(x)は流体潤滑膜の圧力を示す。縦軸P(x)は、スラストフォイル軸受3A、3Sの負荷能力を示す。グラフG11aは、実施形態のスラストフォイル軸受3Aの負荷能力を示す。グラフG11bは、変形例1のスラストフォイル軸受3Sの負荷能力を示す。グラフG11a、G11bを参照すると、メッシュによって示す領域G11cの分だけ、スラストフォイル軸受3Sの流体潤滑膜の圧力が高くなっていることがわかる。この上昇分は、トップフォイル片11Sの傾斜部12Sが湾曲していることに起因している。
【0090】
変形例1のスラストフォイル軸受3Sは、第1シム60S、第2シム70S、第3シム80S、第4シム90S及び第5シム100Sの厚みを異ならせることにより、スラストフォイル軸受3Sの負荷能力を向上させることができる。
【0091】
<変形例2>
図13は、変形例2のスラストフォイル軸受3Rの要部を示す断面図である。上記実施形態では、ずらし量Pが一定であった。
図13に示すように、変形例2の段差部材50Rは、互いに異なるずらし量P1、P2、P3、P4、P5に従って、第1シム60、第2シム70、第3シム80、第4シム90及び第5シム100が配置されている。第1シム60、第2シム70、第3シム80、第4シム90及び第5シム100の厚みは、互いに同じであるが、必ずしもすべてのシムの厚みが同じである必要はない。
【0092】
第2シム70の第2段差支持前端面71aは、第1シム60の第1段差支持前端面61aに対して、ずらし量P1だけずれている。第3シム80の第3段差支持前端面81aは、第2シム70の第2段差支持前端面71aに対して、ずらし量P2だけずれている。ずらし量P1、P2の相違は、第1段差面61sの面積と第2段差面71sの面積の相違となる。以下、同様に、第4シム90の第4段差支持前端面91aは、第3シム80の第3段差支持前端面81aに対して、ずらし量P3だけずれている。第5シム100Sの第5段差支持前端面100aは、第4シム90の第4段差支持前端面91aに対して、ずらし量P5だけずれている。
【0093】
変形例2の段差部材50Rは、上側のシムほど、ずらし量Pが大きい。例えば、第2段差面71sの面積は、第1段差面61sの面積よりも大きい。第3段差面81s、第4段差91s及び第5段差面101sの面積についてもそれぞれのずれ量P2、P3、P4に応じる。
【0094】
バンプフォイル片21Rは、段差部材50Rに支持されている。バンプフォイル片21Rに支持されるトップフォイル片11Rの傾斜部12Rは、回転方向Rに沿って上流側に凸となるように湾曲する。その結果、変形例2と同様に、スラストフォイル軸受3Rの負荷能力を向上させることができる。
【0095】
変形例2では、第2シム70は、バンプフォイル片21Rの谷部22s2を直接的には支持していない。換言すると、第2シム70には、バンプフォイル片21が接しない。さらに、第4シム90には、谷部22s4と谷部22s45が接している。このような構成によると、トップフォイル片11Rの傾斜部12Rの形状を単純な2次関数的な湾曲面ではなく、3次関数的な湾曲面に形成することもできる。
図13に示す例では、トップフォイル片11Rは、傾斜部12Rの回転方向Rにおける下流側が次第に反り上がるように湾曲している。これにより、トップフォイル片11Rの回転方向Rにおける下流側における負荷能力を向上させることができる。
【0096】
変形例2のトップフォイル片11Rは、傾斜部12Rの上流側と下流側とで凸になる方向が逆向きである。その結果、トップフォイル片11Rの傾斜部12Rの断面は、逆S字状である。
【0097】
<変形例3>
上述の説明では段差部材50が、平面視して円環である1個の部材である構成を例示した。段差部材50は、1個の円環状の部材に限定されない。例えば、段差部材は、複数の段差部材片によって構成されてもよい。段差部材を構成する段差部材片の数は、2個であってもよい。段差部材を構成する段差部材片の数は、2個以上の整数であってもよい。
図14には、2個の段差部材片50Tによって構成された段差部材50Cの例示である。
図14に示すように、段差部材片50Tの外周縁50C1は、円弧状である。段差部材片50Tに含まれる被挟持部53Tの外周縁53T1も円弧である。
【0098】
<変形例4>
上述の説明では、バンプフォイル片21のバンプフォイル基端21eは、ベースプレート30に接していた。例えば、
図15に示すように、バンプフォイル片21Dのバンプフォイル基端21eは、第1段差面61sに配置されてもよい。この構成によれば、バンプフォイル片21は、段差部材50に接する。しかし、バンプフォイル片21は、ベースプレート30に接しない。
【0099】
<さらなる変形例>
例えば、段差部材50は、互いに異なる厚みを有する複数のシムを備えており、互いに異なるずらし量Pに従って構成されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 回転軸
3A,3B,3R,3S スラストフォイル軸受
11 トップフォイル片
21 バンプフォイル片
22s1,22s2,22s3,22s4 谷部
30 ベースプレート
30a 挿通孔
30b 支持面
55 第1貫通孔
56 第2貫通孔
50,50R,50S 段差部材
51 段差支持部
53 被挟持部
60 第1シム(第1板部材)
61 第1段差支持領域(第1支持領域)
61d 段差内周縁(内周縁)
61d1 第1内周縁部
61d2 第2内周縁部
61s 第1段差面
63 第1被挟持部
70 第2シム(第2板部材)
71 第2段差支持領域(第2支持領域)
71s 第2段差面
73 第2被挟持部
80 第3シム
81 第3段差支持領域
81s 第3段差面
83 第3被挟持部
A 軸線