(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002839
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】列検出システムおよび農業機械
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A01B69/00 303D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103206
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】荒川 侑摩
(72)【発明者】
【氏名】長尾 充朗
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB01
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043EA22
2B043EA23
2B043EA35
2B043EB08
2B043EB18
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC15
2B043EE01
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】関心領域の適切な選択により列検出処理を効率的に実行する。
【解決手段】本開示の列検出システムは、農業機械に取り付けられ、地面を撮影して地面における第1領域についての第1画像を生成する第1撮像装置と、農業機械に取り付けられ、地面を撮影して前記地面において前記第1領域よりも後方にシフトした第2領域についての第2画像を生成する第2撮像装置と、第1画像および第2画像の画像処理を行う処理装置とを備える。第2撮像装置は各前輪の少なくとも一部および各後輪の少なくとも一部を第2画像内に含むように設けられる。処理装置は第1画像を第1上面視画像に変換し、第2画像を第2上面視画像に変換し、第2上面視画像における各前輪の位置および各後輪の位置に基づいて第1上面視画像から関心領域を選択し、関心領域を対象とする列検出処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の前輪および一対の後輪を含む複数の車輪を備える農業機械に取り付けられ、地面を撮影して前記地面における第1領域についての第1画像を生成する第1撮像装置と、
前記農業機械に取り付けられ、前記地面を撮影して前記地面において前記第1領域よりも後方にシフトした第2領域についての第2画像を生成する第2撮像装置と、
前記第1画像および前記第2画像の画像処理を行う処理装置と、
を備え、
前記第2撮像装置は、各前輪の少なくとも一部および各後輪の少なくとも一部を前記第2画像内に含むように設けられ、
前記処理装置は、
前記第1画像を、前記地面の上方から見た第1上面視画像に変換し、
前記第2画像を、前記地面の上方から見た第2上面視画像に変換し、
前記第2上面視画像における各前輪の位置および各後輪の位置に基づいて前記第1上面視画像から関心領域を選択し、前記関心領域を対象とする列検出処理を実行する、
列検出システム。
【請求項2】
前記処理装置は、
前記第2上面視画像における前記一対の前輪の領域および前記一対の後輪の領域を検出し、
前記一対の前輪の前記領域および前記一対の後輪の前記領域に基づいて、前記関心領域の幅を決定する、
請求項1に記載の列検出システム。
【請求項3】
前記関心領域は、前記第1上面視画像の中央を縦方向に延びる、前記幅を有する長方形の領域である、請求項2に記載の列検出システム。
【請求項4】
前記第1画像および前記第2画像は、カラー画像であり、
前記処理装置は、
前記一対の前輪および前記一対の後輪の色情報に基づいて、前記第2上面視画像における前記一対の前輪の前記領域および前記一対の後輪の前記領域を決定する、
請求項2に記載の列検出システム。
【請求項5】
前記処理装置は、
前記一対の前輪の前記領域から一対の前輪基準点を抽出し、
前記一対の後輪の前記領域から一対の後輪基準点を抽出し、
前記一対の前輪基準点および前記一対の後輪基準点の一方または両方に基づいて前記関心領域の前記幅を決定する、
請求項4に記載の列検出システム。
【請求項6】
前記処理装置は、
前記第2上面視画像を左部分と右部分とに分割する縦基準線を決定し、
前記一対の前輪の前記領域から、前記縦基準線に最も近い一対の画素を前記一対の前輪基準点として選択し、
前記一対の後輪の前記領域から、前記縦基準線に最も近い一対の画素を前記一対の後輪基準点として選択し、
前記一対の前輪基準点の距離によって規定される前輪間隔、および前記一対の後輪基準点の距離によって規定される後輪間隔の一方に基づいて、前記関心領域の前記幅を決定する、
請求項5に記載の列検出システム。
【請求項7】
前記処理装置は、
前記前輪間隔および前記後輪間隔のうちの相対的に小さくない方の間隔に基づいて前記関心領域の幅を決定する、
請求項6に記載の列検出システム。
【請求項8】
前記処理装置は、
前記前輪間隔および前記後輪間隔の一方に0.9以上2.0以下の数値を乗算した値を前記関心領域の幅として用いる、
請求項6に記載の列検出システム。
【請求項9】
前記処理装置は、
前記縦基準線に直交する横基準線であって、前記第2上面視画像の前記左部分および前記右部分のそれぞれを上部分と下部分とに分割し、前記一対の前輪の前記領域を前記上部分に含み、前記一対の後輪の前記領域を前記下部分に含む、横基準線を決定し、
エッジ検出技術によって前記第2上面視画像におけるエッジを検出し、
前記第2上面視画像における前記一対の前輪の前記領域および前記一対の後輪の前記領域と、前記エッジと、の重複部分を決定し、
前記縦基準線および前記横基準線によって分割された4つの部分のそれぞれにおいて、前記重複部分の前記縦基準線に最も近い位置にある画素を前記前輪基準点および前記後輪基準点として選択する、
請求項6に記載の列検出システム。
【請求項10】
前記第1画像および前記第2画像は、カラー画像であり、
前記処理装置は、
前記第1上面視画像の前記関心領域から、作物列の色を強調した第1上面視強調画像を生成し、
前記第1上面視強調画像から、前記作物列の色の指標値が閾値以上の画素と、前記指標値が前記閾値未満の画素とに分類された、第1上面視二値化画像を生成し、
前記第1上面視二値化画像に基づいて、前記地面上の作物列を検出する、
請求項1に記載の列検出システム。
【請求項11】
前記処理装置は、
前記第1上面視画像の前記関心領域を前記第2上面視画像内に延長し、
前記第2上面視画像における前記関心領域から、前記作物列の色を強調した第2上面視強調画像を生成し、
前記第2上面視強調画像から、前記作物列の色の前記指標値が前記閾値以上の画素と、前記指標値が前記閾値未満の画素とに分類された、第2上面視二値化画像を生成し、
前記第1上面視二値化画像および第2上面視二値化画像に基づいて、前記地面上の作物列を検出する、
請求項10に記載の列検出システム。
【請求項12】
前記第1撮像装置は、前方斜め下向きに取り付けられており、
前記第2撮像装置は、下向きに取り付けられている、
請求項1に記載の列検出システム。
【請求項13】
前記農業機械は作業車両であり、
前記第2撮像装置は前記作業車両の下部に取り付けられている、
請求項1に記載の列検出システム。
【請求項14】
前記処理装置は、前記列検出によって決定された作物列または畝の位置に基づいて目標経路を生成する、
請求項1に記載の列検出システム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の列検出システムと、
前記列検出システムが検出した作物列または畝の位置に基づいて前記農業機械の進行方向を制御する自動操舵装置と、
を備える農業機械。
【請求項16】
操舵輪を含む走行装置をさらに備え、
前記自動操舵装置は、前記列検出システムが検出した前記作物列または前記畝の位置に基づいて、前記操舵輪の操舵角を制御する、
請求項15に記載の農業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、列検出システム、および列検出システムを備える農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場で使用されるトラクタなどの作業車両の自動化に向けた研究開発が進められている。例えば、精密な測位が可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位システムを利用して自動操舵で走行する作業車両が実用化されている。自動操舵に加えて速度制御を自動で行う作業車両も実用化されている。
【0003】
また、圃場における作物の列(作物列)または畝をカメラなどの撮像装置を用いて検出し、検出した作物列または畝に沿って作業車両の走行を制御するビジョン・ガイダンスシステムが開発されつつある。
【0004】
特許文献1は、列状に形成された畝に作物が植えられた耕作地を畝に沿って走行する作業機を開示している。特許文献1は、車載カメラで耕作地を斜め上方から撮影して取得した原画像を二値化処理した後、平面射影変換画像を生成することを記載している。特許文献1が開示する技術では、平面射影変換画像を回転させることにより、向きが異なる多数の回転画像を生成し、畝と畝との間の作業通路を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像認識技術を利用して農業機械が作物列または畝などの列領域に沿って自動操舵で移動するとき、列領域を高い位置精度で検出することが求められる。
【0007】
本開示は、列領域の検出精度を向上させることが可能な列検出システム、および列検出システムを備える農業機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様による列検出システムは、一対の前輪および一対の後輪を含む複数の車輪を備える農業機械に取り付けられ、地面を撮影して前記地面における第1領域についての第1画像を生成する第1撮像装置と、前記農業機械に取り付けられ、前記地面を撮影して前記地面において前記第1領域よりも後方にシフトした第2領域についての第2画像を生成する第2撮像装置と、前記第1画像および前記第2画像の画像処理を行う処理装置と、
を備える。前記第2撮像装置は、各前輪の少なくとも一部および各後輪の少なくとも一部を前記第2画像内に含むように設けられる。前記処理装置は、前記第1画像を、前記地面の上方から見た第1上面視画像に変換し、前記第2画像を、前記地面の上方から見た第2上面視画像に変換し、前記第2上面視画像における各前輪の位置および各後輪の位置に基づいて前記第1上面視画像から関心領域を選択し、前記関心領域を対象とする列検出処理を実行する。
【0009】
本開示の他の態様による農業機械は、上記の列検出システムと、前記列検出システムが検出した作物列または畝の位置に基づいて前記農業機械の進行方向を制御する自動操舵装置と、を備える農業機械。
【0010】
本開示の包括的または具体的な態様は、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、もしくはコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体、またはこれらの任意の組み合わせによって実現され得る。コンピュータが読み取り可能な記憶媒体は、揮発性の記憶媒体を含んでいてもよいし、不揮発性の記憶媒体を含んでいてもよい。装置は、複数の装置で構成されていてもよい。装置が2つ以上の装置で構成される場合、当該2つ以上の装置は、1つの機器内に配置されてもよいし、分離した2つ以上の機器内に分かれて配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の実施形態によれば、作物列または畝などの列領域の検出精度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による列検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】処理装置によって実行される動作の概要を示すフローチャートである。
【
図3A】農業機械に取り付けられた第1撮像装置によって取得された第1画像の例を示す図である。
【
図3B】農業機械に取り付けられた第2撮像装置によって取得された第2画像の例を示す図である。
【
図4A】第1画像を変換して作成される、地面の上方から見た第1上面視画像の例を示す図である。
【
図4B】第2画像を変換して作成される、地面の上方から見た第2上面視画像の例を示す図である。
【
図5】第2上面視画像から検出された一対の前輪の領域および一対の後輪の領域を示す図である。
【
図6】第2上面視画像から検出されたエッジの画像の例を示す図である。
【
図7】第2上面視画像から得られた前輪基準点および後輪基準点の配置例を示す図である。
【
図8】第1上面視画像における関心領域の例を記載した図面である。
【
図9】農業機械に取り付けられた第1撮像装置および第2撮像装置が地面を撮影する様子を模式的に示す側面図である。
【
図10】車両座標系Σbと、第1撮像装置のカメラ座標系Σc1と、第2撮像装置のカメラ座標系Σc2と、地面に固定されたワールド座標系Σwとの関係を模式的に示す斜視図である。
【
図11】地面に複数の作物列が設けられている圃場の一部を模式的に示す上面図である。
【
図12】
図11に示す農業機械の撮像装置が取得する画像の例を模式的に示す図である。
【
図13】農業機械の走行方向が、作物列が延びる方向に対して傾斜している状態を模式的に示す上面図である。
【
図14】
図13に示す農業機械の撮像装置が取得する画像の例を模式的に示す図である。
【
図15】地面に曲線状の複数の作物列が設けられている圃場の一部を模式的に示す上面図である。
【
図16】処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図17】処理装置の動作の例を示すフローチャートである。
【
図18】第1の姿勢にある撮像装置のカメラ座標系Σc1、および第2の姿勢にある仮想的な撮像装置のカメラ座標系Σc3のそれぞれと、基準平面Reとの配置関係を模式的に示す斜視図である。
【
図19】第1画像、第2画像、第1上面視画像、および第2上面視画像の例を示す図である。
【
図20】
図19の例において生成される合成画像の例を示す図である。
【
図21】地面に置かれた校正用被写体が2つの撮像装置によって撮影されている様子の例を示す図である。
【
図22】校正用被写体を撮影して得られる画像の例を示す図である。
【
図23】
図20に示す合成画像におけるRGB値を、「2×g-r-b」に変換した合成強調画像を示す図である。
【
図24】
図23に示す合成強調画像を二値化した二値画像の例を示す図である。
【
図25】
図23に示す合成強調画像における緑過剰指標(ExG)のヒストグラムを示す図である。
【
図26】3本の作物列が映る画像の例を模式的に示す図である。
【
図27】
図26に示す画像について得られた、走査ラインの位置と指標値の積算値との関係を模式的に示す図である。
【
図28】作物列が斜めに延びている画像の例を示す図である。
【
図29】
図28に示す画像について得られた、走査ラインの位置と指標値の積算値との関係を模式的に示す図である。
【
図30】走査ラインの方向を変化させることにより、作物列の方向に平行な走査ラインの方向を探索する手順の例を示すフローチャートである。
【
図32】作業機が装着された状態の農業機械の例を模式的に示す側面図である。
【
図33】農業機械および作業機の概略的な構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に関する重複する説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似の機能を有する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0014】
下記の実施形態は例示であり、本開示の技術は、以下の実施形態に限定されない。例えば、以下の実施形態について示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序、表示画面のレイアウトなどは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。また、技術的に矛盾が生じない限りにおいて、一の態様と他の態様とを組み合わせることが可能である。
【0015】
本開示における「農業機械」は、「耕す」、「植える」、「収穫する」、「薬剤を散布する」などの農業の基本的な作業を圃場で行う機械を広く含む。農業機械は、圃場内の地面に対して、耕耘、播種、防除、施肥、作物の植え付け、または収穫などの農作業を行う機能および構造を備える機械である。これらの農作業を「対地作業」または単に「作業」と称することがある。トラクタのような作業車両が単独で「農業機械」として機能する場合に限られず、作業車両に装着または牽引される作業機(インプルメント)と作業車両の全体がひとつの「農業機械」として機能する場合がある。農業機械の例は、トラクタ、乗用管理機、野菜移植機、草刈機、農業用ドローン、および、圃場用移動ロボットを含む。
【0016】
(1.列検出システムの概要)
本開示の実施形態による列検出システムは、一対の前輪および一対の後輪を含む複数の車輪を有する農業機械に取り付けられる複数の撮像装置を備える。複数の撮像装置は、地面を撮影して地面における第1領域についての第1画像を生成する第1撮像装置と、地面を撮影して地面において第1領域よりも後方にシフトした第2領域についての第2画像を生成する第2撮像装置とを含む。処理装置は、第1画像および第2画像を処理して第1画像から関心領域を選択する。処理装置は、関心領域を対象とする列検出処理を実行するように構成されている。本開示の列検出システムによれば、各前輪の位置および各後輪の位置に基づいて関心領域の選択を行うため、列検出処理を効率的に実行することが可能になり、計算負荷を低減できる。
【0017】
処理装置は、検出した列領域に基づいて目標経路を決定し、農業機械の自動操舵装置に目標経路の情報を出力するように構成され得る。自動操舵装置は、農業機械が目標経路に沿って移動するように農業機械の操舵制御を行う。これにより、作物列または畝に沿って農業機械を移動させることが可能になる。
【0018】
図1は、本開示の例示的な実施形態による列検出システム1000の構成を示すブロック図である。列検出システム1000は、第1撮像装置120と、第2撮像装置121と、処理装置122とを備える。具体的には、第1撮像装置120は、農業機械に取り付けられ、地面を撮影して地面における第1領域についての第1画像を生成する。第2撮像装置121は、農業機械に取り付けられ、地面を撮影して地面において第1領域よりも後方にシフトした第2領域についての第2画像を生成する。農業機械は、一対の前輪および一対の後輪を含む複数の車輪を備える。第2撮像装置121は、各前輪の少なくとも一部および各後輪の少なくとも一部を第2画像内に含むように設けられる。第1撮像装置120および第2撮像装置121は、農業機械100の底部に設けられていてもよい。あるいは、第1撮像装置120が農業機械100の先端部または上部に設けられ、第2撮像装置121が農業機械100の底部における中央部または後部に設けられていてもよい。そのような構成においては、農業機械100は、作物列12を跨ぐように走行するように構成され得る。
【0019】
処理装置122は、例えば、農業機械が備える自動操舵装置124に接続され得る。処理装置122は、第1画像を、地面の上方から見た第1上面視画像に変換し、第2画像を、地面の上方から見た第2上面視画像に変換する。そして、処理装置122は、第2上面視画像における各前輪の位置および各後輪の位置に基づいて第1上面視画像から関心領域を選択し、関心領域を対象とする列検出処理を実行するように構成されている。なお、処理装置122は、第1上面視画像と第2上面視画像とを合成することにより、パノラマ平面画像のような合成画像を生成するように構成されていてもよい。
【0020】
図2は、処理装置122によって実行される動作の概要を示すフローチャートである。処理装置122は、
図2に示すステップS10、S20、S30の動作を実行することにより、地面上の作物列または畝を検出する。
【0021】
ステップS10において、処理装置122は、第1撮像装置120から第1画像を取得し、第2撮像装置121から第2画像を取得する。ステップS20において、処理装置122は、第1画像を、地面の上方から見た第1上面視画像に変換し、第2画像を、地面の上方から見た第2上面視画像に変換する。これらの変換は、後述するホモグラフィ変換(平面射影変換)によって行われ得る。ステップS30において、処理装置122は、第2上面視画像における各前輪の位置および各後輪の位置に基づいて、第1上面視画像から関心領域を選択し、関心領域を対象とする列検出処理を実行する。
【0022】
次に、ステップS30において行う上記の処理の詳細を説明する。
【0023】
図3Aは、第1撮像装置120から取得した第1画像41Aの例を示す図であり、
図3Bは、第2撮像装置121から取得した第2画像42Aの例を示す図である。第1画像41Aには、各前輪4Fの少なくとも一部が含まれている。また、第2画像42Aには、各前輪4Fの少なくとも一部および各後輪4Rの少なくとも一部が含まれている。言い換えると、第2画像42Aは、4つの車輪4F、4Rのそれぞれの少なくとも一部を含んでいる。第1画像41Aおよび第2画像42Aは、それぞれ、
図2のステップS10で取得される。
【0024】
図4Aは、第1上面視画像41Bの例を示す図であり、
図4Bは、第2上面視画像42Bの例を示す図である。第1上面視画像41Bおよび第2上面視画像42Bは、それぞれ、
図2のステップS20において取得される。
【0025】
本開示における処理装置122は、第2上面視画像42Bにおける一対の前輪4Fの領域および一対の後輪4Rの領域を検出するように構成されている。以下、簡単のため、「一対の前輪4Fの領域」を「前輪領域4F」と称し、「一対の後輪4Rの領域」を「後輪領域4R」と称する場合がある。
【0026】
図4Bに示される例において、前輪4Fおよび後輪4Rは、黒いゴム製タイヤを保持するリムから形成されている。リムは、例えば表面が塗装された金属材料から形成され、地面およびタイヤよりも明度の高い、例えば白い表面を有している。このため、明度が相対的に高い画素を第2上面視画像42Bから選択することにより、第2上面視画像42Bにおける前輪領域4Fおよび後輪領域4Rを検出することができる。明度が相対的に高い画素は、所定値を超える明度を有する画像である。この所定値は、予め固定されていてもよいし、第2上面視画像42Bの画素が有する明度の分布に基づいて自動的に決定されてもよい。明度が相対的に高い画素の集まりから、明度の高い領域を決定することができる。
【0027】
なお、第1画像41Aおよび第2画像42Aがカラー画像である場合、処理装置122は、一対の前輪4Fおよび一対の後輪4Fの色情報に基づいて、第2上面視画像42Bにおける前輪領域4Fおよび後輪領域4Rを決定してもよい。例えば、一対の前輪4Fおよび一対の後輪4Fにおけるリム表面の色が黄色である場合、カラー画像である第2上面視画像42Bから黄色の画素を選択することにより、第2上面視画像42Bにおける前輪領域4Fおよび後輪領域4Rを検出することができる。一対の前輪4Fおよび一対の後輪4Fにおけるリムではなく、タイヤの表面の色情報に基づいて、第2上面視画像42Bにおける前輪領域4Fおよび後輪領域4Rを検出することも可能である。しかし、タイヤ表面の色は、一般に黒く、または土や泥が付着していることが多いため、地面から判別することが必ずしも容易ではない。このため、リムの明度または色に基づいて検出処理を行う方が、前輪領域4Fおよび後輪領域4Rを正確に決定しやすい。
【0028】
処理装置122は、前輪領域4Fから一対の前輪基準点FP1、FP2を抽出し、後輪領域4Rから一対の後輪基準点RP1、RP2を抽出することができる。
図4Bには、これらの前輪基準点FP1、FP2および後輪基準点RP1、RP2が黒い四角によって模式的に表されている。前輪基準点FP1、FP2は、前輪領域4Fを構成する画素のうち、左の前輪領域4Fと右の前輪領域4Fとの間隔を規定する画素である。また。後輪基準点RP1、RP2は、後輪領域4Rを構成する画素のうち、左の後輪領域4Rと右の後輪領域4Rとの間隔を規定する画素である。前輪基準点FP1、FP2は、一対の前輪4Fの間隔を規定する代表点として選択される。また、後輪基準点RP1、RP2は、一対の後輪4Rの間隔を規定する代表点として選択される。後述するように、関心領域は、農業機械の左右の車輪に挟まれた領域を中央に含む領域として決定されることが好ましい。そのような関心領域を選択し、選択された関心領域の画像処理を実行することにより、農業機械の目標経路上にある作物または畝を効率的に検知することができる。
【0029】
前輪領域4Fから一対の前輪基準点FP1、FP2を抽出し、後輪領域4Rから一対の後輪基準点RP1、RP2を抽出するための具体的な処理は、例えば以下のように実行され得る。
【0030】
まず、処理装置122は、
図4Bに示されるように、第2上面視画像42Bを左部分と右部分とに分割する縦基準線VLを決定する。処理装置122は、前輪領域4F域から、縦基準線VLに最も近い一対の画素を一対の前輪基準点FP1、FP2として選択し、後輪領域4Rから、縦基準線VLに最も近い一対の画素を一対の後輪基準RP1、RP2として選択する。また、処理装置122は、縦基準線VLに直交する横基準線LLを決定する。横基準線LLは、前輪領域を上部分に含み、後輪領域を下部分に含む。このように、処理装置122が第2上面視画像42Bの左部分および右部分のそれぞれを上部分と下部分とに分割することにより、1枚の上面視画像42Bにおける4個の部分から、4個の基準点(FP1、FP2、RP1、RP2)を抽出することが可能になる。
【0031】
なお、関心領域の幅は、一対の前輪基準点FP1、FP2から形成されてもよいし、一対の後輪基準点RP1、RP2から形成されてもよいし、一対の前輪基準点FP1、FP2および一対の後輪基準点RP1、RP2から形成されてもよい。本開示における「関心領域」は、例えば、第1上面視画像41Bの中央を縦方向に延びる、所定の幅を有する長方形の領域であり得る。関心領域は、台形、扇型などの種々の形状を有し得る。以下、関心領域が所定の幅を有する長方形である場合について、所定の幅を決定する方法を説明する。
【0032】
上記の4個の基準点(FP1、FP2、RP1、RP2)を規定する画素の位置を決定する方法は任意である。本開示の実施形態では、前輪4Fおよび後輪4Rのリムから上記4個の基準点(FP1、FP2、RP1、RP2)を抽出するため、上面視画像の明度およびエッジ情報を利用する。
【0033】
図5は、
図4Bの第2上面視画像42Bから、明度の高い領域を白色で示した画像である。
図5の画像において白色の領域は、前輪領域4Fおよび後輪領域4Rに相当する。これらの前輪領域4Fおよび後輪領域4Rの輪郭を規定する複数の画素を特定するため、処理装置122は、エッジ検出技術により、第2上面視画像42Bのエッジを示すエッジ画像を生成する。
図6は、このようにして生成されたエッジ画像42Dの例を示す図である。
【0034】
処理装置122は、第2上面視画像42Bにおける前輪領域4Fおよび後輪領域4Rとエッジとの重複部分を決定する。具体的には、処理装置122は、
図5の白い領域、すなわち前輪領域4Fおよび後輪領域4Rと、
図6のエッジとの重複した位置に存在する複数の画素(基準候補画素群)を決定する。次に、処理装置122は、前輪領域4Fから、縦基準線VLに最も近い一対の画素を一対の前輪基準点FP1、FP2として選択し、後輪領域4Rから、縦基準線VLに最も近い一対の画素を一対の後輪基準点RP1、RP2として選択する。
図6には、前輪基準点FP1、FP2、および後輪基準点RP1、RP2が黒四角によって模式的に表わされている。
【0035】
図7は、左に位置する前輪基準点FP1と右に位置する前輪基準点FP2との間の距離によって規定される前輪間隔FD、および左に位置する後輪基準点RP1と右に位置する後輪基準点RP2との距離によって規定される後輪間隔RDを示す図である。
【0036】
処理装置122は、前輪間隔FDおよび後輪間隔RDの一方に基づいて、関心領域の前記幅を決定することができる。例えば、前輪間隔FDおよび後輪間隔RDのうちの相対的に小さくない方の間隔に基づいて関心領域の幅を決定することができる。その場合、処理装置122は、前輪間隔FDおよび後輪間隔RDの一方に、例えば0.9以上2.0以下の数値を乗算した値を関心領域の幅として用いてもよい。
【0037】
図8は、第1上面視画像41Bにおける関心領域ROIの例を示す図である。この関心領域ROIの幅は、前輪間隔FDの1.0倍に設定されている。なお、第1上面視画像41Bから選択された関心領域ROIは、座標変換を行うことにより、
図3Aの第1画像41A上に設定することもできる。この座標変換は、第1画像41Aから第1上面視画像41Bを生成するための変換の逆変換である。
図8の例において、関心領域ROIは、農業機械の走行方向に平行に延びる長辺を左右に有す長方形の形状を有している。この長方形の短辺の長さが関心領域ROIの幅に相当する。一対の短辺の中点を結ぶ直線は、上面視における農業機械の中心(例えば重心)を通るように関心領域ROIの位置は設定され得る。なお、関心領域ROIの左の長辺が前輪基準点FP1または後輪基準点RP1を通るように決定され、関心領域ROIの右の長辺が前輪基準点FP2または後輪基準点RP2を通るように決定されてもよい。関心領域ROIの幅および位置は、
図8の例に限定されない。前述したように、関心領域ROI幅は、前輪間隔FDおよび後輪間隔RDの一方に0.9以上2.0以下の数値を乗算した値を有していてもよい。
【0038】
図8の例において、農業機械の走行方向における関心領域ROIの長辺の長さは、走行方向における第1上面視画像41Bのサイズ(長さ)よりも小さいが、関心領域ROIの長辺の長さは、この例に限定されない。
図3Aに示されるように第1画像が走行方向の前方に拡がる地面の像を含む場合、関心領域ROIは、農業機械の先端から前方に例えば2メートル以上延びていてもよい。
【0039】
本開示の列検出システムが搭載され得る農業機械100の例は、トラクタまたは乗用管理機などの作業車両を含む。農業機械100は、作物列12に沿って走行し、例えば、作物の植え付け、播種、施肥、防除、収穫、または耕耘などの農作業を行うように構成されている。農業機械100は、作物列12を検知して作物列12に沿うように自動操舵で走行することができる。
【0040】
第1撮像装置120は、農業機械100の第1位置に取り付けられている。第2撮像装置121は、農業機械100の第1位置よりも後方の第2位置に取り付けられている。例えば、第1撮像装置120は農業機械100の重心よりも前方の側部に取り付けられており、第2撮像装置121は農業機械100の重心よりも後方の側部に取り付けられている。農業機械100は、作物列12が存在する圃場を作物列12に沿って自動操舵で走行するように構成されている。なお、第1撮像装置120および第2撮像装置121の位置および向きは、図示される例に限定されない。第1撮像装置120が農業機械100の先端部に設けられ、第2撮像装置121が農業機械100またはインプルメントの後端部に設けられていてもよい。
【0041】
処理装置122は、第1上面視画像、または第1上面視画像および第2上面視画像に基づいて、作物列12を検出する。例えば、第1画像および第2画像がカラー画像である場合、処理装置122は、第1画像および第2画像に基づいて、作物列の色(例えば緑色)を強調した強調画像を生成する。そいて、処理装置122は、強調画像に基づいて、地面上の作物列12を検出することができる。作物列12を検出する方法のより詳細な例については後述する。
【0042】
処理装置122は、作物列12を検出した後、作物列12の近似線(直線または曲線)を決定し、近似線に沿って農業機械100の目標経路を決定する。処理装置122は、決定した目標経路の情報を、農業機械100の自動操舵装置124に出力する。自動操舵装置124は、目標経路に沿って農業機械100が走行するように、農業機械100の操舵制御を行う。これにより、農業機械100を作物列12に沿って走行させることができる。
【0043】
このように、本実施形態では、第1撮像装置120が生成した第1上面視画像と、第2撮像装置121が生成した第2上面視画像に基づいて所定幅の関心領域から作物列12が検出される。例示したよう、第1上面視画像と第2上面視画像とを合成したパノラマ合成画像に基づいて作物列12が検出されてもよい。パノラマ合成画像は、第1上面画像および第2上面視画像のそれぞれよりも広いエリアの情報を含む。このため、第1上面視画像および第2上面視画像の一方のみに基づいて作物列12を検出する場合と比較して、作物列12の近似線をより正確に決定することができる。特に、比較的小さいサイズの苗などの作物列12を検出する場合に、欠株の発生による検出精度の低下を抑制することができる。
【0044】
処理装置122は作物列12を検出するが、作物列12の代わりに、あるいは作物列12に加えて、畝を検出するように構成されていてもよい。
【0045】
列検出システム1000は3つ以上の撮像装置を備えていてもよい。3つ以上の撮像装置が取得した画像に基づいて作物列または畝を検出することにより、作物列または畝の近似線をより正確に決定することが可能になり得る。
【0046】
(2.列検出システムの具体例)
次に、本開示の実施形態における列検出システムのより具体的な例を説明する。本実施形態では、「列検出」として作物列の検出が行われる。
【0047】
本実施形態における列検出システム1000は、
図1に示すように、第1撮像装置120と、第2撮像装置121と、処理装置122とを備える。第1撮像装置120および第2撮像装置121のそれぞれは、地面の少なくとも一部を含む時系列カラー画像を取得するように農業機械に固定されている。
【0048】
図9は、農業機械100に取り付けられた第1撮像装置120および第2撮像装置121が地面10を撮影する様子を模式的に示している。
図9の例において、農業機械100は、走行可能な車両本体110を備え、第1撮像装置120および第2撮像装置121は、車両本体110に固定されている。参考のため、
図9には、互いに直交するXb軸、Yb軸、Zb軸を有する車両座標系Σbが示されている。車両座標系Σbは、農業機械100に固定された座標系であり、車両座標系Σbの原点は、例えば農業機械100の重心付近に設定され得る。
図9では、見やすさのため、車両座標系Σbの原点が農業機械100の外部に位置しているように記載されている。本開示における車両座標系Σbでは、Xb軸は農業機械100が直進するときの走行方向(矢印Fの方向)に一致している。Yb軸は、座標原点からXb軸における正方向を見たときの真右の方向に一致し、Zb軸は鉛直下方の方向に一致する。
【0049】
第1撮像装置120および第2撮像装置121の各々は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを有する車載カメラである。本実施形態における撮像装置120、121の各々は、例えば、3フレーム/秒(fps:frames per second)以上のフレームレートで動画を撮影することができる単眼カメラである。
【0050】
撮像装置120、121におけるイメージセンサは、行および列状に配列された多数の光検出セルを有している。個々の光検出セルは、画像を構成する画素(ピクセル)に対応し、赤色の光の強度を検出するRサブ画素、緑色の光の強度を検出するGサブ画素、および、青色の光の強度を検出するBサブ画素を含む。各光検出セルにおけるRサブ画素、Gサブ画素、およびBサブ画素で検出される光の出力を、それぞれ、R値、G値、およびB値と呼ぶことにする。以下、R値、G値、およびB値を総称して「画素値」または「RGB値」と呼ぶ場合がある。R値、G値、およびB値を用いる場合、RGB色空間内の座標値によって色を規定することができる。
【0051】
図10は、上述した車両座標系Σbと、第1撮像装置120のカメラ座標系Σc1と、第2撮像装置121のカメラ座標系Σc2と、地面10に固定されたワールド座標系Σwとの関係を模式的に示す斜視図である。第1撮像装置120のカメラ座標系Σc1は、互いに直行するXc1軸、Yc1軸、Zc1軸を有している。第2撮像装置121のカメラ座標系Σc2は、互いに直行するXc2軸、Yc2軸、Zc2軸を有している。ワールド座標系Σwは、互いに直行するXw軸、Yw軸、Zw軸を有している。
図10の例において、ワールド座標系ΣwのXw軸およびYw軸は、地面10に沿って拡がる基準平面Re上にある。
【0052】
第1撮像装置120は、農業機械100の第1位置に第1方向を向くように取り付けられている。第2撮像装置121は、農業機械100の第1位置よりも後方の第2位置に第2方向を向くように取り付けられている。このため、車両座標系Σbに対するカメラ座標系Σc1、Σc2のそれぞれの位置および向きは、既知の状態に固定される。第1撮像装置120のカメラ座標系Σc1のZc1軸は、第1撮像装置120のカメラ光軸λ1上にある。第2撮像装置121のカメラ座標系Σc2のZc2軸は、第2撮像装置121のカメラ光軸λ2上にある。図示される例において、カメラ光軸λ1、λ2は、農業機械100の進行方向Fから地面10に向かって傾斜しており、その俯角は、0°よりも大きい。農業機械100の進行方向Fは、農業機械100が走行している地面10に対して概略的に平行である。第1撮像装置120のカメラ光軸λ1の俯角(すなわち、進行方向Fとカメラ光軸λ1とのなす角)は、例えば0°から90°の範囲に設定され得る。第2撮像装置121のカメラ光軸λ2の俯角(すなわち、進行方向Fとカメラ光軸λ2とのなす角)は、例えば45°から135°の範囲に設定され得る。
図9に示す例において、第1撮像装置120のカメラ光軸λ1の俯角は約40°であり、第2撮像装置121のカメラ光軸λ2の俯角は約90°である。この例のように、第1撮像装置120は、農業機械100の第1位置に前方斜め下向きに取り付けられ得る。第2撮像装置121は、農業機械100の第2位置に下向きに取り付けられ得る。ここで「前方斜め下向き」とは、カメラ光軸の俯角が10°以上80°以下の範囲にあることを指す。「下向き」とは、カメラ光軸の俯角が80°以上100°以下の範囲にあることを指す。
【0053】
図9に示す例において、第1撮像装置120および第2撮像装置121は、いずれも車両本体110の底部に取り付けられている。第2撮像装置121は、第1撮像装置120よりも後方に取り付けられている。すなわち、車両座標系Σbにおける第2撮像装置121のXb座標値は、第1撮像装置120のXb座標値よりも小さい。
図9の例では、撮像装置120、121は、いずれも車両本体110の幅方向(Yb方向)に関して中央付近に位置している。撮像装置120、121の各々は、車両本体110の底部に限らず、側部、前部、または後部などの他の位置に取り付けられていてもよい。本実施形態のように、撮像装置120、121が車両本体110の底部に設けられている場合、農業機械100の下の作物列または畝を検出することができる。
【0054】
図9には、第1撮像装置120の撮像エリアと、第2撮像装置121の撮像エリアとが、放射状に拡がる点線で例示されている。第1撮像装置120および第2撮像装置121の各々の撮影エリアは、地面10のうち、農業機械100の下方に位置する部分を含む。また、第1撮像装置120および第2撮像装置121の各々の撮影エリアは、農業機械1100の車輪の少なくとも一部を含む。第1撮像装置120および第2撮像装置121の各々の撮影エリアは、農業機械100の左右方向よりも前後方向に長いサイズを有していてもよい。第1撮像装置120の撮像エリアと、第2撮像装置121の撮像エリアとは、部分的に重なっていることが好ましい。第1撮像装置120によって生成される第1画像と、第2撮像装置121によって生成される第2画像と重複部分があると、第1画像および第2画像から平面パノラマ画像を作成することが可能になる。
【0055】
本実施形態において、第1撮像装置120の撮像エリアは、地面10のうち、農業機械100の前車軸125Fの真下に位置する部分を含む。一方、第2撮像装置121の撮像エリアは、地面10のうち、農業機械100の後車軸125Rの真下に位置する部分を含む。このため、前輪4Fおよび後輪4Rの近傍の作物列または畝を高い精度で検出することができる。
【0056】
農業機械100が地面10の上を走行しているとき、車両座標系Σbおよびカメラ座標系Σc1、Σc2は、ワールド座標系Σwに対して並進する。走行中、農業機械100がピッチ、ロール、ヨーの方向に回転または揺動すると、車両座標系Σbおよびカメラ座標系Σcは、ワールド座標系Σwに対して回転する。以下の説明においては、簡単のため、農業機械100は、ピッチおよびロールの方向には回転せず、地面10に対して、ほぼ平行に移動するものとする。
【0057】
図11は、地面10に複数の作物列12が設けられている圃場の一部を模式的に示す上面図である。作物列12は、圃場の地面10に作物が一方向に連続的に作付けされることによって形成された列である。例えば、作物列12は、圃場の畝に植え付けられた作物の集まりであり得る。このように、個々の作物列12は、圃場に植えられた作物の集まりが形成する列であるため、作物列の形状は、厳密には、作物の形状および作物の配置に依存して複雑である。作物列12の幅は、作物の生育に応じて変化する。隣りあう作物列12の間には、作物が植えられていない中間領域14が帯状に存在する。各中間領域14は、隣りあう2本の作物列12の間で対向する2本の境界ラインEに挟まれた領域である。なお、1つの畝に対して、畝の幅方向に複数の作物が作付けされる場合、1つの畝上に複数の作物列12が形成されることになる。このような場合は、畝上に形成された複数の作物列12のうち、畝の幅方向の端に位置する作物列12の境界ラインEが、中間領域14の基準となる。つまり、中間領域14は、複数の作物列12の境界ラインEのうち、畝の幅方向の端に位置する作物列12の境界ラインEの間となる。中間領域14は、農業機械100の車輪が通過する領域として機能するため、「中間領域」を「作業通路」と称する場合がある。
【0058】
本開示において、作物列の「境界ライン」とは、農業機械が走行するときの目標経路を規定するための基準の線分(曲線を含み得る)を意味する。このような基準の線分は、農業機械の車輪の通過が許容される帯状の領域(作業通路)の両端として定義され得る。作物列の「境界ライン」を決定する具体的な方法については、後述する。
【0059】
図11には、作物列12が設けられた圃場を走行する1台の農業機械100が模式的に記載されている。この農業機械100は、左右の前輪104Fと、左右の後輪104Rとを走行装置として備えており、作業機(インプルメント)300を牽引している。前輪104Fは操舵輪である。
【0060】
図11の例では、中央に位置する1本の作物列12の両側に位置する作業通路14に、それぞれ、太い破線の矢印L、Rが記載されている。農業機械100が実線の矢印Cで示される目標経路上を走行するとき、農業機械100の前輪104Fおよび後輪104Rは、作物列12を踏まないように、作業通路14の中を矢印L、Rに沿って移動することが求められる。本実施形態では、農業機械100に取り付けられた撮像装置120、121を用いて作物列12の境界ラインEを検出できる。このため、前輪104Fおよび後輪104Rが作業通路14の中を矢印L、Rに沿って移動するように農業機械100の操舵・走行を制御することが可能である。このように作物列12の境界ラインEに基づいて農業機械100の操舵・走行を制御することを「列倣い走行制御」と呼ぶことができる。
【0061】
図12は、
図11に示す農業機械100の第1撮像装置120が取得する画像40の例を模式的に示す図である。わかりやすくするため、
図12には、画像40に含まれ得る農業機械100の前輪104Fの図示は省略されている。地面10で平行に延びる複数の作物列12および中間領域(作業通路)14は、理論的には、地平線11上にある消失点P0で交わる。消失点P0は、画像40の中央の領域に位置している。
【0062】
図13は、農業機械100の進行方向Fが、作物列12が延びる方向に対して傾斜している状態を模式的に示す上面図である。
図14は、
図13に示す農業機械100の第1撮像装置120が取得する画像40の例を模式的に示す図である。農業機械100の進行方向Fが、作物列12が延びる方向(矢印Cに平行な方向)に対して傾斜している場合には、消失点P0が画像40の右または左側の領域に位置する。
図14に示す例では、消失点P0が画像40の右側の領域に位置する。
【0063】
農業機械100は、
図1に示す列検出システム1000および自動操舵装置124を備えている。列検出システム1000における処理装置122は、第1撮像装置120が生成した第1画像、および、第2撮像装置121が生成した第2画像に基づいて、第1上面視画像および第2上面視画像を生成する。本開示の実施形態において、処理装置122は、前述した処理を行うことによって関心領域を決定する。また、処理装置122は、関心領域に含まれる作物列12を検出し、検出した作物列12を線形に近似して、近似線を求めることができる。処理装置122は、近似線に沿って農業機械100の目標経路を決定する。自動操舵装置124は、農業機械100が目標経路に沿って走行するように、操舵制御を行う。こうして、農業機械100は、検出した作物列に沿って「列倣い走行」を行うことが可能になる。
【0064】
自動操舵装置124は、目標経路(
図13に示す矢印C)に対する農業機械100の位置偏差および方位偏差を縮小するように農業機械100の操舵制御を行う。これにより、例えば
図13に示す状態にある農業機械100は、その位置および向き(ヨー方向の角度)が調整され、
図11に示す状態に近づく。
図11の状態にある農業機械100の左側および右側の車輪は、それぞれ、作業通路14における矢印Lおよび矢印Rで示されるライン上に位置している。中央の矢印Cによって示される目標経路に沿って農業機械100が走行するとき、農業機械100における自動操舵装置124は、前輪104Fおよび後輪104Rのそれぞれが作業通路14から逸脱しないように操舵輪の操舵角を制御する。
【0065】
図15は、地面10に曲線状の複数の作物列12が設けられている圃場の一部を模式的に示す上面図である。本実施形態によれば、曲線状の作物列12が形成された圃場であっても、2台の撮像装置120、121が取得した2つの画像から作物列12の位置を正確に検出し、作物列12に沿った農業機械100の操舵・走行の精密な制御が可能となる。
【0066】
ここで、列検出システム1000における処理装置122の構成および動作をより詳細に説明する。
【0067】
本実施形態における処理装置122は、撮像装置120、121から取得した時系列カラー画像の画像処理を行う。処理装置122は、農業機械100が備える自動操舵装置124に接続される。自動操舵装置124は、例えば、農業機械100の走行を制御する制御装置に含まれ得る。
【0068】
処理装置122は、画像処理用の電子制御ユニット(ECU)によって実現され得る。ECUは、車載用のコンピュータである。処理装置122は、撮像装置120、121が出力する画像データを受け取るように、例えばワイヤハーネスなどのシリアル信号線によって撮像装置120、121に接続される。処理装置122が実行する画像処理の一部が撮像装置120、121の内部(カメラモジュール内)で実行されてもよい。
【0069】
図16は、処理装置122のハードウェア構成例を示すブロック図である。処理装置122は、プロセッサ20、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)24、通信装置26、記憶装置28を備える。これらの構成要素は、バス30を介して相互に接続される。
【0070】
プロセッサ20は、半導体集積回路であり、中央演算処理ユニット(CPU)またはマイクロプロセッサとも称される。プロセッサ20は、画像処理ユニット(GPU)を含んでいてもよい。プロセッサ20は、ROM22に格納された所定の命令群を記述したコンピュータプログラムを逐次実行し、本開示の列検出に必要な処理を実現する。プロセッサ20の一部または全部は、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはASSP(Application Specific Standard Product)であってもよい。
【0071】
通信装置26は、処理装置122と外部のコンピュータとの間でデータ通信を行うためのインタフェースである。通信装置26は、CAN(Controller Area Network)などによる有線通信、または、Bluetooth(登録商標)規格および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行うことができる。
【0072】
記憶装置28は、撮像装置120から取得した画像、または、処理の途中における画像のデータを記憶することができる。記憶装置28の例は、ハードディスクドライブまたは不揮発性半導体メモリを含む。
【0073】
処理装置122のハードウェア構成は、上記の例に限定されない。処理装置122の一部または全部が農業機械100に搭載されている必要はない。通信装置26を利用することにより、農業機械100の外部に位置する1または複数のコンピュータを処理装置122の一部または全部として機能させることも可能である。例えば、ネットワークに接続されたサーバコンピュータが処理装置122の一部または全部として機能し得る。一方、農業機械100が搭載するコンピュータが処理装置122に求められるすべての機能を実行してもよい。
【0074】
図17は、本実施形態における処理装置122の動作の例を示すフローチャートである。処理装置122は、
図17に示すステップS110からS160の動作を実行することにより、地面上の作物列を検出し、作物列に沿って農業機械100の目標経路を決定する。
【0075】
ステップS110において、処理装置122は、第1撮像装置120から第1画像を取得し、第2撮像装置121から第2画像を取得する。本実施形態における第1画像および第2画像の各々は、時系列カラー画像である。時系列カラー画像は、撮像装置120、121が撮影によって時系列的に生成した画像の集まりである。それぞれの画像は、フレーム単位の画素群によって構成される。例えば、撮像装置120、121が30フレーム/秒のフレームレートで画像を出力する場合、処理装置122は、約33ミリ秒の周期で新しい画像を取得することが可能である。トラクタなどの農業機械100が圃場内を走行する速度は、公道を走行する一般の自動車の速度に比べて相対的に低く、例えば時速10キロメール程度以下であり得る。時速10キロメートルの場合、約33ミリ秒で進む距離は約6センチメートルである。このため、処理装置122は、例えば100~300ミリ秒程度の周期で画像を取得してもよく、撮像装置120、121が撮像するすべてのフレームの画像を処理する必要はない。処理装置122が処理の対象とする画像の取得周期は、農業機械100の走行速度に応じて、処理装置122が自動的に変更してもよい。
【0076】
ステップS120において、処理装置122は、ほぼ同時刻に撮影された第1画像と第2画像にホモグラフィ変換を行って第1上面視画像および第2上面視画像を生成する。必要に応じて、処理装置122は、第1画像の取得時刻と第2画像の取得時刻とを同期させるように撮像装置120、121を制御する。
【0077】
上面視画像は、地面に平行な基準平面を、基準平面の法線方向における真上から見た俯瞰画像である。俯瞰画像は、第1画像および第2画像からホモグラフィ変換によって生成することができる。ホモグラフィ変換は、幾何学的変換の一種であり、3次元空間内の、ある平面上にある点を、他の任意の平面上にある点に変換することができる。以下、第1撮像装置120によって取得された第1画像を第1上面視画像に変換する処理の例を説明する。第2撮像装置121によって取得された第2画像を第2上面視画像に変換する処理も同様の方法で行われる。
【0078】
図18は、第1の姿勢(位置および向き:ポーズ)にある撮像装置120のカメラ座標系Σc1、および第2の姿勢にある仮想的な撮像装置のカメラ座標系Σc3のそれぞれと、基準平面Reとの配置関係を模式的に示す斜視図である。
図18には車両座標系Σbも示されている。
図18に示される例において、カメラ座標系Σc1は、そのZc軸が基準平面Reに斜めに交わるように傾斜している。これに対して、カメラ座標系Σc3は、そのZc軸が基準平面Reに直交している。農業機械100がピッチおよびロールの方向に回転しない場合には、車両座標系ΣbのXb軸およびYb軸を含む平面(以下、「車両座標系平面」と呼ぶ。)が基準平面Reに平行となる。この場合、カメラ座標系Σc3のZc軸は車両座標系平面にも直交する。すなわち、カメラ座標系Σc3は、基準平面Reおよび車両座標系平面の法線方向における真上から見た俯瞰画像を取得できるように配置された状態にある。
【0079】
カメラ座標系Σc1の原点O1からZc軸方向にカメラの焦点距離だけ離れた位置に仮想的な画像平面Im1が存在する。画像平面Im1は、Zc軸およびカメラ光軸λ1に直交する。画像平面Im1上の画素位置は、互いに直交するu軸およびv軸を有する画像座標系によって定義される。例えば、基準平面Re上に位置する点P1および点P2の座標が、それぞれ、ワールド座標系Σwにおいて、(X1,Y1,Z1)および(X2,Y2,Z2)であるとする。
図18の例では、ワールド座標系ΣwのXw軸およびYw軸が基準平面Re上にある。このため、Z1=Z2=0である。基準平面Reは、地面に沿って拡がるように設定される。
【0080】
基準平面Re上の点P1および点P2は、それぞれ、ピンホールカメラモデルの透視投影により、第1の姿勢にある撮像装置120の画像平面Im1上の点p1および点p2に変換される。画像平面Im1において、点p1および点p2は、それぞれ、(u1,v1)および(u2,v2)の座標で示される画素位置にある。
【0081】
撮像装置が第2の姿勢にあると仮定した場合、カメラ座標系Σc3の原点O3からZc軸方向にカメラの焦点距離だけ離れた位置に仮想的な画像平面Im2が存在する。この例において、画像平面Im2は、基準平面Reおよび車両座標系平面に平行である。画像平面Im2上の画素位置は、互いに直交するu*軸およびv*軸を有する画像座標系によって定義される。この画像座標系は、車両座標系Σbとともにワールド座標系Σwに対して移動する。このため、画像平面Im2上の画素位置は、車両座標系Σbによっても定義され得る。基準平面Re上の点P1および点P2は、それぞれ、透視投影により、画像平面Im2上の点p1*および点p2*に変換される。画像平面Im2において、点p1*および点p2*は、それぞれ、(u1*,v1*)および(u2*,v2*)の座標で示される画素位置にある。
【0082】
ワールド座標系Σwにおける基準平面Reに対するカメラ座標系Σc1、Σc3の配置関係が与えられると、ホモグラフィ変換により、画像平面Im1上の任意の点(u,v)から、画像平面Im2上で対応する点(u
*,v
*)を求めることができる。このようなホモグラフィ変換は、点の座標を同次座標系で表現すると、3行×3列の変換行列Hによって規定される。
【数1】
【0083】
変換行列Hの中身は、以下に示すように、h
11、h
12、・・・、h
32の数値によって規定される。
【数2】
【0084】
8個の数値(h11、h12、・・・、h32)は、農業機械100に取り付けられた撮像装置120によって、基準平面Re上に置かれた校正用ボードを撮影すれば、公知のアルゴリズムを用いて算出することができる。
【0085】
基準平面Re上の点の座標が(X,Y,0)の場合、それぞれのカメラの画像平面Im1、Im2における対応点の座標は、下記の数3および数4の式に示されるように、個々のホモグラフィ変換行列H1、H2によって点(X,Y,0)と対応づけられる。
【数3】
【数4】
【0086】
上記の2式から以下の式が導かれる。この式から明らかなように、変換行列Hは、H2H1
-1に等しい。H1
-1は、H1の逆行列である。
【数5】
【0087】
変換行列H1、H2の中身は、基準平面Reに依存するため、基準平面Reの位置が変わると、変換行列Hの中身も変化する。
【0088】
このようなホモグラフィ変換を利用することにより、第1の姿勢にある撮像装置120で取得した地面の画像から、地面の上面視画像を生成することができる。言い換えると、ホモグラフィ変換によれば、撮像装置120の画像平面Im1上にある任意の点の座標を、基準平面Reに対して所定の姿勢にある仮想的な撮像装置の画像平面Im2上にある点の座標に変換することができる。
【0089】
処理装置122は、変換行列Hの中身を算出した後、上記のアルゴリズムに基づくソフトウェアプログラムを実行することにより、撮像装置120から出力される時系列画像から、地面10を上方から見た俯瞰画像を生成する。俯瞰画像を生成する処理の前に、ホワイトバランス、ノイズリダクションなどの前処理が時系列画像に適用されてもよい。
【0090】
なお、前述の説明では、3次元空間内の点(例えば、P1、P2)が、いずれも、基準平面Re上に位置していると仮定していた(例えば、Z1=Z2=0)。作物の基準平面Reに対する高さが0ではない場合、ホモグラフィ変換後の上面視画像において、対応点の位置は正しい位置からシフトする。シフト量の増加を抑制するためには、基準平面Reの高さが検出対象である作物の高さに近いことが望ましい。地面10には、畝、畦、溝などの凹凸が存在している場合がある。そのような場合、基準平面Reを、このような凹凸の底部から上方に変位させてもよい。変位の距離は、作物が作付けされる地面10の凹凸に応じて適切に設定され得る。
【0091】
また、農業機械100が地面10を走行しているとき、車両本体110(
図9参照)のロールまたはピッチの運動が生じると、撮像装置120の姿勢が変化するため、変換行列H1の中身が変化し得る。このような場合、慣性計測装置(IMU)によって車両本体110のロールおよびピッチの回転角度を計測すれば、撮像装置120の姿勢変化に応じて変換行列H1および変換行列Hを補正することができる。
【0092】
処理装置122は、第1撮像装置120が取得した第1画像から第1上面視画像への変換と同様の方法によって、第2撮像装置121が取得した第2画像を第2上面視画像に変換することが可能である。第1上面視画像および第2上面視画像は、いずれも、仮想的な画像平面Im2上の画像として生成される。第1上面視画像および第2上面視画像は、車両座標系Σbにおけるxb座標およびyb座標で表現されてもよい。
図9に示すように第1撮像装置120の撮影エリアと第2撮像装置121の撮影エリアとが部分的に重なるため、第1上面視画像と第2上面視画像には、重なる部分(重複領域)が含まれる。
【0093】
処理装置122は、第1上面視画像および第2上面視画像を生成すると、それらを合成することによって平面パノラマ画像のような合成画像を生成してもよい。例えば、処理装置122は、第1上面視画像において第2上面視画像と重複する第1重複領域における各画素の画素値と、第2上面視画像において第1上面視画像と重複する第2重複領域における対応する画素の画素値とを、それぞれの画素の位置に応じて加重平均する処理を含む合成処理によって合成画像を生成してもよい。
【0094】
図9に示すように、撮像装置120、121が地面10に比較的近い位置に設けられる場合、撮像装置120、121は、例えば魚眼カメラなどの広角の画像を生成するカメラであり得る。画像の歪が大きい場合でも、カメラの内部パラメータを適切に設定することにより、撮影によって取得した画像を上面視画像に変換することができる。
【0095】
図19は、第1画像、第2画像、第1上面視画像、および第2上面視画像の例を示す図である。
図19において、左上の図が第1画像を、左下の図が第2画像を、右上の図が第1上面視画像を、右下の図が第2上面視画像を示している。この例における第1画像は、農業機械100の前輪と、前輪の間に位置する地面上の領域とを映し出している。第2画像は、農業機械100の前輪および後輪と、前輪および後輪の間に位置する地面上の領域とを映し出している。処理装置122は、第1画像および第2画像を、
図19の右に示されるような第1上面視画像および第2上面視画像にそれぞれ変換する。第1上面視画像の下部および第2上面視画像の上部には、共通の被写体(前輪と、その間の地面および作物)が含まれている。この部分が重複領域に該当する。
【0096】
再び
図17を参照する。ステップS130において、処理装置122は、第2上面視画像における各前輪の位置および各後輪の位置に基づいて、第1上面視画像から関心領域を選択する。具体的には、処理装置122は、
図7などを参照しながら説明した処理を実行して、
図8に例示されるような関心領域ROIを第1上面視画像から選択する。
【0097】
本実施形態では、処理装置122は、第1上面視画像および第2上面視画像から、重複領域における画素値を補間して合成画像を生成することが可能である。なお、合成画像の作成は省略してもよい。
【0098】
図20は、
図19の例において生成される合成画像の例を示す図である。
図20には、関心領域ROIが記載されている。この例における関心領域ROIは、第1上面視画像だけではなく、合成後の第2上面視画像に拡張されている。このような合成画像に基づいて作物列を検出することにより、例えば、欠株が生じていたとしても作物列の近似線をより正確に算出することができる。
【0099】
ここで、上記の変換行列を決定するキャリブレーション動作の例を説明する。キャリブレーションは、地面上の特定の被写体を撮像装置120、121で撮影して取得される2つの画像に基づいて行われる。キャリブレーションは、農業機械100の使用を開始する前、または、撮像装置120、121の位置または向きが初期状態からずれた場合に行われ得る。キャリブレーションにおいて、処理装置122は、以下の動作S1、S2、S3を実行する。
(S1)地面上に位置する特定の被写体を第1撮像装置120が撮影することによって生成した第1基準画像と、当該被写体を第2撮像装置121が撮影することによって生成した第2基準画像とを取得する。
(S2)第1基準画像および第2基準画像の各々から、当該被写体の複数の特徴点を抽出する。
(S3)第1基準画像における複数の特徴点の位置と、第2基準画像における対応する複数の特徴点の位置との関係に基づいて、変換行列を生成または更新する。
【0100】
キャリブレーションに用いられる特定の被写体は、例えばAR(Augmented Reality)マーカとして用いられるような特徴的な模様が描かれたボードであり得る。あるいは、農業機械100の車輪を特定の被写体としてもよい。以下の説明において、キャリブレーションに用いられる特定の被写体を「校正用被写体」と称する。
【0101】
図21は、地面10に置かれた校正用被写体18が撮像装置120、121によって撮影されている様子の例を示す図である。この例における校正用被写体18は、特徴的なパターンを有する複数のマークが描かれたボードであり、農業機械100の2つの前輪の間に置かれている。農業機械100が停止した状態で、第1撮像装置120および第2撮像装置121は、校正用被写体18が置かれた地面を撮影し、第1基準画像およぎ第2基準画像をそれぞれ生成する。
【0102】
図22は、校正用被写体18を撮影して得られる画像の例を示す図である。第1撮像装置120は、校正用被写体18を撮影することにより、
図22の左上に示すような第1基準画像を生成する。第2撮像装置121は、校正用被写体18を撮影することにより、
図22の左下に示すような第2基準画像を生成する。処理装置122は、第1基準画像および第2基準画像の各々から、校正用被写体18における複数の特徴点(例えば、ボードの4隅の角、または4つのマークのそれぞれの角など)を検出し、それらの位置に基づいて、変換行列を算出する。
【0103】
図22の右上の図は、第1基準画像から変換された上面視画像の例を示している。
図22の右下の図は、第2基準画像から変換された上面視画像の例を示している。処理装置122は、これらの上面視画像における校正用被写体18の複数の特徴点を重ね合わせることにより、重複領域に該当する範囲を決定し、その情報を記憶装置に記録する。以降の合成処理では、記録された当該情報に基づいて合成処理が行われる。
【0104】
再び
図17を参照する。ステップS140において、処理装置122は、合成画像に基づいて、地面上の作物列を検出する。処理装置122は、例えば、合成画像から、作物列の色(例えば緑色)を強調した合成強調画像を生成し、合成強調画像に基づいて、地面上の作物列の境界ラインを検出することができる。
【0105】
ステップS150において、処理装置122は、検出した作物列の近似線を決定する。処理装置122は、例えば、検出した作物列の両端の境界ラインの中央を通るラインを近似線として決定する。
【0106】
ステップS160において、処理装置122は、近似線に沿って農業機械100の目標経路を車両座標系上で決定する。目標経路は、例えば作物列の近似線に重なるように決定され得る。なお、目標経路は、作物列または畝の近似線に平行に、近似線から所定距離だけ隔てて設定され得る。処理装置122は、決定した目標経路の情報を農業機械100の自動操舵装置124に出力する。自動操舵装置124は、農業機械100が目標経路に沿って走行するように農業機械100の操舵制御を行う。
【0107】
ここで、ステップS140における作物列を検出する方法の具体例を説明する。処理装置122は、合成画像を生成すると、以下の動作S1、S2、S3を実行することにより、合成画像から作物列を検出することができる。
(S1)合成画像から、検出対象である作物列の色を強調した合成強調画像を生成する。
(S2)合成強調画像から、作物列の色の指標値が閾値以上の第1画素と、指標値が閾値未満の第2画素とに分類された二値画像を生成する。
(S3)第1画素の指標値に基づいて、作物列の境界ラインの位置を決定する。
【0108】
以下、動作S1、S2、S3の具体例を説明する。
【0109】
図20に示す合成画像には、圃場の地面に列状に植えられた作物の列(作物列)が映し出されている。この例において、作物の列は、地面の上で、ほぼ平行かつ等間隔に並んでいる。
【0110】
動作S1では、処理装置122が、合成画像に基づいて、検出対象である作物列の色を強調した合成強調画像を生成する。作物は、太陽光(白色光)を受けて光合成を行うため、クロロフィル(葉緑素)を有している。クロロフィルは、赤色および青色に比べて、緑色の光吸収率が低い。このため、作物によって反射される太陽光のスペクトルは、土壌表面によって反射される太陽光のスペクトルに比べ、緑色の波長範囲で相対的に高い値を示す。その結果、作物の色は、一般に緑色の成分を多く含み、「作物列の色」は、典型例には緑色である。しかし、後述するように、「作物列の色」は、緑色に限定されない。
【0111】
検出対象である作物列の色が緑色である場合、作物列の色を強調した強調画像は、カラー画像における各画素のRGB値を、G値のウェイトが相対的に大きな画素値に変換した画像である。強調画像を生成するための、このような画素値の変換は、例えば、「(2×G値-R値-B値)/(R値+G値+B値)」で定義される。ここで、分母の(R値+G値+B値)は規格化のための因子である。以下、規格化されたRGB値をrgb値と称し、r=R値/(R値+G値+B値)、g=G値/(R値+G値+B値)、b=B値/(R値+G値+B値)で定義する。「2×g-r-b」は、緑過剰指標(ExG:Excess Green Index)と呼ばれる。
【0112】
図23は、
図20に示す合成画像におけるRGB値を、「2×g-r-b」に変換した合成強調画像を示す図である。この変換により、
図20に示す合成画像において、「r+b」がgに比べて相対的に小さな画素は明るく表示され、「r+b」がgに比べて相対的に大きな画素は暗く表示される。この変換により、検出対象である作物列の色(この例では「緑色」)を強調した画像(合成強調画像)が得られる。
図23に示す画像において相対的に明るい画素は、緑色の成分が相対的に大きな画素であり、作物の領域に属している。
【0113】
作物の色を強調する「色の指標値」として、緑過剰指標(ExG)以外に、例えば、緑赤植生指標(G値-R値)/(G値+R値)などの他の指標を用いてもよい。また、撮像装置が赤外カメラとしても機能し得る場合は、「作物列の色の指標値」として、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)を用いてもよい。
【0114】
なお、作物列のそれぞれの列が「マルチ」と呼ばれるシート(mulching sheet)によって覆われていることがある。このような場合、「作物列の色」は、「作物を覆って列状に配置される物体の色」である。具体的には、シートの色が無彩色である黒の場合、「作物列の色」は「黒」を意味する。また、シートの色が赤色の場合、「作物列の色」は「赤色」を意味する。このように「作物列の色」は、作物そのものの色だけではなく、作物列を規定する領域の色(土壌表面の色から識別可能な色)を意味する。
【0115】
「作物列の色」を強調した強調画像の生成には、RGB色空間からHSV色空間への変換を利用してもよい。HSV色空間は、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)の三つの成分によって構成される色空間である。RGB色空間からHSV色空間に変換した色情報を用いることにより、黒または白のような彩度の低い「色」を検出することができる。OpenCVのライブラリを利用して「黒」を検出する場合、色相を最大範囲(0~179)、彩度を最大範囲(0~255)に設定し、明度の範囲を0~30に設定すればよい。また、「白」を検出する場合は、色相を最大範囲(0~179)、彩度を最大範囲(0~255)に設定し、明度の範囲を200~255に設定すればよい。このような設定範囲に含まれる色相、彩度、明度を有する画素が、検出するべき色を持つ画素である。なお、例えば緑色の画素を検出する場合、色相の範囲を例えば30~90の範囲に設定すればよい。
【0116】
検出対象である作物列の色を強調した合成強調画像を生成することにより、作物列の領域を、それ以外の背景領域から区分(抽出)すること(セグメンテーション)が容易になる。
【0117】
次に、動作S2を説明する。
【0118】
動作S2では、処理装置122が、合成強調画像から、作物列の色の指標値が閾値以上の第1画素と、この指標値が閾値未満の第2画素とに分類された二値画像を生成する。
図24は、二値画像の例を示している。
【0119】
本実施形態では、作物列の色の指標値として、前述した緑過剰指標(ExG)を採用し、判別分析法(大津の二値化)によって判別の閾値を決定する。
図25は、
図23に示す合成強調画像における緑過剰指標(ExG)のヒストグラムである。ヒストグラムの横軸が緑過剰指標(ExG)であり、縦軸が画像内における画素数(生起頻度に対応)である。
図25には、判別分析法のアルゴリズムによって算出された閾値Thを示す破線が示されている。合成強調画像の画素は、この閾値Thによって2つのクラスに分類される。閾値Thを示す破線の右側には、緑過剰指標(ExG)が閾値以上の画素の生起頻度が示されており、これらの画素は作物のクラスに属していると推定される。これに対し、閾値Thを示す破線の左側には、緑過剰指標(ExG)が閾値未満の画素の生起頻度が示されており、これらの画素は土壌などの被作物のクラスに属していると推定される。この例において、指標値が閾値以上の画素である第1画素は、「作物画素」に相当する。一方、この指標値が閾値未満の第2画素は「背景画素」に相当する。背景画素は、土壌の表面など、検出対象以外の物体に対応し、前述した中間領域(作業通路)14は、背景画素によって構成され得る。なお、閾値の決定方法は、上記の例に限定されず、例えば機械学習を利用した他の方法を用いて閾値を決定してもよい。
【0120】
合成強調画像を構成する各画素を「第1画素」および「第2画素」の一方に割り当てることにより、合成強調画像から検出対象の領域を抽出することができる。また、「第2画素」の画素値に「ゼロ」を与えたり、画像データから第2画素のデータを取り除いたりすることにより、検出対象以外の領域をマスクすることができる。マスクするべき領域を確定するとき、緑過剰指標(ExG)が局所的に高い値を示す画素をノイズとしてマスク領域に含める処理を行ってもよい。そのような処理により、
図20に示すような、第1画素と第2画素とに分類された二値画像を生成することができる。
【0121】
次に、動作S3を説明する。
【0122】
動作S3では、処理装置122が、二値画像における第1画素の指標値に基づいて、作物列12の境界ラインの位置を決定する。
【0123】
図26は、第1上面視画像内に3本の作物列12が映る画像44の例を模式的に示す図である。この例において、作物列12の方向が画像垂直方向(v軸方向)に平行である。
図22には、画像垂直方向(v軸方向)に平行な多数の走査ライン(破線)Sが示されている。処理装置122は、関心領域ROI内における複数の走査ラインS上に位置する画素の指標値を、走査ラインSごとに積算して積算値を得る。
【0124】
図27は、
図26に示す画像44について得られた、関心領域ROI内における走査ラインSの位置と指標値の積算値との関係を模式的に示す図である。
図27の横軸は、走査ラインSの、画像水平方向(u軸方向)における位置を示している。画像44において、走査ラインSが横切る画素の多くが作物列12に属する第1画素である場合、その走査ラインSの積算値は大きくなる。一方、走査ラインSが横切る画素の多くが作物列12の間にある中間領域(作業通路)14に属する第2画素(背景画素)である場合、その走査ラインSの積算値は小さくなる。なお、本実施形態において、中間領域(作業通路)14はマスクされており、第2画素の指標値はゼロである。
【0125】
図27の例では、積算値がゼロまたはゼロに近い凹部領域と、これらの凹部領域によって区分される凸部領域が存在する。凹部領域は、中間領域(作業通路)14に相当し、凸部領域が作物列12に相当する。本実施形態では、凸部領域における積算値のピークの両側の所定位置、具体的には、積算値のピークに対して所定の割合(例えば60%以上90%以下の範囲から選択された値)にある積算値を有する走査ラインSの位置を作物列12の境界ラインの位置として決定する。
図23における矢印Wの両端は、各作物列12の境界ラインの位置を示している。なお、
図23の例において、各作物列12の境界ラインの位置は、各作物列12の積算値のピークに対して80%の値を持つ走査ラインSの位置である。
【0126】
本実施形態では、第1上面視画像内に複数の作物列が含まれる場合でも、関心領域ROIに対する演算を行えばよいので、演算負荷が低減される。
【0127】
図28は、第1上面視画像内において複数の作物列12が斜めに延びている二値画像44の例を示している。農業機械100の向きによっては、撮像装置120、121が取得する画像において作物列12が延びる方向が画像内で右または左に傾斜し得る。そのような画像からホモグラフィ変換によって上面視画像を生成すると、
図28の例のように、作物列12の方向が、画像垂直方向(v軸方向)から傾斜する。
【0128】
図28にも、画像垂直方向(v軸方向)に平行な多数の走査ライン(破線)Sが示されている。処理装置122は、このような複数の走査ラインS上に位置する画素の指標値を、走査ラインSごとに積算して走査ラインごとに積算値を得る。
図29は、
図28に示す画像44について得られた、走査ラインSの位置と指標値の積算値との関係を模式的に示している。
【0129】
処理装置122は、走査ラインSの方向(角度)を変化させることにより、作物列12の方向に平行な走査ラインSの方向を探索する。
図30は、作物列12の方向に平行な走査ラインSの方向を探索する方法の例を示すフローチャートである。
【0130】
ステップS131において、走査ラインSの方向(角度)を設定する。ここでは、画像座標系におけるu軸を基準として時計回りの角度をθとする(
図22、
図24参照)。角度θの探索は、範囲を例えば60~120度に設定し、角度刻みを例えば1度に設定して行われ得る。この場合、ステップS131では、走査ラインSの角度θとして、60、61、62、・・・、119、120度を与える。
【0131】
ステップS132では、それぞれの角度θの方向に延びる走査ラインS上の画素について指標値を積算し、走査ラインに垂直な方向における積算値の分布のデータを得る。このデータは、角度θに応じて、異なる分布を示すことになる。
【0132】
ステップS133では、このようにして得た複数の方向についての積算値の分布のデータから、
図27に示されるような凹凸の境界が急峻であって、作物列12が中間領域14から最も明確に区分されるような分布を選択し、その分布を生成する走査ラインSの角度θを求める。
【0133】
ステップS134では、ステップS133で求めた角度θに対応する分布のピーク値から各作物列12の境界ラインを決定する。前述したように、ピークの例えば0.8倍の積算値を持つ走査ラインSの位置を境界ラインとして採用し得る。
【0134】
なお、走査ラインSの方向(角度)を探索するとき、探索範囲内で角度θを1度ずつ変化させるごとに、その角度θの走査ラインS上における積算値の分布を求めてもよい。積算値の分布の波形から特徴量(例えば、凹部の深さ/凸部の高さ、包絡線の微分値など)を算出し、その特徴量に基づいて、作物列12の方向と走査ラインSの方向とが平行か否かを判定してもよい。
【0135】
なお、角度θを求める方法は、上記の例に限定されない。作物列の延びる方向が測定によって既知である場合、農業機械100に搭載したIMUによって農業機械の方向を測定し、作物列の延びる方向に対する角度θを求めてもよい。
【0136】
上記の角度θを求める演算の負荷も、第1上面視画像内の関心領域ROIに対する処理だけを行えばよいので低減される。
【0137】
上記の方法によれば、順光、逆光、晴天、曇天、霧などの気象条件や作業時間帯によって変化する日照条件の影響を抑制し、高い精度での作物列の検出が可能である。また、作物の種類(キャベツ、ブロッコリ、大根、人参、レタス、白菜などの種別)、生育状態(苗から成長した状態まで)、病害有無、落ち葉・雑草の有無、土壌色が変化してもロバスト性の高い作物列の検出が可能である。
【0138】
上記の実施形態では、処理装置122は、第1画像および第2画像からホモグラフィ変換によって生成した第1上面視画像と第2上面視画像の合成画像を生成した後、合成画像における二値化の閾値を求め、閾値以上の画素によって作物領域を抽出する。このような方法に代えて、処理装置122は、以下のステップS11からS16を実行することによって作物列を検出してもよい。
(S11)第1画像から、作物列の色を強調した第1強調画像を生成する。
(S12)第2画像から、作物列の色を強調した第2強調画像を生成する。
(S13)第1強調画像から、作物列の色の指標値が閾値以上の画素と、指標値が閾値未満の画素とに分類された、地面の上方から見た第1上面視画像を生成する。
(S14)第2強調画像から、作物列の色の指標値が閾値以上の画素と、指標値が閾値未満の画素とに分類された、地面の上方から見た第2上面視画像を生成する。
(S15)第2上面視画像に基づいて関心領域を決定する。
(S16)第1上面画像および第2上面画像に基づいて、地面上の作物列を検出する。
【0139】
このような方法によれば、作物列の領域が強調された第1上面視画像と第2上面視画像とが生成され、それらの画像から作物列を含む関心領域が選択される。このような方法によっても、前述の方法と同様に、作物列を高い精度で検出することができる。
【0140】
上記の例では、合成画像から作物列が検出されるが、合成画像から畝を検出することも可能である。畝を検出するため、ToF(Time of Flight)技術を用いて地面の3次元情報(凹凸情報)を取得してもよい。その場合でも、関心領域内の3次元情報を利用することにより、演算負荷を低減することが可能になる。
【0141】
上記の作物列または畝の検出方法の例は、本出願人による未公開の国際出願であるPCT/JP2022/004548に詳しく記載されている。PCT/JP2022/004548の開示内容のすべてを参照により本明細書に援用する。
【0142】
圃場に形成された作物列または畝の検出方法は、上記に記載の例に限定されず、公知のアルゴリズムを広く用いて行うことができる。例えば、作物列を線形に近似する方法が、本出願人が特許権者である特許第2624390号公報に詳しく記載されている。特許第2624390号公報の開示内容のすべてを参照により本明細書に援用する。また、畝の段差または溝が形成するラインを検出する方法が、特開2016-146061号公報に記載されている。特開2016-146061号公報の開示内容のすべてを参照により本明細書に援用する。
【0143】
(3.農業機械の構成例)
次に、農業機械の構成例を説明する。
【0144】
農業機械は、前述した列検出システムと、自動操舵運転を実現するための制御を行う制御システムとを備える。制御システムは、記憶装置と、制御装置とを備えるコンピュータシステムであり、農業機械の操舵、走行、その他の動作を制御するように構成されている。
【0145】
制御装置は、通常の自動操舵動作モードにおいて、測位装置によって農業機械の位置を特定し、前もって生成された目標経路に基づいて、農業機械が目標経路に沿って走行するように農業機械の操舵を制御するように構成されていてもよい。具体的には、作業車両が圃場内を目標経路に沿って走行するように農業機械の操舵輪(例えば前輪)の操舵角を制御してもよい。本実施形態における農業機械は、このような通常の自動操舵モードだけではなく、作物や畝の列が設けられた圃場内で「列倣い走行制御」による走行を行うように構成された自動操舵装置を備える。
【0146】
測位装置は、例えばGNSS受信機を有する。このような測位装置は、GNSS衛星からの信号に基づき、作業車両の位置を特定することができる。しかし、列が圃場にある場合、仮に測位装置が農業機械の位置を高精度に測定できたとしても、列の間は狭く、作物の植えられ方や生育状況によっては、農業機械の車輪などの走行装置が列にはみ出す可能性も高くなる。しかし、本実施形態では、前述した列検出システムを用いることにより、現実に存在する列を検出して、適切な自動操舵を実行することができる。すなわち、本開示の実施形態における農業機械が備える自動操舵装置は、列検出システムが決定した列の境界ラインの位置に基づいて、操舵輪の操舵角を制御するように構成される。
【0147】
また、本実施形態における農業機械では、列検出システムの処理装置が、時系列カラー画像に基づいて、列の境界ラインと操舵輪との位置関係をモニタすることが可能である。この位置関係から位置誤差信号を生成すれば、農業機械の自動操舵装置が位置誤差信号を小さくするように操舵角を適切に調整することが可能になる。
【0148】
図31は、本実施形態における農業機械100の外観の例を示す斜視図である。
図32は、作業機300が装着された状態の農業機械100の例を模式的に示す側面図である。本実施形態における農業機械100は、作業機300が装着された状態の農業用トラクタ(作業車両)である。農業機械100は、トラクタに限定されず、また作業機300が装着されている必要もない。本開示における列検出の技術は、例えば、畝立、中耕、土寄、除草、追肥、防除などの畝間作業に使用され得る小型管理機、および野菜移植機に用いて優れた効果を発揮することができる。
【0149】
本実施形態における農業機械100は、撮像装置120、121と、測位装置130と、障害物センサ136とを備える。
図31には1つの障害物センサ136が例示されているが、障害物センサ136は農業機械100の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0150】
図32に示すように、農業機械100は、車両本体110と、原動機(エンジン)102と、変速装置(トランスミッション)103とを備える。車両本体110には、タイヤ付き車輪104と、キャビン105とが設けられている。車輪104は、一対の前輪104Fと一対の後輪104Rとを含む。キャビン105の内部に運転席107、操舵装置106、操作端末200、および操作のためのスイッチ群が設けられている。前輪104Fおよび後輪104Rの一方は、タイヤ付き車輪ではなく無限軌道(track)を装着した複数の車輪(クローラ)に置き換えられてもよい。農業機械100は、4つの車輪104を駆動輪として備える四輪駆動車であってもよいし、一対の前輪104Fまたは一対の後輪104Rを駆動輪として備える二輪駆動車であってもよい。
【0151】
本実施形態における測位装置130は、GNSS受信機を備える。GNSS受信機は、GNSS衛星からの信号を受信するアンテナと、アンテナが受信した信号に基づいて農業機械100の位置を決定する処理回路とを備える。測位装置130は、GNSS衛星から送信されるGNSS信号を受信し、GNSS信号に基づいて測位を行う。GNSSは、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System、例えばみちびき)、GLONASS、Galileo、およびBeiDouなどの衛星測位システムの総称である。本実施形態における測位装置130は、キャビン105の上部に設けられているが、他の位置に設けられていてもよい。
【0152】
測位装置130は、さらに、IMUからの信号を利用して位置データを補完することができる。IMUは、農業機械100の傾きおよび微小な動きを計測することができる。IMUによって取得されたデータを用いて、GNSS信号に基づく位置データを補完することにより、測位の性能を向上させることができる。
【0153】
図31および
図32に示す例では、車両本体110の後部に障害物センサ136が設けられている。障害物センサ136は、車両本体110の後部以外の部位にも配置され得る。例えば、車両本体110の側部、前部、およびキャビン105のいずれかの箇所に、1つまたは複数の障害物センサ136が設けられ得る。障害物センサ136は、農業機械100の周囲に存在する物体を検出する。障害物センサ136は、例えばレーザスキャナおよび/または超音波ソナーを備え得る。障害物センサ136は、障害物センサ136から所定の検知エリア(サーチエリア)内に障害物が存在する場合に、障害物が存在することを示す信号を出力する。複数の障害物センサ136が農業機械100の車体の異なる位置に設けられていてもよい。例えば、複数のレーザスキャナと、複数の超音波ソナーとが、車体の異なる位置に配置されていてもよい。そのような多くの障害物センサ136を備えることにより、農業機械100の周囲の障害物の監視における死角を減らすことができる。
【0154】
原動機102は、例えばディーゼルエンジンである。ディーゼルエンジンに代えて電動モータが使用されてもよい。変速装置103は、変速によって農業機械100の推進力および移動速度を変化させることができる。変速装置103は、農業機械100の前進と後進とを切り換えることもできる。
【0155】
操舵装置106は、ステアリングホイールと、ステアリングホイールに接続されたステアリングシャフトと、ステアリングホイールによる操舵を補助するパワーステアリング装置とを含む。前輪104Fは操舵輪であり、その切れ角(「操舵角」とも称する。)を変化させることにより、農業機械100の走行方向を変化させることができる。前輪104Fの操舵角は、手動操舵が行われるとき、オペレータがステアリングホイールを操作することによって変化させることができる。パワーステアリング装置は、前輪104Fの操舵角を変化させるための補助力を供給する油圧装置または電動モータを含む。自動操舵が行われるときには、農業機械100内に配置された制御装置からの制御により、油圧装置または電動モータ(ステアリングモータ)の力によって操舵角が自動で調整される。
【0156】
車両本体110の後部には、連結装置108が設けられている。連結装置108は、例えば3点支持装置(「3点リンク」または「3点ヒッチ」とも称する。)、PTO(Power Take Off)軸、ユニバーサルジョイント、および通信ケーブルを含む。連結装置108によって作業機300を農業機械100に着脱することができる。連結装置108は、例えば油圧装置によって3点リンクを昇降させ、作業機300の位置または姿勢を制御することができる。また、ユニバーサルジョイントを介して農業機械100から作業機300に動力を送ることができる。農業機械100は、作業機300を引きながら、作業機300に所定の作業を実行させることができる。連結装置は、車両本体110の前方に設けられていてもよい。その場合、農業機械100の前方に作業機を接続することができる。
【0157】
図32に示す作業機300は、例えば、ロータリカルチである。列に倣って走行するときにトラクタなどの作業車両に牽引または装着される作業機300は、畝立、中耕、土寄、除草、追肥、防除などの畝間作業に使用され得るものであれば、任意である。
【0158】
図33は、農業機械100および作業機300の概略的な構成の例を示すブロック図である。農業機械100と作業機300は、連結装置108に含まれる通信ケーブルを介して互いに通信することができる。
【0159】
図33の例における農業機械100は、第1撮像装置120、第2撮像装置121、測位装置130、障害物センサ136、操作端末200に加え、駆動装置140、ステアリングホイールセンサ150、切れ角センサ152、制御システム160、通信インタフェース(IF)190、操作スイッチ群210、およびブザー220を備える。測位装置130は、GNSS受信機131と、IMU135とを備える。制御システム160は、記憶装置170と、制御装置180とを備える。制御装置180は、複数の電子制御ユニット(ECU)181から186を備える。作業機300は、駆動装置340と、制御装置380と、通信インタフェース(IF)390とを備える。なお、
図33には、農業機械100による自動操舵または自動走行の動作との関連性が相対的に高い構成要素が示されており、それ以外の構成要素の図示は省略されている。
【0160】
測位装置130は、GNSSを利用して農業機械100の測位を行う。測位装置130がRTK受信機を備える場合、複数のGNSS衛星から送信されるGNSS信号に加えて、基準局から送信される補正信号が利用される。基準局は、農業機械100が走行する圃場の周囲(例えば、農業機械100から10km以内の位置)に設置され得る。基準局は、複数のGNSS衛星から受信したGNSS信号に基づいて補正信号を生成し、測位装置130に送信する。測位装置130におけるGNSS受信機131は、複数のGNSS衛星から送信されるGNSS信号を受信する。測位装置130は、GNSS信号および補正信号に基づき、農業機械100の位置を計算することにより、測位を行う。RTK-GNSSを用いることにより、例えば誤差数cmの精度で測位を行うことが可能である。緯度、経度および高度の情報を含む位置情報が、RTK-GNSSによる高精度の測位によって取得される。なお、測位方法はRTK-GNSSに限らず、必要な精度の位置情報が得られる任意の測位方法(干渉測位法または相対測位法など)を用いることができる。例えば、VRS(Virtual Reference Station)またはDGPS(Differential Global Positioning System)を利用した測位を行ってもよい。
【0161】
IMU135は、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロスコープを備える。IMU135は、3軸地磁気センサなどの方位センサを備えていてもよい。IMU135は、モーションセンサとして機能し、農業機械100の加速度、速度、変位、および姿勢などの諸量を示す信号を出力することができる。測位装置130は、GNSS信号および補正信号に加えて、IMU135から出力された信号に基づいて、農業機械100の位置および向きをより高い精度で推定することができる。IMU135から出力された信号は、GNSS信号および補正信号に基づいて計算される位置の補正または補完に用いられ得る。IMU135は、GNSS信号よりも高い頻度で信号を出力する。その高頻度の信号を利用して、農業機械100の位置および向きをより高い頻度(例えば、10Hz以上)で計測することができる。IMU135に代えて、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロスコープを別々に設けてもよい。IMU135は、測位装置130とは別の装置として設けられていてもよい。
【0162】
測位装置130は、GNSS受信機131およびIMU135に加えて、他の種類のセンサを備えていてもよい。農業機械100が走行する環境によっては、これらのセンサからのデータに基づいて農業機械100の位置および向きを高い精度で推定することができる。
【0163】
このような測位装置130を利用することにより、前述した列検出システム1000、2000によって検出した作物列および畝の地図を作製することも可能である。
【0164】
駆動装置140は、例えば前述の原動機102、変速装置103、デフロック機構を含む差動装置、操舵装置106、および連結装置108などの、農業機械100の走行および作業機300の駆動に必要な各種の装置を含む。原動機102は、例えばディーゼル機関などの内燃機関を備える。駆動装置140は、内燃機関に代えて、あるいは内燃機関とともに、トラクション用の電動モータを備えていてもよい。
【0165】
ステアリングホイールセンサ150は、農業機械100のステアリングホイールの回転角を計測する。切れ角センサ152は、操舵輪である前輪104Fの切れ角を計測する。ステアリングホイールセンサ150および切れ角センサ152による計測値は、制御装置180による操舵制御に利用される。
【0166】
記憶装置170は、フラッシュメモリまたは磁気ディスクなどの1つ以上の記憶媒体を含む。記憶装置170は、各センサ、および制御装置180が生成する各種のデータを記憶する。記憶装置170が記憶するデータには、農業機械100が走行する環境内の地図データ、および自動操舵の目標経路のデータが含まれ得る。記憶装置170は、制御装置180における各ECUに、後述する各種の動作を実行させるコンピュータプログラムも記憶する。そのようなコンピュータプログラムは、記憶媒体(例えば半導体メモリまたは光ディスク等)または電気通信回線(例えばインターネット)を介して農業機械100に提供され得る。そのようなコンピュータプログラムが、商用ソフトウェアとして販売されてもよい。
【0167】
制御装置180は、複数のECUを含む。複数のECUは、画像認識用のECU181、速度制御用のECU182、ステアリング制御用のECU183、自動操舵制御用のECU184、作業機制御用のECU185、表示制御用のECU186、およびブザー制御用のECU187を含む。画像認識用のECU181は、列検出システムの処理装置として機能する。ECU182は、駆動装置140に含まれる原動機102、変速装置103、およびブレーキを制御することによって農業機械100の速度を制御する。ECU183は、ステアリングホイールセンサ150の計測値に基づいて、操舵装置106に含まれる油圧装置または電動モータを制御することにより、農業機械100のステアリングを制御する。ECU184は、測位装置130、ステアリングホイールセンサ150、および切れ角センサ152から出力される信号に基づいて、自動操舵運転を実現するための演算および制御を行う。自動操舵運転中、ECU184は、ECU183に操舵角の変更の指令を送る。ECU183は、当該指令に応答して操舵装置106を制御することによって操舵角を変化させる。ECU185は、作業機300に所望の動作を実行させるために、連結装置108の動作を制御する。ECU185はまた、作業機300の動作を制御する信号を生成し、その信号を通信IF190から作業機300に送信する。ECU186は、操作端末200の表示を制御する。ECU186は、例えば、操作端末200における表示装置に、圃場のマップ、検出された作物列また畝、マップ中の農業機械100の位置および目標経路、ポップアップ通知、設定画面などの様々な表示を実現させる。ECU187は、ブザー220による警告音の出力を制御する。
【0168】
これらのECUの働きにより、制御装置180は、手動操舵または自動操舵による運転を実現する。通常の自動操舵運転時において、制御装置180は、測位装置130によって計測または推定された農業機械100の位置と、記憶装置170に記憶された目標経路とに基づいて、駆動装置140を制御する。これにより、制御装置180は、農業機械100を目標経路に沿って走行させる。一方、列に沿って走行する列倣い走行制御モードでは、画像認識用のECU181が、検出した作物列または畝から作物列や畝の境界ラインを決定し、この境界ラインに基づく目標経路を生成する。制御装置180は、この目標経路に従った動作を実行する。
【0169】
制御装置180に含まれる複数のECUは、例えばCAN(Controller Area Network)などのビークルバス規格に従って、相互に通信することができる。
図29において、ECU181から187のそれぞれは、個別のブロックとして示されているが、これらのそれぞれの機能が、複数のECUによって実現されていてもよい。また、ECU181から187の少なくとも一部の機能を統合した車載コンピュータが設けられていてもよい。制御装置180は、ECU181から187以外のECUを備えていてもよく、機能に応じて任意の個数のECUが設けられ得る。各ECUは、1つ以上のプロセッサを含む制御回路を備える。
【0170】
通信IF190は、作業機300の通信IF390と通信を行う回路である。通信IF190は、例えばISOBUS-TIM等のISOBUS規格に準拠した信号の送受信を、作業機300の通信IF390との間で実行する。これにより、作業機300に所望の動作を実行させたり、作業機300から情報を取得したりすることができる。通信IF190は、有線または無線のネットワークを介して外部のコンピュータと通信してもよい。外部のコンピュータは、例えば、圃場に関する情報をクラウド上で一元管理し、クラウド上のデータを活用して農業を支援する営農支援システムにおけるサーバコンピュータであってもよい。
【0171】
操作端末200は、農業機械100の走行および作業機300の動作に関する操作をオペレータが実行するための端末であり、バーチャルターミナル(VT)とも称される。操作端末200は、タッチスクリーンなどの表示装置、および/または1つ以上のボタンを備え得る。オペレータは、操作端末200を操作することにより、例えば自動操舵モードのオン/オフの切り替え、クルーズコントロールのオン/オフの切り替え、農業機械100の初期位置の設定、目標経路の設定、地図の記録または編集、2WD/4WDの切り替え、デフロックのオン/オフの切り替え、および作業機300のオン/オフの切り替えなどの種々の操作を実行することができる。これらの操作の少なくとも一部は、操作スイッチ群210を操作することによっても実現できる。操作端末200への表示は、ECU186によって制御される。
【0172】
ブザー220は、オペレータに異常を報知するための警告音を発する音声出力装置である。ブザー220は、例えば、自動操舵運転時に、農業機械100が目標経路から所定距離以上逸脱した場合に警告音を発する。ブザー220の代わりに、操作端末200のスピーカによって同様の機能が実現されてもよい。ブザー220は、ECU186によって制御される。
【0173】
作業機300における駆動装置340は、作業機300が所定の作業を実行するために必要な動作を行う。駆動装置340は、例えば油圧装置、電気モータ、またはポンプなどの、作業機300の用途に応じた装置を含む。制御装置380は、駆動装置340の動作を制御する。制御装置380は、通信IF390を介して農業機械100から送信された信号に応答して、駆動装置340に各種の動作を実行させる。また、作業機300の状態に応じた信号を通信IF390から農業機械100に送信することもできる。
【0174】
以上の実施形態において、農業機械100は、無人で自動運転を行う作業車両であってもよい。その場合には、キャビン、運転席、ステアリングホイール、操作端末などの、有人運転にのみ必要な構成要素は、農業機械100に設けられていなくてもよい。無人の作業車両は、自律走行、またはオペレータによる遠隔操作によって、前述の各実施形態における動作と同様の動作を実行してもよい。
【0175】
実施形態における各種の機能を提供するシステムを、それらの機能を有しない農業機械に後から取り付けることもできる。そのようなシステムは、農業機械とは独立して製造および販売され得る。そのようなシステムで使用されるコンピュータプログラムも、農業機械とは独立して製造および販売され得る。コンピュータプログラムは、例えばコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されて提供され得る。コンピュータプログラムは、電気通信回線(例えばインターネット)を介したダウンロードによっても提供され得る。
【0176】
上記の実施形態では、農業機械100は農業用の作業車両であるが、農業機械100は作業車両に限定されない。農業機械100は、例えば農業用の無人航空機(例えばドローン)であってもよい。そのような無人航空機に本開示の列検出システムを搭載して地面上の作物列または畝などの列領域を検出することができる。そのような無人航空機は、検出された列領域に沿って飛行しながら、薬剤または肥料の散布などの農作業を行うことができる。
【0177】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の列検出システムおよび農業機械を含む。
【0178】
[項目1]
一対の前輪および一対の後輪を含む複数の車輪を備える農業機械に取り付けられ、地面を撮影して前記地面における第1領域についての第1画像を生成する第1撮像装置と、
前記農業機械に取り付けられ、前記地面を撮影して前記地面において前記第1領域よりも後方にシフトした第2領域についての第2画像を生成する第2撮像装置と、
前記第1画像および前記第2画像の画像処理を行う処理装置と、
を備え、
前記第2撮像装置は、各前輪の少なくとも一部および各後輪の少なくとも一部を前記第2画像内に含むように設けられ、
前記処理装置は、
前記第1画像を、前記地面の上方から見た第1上面視画像に変換し、
前記第2画像を、前記地面の上方から見た第2上面視画像に変換し、
前記第2上面視画像における各前輪の位置および各後輪の位置に基づいて前記第1上面視画像から関心領域を選択し、前記関心領域を対象とする列検出処理を実行する、列検出システム。
【0179】
[項目2]
前記処理装置は、
前記第2上面視画像における前記一対の前輪の領域および前記一対の後輪の領域を検出し、
前記一対の前輪の前記領域および前記一対の後輪の前記領域に基づいて、前記関心領域の幅を決定する、項目1に記載の列検出システム。
【0180】
[項目3]
前記関心領域は、前記第1上面視画像の中央を縦方向に延びる、前記幅を有する長方形の領域である、項目1または2に記載の列検出システム。
【0181】
[項目4]
前記第1画像および前記第2画像は、カラー画像であり、
前記処理装置は、
前記一対の前輪および前記一対の後輪の色情報に基づいて、前記第2上面視画像における前記一対の前輪の前記領域および前記一対の後輪の前記領域を決定する、項目1から3のいずれか1項に記載の列検出システム。
【0182】
[項目5]
前記処理装置は、
前記一対の前輪の前記領域から一対の前輪基準点を抽出し、
前記一対の後輪の前記領域から一対の後輪基準点を抽出し、
前記一対の前輪基準点および前記一対の後輪基準点の一方または両方に基づいて前記関心領域の前記幅を決定する、項目4に記載の列検出システム。
【0183】
[項目6]
前記処理装置は、
前記第2上面視画像を左部分と右部分とに分割する縦基準線を決定し、
前記一対の前輪の前記領域から、前記縦基準線に最も近い一対の画素を前記一対の前輪基準点として選択し、
前記一対の後輪の前記領域から、前記縦基準線に最も近い一対の画素を前記一対の後輪基準点として選択し、
前記一対の前輪基準点の距離によって規定される前輪間隔、および前記一対の後輪基準点の距離によって規定される後輪間隔の一方に基づいて、前記関心領域の前記幅を決定する、項目5に記載の列検出システム。
【0184】
[項目7]
前記処理装置は、
前記前輪間隔および前記後輪間隔のうちの相対的に小さくない方の間隔に基づいて前記関心領域の幅を決定する、項目6に記載の列検出システム。
【0185】
[項目8]
前記処理装置は、
前記前輪間隔および前記後輪間隔の一方に0.9以上2.0以下の数値を乗算した値を前記関心領域の幅として用いる、項目6に記載の列検出システム。
【0186】
[項目9]
前記処理装置は、
前記縦基準線に直交する横基準線であって、前記第2上面視画像の前記左部分および前記右部分のそれぞれを上部分と下部分とに分割し、前記一対の前輪の前記領域を前記上部分に含み、前記一対の後輪の前記領域を前記下部分に含む、横基準線を決定し、
エッジ検出技術によって前記第2上面視画像におけるエッジを検出し、
前記第2上面視画像における前記一対の前輪の前記領域および前記一対の後輪の前記領域と、前記エッジと、の重複部分を決定し、
前記縦基準線および前記横基準線によって分割された4つの部分のそれぞれにおいて、前記重複部分の前記縦基準線に最も近い位置にある画素を前記前輪基準点および前記後輪基準点として選択する、項目6に記載の列検出システム。
【0187】
[項目10]
前記第1画像および前記第2画像は、カラー画像であり、
前記処理装置は、
前記第1上面視画像の前記関心領域から、作物列の色を強調した第1上面視強調画像を生成し、
前記第1上面視強調画像から、前記作物列の色の指標値が閾値以上の画素と、前記指標値が前記閾値未満の画素とに分類された、第1上面視二値化画像を生成し、
前記第1上面視二値化画像に基づいて、前記地面上の作物列を検出する、
項目1から9のいずれか1項に記載の列検出システム。
【0188】
[項目11]
前記処理装置は、
前記第1上面視画像の前記関心領域を前記第2上面視画像内に延長し、
前記第2上面視画像における前記関心領域から、前記作物列の色を強調した第2上面視強調画像を生成し、
前記第2上面視強調画像から、前記作物列の色の前記指標値が前記閾値以上の画素と、前記指標値が前記閾値未満の画素とに分類された、第2上面視二値化画像を生成し、
前記第1上面視二値化画像および第2上面視二値化画像に基づいて、前記地面上の作物列を検出する、項目10に記載の列検出システム。
【0189】
[項目12]
前記第1撮像装置は、前方斜め下向きに取り付けられており、
前記第2撮像装置は、下向きに取り付けられている、項目1から11のいずれか1項に記載の列検出システム。
【0190】
[項目13]
前記農業機械は作業車両であり、
前記第2撮像装置は前記作業車両の下部に取り付けられている、項目1から12のいずれか1項に記載の列検出システム。
【0191】
[項目14]
前記処理装置は、前記列検出によって決定された作物列または畝の位置に基づいて目標経路を生成する、項目1から12のいずれか1項に記載の列検出システム。
【0192】
[項目15]
項目1から14のいずれか1項に記載の列検出システムと、
前記列検出システムが検出した作物列または畝の位置に基づいて前記農業機械の進行方向を制御する自動操舵装置と、
を備える農業機械。
【0193】
[項目16]
操舵輪を含む走行装置をさらに備え、
前記自動操舵装置は、前記列検出システムが検出した前記作物列または前記畝の位置に基づいて、前記操舵輪の操舵角を制御する、項目15に記載の農業機械。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本開示の技術は、例えば、乗用管理機、野菜移植機、トラクタ、または農業用ドローンなどの農業機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0195】
10・・・地面、12・・・作物列、14・・・中間領域(作業通路)、16・・・畝、40・・・画像、42・・・強調画像、44・・・上面視画像、100・・・農業機械、110・・・車両本体、120、121・・・撮像装置、122・・・処理装置、124・・・自動操舵装置、1000・・・列検出システム