(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028448
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】蓄熱式水素燃焼設備
(51)【国際特許分類】
F23L 15/02 20060101AFI20250221BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
F23L15/02
F23D14/22 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133263
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐作
(72)【発明者】
【氏名】仲井 和成
【テーマコード(参考)】
3K019
3K023
【Fターム(参考)】
3K019AA01
3K019BB04
3K019BD03
3K019CA03
3K023QA18
3K023QB01
3K023QC05
3K023QC07
3K023SA00
(57)【要約】
【課題】 燃焼動作と蓄熱動作を交互に行う対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備において、燃料の不完全燃焼によって煤が発生するなどの問題を解消する。
【解決手段】 水素H
2を炉R1内に噴出させる燃料噴射ノズル10の両側に給排気口20a,20bを設け、蓄熱体34a,34bが収容された蓄熱部33a,33bにおいて加熱された空気Airを一方の給排気口から炉内に噴射させて、燃料噴射ノズルから炉内に噴射された水素を燃焼させる燃焼動作を行う一方、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを他方の給排気口を通して蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を交互に行うようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を炉内に噴出させる燃料噴射ノズルの両側に給排気口を設け、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を一方の給排気口から炉内に噴射させて、燃料噴射ノズルから炉内に噴射された水素を燃焼させる燃焼動作を行う一方、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを他方の給排気口を通して蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を交互に行うことを特徴とする蓄熱式水素燃焼設備。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱式水素燃焼設備において、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を一方の給排気口から炉内に噴射させる動作と、他方の給排気口を通して蓄熱部に導く動作とを同時に切り換えて行うことを特徴とする蓄熱式水素燃焼設備。
【請求項3】
水素を炉内に噴出させる燃料噴射ノズルと、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を炉内に噴射させる動作と、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる動作とを行う給排気口とを有する蓄熱式燃焼バーナーを対になって設け、一方の蓄熱式燃焼バーナーにおいては、燃料噴出ノズルから水素を炉内に噴出させると共に、蓄熱体が収容された蓄熱部を通して加熱された空気を給排気口から炉内に噴出させて、水素を空気と混合させて炉内で燃焼させる燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式燃焼バーナーにおいては、燃料噴出ノズルから水素を炉内に噴出させるのを停止させ、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を行い、対になった蓄熱式燃焼バーナーにおいて燃焼動作と蓄熱動作とを交互に行うことを特徴とする蓄熱式水素燃焼設備。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄熱式水素燃焼設備において、前記の対になった蓄熱式燃焼バーナーにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り換えるにあたり、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を一方の給排気口から炉内に噴射させる動作と、他方の給排気口を通して蓄熱部に導く動作とを同時に切り換えて行うことを特徴とする蓄熱式水素燃焼設備。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の蓄熱式水素燃焼設備において、前記の燃料噴射ノズルへの水素の供給と停止とを切り換える燃料切換弁を設けると共に、前記の燃料噴射ノズルに不活性ガスを供給する不活性ガス供給管を設け、前記の燃料切換弁により水素の供給が停止された燃料噴射ノズルに、前記の不活性ガス供給管から不活性ガスを供給することを特徴とする蓄熱式水素燃焼設備。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の蓄熱式水素燃焼設備において、前記の燃料噴射ノズルへの水素の供給と停止とを切り換える燃料切換弁を、前記の燃料噴射ノズルにおける噴出口の近くに設けたことを特徴とする蓄熱式水素燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴出ノズルから燃料を炉内に噴出させると共に、蓄熱体が収容された蓄熱部を通して加熱された空気を給排気口から炉内に噴出させて、燃料を空気と混合させて炉内で燃焼させる燃焼動作と、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを給排気口から蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作とを行うようにした蓄熱式燃焼設備において、燃料に水素を用いた蓄熱式水素燃焼設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼材などの各種の被処理物を加熱処理する工業炉などにおいては、炉内において燃料を燃焼させた燃焼排ガスの熱を有効に利用するため、燃料噴出ノズルから燃料を炉内に噴出させると共に、蓄熱体が収容された蓄熱部を通して加熱された空気を給排気口から炉内に噴出させて、燃料を空気と混合させて炉内で燃焼させる燃焼動作と、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを給排気口から蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作とを行うようにした蓄熱式燃焼設備が知られている。
【0003】
そして、このような蓄熱式燃焼設備としては、特許文献1に示されるように、燃料噴射ノズルの両側に給排気口を設け、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を一方の給排気口から炉内に噴射させて、燃料噴射ノズルから炉内に噴射された燃料を燃焼させる燃焼動作を行う一方、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを他方の給排気口を通して蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を交互に行うようにしたものが知られている。
【0004】
また、特許文献2に示されるように、燃料を炉内に噴出させる燃料噴射ノズルと、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を炉内に噴射させる動作と、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる動作とを行う給排気口とを有する蓄熱式燃焼バーナーを対になって設け、一方の蓄熱式燃焼バーナーにおいては、燃料噴出ノズルから燃料を炉内に噴出させると共に、蓄熱体が収容された蓄熱部を通して加熱された空気を給排気口から炉内に噴出させて、燃料を空気と混合させて炉内で燃焼させる燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式燃焼バーナーにおいては、燃料噴出ノズルから燃料を炉内に噴出させるのを停止させ、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を行い、対になった蓄熱式燃焼バーナーにおいて燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り換えて行うようにしたものが知られている。
【0005】
ここで、従来の蓄熱式燃焼設備における前記のような各蓄熱式燃焼バーナーにおいては、燃料として、一般に炭化水素ガス等の化石燃料が使用されている。
【0006】
ここで、前記の特許文献1に示されるように、燃料噴射ノズルから炭化水素ガス等の化石燃料を噴出させると共に、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を一方の給排気口から炉内に噴射させて、燃料噴射ノズルから炉内に噴射された燃料を燃焼させる燃焼動作と、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを他方の給排気口を通して蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作とを交互に切り換えるようにした場合、この切り換え時に空気が一時的に不足して、燃料噴射ノズルから炉内に噴出された化石燃料が完全に燃焼されずに煤が発生して、被処理物が汚損されるという問題があった。
【0007】
また、前記の特許文献2に示されるように、一方の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、燃料噴出ノズルから化石燃料を炉内に噴出させると共に、蓄熱体が収容された蓄熱部を通して加熱された空気を給排気口から炉内に噴出させて、化石燃料を空気と混合させて炉内で燃焼させる燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、燃料噴出ノズルから燃料を炉内に噴出させるのを停止させ、炉内において化石燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を行い、対になった蓄熱式燃焼バーナーにおいて燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り換えて行うようにした場合にも、空気が一時的に不足して、燃焼動作と蓄熱動作との切り換え時に、燃料噴射ノズルから炉内に噴出された化石燃料が完全に燃焼されずに煤が発生して、被処理物が汚損されるという問題があった。
【0008】
そして、前記の特許文献2に示されるものにおいては、
図1に示すように、一方の蓄熱式燃焼バーナー1Aにおいて、燃料噴出ノズル2aから炭化水素ガス等の化石燃料Gを炉R内に噴出させると共に、蓄熱体3aが収容された蓄熱部4aを通して加熱された空気Airを給排気口5aから炉R内に噴出させて、化石燃料Gを空気Airと混合させて炉R内で燃焼させる燃焼動作と、他方の蓄熱式燃焼バーナー1Bにおいて、燃料噴出ノズル2bから化石燃料Gを炉R内に噴出させるのを停止させ、炉R内において化石燃料Gが燃焼された後の燃焼排ガスを給排気口5bから蓄熱部4bに導いて蓄熱部4bに収容された蓄熱体3bに燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作とを交互に切り換えるにあたり、
図2に示すように、何れの蓄熱式燃焼バーナー1A、1Bにおいても、燃焼動作を開始する時点においては、先に蓄熱体3a,3bが収容された蓄熱部4a,4bを通して加熱された空気Airを給排気口5a,5bから炉R内に噴出させた後、燃料噴出ノズル2a,2bから化石燃料Gを炉R内に噴出させて燃焼を開始させる一方、蓄熱動作を開始する時点においては、先に燃料噴出ノズル2a,2bから炉R内への化石燃料Gの噴出を停止させた後、蓄熱体3a,3bが収容された蓄熱部4a,4bを通して加熱された空気Airを給排気口5a,5bから炉R内に噴出させる動作を停止させるようにして、燃料噴出ノズル2a,2bから炉R内に化石燃料Gが噴出されるときには、必ず蓄熱体3a,3bが収容された蓄熱部4a,4bを通して加熱されて給排気口5a,5bから炉R内に噴出された空気Airが不足しないようにして、燃焼時に煤の発生を抑制することが示されている。
【0009】
しかし、このようにすると、何れの蓄熱式燃焼バーナー1A、1Bにおいても燃焼が行われない時間が生じ、
図2に示すように、この時点においては、炉R内の温度が低下して、炉R内の温度が変動し、被処理物を適切な温度で加熱処理することができなくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4602858号公報
【特許文献2】特許第3159606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、燃料噴出ノズルから燃料を炉内に噴出させると共に、蓄熱体が収容された蓄熱部を通して加熱された空気を給排気口から炉内に噴出させて、燃料を空気と混合させて炉内で燃焼させる燃焼動作と、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを給排気口から蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作とを行うようにした蓄熱式燃焼設備における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第1の蓄熱式水素燃焼設備においては、前記のような課題を解決するため、水素を炉内に噴出させる燃料噴射ノズルの両側に給排気口を設け、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を一方の給排気口から炉内に噴射させて、燃料噴射ノズルから炉内に噴射された水素を燃焼させる燃焼動作を行う一方、炉内において水素が燃焼された後の燃焼排ガスを他方の給排気口を通して蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を交互に行うようにした。
【0013】
ここで、前記の第1の蓄熱式水素燃焼設備においては、燃料噴射ノズルから炉内に噴出させる燃料に水素を使用しているため、燃料噴射ノズルから炉内に噴出された水素が完全に燃焼されなくても、従来の化石燃料のように煤が発生するということがなく、被処理物が汚損されるのが防止されると共に、水素は燃焼性が非常に高いため、未燃焼の水素が生じても速やかに燃焼されるようになる。
【0014】
そして、前記の第1の蓄熱式水素燃焼設備においては、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を一方の給排気口から炉内に噴射させる動作と、他方の給排気口を通して蓄熱部に導く動作とを同時に切り換えて行うようにした場合、切り換え時に、燃料噴射ノズルから炉内に噴出された水素が完全に燃焼されずに残ったとしても、前記のように煤が発生するということがなく、被処理物が汚損されるのが防止されると共に、水素は燃焼性が非常に高いため、未燃焼の水素が生じても速やかに燃焼されるようになる。
【0015】
また、本発明に係る第2の蓄熱式水素燃焼設備においては、前記のような課題を解決するため、水素を炉内に噴出させる燃料噴射ノズルと、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を炉内に噴射させる動作と、炉内において水素が燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる動作とを行う給排気口とを有する蓄熱式燃焼バーナーを対になって設け、一方の蓄熱式燃焼バーナーにおいては、燃料噴出ノズルから水素を炉内に噴出させると共に、蓄熱体が収容された蓄熱部を通して加熱された空気を給排気口から炉内に噴出させて、水素を空気と混合させて炉内で燃焼させる燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式燃焼バーナーにおいては、燃料噴出ノズルから水素を炉内に噴出させるのを停止させ、炉内において水素が燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱部に導いて蓄熱部に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を行い、対になった蓄熱式燃焼バーナーにおいて燃焼動作と蓄熱動作とを交互に行うようにした。
【0016】
ここで、第2の蓄熱式水素燃焼設備においても、前記の第1の蓄熱式水素燃焼設備と同様に、燃料噴射ノズルから炉内に噴出させる燃料に水素を使用しているため、燃料噴射ノズルから炉内に噴出された水素が完全に燃焼されなくても、従来の化石燃料のように煤が発生するということがなく、被処理物が汚損されるのが防止されると共に、水素は燃焼性が非常に高いため、未燃焼の水素が生じても速やかに燃焼されるようになる。
【0017】
そして、前記の第2の蓄熱式水素燃焼設備において、対になった蓄熱式燃焼バーナーにおける燃焼動作と蓄熱動作とを切り換えるにあたり、蓄熱体が収容された蓄熱部において加熱された空気を一方の給排気口から炉内に噴射させる動作と、他方の給排気口を通して蓄熱部に導く動作とを同時に切り換えて行うようにした場合、切り換え時に、燃焼状態における燃料噴射ノズルから炉内に噴出された水素が完全に燃焼されずに残ったとしても、前記のように煤が発生するということがなく、被処理物が汚損されるのが防止されると共に、水素は燃焼性が非常に高いため、未燃焼の水素が生じても、他方の蓄熱式燃焼バーナーにおける燃焼動作により速やかに燃焼されるようになる。
【0018】
また、前記の第2の蓄熱式水素燃焼設備においては、前記の燃料噴射ノズルへの水素の供給と停止とを切り換える燃料切換弁を設けると共に、前記の燃料噴射ノズルに不活性ガスを供給する不活性ガス供給管を設け、前記の燃料切換弁により水素の供給が停止された燃料噴射ノズルに、前記の不活性ガス供給管から不活性ガスを供給することが好ましい。このようにすると、燃焼動作を停止した燃料噴射ノズル内に不活性ガスが供給されて、炉内における空気が前記の燃料噴射ノズル内に流入するのが防止され、次に、この燃料噴射ノズル内に水素を供給して燃焼動作を行う場合に、水素が燃料噴射ノズル内における空気と混合して、燃料噴射ノズル内で爆発が起こるのを防止できる。
【0019】
また、前記の第2の蓄熱式水素燃焼設備においては、前記の燃料噴射ノズルへの水素の供給と停止とを切り換える燃料切換弁を、前記の燃料噴射ノズルにおける噴出口の近くに設けることが好ましい。このように、前記の燃料切換弁を、燃料噴射ノズルにおける噴出口の近くに設けると、前記の燃料切換弁を閉じた場合に、燃焼動作を停止させた燃料噴射ノズルと燃料切換弁との間の空間が小さくなって、炉内の空気が燃料噴射ノズル内に流れ込む量を非常に少なくすることができ、この燃料噴射ノズル内に水素を供給して燃焼動作を行う場合に、水素が燃料噴射ノズル内の空気と混合して、燃料噴射ノズル内で爆発が起こるの抑制できるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明における第1及び第2の蓄熱式水素燃焼設備においては、前記のように燃料噴射ノズルから炉内に噴出させる燃料に水素を使用したことにより、燃料噴射ノズルから炉内に噴出された水素が完全に燃焼されなくても、煤が発生するということがなく、被処理物が汚損されるのが防止されると共に、水素は燃焼性が非常に高いため、未燃焼の水素が生じても速やかに燃焼されるようになる。
【0021】
それにより、燃焼動作と蓄熱動作とを切り換える時に、炉内温度の変動をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来の蓄熱式燃焼設備を示した概略断面説明図である。
【
図2】従来の蓄熱式燃焼設備における一対の蓄熱式燃焼バーナー1A、1Bにおいて、化石燃料を燃料噴出ノズルから炉内に噴出させるタイミングと、空気を給排気口から炉内に噴出させるタイミングとの関係、化石燃料を燃料噴出ノズルから炉内に噴出させるのを停止させるタイミングと、空気を給排気口から炉内に噴出させるのを停止させるタイミングとの関係及び炉内温度の変化を示した図である。
【
図3】本発明の実施形態1における蓄熱式水素燃焼設備を示した概略断面説明図である。
【
図4】本発明の実施形態2における蓄熱式水素燃焼設備を示した概略断面説明図である。
【
図5】前記の実施形態2における蓄熱式水素燃焼設備における一対の蓄熱式燃焼バーナー40A,40Bにおいて、水素を燃料噴出ノズルから炉内に噴出させるタイミングと、空気を給排気口から炉内に噴出させるタイミングとの関係、水素を燃料噴出ノズルから炉内に噴出させるのを停止させるタイミングと、空気を給排気口から炉内に噴出させるのを停止させるタイミングとの関係及び炉内温度の変化を示した図である。
【
図6】前記の実施形態2における蓄熱式水素燃焼設備の変更例を示し、燃料噴射ノズルへの水素の供給と停止とを切り換える燃料切換弁を、燃料噴射ノズルにおける噴出口の近くに設けた状態を示した概略断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る蓄熱式水素燃焼設備を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る蓄熱式水素燃焼設備は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0024】
(実施形態1)
実施形態1における蓄熱式燃焼設備においては、
図3に示すように、水素H
2を供給する燃料供給管11に設けた燃料切換弁12を開けて、燃料供給管11を通して水素H
2を燃料噴射ノズル10に導き、この燃料噴射ノズル10先端の噴出口13から水素H
2を炉R1内に噴出させるようにしている。ここで、前記の燃料切換弁12や後述する各種の弁に関しては、開いた状態を白抜きで、閉じた状態を黒塗りで示している。
【0025】
また、炉R1に設けられた前記の燃料噴射ノズル10先端の噴出口13の両側に位置するようにして2つの給排気口20a,20bを設けている。
【0026】
そして、一方の給排気口20a側においては、
図3に示すように、送風ブロアー21により空気Airを空気供給管31に供給し、前記の空気供給管31に設けた一方の供給弁32aを開けて、空気Airを一方の蓄熱部33aに導き、前記の空気Airをこの蓄熱部33a内における加熱された蓄熱体34aにより加熱させ、加熱された空気Airを一方の給排気口20aから炉R1内に噴射させて、前記の燃料噴射ノズル10から炉R1内に噴射された水素H
2を燃焼させる燃焼動作を行うようにしている。なお、このように空気Airを蓄熱部33a内に供給して水素H
2を燃焼させる燃焼動作中においては、前記の蓄熱部33a内から燃焼排ガスを排出させる排気管35に設けた一方の排気弁36aを閉じている。
【0027】
一方、他方の給排気口20b側においては、
図3に示すように、前記の空気供給管31に設けた他方の供給弁32bを閉じて、空気Airが他方の蓄熱部33bに導かれないようにする一方、前記の蓄熱部33b内から燃焼排ガスを排出させる排気管35に設けた排気弁36bを開け、吸引ブロアー22により吸引させて、水素H
2を燃焼させた後の燃焼排ガスを炉R1内から前記の給排気口20bを通して他方の蓄熱部33bに導き、この蓄熱部33b内における蓄熱体34bに燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を行った後、前記の燃焼排ガスを前記の排気管35を通して排気搭36に導いて排気させるようにしている。
【0028】
そして、この実施形態1における蓄熱式燃焼設備においては、前記のように燃料噴射ノズル10から水素H2を炉R1内に噴出させながら、前記の一方の給排気口20a側における燃焼動作と、他方の給排気口20b側における蓄熱動作とを同時に交互に切り換えて行うようにしている。
【0029】
ここで、この実施形態1における蓄熱式燃焼設備においては、前記のように水素H2を燃料噴射ノズル10から炉R1内に噴出させて燃焼させるようにしているため、前記の一方の給排気口20a側における燃焼動作と、他方の給排気口20b側における蓄熱動作との切り換え時に、一時的に空気が不足して、水素H2が完全に燃焼されなくて、水素H2の一部が残ったとしても、従来の化石燃料のように煤が発生して、被処理物(図示せず)が汚損されるということがなく、また水素H2は燃焼性が非常に高いため、未燃焼の水素H2が生じても、切り換え後に、給排気口20a,20bから炉R1内に噴射された空気Airによって速やかに燃焼されるようになる。
【0030】
(実施形態2)
実施形態2における蓄熱式燃焼設備においては、
図4に示すように、対になった蓄熱式燃焼バーナー40A,40Bを炉R2の内部に向けて対向するように設けている。
【0031】
そして、前記の対になった各蓄熱式燃焼バーナー40A,40Bにおいては、それぞれ水素H2を供給する各燃料供給管51a,51bに設けた各燃料切換弁52a,52bを開けて、各燃料供給管51a,51bを通して水素H2を各燃料噴射ノズル50a,50bに導き、各燃料噴射ノズル50a,50bの先端の噴出口53a,53bからそれぞれ水素H2を炉R2内に噴出させるようにしている。なお、前記の燃料切換弁52a,52bや後述する各種の弁に関しては、前記の実施形態1と同様に、開いた状態を白抜きで、閉じた状態を黒塗りで示している。
【0032】
また、前記の燃料噴射ノズル50a,50bに対して、それぞれ不活性ガスの窒素N2を供給する不活性ガス供給管54a,54bを設けると共に、各不活性ガス供給管54a,54bにそれぞれ開閉弁55a,55bを設け、開閉弁55a,55bの開閉により、各燃料噴射ノズル50a,50bに対する窒素N2の供給と停止とを行うようにしている。
【0033】
そして、実施形態2における蓄熱式燃焼設備においては、送風ブロワー61より空気Airを空気供給管62に供給し、前記の空気供給管62に、各蓄熱式燃焼バーナー40A,40Bにおける各蓄熱部42a,42bに対応させてそれぞれ供給弁63a,63bを設け、前記の供給弁63a,63bを開閉させて、各蓄熱部42a,42bに対する空気Airの供給と停止とを切り換え、各蓄熱部42a,42bを通して空気Airを各蓄熱式燃焼バーナー40A,40Bにおける各給排気口41a,41bから炉R2内に噴射させるようにしている。
【0034】
また、炉R2内において水素H2が燃焼された後の燃焼排ガスを、吸引ブロアー64により吸引させ、各蓄熱式燃焼バーナー40A,40Bにおける各給排気口41a,41bを通して前記の各蓄熱部42a,42bに導き、各蓄熱部42a,42bに導かれた燃焼排ガスを排気管65に導くようにし、排気管65に設けた排気弁66a,66bを開けて、前記の燃焼排ガスを各蓄熱部42a,42bから排気管65を通して排気搭67に導いて排気させるようにしている。
【0035】
そして、一方の蓄熱式燃焼バーナー40Aにおいては、送風ブロワー61より空気Airを空気供給管62に供給し、空気供給管62に設けた一方の供給弁63aを開けて、空気Airをこの蓄熱式燃焼バーナー40Aにおける蓄熱部42aに導き、前記の空気Airを蓄熱部42a内における加熱された蓄熱体43aにより加熱させ、加熱された空気Airを、この蓄熱式燃焼バーナー40Aにおける給排気口41aから炉R2内に噴射させると共に、前記の燃料供給管51aに設けた燃料切換弁52aを開けて、水素H2を前記の燃料噴射ノズル50aに供給し、この燃料噴射ノズル50a先端の噴出口53aから水素H2を炉R1内に噴出させて、水素H2を燃焼させる燃焼動作を行うようにしている。
【0036】
ここで、このように蓄熱部42aを通して加熱された空気Airを給排気口41aから炉R2内に噴射させて、水素H2を燃焼させる燃焼動作を行う一方の蓄熱式燃焼バーナー40Aにおいては、炉R2内において水素H2を燃焼させた後の燃焼排ガスを、前記の蓄熱部42a内から燃焼排ガスを排出させる排気管65に設けた一方の排気弁66aを閉じると共に、前記の不活性ガス供給管54aに設けた開閉弁55aを閉じて、燃料噴射ノズル50a内に不活性ガスの窒素N2を供給させないようにしている。
【0037】
一方、燃焼動作を行わない他方の蓄熱式燃焼バーナー40Bにおいては、前記の燃料供給管51bに設けた燃料切換弁52bを閉じて、前記の燃料噴射ノズル50bに水素H2を供給させないようにすると共に、前記の空気供給管62に設けた供給弁63bを閉じて、空気Airをこの蓄熱式燃焼バーナー40Bにおける蓄熱部42bに導かないようにし、この状態で、前記の蓄熱部42b内から燃焼排ガスを排出させる排気管65に設けた排気弁66bを開け、炉R2内において水素H2が燃焼された後の燃焼排ガスを、吸引ブロアー64により吸引させ、蓄熱式燃焼バーナー40Bにおける給排気口41bを通して前記の蓄熱部42bに導き、この蓄熱部42b内に収容された蓄熱体43bに燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を行った後、前記の燃焼排ガスを前記の排気管65を通して排気搭67に導いて排気させるようにしている。
【0038】
ここで、前記のように燃料噴射ノズル50bに水素H2を供給させないようにし、炉R2内の燃焼排ガスを前記の蓄熱部42bに導いて、この蓄熱部42b内に収容された蓄熱体43bに燃焼排ガスの熱を蓄熱させる蓄熱動作を行う他方の蓄熱式燃焼バーナー40Bにおいては、前記の不活性ガス供給管54bに設けた開閉弁55bを開けて、前記の燃料噴射ノズル50bに不活性ガスの窒素N2を僅かに供給させるようにしている。
【0039】
このようにすると、燃料切換弁52bを閉じたときに燃料噴射ノズル50b内に残っている水素H2を炉R2内に噴出させて追い出すことが、逆火を防ぐことができるようになる。
【0040】
また、炉R2内における空気Airが前記の燃料噴射ノズル50b内に流入するのが防止され、この他方の蓄熱式燃焼バーナー40Bにおいて、前記の燃料噴射ノズル50bに水素H2を供給して燃焼動作を行う場合に、燃料噴射ノズル50bに供給された水素H2が、燃料噴射ノズル50b内に流入した空気Airと混合して、燃料噴射ノズル50b内で爆発が生じるのを防止することができる。
【0041】
また、常温の窒素N2を流すことにより、細い燃料噴射ノズル50b内の過昇温が防止され、燃料噴射ノズル50bが熱で変形するのを防止できる。
【0042】
また、実施形態2における蓄熱式燃焼設備においても、燃料に水素H2を使用したことにより、燃焼動作と蓄熱動作との切り換え時に、水素H2が完全に燃焼されなくて、水素H2の一部が残ったとしても、従来の化石燃料のように煤が発生して、被処理物(図示せず)が汚損されるということがなく、また水素H2は燃焼性が非常に高いため、未燃焼の水素H2が生じても、切り換え後に、前記の給排気口41a,41bから炉R2内に噴射された空気Airによって速やかに燃焼されるようになる。
【0043】
このようにすると、実施形態2における蓄熱式燃焼設備においては、前記の対になった蓄熱式燃焼バーナー40A,40Bにおいて、前記のような燃焼動作と蓄熱動作とを切り換えて交互に行うにあたり、燃焼動作と蓄熱動作との切り換えを同時に行うようにし、
図5に示すように、前記の燃料切換弁52a,52bによって燃料噴射ノズル50a,50bから炉R2内への水素H
2の供給と停止とを切り換えるタイミングと、空気供給管62に設けた前記の供給弁63a,63bによって、各蓄熱式燃焼バーナー40A,40Bにおける各給排気口41a,41bから炉R2内への空気Airの供給と停止とを切り換えるタイミングとが同時になるようにできる。この結果、
図5に示すように、炉R2内の温度が一定に保たれるようになり、炉R2内において、被処理物(図示せず)を安定した温度で処理できるようになる。
【0044】
また、この実施形態2における蓄熱式燃焼設備においては、前記のように炉R2内における空気Airが燃焼動作を停止している燃料噴射ノズル50a,50b内に流入して、燃焼動作を行うときに、燃料噴射ノズル50a,50bに供給された水素H2が、燃料噴射ノズル50a,50b内に流入した空気Airと混合して、燃料噴射ノズル50a,50b内で爆発が生じるのを防止するため、不活性ガス供給管54a,54bから燃焼動作を停止している燃料噴射ノズル50a,50bに不活性ガスの窒素N2を供給させるようにしたが、必ずしも、不活性ガス供給管54a,54bから燃料噴射ノズル50a,50bに不活性ガスの窒素N2を供給させるようにする必要はない。
【0045】
例えば、
図6に示すように、燃料噴射ノズル50a,50bへの水素H
2の供給と停止とを切り換える燃料切換弁52a,52bを、前記の燃料噴射ノズル50a,50bにおける噴出口53a,53bの近くに設け、炉R2内における空気Airが、燃焼動作を停止している燃料噴射ノズル50a,50b内に流入する容積を少なくすることができる。
【0046】
このようにすると、炉R2内から燃料噴射ノズル50a,50b内に流入される空気Airの量が非常に少なくなり、燃焼動作を行う場合に、燃料噴射ノズル50a,50bに供給された水素H2が、燃料噴射ノズル50a,50b内において爆発するのを抑制できるようになる。
【符号の説明】
【0047】
10 :燃料噴射ノズル
11 :燃料供給管
12 :燃料切換弁
13 :噴出口
20a,20b:給排気口
21 :送風ブロアー
22 :吸引ブロアー
31 :空気供給管
32a,32b :供給弁
33a,33b :蓄熱部
34a,34b :蓄熱体
35 :排気管
36 :排気搭
36a,36b :排気弁
40A,40B :蓄熱式燃焼バーナー
41a,41b :給排気口
42a,42b :蓄熱部
43a,43b :蓄熱体
50a,50b :燃料噴射ノズル
51a,51b :燃料供給管
52a,52b :燃料切換弁
53a,53b :噴出口
54a,54b :不活性ガス供給管
55a,55b :開閉弁
61 :送風ブロワー
62 :空気供給管
63a,63b :供給弁
64 :吸引ブロアー
65 :排気管
66a,66b :排気弁
67 :排気搭
Air :空気
H2 :水素
N2 :窒素(不活性ガス)
R1 :炉
R2 :炉