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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002845
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】撥水撥油性表面処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20241226BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20241226BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20241226BHJP
   D06M 13/11 20060101ALI20241226BHJP
   C08G 65/04 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C09K3/18 101
D06M15/53
D06M15/55
D06M13/11
C08G65/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103213
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇太
(72)【発明者】
【氏名】赤崎 一元
【テーマコード(参考)】
4H020
4J005
4L033
【Fターム(参考)】
4H020AB06
4H020BA02
4J005AA04
4J005AA05
4J005AA09
4J005AA10
4J005BB04
4L033AB04
4L033AC03
4L033BA08
4L033CA48
4L033CA49
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、フッ素化合物系表面処理剤に代わる優れた撥水撥油性を有する表面処理剤を提案することである。
【解決手段】(A)プロピレンオキサイド由来の構成単位50~100質量%を有し、重量平均分子量が10万以上である重合体を用いることにより、優れた撥水撥油性を有する表面処理剤が提供できることを見出し、課題を解決できることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プロピレンオキサイド由来の構成単位50~100質量%を有し、重量平均分子量が10万以上である重合体を含有する撥水撥油性表面処理剤。
【請求項2】
前記重合体が(A)プロピレンオキサイド由来の構成単位70~100質量%、(B)プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位0~30質量%を有する重合体である請求項1に記載の撥水撥油性表面処理剤。
【請求項3】
(B)プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位がメタクリル酸グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、炭素数2~18のアルキレンオキサイド(但し、プロピレンオキサイドを除く)、炭素数8~18のアルキルグリシジルエーテルから選択される単量体由来の構成単位である請求項2に記載の撥水撥油性表面処理剤。
【請求項4】
液状媒体を含有する請求項1に記載の撥水撥油性表面処理剤。
【請求項5】
前記重合体の重量平均分子量が20万以上である請求項1に記載の撥水撥油性表面処理剤。
【請求項6】
請求項1~5いずれかに記載の撥水撥油性表面処理剤で表面処理された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンオキサイド由来の構成単位を有する重合体を含有する撥水撥油性表面処理剤、及び該撥水撥油性表面処理剤で処理された紙、繊維、フィルム等の物品に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水撥油性を付与する表面処理剤としては、フッ素系重合体、例えばパーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルケニル基を有する重合性化合物の重合体であることが知られている。
【0003】
これらのフッ素系化合物の重合体は耐熱性、耐酸化性、耐候性などの特性に優れているという利点もあり、繊維製品、皮革、紙および鉱物基材のための表面処理剤として、幅広く用いられている。
【0004】
一方で、フッ素化合物系表面処理剤はPFAS(パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質)として、その環境残留性や生態蓄積性から、人への有害性が懸念されている。
【0005】
そこで、フッ素化合物系表面処理剤に代わる優れた撥水撥油性を有する表面処理剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2015/151598
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、フッ素化合物系表面処理剤に代わる優れた撥水撥油性を有する表面処理剤を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究の結果、(A)プロピレンオキサイド由来の構成単位50~100質量%を有し、重量平均分子量が10万以上である重合体を用いることにより、優れた撥水撥油性を有する表面処理剤が提供できることを見出し、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
本発明は、以下のように記載することもできる。
項1 (A)プロピレンオキサイド由来の構成単位50~100質量%を有し、重量平均分子量が10万以上である重合体を含有する撥水撥油性表面処理剤。
項2 前記重合体が(A)プロピレンオキサイド由来の構成単位70~100質量%、(B)プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位0~30質量%を有する重合体である項1に記載の撥水撥油性表面処理剤。
項3 (B)プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位がメタクリル酸グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、炭素数2~18のアルキレンオキサイド(但し、プロピレンオキサイドを除く)、炭素数8~18のアルキルグリシジルエーテルから選択される単量体由来の構成単位である項2に記載の撥水撥油性表面処理剤。
項4 液状媒体を含有する項1に記載の撥水撥油性表面処理剤。
項5 前記重合体の重量平均分子量が20万以上である項1に記載の撥水撥油性表面処理剤。
項6 項1~5いずれかに記載の撥水撥油性表面処理剤で表面処理された物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、(A)プロピレンオキサイド由来の構成単位50~100質量%を有し、重量平均分子量が10万以上である重合体を含有する表面処理剤が優れた撥水撥油性を有しているため、紙、繊維、フィルム等に用いる表面処理剤として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明の撥水撥油性表面処理剤は、(A)プロピレンオキサイド由来の構成単位50~100質量%を有し、重量平均分子量が10万以上である重合体を含有する。本発明の機序に限定されないが、重合体の構成単位の多くをプロピレンオキサイドが占めた上で、重合体の側鎖として、長すぎず短すぎないプロピレンオキサイドのメチル基が存在することにより、撥水撥油性を両立させることが考えられる。
【0012】
前記重合体としては、プロピレンオキサイド由来の構成単位を少なくとも含有し、プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位を含有していてもよく、構成単位とのモル比率はH-NMRスペクトルにより求められる。
【0013】
前記重合体としては、プロピレンオキサイドに由来する構成単位としては、50~100質量%を有することが好ましく、70~100質量%を有することがより好ましく、90~100質量%を有することが特に好ましい。
【0014】
前記重合体としては、プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位を含有していてもよく、プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体としては、メタクリル酸グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2~18のアルキレンオキサイド(但し、プロピレンオキサイドを除く)、炭素数8~18のアルキルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0015】
プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位としては、0~50質量%を有することがより好ましく、0~30質量%を有することが更に好ましく、0~10質量%を有することが特に好ましい。プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体構成単位としては、1種の単量体由来の構成単位で構成されていてもよく、2種以上の単量体由来の構成単位で構成されていてもよい。
【0016】
前記重合体として、プロピレンオキサイド由来の構成単位、プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位が少なくとも両方を含有する場合には、プロピレンオキサイドに由来する構成単位としては、50~99質量%であってよく、70~99質量%であってよく、90~99質量%であってよく、プロピレンオキサイドと共重合可能なオキシラン単量体由来の構成単位としては、1~50質量%であってよく、1~30質量%であってよく、1~10質量%であってよい。
【0017】
前記重合体の重量平均分子量は10万以上であることが好ましく、20万以上であることが好ましく、50万以上であることが好ましく、上限は特に限定されないが300万以下であることが好ましく、200万以下であってよい。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を使用して、標準ポリスチレン換算により算出する。
【0018】
前記重合体の製造方法としては、オキシラン化合物を開環重合させ得るものを触媒として使用し、モノマーを重合させることによって製造できる。重合温度は、例えば、-20~100℃の範囲である。この重合は、溶液重合、スラリー重合のいずれでもよい。前記触媒としては、例えば、有機アルミニウムを主体としこれに水やリンのオキソ酸化合物やアセチルアセトン等を反応させた触媒系、有機亜鉛を主体としこれに水を反応させた触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系等が挙げられる。
【0019】
撥水撥油性表面処理剤における前記重合体の含有量は、1~95質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、20~40質量%であってもよい。
【0020】
撥水撥油性表面処理剤においては、液状媒体を含有することが好ましく、水又は有機溶媒を例示することができる。有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、アセトニトリル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、グライム(エチレングリコールジメチルエーテル)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、THF(テトラヒドロフラン)、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールが挙げられる。
【0021】
撥水撥油性表面処理剤における液状媒体の含有量は、5~99質量%であることが好ましく、40~95質量%であることがより好ましく、60~80質量%であってもよい。
【0022】
撥水撥油性表面処理剤においては、前記重合体が液状媒体に溶解していてもよく、分散状態であってもよい。撥水撥油性表面処理剤が、対象物が撥水撥油性表面処理剤で処理された後に、対象物の表面が前記重合体で被覆されることにより、撥水撥油性が発現するためである。
【0023】
また、撥水撥油性表面処理剤は、更に界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を含有することにより、撥水撥油性表面処理剤中の液状媒体に対する前記重合体の分散性を向上させることもでき、紙、繊維、フィルム等の対象物への浸透性を高めることができる。
【0024】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を使用でき、市販品を用いてもよい。
【0025】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩等が挙げられる。
【0026】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フィニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、モノステアリルジメチルモノエチルアンモニウムエチル硫酸塩、モノ(ステアリル)モノメチルジ(ポリエチレングリコール)アンモニウムクロリド、モノフルオロヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジ(牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド及びジメチルモノココナッツアミン酢酸塩等が挙げられ、4級アンモニウムクロライドを用いることがより好ましい。
【0028】
界面活性剤は、重合体100質量部に対して0.1~20質量部含有することが好ましく、0.3~15質量部含有することが好ましい。
【0029】
撥水撥油性表面処理剤においては、必要に応じて、熱反応開始剤、光反応開始剤等の反応開始剤、架橋助剤、消泡剤、防腐剤、pH調整剤、増粘剤、顔料、乾燥速度調整剤、造膜助剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0030】
撥水撥油性表面処理剤の製造方法として、特に限定することなく、均一に混合分散するための撹拌装置を用いることができ、アジテーター、ホモミキサー、パイプラインミキサー、ブレンダー等を例示することができる。重合体、液状媒体、界面活性剤等の添加は溶解・分散状態に合わせて、任意に一括、分割して行うことができる。
【0031】
撥水撥油性表面処理剤で表面処理される対象物としては限定されず、繊維、紙、フィルム、不織布、樹脂製品、皮革製品、木材、金属製品、石材、ガラス製品等が挙げられる。
繊維素材としては特に限定されず、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの合成繊維、これらの複合繊維、混紡繊維などが挙げられる。
フィルムとしては、高分子フィルムであってよく、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート等のフィルムが挙げられる
【0032】
撥水撥油性表面処理剤で処理する方法としては、従来より行われている方法を制限なく用いることができる。例えば、浸漬、噴霧、塗布、付着等により、撥水撥油性表面処理剤で対象物を処理し、その後乾燥させる。また、乾燥の後、必要に応じて熱処理してもよい。
【0033】
撥水撥油性表面処理剤で処理している間、処理後に撥水撥油性表面処理剤中の重合体を架橋することができる。架橋する場合には、撥水撥油性表面処理剤に熱反応開始剤、光反応開始剤等の反応開始剤を含有することが好ましく、更に架橋助剤を含有させることができる。
【0034】
熱反応開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物等から選ばれるラジカル開始剤が用いられる。有機過酸化物としては、ケトンパーオキシド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、ジアシルパーオキシド、パーオキシエステル等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、アゾ化合物としてはアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等、通常架橋用途に使用されているものが用いられる。ラジカル開始剤の添加量は種類により異なるが、通常、重合体を100質量部として0.1~10質量部の範囲内である。
【0035】
光反応開始剤としては、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン類、トリアジン類、ビスイミダゾール類、オキシムエステル類などラジカル開始剤が用いられる。これらのラジカル重合開始剤の添加量は種類により異なるが、通常、重合体を100質量部として0.01~5.0質量部の範囲内である。
【0036】
架橋助剤としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、無水マレイン酸等を任意に用いることができる。架橋助剤の含有量は、重合体を100質量部として0.1~30質量部の範囲内であることが好ましく、0.5~20質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0037】
架橋反応は、熱による場合は、100から200℃の温度設定で10秒~300秒程度加熱することによって行なうことができる。
紫外線による場合では、キセノンランプ、水銀ランプ、高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプを用いることができ、例えば、電解質を波長365nm、光量1~50mW/cmで0.1~30分間照射することによって行うことができる。
架橋反応は、先述の撥水撥油性表面処理剤で対象物を処理した後の乾燥時、乾燥後の熱処理時と同時であってもよく、撥水撥油性表面処理剤で対象物を処理した後の乾燥後、乾燥後の熱処理後であってもよい。
【0038】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例、比較例で用いた配合剤を以下に示す。
【0039】
<重合体の分析>
実施例2,比較例1で得られたポリエーテル重合体の共重合組成は、ポリエーテル重合体を重クロロホルムに溶解し、1H-NMRにより各ユニットの積分値を求め、その算出結果から組成比を求めた。装置としては、日本電子株式会社製のJNM GSX-270型を用いた。
実施例、比較例で得られたポリエーテル重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、以下の方法により求めた。
装置:株式会社島津製作所製GPCシステム
カラム:昭和電工株式会社製ShodexKF-806L、KF-803L、KF-801
検出器:示差屈折計
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1mL/min
カラム温度:40℃
分子量標準物質:昭和電工株式会社製標準ポリスチレン
【0040】
<重合用触媒の製造>
重合用触媒の製造攪拌機、温度計、及びコンデンサーを備えた三つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10 g、及びトリブチルフォスフェート35 gを投入し、窒素気流下に攪 拌しながら250℃で20分間加熱して留出物を留去させ、残留物として室温で固体状の 縮合物を得た。以降これを重合用触媒として使用した(以下、縮合物触媒と記載する。) 。
【0041】
(実施例1)
内容量1Lのガラス製反応器の内部を窒素置換し、上記縮合物触媒0.4g、プロピレンオキシド(POとも記載する)70g、及び溶媒としてノルマルヘキサン280gを仕込んだ。反応温度を25℃に維持したまま4時間後に重合反応を停止した。重合体を取り出した後、減圧下、40℃で8時間乾燥してポリエーテル共重合体60.41gを得た。得られたポリエーテル重合体の重合組成は、プロピレンオキシドのみ(100質量%)であり、重量平均分子量は80万であった 。
【0042】
(実施例2)
内容量1Lのガラス製反応器の内部を窒素置換し、上記縮合物触媒1.2g、プロピレンオキサイド(POとも記載する)71.1gとエチレンオキサイド(EOとも記載する)53.9g、及び溶媒としてノルマルヘキサン375gを仕込んだ。反応温度を25℃に維持したまま5時間後に重合反応を停止した。重合体を取り出した後、減圧下、40℃で8時間乾燥してポリエーテル共重合体102.0gを得た。得られたポリエーテル重合体の共重合組成は、プロピレンオキサイド57質量%:エチレンオキサイド43質量%であり、重量平均分子量は76万であった 。
【0043】
(比較例1)
内容量1Lのガラス製反応器の内部を窒素置換し、上記縮合物触媒1.2g、プロピレンオキシド(POとも記載する)45.1gとエチレンオキシド(EOとも記載する)79.9g、及び溶媒としてノルマルヘキサン375gを仕込んだ。反応温度を25℃に維持したまま5時間後に重合反応を停止した。重合体を取り出した後、減圧下、40℃で8時間乾燥してポリエーテル共重合体101.2gを得た。得られたポリエーテル重合体の共重合組成は、プロピレンオキサイド36質量%:エチレンオキサイド64質量%であり、重量平均分子量は61万であった。
【0044】
(比較例2)
市販品のPEO(富士フィルム和光純薬株式会社のポリエチレングリコール2000000)を用いた。
【0045】
<評価>
実施例1~2および比較例1~2のポリエーテル重合体の撥水撥油性を評価するために、下記の通り塗膜を作製した。
実施例1~2および比較例1~2のポリエーテル重合体をテトラヒドロフランに固形分濃度5質量%になるように溶解後、アプリケーターでポリエチレンテレフタレートフィルムにコーティングし、40℃5時間で加熱・乾燥させ、厚みが20μmである塗膜を得た。
【0046】
<成膜性>
塗膜の成膜性の評価は、加熱後の塗膜を目視することによって評価を行った。なお、以下の基準に基づいて評価を実施した。
〇:平滑性、気泡等がない状態
×:平滑性、気泡等がある状態
【0047】
<接触角>
実施例及び比較例のポリエーテル重合体で得られた塗膜について、撥水性・撥油性の評価として、接触角(25℃)を測定した。具体的には各塗膜の撥水・撥油性付与面を試験面とし、接触角測定装置(全自動接触角計「DMo-702」協和界面科学株式会社製)を用いて純水(約1~2μl)、ジヨードメタン(約1~2μl)の接触角を測定した。測定結果は、N数を3回とし、2分後のその接触角の平均値を結果に示す。その結果を表1に示す。なお、接触角が50°以上であれば、撥水性、撥油性を有していると言うことができ、接触角(単位°)の数値が大きいほど、撥水性と撥油性に優れる。
【0048】
【表1】
【0049】
表1より、実施例1~2のポリエーテル重合体で得られた塗膜は、比較例1~2と比較して、撥水性と撥油性を両立させていることが示めされており、撥水撥油性表面処理剤として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の重合体を含有する表面処理剤は優れた撥水撥油性を有しているため、紙、繊維、フィルム等の対象物に用いる表面処理剤として非常に有用である。