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  • 特開-曲がり矯正装置及び矯正プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028469
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】曲がり矯正装置及び矯正プログラム
(51)【国際特許分類】
   B21D 3/10 20060101AFI20250221BHJP
   G01N 3/20 20060101ALN20250221BHJP
【FI】
B21D3/10 J
B21D3/10 E
G01N3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133304
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】592215561
【氏名又は名称】日本ゲージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 恵三
(74)【代理人】
【識別番号】100182604
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 二美
(72)【発明者】
【氏名】淺田 誠
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AB01
2G061BA20
2G061CA01
2G061CB02
2G061CC13
2G061DA01
2G061EA02
2G061EB07
2G061EC02
(57)【要約】
【課題】 ワークの押し込みを何度も繰り返し行い、最終的に曲げを矯正するようにしていたため、手間と時間がかかること。
【解決手段】 この曲り矯正装置では、矯正するワーク毎に振れ量に対する押込量との関係を平方根の三次式で近似する。ワーク単位で、式の定数を決定し、これを制御部の記憶部に記憶させておく。特定のワークの矯正を行う場合、当該ワークの情報を入力することで当該ワークに用いる三次式が記憶部から読み出され、読み出された三次式の変数にセンサーにより計測された振れ量を代入する。これにより押込量計算部において必要な押込量が算出される。パンチはこの押込量だけワークWを押し込むように制御される。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの両端を受け座に載せて当該ワークの振れ量を計測する計測手段と、
当該計測手段により計測した振れ量に対する前記ワークの押込量をワークごとに設定した平方根の3次式を含む計算式により計算する押込量計算手段と、
ワーク毎に前記計算式の定数を記憶する記憶手段と、
押込量計算手段により計算した押込量だけ前記ワークを押込むパンチ手段と、
を有する曲り矯正装置。
【請求項2】
前記平方根の3次式は、
y=a3√x+b√x+cx+d
である請求項1に記載の曲り矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物のワークの曲がりを矯正するための曲がり矯正装置及び矯正プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から金属棒の曲がりを矯正する装置として、特許文献1に記載されているようなものが知られている。この曲り矯正装置は、長尺物のワークの両端を支持する支持ロールと、当該ワークのうち支持ロールの間の部分を押す加圧ロールとを備えている。ワークは、自動的に送られ且つ支持ロールで支持された状態でその支持部分の中間位置に対して加圧ロールで加圧し、ワークの曲がりを矯正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-278915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ワークを曲げ矯正する場合、曲り量を計測してその曲り量に応じて押し込むことで塑性変形をさせる作業となる。具体的には、曲り量の大きいものは多く押し込み、曲り量の小さなものは少なく押し込むことで、狙った範囲で塑性変形させ矯正を行う。また、作業者が手作業で矯正を行う場合、まずワークの振れを測定し、必要となる押し込みの程度は作業者の経験値に基づいて瞬時に判断している。
【0005】
また、ワークの曲げ矯正の手順は、ワークの応力-歪線図により説明できる。図8に、一般的な応力-歪線図を示す。ワークにその耐力以上の応力をかけて塑性変形させることで矯正を行うところ、まずAまで応力をかけて離すと線分aの歪が塑性変形として残る。同様に、Bまで応力をかけると線分bの歪が残る。同様に応力を増すとワークの引っ張り強さ付近から次第にクラックが発生し、破断に至る。このように、塑性変形領域では応力と歪の関係は線形ではなく、明らかに非線形の形態を示している。
【0006】
このような曲げ矯正においては、ワークの振れ量を計測し、その結果に基づいて押し込み量を決定し、これを繰り返すことでワークの曲げ矯正を行っていたが、ワークの振れ量に対してこれを矯正するための適切な押し込み量が経験則で行われていたり、単純な計算に基づいて押し込み量を決定していたりすることで、ワークの押し込みを何度も繰り返し行い、最終的に曲げを矯正するようにしていたため、手間と時間がかかるという問題点があった。本発明は、係る課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る曲り矯正装置は、ワークの両端を受け座に載せて当該ワークの振れ量を計測する計測手段と、当該計測手段により計測した振れ量に対する前記ワークの押込量をワークごとに設定した平方根の3次式を含む計算式により計算する押込量計算手段と、ワーク毎に前記計算式の定数を記憶する記憶手段と、押込量計算手段により計算した押込量だけ前記ワークを押込むパンチ手段とを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る曲り矯正装置を示す構成図である。
図2】曲り矯正装置のシステム構成図である。
図3図1に示したパンチを示す構成図である。
図4図3の一部拡大図である。
図5】この曲り矯正装置の動作を示すフローチャートである。
図6】曲り矯正装置の動作を示す説明図である。
図7】曲り矯正装置の動作を示す説明図である。
図8】一般的な応力-歪線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態1に係る曲り矯正装置を示す構成図である。図2は、曲り矯正装置のシステム構成図である。この曲り矯正装置100は、長尺物のワークを左右から回転可能に支持する一対の芯押し1と、当該ワークと共に芯押し1を回転させるサーボモータとを有する。ベッド3上の前記芯押し1と芯押し1との中央位置にはワークWの振れを検出するセンサー2が設けられている。当該センサー2は、例えばタッチプローブや反射型レーザ変位計である。前記芯押し1は先端が円錐形状であり中空パイプのワークWの内側に差し込むことで実質的に軸芯をもってワークWを支持する。一対の芯押し1は、前記サーボモータを配置した芯押し台に設けられ、手動又は自動でワークWの軸方向に送られる(図示省略)。
【0010】
ベッド3上には、前記ワークWの両端近傍を支持する一対の受け座4が配置される。更に、前記ワークWの軸方向であって前記受け座4と受け座4との間の上方位置には、ワークWを押すパンチ5が設けられる。また、曲り矯正装置100では、パンチ5やワークWを動かすためのサーボモータやそのドライバ等を各種のエンコーダやセンサー2の出力信号に基づいて制御する制御装置50を有する。
【0011】
制御装置50は、センサー2の移動や検出を制御するセンサー装置、芯押しのサーボモータ、パンチのサーボモータ等の駆動制御を行う。
【0012】
また、制御装置50には、ワークの振れ量に対するパンチの押し込み量を計算する押込量計算部60を有する。押込量計算部60には、平方根の三次式によりワークWの振れ量と押し込み量との関係を近似的に形成しこれを記憶してある。
具体的には、三次式は下記のように定義される。
y=a3√x+b√x+cx+d
従来、ワークの曲がり矯正は振れ量に対する押込量を経験則に基づいて決定し、或いは一次式を用いた計算により決定していた。これに対し、本発明では、振れ量に対する押込量が非線形の特性を示す点に着目し、その非線形形状を当該平方根の三次式により近似し、現実のワークWの特性を再現した。
【0013】
ここで、ワーク毎に振れ量に対する押込量が異なることから、矯正するワーク毎に振れ量に対する押込量との関係を平方根の三次式で近似する。ワーク単位で、上記式の定数a~dの数値を決定し、これを制御部50の記憶部61に記憶させておく。特定のワークWの矯正を行う場合、当該ワークWの情報を入力することで当該ワークWに用いる三次式が記憶部61から読み出され、読み出された三次式の変数xにセンサー2により計測された振れ量が代入される。変数xは、センサー2の出力信号から自動的に入力されるものとする。これにより押込量計算部60において必要な押込量yが算出される。パンチはこの押込量yだけワークWを押し込むように制御される。
【0014】
図3は、図1に示したパンチを示す構成図である。このパンチ5は、下端に設けられ且つ前記ワークWを押すための押圧部6と、当該押圧部6が取り付けられ上下方向に移動させる移動部7とからなる。当該移動部7はリニアガイド8のブロックに固定したコラム9を有し、当該コラム9に前記押圧部6が固定される。また、当該コラム9はボールねじ及びサーボモータ(図示省略)により移動制御される。当該サーボモータは、前記制御装置50により制御される。
【0015】
押圧部6は、図4に示すように、ブロック状であり押圧面6aが湾曲面となる。押圧部6は、前記ワークWの径に合わせて押圧面6aを変更できるように当該押圧面6aの部分が別体となる。また、前記押圧面6aには、ゴム又は樹脂の保護層6bが設けられる。
【0016】
図5は、この曲り矯正装置の動作を示すフローチャートである。図6は、曲り矯正装置の動作を示す説明図である。まず、矯正対象となるワークWを記憶部61の中から選択する(ステップS1)。次に、ワークWを前記芯押し1により両側から固定すると共に当該ワークWを回転させつつ、前記センサー2によりレーザを照射してワークWの表面を計測し、ワークWの曲がりを取得する(ステップS2)。
【0017】
続いて、押込量計算部60は、選択されたワークWに係る計算式からパンチ5による押込量を計算する(ステップS3)。センサー2からのワークWの振れ量の計測信号は前記押込量計算部60に送られ、前記選択された計算式の変数xに代入される。これにより、必要となる押込量yが計算される。なお、ワークWは、図7に示すように、中央位置で一方向に曲りが生じている場合、前記芯押し1の回転により曲りの山側が上になるように位置決めされる。
【0018】
押込量yが計算されたらパンチ5により当該押込量だけワークWを押し込む(ステップS4)。押込みの際は、前記受け座4を上昇させてワークWを両端で支持する。受け座4によりワークWを支持した状態で前記パンチ5の先端の押圧部6を降下させ、当該押圧部6をワークWの受け座4と受け座4との間の計測位置において当該ワークWを前記押込量だけ押す。
【0019】
実際の特性に近似された当該三次式を用いて前記パンチ5の押込量を決定することで一度で所望の矯正が可能となり、その結果、押込みの繰り返し数が減ることになる。押込回数が減るとワークWにストレスがかかる回数が減ることからワークWの機械的特性の低下を防止できる。
【0020】
続いて、前記パンチ5により所定量だけ押した後、ワークW全体の曲りが矯正されたか否かを確認する(ステップS5)。当該確認は、上記同様の手順により、前記ワークWを芯押し1により回転させつつセンサー2で曲がりの計測することで行う。再計測の結果、曲りが確認できたら(ステップS6)、当該計測した曲がり分を修正するために再び前記受け部41でワークWを支持してパンチ5で押し、曲りの計測を行う(ステップS3、S4)。これを繰り返すことでワークWの全体の曲がりの矯正を行う。最終的にワークW全体の曲りが矯正されたことを確認することで(ステップS6)、曲げ矯正を完了する。
【0021】
以上、この発明の曲り矯正装置100によれば、曲げ矯正を行うにあたり三次式で振れ量と押込量との非線形の相関関係を近似的に表現し、この計算式に計測した振れ量を代入して押込量を計算することから、押込み回数が減ることで短時間で矯正が完了すると共にワークの疲労が軽減される。
【0022】
また、平方根の三次式は、次の計算式によっても振れ量に対する押込量の非線形形状に近似させることができる。
y=a3√x+b2√x+c√x+d
y=a3√x+b√x+d
y=a3√x+c√x+d
y=a3√x+d
【符号の説明】
【0023】
100 曲り矯正装置
1 芯押し
2 センサー
4 受け座
5 パンチ
6 押圧部
50 制御装置
60 押込量計算部
61 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8