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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028472
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】ガラス基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 19/00 20060101AFI20250221BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
C03C19/00 A
C03C3/091
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133307
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 克
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC01
4G062AA01
4G062BB01
4G062BB05
4G062BB06
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC02
4G062DC03
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4G062EB03
4G062EB04
4G062EC03
4G062EC04
4G062ED02
4G062ED03
4G062ED04
4G062EE01
4G062EF01
4G062EG01
4G062FA10
4G062GA10
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062LA01
4G062LB01
4G062LC01
(57)【要約】
【課題】表面の触り心地やペンによる書き心地がよく、しかも表示される映像の視認性に優れる、ガラス基板を提供する。
【解決手段】アルカリ含有シリケートガラスにより構成される、ガラス基板1であって、ガラス基板1の第1の主面1aは、凹凸部2と、凹凸部2を設けるための加工がなされていない非加工部3とを有し、凹凸部2は、74μm×55μmの領域において、高域フィルタλcのカットオフ値を14μmとし、低域フィルタλsのカットオフ値を0.35μmとしたときに、算術平均高さSaが、1nm以上、100nm以下であり、任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合をアルカリ含有量としたときに、凹凸部2のアルカリ含有量が、非加工部3のアルカリ含有量より少ない、ガラス基板1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ含有シリケートガラスにより構成される、ガラス基板であって、
前記ガラス基板の表面は、凹凸部と、前記凹凸部を設けるための加工がなされていない非加工部とを有し、
前記凹凸部は、74μm×55μmの領域において、高域フィルタλcのカットオフ値を14μmとし、低域フィルタλsのカットオフ値を0.35μmとしたときに、算術平均高さSaが、1nm以上、100nm以下であり、
任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合をアルカリ含有量としたときに、前記凹凸部のアルカリ含有量が、前記非加工部のアルカリ含有量より少ない、ガラス基板。
【請求項2】
前記凹凸部の前記非加工部に対するアルカリ含有量比が、0.5以上、1.0未満である、請求項1に記載のガラス基板。
【請求項3】
前記ガラス基板の一方側主面に、前記凹凸部と、前記非加工部との双方が設けられている、請求項1又は2に記載のガラス基板。
【請求項4】
前記ガラス基板が、対向している第1の主面及び第2の主面を有し、
前記ガラス基板の前記第1の主面に、前記凹凸部が設けられており、
前記ガラス基板の前記第2の主面に、前記非加工部が設けられている、請求項3に記載のガラス基板。
【請求項5】
前記アルカリ含有シリケートガラスが、ガラス組成として、質量%で、SiO 30%~70%、Al 10%~20%、B 0%~10%、NaO 1%~20%、KO 1%~20%、及びMgO 0%~20%を含有する、請求項1又は2に記載のガラス基板。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のガラス基板の製造方法であって、
元ガラス基板を準備する工程と、
砥粒を含有し、かつpHが、5.0以上、9.0以下である、スラリーを用いて、前記元ガラス基板の少なくとも一方側の主面にウェットブラスト処理を施す工程と、
を備える、ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記スラリーのpHが、7.0以上、8.0以下である、請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記砥粒が、アルミナ粒子である、請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記スラリー中の前記砥粒の濃度が、1質量%以上、30質量%以下である、請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記スラリーの噴射圧力が、0.1MPa以上、3.0MPa以下である、請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸部を有する、ガラス基板及び該ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のディスプレイや、筐体、あるいは扉体等に用いられるガラス基板では、表面に凹凸を付与することにより、表面の触り心地や、ペンによる書き心地を向上させる試みがなされている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、ペン入力装置におけるディスプレイ装置の前面側に配置されるペン入力装置用ガラス基板が開示されている。特許文献1には、上記ペン入力装置用ガラス基板が、少なくとも一方の主面に凹凸を有し、凹凸を有する主面における、粗さ曲線の最大谷深さRvが10nm以上かつ400nm以下であり、粗さ曲線の平均長さRSmが500nm以上かつ2000nm以下であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-20942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、ガラス基板の表面に凹凸を付与すると、表面の触り心地や、ペンによる書き心地が向上する一方、凹凸による散乱により、光の直線透過率が低下し易いという問題がある。そのため、このようなガラス基板に映像を表示させたときには、映像の視認性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、表面の触り心地やペンによる書き心地がよく、しかも表示される映像の視認性に優れる、ガラス基板及び該ガラス基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するガラス基板及び該ガラス基板の製造方法の各態様について説明する。
【0008】
本発明の態様1に係るガラス基板は、アルカリ含有シリケートガラスにより構成される、ガラス基板であって、前記ガラス基板の表面は、凹凸部と、前記凹凸部を設けるための加工がなされていない非加工部とを有し、前記凹凸部は、74μm×55μmの領域において、高域フィルタλcのカットオフ値を14μmとし、低域フィルタλsのカットオフ値を0.35μmとしたときに、算術平均高さSaが、1nm以上、100nm以下であり、任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合をアルカリ含有量としたときに、前記凹凸部のアルカリ含有量が、前記非加工部のアルカリ含有量より少ないことを特徴としている。
【0009】
態様2のガラス基板では、態様1において、前記凹凸部の前記非加工部に対するアルカリ含有量比が、0.5以上、1.0未満であることが好ましい。
【0010】
態様3のガラス基板では、態様1又は態様2において、前記ガラス基板の一方側主面に、前記凹凸部と、前記非加工部との双方が設けられていてもよい。
【0011】
態様4のガラス基板では、態様3において、前記ガラス基板が、対向している第1の主面及び第2の主面を有し、前記ガラス基板の前記第1の主面に、前記凹凸部が設けられており、前記ガラス基板の前記第2の主面に、前記非加工部が設けられていてもよい。
【0012】
態様5のガラス基板では、態様1~態様4のいずれか1つの態様において、前記アルカリ含有シリケートガラスが、ガラス組成として、質量%で、SiO 30%~70%、Al 10%~20%、B 0%~10%、NaO 1%~20%、KO 1%~20%、及びMgO 0%~20%を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の態様6に係るガラス基板の製造方法は、態様1~態様5のいずれか1つの態様のガラス基板の製造方法であって、元ガラス基板を準備する工程と、砥粒を含有し、かつpHが、5.0以上、9.0以下である、スラリーを用いて、前記元ガラス基板の少なくとも一方側の主面にウェットブラスト処理を施す工程とを備えることを特徴としている。
【0014】
態様7のガラス基板の製造方法では、態様6において、前記スラリーのpHが、7.0以上、8.0以下であることが好ましい。
【0015】
態様8のガラス基板の製造方法では、態様6又は態様7において、前記砥粒が、アルミナ粒子であることが好ましい。
【0016】
態様9のガラス基板の製造方法では、態様6~態様8のいずれか1つの態様において、前記スラリー中の前記砥粒の濃度が、1質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。
【0017】
態様10のガラス基板の製造方法では、態様6~態様9のいずれか1つの態様において、前記スラリーの噴射圧力が、0.1MPa以上、3.0MPa以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、表面の触り心地やペンによる書き心地がよく、しかも表示される映像の視認性に優れる、ガラス基板及び該ガラス基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス基板を示す模式的断面図である。
図2】変形例のガラス基板を示す模式的断面図である。
図3】凹凸の変形例における測定断面曲線を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0021】
[ガラス基板]
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス基板を示す模式的断面図である。
【0022】
図1に示すように、ガラス基板1は、矩形平板状の形状を有する。もっとも、ガラス基板1の形状は、特に限定されず、円形又は多角形の輪郭からなる平板状や、平板状のものを全体的に湾曲させた形状、球面、非球面のレンズ形状等であってもよい。
【0023】
ガラス基板1は、アルカリ含有シリケートガラスにより構成されている。アルカリ含有シリケートガラスとしては、アルカリ成分として、Li、Na、及びKを合計で1%以上含有するガラスであれば任意のガラスを採用できるが、アルカリ成分としてNa及びKを合計で1%以上含有するガラスであることが好ましい。アルカリ含有シリケートガラスとしては、例えば、アルカリアルミノシリケートガラス又はアルカリチタニアシリケートガラス等が挙げられる。なお、アルカリ含有シリケートガラスにおけるアルカリ成分の含有量は、2%以上、5%以上、8%以上であってもよく、50%以下、45%以下、40%以下、30%以下であってもよい。
【0024】
より具体的には、アルカリ含有シリケートガラスは、例えば、ガラス組成として、質量%で、SiO 30%~70%、Al 10%~20%、B 0%~10%、NaO 1%~20%、KO 1%~20%、及びMgO 0%~20%を含有するガラスを用いることができる。
【0025】
ガラス基板1は、対向している第1の主面1a及び第2の主面1bを有する。第1の主面1a及び第2の主面1bは、ガラス基板1の表面である。本実施形態では、ガラス基板1の第1の主面1aにおける一部に、凹凸部2が設けられている。また、ガラス基板1の第1の主面1aには、凹凸部2を設けるための加工がなされていない非加工部3も設けられている。なお、本実施形態では、ガラス基板1の第2の主面1b全体も、凹凸部2を設けるための加工がなされていない非加工部3である。もっとも、本発明においては、ガラス基板1の第2の主面1bにも凹凸部2が設けられていてもよい。
【0026】
本発明においては、ガラス基板1の第1の主面1aにおける少なくとも一部に凹凸部2が設けられていればよい。凹凸部2は、ガラス基板1の第1の主面1aにおける1%以上の領域に設けられていることが好ましく、30%以上の領域に設けられていることがより好ましく、50%以上の領域に設けられていることがさらに好ましい。
【0027】
図2は、変形例のガラス基板を示す模式的断面図である。図2に示すガラス基板10のように、凹凸部2は、ガラス基板10の第1の主面1aにおける全面に設けられていてもよい。この場合、ガラス基板10の第2主面1bの少なくとも一部に非加工部3が設けられていればよい。以下、変形例のガラス基板10も総称して、ガラス基板1と称することとする。
【0028】
ガラス基板1の厚みは、特に限定されず、例えば、30μm以上、5mm以下とすることができる。
【0029】
本実施形態において、ガラス基板1の凹凸部2は、74μm×55μmの領域において、高域フィルタλcのカットオフ値を14μmとし、低域フィルタλsのカットオフ値を0.35μmとしたときに、算術平均高さSaが、1nm以上、100nm以下である。本実施形態のガラス基板1は、凹凸部2の算術平均高さSaが上記範囲内にあるので、表面(凹凸部2)の触り心地やペンによる書き心地に優れている。
【0030】
ガラス基板1の凹凸部2における算術平均高さSaは、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは4nm以上、さらにより好ましくは5nm以上、さらにより好ましくは10nm以上、さらにより好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、好ましくは98nm以下、より好ましくは97nm以下、さらに好ましくは96nm以下、さらにより好ましくは95nm以下、さらにより好ましくは90nm以下、さらにより好ましくは85nm以下、特に好ましくは80nm以下である。
【0031】
ガラス基板1の凹凸部2における算術平均高さSaが上記下限値以上である場合、ガラス基板1の表面の触り心地やペンによる書き心地をより一層向上させることができる。また、ガラス基板1の凹凸部2における算術平均高さSaが上記上限値以下である場合、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。また、この場合、ガラス基板1の凹凸部2がざらざらしすぎず、ガラス基板1の表面の触り心地やペンによる書き心地をより一層向上させることができる。
【0032】
なお、「算術平均高さSa」は、ISO 25178によって規定されるパラメータであって、凹凸の断面形状を示す測定断面曲線を面に拡張したパラメータである。具体的には、算術平均高さSaは、所定の三次元領域における表面の平均面に対する各点の高さZnの絶対値の平均(Sa=(Σ|Zn|)/n)から求めることができる。本発明においては、74μm×55μmの領域で凹凸部2の測定を行い、高域フィルタλcのカットオフ値を14μmとし、低域フィルタλsのカットオフ値を0.35μmとして、算術平均高さSaを求めている。
【0033】
また、本実施形態のガラス基板1では、任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合をアルカリ含有量としたときに、凹凸部2のアルカリ含有量が、非加工部3のアルカリ含有量より少ない。
【0034】
なお、任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合は、例えば、走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)により、任意の100μm四方の領域において元素分析を行うことにより求めることができる。なお、任意の100μm四方の領域における元素分析は、複数の測定箇所において行い、その平均値から各成分の質量割合を求めることが望ましい。後述の実施例では、凹凸部(加工部)及び非加工部につき、それぞれ任意の5カ所において、100μm四方の領域における元素分析を行い、その平均値を各成分の質量割合としている。
【0035】
本実施形態のガラス基板1は、上記の構成を備えるので、ガラス基板1の表面の触り心地や、ペンによる書き心地に優れ、しかも表示される映像の視認性を高めることができる。
【0036】
従来、ガラス基板の表面に凹凸を付与すると、指による触り心地や、ペンによる書き心地が向上する一方、凹凸による散乱により、光の直線透過率が低下し易いという問題があった。そのため、このようなガラス基板に映像を表示させたときには、映像の視認性が低下することがあった。
【0037】
これに対して、本実施形態のガラス基板1では、凹凸部2のアルカリ含有量が、非加工部3のアルカリ含有量よりも少ないので、凹凸部2の屈折率が非加工部3の屈折率よりも低くなり、凹凸部2の反射率が低下することで、凹凸部2における光の直線透過率を高めることができる。これにより、ガラス基板1では、表示される映像の視認性を高めることができる。
【0038】
従って、ガラス基板1では、凹凸部2の算術平均高さSaを、1nm以上、100nm以下とすることにより、表面の触り心地やペンによる書き心地を向上させつつ、一方で凹凸部2のアルカリ含有量を、非加工部3のアルカリ含有量よりも少なくすることにより、表示される映像の視認性を向上させることができる。
【0039】
本実施形態において、凹凸部2の非加工部3に対するアルカリ含有量比(凹凸部2/非加工部3)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.55以上、さらに好ましくは0.6以上であり、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.99以下、さらに好ましくは0.98以下、さらにより好ましくは0.97以下、さらにより好ましくは0.96以下、さらにより好ましくは0.95以下、さらにより好ましくは0.94以下である。
【0040】
凹凸部2の非加工部3に対するアルカリ含有量比が上記範囲内にある場合、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0041】
なお、凹凸部2の非加工部3に対するアルカリ含有量比は、凹凸部2の任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合と、非加工部3の任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合との比から求めることができる。
【0042】
凹凸部2の任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0043】
凹凸部2の任意の100μm四方の領域におけるNa及びKの合計の質量割合が上記範囲内にある場合、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0044】
本実施形態において、ガラス基板1の凹凸部2における粗さ曲線要素の平均長さRSmは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは50nm以上、さらにより好ましくは100nm以上、さらにより好ましくは200nm以上、さらにより好ましくは500nm以上であり、好ましくは10000nm以下、より好ましくは8000nm以下、さらに好ましくは5000nm以下、さらにより好ましくは3000nm以下、さらにより好ましくは2000nm以下である。ガラス基板1の凹凸部2における平均長さRSmが上記下限値以上である場合、ガラス基板1の表面の触り心地や、ペンによる書き心地をより一層効果的に向上させることができる。また、ガラス基板1の凹凸部2における平均長さRSmが上記上限値以下である場合、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0045】
本実施形態において、ガラス基板1の凹凸部2における最大谷深さRvは、好ましくは0.3nm以上、より好ましくは1nm以上、さらに好ましくは10nm以上、特に好ましくは50nm以上であり、好ましくは10000nm以下、より好ましくは8000nm以下、さらに好ましくは5000nm以下、さらにより好ましくは3000nm以下、特に好ましくは1000nm以下である。ガラス基板1の凹凸部2における最大谷深さRvが上記下限値以上である場合、ガラス基板1の表面の触り心地や、ペンによる書き心地をより一層効果的に向上させることができる。また、ガラス基板1の凹凸部2における最大谷深さRvが上記上限値以下である場合、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0046】
ガラス基板1の凹凸部2における粗さ曲線要素の平均長さRSm及び最大谷深さRvが上記範囲にある場合、ガラス基板1をディスプレイに用いた場合の解像度をより高めることができ、しかもペンによる書き心地をより一層効果的に向上させることができる。また、この場合、形成された凹凸部2によって散乱光が干渉し、スパークリングと呼ばれるギラツキが発生することをより確実に抑制することもできる。
【0047】
「粗さ曲線要素の平均長さRSm」及び「最大谷深さRv」は、ガラス基板1の凹凸部2の断面形状を示す輪郭曲線から長波長成分を遮断するための高域フィルタλcのカットオフ値を14μmに設定し、かつ凹凸部2の断面形状を示す輪郭曲線から短波長成分を遮断するための低域フィルタλsのカットオフ値を0.35μmに設定した場合に得られる値である。
【0048】
「粗さ曲線要素の平均長さRSm」は、JISB0601:2001によって規定されるパラメータであって、凹凸部2の断面形状を示す輪郭曲線において、互いに隣り合う凹部と凸部との平均ピッチを表すパラメータである。なお、以下、「粗さ曲線要素の平均長さRSm」を、「平均長さRSm」と称する場合があるものとする。
【0049】
また、「最大谷深さRv」は、JISB0601:2001によって規定されるパラメータであって、凹凸部2の断面形状を示す輪郭曲線における平均線に対して、最も深い谷の深さを表す。なお、上記「平均線」は、高域フィルタλcによって遮断される長波長成分を表す曲線を最小二乗法により直線におきかえた線である。
【0050】
なお、ガラス基板1の凹凸部2は、上述した平均長さRSmを有する凹凸を第1の凹凸としたときに、第1の凹凸より粗さ曲線要素の平均長さRSmの大きい、第2の凹凸をさらに有していてもよい。より具体的には、図3に示すように、凹凸部2の測定断面曲線において、微小凹凸である第1の凹凸と、大きな凹凸である第2の凹凸とを有していてもよい。
【0051】
第2の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSm2は、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、好ましくは10000μm以下、より好ましくは8000μm以下、さらに好ましくは5000μm以下、さらにより好ましくは1000μm以下、特に好ましくは500μm以下である。
【0052】
「粗さ曲線要素の平均長さRSm2」は、凹凸部2の断面形状を示す輪郭曲線から長波長成分を遮断するための高域フィルタλcのカットオフ値を第2の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSmの4倍の値に設定し、かつ凹凸部2の断面形状を示す輪郭曲線から短波長成分を遮断するための低域フィルタλsのカットオフ値を0.35μmに設定した場合に得られる値である。なお、第2の凹凸の高域フィルタλcのカットオフ値は、フィルタ無しで仮測定したときに得られる仮の粗さ曲線要素の平均長さRSmの値を4倍にした値を採用することができる。「粗さ曲線要素の平均長さRSm2」は、第1の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSmと同様にJISB0601:2001に準拠して測定することができる。「粗さ曲線要素の平均長さRSm2」は、所定の基準長さにおける凹凸の各周期長さXsの平均である。
【0053】
ガラス基板1のヘイズは、特に限定されないが、380nm~780nmの波長域において、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上、さらにより好ましくは2%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。ガラス基板1のヘイズが上記範囲内にある場合、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0054】
ガラス基板1の凹凸部2における波長550nmの光の直線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上であり、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは97%以下である。ガラス基板1の凹凸部2における直線透過率が上記範囲内にある場合、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0055】
また、ガラス基板1の非加工部3における波長550nmの光の直線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上であり、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは97%以下である。ガラス基板1の非加工部3における直線透過率が上記範囲内にある場合、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0056】
なお、ガラス基板1の上記直線透過率は、例えば、透過率測定装置を用いて測定することができる。本実施形態において、ガラス基板1の上記直線透過率は、凹凸部2を含む第1の主面1a側から光を入射させ、非加工部3を含む第2の主面1b側から光を出射させて測定するものとする。
【0057】
ガラス基板1の非加工部3には、表面処理が全く施されていなくてもよく、凹凸部2とは異なる表面処理が施されていてもよい。凹凸部2とは異なる表面処理としては、例えば、凹凸部2とは異なる条件で行うブラスト処理や、SiO成分を含む成分によるコーティング、フッ素を含む成分によるコーティング、あるいはHFエッチング処理による表面処理等が挙げられる。なお、非加工部3には、凹凸部2とは異なる複数の表面処理が施されていてもよい。
【0058】
ガラス基板1の第1の主面1a及び第2の主面1bには、それぞれ、反射防止膜や、防汚膜、加飾フィルム、あるいは加飾コーティング等が設けられていてもよい。
【0059】
反射防止膜としては、例えば、相対的に屈折率が低い低屈折率膜と相対的に屈折率が高い高屈折率膜とが交互に積層された誘電体多層膜が用いられる。反射防止膜は、スパッタリング法、又はCVDなどにより形成することができる。
【0060】
ガラス基板1の凹凸部2に反射防止膜を有する場合、反射防止膜の表面の凹凸が、凹凸部2の凹凸に対応するように形成される。
【0061】
防汚膜は、指紋の付着を防止し、撥水性、撥油性を付与するための膜である。防汚膜は、主鎖中にケイ素を含む含フッ素重合体を含むことが好ましい。含フッ素重合体としては、例えば、主鎖中に、-Si-O-Si-ユニットを有し、かつ、フッ素を含む撥水性の官能基を側鎖に有する重合体を用いることができる。含フッ素重合体は、例えばシラノールの脱水縮合することにより合成することができる。
【0062】
加飾フィルムや加飾コーティングとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ウレタン、フッ素系樹脂などの樹脂や、金属箔、また、それらの積層体などが挙げられる。
【0063】
本実施形態のガラス基板1は、電子機器のディスプレイや、筐体、あるいは扉体等に好適に用いることができる。なかでも、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置の前面に設けられるカバー部材により好適に用いることができる。この場合、ガラス基板1は、入力ペンや指先などの入力手段を用いて文字及び図形等の入力操作(ポインティング操作)を行うことができるペン入力装置に用いてもよい。
【0064】
[ガラス基板の製造方法]
次に、ガラス基板1の製造方法の一例について説明する。
【0065】
ガラス基板1の凹凸部2は、例えば、元ガラス基板の表面にウェットブラスト処理等の表面処理を施すことにより形成することができる。
【0066】
ウェットブラスト処理は、アルミナなどの固体粒子にて構成される砥粒と、水などの液体とを均一に撹拌してスラリーとしたものを、圧縮エアを用いて噴射ノズルから元ガラス基板からなるワークに対して高速で噴射することにより、ワークに微細な凹凸を形成する処理である。
【0067】
ウェットブラスト処理においては、高速に噴射されたスラリーがワークに衝突した際に、スラリー内の砥粒がワークの表面を削ったり、叩いたり、こすったりすることにより、ワークの表面に微細な凹凸が形成されることとなる。
【0068】
この場合、ワークに噴射された砥粒や、砥粒により削られたワークの破片は、ワークに噴射された液体によって洗い流されるため、ワークに残留する粒子が少なくなる。
【0069】
なお、ウェットブラスト処理においては、スラリーをワークに噴射した場合、液体が砥粒をワークまで運ぶため、乾式サンドブラスト処理に比べて微細な砥粒を使用しやすくなるとともに、砥粒がワークに衝突する際の衝撃が小さくなり、精密な加工を行うことが可能である。
【0070】
ウェットブラスト処理において、ノズルの走査ピッチは、例えば、50μm以上、10000μm以下とすることができる。ノズルの走査回数(同一箇所を走査する回数)は、例えば、1回以上、5回以下とすることができる。また、ノズルの移動速度(処理速度)は、例えば、1mm/s以上、300mm/s以下とすることができる。
【0071】
なお、ウェットブラスト処理における砥粒の粒度を大きくしたり、処理圧力を大きくしたり、ノズルの移動速度を遅くしたり、ノズルの走査回数を増やしたりすることにより、ガラス基板1の凹凸部2における算術平均高さSa及び最大谷深さRvを大きくすることができる。
【0072】
また、ウェットブラスト処理における砥粒の粒度を小さくしたり、処理圧力を小さくしたり、ノズルの走査速度を速くしたりすることにより、ガラス基板1の凹凸部2における粗さ曲線要素の平均長さRSmを小さくすることができる。
【0073】
また、本実施形態の製造方法では、pHが、5.0以上、9.0以下のスラリーを用いて、元ガラス基板の少なくとも一方側の主面にウェットブラスト処理を施す。これにより、凹凸部2(ウェットブラスト処理された加工部)においてアルカリが溶出するため、凹凸部2のアルカリ含有量が少なくなる。そのため、凹凸部2のアルカリ含有量を、非加工部3のアルカリ成分の質量割合よりも少なくすることができ、得られるガラス基板1に表示される映像の視認性を向上させることができる。
【0074】
スラリーのpHは、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上であり、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下である。
【0075】
スラリーのpHが上記下限値以上である場合、ガラス基板1の凹凸部2におけるアルカリ含有量をより一層少なくすることができ、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。また、スラリーのpHが上記上限値以下である場合、ガラス基板1の機械的強度をより一層高めることができ、しかもガラス基板1の透明性をより一層向上させることができる。
【0076】
本実施形態のスラリーに用いる水の電気伝導度は、特に限定されないが、例えば、0.01mS/m以上、20mS/m以下である。上記水の電気伝導度が20mS/mより高いと不純物が多いため、アルカリ溶出に時間がかかる場合がある。他方、上記水の電気伝導度が0.01mS/mより低いと、一般的な方法による水の入手が困難になる場合がある。上記水の電気伝導度は、好ましくは0.02mS/m以上、より好ましくは0.03mS/m以上、さらに好ましくは0.04mS/m以上であり、好ましくは10mS/m以下、より好ましくは8mS/m以下、さらに好ましくは7mS/m以下である。
【0077】
なお、スラリーのpHの調整には、無機酸及び有機酸のいずれを用いてもよい。例えば、pH≦7に調整する場合、無機酸及び有機酸としては、硫酸、硝酸、リン酸、塩酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類の酸が挙げられる。また、pH≧7に調整する場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミン等のアルカリによりpHを調整することができる。
【0078】
ガラス基板1の凹凸部2におけるアルカリ含有量は、スラリーのpHの他、スラリー中の砥粒の濃度や、砥粒の種類、あるいはスラリーの噴射圧力(処理圧力)や、ノズルの移動速度(処理速度)等によっても調整することができる。
【0079】
スラリー中の砥粒の濃度は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは27質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。スラリー中の砥粒の濃度が上記範囲内にある場合、凹凸部2のアルカリ含有量をより一層少なくすることができ、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0080】
砥粒としては、特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ジルコニウム、イットリア安定化ジルコニア、ジルコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は炭化ケイ素等の粒子を用いることができる。なかでも、砥粒としては、アルミナ粒子を用いることが好ましい。この場合、スラリーのpHを調整し易く、凹凸部2のアルカリ含有量をより一層確実に少なくすることができる。
【0081】
砥粒の純度は、例えば、90%以上、100%以下とすることができる。また、砥粒の平均粒子径D50は、0.1μm以上、10μm以下とすることができる。
【0082】
スラリーの噴射圧力は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.15MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、好ましくは3.0MPa以下、より好ましくは2.5MPa以下、さらに好ましくは2.0MPa以下である。スラリーの噴射圧力が上記範囲内にある場合、凹凸部2のアルカリ含有量をより一層少なくすることができ、ガラス基板1に表示される映像の視認性をより一層向上させることができる。
【0083】
ノズルの移動速度(処理速度)は、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは5mm/s以上、さらに好ましくは10mm/s以上であり、好ましくは300mm/s以下、より好ましくは250mm/s以下、さらに好ましくは200mm/s以下である。ノズルの移動速度(処理速度)が上記下限値以上であると、凹凸部2のアルカリ含有量をより一層少なくすることができる。一方、ウェットブラスト処理の時間が上記上限値以下であると、ガラス基板1の機械的強度をより一層高めることができる。
【0084】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0085】
(実施例1~8)
まず、元ガラス基板として、アルカリアルミノシリケートガラス板を用意した。アルカリアルミノシリケートガラス板としては、ガラス組成として、質量%で、SiO 62.0%、Al 16.0%、B 2.0%、NaO 15.0%、MgO 2.0%、KO 3.0%を含有するガラス(厚み:0.5mm、波長550nmにおける光の直線透過率:95%、50mm角)を用いた。
【0086】
次に、準備した元ガラス基板の一方側主面に、ウェットブラスト処理を施すことにより、凹凸部を形成した。なお、ウェットブラスト処理は、砥粒と水とを均一に撹拌することにより調整したスラリーを使用し、ガラス板を載置した処理台に対して、エアを用いて、ノズルを20mm/sの速度で移動させながら走査させ(走査ピッチ:0.5mm)、ノズルからスラリーを噴射することにより行った。
【0087】
なお、スラリーに用いる水としては、pH=7、電気伝導度0.05mS/mの純水を用いた。
【0088】
また、実施例1~8におけるウェットブラスト処理において、処理圧力としてのスラリーの噴射圧力は、0.30MPaとした。砥粒としては、αアルミナ粒子(純度:96%、平均粒子径D50:2μm)を用いた。水としては、純水を用い、塩酸又は水酸化カリウムを加えて、スラリーのpHを下記の表1及び表2に示すpHに調整した。また、スラリー中における砥粒の濃度は下記の表1及び表2に示す通りである。
【0089】
実施例1~8では、ウェットブラスト処理後の元ガラス基板を純水で洗浄した後、元ガラス基板に120℃で30分間の熱処理を施し、ガラス基板を得た。
【0090】
(比較例1)
実施例1と同様にして準備した元ガラス基板の一方側主面に、実施例1と同様の砥粒を用いて、レギュレータにより低圧力にした乾式のサンドブラスト処理を行い、ガラス基板を得た。
【0091】
(比較例2)
比較例1で得られたガラス基板の他方側主面に、アルカリエッチングを施し、ガラス基板を得た。
【0092】
(比較例3)
スラリーのpH及びスラリー中における砥粒の濃度を下記の表2のように調製したこと以外は、実施例1と同様にしてガラス基板を得た。
【0093】
[評価方法]
(ガラス基板の表面粗さの評価)
実施例1~8及び比較例1~3で得られたガラス基板の凹凸部(加工部)における算術平均高さSaを測定した。
【0094】
算術平均高さSaの測定は、白色干渉顕微鏡を用いて行った。用いた白色干渉顕微鏡は、Zygo社製の白色干渉顕微鏡(製品名:NewView7300)である。
【0095】
測定条件は、対物レンズ50倍、ズームレンズ2倍を使用し、測定エリア74μm×55μmの領域に対して、カメラ画素数が640×480、積算回数10回となるように、算術平均高さSaの測定を実施した。凹凸部(表面)の算術平均高さSaを測定する際の高域フィルタλcのカットオフ値は、14μmに設定し、低域フィルタλsのカットオフ値は0.35μmに設定した。
【0096】
(ガラス基板の表面観察)
実施例1~8及び比較例1~3で得られたガラス基板の凹凸部(加工部)及び非加工部について、走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX、日立ハイテク社製、品番「S3400」)により、それぞれ任意の5カ所において、100μm四方の領域におけるNa及びKの質量割合を求め、その平均値を凹凸部及び非加工部におけるアルカリ含有量とした。そして、凹凸部のアルカリ含有量と、非加工部のアルカリ含有量との比(凹凸部/非加工部)から、アルカリ含有量比を求めた。結果を下記の表1及び表2に示す。
【0097】
(直線透過率)
実施例1~8及び比較例1~3のガラス基板の凹凸部(加工部)について、波長550nmにおける光の直線透過率を求めた。ガラス基板の直線透過率は、透過率測定装置(JASCO社製、品番「V670」)を用いて測定した。なお、ガラス基板の直線透過率は、凹凸部を含む一方側主面側から光を入射させ、非加工部を含む他方側主面側から光を出射させて測定した。結果を下記の表1及び表2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
実施例1~8のガラス基板では、凹凸部の算術平均高さSaが、1nm以上、100nm以下であり、官能評価により表面の触り心地やペンによる書き心地に優れることが確認できた。また、表1及び表2に示すように、実施例1~8のガラス基板では、アルカリ含有量比が1未満であり、直線透過率が高められていることから、表示される映像の視認性にも優れることが確認できた。一方、比較例1、2のガラス基板では、アルカリ含有量比が1以上であり、直線透過率が低いことから、表示される映像の視認性も十分ではなかった。また、比較例3のガラス基板は、凹凸部の算術平均高さSaが2000nmと大きく、結果として直線透過率が著しく低下していることから、表示される映像の視認性も十分ではなかった。
【符号の説明】
【0101】
1,10…ガラス基板
1a…第1の主面
1b…第2の主面
2…凹凸部
3…非加工部
図1
図2
図3