(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028490
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】埋め込み磁石型回転子および回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20250221BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133337
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 数馬
(72)【発明者】
【氏名】大坪 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 晃太朗
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
5H622PP16
(57)【要約】
【課題】製造工程を簡素化できる埋め込み磁石型回転子および回転電機を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、埋め込み磁石型回転子は、複数の磁石収納孔が形成された回転子鉄心と、永久磁石と、回転子鉄心の軸方向の両側に配されて複数の永久磁石を拘束する2つの磁石拘束部材100と、その軸方向の両外側に配されて回転子鉄心および磁石拘束部材100を軸方向に抑える2つの抑え板50とを具備する。永久磁石は、複数の磁石収納孔のそれぞれに収納され、横断面における長辺が軸方向に延びた第1および第2の側面ならびに横断面における短辺が軸方向に延びた第3および第4の側面を有する。磁石拘束部材100は、回転子鉄心の軸方向に永久磁石を拘束する軸方向拘束部120と、軸方向に垂直な方向に永久磁石を拘束する横方向拘束部120と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石収納孔が形成された回転子鉄心と、
複数の前記磁石収納孔のそれぞれに収納され、横断面が矩形で、その長辺が軸方向に延びた第1の側面および第2の側面ならびにその短辺が軸方向に延びた第3の側面および第4の側面を有する永久磁石と、
前記回転子鉄心の軸方向の両側に配されて、複数の前記永久磁石を拘束する2つの磁石拘束部材と、
2つの前記磁石拘束部材の軸方向の両外側に配されて、前記回転子鉄心および2つの前記磁石拘束部材を軸方向の両側から抑える2つの抑え板と、
を具備し、
前記磁石拘束部材は、前記回転子鉄心の軸方向に前記永久磁石を拘束する軸方向拘束部と、前記軸方向に垂直な方向に前記永久磁石を拘束する横方向拘束部と、を有することを特徴とする埋め込み磁石型回転子。
【請求項2】
前記磁石拘束部材は、1体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み磁石型回転子。
【請求項3】
前記横方向拘束部は、前記第1の側面および前記第2の側面、または前記第3の側面および前記第4の側面を抑えることを特徴とする請求項1に記載の埋め込み磁石型回転子。
【請求項4】
前記軸方向拘束部は、前記磁石拘束部材において両端が接続された状態で面外に突出していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の埋め込み磁石型回転子。
【請求項5】
前記軸方向拘束部は、前記磁石拘束部材において一方の端部のみが接続された状態で面外に突出していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の埋め込み磁石型回転子。
【請求項6】
請求項1に記載の埋め込み磁石型回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側にギャップを介して前記回転子鉄心を囲むように配された固定子と、
を備えることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み磁石型回転子および回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み磁石型回転子においては、表面磁石型と異なり、永久磁石が回転子鉄心の内部に配されている。磁石を収納するために、回転子鉄心には軸方向に亘り磁石収納孔が形成されている。このため、積層されるそれぞれの電磁鋼板の全てに、磁石収納孔を形成する打ち抜きが施される。埋め込み磁石型回転子の回転とともに永久磁石には遠心力が付加されるので、永久磁石は磁石収納孔内で径方向外側に押し付けられる。また、停止中は、重力が印加され、鉛直下方に押し付けられる。このため、磁石収納孔内での永久磁石の移動を拘束する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3757434号公報
【特許文献2】特開平9-182334号公報
【特許文献3】特開2011-109786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10は、埋め込み磁石型回転子の磁石収納孔の従来例を示す部分横断面図である。
【0005】
従来例によれば、回転子鉄心3においてそれぞれの永久磁石5を収納する磁石収納孔4には、永久磁石5の径方向の内側および径方向の外側への移動をそれぞれ拘束する磁石保持突起4a、4bが形成されている。また、磁石保持突起4a、4bの付け根部への応力集中をそれぞれ低減するための凹部4c、4dが形成されている。
【0006】
このように、磁石収納孔4の形状が複雑であり、それぞれの電磁鋼板を打ち抜く際の治具が複雑となる。また、1回で最終形状にまで打ち抜くのが難しい場合は、複数回に分けて実施するなど、手順が複雑となる。
【0007】
このような複雑な収納孔の形成を避ける方法として、永久磁石5を接着剤により固定する方法がある。しかしながら、接着剤により固定する方法の場合、接着剤塗布用の専用設備を要し、接着剤を取り扱うにあたり、管理温度や塗布量、硬化条件など管理負荷が高いという問題がある。
【0008】
さらに、別の方法としては、永久磁石5を軸方向の端部側から拘束する方法が知られている。
図11は、埋め込み磁石型回転子の永久磁石5の拘束方式の従来例を概念的に示す部分縦断面図である。この従来例では、永久磁石5の端部側に、テーパ部8tを有する拘束部材8を設ける。拘束部材8のテーパ部8tにより、永久磁石5がガイドされ、拘束部材8を軸方向の外側から内側に締め付けることにより、永久磁石5が位置決めされ、拘束される。
【0009】
ここで、永久磁石5は、一般的に焼結物であることから材料的に脆く、他の部材と接触する部分に欠けや傷が発生し易い。
図11で示す従来例においては、永久磁石5の角部5xは、拘束部材8のテーパ部8tとの接触により、側面に対して斜め方向の荷重が付加され、また、互いに接触する部分に応力が集中的に発生しやすいことから、部分的な欠けを生ずる懸念がある。また、永久磁石5の角部に斜面を形成しても、同様の懸念は残るという問題がある。
【0010】
なお、以上の問題は、電磁鋼板が積層された回転子鉄心を有する場合のみではなく、一体となっている塊状の回転子鉄心を有する場合についても同様である。
【0011】
本発明の目的は、製造工程を簡素化できかつ永久磁石の破損の可能性を低減可能な埋め込み磁石型回転子および回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に埋め込み磁石型回転子は、複数の磁石収納孔が形成された回転子鉄心と、複数の前記磁石収納孔のそれぞれに収納され、横断面が矩形で、その長辺が軸方向に延びた第1の側面および第2の側面ならびにその短辺が軸方向に延びた第3の側面および第4の側面を有する永久磁石と、前記回転子鉄心の軸方向の両側に配されて、複数の前記永久磁石を拘束する2つの磁石拘束部材と、2つの前記磁石拘束部材の軸方向の両外側に配されて、前記回転子鉄心および2つの前記磁石拘束部材を軸方向の両側から抑える2つの抑え板と、を具備し、前記磁石拘束部材は、前記回転子鉄心の軸方向に前記永久磁石を拘束する軸方向拘束部と、前記軸方向に垂直な方向に前記永久磁石を拘束する横方向拘束部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る回転電機を示す縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子の磁石収納孔を示す部分断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子の磁石拘束部材および抑え板を示す斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子の磁石拘束部材の凸部の一部を示すA-A断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子の磁石拘束部材の第1の変形例を示す部分断面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子の磁石拘束部材の第2の変形例を示す部分断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子の磁石拘束部材を示す部分断面図である。
【
図8】第2の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子の磁石拘束部材の変形例を示す部分断面図である。
【
図9】第3の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子の磁石拘束部材を示す斜視図である。
【
図10】埋め込み磁石型回転子の磁石収納孔の従来例を示す部分横断面図である。
【
図11】埋め込み磁石型回転子の永久磁石の拘束方式の従来例を概念的に示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子および回転電機について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る回転電機10を示す縦断面図である。
【0016】
回転電機10は、埋め込み磁石型回転子1、固定子12、および固定子12を収納する筐体14を備える。
【0017】
埋め込み磁石型回転子1は、軸受13により回転可能に支持され回転軸CLの方向に延びたロータシャフト2、ロータシャフト2の径方向外側に取り付けられた回転子鉄心15、回転子鉄心15内に収納された永久磁石5、永久磁石5を保持する磁石拘束部材100、ならびに、回転子鉄心15および磁石拘束部材100を軸方向の両外側から抑える抑え板50を有する。
【0018】
固定子12は、回転子鉄心15の径方向外側に回転子鉄心15を囲むように配された固定子鉄心12aと、固定子鉄心12aに巻回された固定子巻線12bを有する。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子1の磁石収納孔16を示す部分断面図である。
【0020】
永久磁石5は、たとえば直方体形状であり、第1の側面5a、第2の側面5b、第3の側面5c、第4の側面5dの4つの側面と、2つの矩形状の端面5eを有する。第1の側面5aと第2の側面5bは、
図2の横断面において互いに反対側にあり互いに並行する短辺である。第3の側面5cと第4の側面5dは、
図2の横断面において互いに反対側にあり互いに並行する長辺である。なお、
図2では、互いに対向する第1の側面5aと第2の側面5b、および第3の側面5cと第4の側面5dは、それぞれ互いに平行な場合を示しているが、これに限定されず、それぞれ、互いに角度を有する形状であってもよい。
【0021】
本実施形態における磁石収納孔16には、
図10に示す従来例の磁石収納孔4に形成された磁石保持突起4a、4bは形成されていない。すなわち、本実施形態における磁石収納孔16の径方向外側の壁面である収納孔外側壁面16aと、径方向内側壁面である収納孔内側壁面16bは、凹凸のない平面状である。また、永久磁石5が
図2に示すように矩形である場合には、収納孔外側壁面16aと収納孔内側壁面16bは互いに平行に形成されている。
【0022】
図3は、第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子1の磁石拘束部材100および抑え板50を示す斜視図である。
【0023】
図3は、磁石拘束部材100およびこれに重なるハッチングで表示する抑え板50を、軸方向の一方の外側から見たものである。
図3において、磁石拘束部材100の下側に図示しない回転子鉄心15が配される。
【0024】
磁石拘束部材100は、平板部101、横方向拘束部110、および軸方向拘束部120を有する。
図3に例示する場合は、磁石拘束部材100が、一体で形成されている。すなわち、平板部101、横方向拘束部110、および軸方向拘束部120は、一体として互いに接続されている。なお、磁石拘束部材100は、たとえば、1枚の円板を打ち抜いて、面外部分すなわち横方向拘束部110および軸方向拘束部120については、たとえばプレス加工で面外に変形させることで形成してもよい。あるいは、打ち抜きの結果ではこれらの面外部分の長さが十分ではない場合は、変形加工された部分にさらに、あるいはこれに代えて、別の部材をたとえば溶接で接続させてもよい。
【0025】
磁石拘束部材100の平板部101は、周縁に凹凸を有し、概ね円形の板である。すなわち、外周に、各磁極に対応する8つの凸部101aを有する形状である。また、8つの凹部101bには、1つおきに、すなわち4か所にロッド貫通孔106が形成されている。平板部101の中心には、ロータシャフト2が貫通する中心孔105が形成されている。
【0026】
平板部101の8つの凸部101aのそれぞれには、磁極を構成する2つの永久磁石5をそれぞれ保持するための、横方向拘束部110および軸方向拘束部120が形成されている。横方向拘束部110および軸方向拘束部120は、それぞれ、平板部101の面外となるように形成されている。
【0027】
一方、抑え板50は、周縁に凹凸を有し、概ね円形の板である。具体的には、8つの凸部50aおよび8つの凹部50bを有する。抑え板50のそれぞれの凸部50aが、磁石拘束部材100の平板部101の凹部101bの方向となるように配されている。抑え板50の8つの凸部50aには、1つおきに、すなわち4か所にロッド貫通孔56が形成されている。抑え板50の中心には、ロータシャフト2が貫通する中心孔55が形成されている。
【0028】
平板部101と抑え板50とが同心状態において、平板部101のロッド貫通孔106のそれぞれと抑え板50のロッド貫通孔56のそれぞれは、同心に配されている。また、抑え板50のロッド貫通孔56の口径は、平板部101のロッド貫通孔106の口径以下に形成されている。なお、同一径に形成されていることが好ましい。埋め込み磁石型回転子1の組み立て状態においては、それぞれのロッド貫通孔106、56をロッド(図示せず)が貫通する。ロッドには、たとえば、軸方向の端部付近にねじが形成され、ナットにより両側から抑え板50を介して回転子鉄心15を構成する積層された電磁鋼板および磁石拘束部材100を締め付け可能である。
【0029】
なお、
図3では、埋め込み磁石型回転子1が、破線で示す凸部101aに配された磁極が8つ(8極)の場合を例として示しているが、これに限定されるものではなく、2極以上の磁極を有する場合であればよい。
【0030】
図4は、第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子1の磁石拘束部材100の凸部101aの一部を示すA-A断面図である。
図4は、凸部101aすなわち磁極を構成する2つの永久磁石5の一方についての横方向拘束部110および軸方向拘束部120を示している。
【0031】
磁石拘束部材100の平板部101は永久磁石5の端面5eに平行な方向に広がっている。
【0032】
軸方向拘束部120は、平板部101から突出して、永久磁石5の端面5eに接触している。
【0033】
それぞれの横方向拘束部110は、2つの密着部111および2つの曲がり部112を有する。2つの密着部111は、曲がり部112により平板部101より、互いに対向するように平板部101に垂直となる方向に曲げられる。2つの密着部111は、永久磁石5の第1の側面5aおよび第2の側面5bに密着するように形成されている。
【0034】
図5は、第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子1の磁石拘束部材100aの第1の変形例を示す部分断面図である。
【0035】
第1の変形例における磁石拘束部材100aにおいては、横方向拘束部110aの曲がり部112aが、外側に湾曲している。この結果、軸方向拘束部120の面外への突出高さによらず、横方向拘束部110aと永久磁石との干渉を回避することができる。また、2つの密着部111の、永久磁石5の第1の側面5aおよび第2の側面5bへの密着時の圧力の調整がより容易となる。
【0036】
図6は、第1の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子1の磁石拘束部材100bの第2の変形例を示す部分断面図である。
【0037】
第2の変形例における磁石拘束部材100bの横方向拘束部110bは、両側にそれぞれ、密着部111b、曲がり部112および曲がり部112b、並びにガイド部113bを有する。
【0038】
密着部111bは、曲がり部112および曲がり部112bの2つの曲がり部により、外側に湾曲している。この結果、第1の変形例と同様に、軸方向拘束部120の面外への突出高さによらず、横方向拘束部110bと永久磁石との干渉を回避することができる。また、2つの密着部111の、永久磁石5の第1の側面5aおよび第2の側面5bへの密着時の圧力の調整がより容易となる。
【0039】
横方向拘束部110bの密着部111は、永久磁石5に面接触ではなく、線接触する。さらに、密着部111より先端部側には、ガイド部113bが設けられている。この結果、磁石拘束部材100bと各永久磁石5との嵌合が容易になる。さらに、永久磁石5と嵌合する前の状態として、対向する2つの密着部111bどうしの間隔を、永久磁石5の幅すなわち第1の側面5aと第2の側面5bとの間隔より小さく設定しても、嵌合が可能となる。この結果、2つの密着部111bによる永久磁石5に対する締め付け力をより大きくすることができる。
【0040】
なお、以上の
図4ないし
図6では、それぞれ、横方向拘束部110、110a、110bが、永久磁石5の第1の側面5aおよび第2の側面5bに作用して永久磁石5を拘束する場合を示しているが、永久磁石5の第3の側面5cおよび第4の側面5dに作用して永久磁石5を拘束する場合であってもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態による磁石拘束部材100の横方向拘束部110bは、永久磁石5の側面を挟み込むことにより永久磁石を拘束する方式である。軸方向についても、端面に対して垂直方向に抑える方式である。すなわち、負荷される荷重は、各面に対して、垂直方向であり、基本的には圧縮応力となり、剪断力が生じたとしてもその割合は小さい。このため、
図11に示す従来例のように、永久磁石5の角部をテーパ部で拘束する方式のように側面に対して斜め方向の荷重が付加され剪断力が大きくなるということがなく、また、応力集中が少ない構造が得られる。
【0042】
また、本実施形態による磁石拘束部材100を用いることにより、回転子鉄心15に永久磁石5の保持部を設ける必要がなく、磁石収納孔16の構造が単純となる。この結果、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0043】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子1の磁石拘束部材100cを示す部分断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態では、永久磁石5の拘束に、収納孔外側壁面16aと収納孔内側壁面16bが利用される。
【0044】
それぞれの横方向拘束部110cは、磁石と密着する密着部111cと、壁面(収納孔外側壁面16aまたは収納孔内側壁面16b)と密着する壁面密着部114を有する。また、曲がり部112およびガイド部113cを有する。
【0045】
このように、壁面を利用することにより、永久磁石5の側面を挟み込む力を確保するために曲がり部112の剛性を確保するという条件を緩和することができる。また、横方向拘束部110cの剛性の調節可能範囲が広がり、より適切な剛性に設定することができる。
【0046】
図8は、第2の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子1の磁石拘束部材の変形例を示す部分断面図である。変形例による磁石拘束部材100dは、ガイド部113dを折り曲げ構造としており、その先端側に壁面密着部114dを設けている。このような構造をとることにより、剛性の調整範囲を広げることができる。また、磁石拘束部材100dの場合は、壁面密着部114が密着部111cより軸方向外側となるのに対して、この変形例では、密着部111dと壁面密着部114dの軸方向の位置関係の選択範囲を広げることができる。
【0047】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態に係る埋め込み磁石型回転子1の磁石拘束部材100fを示す斜視図である。
【0048】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態の磁石拘束部材100fは、第1の実施形態の軸方向拘束部120に代えて、軸方向拘束部120fを有する。これ以外は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
本実施形態における軸方向拘束部120fは、平板部101から一方に延びて、面外に折り曲げられており、先端は、平板部101と結合はされていない。折り曲げは、一端、面外に折り曲げられ、その後、途中の部分が、平板部101とほぼ平行となるように戻されている。
【0050】
なお、軸方向拘束部120fの延びている方向は、第1の実施形態における軸方向拘束部120の延びる方向と90度異なるが、軸方向拘束部120と同じ方向であってもよい。また、平板部101との接続部と先端部が、
図9で示す場合と逆の場合であってもよい。
【0051】
本実施形態における軸方向拘束部120fでは、片持ち梁のバネとなることから、軸方向拘束部120のような両端が拘束されている場合に比べて、剛性が大幅に調整しやすくなる。また、軸方向拘束部120の剛性が大きすぎると、逆に、軸方向拘束部120が結合されている部分の周囲の平板部101において面外変形が生ずる可能性があるが、本実施形態の軸方向拘束部120fの場合は、このような問題を解消できる。
【0052】
以上、説明した実施形態によれば、製造工程を簡素化できかつ永久磁石の破損の可能性を低減可能な埋め込み磁石型回転子および回転電機を提供することが可能となる。
【0053】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴、たとえば、第2の実施形態の特徴と第3の実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…埋め込み磁石型回転子、2…ロータシャフト、3…回転子鉄心、4…磁石収納孔、4a、4b…磁石保持突起、4c、4d…凹部、5…永久磁石、5a…第1の側面、5b…第2の側面、5c…第3の側面、5d…第4の側面、5e…端面、5x…角部、6…端板、8…拘束部材、8t…テーパ部、10…回転電機、12…固定子、12a…固定子鉄心、12b…固定子巻線、13…軸受、14…筐体、15…回転子鉄心、16…磁石収納孔、16a…収納孔外側壁面、16b…収納孔内側壁面、50…抑え板、50a…凸部、50b…凹部、55…中心孔、56…ロッド貫通孔、100、100a、100b、100c、100d、100f…磁石拘束部材、101…平板部、101a…凸部、101b…凹部、105…中心孔、106…ロッド貫通孔、110、110a、110b…横方向拘束部、111、111b、111c、111d…密着部、112、112a、112b、112c…曲がり部、113b、113c、113d…ガイド部、114、114c…壁面接触部、120、120f…軸方向拘束部