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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028530
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】温調衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20250221BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20250221BHJP
【FI】
A41D13/005
A41D1/00 D
A41D1/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133387
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】597098899
【氏名又は名称】株式会社コーコス信岡
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 威喜
【テーマコード(参考)】
3B030
3B211
【Fターム(参考)】
3B030AA03
3B030AB06
3B030AB08
3B030AB12
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC01
3B211AC17
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】温調部材を用いて温調するときに不要な熱や冷気を効果的に排気することを可能とした温調衣服を提供する。
【解決手段】外面側中央上部に上下に2本の表ひだ山2aを形成するとともに、内面側中央上部であって表ひだ山2aに対応する位置に上下に2本の陰ひだ山2bを形成してボックスプリーツ状の取付部2を有する上着部材1と、上着部材1の内面側中央上部に形成されたボックスプリーツ状の取付部2を覆うように2本の陰ひだ山2bに沿って上着部材1に接合される接合部3aと、温調部材4を取り付けるために接合部の下方に形成された係止部3bとを有する係止部材3と、を有し、接合部3aは幅方向両側をボックスプリーツ状の取付部2の陰ひだ山に沿って接合することで取付部2と係止部材3により筒状部が形成され、係止部3bは取付部2に接合することなく揺動可能なフラシ状に形成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温調部材を着脱可能な温調衣服において、
外面側中央上部に所定間隔を隔てて上下に2本の表ひだ山を形成するとともに、内面側中央上部であって前記表ひだ山に対応する位置に所定間隔を隔てて上下に2本の陰ひだ山を形成してボックスプリーツ状の取付部を有する上着部材と、
前記上着部材の内面側中央上部に形成されたボックスプリーツ状の取付部を覆うように前記2本の陰ひだ山に沿って前記上着部材に接合される接合部と、前記温調部材を取り付けるために前記接合部の下方に形成された係止部とを有する係止部材と、
を有し、
前記接合部は幅方向両側を前記取付部の前記陰ひだ山に沿って接合することで前記取付部と前記係止部材により筒状部が形成され、前記係止部は前記取付部に接合することなく揺動可能なフラシ状に形成されている
ことを特徴とする温調衣服。
【請求項2】
前記温調部材は、一方面を冷却すると他方面が加温される部材であることを特徴とする請求項1記載の温調衣服。
【請求項3】
前記ボックスプリーツ状の取付部は、前記上着部材のヨーク部から襟部の上部まで連続して形成されていることを特徴とする請求項1記載の温調衣服。
【請求項4】
前記係止部材は、前記ボックスプリーツ状の取付部を覆うメッシュ状の布部材であることを特徴とした請求項1記載の温調衣服。
【請求項5】
前記ボックスプリーツ状の取付部と前記係止部材により形成される筒状部は、上端が開放されていることを特徴とする請求項1記載の温調衣服。
【請求項6】
前記係止部は、前記温調部材を取り付けるための開口で形成され、前記開口に前記温調部材を取り付けたときに、前記温調部材の前記筒状部の内側に面し、他方側面は前記筒状部の外側に面することを特徴とする請求項2記載の温調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調部材を取り付けて内部を効果的に冷却、加温可能な作業服等の温調衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から作業現場の熱中症対策として作業服にファンを取り付けて外部の空気を作業着内部に取り込んで冷却を行う作業服が利用されるようになっている。しかし、前記ファンを取り付けた作業服は空冷効果はあるが、服が膨張して作業性に影響する場合もある。
【0003】
そこで、近年では通電により冷却、加温し得るペルチェ素子等の温調部材を用いることで、作業者に直接冷感、温感を付与して冷却効果、加温効果を達成するようにしたものが提案されている(引用文献1)。この温調部材を用いた場合、ファンによる空調と異なって作業服内を膨張させることなく、また小型化も可能であるため、作業性に影響を与えることなく、ファッション性を害することもないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-074925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにペルチェ素子を用いて冷却、加温する場合、一方の面で冷却すると他方の面が加熱するため、冷却効果を得るためには加温された空気を排気する必要があり、逆に加温効果を得るためには冷却された空気を排気する必要がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、温調部材を用いて温調するときに不要な熱や冷気を効果的に排気することを可能とした温調衣服を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る代表的な構成は、温調部材を着脱可能な温調衣服において、外面側中央上部に所定間隔を隔てて上下に2本の表ひだ山を形成するとともに、内面側中央上部であって前記表ひだ山に対応する位置に所定間隔を隔てて上下に2本の陰ひだ山を形成してボックスプリーツ状の取付部を有する上着部材と、前記上着部材の内面側中央上部に形成されたボックスプリーツ状の取付部を覆うように前記2本の陰ひだ山に沿って前記上着部材に接合される接合部と、前記温調部材を取り付けるために前記接合部の下方に形成された係止部とを有する係止部材と、を有し、前記接合部は幅方向両側を前記ボックスプリーツ状の取付部の前記陰ひだ山に沿って接合することで前記取付部と前記係止部材により筒状部が形成され、前記係止部は前記取付部に接合することなく揺動可能なフラシ状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にあっては、ペルチェ素子等の温調部材を用いた場合に不要な熱をボックスプリーツ状の筒状部から排気することが可能となり、冷温効果を効率よく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は上着に温調部材を取り付けた状態説明図、(b)は(a)のB-B断面図
図2】上着に温調部材を取り付ける前の状態斜視説明図
図3】上着に温調部材を取り付けた状態斜視説明図
図4】(a)は上着に温調部材を取り付けた状態の正面図、(b)は上着に温調部材を取り付けた状態の背面図
図5】(a)は温調部材が人に接触した状態説明図、(b)は温調部材が人から離間した状態説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の実施形態に係る温調衣服について図面を参照して具体的に説明する。図1は上着に温調部材を取り付けた状態説明図であり、図2は上着に温調部材を取り付ける前の状態を示す斜視説明図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、上着部材1には外面側中央上部に所定間隔を隔てて上下に2本の表ひだ山2aが形成されるとともに、内面側中央上部であって前記表ひだ山2aに対応する位置に所定間隔を隔てて上下に2本の陰ひだ山2bが形成され、これによってボックスプリーツ状の取付部2が形成されている。
【0012】
前記表ひだ山2a及び陰ひだ山2bは上着部材1のヨーク部1aの下端から襟部1bの上端まで連続して形成され、縦長のボックスプリーツ形状が襟部1bの上端まで形成されている。
【0013】
前記取付部2には係止部材3が縫合して取り付けられ、この係止部材3に温調部材4が装着される。この係止部材3は上着部材1に形成された取付部2の2本の陰ひだ山2bの間隔よりも広い幅を有し、ボックスプリーツ状をした取付部2の上下の長さとほぼ同じ長さを有する布製部材であって、前記取付部2を覆うサイズに構成されている。
【0014】
また、前記係止部材3は前記取付部2に縫合される接合部3aと、温調部材4を係止して取り付けるための係止部3bとが一体となって一枚の布部材として構成されている。前記接合部3aには幅方向両端に前記取付部2に縫い付けるための縫合部3a1が形成され、前記係止部3bには温調部材4を係止するための係止開口3cが形成されている。
【0015】
上着部材1に係止部材3を取り付ける場合は、係止部材3が取付部2を覆うようにして前記接合部3aの幅方向の両端の縫合部3a1を取付部2の陰ひだ山2bに沿って縫合する。このとき、接合部3aの下側に位置する係止部3bは取付部2に縫合せず、フラシ状にする。
【0016】
前記のようにして係止部材3を上着部材1に取り付けると、接合部3aの領域は図1(b)に示すように、取付部2のボックス形状と係止部材3とにより筒状部5が形成される。なお、本実施形態の係止部材3は伸縮可能なメッシュ生地によって構成され、縫合部3a1を陰ひだ山2bに沿って縫合してもプリーツの伸縮性を阻害しない。
【0017】
一方、取付部2に縫合されていない係止部3bは、フラシとなって垂れ下がった状態となっている。そして、図2に示すように、この係止部3bのほぼ中央に温調部材4を装着するための係止開口3cが形成されている。係止開口3cの内径は温調部材4に形成された係止凸部4aの外径とほぼ同じであり、この係止凸部4aを前記係止開口3cに嵌合し、係止部材3を挟むようにして係合リング4bを係止凸部4aに係合、あるいは螺合する。これにより、図3及び図4に示すように、上着部材1に縫合した係止部材3に温調部材4を装着することができる。
【0018】
前記係止部材3に装着する温調部材4は冷却及び加温が可能な部材である。本実施形態では温調部材4としてペルチェ素子が用いられ、このペルチェ素子がコード6を介して携帯用のバッテリー(図示せず)に接続されている。
【0019】
前記ペルチェ素子は、通電によって例えば図1(b)に示す一方側の面(表面)4cが冷却すると、他方側の面(裏面)4dが発熱する性質をもつ。このため、上着部材1内を冷却するためには発熱した空気を排気する必要があり、逆に上着部材1内を加温するためには冷却された空気を排気する必要がある。
【0020】
このとき、本実施形態にあっては前述したように取付部2のボックス形状と係止部材3とで囲われた筒状部5が形成され、係止部材3に装着した温調部材4の表面4cは前記筒状部の外側に面する一方、温調部材4の裏面4dは筒状部5の内側に面している。このため、温調部材4の表面4cが冷却されるように通電した場合、温調部材4の裏面4dの発熱により加温した空気は前記筒状部が風気路となって上部へと排気される。
【0021】
なお、本実施形態では係止部材3をメッシュ生地で構成したために加温された空気は風気路を通って排気される。一方、係止部材3としてメッシュ生地でなくてもよく、例えば通気性のない部材を用いてもよい。その場合は取付部2のボックス形状と係止部材3とで囲われた筒状部の上端に排気用の開口を形成しておくと、該開口から効率よく排気されるようになる。
【0022】
これにより、温調部材4の表面4cを冷却するときに、裏面4dから加温された空気が効率よく排気され上着部材1内を効果的に冷却することができる。
【0023】
また、前述したように温調部材4は係止部材3のフラシ部分に取り付けられる。このため、係止開口3cへ温調部材4を装着するときに、温調部材4を係止部材3の表面側から係止開口3cに嵌合するとともに係止部材3の裏面側から係合リング4bをもって温調部材4に係合させることが容易にできる。したがって、係止部材3を挟むようにして温調部材4を装着する構成を採用することができ、温調部材4を装着するために係止部材3には係止開口3cを設けるだけでよく、装着構成を簡易にできる。
【0024】
さらに、温調部材4が前記フラシ部分に取り付けられているために、該部分は上着部材1に対して揺動可能な状態となっている。このため、例えば、温調部材4の表面4cを冷却するように通電したとき、図5(a)に示すように、上着部材1の使用者Mが前かがみになると、温調部材4が揺動して冷却された表面4cが使用者の背中に密着する。このため、使用者は直接的に冷気を感ずることができ、冷却効果を実感することができる。
【0025】
逆に図5(b)に示すように、上着部材1の使用者Mが背筋を伸ばすようにすると、温調部材4が揺動して冷却された表面4cが使用者の背中から離間する。これにより、使用者は温調部材4からの冷感を和らげることができる。
【0026】
このように温調部材4を係止部材3の縫合されていないフラシ状の部位に装着することにより、使用者が姿勢を変えることで温調部材4による温度調整を直接的に変えることが可能である。
【0027】
本実施形態にあっては、前述したように係止部材3の上着部材1にボックスプリーツ形状の取付部2を形成し、陰ひだ山に沿って係止部材3を縫合することで不要な熱の風気路を形成することで効率のよい温調を行うことができる。
【0028】
また、本実施形態にあっては、温調部材4を取り付けるにあたって、上着部材1に形成したボックスプリーツ形状を利用することで、上着部材1における背中の伸縮性を保持することができる。
【0029】
また、本実施形態にあっては、温調部材4を係止部材3にのフラシ部分に取り付けることにより、係止部材3には温調部材4を取り付けるための係止開口3cを設けるだけでよく、温調部材4の取り付け構成を簡素化することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態にあっては、温調部材4を係止部材3にのフラシ部分に取り付けることにより、使用者が姿勢を変えることで温調部材4による温度調整を直接的に変化させることが可能である。
【0031】
なお、前述した実施形態では、係止部材3を取付部2の陰ひだ山に沿って縫合することで取り付けるようにしたが、係止部材3を取付部2に対して取り付ける構成としては、縫合に限定する必要はない。他にも例えば係止部材3の幅方向両端を取付部2の陰ひだ山に沿って接着することで取り付けるようにしてもよく、係止部材3の幅方向両端を取付部2のボックス形状に沿って接合させ、ボックス形状と係止部材3とで筒状部を形成できればよい。
【0032】
また、前述した実施形態では係止部材3の上下の長さをボックスプリーツ状をした取付部2の上下の長さとほぼ同じ長さにして取付部2を覆うようにした例を示したが、係止部材3の上下方向の長さは取付部2よりも短くてもよい。係止部材3の上下方向の長さが取付部2の上下方向の長さより短くても、係止開口3cの上部に前述した筒状部5が形成されていれば、温調部材4の裏面4dからの熱が筒状部5から効果的に排気される。
【0033】
また、前述した実施形態では、取付部2を上着部材1のヨーク部1aの下端から襟部1bの上端まで設けた例を示したが、取付部2はこの部位に限らず、例えば後ろ身頃1c(図3参照)の部分から襟部1bまで設けるようにしてもよい。
【0034】
また、前述した実施形態では、取付部2を上着部材1の背面の中央上部に1箇所設け、ここに温調部材を1個設ける例を示したが、中央部の他に左右にも取付部2を設けることで複数個の温調部材を装着可能に構成してもよい。
【0035】
さらには、前述した実施形態では温調部材4の表面を冷却することで上着部材1内を冷却する例を示したが、逆に温調部材4の表面が加温するように通電し、上着部材1内を加温する場合であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 …上着部材
1a …ヨーク部
1b …襟部
1c …後ろ身頃
2 …取付部
2a …表ひだ山
2b …陰ひだ山
3 …係止部材
3a …接合部
3b …係止部
3c …係止開口
4 …温調部材
4a …係止凸部
4b …係合リング
4c …表面
4d …裏面
5 …筒状部
6 …コード
図1
図2
図3
図4
図5