(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028534
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】ロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20250221BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133394
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】坂原 洋人
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707FS07
3C707HS27
3C707KS33
3C707KW03
3C707KX10
3C707LV04
3C707LV15
(57)【要約】
【課題】ロボットがハンド部でターゲットを保持する際に、ターゲットに対するハンド部の位置決めを高精度に行うことができるようにする。
【解決手段】ロボット制御システム1は、電磁石11aを有するハンド部11と、ハンド部11を移動させるためのロボット12と、ロボット12を制御することによってハンド部11を移動させる制御部13とを備え、制御部13は、電磁石11aが磁着する対象である磁着対象21を有するターゲット20の近傍にハンド部11を移動させた状態でロボット12を外力追従モードに切り替え、電磁石11aが磁着対象21に磁着した後にロボット12を位置制御モードに切り替えてハンド部11を移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石を有するハンド部と、
前記ハンド部を移動させるためのロボットと、
前記ロボットを制御することによって前記ハンド部を移動させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電磁石が磁着する対象である磁着対象を有するターゲットの近傍に前記ハンド部を移動させた状態で前記ロボットを外力追従モードに切り替え、前記電磁石が前記磁着対象に磁着した後に前記ロボットを位置制御モードに切り替えて前記ハンド部を移動させる、ロボット制御システム。
【請求項2】
前記ハンド部は、前記電磁石が前記磁着対象に磁着した後に、前記ターゲットを保持する保持手段をさらに有する、請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記磁着対象は、電磁石、永久磁石、強磁性体のいずれかである、請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記ハンド部が前記磁着対象に近づくのに応じて前記電磁石の磁力が弱くなるように制御する、請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項5】
前記ロボットは、前記ハンド部に掛かる力を測定するための力センサをさらに有し、
前記制御部は、前記ロボットを外力追従モードで制御する際に、前記力センサによって測定された外力が0になるように前記ロボットを制御する、請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項6】
前記ハンド部は、2個以上の電磁石を有しており、
前記ターゲットは、極性の異なる2個の磁着対象を少なくとも有している、請求項1から請求項5のいずれか記載のロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンド部によってターゲットを保持するロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットが高精度な作業を行うためには、ロボットの位置決めをより高精度に行う必要がある。そのため、例えば、無人搬送車によって搬送可能なロボットにおいて、床面に設けられた孔に位置決めピンを挿入することによる高精度な位置決めが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法によって、ロボットの位置決めを高精度に行うことはできるが、例えば、ロボットが搬送等の作業を行う対象となるターゲットと、ロボットとの位置決めが正確にできていない場合には、その作業の精度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ロボットがハンド部でターゲットを保持する際に、ターゲットに対するハンド部の位置決めを高精度に行うことができるロボット制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によるロボット制御システムは、電磁石を有するハンド部と、ハンド部を移動させるためのロボットと、ロボットを制御することによってハンド部を移動させる制御部と、を備え、制御部は、電磁石が磁着する対象である磁着対象を有するターゲットの近傍にハンド部を移動させた状態でロボットを外力追従モードに切り替え、電磁石が磁着対象に磁着した後にロボットを位置制御モードに切り替えてハンド部を移動させる、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によるロボット制御システムによれば、外力追従モードのロボットにおいて、ハンド部の電磁石と、ターゲットが有する磁着対象とを磁着させることにより、ハンド部がターゲットを保持する際に、両者をあらかじめ決められた位置関係とすることができ、ターゲットに対するハンド部の位置決めを高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態によるロボット制御システムの構成を示す模式図
【
図2】同実施の形態によるロボット制御システムの動作を示すフローチャート
【
図3】同実施の形態におけるロボットの一例を示す斜視図
【
図4A】同実施の形態におけるハンド部が有する電磁石の一例を示す図
【
図4B】同実施の形態におけるターゲットが有する磁着対象の一例を示す図
【
図5】同実施の形態における力センサを有するロボットの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明によるロボット制御システムについて、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるロボット制御システムは、外力追従モードのロボットにおいて、ハンド部が有する電磁石と、ターゲットが有する磁着対象とを磁着させることによって、ハンド部とターゲットとの位置決めを高精度に行うことができるものである。
【0010】
図1は、本実施の形態によるロボット制御システム1の構成を示す模式図である。本実施の形態によるロボット制御システム1は、ハンド部11と、ハンド部11を移動させるためのロボット12と、ロボット12を制御するための制御部13とを備える。
【0011】
ハンド部11は、電磁石11a有する。一例として、ハンド部11がターゲット20を保持する際にターゲット20に接する面に電磁石11aが設けられていてもよい。また、例えば、ハンド部11が、電磁石11aそのものであってもよい。電磁石11aのオン、オフの制御は、制御部13によって行われてもよい。また、一例として、電磁石11aは、ターゲット20を保持できる程度に強力なものであってもよい。
【0012】
ターゲット20は、ハンド部11による保持対象であり、例えば、ロボット12による搬送対象であってもよく、ロボット12による組立対象の部品等であってもよい。なお、
図1では、ターゲット20が床面に載置されている場合について示しているが、ターゲット20は、例えば、棚や台などに載置されていてもよい。
【0013】
ターゲット20は、電磁石11aが磁着する対象である磁着対象21を有している。磁着対象21は、例えば、電磁石、永久磁石、強磁性体のいずれかであってもよい。磁着対象21が強磁性体である場合には、ターゲット20の磁着対象21の周辺には、磁着対象21以外の強磁性体が存在しないことが好適である。本実施の形態では、磁着対象21が永久磁石である場合について主に説明する。また、一例として、ハンド部11がターゲット20を保持する際にハンド部11に接するターゲット20の面に磁着対象21が設けられていてもよい。なお、磁着対象21が電磁石である場合に、その電磁石は、例えば、手動でオン、オフされてもよく、または、ロボット制御システム1によって無線通信によってオン、オフされてもよい。後者の場合には、例えば、電磁石11aと磁着対象21との間で磁力を働かせたいときにのみ、磁着対象21である電磁石がオンにされてもよい。
【0014】
ロボット12は、ハンド部11を移動させる。ハンド部11は、
図1で示されるように、ロボット12の先端に取り付けられていてもよい。ロボット12は、例えば、モータによって駆動される関節によって連結された複数のアームを有するロボットであってもよい。このロボットは、例えば、垂直多関節ロボットや、水平多関節ロボットであってもよい。また、ロボット12は、例えば、直角に組み合わせた複数の直線軸を有する直交ロボットであってもよい。ロボット12は、例えば、ターゲット20を搬送するためのものであってもよく、ターゲット20を用いて組立作業を行うものであってもよく、その他の目的でターゲット20を保持するものであってもよい。また、ロボット12の基端側は、例えば、床や壁などの構造物に固定されていてもよく、ベースに固定されていてもよく、移動可能な移動台車に固定されていてもよい。移動台車は、例えば、手動で移動されてもよく、または、走行手段などの移動機構を有していていてもよい。後者の場合に、移動台車は、例えば、自律的に移動してもよく、または、ユーザ等からの指示に応じて移動してもよい。本実施の形態では、ロボット12の基端側が、床などの構造体やベースに固定されている場合について主に説明する。
【0015】
制御部13は、ロボット12を制御することによってハンド部11を移動させる。制御部13は、例えば、ハンド部11によってターゲット20を保持するために、ハンド部11がターゲット20に近づくようにロボット12を制御してもよい。また、制御部13は、例えば、ハンド部11によってターゲット20が保持された場合に、ターゲット20を所望の位置に移動させるためにロボット12を制御してもよい。また、制御部13は、ハンド部11が有する電磁石11aの通電、非通電を切り替えることによって、電磁石11aのオン、オフを切り替えてもよい。
【0016】
また、制御部13は、ロボット12の動作モードを、外力追従モードと、位置制御モードとの間で切り替えてもよい。外力追従モードは、外力によってハンド部11が移動される動作モードである。この外力は、例えば、ロボットが手によって押されることによって生じる力や、磁力によってひきつけられる力などであってもよい。この外力は、例えば、ハンド部11が有する電磁石11aと、ターゲット20が有する磁着対象21との間に働く、磁力による引力であってもよい。制御部13は、例えば、ロボット12を外力追従モードで制御する場合には、ロボット12の各軸を駆動するモータに、各軸の摩擦を打ち消すようにトルクを発生させてもよい。また、一例として、制御部13は、外力追従モードで制御する場合に、ロボット12の各軸に掛かる重力、前後軸の動作により発生する反作用、コリオリ力を補正する力を発生させるようにロボット12の各軸を制御してもよい。このようにすることで、ハンド部11に外力が掛かった場合に、その外力が小さくても、ハンド部11がその外力に応じて移動されることになる。この外力追従モードは、例えば、ロボットのリードスルーティーチングなどにおいて用いられている公知のモードであり、その詳細な説明を省略する。位置制御モードは、ロボット12のモータによって各軸を駆動することによって、ロボット12に装着されたハンド部11を任意の位置に移動させるための動作モードである。制御部13は、例えば、ロボット12を位置制御モードで制御する場合には、ハンド部11の所望の位置から、逆運動学によって各関節の角度を算出し、各関節が算出した角度となるようにモータを制御することなどによって、ハンド部11を所望の位置に移動させてもよい。この位置制御モードは、例えば、ロボットを用いて搬送や組み立て等の作業を行う際に用いられる公知のモードであり、その詳細な説明を省略する。
【0017】
制御部13は、ハンド部11によってターゲット20を保持する場合に、磁着対象21を有するターゲット20の近傍にハンド部11を移動させた状態でロボット12を外力追従モードに切り替えてもよい。ターゲット20の近傍へのハンド部11の移動に関する精度は問わない。このように外力追従モードへの切り替えが行われる前に、またはその切り替えの後に、電磁石11aがオンにされてもよい。なお、ハンド部11の移動先であるターゲット20の近傍の位置は、例えば、あらかじめ決められた位置であってもよい。この位置は、磁着対象21の近傍であることが好適である。また、その位置にハンド部11が存在する場合に、ハンド部11の電磁石11aと、ターゲット20の磁着対象21の間に、電磁石11aの磁力による引力が働くことが好適である。すなわち、磁着対象21の近傍とは、電磁石11aと磁着対象21との間に磁力による引力が働く程度に磁着対象21に近い位置のことであってもよい。外力追従モードに切り替えられたロボット12のハンド部11が、ターゲット20の近傍に位置すると共に、ハンド部11の電磁石11aがオンにされていることによって、ハンド部11の電磁石11aと、ターゲット20の磁着対象21との間には引力が作用する。その結果、この引力によって、ハンド部11が磁着対象21に向かって移動することになり、電磁石11aと磁着対象21とが磁着する。すなわち、ハンド部11の電磁石11aと磁着対象21とが磁気によって吸着することになる。このようにして、ハンド部11とターゲット20との位置決めが高精度に行われることになる。
【0018】
なお、磁着対象21が永久磁石である場合には、電磁石11aが通電された際に、電磁石11aのターゲット20に対向する側の極性と、磁着対象21のハンド部11に対向する側の極性とが逆になっていることが好適である。例えば、一方がN極である場合には、他方はS極となることが好適である。両者の間に引力が働くようにするためである。また、磁着対象21が電磁石である場合には、ハンド部11の電磁石11aと、ターゲット20の磁着対象21である電磁石との対向する側の極性がそれぞれ逆になるように通電されることが好適である。
【0019】
制御部13は、電磁石11aが磁着対象21に磁着した後にロボット12を位置制御モードに切り替えてハンド部11を移動させてもよい。このようにしてハンド部11を移動させることにより、ハンド部11が電磁石11aによって保持しているターゲット20も一緒に移動されることになる。このターゲット20の移動は、例えば、搬送や組み立て等の目的のために行われてもよい。また、制御部13は、例えば、電磁石11aが磁着対象21に磁着したことを、ロボット12の各軸が停止したことによって検知してもよい。
【0020】
また、制御部13は、例えば、ターゲット20の保持を解除する際には、電磁石11aをオフにしてもよく、または、磁着対象21が永久磁石である場合には、電磁石11aの極性を、ターゲット20を保持している際と逆にしてもよい。また、磁着対象21も電磁石である場合には、磁着対象21である電磁石は、例えば、ハンド部11によってターゲット20が保持される際にオンにされ、その保持が解除される際にオフにされてもよい。磁着対象21である電磁石のオン、オフは、例えば、制御部13とターゲット20との間の無線通信によって行われてもよい。
【0021】
次に、ロボット制御システム1の動作について
図2のフローチャートを用いて説明する。
図2のフローチャートでは、ロボット制御システム1を用いてターゲット20を搬送する場合について説明する。また、ターゲット20の磁着対象21は永久磁石であるとする。
【0022】
(ステップS101)制御部13は、ターゲット20の搬送を行うかどうか判断する。そして、ターゲット20の搬送を行う場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、搬送を行うと判断するまでステップS101の処理を繰り返す。制御部13は、例えば、ターゲット20の搬送を行う旨の指示を受け付けた場合に、ターゲット20の搬送を行うと判断してもよい。
【0023】
(ステップS102)制御部13は、ロボット12を制御することによって、ターゲット20の近傍にハンド部11を移動させる。なお、ターゲット20の位置は、例えば、あらかじめ決まっていてもよく、または、外部から入力された位置であってもよい。
【0024】
(ステップS103)制御部13は、ロボット12を外力追従モードに切り替える。すなわち、制御部13は、この切り替え以降、ロボット12を外力追従モードによって制御することになる。
【0025】
(ステップS104)制御部13は、ハンド部11が有する電磁石11aをオンにする。電磁石11aがオンにされることによって、電磁石11aと、ターゲット20の磁着対象21との間に引力が作用し、ハンド部11が磁着対象21に向かって移動するものとする。
【0026】
(ステップS105)制御部13は、ハンド部11が停止したかどうか判断する。そして、停止した場合には、ステップS106に進み、そうでない場合には、停止したと判断するまでステップS105の処理を繰り返す。なお、制御部13は、例えば、ロボット12の各軸が変化しなくなった場合に、ハンド部11が停止したと判断してもよい。また、ハンド部11が停止した場合には、例えば、ハンド部11がターゲット20を、電磁石11aと磁着対象21との間に作用する磁力によって保持している状態になってもよい。
【0027】
(ステップS106)制御部13は、ロボット12を位置制御モードに切り替える。すなわち、制御部13は、この切り替え以降、ロボット12を位置制御モードによって制御することになる。
【0028】
(ステップS107)制御部13は、ターゲット20を目的位置に搬送する。この目的位置は、例えば、あらかじめ決まっていてもよく、または、外部から入力された位置であってもよい。
【0029】
(ステップS108)制御部13は、ターゲット20の目的位置までの搬送が完了すると、ハンド部11の電磁石11aをオフにすることによって、ハンド部11によるターゲット20の保持を解除する。
【0030】
(ステップS109)制御部13は、ハンド部11をターゲット20から離れる方向に移動させる。なお、ハンド部11は、例えば、初期位置に移動されてもよい。そして、ステップS101に戻る。
【0031】
なお、
図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。一例として、搬送の開始時点、すなわちステップS101においてYesと判断された後に、電磁石11aがオンにされてもよい。また、
図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0032】
次に、本実施の形態によるロボット制御システム1の動作について、具体例を用いて説明する。本具体例では、ターゲット20の磁着対象21が永久磁石であるとする。また、ターゲット20の上面に磁着対象21が配置されているものとする。また、本具体例では、ロボット12が、
図3で示される3軸の直交ロボットであるとする。
【0033】
図3において、直交ロボットであるロボット12は、ハンド部11を水平面内の第1の方向(ここでは、xyz直交座標系におけるx軸方向とする。)に移動させるスライド軸である第1の移動部121と、第1の移動部121を第1の方向に垂直な水平面内の第2の方向(ここでは、xyz直交座標系におけるy軸方向とする。)に移動させるスライド軸である第2の移動部122と、第2の移動部122を鉛直方向(ここでは、xyz直交座標系におけるz軸方向とする。)に移動させるスライド軸である第3の移動部123とを備えてもよい。なお、第3の移動部123の基端側、すなわち
図3における下端側は、例えば、ベースや床などに固定されてもよい。第1の移動部121は、一例として、ハンド部11の上面をx軸方向に移動させてもよい。また、第2の移動部122は、一例として、第1の移動部121のx軸方向における一端をy軸方向に移動させてもよい。また、第3の移動部123は、一例として、第2の移動部122の一端側をz軸方向に移動させてもよい。
【0034】
本具体例では、ロボット制御システム1によって、ターゲット20を第1の位置から第2の位置に搬送するものとする。第1の位置にターゲット20が配置された後に、ロボット制御システム1にターゲット20の搬送を行う旨の指示が入力されると、その指示に応じて、制御部13は、ターゲット20の近傍にハンド部11を移動させる(ステップS101、S102)。なお、制御部13は、例えば、あらかじめ決められた位置である、ターゲット20の上方の位置に、電磁石11aが下面側となるようにハンド部11を移動させてもよい。
【0035】
次に、制御部13は、ロボット12を外力追従モードに切り替えると共に、電磁石11aをオンにする(ステップS103、S104)。外力追従モードでは、例えば、第1の移動部121は、x軸方向の力Fxを0とし、第2の移動部122は、y軸方向の力Fyを0とし、第3の移動部123は、z軸方向の力FzをMとしてもよい。Mは、第1の移動部121と、第2の移動部122と、ハンド部11との重量の合計であってもよい。
【0036】
外力追従モードにおいて、電磁石11aと、ターゲット20の磁着対象21である永久磁石との間の磁力によって、ハンド部11は磁着対象21に近づく方向に移動し、最終的に電磁石11aが磁着対象21に磁着することになる。このようにして、第1の位置に存在するターゲット20を、あらかじめ決められた相対的な位置関係でハンド部11が保持することができる。したがって、第1の位置にターゲット20を配置する際に、高い精度は要求されないことになる。
【0037】
ハンド部11が停止したことによって、電磁石11aが磁着対象21に磁着したことを検知すると、制御部13は、ロボット12を位置制御モードに切り替える(ステップS105、S106)。そして、制御部13は、ハンド部11が電磁石11aの磁力によって保持しているターゲット20を、あらかじめ決められた第2の位置に搬送する(ステップS107)。ターゲット20の第2の位置への搬送が完了すると、制御部13は、電磁石11aをオフにすることによって、ターゲット20の吸着を解除し、ハンド部11をあらかじめ決められた初期位置に戻す(ステップS108、S109)。このようにして、ターゲット20を第1の位置から第2の位置に搬送する一連の処理が終了する。
【0038】
以上のように、本実施の形態によるロボット制御システム1によれば、外力追従モードのロボット12において、ハンド部11の電磁石11aと、ターゲット20が有する磁着対象21とが電磁石11aの磁力によって吸着するようにすることによって、ハンド部11がターゲット20を保持する際に、簡易な構成によって両者があらかじめ決められた位置関係となるようにすることができる。そのため、例えば、電磁石11aが磁着対象21に磁着する際に、ロボット12とターゲット20との相対的な位置関係が不明であったとしても、ターゲット20に対するハンド部11の位置決めを高精度に行うことができるようになる。その結果として、例えば、ハンド部11によってターゲット20を高い精度でピックアップすることができ、ターゲット20を所望の位置に高い精度で搬送することなどができるようになる。
【0039】
なお、本実施の形態では、ハンド部11が電磁石11aの磁力によってターゲット20を保持する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。ハンド部11は、例えば、電磁石11aが磁着対象21に磁着した後に、ターゲット20を保持する保持手段をさらに有していてもよい。この保持手段は、例えば、ターゲット20を挟持する挟持手段であってもよく、ターゲット20を吸着する真空吸着手段であってもよい。この場合には、保持手段によってターゲット20が保持された後に、電磁石11aはオフにされてもよい。また、この場合には、電磁石11aは、例えば、ターゲット20を保持できない程度の磁力を発生させるものであってもよい。
【0040】
また、本実施の形態において、制御部13は、例えば、ハンド部11が磁着対象21に近づくのに応じて電磁石11aの磁力が弱くなるように制御してもよい。このような制御を行うことによって、ハンド部11とターゲット20とが当接する際の衝撃を低減することができる。制御部13は、例えば、ロボット12を外力追従モードにすると共に、電磁石11aをオンにした場合に、ハンド部11が外力によって移動を開始したことを検知した後に、電磁石11aが発生させる磁力が弱くなるように、電磁石11aに供給される電力を徐々に小さくしてもよい。なお、ハンド部11が電磁石11aの発生させる磁力によって移動を開始した後に、電磁石11aとターゲット20とが当接するまでに電磁石11aに供給される電力が0になっていてもよく、または両者が当接した際にも電磁石11aへの通電は行われていてもよい。いずれの場合であっても、ハンド部11が磁着対象21に近づくのに応じて電磁石11aの磁力が弱くなる制御を行うことによって、両者が当接する際の衝撃を緩和することができ、例えば、両者が当接した際の衝撃によって少なくとも一方が破損する可能性を低減することができる。なお、例えば、ハンド部11が電磁石11aによってターゲット20を保持する際には、ハンド部11がターゲット20に当接した後に、再度、電磁石11aをオンにしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、ハンド部11が1個の電磁石11aを有しており、ターゲット20が1個の磁着対象21を有している場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。ハンド部11は、例えば、2個以上の電磁石を有していてもよい。また、ターゲット20は、例えば、2個以上の磁着対象を有していてもよい。この場合には、ターゲット20は、例えば、極性の異なる2個の磁着対象を少なくとも有していてもよい。極性の異なる2個の磁着対象は、例えば、ハンド部11の電磁石に対向する面がN極である磁着対象と、S極である磁着対象であってもよい。この2個以上の磁着対象は、それぞれ電磁石か永久磁石であることが好適である。
【0042】
この場合には、例えば、ハンド部11は、
図4Aで示されるように、2個の電磁石11b、11cを有していてもよく、ターゲット20は、
図4Bで示されるように、2個の永久磁石である磁着対象21b、21cを有していてもよい。なお、
図4A、
図4Bはそれぞれ、ハンド部11及びターゲット20を、電磁石11b、11cや磁着対象21b、21cの配置されている配置面に垂直な方向から見た図である。一例として、電磁石11b、11cがそれぞれ磁着対象21b、21cに磁着する場合には、磁着対象21b、21cは、電磁石11b、11cに対向する側がそれぞれN極、S極となっており、電磁石11b、11cは、オンにされた際に、磁着対象21b、21cに対向する側がそれぞれS極、N極になってもよい。また、ハンド部11における電磁石11b、11cと、ターゲット20における磁着対象21b、21cとは、例えば、両者が磁着した状況において、それらの配置面に垂直な方向から見た場合に、電磁石11bと磁着対象21bとが重なり、電磁石11cと磁着対象21cとが重なるように配置されていることが好適である。一例として、それらの配置面において、電磁石11b、11cの間の距離と、磁着対象21b、21cの間の距離とは同じであってもよい。
【0043】
このようにハンド部11が2個以上の電磁石11b、11cを有しており、ターゲット20が極性の異なる2個の磁着対象21b、21cを有している場合には、電磁石11bと磁着対象21bとが磁着し、電磁石11cと磁着対象21cとが磁着するようにすることができ、ハンド部11とターゲット20とをより高精度に位置決めすることができるようになる。
【0044】
また、本実施の形態において、
図5で示されるように、ロボット12は、ハンド部11に掛かる力を測定するための力センサ14をさらに備えていてもよい。力センサ14は、例えば、3軸の力覚センサであってもよく、6軸の力覚センサであってもよい。この場合には、制御部13は、外力追従モードによってロボット12を制御する際に、力センサ14によって測定された外力が0になるようにロボット12を制御してもよい。力センサ14によって測定された外力とは、例えば、ハンド部11に掛かる重力以外の外力であってもよい。制御部13は、例えば、電磁石11aをオフにしている際に力センサ14によって取得された力と、電磁石11aをオンにしている際に力センサ14によって取得された力とを用いて、ハンド部11に掛かる重力以外の外力を特定することができる。そして、制御部13は、外力追従モードでロボット12を制御する場合には、その外力の向きにハンド部11を移動させてもよい。また、制御部13は、外力追従モードが継続されている場合には、外力の向きへのハンド部11の移動と、外力の特定とを繰り返してもよい。
【0045】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0047】
また、以上の実施の形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 ロボット制御システム、11 ハンド部、11a、11b、11c 電磁石、12 ロボット、13 制御部、14 力センサ、20 ターゲット、21、21b、21c 磁着対象