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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028536
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】保護帽
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/32 20060101AFI20250221BHJP
【FI】
A42B3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133405
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田島 紀孝
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107BA03
3B107BA04
3B107DA01
(57)【要約】
【課題】畳んだときの高さ寸法を小さくすることができ、簡素な構成であり製造工程を簡略にすることができる保護帽を提供する。
【解決手段】椀状の帽体3の下側の部位を構成する下側帽体構成体15と、椀状の帽体3の上側の部位を構成する上側帽体構成体17と、所定の部位19で下側帽体構成体15の所定の部位21に回動自在に係合し、所定の他の部位23で上側帽体構成体17の所定の部位25に回動自在に係合するヒンジ部構成体11とを有し、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とで椀状の帽体3が形成されている状態と、上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とが下側帽体構成体15内に収納されている状態との間で、下側帽体構成体15に対して上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とが移動するように構成されている保護帽1である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀状の帽体の下側の部位を構成する下側帽体構成体と、
前記椀状の帽体の上側の部位を構成する上側帽体構成体と、
所定の部位で前記下側帽体構成体の所定の部位に回動自在に係合し、所定の他の部位で前記上側帽体構成体の所定の部位に回動自在に係合するヒンジ部構成体と、
を有し、
前記下側帽体構成体と前記上側帽体構成体とで前記椀状の帽体が形成されている状態と、前記上側帽体構成体と前記ヒンジ部構成体とが前記下側帽体構成体内に収納されている状態との間で、前記下側帽体構成体に対して前記上側帽体構成体と前記ヒンジ部構成体とが移動するように構成されている保護帽。
【請求項2】
前記椀状の帽体の中央部を含み前記椀状の帽体の高さ方向に対して直交している平面で前記椀状の帽体を2つの部位に分割した態様で、前記下側帽体構成体と前記上側帽体構成体とが構成されており、
前記ヒンジ部構成体が、前記下側帽体構成体の前端部で前記下側帽体構成体に係合しており、前記上側帽体構成体の前端部で前記上側帽体構成体に係合しているか、
もしくは、前記ヒンジ部構成体が、前記下側帽体構成体の後端部で前記下側帽体構成体に係合しており、前記上側帽体構成体の後端部で前記上側帽体構成体に係合している請求項1に記載の保護帽。
【請求項3】
前記椀状の帽体には、ヘッドバンドが設けられており、
前記上側帽体構成体と前記ヒンジ部構成体とが前記ヘッドバンドに邪魔されることなく前記下側帽体構成体内に収納されるように構成されている請求項1に記載の保護帽。
【請求項4】
前記ヒンジ部構成体の所定の部位は、前記ヒンジ部構成体の下端部に設けられており、
前記下側帽体構成体の、前記ヒンジ部構成体が係合する所定の部位は、前後方向では下側帽体構成体の前端部に設けられており、上下方向では下側帽体構成体の上端部に設けられており、
前記ヒンジ部構成体の所定の他の部位は、前記ヒンジ部構成体の上端部に設けられており、
前記上側帽体構成体の、前記ヒンジ部構成体が係合する所定の部位は、前後方向では上側帽体構成体の前端部に設けられており、上下方向では上側帽体構成体の下端部に設けられており、
前記上側帽体構成体と前記ヒンジ部構成体とが前記下側帽体構成体内に収納されている状態から前記下側帽体構成体と前記上側帽体構成体とで前記椀状の帽体が形成されている状態へ移行するときには、前記下側帽体構成体に対して、前記上側帽体構成体の後側の部位が下側になり前側の部位が上側になるように前記上側帽体構成体が傾き前記上側帽体構成体の一部が前記下側帽体構成体の下端から下側に突出し、この後、前記上側帽体構成体の他の一部が前記下側帽体構成体の上端から上側に突出するまで前記上側帽体構成体が上側に移動し、この後、前記上側帽体構成体の傾きを無くすことで前記椀状の帽体が形成されるように構成されている請求項2に記載の保護帽。
【請求項5】
前記ヒンジ部構成体の所定の部位は、一対で左右対称になって設けられており、
前記下側帽体構成体の、前記ヒンジ部構成体が係合する所定の部位も、一対で左右対称になって設けられており、
前記ヒンジ部構成体の所定の他の部位も、一対で左右対称になって設けられており、
前記上側帽体構成体の、前記ヒンジ部構成体が係合する所定の部位も、一対で左右対称になって設けられており、
前記下側帽体構成体には、係止部が設けられており、
前記上側帽体構成体には、被係止部が設けられており、
前記被係止部が前記係止部に係止されることで、前記下側帽体構成体と前記上側帽体構成体とで前記椀状の帽体が形成されている状態が維持されるように構成されており、
前記係止部は、一対で左右対称になって設けられており、
前記被係止部も、一対で左右対称になって設けられている請求項4に記載の保護帽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護帽に係り、特に、収納するときに畳むことができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般のヘルメット(保護帽)では、収納する際に嵩張り大きすぎて持ち運ぶのに不便であるといった不具合が生じる。この不具合を解消するため、上下方向に畳めるタイプ、または、左右方向に畳めるタイプのヘルメットなど、様々な折り畳みヘルメットが開発され、広く流通している。
【0003】
中でも、上下方向に畳めるタイプのものは、帽体に必要な強度を維持しやすく、保護帽の安全規格(飛来落下用、または墜落時保護用)を満足させることも可能である。上下方向に畳めるタイプとして、次に示すものが知られている。
【0004】
従来、帽体を2分割して、前頭部のヒンジを中心にして帽体上部が回動して帽体下部内に収納される保護帽が知られている(特許文献1参照)。また、帽体を3分割以上に分割して、前頭部の回転軸を中心にして帽体上部、複数の帽体中部が回動して帽体下部内に収納される保護帽が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2-122033号公報
【特許文献2】特許第5949666号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した上下方向に畳めるタイプのヘルメットは、帽体を2つに分割して形成された分割体(帽体構成体)同士を、回動軸で連結しているので、畳んだときの高さ寸法を小さくすることが難しい。また、上述した上下方向に畳めるタイプのヘルメットは、帽体を分割して形成された分割体(帽体構成体)同士を、複数の回動軸または複数の連結体などで連結する必要がある。これにより、構造が複雑になり、製造するのに工程が多くなってしまう。
【0007】
本発明は、畳んだときの高さ寸法を小さくすることができ、簡素な構成であり、製造工程を簡略にすることができる保護帽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る保護帽は、椀状の帽体の下側の部位を構成する下側帽体構成体と、前記椀状の帽体の上側の部位を構成する上側帽体構成体と、所定の部位で前記下側帽体構成体の所定の部位に回動自在に係合し、所定の他の部位で前記上側帽体構成体の所定の部位に回動自在に係合するヒンジ部構成体とを有し、前記下側帽体構成体と前記上側帽体構成体とで前記椀状の帽体が形成されている状態と、前記上側帽体構成体と前記ヒンジ部構成体とが前記下側帽体構成体内に収納されている状態との間で、前記下側帽体構成体に対して前記上側帽体構成体と前記ヒンジ部構成体とが移動するように構成されている保護帽である。
【0009】
本発明の態様に係る保護帽では、前記椀状の帽体の中央部を含み前記椀状の帽体の高さ方向に対して直交している平面で前記椀状の帽体を2つの部位に分割した態様で、前記下側帽体構成体と前記上側帽体構成体とが構成されており、前記ヒンジ部構成体が、前記下側帽体構成体の前端部で前記下側帽体構成体に係合しており、前記上側帽体構成体の前端部で前記上側帽体構成体に係合しているか、もしくは、前記ヒンジ部構成体が、前記下側帽体構成体の後端部で前記下側帽体構成体に係合しており、前記上側帽体構成体の後端部で前記上側帽体構成体に係合している。
【0010】
本発明の態様に係る保護帽では、前記椀状の帽体に、ヘッドバンドが設けられており、前記上側帽体構成体と前記ヒンジ部構成体とが前記ヘッドバンドに邪魔されることなく前記下側帽体構成体内に収納されるように構成されている。
【0011】
本発明の態様に係る保護帽では、前記ヒンジ部構成体の所定の部位が、前記ヒンジ部構成体の下端部に設けられており、前記下側帽体構成体の、前記ヒンジ部構成体が係合する所定の部位が、前後方向では下側帽体構成体の前端部に設けられており、上下方向では下側帽体構成体の上端部に設けられており、前記ヒンジ部構成体の所定の他の部位が、前記ヒンジ部構成体の上端部に設けられており、前記上側帽体構成体の、前記ヒンジ部構成体が係合する所定の部位が、前後方向では上側帽体構成体の前端部に設けられており、上下方向では上側帽体構成体の下端部に設けられており、前記上側帽体構成体と前記ヒンジ部構成体とが前記下側帽体構成体内に収納されている状態から前記下側帽体構成体と前記上側帽体構成体とで前記椀状の帽体が形成されている状態へ移行するときに、前記下側帽体構成体に対して、前記上側帽体構成体の後側の部位が下側になり前側の部位が上側になるように前記上側帽体構成体が傾き前記上側帽体構成体の一部が前記下側帽体構成体の下端から下側に突出し、この後、前記上側帽体構成体の他の一部が前記下側帽体構成体の上端から上側に突出するまで前記上側帽体構成体が上側に移動し、この後、前記上側帽体構成体の傾きを無くすことで前記椀状の帽体が形成されるように構成されている。
【0012】
本発明の態様に係る保護帽では、前記ヒンジ部構成体の所定の部位が、一対で左右対称になって設けられており、前記下側帽体構成体の、前記ヒンジ部構成体が係合する所定の部位も、一対で左右対称になって設けられており、前記ヒンジ部構成体の所定の他の部位も、一対で左右対称になって設けられており、前記上側帽体構成体の、前記ヒンジ部構成体が係合する所定の部位も、一対で左右対称になって設けられており、前記下側帽体構成体には、係止部が設けられており、
前記上側帽体構成体に、被係止部が設けられており、前記被係止部が前記係止部に係止されることで、前記下側帽体構成体と前記上側帽体構成体とで前記椀状の帽体が形成されている状態が維持されるように構成されており、前記係止部が、一対で左右対称になって設けられており、前記被係止部も、一対で左右対称になって設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、畳んだときの高さ寸法を小さくすることができ、簡素な構成であり、製造工程を簡略にすることができる保護帽を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る保護帽(使用状態の保護帽)の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る保護帽(使用状態の保護帽)の斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る保護帽(使用状態の保護帽)の斜視図である。
図4図1におけるIV矢視図である。
図5図1におけるV―V断面を示す図である。
図6図5に相当する図であって、本発明の第1の実施形態に係る保護帽(収納状態の保護帽)の断面である。
図7図5におけるVII部の拡大図である。
図8図5におけるVIII部の拡大図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る保護帽が収納状態から使用状態に移行するときの動作を示す図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る保護帽が収納状態から使用状態に移行するときの動作を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る保護帽が収納状態から使用状態に移行するときの動作を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る保護帽の被係止部、係止部を示す図であり、(b)は(a)におけるXIIB矢視図であり、(c)(d)は(a)に相当する図であって、被係止部、係止部の動作を示す図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係る保護帽の椀状の帽体を構成する下側帽体構成体の斜視図である。
図14図13におけるXIV矢視図である。
図15図13におけるXV矢視図である。
図16】本発明の第1の実施形態に係る保護帽の椀状の帽体を構成する上側帽体構成体の斜視図である。
図17】本発明の第1の実施形態に係る保護帽の椀状の帽体を構成する上側帽体構成体の斜視図である。
図18】本発明の第1の実施形態に係る保護帽の椀状の帽体を構成する上側帽体構成体の斜視図である。
図19図16におけるXIX矢視図である。
図20図16におけるXX矢視図である。
図21】本発明の第1の実施形態に係る保護帽のヒンジ部構成体の斜視図である。
図22】本発明の第1の実施形態に係る保護帽のヒンジ部構成体の斜視図である。
図23図21におけるXXIII矢視図である。
図24図21におけるXXIV矢視図である。
図25図21におけるXXV矢視図である。
図26図21におけるXXVI矢視図である。
図27】本発明の第2の実施形態に係る保護帽(使用状態の保護帽)の斜視図である。
図28】本発明の第2の実施形態に係る保護帽(使用状態の保護帽)の斜視図である。
図29】本発明の第2の実施形態に係る保護帽(使用状態の保護帽)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係る保護帽(ヘルメット;たとえば産業用ヘルメット)1は、図1図6で示すように、帽体3とハンモック5と衝撃吸収ライナー7とヘッドバンド9とヒンジ部構成体11を備えて構成されている。なお、図1等で現れている保護帽1の中心を示す線CL1は実物では現れないものとする。
【0016】
ここで、保護帽1における所定の一方向を左右方向とし、左右方向に対して直交する所定の一方向を前後方向とし、左右方向と前後方向とに対して直交する方向を上下方向(高さ方向)とする。左右方向、前後方向および上下方向は、保護帽を被った人からみたときの方向である。左右方向は、帽体の左端と右端とを互いにむすぶ方向であり、前後方向は、帽体の前端と後端とを互いにむすぶ方向である。上下方向は、帽体の下端の開口部の中央と帽体の頂上とを互いに結ぶ方向である。また、左右方向や前後方向はたとえば水平な方向になっている。
【0017】
帽体3は、剛体とみなせる剛性を備えた硬い合成樹脂等の材料で形成されており、所定の肉厚を備えて椀状に形成されている。
【0018】
帽体3は、椀状に形成されている。帽体3が椀状に形成されていることで、帽体3は概ね半球殻状に形成されている。帽体3が半球殻状に形成されていることで、帽体3の下端には、環状の開口部(概ね円形状の開口部)13が形成されている。
【0019】
半球殻状とは、所定の半径の第1の球から所定の半径の第2の球を除去することで形成される球殻状の立体を、所定の平面で分割したときに得られる2つの立体のうちの一方の立体の形状である。なお、第2の球の半径の値は、第1の球の半径の値よりも僅かに小さくなっており、第1の球の中心と第2の球の中心とはお互いが一致している。また、所定の平面は、第1の球の中心と第2の球の中心とを含んでいる。
【0020】
さらに、帽体3は、人の頭部の形状に応じた適宜の形状になっている。すなわち、帽体3は、完全な半球殻の形状に形成されているわけではなく、半球殻の形状に近い半球殻状になっている。
【0021】
帽体3は、下側帽体構成体(帽体下部)15と上側帽体構成体(帽体上部)17とを備えて構成されている。下側帽体構成体15は、帽体3の下側の部位を構成しており、上側帽体構成体17は、帽体の上側の部位を構成している。なお、下側帽体構成体15には、バイザー27が設けられている。バイザー27は、帽体3の開口部13の前端の部位から前側に突出している。
【0022】
ヒンジ部構成体11は、所定の部位(下側帽体構成体係合部位)19で下側帽体構成体15の所定の部位(第1のヒンジ部構成体係合部位)21に回動自在に係合している。また、ヒンジ部構成体11は、所定の他の部位(上側帽体構成体係合部位)23で上側帽体構成体17の所定の部位(第2のヒンジ部構成体係合部位)25に回動自在に係合している。
【0023】
下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とがヒンジ部構成体11を介し係合していることで、使用状態(帽体形成状態)と収納状態との間で下側帽体構成体15に対して上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とが移動するように構成されている。
【0024】
使用状態とは、図1図5等で示すように、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とで椀状の帽体3が形成されている状態である。収納状態とは、図6で示すように、上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とが下側帽体構成体15内に収納されている状態である。上述した上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11との移動は、平行移動だけでなく、姿勢が変化する回動も含む。
【0025】
ヒンジ部構成体11は、図1等で示すように、使用状態では帽体3の外側の凸状の面から特に突出していない。すなわち、使用状態では、保護帽1の外観は、ヒンジ部構成体11が存在していないように見える。
【0026】
また、使用状態、収納状態、使用状態と収納状態との間の状態(移行している途中の状態)であっても、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とは係合し続けている。すなわち、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とが離れ離れになることが無いようになっている。
【0027】
下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とは、椀状の帽体3の中央部を含み椀状の帽体3の高さ方向に対して直交している平面で椀状の帽体3を2つの部位に分割した態様で形成されている。
【0028】
すなわち、下側帽体構成体15は、椀状の帽体3を所定の平面で分割したときに、椀状の帽体3の下側の部位からなるものである。上側帽体構成体17は、椀状の帽体3を上記所定の平面で分割したときに、椀状の帽体3の上側の部位からなるものである。上記所定の平面は、上下方向に対して直交している平面(水平方向に展開している平面)である。また、上記所定の平面は、上下方向では、椀状の帽体3の中央部(中心もしくは中心の近傍)に位置している。
【0029】
これにより、下側帽体構成体15は、球帯状(球帯の曲面部のような形状)になっており、上側帽体構成体17は、球冠状(球冠の曲面部のような形状)になっている。また、下側帽体構成体15の高さ寸法の値は、椀状の帽体3の高さ寸法の1/2の値よりも僅かに大きくなっている。たとえば、下側帽体構成体15の高さ寸法の値は、椀状の帽体3の高さ寸法の値の50.1%~60%(好ましくは51%~55%、より好ましくは51%~53%、さらに好ましくは51.5%~52.5%、さらに好ましくは52%)程度になっている。
【0030】
ヒンジ部構成体11は、下側帽体構成体15の前端部で下側帽体構成体15に係合しており、上側帽体構成体17の前端部で上側帽体構成体17に係合している。なお、ヒンジ部構成体11が、下側帽体構成体15の後端部で下側帽体構成体15に係合しており、上側帽体構成体17の後端部で上側帽体構成体17に係合している構成であってもよい。
【0031】
帽体3が使用状態から収納状態に移行するとき、また、収納状態から使用状態に移行するとき、ヒンジ部構成体11は、下側帽体構成体15に対して左右方向に延びている所定の軸まわりで回動するようになっている。
【0032】
帽体3が使用状態から収納状態に移行するとき、また、収納状態から使用状態に移行するとき、上側帽体構成体17は、ヒンジ部構成体11に対して左右方向に延びている所定の軸まわりで回動するようになっている。
【0033】
また、帽体3が使用状態から収納状態に移行するとき、また、収納状態から使用状態に移行するとき、上側帽体構成体17は、下側帽体構成体15に対して左右方向に延びている所定の軸まわりで回動(回転)するようになっている。さらに、帽体3が使用状態から収納状態に移行するとき、また、収納状態から使用状態に移行するとき、上側帽体構成体17は、上記回動とともに、下側帽体構成体15に対して前後方向および上下方向で平行移動するようになっている。
【0034】
収納状態を左右方向、前後方向で見ると、下側帽体構成体15だけが見え、下側帽体構成体15の内側に収まっている上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とは見えないようになっている。
【0035】
椀状の帽体3の内側には、ハンモック5とヘッドバンド9と衝撃吸収ライナー7とが設けられており、ヘッドバンド9は、下側帽体構成体15で支持され、下側帽体構成体15内で下側帽体構成体15に設けられている。また、帽体3(下側帽体構成体15)の内面であって開口部13の近傍の部位には、顎紐(図示せず)の端部が固定されている。
【0036】
そして、保護帽1では、上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とがハンモック5と衝撃吸収ライナー7とヘッドバンド9と上記顎紐とに邪魔されることなく下側帽体構成体15内に収納されるように構成されている。
【0037】
収納状態では、上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とヘッドバンド9とに加えて、ハンモック5、衝撃吸収ライナー7および上記顎紐も、下側帽体構成体15内に収まるように構成されている。
【0038】
すなわち、収納状態を左右方向、前後方向で見ると、下側帽体構成体15だけが見え、下側帽体構成体15の内側にある上側帽体構成体17、ヒンジ部構成体11、衝撃吸収ライナー7、ヘッドバンド9等が見えないようになっている。収納状態を左右方向、前後方向で見たとき、ヘッドバンド9の一部と上記顎紐の一部とは、下側帽体構成体15から飛び出てしまうが、ヘッドバンド9および上記顎紐は、僅かな力を加えるだけで容易に変形するようになっている。したがって、収納状態になっている保護帽1を鞄等に入れたとき、ヘッドバンド9と上記顎紐とが容易に変形し、下側帽体構成体15内に収まる。
【0039】
なお、ハンモック5および衝撃吸収ライナー7は、上側帽体構成体17内で上側帽体構成体17に設けられている。そして、上側帽体構成体17を左右方向、前後方向で見ると、上側帽体構成体17だけが見え、上側帽体構成体17の内側にあるハンモック5および衝撃吸収ライナー7が見えないようになっている。
【0040】
ヒンジ部構成体11の下側帽体構成体係合部位19は、ヒンジ部構成体11の下端部に設けられている。下側帽体構成体15の、ヒンジ部構成体11が係合する第1のヒンジ部構成体係合部位21は、前後方向では下側帽体構成体15の前端部に設けられており、上下方向では下側帽体構成体15の上端部に設けられている。
【0041】
ヒンジ部構成体11の上側帽体構成体係合部位23は、ヒンジ部構成体11の上端部に設けられている。上側帽体構成体17の、ヒンジ部構成体11が係合する第2のヒンジ部構成体係合部位25は、前後方向では上側帽体構成体17の前端部に設けられており、上下方向では上側帽体構成体17の下端部に設けられている。
【0042】
そして、収納状態から使用状態へ移行するときには、図9等で示すように、下側帽体構成体15に対して、上側帽体構成体17が傾き上側帽体構成体17の一部(後下側の部位)が下側帽体構成体15の下端から下側に突出するようになっている。上側帽体構成体17が傾いている状態では、上側帽体構成体17の後側の部位が下側になり前側の部位が上側になっている。
【0043】
この後、上側帽体構成体17の他の一部(前上側の部位)が下側帽体構成体15の上端から上側に突出するまで上側帽体構成体17が上側に移動するようになっている(図11等参照)。この後、上側帽体構成体17の傾きを無くすことで椀状の帽体3が形成されるように構成されている(図5等参照)。
【0044】
使用状態から収納状態へ移行するときは、収納状態から使用状態へ移行するときとは逆の動作をするようになっている。すなわち、下側帽体構成体15に対して、上側帽体構成体17が傾き上側帽体構成体17の一部(前上側の部位)が下側帽体構成体15の上端から上側に突出し上側帽体構成体17の残りの部位が下側帽体構成体15内に入るようになっている。
【0045】
この後、上側帽体構成体17の一部(後下側の部位)が下側帽体構成体15の下端から下側に突出するまで上側帽体構成体17が下側に移動するようになっている。この後、上側帽体構成体17の傾きを無くすことで上側帽体構成体17が下側帽体構成体15内に収納されているように構成されている。
【0046】
図13図21等で示すように、ヒンジ部構成体11の下側帽体構成体係合部位19は、一対で左右対称になって設けられている。下側帽体構成体15の、ヒンジ部構成体11が係合する第1のヒンジ部構成体係合部位21も、一対で左右対称になって設けられている。図16図21等で示すように、ヒンジ部構成体11の上側帽体構成体係合部位23も、一対で左右対称になって設けられている。上側帽体構成体17の、ヒンジ部構成体11が係合する第2のヒンジ部構成体係合部位25も、一対で左右対称になって設けられている。
【0047】
図1等で示すように、下側帽体構成体15には、係止部29が設けられており、上側帽体構成体17には、被係止部31が設けられている。そして、被係止部31が係止部29に係止されることで、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とで椀状の帽体3が形成されている状態が維持されるように構成されている。
【0048】
ここで、保護帽1についてさらに詳しい説明する。保護帽1は左右対称に形成されている。図13図14等で示すように、下側帽体構成体15の第1のヒンジ部構成体係合部位21は、前後方向では下側帽体構成体15の前端部に設けられている。第1のヒンジ部構成体係合部位21は、上下方向では下側帽体構成体15の上端部に設けられている。第1のヒンジ部構成体係合部位21は、左右方向では、所定の寸法をもっており、左右対称になっている。
【0049】
また、第1のヒンジ部構成体係合部位21は、小さな一対の突起33を備えて構成されている。突起33は、平板状部35と背の低い円柱状部37とを備えて構成されている。平板状部35は、厚さ方向が左右方向になっている。円柱状部37はこの高さ方向が左右方向になっており、平板状部35の厚さ方向の一方の面から突出している。
【0050】
一対の突起33は、左右方向を所定の距離だけ離れている。また、一対の突起33のそれぞれに設けられている円柱状部37は、一対の突起33のそれぞれから外側に突出している。すなわち、一対の突起33のうちの一方の突起33の円柱状部37は、一対の突起33のうちの他方の突起33とは反対側の面から突出している。また、一対の突起33のうちの他方の突起33の円柱状部37は、一対の突起33のうちの一方の突起33とは反対側の面から突出している。
【0051】
また、図13図14図15図8等で示すように、下側帽体構成体15には、リブ(下側帽体構成体リブ)39が設けられている。下側帽体構成体リブ39は、所定の厚さ(下側帽体構成体15の殻の厚さとほぼ同じ厚さ)で、所定の僅かな幅をもって、一部が切り欠かれている環状(上下方向で見て「C」字状もしくは「U」字状)に形成されている。
【0052】
下側帽体構成体リブ39は、厚さ方向が上下方向になっている。下側帽体構成体リブ39は、下側帽体構成体15の上端の開口部13の縁から下側帽体構成体15の中央側に突出している。この突出方向が下側帽体構成体リブ39の幅方向になっている。
【0053】
また、下側帽体構成体リブ39は、下側帽体構成体15の、第1のヒンジ部構成体係合部位21が設けられているところ以外の部位に設けられていることで、上述したように、上下方向で見て「C」字状もしくは「U」字状に形成されている。
【0054】
図1図3等で示すように、下側帽体構成体15の係止部29は、1つだけ設けられている。係止部29は、上下方向では下側帽体構成体15の上端部に設けられており、前後方向では後端部に設けられており、左右方向では中央部に設けられている。
【0055】
図12図13で示すように、係止部29は、凹部41とアーム部43とを備えて構成されている。アーム部43は、アーム部本体部45と係止爪47とを備えて構成されている。係止爪47には傾斜面49と係止面51とが形成されている。
【0056】
凹部41は、矩形な平板状に形成されており、厚さ方向が概ね前後方向になっており、下側帽体構成体15の後端の面から前側に凹んでいる。また、凹部41の底壁55には矩形な貫通孔53が設けられている。貫通孔53は、上下方向では底壁55の上端部に設けられており、左右方向では底壁55の中央部に設けられている。
【0057】
アーム部本体部45は、凹部41と同様な矩形な平板状に形成されている。アーム部本体部45は厚さ方向が概ね前後方向になり、凹部41をちょうど埋めるようにして、下側帽体構成体15に設けられている。アーム部本体部45の下端は、下側帽体構成体15に固定されている。これにより、アーム部本体部45は片持ち梁の態様で撓むようになっている。
【0058】
係止爪47は、四角柱に傾斜面49を設けた形状になっており、アーム部本体部45の前側の面から前側に突出している。係止爪47は、上下方向ではアーム部本体部45の上端部に設けられており、左右方向ではアーム部本体部45の中央部に設けられている。
【0059】
そして、収納状態から使用状態にするとき、図12(d)で示すように、上側帽体構成体17を下側帽体構成体15に対して上側に移動する。すると、図12(c)で示すように、上側帽体構成体17の上側帽体構成体リブ57がアーム部43の係止爪47の傾斜面49に当接してアーム部本体部45が後側に弾性変形するようになっている。
【0060】
上側帽体構成体17を下側帽体構成体15に対してさらに上側に移動すると、上側帽体構成体17がアーム部43の係止爪47を乗り越えて、図12(a)で示すように、アーム部本体部45が復元する。そして、係止爪47が貫通孔53に入り込み、係止爪47の係止面51に上側帽体構成体17の上側帽体構成体リブ57の下面が当接するとともに、下側帽体構成体リブ39の下面が上側帽体構成体リブ57の上面に当接するようになっている。そして、下側帽体構成体リブ39と係止爪47とで上側帽体構成体リブ57が挟み込まれ、上側帽体構成体17の被係止部31が下側帽体構成体15の係止部29に係止されるようになっている。
【0061】
なお、上側帽体構成体リブ57の一部は、上側帽体構成体17の被係止部31を構成するものである。上側帽体構成体リブ57の詳細については後述する。
【0062】
図16から図20で示すように、上側帽体構成体17の第2のヒンジ部構成体係合部位25は、前後方向では上側帽体構成体17の前端部に設けられている。第2のヒンジ部構成体係合部位25は、上下方向では上側帽体構成体17の上端部に設けられており、左右方向では上側帽体構成体17の中央部に設けられている。第2のヒンジ部構成体係合部位25は、左右対称に形成されており、一対の凹部59を備えて構成されている。凹部59は、上側帽体構成体17の外面から上側帽体構成体17の内側に凹んでいる。また、一対の凹部59は、左右方向で互いが所定の距離だけ離れている。上側帽体構成体17の凹部59が形成されている部位は、上側帽体構成体17の凹部59が形成されていない部位と同様に、所定の肉厚になっている。
【0063】
凹部59の表面の一部は、左右方向に対して直交する平面61になっている。平面61のそれぞれには、円柱状の貫通孔63が形成されている。
【0064】
また、第2のヒンジ部構成体係合部位25は、凹部60を備えて構成されている。凹部60は、上下方向では上側帽体構成体17の下端部に設けられており、前後方向では上側帽体構成体17の前端部に設けられており、左右方向では、一方の凹部59から他方の凹部59にわたって設けられている。
【0065】
図16から図20で示すように、上側帽体構成体17には、リブ(上側帽体構成体リブ)57が設けられている。上側帽体構成体リブ57は、所定の厚さ(上側帽体構成体17の殻の厚さとほぼ同じ厚さ)で、所定の僅かな幅をもって、一部が切り欠かれている環状(上下方向で見て「C」字状もしくは「U」字状)に形成されている。上側帽体構成体リブ57は、厚さ方向が上下方向になっている。上側帽体構成体リブ57は、上側帽体構成体17の下端の開口部の縁から上側帽体構成体17の外側に突出している。この突出方向が上側帽体構成体リブ57の幅方向になっている。
【0066】
また、上側帽体構成体リブ57は、上側帽体構成体17の、第2のヒンジ部構成体係合部位25が設けられているところ以外の部位に設けられていることで、上述したように、上下方向で見て「C」字状もしくは「U」字状に形成されている。
【0067】
ヒンジ部構成体11は、図21から図26で示すように、一対のヒンジ本体部65と、この一対のヒンジ本体部65をつないでいる連結部67とを備えて、左右対称に形成されている。一対のヒンジ本体部65は、左右方向で互いが所定の距離だけ離れている。ヒンジ本体部65は、左右方向の寸法の値が最も大きく、ついで、上下方向の寸法の値が大きく、前後方向の寸法の値が最も小さい板状に形成されている。
【0068】
連結部67は、前後方向では一対のヒンジ本体部65の前端部に設けられている。連結部67は、上下方向では、一対のヒンジ本体部65の中間部に設けられており、左右方向では一対のヒンジ本体部65のうちの一方のヒンジ本体部65から他方のヒンジ本体部65まで左右方向に延びている。
【0069】
また、ヒンジ部構成体11には、円柱状の貫通孔69と、円柱状の突起71とが設けられている。貫通孔69は、ヒンジ本体部65の下端部(連結部67よりも下側の部位)で、一対のヒンジ本体部65のそれぞれに設けられており、左右方向で、ヒンジ本体部65を貫通している。
【0070】
突起71は、ヒンジ本体部65の上端部(連結部67よりも上側の部位)で、一対のヒンジ本体部65のそれぞれに設けられている。一対の突起71のそれぞれは、ヒンジ本体部65のそれぞれから内側に突出している。すなわち、一対のヒンジ本体部65のうちの一方のヒンジ本体部65から突出している突起71は、一対のヒンジ本体部65のうちの他方のヒンジ本体部65側に突出している。また、一対のヒンジ本体部65のうちの他方のヒンジ本体部65から突出している突起71は、一対のヒンジ本体部65のうちの一方のヒンジ本体部65側に突出している。
【0071】
下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とにヒンジ部構成体11が設置されている状態では、一対のヒンジ本体部65それぞれの下端部が、一対の平板状部35それぞれに接触し一対の平板状部35を左右方向で挟み込んでいる(図3等参照)。また、一対の円柱状部37のそれぞれが、一対の貫通孔69のそれぞれに挿入されている。これにより、左右方向に延びており円柱状部37および貫通孔69の中心軸を含む軸まわりで下側帽体構成体15に対してヒンジ部構成体11が回動のみするようになっている。
【0072】
また、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とにヒンジ部構成体11が設置されている状態では、一対のヒンジ本体部65それぞれの上端部が、一対の平面61のそれぞれに接触している(図1用参照)。そして、上側帽体構成体17の、一対の平面61の間にある部位を挟み込んでいる。これにより、左右方向に延びており突起71および貫通孔63の中心軸を含む軸まわりでヒンジ部構成体11に対して下側帽体構成体15が回動のみするようになっている。
【0073】
保護帽1が使用状態にあるときには、図1図3図5等で示すように、ヒンジ部構成体11の連結部67よりも下側の部位が、下側帽体構成体15内に収まっている。また、ヒンジ部構成体11の連結部67を含む連結部67よりも上の部位が、上側帽体構成体17の凹部59、60内にちょうど嵌まり込んだ態様で収まっている。
【0074】
これにより、ヒンジ部構成体11は使用状態では帽体3の外側の凸状の面から特に突出していないことになる。すなわち、使用状態では、保護帽1の外観で、ヒンジ部構成体11が存在していないような形態になっている。
【0075】
保護帽1が使用状態にあるときには、図5図7で示すように、ヒンジ部構成体11のヒンジ本体部65の長手方向が概ね上下方向になっている。また、図12(a)で示すように、上側帽体構成体17の上側帽体構成体リブ57の後端部が、上下方向で係止爪47と下側帽体構成体リブ39とで挟み込まれている。さらに、図8で示すように、上側帽体構成体17の上側帽体構成体リブ57の後端面73が、下側帽体構成体15に設けられている衝撃吸収ライナー7のやや硬質の摩擦低減材で構成されている壁部75に当接している。なお、図8では、係止部29の表示が省略されている。そこで、図8を、下側帽体構成体15や上側帽体構成体17の真後ろの断面ではなく、真後ろから右側もしくは左側にややずれたところの断面と解釈してもよい。
【0076】
これにより、保護帽1が使用状態にあるとき、下側帽体構成体15に上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とが固定され、下側帽体構成体15に対して上側帽体構成体17が移動できないようになっている。
【0077】
図6で示すように、保護帽1が収納状態にあるとき、上側帽体構成体17が下側帽体構成体15内に入っている状態が、次に示す理由により、概ね維持されるようになっている。
【0078】
下側帽体構成体15に対する上側帽体構成体17の上側への移動は、図6で示すように、ヒンジ部構成体11のヒンジ本体部65が概ね上下方向に延びていることでしにくくなっている。下側帽体構成体15に対する上側帽体構成体17の下側への移動は、図6で示すように、上側帽体構成体17がヘッドバンド9の干渉を受けることでしにくくなっている。また、上側帽体構成体17の後部を衝撃吸収ライナー7Bの凹部79に接触させ、上側帽体構成体17の前部をヘッドバンド9に接触させることで、上側帽体構成体17の前後方向での動きをある程度抑制することができる。
【0079】
なお、実開平2-122033号公報に記載の保護帽では、収納時に帽体上部を止める機能がないため、帽体上部を収納する際に回転しすぎてヒンジが壊れるおそれがある。
【0080】
衝撃吸収ライナー7は、図3図5等で示すように、上側帽体構成体17と下側帽体構成体15との両方に設けられている。上側帽体構成体17に設けられている衝撃吸収ライナー7(7A)は、たとえば発泡スチロールで所定の厚さの椀状に形成されており、上側帽体構成体17の凹状の内面の総てを覆うようにして上側帽体構成体17に設置されている。
【0081】
下側帽体構成体15に設けられている衝撃吸収ライナー7(7B)は、たとえば発泡スチロールで形成されている部位77と、摩擦低減材で構成されている壁部75とを備えて構成されている。壁部75は所定の厚さを備え、部位77を覆っている。すなわち、部位77は、下側帽体構成体15と壁部75とで囲まれて空間内に配置されている。
【0082】
衝撃吸収ライナー7(7B)は、前後方向では下側帽体構成体15の凹状の内面の後端部にたとえば係止部29を避けて設けられている。衝撃吸収ライナー7(7B)は、上下方向では、下側帽体構成体15の全体にわたって設けられている。衝撃吸収ライナー7(7B)は、左右方向では所定の幅で下側帽体構成体15の後端部に設けられている。
【0083】
衝撃吸収ライナー7(7B)の下端部には、壁部75が後側に凹んだことで形成されている凹部79が形成されている。凹部79は、上側帽体構成体17の外面の一部の形状(凹状の曲面)と同じような形状になっている。
【0084】
ハンモック5は、たとえば、ある程度伸縮する合成樹脂で構成されており、図2等で示すように、環状の中央部81とこの中央部81から放射状に延びている複数本(たとえば4本)の脚部83とを備えて構成されている。脚部83の先端部のそれぞれが、上側帽体構成体17の開口部の縁の近傍で上側帽体構成体17に固定されている。また、ハンモック5は、衝撃吸収ライナー7(7A)から僅かに離れているが、ハンモック5が衝撃吸収ライナー7(7A)に接触していてもよい。ヘッドバンド9は環状に形成されており、下側帽体構成体15内で下側帽体構成体15に設置されている。
【0085】
次に、保護帽1を使用状態から収納状態にするときの動作について説明する。
【0086】
まず、図6で示す収納状態で上側帽体構成体17を上側に押す(図6の矢印参照)。すると、図9で示すように、ヒンジ部構成体11が約30°(図6で示す状態から反時計まわりに30°)回転した状態になる。図9で示す状態で上側帽体構成体17をさらに上側に押す。
【0087】
すると、図10で示すように、ヒンジ部構成体11が約60°(図6で示す状態から反時計まわりに60°)回転した状態になる。図10で示す状態で、上側帽体構成体17をさらに上側に押す。すると、図11で示すように、ヒンジ部構成体11が約90°(図6で示す状態から反時計まわりに90°)回転した状態になる。
【0088】
図11で示す状態で、上側帽体構成体17をさらに上側に押す。すると、図5で示すように、ヒンジ部構成体11が約120°(図6で示す状態から反時計まわりに120°)回転した状態になり、図1図4図5で示す使用状態になる。
【0089】
なお、図9図10で示す状態では、上側帽体構成体17が斜めに傾いて上側帽体構成体17の後側の部位が下側帽体構成体15の下端よりも下側に突出している。また、図9図10で示す状態では、上側帽体構成体17の凸状の外面の一部(側の部位)が衝撃吸収ライナー7(7B)の壁部75に設けられている凹部79に接して、上側帽体構成体17がある程度ガイドされて動くようになっている。
【0090】
図9図10で示すように、上側帽体構成体17の後側の部位が下側帽体構成体15の下端から突出していることで、次のように利点がある。収納状態のときに(帽体収納時に)バッグ内に入れる。すると、下側帽体構成体15の下端に他の収納物が接触するため、上側帽体構成体17の後部が突出すると、他の収納物に接触し、帽体3が勝手に組立てられるという動作を抑制することができる。すなわち、収納状態を維持することができる。
【0091】
なお、帽体の前後長さをさらに長くすることで、上側帽体構成体17の後側の部位の突出を避けることは可能だが、保護帽1の装着時に不必要な帽体3の前後長さになる。最低限の帽体サイズを確保して、上側帽体構成体17の収納を考慮した場合、上側帽体構成体17の後部の突出を許した方がよい。
【0092】
保護帽1を使用状態から収納状態するときの動作は、上述した収納状態から使用状態にするときの動作とは逆の動作になる。なお、収納状態から使用状態にするときには、上側帽体構成体17の上側に移動するだけで上側帽体構成体17の被係止部31が下側帽体構成体15の係止部29に係止される。しかし、使用状態からに収納状態するときには、係止部29による被係止部31の係止を解除しなければならない。
【0093】
すなわち、図12(a)で示す状態からアーム部本体部45を後側に撓ませておき、上側帽体構成体17の後側の部位を下側に押し、上側帽体構成体リブ57を、図12(c)(d)で示すように、係止爪47による係止から解放する必要がある。
【0094】
保護帽1は、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とを備えて構成されている。そして、使用状態と収納状態との間で、ヒンジ部構成体11のみを間にして下側帽体構成体15に対して上側帽体構成体17が移動するように構成されている。これにより、保護帽1の構成が簡素になっており、製造工程を簡略にすることができる。また、使用状態から収納状態にするときの操作、収納状態から使用状態にするときの操作を簡易な操作にすることができる。さらに、畳んだときの高さ寸法を小さくすることができる。
【0095】
なお、特許第5949666号に記載の保護帽では、帽体を3分割以上にしているので、収納高さ(収納状態での高さ寸法)を減らすことができる半面、部品点数が多くなるため、組立工数や価格が上昇するおそれがある。
【0096】
また、保護帽1では、椀状の帽体3の中央部を含み椀状の帽体3の高さ方向に対して直交している平面で椀状の帽体3を2つの部位に分割した態様で、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とが構成されている。そして、下側帽体構成体15および上側帽体構成体17とは別体になっているヒンジ部構成体11が、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とに回動自在係合している。
【0097】
これにより、下側帽体構成体15に対する上側帽体構成体17の移動の自由度が、下側帽体構成体15に上側帽体構成体17が直接係合している態様に比べて高くなっており、収納状態における高さ寸法の値が大きくなることをさらに押さえることができる。そして、収納状態でビジネスバッグに収納することができる。
【0098】
なお、実開平2-122033号公報に記載の保護帽では、収納高さ(収納状態における高さ寸法の値)が組立時の高さ(使用状態における高さ寸法の値)の71%程度になると推測できる。しかし、この程度では、高さ寸法の値がまだまだ大きく、高さ寸法の値が大きくなることを十分に押さえることができない。また、特許第5949666号に記載の保護帽では、帽体を3分割以上にすることで収納高さが組立時(使用時)の高さに対して56%程度の高さになると推測できる。これでも、高さ寸法の値が大きくなることを十分に押さえることができない。
【0099】
また、保護帽1では、椀状の帽体3にヘッドバンド9が設けられているが、上側帽体構成体17とヒンジ部構成体11とがヘッドバンド9で邪魔されることなく下側帽体構成体15内に収納されるように構成されている。これより、保護帽1に必要なヘッドバンド9を備えた構成でも、収納状態にすることができる。
【0100】
なお、実開平2-122033号公報に保護帽では、ヘッドバンド等内装の詳細が記載されていないが、実開平2-122033号公報の図に基づいて推測すると、帽体上部を収納する際、ヘッドバンドが帽体上部の前部に接触するおそれがある。
【0101】
また、保護帽1では、ヒンジ部構成体11が下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とに上述した適宜箇所で係合している。また、保護帽1は、収納状態から使用状態へ移行するときに、下側帽体構成体15に対して上側帽体構成体17が斜めになって移動等する構成になっている。これにより、収納状態における高さ寸法の値を無理せずに確実に小さくすることができる。
【0102】
また、保護帽1では、被係止部31が係止部29に係止されることで、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とで椀状の帽体3が形成されている状態が維持されるようになっている。これにより、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とを互いに固定することができる。なお、特許第5949666号に記載の保護帽では、複数の帽体構成体同士を固定するロックが多数必要になるため、組立・収納動作がわずらわしい。また、ロックしているのかをチェックする場合、ロックが多数あるとわずらわしい。
【0103】
なお、保護帽1において、ヒンジ部構成体11が下側帽体構成体15および上側帽体構成体17の後端部に設けられる態様では、係止部29および被係止部31は、下側帽体構成体15および上側帽体構成体17の前端部に設けられる。
【0104】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る保護帽1aは、係止部29、被係止部31の形態が、本発明の第1の実施形態に係る保護帽1と異なり、その他の点は保護帽1と同様に構成されており、保護帽1と同様に変形可能になっている。
【0105】
すなわち、本発明の第2の実施形態に係る保護帽1aは、図27から図29で示すように、ヒンジ部構成体11の下側帽体構成体係合部位19が、一対で左右対称になって設けられている。下側帽体構成体15の、ヒンジ部構成体11が係合する第1のヒンジ部構成体係合部位21も、一対で左右対称になって設けられている。ヒンジ部構成体11の所定の上側帽体構成体係合部位23も、一対で左右対称になって設けられている。上側帽体構成体17の、ヒンジ部構成体11が係合する第2のヒンジ部構成体係合部位25も、一対で左右対称になって設けられている。
【0106】
下側帽体構成体15には、係止部29が設けられており、上側帽体構成体17には、被係止部31が設けられている。そして、被係止部31が係止部29に係止されることで、下側帽体構成体15と上側帽体構成体17とで椀状の帽体3が形成されている状態が維持されるように構成されている。係止部29は、一対で左右対称になって設けられている。すなわち、一対の係止部29のうちの一方の係止部29は、下側帽体構成体15の左後端部に設けられており、一対の係止部29のうちの他方の係止部29は、下側帽体構成体15の右後端部に設けられている。また、被係止部31も、一対で左右対称になって設けられている。すなわち、一対の被係止部31のうちの一方の被係止部31は、上側帽体構成体17の左後端部に設けられており、一対の被係止部31のうちの他方の被係止部31は、上側帽体構成体17の右後端部に設けられている。
【0107】
保護帽1aでは、下側帽体構成体係合部位19、上側帽体構成体係合部位23、第1のヒンジ部構成体係合部位21および第2のヒンジ部構成体係合部位25が一対で左右対称になって設けられている。また、保護帽1aでは、係止部29および被係止部31が、一対で左右対称になって設けられている。これにより、衝撃吸収ライナー7が設置できる領域を確保することができ、後頭部の衝撃試験をクリアし、前頭部の衝撃試験もクリアすることができる。
【0108】
なお、実開平2-122033号公報に記載の保護帽では、後頭部の中央付近にロックがあると、衝撃吸収ライナーが設置できる範囲が少なくなり、後頭部の衝撃試験をクリアできないおそれがある。また、特許第5949666号に記載の保護帽でも、後頭部の中央付近にロックがあると、衝撃吸収ライナーが設置できる範囲が少なくなり、後頭部の衝撃試験をクリアできないおそれがあるため、内装等で衝撃を吸収する構造が必要になる。
【0109】
ところで、保護帽の規格には、「物体の飛来又は落下による危険を防止するための保護帽」と「墜落による危険を防止するための保護帽」の2つについて規格が定められている。特に、「墜落による危険を防止するための保護帽」については、以下の「 」内の内容が記載されている。
【0110】
「保護帽について、高温処理等をした後、それぞれ、中心線が水平に対し30°傾斜している人頭模型に衝撃点が保護帽の前頭部および後頭部になるように装着し、重さ5kgの平面形ストライカ(日本産業規格G3101(一般構造用圧延材)に定めるSS400の規格に適合する鋼材を材料とし、かつ、直径127mmの衝撃面を有するものに限る。)を1mの高さから自由落下させる。」
【0111】
保護帽の前頭部と後頭部に平面形ストライカを衝突させることになる。ここで、保護帽の衝撃面にロック(係止部29、被係止部31)やヒンジ(ヒンジ部構成体11の貫通孔69、突起71)があると、部品が破壊されたり、帽体の固定が解除されたり、衝撃試験をクリアすることができないおそれがある。
【0112】
保護帽1aでは、ヒンジ部構成体11の貫通孔69、突起71を左側や右側に移して左右対称にして一対で設けてあるので、上述した保護帽の規格を満たすことができる。
【0113】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 保護帽
3 帽体
9 ヘッドバンド
11 ヒンジ部構成体
15 下側帽体構成体
17 上側帽体構成体
19 ヒンジ部構成体の所定の部位(下側帽体構成体係合部位)
21 下側帽体構成体の所定の部位(第1のヒンジ部構成体係合部位)
23 ヒンジ部構成体の所定の他の部位(上側帽体構成体係合部位)
25 上側帽体構成体の所定の部位(第2のヒンジ部構成体係合部位)
29 係止部
31 被係止部
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