(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028538
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】ロボット制御装置、位置算出方法及びそれに用いられるセンサ装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20250221BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133409
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】北野 豊和
(72)【発明者】
【氏名】土方 優明
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707BS15
3C707ES17
3C707KS36
3C707KV11
3C707NS13
(57)【要約】
【課題】ロボットに保持されているセンサの傾きを考慮して、当該センサによって検知される対象の位置を適切に算出可能なロボット制御装置、位置算出方法及びそれに用いられるセンサ装置を提供することである。
【解決手段】ロボット制御装置100は、ロボット制御手段110によってロボット10を動作させることにより、ロボット10に保持されている対象用センサ21,22によって対象Eを検知する第1検知手段120と、ロボット10に保持されている複数のセンサ21,21A,21B,22,22A,22Bで構成されるセンサ群によって対象Eが含まれている平面Fを検知する第2検知手段130と、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面Fまでの各距離、及び対象用センサ21,22とセンサ群との位置情報に基づいて、対象用センサ21,22によって検知された対象Eの位置を算出する対象位置算出手段140と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの動作を制御するロボット制御装置であって、
前記ロボットを動作させるロボット制御手段と、
前記ロボット制御手段によって前記ロボットを動作させることにより、前記ロボットに保持されている対象用センサによって対象を検知する第1検知手段と、
前記ロボット制御手段によって前記ロボットを動作させることにより、前記ロボットに保持されている複数のセンサで構成されるセンサ群によって前記対象が含まれている平面を検知する第2検知手段と、
前記センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された前記平面までの各距離、及び前記対象用センサと前記センサ群との位置情報に基づいて、前記対象用センサによって検知された対象の位置を算出する対象位置算出手段と、を備える、
ロボット制御装置。
【請求項2】
前記対象位置算出手段は、
前記対象用センサによって検知された対象の検知位置を算出する検知位置算出手段と、
前記センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された前記平面までの各距離と、前記センサ群における複数のセンサ間の各距離とに基づいて、前記平面に対する前記対象用センサの傾きを算出する傾き算出手段と、
前記対象用センサの傾きに基づいて、前記対象の検知位置を補正する補正手段と、を含む、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記対象用センサ及び前記センサ群における複数のセンサは、同一平面上に配置されている、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記センサ群は、第1センサと、当該第1センサに対応する第2センサとで構成される一対のセンサグループを2つ含む、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記2つの一対のセンサグループは、互いに直交するように配置される、
請求項4に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記対象用センサは、前記センサ群における複数のセンサのうちの1つのセンサとして機能する、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項7】
前記対象用センサは、少なくとも第1対象用センサ及び第2対象用センサとして設けられ、
前記センサ群は、前記第1対象用センサ及び前記第2対象用センサのそれぞれに対応するように少なくとも第1センサ群及び第2センサ群として設けられる、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項8】
前記第1センサ群における複数のセンサと前記第1対象用センサとの各距離は、前記第1センサ群における複数のセンサ及び前記第1対象用センサのうちいずれかと最も近い前記第2センサ群における複数のセンサ及び前記第2対象用センサのうちいずれかとの距離よりも小さい、
請求項7に記載のロボット制御装置。
【請求項9】
前記対象用センサ及び前記センサ群における複数のセンサは、前記ロボットに保持されるセンサ装置に設けられる、
請求項1~8のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項10】
ロボットの動作を制御するロボット制御装置が実行する対象の位置を算出する位置算出方法であって、
前記ロボットを動作させるロボット制御ステップと、
前記ロボット制御ステップにおいて前記ロボットを動作させることにより、前記ロボットに保持されている対象用センサによって対象を検知する第1検知ステップと、
前記ロボット制御ステップにおいて前記ロボットを動作させることにより、前記ロボットに保持されている複数のセンサで構成されるセンサ群によって前記対象が含まれている平面を検知する第2検知ステップと、
前記センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された前記平面までの各距離、及び前記対象用センサと前記センサ群との位置情報に基づいて、前記対象用センサによって検知された対象の位置を算出する対象位置算出ステップと、を含む、
位置算出方法。
【請求項11】
ロボットの動作を制御するロボット制御装置が実行する対象の位置を算出する位置算出方法に用いられるセンサ装置であって、
前記対象を検知する対象用センサと、
前記対象が含まれている平面を検知する複数のセンサで構成されるセンサ群と、を含み、
前記位置算出方法は、
前記ロボットを動作させるロボット制御ステップと、
前記ロボット制御ステップにおいて前記ロボットを動作させることにより、前記ロボットに保持されている当該センサ装置の対象用センサによって対象を検知する第1検知ステップと、
前記ロボット制御ステップにおいて前記ロボットを動作させることにより、前記ロボットに保持されている当該センサ装置の複数のセンサで構成されるセンサ群によって前記対象が含まれている平面を検知する第2検知ステップと、
前記センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された前記平面までの各距離、及び前記対象用センサと前記センサ群との位置情報に基づいて、前記対象用センサによって検知された対象の位置を算出する対象位置算出ステップと、を含む、
センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置、位置算出方法及びそれに用いられるセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界において、多くのロボットが普及している。当該ロボットは、例えば、電子部品及び機械部品の組み立て、溶接及び搬送等に用いられ、工場の生産ラインの効率化及び自動化が図られている。
【0003】
半導体製造装置に用いられるウエハを搬送する搬送ロボットでは、ウエハを適切な位置へ搬送するためのティーチングを行うが、その精度は、操作者の知識及び熟練度などに依存し、また、操作者の作業スペースが十分に確保できない程の省スペース化が求められている場合もあるため、ティーチングの自動化が図られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、3つの光学センサが設けられた基板型治具がハンドにより保持された状態で、基板保持部を回転させることにより当該基板保持部上に予め設けられている目印の円周状の回転軌跡を形成する。そして、3つの光学センサからそれぞれ得られた回転軌跡に対する相対位置に基づいて、ハンドの基板保持部に対する平面視における相対位置を算出する技術が開示されている。
【0005】
このように、3つの光学センサを用いながら、ロボットと目標位置との位置関係、及び障害物などの周辺環境を把握して、対象物を適切に目標位置まで搬送する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、3つの光学センサが設けられた基板型治具がハンドに保持された状態において、その3つの光学センサの傾きを考慮していない。例えば、基板型治具を保持するハンドそのものが水平でない場合、光学センサが設けられている基板型治具そのものが一様な平面でない場合、ハンドに基板型治具を載置することにより当該ハンドが傾く場合、及び基板型治具に光学センサが傾いて取り付けられている場合など様々な要因が考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、ロボットに保持されているセンサの傾きを考慮して、当該センサによって検知される対象の位置を適切に算出可能なロボット制御装置、位置算出方法及びそれに用いられるセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るロボット制御装置は、ロボットの動作を制御するロボット制御装置であって、ロボットを動作させるロボット制御手段と、ロボット制御手段によってロボットを動作させることにより、ロボットに保持されている対象用センサによって対象を検知する第1検知手段と、ロボット制御手段によってロボットを動作させることにより、ロボットに保持されている複数のセンサで構成されるセンサ群によって対象が含まれている平面を検知する第2検知手段と、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面までの各距離、及び対象用センサとセンサ群との位置情報に基づいて、対象用センサによって検知された対象の位置を算出する対象位置算出手段と、を備える。
【0010】
この態様によれば、第1検知手段は、ロボットに保持されている対象用センサによって対象を検知し、第2検知手段は、ロボットに保持されている複数のセンサで構成されるセンサ群によって対象が含まれている平面を検知する。そして、対象位置算出手段は、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面までの各距離、及び対象用センサとセンサ群との位置情報に基づいて、対象用センサによって検知された対象の位置を算出する。これにより、ロボットに保持されているセンサの傾きを考慮して、当該センサによって検知される対象の位置を適切に算出することができる。その結果、対象の位置に基づいて算出された目標位置に、対象物を高精度に搬送することができる。
【0011】
上記態様において、対象位置算出手段は、対象用センサによって検知された対象の検知位置を算出する検知位置算出手段と、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面までの各距離と、センサ群における複数のセンサ間の各距離とに基づいて、平面に対する対象用センサの傾きを算出する傾き算出手段と、対象用センサの傾きに基づいて、対象の検知位置を補正する補正手段と、を含んでもよい。
【0012】
この態様によれば、傾き算出手段は、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面までの各距離と、複数のセンサ間の各距離とに基づいて、対象用センサの傾きを算出し、補正手段は、当該対象用センサの傾きに基づいて、検知位置算出手段によって算出された対象用センサによって検知された対象の検知位置を補正する。これにより、センサの傾きを考慮して、当該センサによって検知された対象の位置を高精度に算出することができる。
【0013】
上記態様において、対象用センサ及びセンサ群における複数のセンサは、同一平面上に配置されていてもよい。
【0014】
この態様によれば、対象用センサとセンサ群における複数のセンサとのセンサ間距離を予め把握し、当該センサ間距離を計測するなどの処理を不要とするため、容易に対象用センサの傾きを算出することができる。
【0015】
上記態様において、センサ群は、第1センサと、当該第1センサに対応する第2センサとで構成される一対のセンサグループを2つ含んでもよい。
【0016】
この態様によれば、一対のセンサグループにおける各センサから平面までの各距離に基づいて、その距離の差から当該一対のセンサグループにおける領域の傾きを算出することができ、さらに、一対のセンサグループを2つ含むことにより、センサ群が配置されている領域において、傾いている方向を適切に把握することができる。
【0017】
上記態様において、2つの一対のセンサグループは、互いに直交するように配置されてもよい。
【0018】
この態様によれば、2つの一対のセンサグループは、互いに直交するように配置されていることにより、センサ群が配置されている領域において、傾いている方向をより適切に把握することができる。
【0019】
上記態様において、対象用センサは、センサ群における複数のセンサのうちの1つのセンサとして機能してもよい。
【0020】
この態様によれば、対象用センサは、センサ群における複数のセンサのうちの1つのセンサとして機能することにより、センサの数を軽減することができる。
【0021】
上記態様において、対象用センサは、少なくとも第1対象用センサ及び第2対象用センサとして設けられ、センサ群は、第1対象用センサ及び第2対象用センサのそれぞれに対応するように少なくとも第1センサ群及び第2センサ群として設けられてもよい。
【0022】
この態様によれば、少なくとも2つ設けられた対象用センサに対応するように、それぞれセンサ群が設けられているため、各対象用センサの傾きを高精度に算出することができる。その結果、各対象用センサによって検知された対象の位置を、各対象用センサの傾きを考慮して、高精度に算出することができる。
【0023】
上記態様において、第1センサ群における複数のセンサと第1対象用センサとの各距離は、第1センサ群における複数のセンサ及び第1対象用センサのうちいずれかと最も近い第2センサ群における複数のセンサ及び第2対象用センサのうちいずれかとの距離よりも小さくてもよい。
【0024】
この態様によれば、少なくとも2つ設けられた対象用センサの近傍にそれぞれセンサ群が設けられているため、各対象用センサの傾きをより高精度に算出することができる。その結果、各対象用センサによって検知された対象の位置を、各対象用センサの傾きを考慮して、より高精度に算出することができる。
【0025】
上記態様において、対象用センサ及びセンサ群における複数のセンサは、ロボットに保持されるセンサ装置に設けられてもよい。
【0026】
この態様によれば、センサ装置を用いて、当該センサ装置に設けられた対象用センサの傾きを考慮して対象の位置を高精度に算出することができる。
【0027】
本発明の一態様に係る位置算出方法は、ロボットの動作を制御するロボット制御装置が実行する対象の位置を算出する位置算出方法であって、ロボットを動作させるロボット制御ステップと、ロボット制御ステップにおいてロボットを動作させることにより、ロボットに保持されている対象用センサによって対象を検知する第1検知ステップと、ロボット制御ステップにおいてロボットを動作させることにより、ロボットに保持されている複数のセンサで構成されるセンサ群によって対象が含まれている平面を検知する第2検知ステップと、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面までの各距離、及び対象用センサとセンサ群との位置情報に基づいて、対象用センサによって検知された対象の位置を算出する対象位置算出ステップと、を含む。
【0028】
この態様によれば、第1検知ステップでは、ロボットに保持されている対象用センサによって対象を検知し、第2検知ステップでは、ロボットに保持されている複数のセンサで構成されるセンサ群によって対象が含まれている平面を検知する。そして、対象位置算出ステップでは、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面までの各距離、及び対象用センサとセンサ群との位置情報に基づいて、対象用センサによって検知された対象の位置を算出する。これにより、ロボットに保持されているセンサの傾きを考慮して、当該センサによって検知される対象の位置を適切に算出することができる。その結果、対象の位置に基づいて算出された目標位置に、対象物を高精度に搬送することができる。
【0029】
本発明の一態様に係るセンサ装置は、ロボットの動作を制御するロボット制御装置が実行する対象の位置を算出する位置算出方法に用いられるセンサ装置であって、対象を検知する対象用センサと、対象が含まれている平面を検知する複数のセンサで構成されるセンサ群と、を含み、位置算出方法は、ロボットを動作させるロボット制御ステップと、ロボット制御ステップにおいてロボットを動作させることにより、ロボットに保持されている当該センサ装置の対象用センサによって対象を検知する第1検知ステップと、ロボット制御ステップにおいてロボットを動作させることにより、ロボットに保持されている当該センサ装置の複数のセンサで構成されるセンサ群によって対象が含まれている平面を検知する第2検知ステップと、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面までの各距離、及び対象用センサとセンサ群との位置情報に基づいて、対象用センサによって検知された対象の位置を算出する対象位置算出ステップと、を含む。
【0030】
この態様によれば、第1検知ステップでは、ロボットに保持されている対象用センサによって対象を検知し、第2検知ステップでは、ロボットに保持されている複数のセンサで構成されるセンサ群によって対象が含まれている平面を検知する。そして、対象位置算出ステップでは、センサ群における複数のセンサそれぞれによって検知された平面までの各距離、及び対象用センサとセンサ群との位置情報に基づいて、対象用センサによって検知された対象の位置を算出する。これにより、ロボットに保持されているセンサの傾きを考慮して、当該センサによって検知される対象の位置を適切に算出することができる。その結果、対象の位置に基づいて算出された目標位置に、対象物を高精度に搬送することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ロボットに保持されているセンサの傾きを考慮して、当該センサによって検知される対象の位置を適切に算出可能なロボット制御装置、位置算出方法及びそれに用いられるセンサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る搬送ロボットシステム1のシステム構成を示す概要図である。
【
図2】クリーン環境において搬送ロボット10が動作する様子を示す概要図である。
【
図3】搬送ロボット10におけるハンド11によって保持されるセンサ装置20の構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100の各機能を示す機能ブロック図である。
【
図5】搬送ロボット10におけるハンド11によってセンサ装置20が保持されている状態で、ステージSに向かう様子を示す図である。
【
図6】センサ装置20に設けられた光学センサによってステージSのエッジEが検知される様子を示す図である。
【
図7】センサ装置20に設けられた2つの光学センサによってステージSの平面Fまでの距離がそれぞれ検知される様子を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100が実行する対象の位置を算出する位置算出方法M100の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0034】
<一実施形態>
[搬送ロボットシステムの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送ロボットシステム1のシステム構成を示す概要図である。
図1に示されるように、搬送ロボットシステム1は、ロボット制御装置100と、搬送ロボット10とを備える。
【0035】
搬送ロボット10は、例えば、ウエハ搬送を目的とする水平多関節ロボットであって、半導体デバイス及びフラットパネルディスプレイの製造、医療・食品産業などにおける、クリーン環境での搬送に用いられるクリーン搬送ロボットである。本実施形態では、搬送ロボット10は、例えば、2軸又は3軸の円筒座標型であって、エンドエフェクタとしてのハンド11を有し、当該ハンド11によってウエハ(対象物)を保持して搬送することを一例として説明する。
【0036】
ロボット制御装置100は、搬送ロボット10の動作を制御する機器である。例えば、ロボット制御装置100は、ティーチペンダントなどの操作機器(図示せず)に接続されており、当該操作機器において入力された動作指示情報を取得することができる。ロボット制御装置100は、当該動作指示情報に基づいて、搬送ロボット10を起動及び停止させたり、対象物を取り出したり、搬送して設置したりするために搬送ロボット10の各軸、及びアームやハンド11を動作させる。
【0037】
ティーチペンダントなどの操作機器は、搬送ロボット10の動作指示情報について、対象物を搬送する搬送作業に関して、操作者からの入力を受け付ける。通常、操作者は、例えば、搬送ロボット10の起動及び停止、さらには、搬送ロボット10に対する設定、及びアームやハンド11の動作、教示点の登録などについて、ティーチペンダントなどの操作機器を用いて適切な指示情報を入力する。
【0038】
また、教示点の登録については、搬送ロボット10を動作させながら当該動作経路における教示点を、ティーチペンダントなどの操作機器を用いて操作者が逐次登録してもよいし、自動教示において教示点を自動的に登録してもよい。自動教示は、例えば、操作者の侵入スペース(作業空間)が十分に確保できないような環境や場面において有効である。
【0039】
[ウエハ搬送の様子]
図2は、クリーン環境において搬送ロボット10が動作する様子を示す概要図である。
図2に示されるように、作業空間WSに設置された搬送ロボット10は、ウエハWをハンド11に保持した状態で、真空環境のプロセスチャンバにおける各ステージS1~S3(以下、総称して「ステージS」という場合もある)に搬送する。
【0040】
具体的には、搬送ロボット10は、ロボット制御装置100からの動作指示情報に基づいてアームやハンド11を動作させて、ウエハWを取り出したり、搬送先となるステージSに搬送したりする。
【0041】
ここで、ウエハWを搬送して設置する目標位置は、例えば、ステージSの中心であり、ウエハWをステージSの中心に高精度に設置されることが好ましく、ロボット制御装置100としては、教示データに基づいて、実際にウエハWを搬送して目標位置であるステージSの中心に設置する。その際、ロボット制御装置100は、ステージSのエッジを検知してステージSの位置を適切に把握することによって、高精度な教示データを生成することができる。その結果、ウエハWをステージSの中心に高精度に設置することができる。換言すると、ステージSのエッジの位置を適切に把握することが重要となり、以下、センサ装置を用いてステージSのエッジを検知して、その位置を把握する方法について説明する。
【0042】
[センサ装置の構成]
センサ装置は、光学センサを備えて、搬送ロボット10のハンド11に把持、保持又は取付可能な装置である。
図3は、搬送ロボット10におけるハンド11によって保持されるセンサ装置20の構成を示す図である。
図3に示されるように、センサ装置20は、2つの光学センサ21及び22を有し、光学センサ21の近傍に光学センサ21A及び21Bを有し、光学センサ22の近傍に光学センサ22A及び22Bを有している。
【0043】
各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22Bは、センサ装置20の裏面に取り付けられており、光源から下向きに発光された光の反射光を受光することによって距離を算出可能な反射型光センサである。
【0044】
センサ装置20は、ハンド11の上に載置されることから、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22Bは、下向きに発光する光がハンド11に遮られないように、センサ装置20の外周近郊(端)に取り付けられている。換言すれば、ハンド11は、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22Bが取り付けられている領域を回避するようにして、センサ装置20を保持している。
【0045】
また、センサ装置20は、制御部及び通信部を備えていてもよく、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22Bにおいて、光源から発光される光を制御したり、反射光を受光してそれに関する情報を、例えば、ロボット制御装置100に通知したりする。
【0046】
例えば、ハンド11によって保持されているセンサ装置20がステージSの上方を通過することにより、光学センサ21(第1対象用センサ)は、ステージSのエッジ(対象)を検知するものである。光学センサ21A及び21Bは、光学センサ21とともに、ステージSの平面を検知することによって、当該光学センサ21の傾きを把握するためのものである(第1センサ群)。
【0047】
第1センサ群は、3つの光学センサ21,21A,21Bで構成されているが(光学センサ21は対象用センサを兼用)、当該光学センサ21の傾きを把握する上で、2方向に配置されている。具体的には、光学センサ21と21Aとの配置方向と、光学センサ21と21Bとの配置方向とは直交している。これにより、光学センサ21の傾きについて、光学センサ21に対する光学センサ21Aの方向の傾き、及び光学センサ21に対する光学センサ21Bの方向の傾きを把握することができる。
【0048】
また、光学センサ21と21Aとの距離、及び光学センサ21と21Bとの距離は、小さい方が好ましく、少なくともこれらの光学センサ21,21A,21Bから、第2センサ群(3つの光学センサ22,22A,22B)までの距離よりも小さい。これにより、センサ装置20のうち光学センサ21が設置されている局所的な領域について、その傾きを適切に把握することができる。傾きについて、詳細は後述する。
【0049】
同様に、光学センサ22(第2対象用センサ)は、ステージSのエッジ(対象)を検知するものであり、光学センサ22A及び22Bは、光学センサ22とともに、当該光学センサ22の傾きを把握するためのものである(第2センサ群)。光学センサ22と22Aとの配置方向と、光学センサ22と22Bとの配置方向とは直交しており、光学センサ22と22Aとの距離、及び光学センサ22と22Bとの距離は、小さい方が好ましく、少なくともこれらの光学センサ22,22A,22Bから、第1センサ群(3つの光学センサ21,21A,21B)までの距離よりも小さい。これにより、センサ装置20のうち光学センサ22が設置されている局所的な領域について、その傾きを適切に把握することができる。
【0050】
[ロボット制御装置の構成]
図4は、本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100の各機能を示す機能ブロック図である。
図4に示されるように、ロボット制御装置100は、ロボット制御手段110と、第1検知手段120と、第2検知手段130と、対象位置算出手段140とを備え、搬送ロボット10の動作を制御する。ロボット制御装置100は、センサ装置20を保持した状態のハンド11を移動させながら、2つの光学センサ21及び22(第1対象用センサ及び第2対象用センサ)によってステージSのエッジ(対象)を検知し、3つの光学センサ21,21A,21B(第1センサ群)及び3つの光学センサ22,22A,22B(第2センサ群)によってステージSの平面を検知する。そして、ロボット制御装置100は、その検知結果に基づいて、2つの光学センサ21及び22の傾きを考慮して、ステージSのエッジ位置を把握する。
【0051】
なお、ロボット制御装置100は、
図1を用いて説明したように、搬送ロボット10に接続されており、さらには、ティーチペンダントなどの操作機器からの動作指示情報、又は自動制御(自動教示)などに基づいて、種々の制御を行うために多くの機能を備えて、処理を行っている。ここでは、ロボット制御装置100について、主に、ステージSのエッジを検知する光学センサ21及び22の傾きを考慮してステージSのエッジ位置を算出する位置算出機能に関するものを示しているが、その他の構成及び機能を備えている。
【0052】
ロボット制御手段110は、搬送ロボット10を動作させる。例えば、搬送ロボット10は、ハンド11にセンサ装置20を保持しており、ロボット制御手段110は、センサ装置20に取り付けられている2つの光学センサ21及び22がステージSのエッジの上方を通過し、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22BがステージSの平面の上方を通過するように、搬送ロボット10の各軸、及びアームやハンド11を動作させる。
【0053】
第1検知手段120は、ロボット制御手段110によって搬送ロボット10を動作させることにより、搬送ロボット10におけるハンド11に保持されているセンサ装置20(2つの光学センサ21及び22)によってステージSのエッジを検知する。例えば、センサ装置20の裏面に設けられている2つの光学センサ21及び22は、下方に向かって光を発光している。そして、当該発光された光がステージSのエッジの一部に到達することにより、2つの光学センサ21及び22によって受光される反射光が変化する。第1検知手段120は、2つの光学センサ21及び22によってステージSのエッジの一部が検知されたことに関する情報を、センサ装置20から取得する。
【0054】
第2検知手段130は、ロボット制御手段110によって搬送ロボット10を動作させることにより、搬送ロボット10におけるハンド11に保持されているセンサ装置20(光学センサ21,21A,21B、及び光学センサ22,22A,22B)によってステージSの平面を検知する。例えば、センサ装置20の裏面に設けられている光学センサ21,21A,21B、及び光学センサ22,22A,22Bは、下方に向かって光を発光している。そして、当該発光された光がステージSの平面部分に到達して、その反射光を受光する。第2検知手段130は、光学センサ21,21A,21B、及び光学センサ22,22A,22Bから発光された光に対して受光したそれぞれの反射光に関する情報をセンサ装置20から取得する。
【0055】
対象位置算出手段140は、光学センサ21,21A,21Bそれぞれによって検知されたステージSの平面までの各距離に基づいて、光学センサ21によって検知されたステージSのエッジ位置を算出する。同様に、対象位置算出手段140は、光学センサ22,22A,22Bそれぞれによって検知されたステージSの平面までの各距離に基づいて、光学センサ22によって検知されたステージSのエッジ位置を算出する。
【0056】
なお、対象位置算出手段140は、検知位置算出手段141と、傾き算出手段142と、補正手段143とを含む。
【0057】
検知位置算出手段141は、2つの光学センサ21及び22によって検知されたステージSのエッジの位置を算出する。例えば、検知位置算出手段141は、2つの光学センサ21及び22によってステージSのエッジ位置が検知された際の、それぞれ搬送ロボット10の位置・姿勢に基づいて、当該検知したステージSのエッジ位置(ロボット座標系)を算出する。
【0058】
傾き算出手段142は、3つの光学センサ21,21A,21Bによってそれぞれ検知されたステージSの平面までの各距離と、センサ装置20における3つの光学センサ21,21A,21B間の各距離とに基づいて、ステージSの平面に対する、ステージSのエッジを検知した光学センサ21の傾きを算出する。具体的には、センサ装置20に設けられている光学センサ21の領域が傾いていれば、3つの光学センサ21,21A,21BそれぞれからのステージSの平面までの各距離が異なり、傾き算出手段142は、その距離の差に基づいて、光学センサ21の傾きを算出する。
【0059】
同様に、傾き算出手段142は、3つの光学センサ22,22A,22Bによってそれぞれ検知されたステージSの平面までの各距離と、センサ装置20における3つの光学センサ22,22A,22B間の各距離とに基づいて、ステージSの平面に対する、ステージSのエッジを検知した光学センサ22の傾きを算出する。具体的には、センサ装置20に設けられている光学センサ22の領域が傾いていれば、3つの光学センサ22,22A,22BそれぞれからのステージSの平面までの各距離が異なり、傾き算出手段142は、その距離の差に基づいて、光学センサ22の傾きを算出する。
【0060】
補正手段143は、傾き算出手段142によって算出された2つの光学センサ21及び22の傾きに基づいて、検知位置算出手段141によって算出されたステージSのエッジ位置を補正する。例えば、2つの光学センサ21及び22は、下方に向かって光を発光していることから、理想的には、その鉛直方向にステージSのエッジを検知することになるが、2つの光学センサ21及び22が傾いている場合には、実際には、その鉛直方向からズレた位置にあるステージSのエッジを検知していることになる。すなわち、補正手段143は、傾き算出手段142によって算出された2つの光学センサ21及び22の傾きを考慮して、検知位置算出手段141によって算出されたステージSのエッジ位置を補正する。
【0061】
このように、ロボット制御装置100は、センサ装置20を保持した状態のハンド11を移動させながら、第1検知手段120はステージSのエッジを検知し、第2検知手段130はステージSの平面を検知する。そして、対象位置算出手段140において、ステージSのエッジを検知した光学センサ21及び22の傾きを考慮して、高精度にステージSのエッジ位置を算出する。
【0062】
以下に、ステージSのエッジを検知する2つの光学センサ21及び22の傾きを考慮して、ステージSのエッジ位置を算出することについて、より具体的に詳細を説明する。
【0063】
[光学センサの傾きを考慮したステージSのエッジ位置]
図5は、搬送ロボット10におけるハンド11によってセンサ装置20が保持されている状態で、ステージSに向かう様子を示す図である。
図5に示されるように、ハンド11は、2つの光学センサ21及び22(第1対象用センサ及び第2対象用センサ)を有し、3つの光学センサ21,21A,21B(第1センサ群)及び3つの光学センサ22,22A,22B(第2センサ群)を有するセンサ装置20を保持している。
【0064】
ハンド11がステージSに近づいて、ハンド11によって保持されているセンサ装置20がステージSの上方を移動することになる。そして、センサ装置20に設けられている2つの光学センサ21及び22は、ステージSのエッジを検知し、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22Bは、ステージSの平面を検知する。
【0065】
図6は、センサ装置20に設けられた光学センサによってステージSのエッジEが検知される様子を示す図である。
図6に示されるように、ハンド11によって保持されているセンサ装置20がステージSのエッジEの上方を通過することにより、光学センサ21(22)は、ステージSのエッジEを検知している。
【0066】
例えば、
図5に示されたように、ハンド11をステージSに近づく移動方向に移動させると、ハンド11によって保持されているセンサ装置20がステージSのエッジEの上方を通過することになる。その際に、光学センサ21(22)は、当該光学センサ21(22)から下向きに発光された光の反射光を受光することによって、ステージSのエッジEを検知し、検知位置算出手段141は、その検知した際の搬送ロボット10の位置・姿勢に基づいて、ステージSのエッジEの位置(ロボット座標系)を算出する。
【0067】
図7は、センサ装置20に設けられた2つの光学センサによってステージSの平面Fまでの距離がそれぞれ検知される様子を示す図である。
図7に示されるように、ハンド11によって保持されているセンサ装置20がステージSの平面Fの上方を通過することにより、光学センサ21(22)及び光学センサ21A(22A)は、ステージSの平面Fを検知している。
【0068】
例えば、
図5に示されたように、ハンド11をステージSに近づく移動方向に移動させると、ハンド11によって保持されているセンサ装置20がステージSの平面Fの上方を通過することになる。その際に、光学センサ21(22)及び光学センサ21A(22A)は、当該光学センサ21(22)及び光学センサ21A(22A)から下向きに発光された光の反射光を受光することによって、ステージSの平面Fを検知し、傾き算出手段142は、それぞれ光学センサ21(22)から平面Fまでの距離d1及び光学センサ21A(22A)から平面Fまでの距離d2を算出する。
【0069】
そして、傾き算出手段142は、距離d1と距離d2との差dと、光学センサ21(22)と光学センサ21A(22A)との距離と、に基づいて、ステージSの平面Fに対する、センサ装置20に設けられている光学センサ21(22)の傾きθを算出することができる。なお、光学センサ21(22)と光学センサ21A(22A)との距離は、予め把握しているものとする。ここで、光学センサ21(22)及び光学センサ21A(22A)は、センサ装置20において同一平面(底面)上に設けられていることにより、光学センサ21(22)と光学センサ21A(22A)とのセンサ間距離は予め把握されており、これによって、当該センサ間距離を計測するなどの処理を不要として、容易に上記傾きθを算出することができる。
【0070】
このように、傾き算出手段142によって算出された光学センサ21(22)の傾きθ及び上記距離d1に基づいて、補正手段143は、検知位置算出手段141によって算出されたステージSのエッジEの位置(ロボット座標系)を補正することにより、高精度に、ステージSのエッジEの位置を把握することができる。例えば、補正手段143は、光学センサ21(22)の傾きθ、及び光学センサ21(22)によって検知された当該光学センサ21(22)とステージSとの距離(ここでは、距離d1でよい)に基づいてステージSのエッジEの位置(ロボット座標系)を補正してもよい。
【0071】
なお、ここでは、ハンド11の移動方向である光学センサ21(22)と光学センサ21A(22A)との配置方向に対する光学センサ21(22)の傾きについて説明したが、当該移動方向に直交する光学センサ21(22)と光学センサ21B(22B)との配置方向に対する光学センサ21(22)の傾きについても同様に、当該傾きを考慮して検知位置算出手段141によって算出されたステージSのエッジEの位置(ロボット座標系)を補正することができる。
【0072】
[ステージSのエッジ位置を算出する位置算出方法]
次に、ハンド11に保持されるセンサ装置20における2つの光学センサ21及び22の傾きを考慮して、ステージSのエッジ位置を算出する方法について、具体的に詳しく説明する。
【0073】
図8は、本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100が実行する対象の位置を算出する位置算出方法M100の処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示されるように、位置算出方法M100は、ステップS110~S150を含み、各ステップは、主に、ロボット制御装置100に含まれるプロセッサによって実行される。
【0074】
ステップS110では、センサ装置20を保持している搬送ロボット10(ハンド11)を移動させる(ロボット制御ステップ)。具体例としては、搬送ロボット10は、ハンド11にセンサ装置20を保持しており、ロボット制御手段110は、センサ装置20に取り付けられている2つの光学センサ21及び22が、ステージSのエッジEの上方を通過し、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22BがステージSの平面Fの上方を通過するように、搬送ロボット10(ハンド11)を動作させる。
【0075】
ステップS120では、2つの光学センサ21及び22によってステージSのエッジEを検知する(第1検知ステップ)。具体例としては、ハンド11によって保持されているセンサ装置20がステージSのエッジEの上方を通過することによって、2つの光学センサ21及び22は、ステージSのエッジEを検知する。
【0076】
ステップS130では、センサ群(各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22B)によってステージSの平面Fを検知する(第2検知ステップ)。具体例としては、ハンド11によって保持されているセンサ装置20がステージSの平面Fの上方を通過することによって、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22Bは、ステージSの平面Fを検知する。
【0077】
ステップS140では、ステップS130でセンサ群(各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22B)によって検知されたステージSの平面Fまでの各距離に基づいて、平面Fに対する光学センサ21(22)の傾きを算出する。具体例としては、傾き算出手段142は、3つの光学センサ21,21A,21B(第1センサ群)によってそれぞれ検知されたステージSの平面Fまでの各距離と、センサ装置20における3つの光学センサ21,21A,21B間の各距離とに基づいて、ステージSの平面Fに対する、ステージSのエッジEを検知した光学センサ21(第1対象用センサ)の傾きを算出する。同様に、傾き算出手段142は、3つの光学センサ22,22A,22B(第2センサ群)によってそれぞれ検知されたステージSの平面Fまでの各距離と、センサ装置20における3つの光学センサ22,22A,22B間の各距離とに基づいて、ステージSの平面Fに対する、ステージSのエッジEを検知した光学センサ22(第2対象用センサ)の傾きを算出する。
【0078】
ステップS150では、ステップS120で検知されたステージSのエッジEの位置を、ステップS140で算出された光学センサ21(22)の傾き、及び光学センサ21(22)によって検知された当該光学センサ21(22)とステージSとの距離に基づいて補正する。具体例としては、補正手段143は、傾き算出手段142によって算出された2つの光学センサ21及び22の傾きθを考慮して、検知位置算出手段141によって算出されたステージSのエッジEの位置を補正する。
【0079】
このように、ロボット制御装置100は、ステージSのエッジEを検知した光学センサ21及び22の傾きを考慮して、高精度にステージSのエッジEの位置を算出する。そして、当該ステージSのエッジEの位置に基づいてステージSの中心を算出すれば、対象物(ウエハW)をステージSの中心(目標位置)に高精度に搬送することができる。なお、ステージSの中心は、ステージSのエッジEのうち3点を把握すれば、当該3点を通る円を描くことにより、一義的に算出することができる。
【0080】
また、ステージSを構成する円の半径(直径)が予め分かっていれば(固定値として)、ステージSのエッジEのうち2点を把握して、その2点から2通りの円を描くことができる。そして、センサ装置20に設けられている2つの光学センサ21及び22と、ステージSとの位置関係(ハンド11の進行方向)に基づいて、当該2通りの円のうちいずれかの円を選択することができる。すなわち、ステージSのエッジEのうち2点を把握すれば、ステージSの中心位置を算出することができる。
【0081】
なお、ステージSの中心を算出するために、ステージSのエッジEのうち2点又は3点検知する場合、それらの検知点は可能な限り離れている方が好ましく、それらの検知点に基づいて描かれるステージSの円の誤差を軽減することができる。例えば、センサ装置20に2つの光学センサ21及び22を設ける場合には、可能な限り両側に離れて設けるとよい。その結果、ステージSの中心を高精度に算出することができる。
【0082】
また、ステージSのエッジEのうち2点又は3点検知する場合、ハンド11を一方向に移動させることによりステージSのエッジEのうち異なる複数の点(2点又は3点)を検知してもよいし、ステージSのエッジEを検知した後、一旦後退し、別の角度でステージSの方向に近づくことにより、ステージSのエッジEのうち異なる複数の点(2点又は3点)を検知するようにしてもよい。
【0083】
なお、ここでは、ステージSのエッジEを検知した(ステップS120)後に、ステージSの平面Fを検知していた(ステップS130)が、その順番は逆でもよく、具体的には、ステージSの平面Fを検知した後に、ステージSのエッジEを検知してもよい。
【0084】
以上のように、本発明一実施形態に係るロボット制御装置100、位置算出方法M100及びセンサ装置20によれば、搬送ロボット10におけるハンド11によってセンサ装置20が保持され、ロボット制御手段110は、センサ装置20に取り付けられている2つの光学センサ21及び22がステージSのエッジEの上方を通過し、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22BがステージSの平面Fの上方を通過するように、搬送ロボット10を動作させる。第1検知手段120は、2つの光学センサ21及び22によってステージSのエッジEを検知し、第2検知手段130は、各光学センサ21,21A,21B,22,22A,22BによってステージSの平面Fを検知する。そして、対象位置算出手段140は、光学センサ21,21A,21Bそれぞれによって検知されたステージSの平面Fまでの各距離に基づいて光学センサ21の傾きを考慮して、当該光学センサ21によって検知されたステージSのエッジEの位置を算出する。同様に、対象位置算出手段140は、光学センサ22,22A,22Bそれぞれによって検知されたステージSの平面Fまでの各距離に基づいて、光学センサ22の傾きを考慮して、光学センサ22によって検知されたステージSのエッジEの位置を算出する。その結果、ステージSのエッジEの位置に基づいてステージSの中心を算出すれば、対象物(ウエハW)をステージSの中心(目標位置)に高精度に搬送することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、光学センサ21及び22は、ハンド11の進行方向に対して、センサ装置20のうち後方に設けられていたが、これに限定されるものではなく、ハンド11の形状及び移動方向、さらには、ステージS及びその周辺の構成に応じて設けられてもよい。例えば、ハンド11の進行方向に対して、ステージSの向こう側のスペースが限られている場合には、光学センサ21及び22は、ハンド11の進行方向に対して前方に設けられるとよい。
【0086】
また、本実施形態では、センサ装置20にはステージSのエッジEを検知する光学センサとして、2つの光学センサ21,22が設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば、光学センサは、1つであってもよく、又は3つ以上であってもよく、ステージSのエッジEの検知に応じて必要な個数の光学センサを設けるとよい。
【0087】
さらに、本実施形態では、光学センサ21及び22の傾きを把握するために、第1センサ群として3つの光学センサ21,21A,21B(光学センサ21は対象用センサを兼用)、及び第2センサ群として3つの光学センサ22,22A,22B(光学センサ22は対象用センサを兼用)で構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、4つの光学センサにより構成されてもよい。
【0088】
図9は、センサ装置20の他の構成を示す図である。
図9に示されるように、センサ装置20は、対象を検知するための対象用センサとして4つの光学センサ21,22,23,24を有し、光学センサ21の近傍に光学センサ21A~21Dを有し、光学センサ22の近傍に光学センサ22A~22Dを有し、光学センサ23の近傍に光学センサ23A~23Dを有し、光学センサ24の近傍に光学センサ24A~24Dを有している。
【0089】
ここでは、第1センサ群(光学センサ21A~21D)を構成する光学センサの1つを対象用センサである光学センサ21が兼用しておらず、例えば、光学センサ21Aと21Cとの配置方向と、光学センサ21Bと21Dとの配置方向とは直交しており、光学センサ21の傾きについて各方向の傾きを把握することができる。第2センサ群(光学センサ22A~22D)、第3センサ群(光学センサ23A~23D)、及び第4センサ群(光学センサ24A~24D)についても同様である。
【0090】
なお、センサ装置20において光学センサ(対象用センサ)を設ける場合、その設ける領域(位置)に応じて、その設置面の傾きは一様でなく、例えば、センサ装置20のうちの、中央部、外周部、左右又は上下において、それぞれ傾きが異なる場合が考えられる。その場合、各光学センサ(対象用センサ)に対応するように、各光学センサの近傍に複数の光学センサで構成されるセンサ群を設けることにより、各光学センサ(対象用センサ)の傾きを算出することが好ましい。
【0091】
このように、光学センサ(対象用センサ)と、当該光学センサ(対象用センサ)の傾きを把握するための複数の光学センサ(センサ群)とは、典型的には、1対1で対応しているが、これに限定されるものではなく、例えば、複数の光学センサ(センサ群)に対して、複数の光学センサ(対象用センサ)が設けれられている構成でもよい。具体的には、隣接する複数の光学センサ(対象用センサ)に対して、その傾きを把握するための複数の光学センサ(センサ群)を共用するようにしてもよい。
【0092】
また、光学センサ(対象用センサ)と、当該光学センサ(対象用センサ)の傾きを把握するための複数の光学センサ(センサ群)とは、典型的には、センサ装置20の同一平面上に配置されるが、これに限定されるものではない。例えば、センサ装置20に取り付けられた対象用センサとセンサ群と傾きが同一又は傾きの差が分かっていれば異なる平面に配置されてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、センサ装置20を円形状としていたがこれに限定されるものではなく、例えば、矩形であっても、三角形、その他多角形であってもよい。具体的には、ロボットハンドの形状に応じて、当該ロボットハンドによってセンサ装置を保持した際に、センサ装置に設けられる光学センサが当該ロボットハンドに遮られないように配置されればよい。
【0094】
また、センサ装置20は、下側からロボットハンドによって載置されて保持されるものに限定されるものではなく、例えば、ロボットハンドによって両側から挟み込まれるように保持されるものなどであってもよい。
【0095】
さらには、ロボットハンドによってセンサ装置を保持する構成ではなく、例えば、ステージSのエッジEを検出できる構成であれば、ロボットハンド(ロボットの一部)にセンサが取り付けられた構成であってもよい。ロボットハンド(ロボットの一部)に容易に着脱可能な、例えば、マグネットや吸盤を用いて、センサが設けられたセンサ装置又はセンサを、当該ロボットハンド(ロボットの一部)に設置する構成であってもよい。
【0096】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…搬送ロボットシステム、10…搬送ロボット、11…ハンド、20…センサ装置、21,21A~21D,22,22A~22D,23,23A~23D,24,24A~24D…光学センサ、100…ロボット制御装置、110…ロボット制御手段、120…第1検知手段、130…第2検知手段、140…対象位置算出手段、141…検知位置算出手段、142…算出手段、143…補正手段、S,S1~S3…ステージ、W…ウエハ、WS…作業空間、E…エッジ、F…平面、d…差、d1,d2…距離、M100…位置算出方法、S110~S150…位置算出方法M100の各ステップ