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特開2025-28566ロボット制御装置、ロボット制御方法、ロボット制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028566
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】ロボット制御装置、ロボット制御方法、ロボット制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20250221BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133466
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】小関 真一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS13
3C707CX01
3C707CX03
3C707KS21
3C707KS33
3C707KS35
3C707KX06
3C707KX10
3C707LT11
3C707MS09
3C707MS10
(57)【要約】
【課題】ロボットにおける可動部の移動速度を適切に増加させられるロボット制御装置等を提供する。
【解決手段】ロボット制御装置50は、ロボットアーム100における可動部の移動経路を設定する移動経路設定部51と、可動部の移動速度を取得する移動速度取得部52と、可動部の位置の移動経路からの乖離許容範囲を設定する乖離許容範囲設定部53であって、移動速度の増加に応じて乖離許容範囲を拡大する乖離許容範囲設定部53と、を備える。乖離許容範囲設定部53は、移動速度の減少に応じて乖離許容範囲を縮小する。可動部は、被搬送物60を移動経路に沿って搬送する搬送部18である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットにおける可動部の移動経路を設定する移動経路設定部と、
前記可動部の移動速度を取得する移動速度取得部と、
前記可動部の位置の前記移動経路からの乖離許容範囲を設定する乖離許容範囲設定部であって、前記移動速度の増加に応じて前記乖離許容範囲を拡大する乖離許容範囲設定部と、
を備えるロボット制御装置。
【請求項2】
前記乖離許容範囲設定部は、前記移動速度の減少に応じて前記乖離許容範囲を縮小する、請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記可動部は、被搬送物を前記移動経路に沿って搬送する搬送部である、請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記搬送部が前記被搬送物を持つ際および/または離す際の前記移動速度および前記乖離許容範囲は、当該搬送部が当該被搬送物を搬送している際の前記移動速度および前記乖離許容範囲より小さい、請求項3に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記可動部の位置が前記乖離許容範囲を外れた場合に、当該可動部の位置を当該乖離許容範囲内に戻す位置制御部を備える、請求項1から4のいずれかに記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記可動部の位置が前記乖離許容範囲を外れた場合に、異常を検知する異常検知部を備える、請求項1から4のいずれかに記載のロボット制御装置。
【請求項7】
前記乖離許容範囲設定部は、前記乖離許容範囲として、第1乖離許容範囲と、当該第1乖離許容範囲より広い第2乖離許容範囲と、を設定し、
前記可動部の位置が前記第1乖離許容範囲を外れた場合に、当該可動部の位置を当該第1乖離許容範囲内に戻す位置制御部と、
前記可動部の位置が前記第2乖離許容範囲を外れた場合に、異常を検知する異常検知部と、
を備える請求項1から4のいずれかに記載のロボット制御装置。
【請求項8】
ロボットにおける可動部の移動経路を設定することと、
前記可動部の移動速度を取得することと、
前記可動部の位置の前記移動経路からの乖離許容範囲を設定することであって、前記移動速度の増加に応じて前記乖離許容範囲を拡大することと、
を実行するロボット制御方法。
【請求項9】
ロボットにおける可動部の移動経路を設定することと、
前記可動部の移動速度を取得することと、
前記可動部の位置の前記移動経路からの乖離許容範囲を設定することであって、前記移動速度の増加に応じて前記乖離許容範囲を拡大することと、
をコンピュータに実行させるロボット制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、物流倉庫、建設現場、病院等の産業現場において、人間の代わりに各種の作業を行う産業用ロボットが導入されている。従来の産業用ロボットは大型で高出力のものが多く、安全のために人間が入れない隔離空間を設けて作業を行わせる必要があった。一方、近年では人間と同じ空間で一緒に作業を行う協働ロボットの導入も進んでいる。従来の産業用ロボットと比べて小型の協働ロボットは狭いスペースに設置でき、低出力であることから安全確保のための大がかりなシステムを必要としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-26150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
協働ロボットでは、安全性等の観点から、ロボットハンド等の可動部の所期の移動経路からの乖離についての許容範囲が狭く設定される傾向がある。しかし、安全面やロボットハンド等による作業精度に問題がない場合に、可動部の移動速度を増加させると狭い許容範囲を外れやすくなってしまうという課題がある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、ロボットにおける可動部の移動速度を適切に増加させられるロボット制御装置等を提供することを目的とする。なお、以上では協働ロボットを例示したが、本開示は協働ロボットに限定されない一般的な産業用ロボットとしてのロボットアーム等にも適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のロボット制御装置は、ロボットにおける可動部の移動経路を設定する移動経路設定部と、可動部の移動速度を取得する移動速度取得部と、可動部の位置の移動経路からの乖離許容範囲を設定する乖離許容範囲設定部であって、移動速度の増加に応じて乖離許容範囲を拡大する乖離許容範囲設定部と、を備える。
【0007】
本態様によれば、可動部の移動速度の増加に応じて乖離許容範囲が拡大されるため、当該可動部の位置が当該乖離許容範囲を外れにくくなる。
【0008】
本開示の別の態様は、ロボット制御方法である。この方法は、ロボットにおける可動部の移動経路を設定することと、可動部の移動速度を取得することと、可動部の位置の移動経路からの乖離許容範囲を設定することであって、移動速度の増加に応じて乖離許容範囲を拡大することと、を実行する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ロボットにおける可動部の移動速度を適切に増加させられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロボットアームの外観を示す斜視図である。
図2】ロボットアームの各ジョイントを構成する連結装置の構成を模式的に示す。
図3】ロボットアームの各ジョイントを構成する連結装置の構成を模式的に示す。
図4】ロボット制御装置の模式的な機能ブロック図である。
図5】位置制御部を含む駆動制御部を示す。
図6】搬送部がピック位置で被搬送物を取り上げてプレイス位置まで搬送する際の、搬送部の移動速度と乖離許容範囲を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に記述する。記述および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する記述を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、記述の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態において提示される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。実施形態は、便宜的に、それを実現する機能毎および/または機能群毎の構成要素に分解されて提示される。但し、実施形態における一つの構成要素が、実際には別体としての複数の構成要素の組合せによって実現されてもよいし、実施形態における複数の構成要素が、実際には一体としての一つの構成要素によって実現されてもよい。
【0013】
図1は、産業用ロボットや協働ロボット等のロボットの一例としてのロボットアーム100の外観を示す斜視図である。このロボットアーム100は、シリアルリンク機構による垂直多関節型のロボットアームである。本開示を適用可能なロボットは狭義のロボットアームに限られず、複数のリンク(人体における骨に相当)を相対運動可能に連結するジョイント(人体における関節に相当)を有する広義のロボットアームまたは少なくとも一つの可動部を有する任意のロボットでもよい。また、シリアルリンク機構の代わりにパラレルリンク機構としてもよいし、垂直多関節型の代わりに水平多関節型としてもよい。
【0014】
ロボットアーム100は、台座10に近い方から順に、第1ジョイント11、第2ジョイント12、第3ジョイント13、第4ジョイント14、第5ジョイント15、第6ジョイント16、第7ジョイント17の七つのジョイントまたは軸を有する。各ジョイントは人体の各関節に相当し、第1ジョイント11は腰、第2ジョイント12は肩、第3ジョイント13は上腕(捻り)、第4ジョイント14は肘、第5ジョイント15は前腕(捻り)、第6ジョイント16は手首、第7ジョイント17は指先(捻り)に相当する。このように回転可能な各ジョイント11~17および当該各ジョイント11~17を介して連結される各リンクは、それぞれロボットアーム100における可動部を構成する。
【0015】
なお、各軸の方向はロボットアーム100の目的や用途に応じて適宜設計可能だが、本実施形態では台座10が水平面に置かれるとして、第1ジョイント11は鉛直方向(水平面である台座10に対して垂直)、第2ジョイント12は水平方向(水平面である台座10に対して平行)、第3ジョイント13は第2ジョイント12に対して垂直方向、第4ジョイント14は第3ジョイント13に対して垂直方向、第5ジョイント15は第4ジョイント14に対して垂直方向、第6ジョイント16は第5ジョイント15に対して垂直方向、第7ジョイント17は第6ジョイント16に対して垂直方向を向いてもよい。
【0016】
ロボットアーム100の先端部にある第7ジョイント17には、作業目的に応じた形状や機能を持つ作業部としてのエンドエフェクタまたはロボットハンドが取り付けられる。例えば、物を掴むためのグラップル状、物を掬うためのシャベル状、物を下から支えて運搬するためのフォーク状、物を引っ掛けて運搬するためのフック状、物を吊り上げて運搬するためのクレーン状といった各種のエンドエフェクタが利用可能である。本実施形態ではエンドエフェクタとして、作業対象としての被搬送物を保持または把持して搬送する搬送部としての保持ツールまたは把持ツールを用いる例を説明する。また、本開示が適用可能なロボットアーム100における可動部は、前述のように各ジョイント11~17や各リンクを含む移動(並進および/または回転)できる任意の部分(台座10を除くロボットアーム100の実質的に全部)でよいが、本実施形態では搬送部としての保持ツールまたは把持ツールが可動部として例示的に説明される。
【0017】
図2および図3は、ロボットアーム100の各ジョイント11~17を構成する連結装置30の構成を模式的に示す。図2の連結装置30は、図1における第2ジョイント12、第4ジョイント14、第6ジョイント16等の「曲げ」の動作を行うジョイントに適用可能であり、図3の連結装置30は、図1における第1ジョイント11、第3ジョイント13、第5ジョイント15、第7ジョイント17等の「捻り」の動作を行うジョイントに適用可能である。
【0018】
図2において、連結装置30は第1部材としての第1リンク41と第2部材としての第2リンク42を相対運動可能に連結する。連結装置30は人体における関節に相当し、連結装置30で相互に連結される第1リンク41および第2リンク42は人体における骨に相当する。
【0019】
第1リンク41および第2リンク42は、連結装置30による連結態様に応じて、様々な態様の相対運動をする。本実施形態では、第1リンク41および第2リンク42の延伸方向に垂直な回転軸Aを中心として第1リンク41と第2リンク42が相対回転する例を説明する。
【0020】
なお、第1リンク41および第2リンク42の相対運動は回転運動に限らず並進運動でもよい。例えば、第1リンク41および第2リンクの延伸方向に垂直な方向(図2における紙面に垂直な方向)に第1リンク41および第2リンク42が相対的に並進運動するように構成してもよいし、第1リンク41および第2リンクの延伸方向に平行な方向(図2における上下方向)に第1リンク41および第2リンク42が相対的に並進運動するように構成してもよい。
【0021】
連結装置30は、筐体31と、制御基板32と、モータ33と、減速機34と、弾性部材35と、出力フランジ36を備える。筐体31は、回転軸Aの周りに回転対称な形状をしており、その内部に連結装置30の構成要素32~36を収容する。筐体31の外周には、第1リンク41が取り付けられる第1取付部311と、第2リンク42が取り付けられる第2取付部312が設けられる。
【0022】
第1取付部311において筐体31に固定される第1リンク41は、筐体31と一体的に回転軸Aの周りに第2リンク42に対して相対回転可能である。第2取付部312は、構成要素32~36を収容する筐体31の内部空間と繋がる底面側(図2における左側)の開口部である。この開口部に設けられる出力フランジ36を介して第2リンク42は連結装置30に取り付けられる。
【0023】
制御基板32はロボットアーム100全体の制御を担う中央制御装置(不図示)の制御の下で連結装置30を制御する。例えば、モータ33に対する駆動指令の生成、出力軸エンコーダ(不図示)の測定データに基づく適応制御、弾性部材35の弾性変形に基づくトルクの検出、検出されたトルクに基づく適応制御等が制御基板32で行われる。モータ33は制御基板32からの駆動指令に応じて回転軸Aの周りに第2リンク42を回転駆動する動力を発生させるアクチュエータである。減速機34は歯車等によってモータ33の回転速度を減らし減速比に比例したトルクを発生させる。
【0024】
弾性部材35は、動力源としてのモータ33および減速機34と、動力によって回転駆動される負荷としての第2リンク42の間に直列に設けられ、連結装置30において直列弾性アクチュエータ(SEA:Series Elastic Actuator)を構成する。協働ロボットとしてのロボットアーム100と一緒に作業を行う人間が衝突したとしても、弾性部材35の弾性変形によって衝撃が吸収されるため安全性が向上する。また、弾性部材35は、モータ33および減速機34で発生した動力や第2リンク42に加わる外力を弾性エネルギーとして蓄積および解放できるため、人間の筋肉のような効率的な動作を実現できる。
【0025】
弾性部材35は連結装置30に弾性を付与する部材であり、例えば、ばねやゴム等の任意の弾性体によって形成される。また、弾性部材35に加えてまたは代えて、連結装置30の第1リンク41および第2リンク42の相対回転に対して抵抗を付与する抵抗付与部材を設けてもよい。抵抗付与部材としては、機械的な摩擦によって抵抗を付与するもの、油やグリース等の粘性流体の粘性によって抵抗を付与するもの等が挙げられる。弾性部材35の弾性や抵抗付与部材が付与する抵抗を制御基板32によって可変としてもよい。
【0026】
なお、弾性部材35は外力によるトルクを検出するトルクセンサとしても機能する。すなわち、外力によるトルクは弾性部材35の弾性変形を引き起こすため、その弾性変形量に基づいてトルクを検出できる。弾性部材35の弾性変形量を測定するためには、磁歪センサ、ひずみゲージ、圧電素子、偏光素子、静電容量センサ等の各種の変位センサを弾性部材35の表面等に取り付ければよい。変位センサで測定された弾性変形量は制御基板32に実装される演算装置等によってトルクに変換される。なお、連結装置30には、弾性部材35および/または他の部材によって、連結装置30に加わる力を検出する力センサを設けてもよい。以下では、力センサおよびトルクセンサを力覚センサと総称する。
【0027】
このように連結装置30には、加わる力および/またはトルクを検出可能な力覚センサが取り付けられてもよい。各ジョイント11~17を構成する連結装置30に加わる力および/またはトルクに基づいて、ロボットアーム100の先端部に設けられる可動部としての保持ツールや把持ツール等のエンドエフェクタまたはロボットハンドが、保持対象、把持対象、作業対象としての被搬送物等のワークから受ける力やトルク、ワークの重量等を演算できる。つまり、連結装置30に設けられる力覚センサによって、エンドエフェクタがワークから受ける力やトルク、ワークの重量等を間接的に検出できる。これらの力覚センサに加えてまたは代えて、エンドエフェクタに力覚センサを取り付けることで、当該エンドエフェクタがワークから受ける力やトルク、ワークの重量等を直接的に検出してもよい。
【0028】
以上の構成において、減速機34、弾性部材35、抵抗付与部材は、それぞれジョイントとしての連結装置30に柔軟性を付与する柔軟性付与部を構成する。ここで、柔軟性とはジョイントの曲がりやすさを意味し、外力によってジョイントが曲がる場合に柔軟性があるという。例えば、減速機34は減速比に比例したトルクを発生させるため、減速比を低くすることで外力によってジョイントが曲がりやすい柔軟性の高い状態を実現できる。また、弾性部材35や抵抗付与部材は、外力に抗する弾性力や抵抗を発生させつつもジョイントが曲がることを許容するため、ジョイントに柔軟性を付与しているといえる。なお、柔軟性付与部は少なくとも一つのジョイントに設ければよく、図1の七つのジョイント11~17全てに柔軟性付与部を設けなくてもよい。
【0029】
出力軸エンコーダ(不図示)は、第2リンク42の第1リンク41に対する回転軸Aの周りの回転位置を測定するロータリエンコーダである。出力フランジ36は、減速機34が生成したトルクを弾性部材35を介して第2リンク42に伝え、回転軸Aの周りに第2リンク42を回転させる。出力フランジ36の周囲には、筐体31に対する第2リンク42の回転を円滑化する軸受361が設けられる。
【0030】
図3の連結装置30では、第1リンク41と第2リンク42が、それぞれの延伸方向に平行な回転軸Bを中心として相対回転する。筐体31の第2リンク42側に設けられる切欠37によって、モータ33による第2リンク42の回転軸Bの周りの回転を筐体31が阻害しない構成になっている。
【0031】
図4は、本実施形態に係るロボット制御装置50の模式的な機能ブロック図である。ロボット制御装置50は、移動経路設定部51と、移動速度取得部52と、乖離許容範囲設定部53と、位置制御部54と、異常検知部55と、を備える。ロボット制御装置50が以下で説明する作用および/または効果の少なくとも一部を実現できる限り、これらの機能ブロックの一部は省略されてもよい。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働によって実現されてもよい。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。例えば、ロボット制御装置50の機能ブロックの一部または全部を、制御対象としてのロボットアーム100に組み込んでもよいし、制御対象としてのロボットアーム100外の構成として実現してもよい。
【0032】
図示の例では、ロボットアーム100に取り付けられるエンドエフェクタまたはロボットハンドとしての把持ツールが、可動部および搬送部18として移動する。搬送部18は、任意の形状およびサイズの被搬送物60を保持または把持して搬送する。搬送部18および被搬送物60の移動は、前述の各ジョイント11~17の回転の組合せによって実現される。
【0033】
移動経路設定部51は、ロボットアーム100における可動部としての搬送部18の移動経路を設定する。図示の例では、移動経路設定部51によって設定される移動経路が、右向きの矢印によって模式的に示されている。搬送部18は、位置制御部54等による制御の下で、移動経路設定部51によって設定された移動経路に沿って被搬送物60を搬送する。なお、移動経路設定部51によって設定される移動経路は計画経路であり、それに沿って搬送部18が移動するように位置制御部54等による制御が行われる。但し、実際には、搬送部18が計画経路通りに移動するとは限らない。すなわち、搬送部18が実際に移動する実行経路(図4では不図示)と、移動経路設定部51によって設定される計画経路の間には乖離が生じうる(後述する図6を参照)。
【0034】
移動速度取得部52は、搬送部18の移動速度を取得する。ここで、移動速度取得部52は、搬送部18自体や各ジョイント11~17に取り付けられてもよい位置センサ、速度センサ、加速度センサ等の運動センサから得られる測定値に基づいて、搬送部18の移動速度を取得してもよい。あるいは、移動速度取得部52は、移動経路設定部51によって設定された移動経路に応じて、位置制御部54等によって生成される搬送部18の速度指令を、搬送部18の移動速度として取得してもよい。
【0035】
図5に模式的に示されるように、位置制御部54を含む駆動制御部70は、速度指令生成部71と、回転位置微分器72と、速度減算器73と、速度偏差変換部74と、トルク減算器75と、トルク偏差変換部76と、を備える。
【0036】
速度指令生成部71は、各ジョイント11~17におけるモータ33の速度指令を生成する。これらの各ジョイント11~17の速度指令の集合が、搬送部18の速度指令となる。速度指令生成部71は、移動経路設定部51によって設定された搬送部18の移動経路の形状や長さ、当該移動経路上で計画されている搬送部18の作業(後述する図6参照)に応じて、適切な搬送部18の移動速度を指定する速度指令を生成する。
【0037】
回転位置微分器72は、PG(Position Generator)と呼ばれる回転位置測定器331によって測定されたモータ33の回転位置を微分して、モータ33の回転速度を算出する。速度減算器73は、速度指令生成部71が生成した速度指令および回転位置微分器72からのモータ33の測定速度を減算して速度偏差を算出する。速度偏差変換部74は、速度減算器73が算出した速度偏差をモータ33のトルク指令に変換する。
【0038】
トルク減算器75は、速度偏差変換部74が生成したトルク指令および弾性部材35等の力覚センサ19からのモータ33の測定トルクを減算してトルク偏差を算出する。トルク偏差変換部76は、トルク減算器75が算出したトルク偏差をモータ33に流す電流値(電流指令)に変換する。
【0039】
図5に模式的に示されるように、移動速度取得部52は、移動経路設定部51によって設定された移動経路に基づいて速度指令生成部71が生成する搬送部18の速度指令を、搬送部18の移動速度として取得するのが好ましい。あるいは、移動速度取得部52は、回転位置測定器331によるモータ33の測定回転位置に基づいて回転位置微分器72が算出する、搬送部18の実際の移動速度を取得してもよい。
【0040】
図4において、搬送部18が被搬送物60から受ける力やトルク、被搬送物60の重量等を検出可能な力覚センサ19は、前述のように、搬送部18自体や各ジョイント11~17に取り付けられてもよい。また、力覚センサ19は、搬送部18が被搬送物60を把持する力(把持力)を検出してもよい。この把持力は、例えば、被搬送物60の重量等を間接的に表しうる。なお、図示は省略するが、搬送部18による被搬送物60の搬送に関する他の情報(例えば、被搬送物60の形状、サイズ、材質)を取得する各種の情報取得部が、移動速度取得部52および/または力覚センサ19に加えてまたは代えて設けられてもよい。
【0041】
乖離許容範囲設定部53は、移動経路設定部51によって設定された移動経路からの搬送部18の乖離許容範囲を設定する。模式的に図示されるように、乖離許容範囲は、移動経路設定部51によって設定された移動経路の両側(図4における上下側)における幅として設定されてもよい。
【0042】
乖離許容範囲設定部53は、乖離許容範囲として、幅が比較的小さい第1乖離許容範囲と、当該第1乖離許容範囲より広い幅が比較的大きい第2乖離許容範囲と、を設定してもよい。
【0043】
第1乖離許容範囲は、位置制御部54による搬送部18の位置制御のために設定される。位置制御部54は、移動経路設定部51によって設定された移動経路の両側における搬送部18の位置が、第1乖離許容範囲内に留まるように各ジョイント11~17を駆動する。搬送部18が第1乖離許容範囲を外れた場合、位置制御部54は各ジョイント11~17を駆動して搬送部18を第1乖離許容範囲内に戻す。
【0044】
第2乖離許容範囲は、異常検知部55による異常検知のために設定される。異常検知部55は、搬送部18の位置が第2乖離許容範囲を外れた場合に異常を検知する。例えば、搬送部18が移動経路設定部51によって設定された移動経路から大きく外れて第2乖離許容範囲外に出てしまった場合、搬送部18による被搬送物60の搬送を安全に続行できない可能性がある。異常検知部55は、このような異常発生の旨を、ロボットアーム100のオペレータ等に報知してもよい。また、搬送部18が第2乖離許容範囲外に出てしまった場合、搬送部18による被搬送物60の搬送が直ちに緊急停止されてもよい。
【0045】
乖離許容範囲設定部53は、移動速度取得部52によって取得された搬送部18の移動速度の増加に応じて乖離許容範囲(第1乖離許容範囲および/または第2乖離許容範囲)を拡大する。このように、搬送部18の移動速度の増加に応じて乖離許容範囲が拡大されるため、搬送部18が速く移動する場合であっても乖離許容範囲を外れにくくなる。逆に、乖離許容範囲設定部53は、移動速度取得部52によって取得された搬送部18の移動速度の減少に応じて乖離許容範囲(第1乖離許容範囲および/または第2乖離許容範囲)を縮小してもよい。
【0046】
乖離許容範囲設定部53は、力覚センサ19による検出値(搬送部18が被搬送物60から受ける力やトルク、被搬送物60の重量等)の増加に応じて乖離許容範囲(第1乖離許容範囲および/または第2乖離許容範囲)を拡大してもよい。このように、力覚センサ19による検出値の増加に応じて乖離許容範囲が拡大されるため、搬送部18にかかる力、トルク、重量等が大きい移動する場合であっても乖離許容範囲を外れにくくなる。逆に、乖離許容範囲設定部53は、力覚センサ19による検出値(搬送部18が被搬送物60から受ける力やトルク、被搬送物60の重量等)の減少に応じて乖離許容範囲(第1乖離許容範囲および/または第2乖離許容範囲)を縮小してもよい。
【0047】
また、乖離許容範囲設定部53は、不図示の各種の情報取得部によって取得された、搬送部18による被搬送物60の搬送に関する他の情報(例えば、被搬送物60の形状、サイズ、材質)に応じて、乖離許容範囲(第1乖離許容範囲および/または第2乖離許容範囲)を拡大または縮小してもよい。例えば、被搬送物60の形状、サイズ、材質が搬送部18によって保持しにくい場合、それを搬送する搬送部18は乖離許容範囲を外れやすくなると考えられるため、乖離許容範囲設定部53は乖離許容範囲を拡大するのが好ましい。
【0048】
図6は、搬送部18がピック位置で被搬送物60を取り上げてプレイス位置まで搬送する際の、移動速度取得部52によって取得される搬送部18の移動速度と、乖離許容範囲設定部53によって設定される乖離許容範囲(第1乖離許容範囲および/または第2乖離許容範囲)を模式的に示す。図示の点線は、移動経路設定部51によって設定された搬送部18の移動経路を表す。
【0049】
搬送部18がピック位置の近傍で被搬送物60を持つ際は、搬送部18の精緻な制御が求められるところ、搬送部18の移動速度(例えば、速度指令)は低く設定され、それに応じて狭い乖離許容範囲が乖離許容範囲設定部53によって設定される。同様に、搬送部18がプレイス位置の近傍で被搬送物60を離す際も、搬送部18の精緻な制御が求められるところ、搬送部18の移動速度(例えば、速度指令)は低く設定され、それに応じて狭い乖離許容範囲が乖離許容範囲設定部53によって設定される。このため、ピック位置およびプレイス位置の近傍では、搬送部18が設定された移動経路(点線)に忠実に従って移動する。
【0050】
一方、ピック位置とプレイス位置の間の区間では、求められる制御精度が比較的低いため、搬送部18の移動速度(例えば、速度指令)が高く設定され(例えば、中速または高速)、それに応じて乖離許容範囲が乖離許容範囲設定部53によって拡大される(例えば、中範囲または広範囲)。乖離許容範囲が拡大された状態で搬送部18が速く移動するため、搬送部18は設定された移動経路(点線)から外れて(但し、乖離許容範囲内)移動してもよい。
【0051】
以上のように、搬送部18が被搬送物60を持つ際(ピック位置の近傍)および/または離す際(プレイス位置の近傍)の移動速度および乖離許容範囲は、搬送部18が被搬送物60を搬送している際(ピック位置とプレイス位置の間の区間)の移動速度および乖離許容範囲より小さい。
【0052】
図示の例では、搬送部18の移動速度に応じて乖離許容範囲が連続的に変化しているが、搬送部18の移動速度に応じて乖離許容範囲が段階的に変化してもよい。例えば、乖離許容範囲は、搬送部18の移動速度の三つの範囲(例えば、低速範囲、中速範囲、高速範囲)に応じて、三段階で変化してもよい。
【0053】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0054】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0055】
18 搬送部、19 力覚センサ、33 モータ、35 弾性部材、50 ロボット制御装置、51 移動経路設定部、52 移動速度取得部、53 乖離許容範囲設定部、54 位置制御部、55 異常検知部、60 被搬送物、70 駆動制御部、100 ロボットアーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6