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2025-28569情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028569
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/04 20230101AFI20250221BHJP
   G06N 7/01 20230101ALI20250221BHJP
【FI】
G06N3/04 100
G06N7/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133470
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 賢治
(72)【発明者】
【氏名】加納 明
(72)【発明者】
【氏名】岡 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 竜二
(72)【発明者】
【氏名】石谷 槙彦
(72)【発明者】
【氏名】上原 英晃
(57)【要約】
【課題】複雑系のレジリエンスなどについての解析、可視化および制御を、より効率的に実行する。
【解決手段】情報処理装置は、処理部を備える。処理部は、解析対象に関連する複数の入力データそれぞれの分布を表す多次元の第1確率分布を用いて生成される複数の第1サンプリングデータと、複数の第1サンプリングデータを入力として求められる、解析対象の物理量を表す複数の出力データと、を含む複数の第2サンプリングデータの特徴を表す複数の特徴量を抽出し、抽出した特徴量に対応するノードを含む、物理量に対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象に関連する複数の入力データそれぞれの分布を表す多次元の第1確率分布を用いて生成される複数の第1サンプリングデータと、複数の前記第1サンプリングデータを入力として求められる、前記解析対象の物理量を表す複数の出力データと、を含む複数の第2サンプリングデータの特徴を表す複数の特徴量を抽出し、抽出した前記特徴量に対応するノードを含む、前記物理量に対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルを生成する、
処理部
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、
複数の前記特徴量を制御変数として前記解析対象を制御する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記解析対象から計測される複数の前記入力データであるモニタリングデータを用いて、前記第1確率分布を更新する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、
生成される前記ネットワークモデルの指標を最適化するように、前記第1確率分布を変更し、
変更された前記第1確率分布を用いて複数の前記第1サンプリングデータを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、
複数の前記特徴量に基づいて複数の第3サンプリングデータを生成し、複数の前記第3サンプリングデータの分布を表す多次元の第2確率分布と、前記第1確率分布とが整合するか否かを示す指標を最適化するように、複数の前記特徴量を抽出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、
複数の前記第1サンプリングデータから生成されるハミルトニアンに基づくマトリクスを分解する演算を含む量子演算を実行し、前記量子演算による演算結果に対する最適化処理により、複数の前記出力データを求める、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、
複数の前記第1サンプリングデータの変化率を求める実数最適化問題を二値変数最適化問題に変換し、量子インスパイアード計算または量子コンピュータを用いた計算により前記二値変数最適化問題を解くことにより、複数の前記出力データを求める、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、
量子インスパイアード計算、量子コンピューティング計算、ラグランジアンモンテカルロ計算、ハミルトニアンモンテカルロ計算、または、マルコフ連鎖モンテカルロ計算に基づいて、前記第1確率分布から複数の前記第1サンプリングデータを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記処理部は、
生成した複数の前記第1サンプリングデータの個数に対する、複数の前記第1サンプリングデータのうち対応する出力データが特定の条件を満たすサンプリングデータの個数の割合を表す発生確率を計算する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記処理部は、
前記発生確率が目標値になるように前記解析対象を制御する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記処理部は、
前記第1確率分布を用いて複数の前記第1サンプリングデータを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記処理部は、
複数の前記第1サンプリングデータを入力し、複数の前記出力データを求める、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、
複数の前記第1サンプリングデータを生成する生成部と、
複数の前記出力データを求める解析部と、
前記ネットワークモデルを生成するモデリング部と、
を備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
解析対象に関連する複数の入力データそれぞれの分布を表す多次元の第1確率分布を用いて生成される複数の第1サンプリングデータと、複数の前記第1サンプリングデータを入力として求められる、前記解析対象の物理量を表す複数の出力データと、を含む複数の第2サンプリングデータの特徴を表す複数の特徴量を抽出し、抽出した前記特徴量に対応するノードを含む、前記物理量に対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルを生成するモデリングステップ、
を含む情報処理方法。
【請求項15】
コンピュータに、
解析対象に関連する複数の入力データそれぞれの分布を表す多次元の第1確率分布を用いて生成される複数の第1サンプリングデータと、複数の前記第1サンプリングデータを入力として求められる、前記解析対象の物理量を表す複数の出力データと、を含む複数の第2サンプリングデータの特徴を表す複数の特徴量を抽出し、抽出した前記特徴量に対応するノードを含む、前記物理量に対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルを生成するモデリングステップ、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複雑系の一例であるインフラシステムのダウンタイム削減およびアベイラビリティ向上に向けて、予見、監視、対応および学習から構成されるSafety-IIのコンセプトに基づくレジリエンス・マネジメントが期待されている。Safety-IIの概念に基づき、複雑系の外乱に対するレジリエンス(システムダウンタイム低減など)を向上させ、適切にレジリエンス・マネジメントを行うための解析、可視化および制御を実現する手法が必要となっている。また、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、環境性、経済性およびレジリエンスといった複数の価値を並立させるための解析、可視化および制御を実現する手法も必要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-180873号公報
【特許文献2】特開2022-049067号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Auto-Encoding Variational Bayes, arXiv:1312.6114
【非特許文献2】FFJORD: FREE-FORM CONTINUOUS DYNAMICS FOR SCALABLE REVERSIBLE GENERATIVE MODELS, arXiv:1810.01367
【非特許文献3】NICE: NON-LINEAR INDEPENDENT COMPONENTS ESTIMATION, arXiv:1410.8516
【非特許文献4】A variational eigenvalue solver on a quantum processor, arXiv:1304.3061
【非特許文献5】A Variational Quantum Linear Solver Application to Discrete Finite-Element Methods, Entropy 2023, 25(4), 580
【非特許文献6】A Variational Quantum Algorithm for Generalized Eigenvalue Problems and Its Application to Finite Element Method, arXiv:2302.12602
【非特許文献7】Graph neural networks: A review of methods and applications, arXiv:1812.08434
【非特許文献8】Benjamin Zanger, Christian B. Mendl, Martin Schulz, and Martin Schreiber, “Quantum Algorithms for Solving Ordinary Differential Equations via Classical Integration Methods”, Quantum, 5, 502 (2021).
【非特許文献9】A Comprehensive Survey of Graph Embedding: Problems, Techniques and Applications, arXiv:1709.07604
【非特許文献10】A Comprehensive Survey on Graph Neural Networks, arXiv:1901.00596
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、複雑系のレジリエンスなどについての解析、可視化および制御を、より効率的に実行可能な情報処理システム、情報処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の情報処理装置は、処理部を備える。処理部は、解析対象に関連する複数の入力データそれぞれの分布を表す多次元の第1確率分布を用いて生成される複数の第1サンプリングデータと、複数の第1サンプリングデータを入力として求められる、解析対象の物理量を表す複数の出力データと、を含む複数の第2サンプリングデータの特徴を表す複数の特徴量を抽出し、抽出した特徴量に対応するノードを含む、物理量に対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の情報処理システムのブロック図。
図2】分析部のブロック図。
図3】SoS部のブロック図。
図4】サンプリングデータセットの例を示す図。
図5】特徴量の抽出方法を説明するための図。
図6】複雑ネットワークの構成例を示す図。
図7】複雑ネットワークの構成例を示す図。
図8】蓄電池システム、および、複雑ネットワークの例を示す図。
図9】実施形態のプラットフォームによる情報処理のフローチャート。
図10】変形例1の分析部のブロック図。
図11】変形例1の情報処理のフローチャート。
図12】変形例2の分析部のブロック図。
図13】変形例2の情報処理のフローチャート。
図14】量子古典ハイブリッド計算の流れの例を示す図。
図15】一次元でモデル化した弦を8つの有限要素に分割した例を示す図。
図16】マトリクスに対応する量子回路の例を示す図。
図17】アダマールテストの量子回路の構成例を示す図。
図18】機械系の振動モデルと電気系の振動モデルとの対応関係を示す図。
図19】ランダムネットワークの例を示す図。
図20】フリースケールネットワークの例を示す図。
図21】損傷確率の経時変化の例を示す図。
図22】電流電圧特性を表す等価回路モデルの例を示す図。
図23】情報処理装置のハードウェア構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる情報処理装置の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0009】
以下では、解析の対象となる複雑系である対象システムがインフラシステムである場合を例に説明する。インフラシステムは、例えば、蓄電池システム、風力発電プラント、パワーエレクトロニクス、エレベータシステム、インフラ構造物、分散型エネルギープラント、電力網、水道網、交通網、ロボットシステム、および、通信網などである。対象システムは、インフラシステムに限られるものではない。
【0010】
上記のように、インフラシステムなどでは、適切にレジリエンス・マネジメントを行うための解析、可視化および制御を実現する手法が求められている。
【0011】
ここで、Safety-IIと対比されるSafety-Iについて説明する。Safety-Iとは、原因解析と因果関係に基づく従来の信頼性工学およびリスクベース工学では安全余裕を十分に見込むことによりシステム状態が信頼性限界を超える事象の発生確率を許容できるレベルに抑えることによってアベイラビリティを向上させるコンセプトである。
【0012】
これに対してSafety-IIとは、特定および対策できていないリスクシナリオの存在を認めた上で、正常に稼働する状態に着目し、緩衝力、許容度および柔軟性を高めることにより、システムのアベイラビリティ(レジリエンス)を向上させる新たなコンセプトである。Safety-IIは、うまくいかなくなる可能性をもつこと(Things that might go wrong)を取り除くことに注力するのみではなく、うまくいくこと(Things that go right)の理由を調べ、多種多様な措置および調整をタイムリーに実施できる仕組みづくりにより、正常である状態を維持できる可能性を増大させることといえる。
【0013】
Safety-IIでは、システムの複雑さが飛躍的に増大しており、対象としているシステムは、非線形な相互作用現象も含む複雑系になっていると認識し、インフラシステムに生じる劣化、損傷、故障およびトラブルは、危険およびリスクに繋がる要因を取り除くという従来の方策だけでは避けきれないことに着目している。
【0014】
アベイラビリティ向上(レジリエンス・マネジメント)は、システムができるだけうまくいくような状態として理解される必要がある。アベイラビリティ向上に対する取り組みの目的は、システムがうまく稼働しないのを防ぐということだけではなく、むしろ、システムがうまく稼働することを確実にしていくというコンセプトである。
【0015】
このようなSafety-IIのコンセプトに基づいて、複雑系システムの創発的な挙動および現象に対するレジリエンス・マネジメント(解析、可視化、制御)を実現することが期待されている。しかし、例えばデジタルツインを活用した具体的な方法論は未だ体系化されていない。
【0016】
一方、変分量子アルゴリズムに基づくFEM(Finite Element Method:有限要素法)の量子古典ハイブリッド計算手法、量子インスパイアード計算手法、および、量子コンピューティング手法が提案され実効性が確認されている。しかし、計算の大規模化および高速化以外の具体的な応用およびレジリエンス・マネジメントへの具体的な活用方法は未だ明確化されていない。
【0017】
本実施形態は、Safety-IIのコンセプトを具体的に実現する仕組みおよび方法論を提供する。具体的には、外乱、変化および好機に対して、以下の各部(多次元変数空間のサンプリングデータを生成する生成部、複雑系現象を解析する解析部、特徴量を含む複雑ネットワークをモデリングするモデリング部など)により、少数の特徴量の機能(またはモード)を調整および制御することで正常の範囲に収まるように対処できる仕組みおよび方法を提供する。
【0018】
従来から、ハザードシナリオ解析、リスクシナリオ解析、および、レジリエンス解析など、確率論的なリスク(ハーム)の概念に基づいて安全対策を講ずるリスクベースの安全管理および危機管理の取り組みが行われている。最初に、インフラシステムなどの複雑系を解析するときの問題について説明する。インフラシステムは、パーツ、ユニット(コンポーネントまたはモジュール)、および、サブシステムの間に、複雑な相互作用を有する。システムにおける物理現象の原因と影響度は、十分に解明されていない場合も多く、予期できないイベントが発生し得る。複雑系のモデル化には、不確実性、曖昧性、および、不確定性が内在している。
【0019】
相互作用は、以下のような状態が発生する際に生じやすい。
・共通のモードまたは共通原因の関連
・相互関連したサブシステム
・フィードバックループ
・間接情報
・複数の関連した制御
・限定された理解
・故障機器を孤立させる可能性が限られている
・供給材料の代替が限られている
【0020】
複合的なハザード、設計不備、装置故障、および、運転者のエラーの組合せが複雑な相互作用をもたらす場合もある。複雑系では、外生的要因および内生的要因により、ブルウィップ効果(Bullwhip Effect)、自己相似性、相転移現象、メタ安定性、および、予期しない動作などの非線形現象(創発現象、共鳴現象)が発生し、危機的な状態(クライシス)に至る場合がある。
【0021】
高度に複雑な社会システムに絡む安全問題に対して、従来の技術では対処できないことが認識されるようになってきている。複雑なシステムでは、以下のような現象が事故に繋がる恐れがある。
・要素間の局所的な相互作用から全体または部分的に秩序が発現(時間的および空間的パターン形成)する創発現象
・非線形ではあるが単純で決定論的なメカニズムから複雑で乱雑な挙動が現れるカオス、または、パターン形成(散逸構造など)
・確率統計の基本定理である大数の法則から予想されるよりも高頻度で低頻度事象が起きるファットテール
【0022】
このように、複雑なシステムを構成する要素(システム要素)間、および、外的負荷との間の非線形な相互作用から、システムが不安定になり、新たな全体秩序が形成され、事故に繋がるという事象が問題となっている。
【0023】
システムおよびシステム要素の状態を正常と異常に区別することはできず、その状態は絶えず変動している。この変動はシステムの本質的なものであり、止めたり取り除いたりすることはできない。複雑な技術社会システムにおいて、多数のシステム要素の小さな機能変動が創発現象などを引き起こし、システム全体としての巨大な機能変動を誘発することがある。そのような現象が起きた場合に、多重の安全防護障壁が破綻して、想定を超えるような事故になると考えられる。
【0024】
このような複雑系のインフラシステムのレジリエンス向上では、望ましい状態(安定状態)となる方策が複数存在する場合がある(多安定状態)。
【0025】
また、複雑系のインフラシステムの創発現象では、初期(予兆段階)において、競合するモードが存在し、遷移過程で主流なモード(臨界不安定仮説)が徐々に消滅し、定常状態で安定なモードが出現する場合、および、不安定性が増大しクライシスが起こる場合がある。このため、クライシスの前に、いかに予兆を見出せるか、どのようなデータをモニタリングすれば予兆を捉えられるか、および、不安定性が増大しないようにするにはどのようにインフラシステムを再構成すればよいか、が重要となる。
【0026】
Safety-IIなどの新たなレジリエンスの概念は、上記のような事態に対処するために提唱されるようになった。新たなレジリエンスの概念は、確率論的なリスクの概念に基づいて安全対策を講ずるリスクベースの安全・危機管理を拡張する概念である。新たなレジリエンスの概念では、「予見」、「モニタリング」、「対応」、および、「学習」を、適切なプロセスアプローチと、シミュレーションを活用したレジリエンス向上策の仮説検証、優先順位付け、および、最適化に基づくシステムアプローチと、の元で実行することが重要となる。しかし、プロセスアプローチとシステムアプローチに基づく、具体的なレジリエンス解析の方法論またはフレームワークはまだ確立されていない。
【0027】
重要インフラの相互依存性を考慮したレジリエンス解析も行われているが、モニタリング、物理シミュレーション、化学シミュレーション、サロゲートモデル、最適化、量子インスパイアード計算、量子古典ハイブリッド計算、および、量子コンピューティングが連動したものではない。また、ハザードモデルの不確定性も大きく、ハザードシナリオ、リスクシナリオおよび対策シナリオも限定した範囲で行われている。このため、複雑系のインフラシステムにおけるレジリエンス向上の方策についての仮説検証、優先順位付け、および、効果の可視化を行うには不十分である。
【0028】
本実施形態は、インフラのレジリエンスを、インフラの複雑系・階層型ネットワークの観点から、インフラシステムの分散化、モジュール化および再構成などのレジリエンス向上の方策を行う。これにより外乱に対するレジリエンスポテンシャル(柔軟性、頑健性)を高めることができる。本実施形態では、レジリエンス向上のための方策の仮説検証、優先順位付け、および、効果の可視化を行うためのフレームワーク(方法論)が提供される。
【0029】
本実施形態の情報処理システムによるレジリエンス解析のフレームワークおよび構成要素を以下に示す。以下では、レジリエンス解析および制御は、レジリエンスを解析および制御する機能のみでなく、解析結果、制御方法または制御結果を表示装置などに可視化する機能を含むものとする。
【0030】
効率的な複雑系のレジリエンス解析の実現には、以下のような点のうち少なくとも1つを考慮する必要がある。
(A1)ハザードに関するシナリオ(ハザードシナリオ、リスクシナリオ)、および、対策シナリオは膨大な数になり、対策の優先順位付けおよび最適化を行うのに多大な時間を要する。
(A2)どのような項目をモニタリングすれば複雑系の異常予兆検知およびレジリエンス向上に繋がるか、自明でない場合が多い。
(A3)インフラシステムが受けるハザードのモデリングには大きな不確定性がある。
【0031】
本実施形態にかかる情報処理システムは、より効率的な複雑系のレジリエンス解析を実現するためのフレームワークを提供する。このフレームワークにより、解析およびマネジメント機能をサービスとして提供することができる。顧客は、現状の顧客システムを変更することなく、レジリエンス解析を実行できるサービスを利用可能となる。
【0032】
フレームワークでは、IIoT(Industrial Internet of Things)などの解析およびマネジメントのサービスがAPI(Application Programming Interface)として定義(公開)されること、および、API仕様はOpenAPIおよびWSDL(Web Services Description Language)などの業界標準であることが望ましい。また本実施形態のフレームワークは、例えば、時刻情報(トリガー)および位置情報を同期させる機能を備えてもよい。位置情報は、例えば、GPS(Global Positioning System)、GIS(Geographic Information System)、および、GNSS(Global Navigation Satellite System)を活用することにより同期させることができる。
【0033】
図1は、本実施形態の情報処理システム41の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理システム41は、情報処理装置としてのプラットフォーム100と、エッジ端末200と、サービス提供装置300と、共通サービス400と、を含む。
【0034】
ここで、エッジ端末200は、以下のうちいずれの方法で実現されてもよい。
・実際のセンシング/モニタリング/制御の端末。
・地震観測データ、気象観測データ、交通情報、および、衛星画像データなどのネットワーク経由でデータを取得する計算機上の取得部。
・仮想的に計算機上でセンシング・モニタリングデータを発生させる、または、データベースを参照して想定データを設定するなどの仮想的なエッジ端末(データ生成部またはデータ設定部)。また、エッジ端末200がデータを送信する機能(後述の第1送信部など)も計算機上の仮想的なデータ送信であってもよい。
【0035】
エッジ端末200とプラットフォーム100とは、例えば、IoTバスとして機能するインターフェースにより接続される。プラットフォーム100とエンタープライズサービスとは、例えば、APIなどサービスバスを介して接続される。IoTバスおよびサービスバスの実現方法はどのような方法であってもよい。例えばIoTバスおよびサービスバスは、インターネットなどのネットワーク(有線、無線のいずれであってもよい)により実現することができる。
【0036】
情報処理システム41は、例えばインターネットなどのネットワークを介して外部システム42と接続されてもよい。外部システム42は、サービス提供装置300と連携して動作するシステムである。
【0037】
なお図1では、エッジ端末200、プラットフォーム100、サービス提供装置300、および、外部システム42がそれぞれ1つのみ記載されているが、それぞれ複数備えられてもよい。情報処理システム41全体がCPS(Cyber Physical System)システムに相当すると解釈することができる。また、サービス提供装置300および外部システム42がそれぞれCPSシステムに相当すると解釈することもできる。
【0038】
またプラットフォーム100は、物理的に1つの装置によって構成されてもよいし、物理的に複数の装置によって構成されてもよい。例えばプラットフォーム100は、クラウド環境上で構築されてもよい。また、プラットフォーム100内の各部は、複数の装置に分散して備えられてもよい。
【0039】
エッジ端末200は、エッジ端末200の各種処理を制御する制御部210を備える。例えば制御部210は、以下のような処理を制御する。
・モニタリングデータなどのデータの収集
・プラットフォーム100などの外部装置との間の通信(第1送信部)
・データの分析(データの解析などを含む)
・データの変換
・プラットフォーム100などから送信された制御情報に基づく動作の制御
【0040】
例えば制御部210は、解析対象(制御対象)である対象システムの状態を示すモニタリングデータ(計測データ、監視データ)をプラットフォーム100に送信する機能を制御する(第1送信部)。
【0041】
なお、モニタリング(計測、監視)を実行しない場合、エッジ端末200はプラットフォーム100に含まれてもよい。
【0042】
プラットフォーム100は、記憶部110と、分析部120と、操作部130と、を備える。記憶部110は、エッジ端末200等により収集されたデータ(以下、モニタリングデータという)、および、マスターデータを記憶する。マスターデータは、例えば、エッジ端末200の仕様、使用環境の仕様、設計図、および、メンテナンス履歴等に関するデータである。
【0043】
レジリエンス解析については、マスターデータは、例えば、対象システムの構成を示す構成データ、対象システムに影響する対策を示すデータ、対象システムに影響する行動を示すデータ、対象システムで生じるハザード(障害)をモデル化したハザードモデルを示すデータを含む。
【0044】
記憶部110は、フラッシュメモリ、メモリカード、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、および、光ディスクなどの一般的に利用されているあらゆる記憶媒体により構成することができる。記憶部110は、例えばモニタリングデータとマスターデータとをそれぞれ記憶する複数の記憶部により実現されてもよい。複数の記憶部は、物理的に異なる記憶媒体としてもよいし、物理的に同一の記憶媒体の異なる記憶領域として実現してもよい。
【0045】
分析部120は、記憶部110に記憶されたモニタリングデータを解析する。例えば分析部120は、モニタリングデータを用いたレジリエンス解析を実行する。レジリエンス解析を実行する機能は分析部120に備えられる必要はなく、少なくともプラットフォーム100内に備えられていればよい。
【0046】
操作部130は、分析部120による解析結果などに基づき、エッジ端末200の制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報をエッジ端末200に送信することにより、エッジ端末200を操作する。制御情報は、エッジ端末200の状態を変化させるための情報であればどのような情報であってもよい。例えば制御情報は、通信、エッジ端末200での解析、状態変化、センシング、および、操作の指示等をエッジ端末200(制御部210)に実行させるための情報である。
【0047】
なお、上記各部(分析部120、および、操作部130)の少なくとも一部は、1つの処理部により実現されてもよい。上記各部は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のIC(Integrated Circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2つ以上を実現してもよい。
【0048】
エッジ端末200の制御部210は、モニタリングデータをプラットフォーム100に送信し、プラットフォーム100から制御情報を受信する。制御部210は、制御情報に基づいてエッジ端末200内での制御を行う。制御部210は、変化したエッジ端末200の状態に基づいて、さらにモニタリングデータをプラットフォーム100に送信し、プラットフォーム100から制御情報を受信する。このようなループ(CPSループ)が繰り返されることで、プラットフォーム100に蓄積されたモニタリングデータ、モニタリングデータに対する解析結果に基づく、大量のエッジ端末200の制御が実現される。
【0049】
サービス提供装置300は、モニタリングデータおよび解析結果の少なくとも一方を利用するサービスを提供する装置である。サービス提供装置300は、サービス部310と、ビジネス部320と、SoS(System of Systems)部330と、を備える。
【0050】
サービス部310は、プラットフォーム100に蓄積されたモニタリングデータおよび解析結果を人(管理担当者)が確認すること、CPSループの状態を人の知恵に基づいて人が検査すること、および、人手によりCPSループの状態を変化させること、などのために用いられる。
【0051】
例えば管理担当者は、専門家としての知見に基づき、CPSループの検査、監査、異常発生の検知、および、攻撃などに起因するAI(Artificial Intelligence)の過誤(CPSループの異常)の検知などを実行し、情報処理システム41が、人の目から見て適切に稼働しているかを確認する。管理担当者は、CPSループの異常を知覚した場合には、サービス部310を介して制御情報を送信することにより、または、その他の方法により、CPSループのトラブルシューティングを実行してもよい。
【0052】
ビジネス部320は、モニタリングデータおよび解析結果などを用いたサービスを提供する。例えばビジネス部320は、CRM(Customer Relationship Management)、ERP(Enterprise Resource Planning)、PLM(Product Lifecycle Management)、および、EAM(Enterprise Asset Management)などのサービスを提供する。
【0053】
SoS部330は、複数の内部システムを備え、複数の内部システムの連携等を行う。例えばSoS部330は、サービス提供装置300内で生成される情報、および、プラットフォーム100に蓄積されたモニタリングデータおよび解析結果を用いてCPSループを統括(オーケストレーション)する。
【0054】
複数のサービス提供装置300が備えられる場合、情報処理システム41は、複数のSoS部330を備える。なお、1つのサービス提供装置300が複数のSoS部330を備えてもよい。複数のSoS部330それぞれは、複数の内部システムを備える。複数のSoS部330は、プラットフォーム100を介して連携してもよいし、プラットフォーム100を介さずに連携してもよい。
【0055】
各内部システムは、独立して管理、運用されるシステムであればどのようなものであってもよい。例えば内部システムは、CPSシステムであってもよいし、クラウドサーバまたはMEC(Multi Access Edge Computing)サーバによりサービスを提供するシステムであってもよい。内部システムは、ビジネス部320に相当するサービスを提供するシステムであってもよい。
【0056】
内部システムは、エッジ端末200等からの情報および要求を受信し、受信した情報および要求に応じた情報を返す。内部システムは、エッジ端末200等から受信する情報を集積して、実世界をサイバー世界上に再現する情報(デジタルツイン)を構築してもよい。
【0057】
SoS部330は、分散する複数の内部システムと情報を交換し、単独のシステムでは実現できない機能を提供する。例えば、各内部システムは、原則として、自システム内で制御可能な領域で最適(部分最適)のための制御を行う。これに対してSoS部330は、複数の内部システムを統括し、統括する複数の内部システム全体での最適(全体最適)のための制御を行う。SoS部330は、これに限られず、例えば各内部システムとは異なる機能を提供するシステムであってもよい。
【0058】
内部システムは、それぞれ単一の産業領域(サービス)に関するシステムであってもよい。SoS部330は、例えば、互いに異なる複数の産業領域に属する内部システムを統括する。
【0059】
また、レジリエンス解析については、SoS部330は、統括する複数の内部システムによる複雑系を対象システムとするレジリエンス解析の結果の確認、レジリエンス解析の解析条件(構成データ、行動、ハザードモデルなど)の指定、および、レジリエンス解析の結果に基づく方策の実行などのために用いられる。
【0060】
上記各部(サービス部310、ビジネス部320、および、SoS部330)の少なくとも一部は、1つの処理部により実現されてもよい。上記各部は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPUおよびGPUなどのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のICなどのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2つ以上を実現してもよい。
【0061】
共通サービス400は、情報処理システム41内の各部(エッジ端末200、プラットフォーム100、サービス提供装置300)が共通に利用可能なサービスを提供する装置である。共通サービス400は、例えば以下のような機能を提供する。
・セキュリティ機能
・ロギング機能
・課金機能
【0062】
次に、プラットフォーム100の分析部120の機能の詳細について説明する。図2は、分析部120の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、分析部120は、設定部121と、生成部122と、解析部123と、モデリング部124と、通信制御部125と、を備えている。
【0063】
設定部121は、レジリエンス解析のための各種設定を行う。例えば設定部121は、対象システムに関するシナリオを設定する。設定部121は、サービス提供装置300(SoS部330)からの指定に応じてこれらの設定を行ってもよい。設定部121は、対象システムが再構成された場合は、再構成後の対象システムの構成データを設定する。
【0064】
ここで、シナリオについて説明する。複雑系システムである対象システムのレジリエンス・マネジメントおよびサーキュラーエコノミーといった多様な価値を並立させるための解析、可視化および制御は、シナリオを設定した上で実行される。
【0065】
シナリオとは、ユースケースの実例(インスタンス)であり、ユースケースを実行したときの具体的な流れを表す。各ユースケースは、複数のシナリオの集合として表現され、必要なクラスおよびオブジェクトを抽出するもとになる。シナリオ、および、ユースケースによる実例を通して、対象システムの動きが具体的に表現できる。シナリオには多数の変数が含まれ、確定値もあれば確率モデルに従う確率変数もある。そのため、シナリオは多変数確率分布で表される。各シナリオについて、対象システムの入力に関する変数xと対象システムの応答変数yを含めた変数X=(x,y)に関する多変数確率分布が存在することになる。
【0066】
シナリオは、例えば、シーケンス図、クラス図、コラボレーション図、ステートチャート図などで表現することができる。これらを用いることで、多変数確率分布(多変数確率分布モデル、または、多変数確率モデル)を得ることができる。
【0067】
ユースケースは、対象システムがどのように機能すべきか、および、その外部環境(アクター)を表し、対象システムの振る舞いを示すことができる。ユースケースは、対象システムの外部と内部との境界を明確化できるとともに、顧客要求も明確化できる。アクターとは、対象システムの一部ではなく、対象システムのユーザが果たす役割を表す。アクターは、対象システムと活発に情報交換をしたり、対象システムから受動的に情報を受け取ったりする。人間、ハードウェア、および、外部システムがアクターになりえる。
【0068】
ユースケースは、アクターと対象システムとの間の対話をモデル化するものであり、イベントフローも含む。ユースケースは、アクターによって開始され、対象システムのある機能を実行する。ユースケースは、対象システムのユーザが対象システムを利用して遂行する単位業務の1つを抽象化したものである。ユースケースをすべて集めることにより、対象システムがどう使われるかがすべて表わされる。
【0069】
オブジェクトは、インスタンスとも呼ばれ、現実世界に実際に存在するものであり、状態、振る舞い、および、識別性を有する。オブジェクトの状態とは、そのオブジェクトがとりうる状況を1つ指定したものである。振る舞いとは、オブジェクトがどのように行動したり、他のオブジェクトからの要求に対してどのように反応したりするかを示す。オブジェクトは、それぞれ識別性(アイデンティティ)を持ち、オブジェクトの状態が他のオブジェクトと同一である場合でも別のものとして識別されなければならない。
【0070】
クラスとは、共通の構造および共通の振る舞いを持ったオブジェクトの集合を、抽象的に定義したものである。クラスは、以下のような3つの領域にわけて記述することができる。
・1番目の領域:クラス名
・2番目の領域:構造(属性の集合)
・3番目の領域:振る舞い(操作の集合)
【0071】
本実施形態で設定されうる複数のシナリオそれぞれは、上記のように、変数x=(x,y)に関する多変数確率分布で表される。変数xは、対象システムに関連する複数の入力データに相当し、例えば、負荷、構造、材料特性、境界条件および環境条件などの解析条件に関わる変数である。各シナリオは、m個(mは1以上の整数)の解析条件、すなわち、m個の変数xを含みうる。シナリオを設定することは、解析条件(変数x)の種類を設定すること、および、解析条件の確率分布を設定することの一部または全部を含む。以下では、変数x(解析条件xともいう)それぞれの分布を表す多次元の確率分布(多変数確率分布)を確率分布PA(第1確率分布)という場合がある。
【0072】
生成部122は、確率分布PAを用いて、多次元の複数のサンプリングデータSDA(第1サンプリングデータ)を生成する。例えば生成部122は、確率分布PAが示す確率に応じて各変数xの値をサンプリングし、サンプリングした変数xの値を含むサンプリングデータSDAを生成する。確率分布PAを用いたサンプリングデータの生成方法は、どのような方法であってもよいが、例えば以下のような計算を利用したサンプリング手法を適用できる。
・量子インスパイアード計算
・量子コンピューティング計算
・ラグランジアンモンテカルロ計算
・ハミルトニアンモンテカルロ計算
・マルコフ連鎖モンテカルロ計算
【0073】
生成部122は、多次元変数空間のうち、解析条件に関する変数の変数空間のサンプリングデータを生成する。多次元変数空間とは、解析条件、および、解析条件に対する応答に関する変数空間を意味する。多次元変数空間のうち、応答に関する変数空間のサンプリングデータは、解析部123により生成される。
【0074】
生成部122は、さらに、複雑系システムにおける創発的現象(レアイベントも含む)の発生確率を算出してもよい。発生確率は、例えば、生成した複数のサンプリングデータSDAの個数に対する、対応する応答変数y(出力データ)が特定の条件を満たすサンプリングデータSDAの個数の割合を表す。特定の条件は、例えば、応答変数yが、予め定められたクライテリア(基準)を超える条件である。クライテリアは、創発的現象発生の閾値、または、多次元変数空間におけるクライテリアを表す曲面および関数などにより表される。発生確率は、対象システムの制御などに用いることができる。
【0075】
解析部123は、サンプリングデータSDAを用いて、対象システムの応答変数yを求める解析処理を実行する。例えば解析部123は、生成部122により生成された複数のサンプリングデータSDAを入力データとして入力し、対象システムの物理量を表す複数の出力データ(応答変数y)を求める。応答変数yを求めることは、応答に関する変数空間のサンプリングデータを生成することに相当する。
【0076】
以下では、解析条件に関する変数xのサンプリングデータと、応答変数yのサンプリングデータと、を含む多次元変数空間のサンプリングデータをサンプリングデータSDB(第2サンプリングデータ)という。また、以下では、複数のサンプリングデータSDBを、サンプリングデータセットという場合がある。
【0077】
解析部123は、例えば以下のような手法により、解析処理を実行する。解析部123による解析処理の詳細は後述する。
・量子古典ハイブリッド計算による現象解析
・量子インスパイアード計算による現象解析
・量子コンピューティングによる現象解析
・サロゲートモデルによる現象解析
【0078】
モデリング部124は、サンプリングデータセットを用いて、対象システムに相当する複雑系のネットワークモデル(以下、複雑ネットワークという)を生成する。複雑ネットワークは、例えば、サンプリングデータセットに対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルである。
【0079】
例えばモデリング部124は、まず、サンプリングデータセットの特徴を表す複数の特徴量を抽出する。モデリング部124は、抽出した特徴量に対応するノードを含む複数のノード間の関係を表す複雑ネットワークを生成する。モデリング部124によるモデル生成処理の詳細は後述する。
【0080】
生成部122、解析部123およびモデリング部124の機能により、複雑系現象の特徴量を含む複雑ネットワークを生成することができる。生成された複雑ネットワークは、対象システムの制御などに利用できる。例えば、抽出された特徴量を制御変数として制御することにより、多数の変数を含む対象システムを、少数の特徴量のみで正常に稼働するように制御することが可能となる。このように、本実施形態では、複数の現象が相互依存するような場合でも、複数の応答の相互依存を紐解いた上で、特徴量を調整することにより、複数の応答を望ましい範囲に抑えることが可能となる。特徴量を指標として、一部の変数を制御するように構成されてもよい。例えば、特徴量に強く影響を与える変数を特定し、特定した変数を制御するように構成されてもよい。
【0081】
通信制御部125は、サービス提供装置300などの外部装置との間の通信を制御する。例えば通信制御部125は、解析処理の解析結果を示す情報をサービス提供装置300などの外部装置に送信する。
【0082】
次に、サービス提供装置300のSoS部330の機能の詳細について説明する。図3は、SoS部330の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、SoS部330は、出力制御部331と、管理部332と、を備えている。
【0083】
出力制御部331は、サービス提供装置300により処理される各種データの出力を制御する。例えば出力制御部331は、レジリエンス解析の解析結果に基づいて、解析結果を可視化した情報を出力する。情報の出力方法はどのような方法であってもよいが、例えば、表示装置に情報を表示する方法、および、ネットワークを介して接続される外部装置に情報を送信する方法などを適用できる。
【0084】
管理部332は、レジリエンス解析の解析結果に応じた複雑系の管理(マネジメント)を実行する。例えば管理部332は、解析結果から決定される方策の実行を管理する。上記のように、方策は、複雑系ネットワークの再構成などである。
【0085】
次に、モデリング部124によるモデル生成処理の詳細について説明する。
【0086】
モデリング部124は、まず、設定情報に従って、多次元変数空間のサンプリングデータセットからサンプリングデータセットを抽出する。設定情報は、例えば以下のような情報を含む。
・複雑系システムにおける解析の対象とする対象領域
・対象領域の現象応答(応答変数y)
・シナリオまたは解析条件
・サンプリングデータ数
【0087】
なお、対象領域は、対象システムに含まれる構成要素(以下、ノードともいう)のうち、解析の対象とするノードを含む領域を表す。
【0088】
モデリング部124は、抽出したサンプリングデータセットを入力として、特徴量を含む複雑ネットワークのモデリング(以下、複雑ネットワークモデリング)を行う。
【0089】
図4は、モデリングの入力となるサンプリングデータセットの例を示す図である。シナリオSN1は、例えば設定情報により設定されたシナリオに相当する。図4のシナリオSN1は、m個の解析条件x~xを含む。従って、シナリオSN1を設定することは、解析条件x~xを設定することに相当すると解釈することができる。解析条件x(iは1≦i≦mを満たす整数)それぞれには、多変数確率分布を表すパラメータ(多変数確率モデルのxに関する確率モデルパラメータなど)が対応づけられる。
【0090】
図4では、対象システムに含まれるすべてのノード(r個のノード)における現象応答を表す応答変数y(t)~y(t)が記載されているが、このうち設定情報により設定された応答変数yが、サンプリングデータセットに含める応答変数のデータとして抽出される。例えば対象領域の現象応答としては、r個のノードのうち代表的な(主要な)ノード(代表ノード)に関連する現象応答が設定される。なお、t(t~ts1など)は、サンプリングデータがサンプリングされた時刻を表す。また、サンプリングデータD1、D2を含む複数のサンプリングデータのうち、設定されたサンプリングデータ数のサンプリングデータが抽出される。
【0091】
このように、サンプリングデータセットは、様々なシナリオおよび解析条件に対する複雑系システムの現象応答に関する時間的および空間的な物理量のデータセットである。ノードの現象応答(応答変数y)は、例えば、複数の物理量から構成される変数ベクトル(例えば、電流、温度、荷重など)またはテンソル(応力など)である。
【0092】
シナリオは、例えば、以下のように設定されてもよい。
・ハザードとして、通常運用中の負荷以外に、強風および大規模地震などの稀に発生する事象の確率モデル(解析条件)を含めるかどうか
・劣化シナリオとして、システム冷却性能低下などの劣化事象の確率モデルを含めるかどうか
・保守条件として、部品交換を実施するタイミングの確率モデルを含めるかどうか
【0093】
複雑ネットワークモデリングの入力となるサンプリングデータセットを抽出するための設定情報は、例えば事前に設定される。解析の対象領域(対象領域の現象応答)は、グラフニューラルネットワーク(Graph Neural Network:GNN)などのAI、機械学習、確率論的手法、および、統計的手法を用いた、関係性解析、因果・相関解析、類型化、分類、クラスタリング、階層化、および、ランク付けの手法(例えば非特許文献9)により設定されてもよい。
【0094】
次に、サンプリングデータセット(現象応答に関する時間的および空間的な物理量のデータセット)から、代表ノードに相当する物理量を抽出する手順の例について説明する。
【0095】
まず、対象とする解析条件の集合、および、対象とするサンプリングデータの範囲、すなわち、(x,y)のデータセットにおける範囲が設定される。モデリング部124は、設定された範囲に含まれる全ノードの物理量データセットから、空間的または時間的に類型化(クラスタリング)または階層化しながら、因果相関構造を解析して、応答の変化が大きいノードおよび関連性の大きなノードを、代表ノードとして抽出する。
【0096】
因果相関構造の解析手法としては、例えば以下のようなモデルおよびアルゴリズムが活用できる。
・グラフニューラルネットワークなどの機械学習アルゴリズム
・ベイズモデルおよびマルコフモデルなどの統計確率モデル
【0097】
現象の予測および制御に適する代表的な物理量が事前に判明している場合は、モデリング部124は、事前に得られた情報(設定情報)をもとに代表ノードを抽出してもよい。
【0098】
モデリング部124は、抽出した代表ノードを用いて、複雑ネットワークモデリングの入力とするサンプリングデータセットを生成してもよい。例えば、モデリング部124は、少数のサンプリングデータセットから、代表ノードの物理量を抽出する。モデリング部124は、抽出した代表ノードの物理量について、生成部122および解析部123を用いて、多数のサンプリングデータセットを生成する。モデリング部124は、このようにして生成したサンプリングデータセットを、複雑ネットワークモデリングの入力として用いる。
【0099】
例えば、モデリング部124は、少数のサンプリングデータセット(例えばサンプリング数1000)から、現象の特徴を表現できる代表ノードの物理量に関するデータセットを選択した後で、代表ノードを対象として大量のサンプリングデータ(例えばサンプリング数100万)を生成し、複雑ネットワークモデリングの入力とする。
【0100】
次に、複雑ネットワークモデリングの詳細を説明する。モデリング部124は、入力されたサンプリングデータセットの多変数確率分布が、特徴量から生成される多変数確率分布と整合するように、特徴量を含む複雑ネットワークを生成する。
【0101】
例えばモデリング部124は、サンプリングデータセットの特徴を表す複数の特徴量(特徴量ベクトル、潜在変数ベクトル)を抽出する。特徴量ベクトルの抽出方法はどのような方法でもよいが、例えば、VAE(Variational Auto-Encoder Bayes)およびフローベース生成モデルなどの生成AIアルゴリズムを用いた手法を適用できる。
【0102】
図5は、特徴量(特徴量ベクトルz)の抽出方法の一例を説明するための図である。モデリング部124は、サンプリングデータセット(x,y)をエンコーダ501に入力し、出力される特徴量zを得る。エンコーダ501は、確率分布p(z|x,y)により表される。モデリング部124は、特徴量zをデコーダ502に入力し、出力されるサンプリングデータセット(x’,y’)を得る。デコーダ502は、確率分布p(x,y|z)により表される。
【0103】
このとき、モデリング部124は、特徴量ベクトルzから生成するサンプリングデータセット(x’,y’)の確率分布が、入力された元のサンプリングデータセット(x,y)の多変数確率分布p(x,y)と整合するように、特徴量ベクトルzを抽出する。
【0104】
すなわち、モデリング部124は、特徴量ベクトルzに基づいて複数のサンプリングデータ(第3サンプリングデータ)を含むサンプリングデータセットを生成し、サンプリングデータセットの分布を表す多次元の確率分布(第2確率分布)と、多変数確率分布p(x,y)とが整合するか否かを示す指標を最適化するように、特徴量ベクトルを抽出する。
【0105】
モデリング部124は、確率分布が整合するまで、特徴量ベクトルzの要素数を順次、増やしてもよいが、要素数はできるだけ少ないほうが、制御が容易となる場合が多い。
【0106】
モデリング部124は、抽出した特徴量(特徴量ベクトルz)に対応するノードを含む複数のノード間の関係を表す複雑ネットワークを生成する。ネットワークモデル(複雑ネットワーク)の生成方法はどのような方法でもよいが、例えば、以下のような形式のネットワークモデルを生成する方法を適用できる。
・ノード・リンク(エッジとも呼ぶ)モデル(リンクの関連性の強さも含む)
・AIモデル
・機械学習モデル
・統計確率モデル
【0107】
複雑ネットワークは、時間発展により変化するネットワークであってもよい。
【0108】
本実施形態では、複雑ネットワークは、複雑系現象に関する物理量(力、熱、電流、電圧、および、秩序変数など)の伝達経路、関連性またはパターン形成を表現するためのネットワークモデルに相当すると解釈することができる。本実施形態の複雑ネットワークは、複雑系現象を支配する特徴量を含むネットワークモデルである。
【0109】
例えば、複雑系現象を表現する微分方程式を有限要素法に基づく数値解析手法で解析する場合、有限要素の各要素、各節点、および、各積分点がノードとなりうる。また、複雑系システムの現象応答は、各要素の物理量、各節点の物理量、および、各積分点の物理量を含む。物理量、スカラー(温度、電荷など)、ベクトル(荷重、変位、電流など)、および、テンソル(応力など)のいずれで表されてもよい。
【0110】
各ノードにおける物理量の相互作用は、時間的および空間的な変化を示すデータから相関分析することで計算できる。相関がある値以上のリンクを結ぶと各要素(ノード)間の複雑ネットワーク(ノード・リンクモデル)が生成できる。あるノードの度数(リンクの数)も計算できる。例えば、物理量が集中するノードは度数が大きくなり、局所的な原因だけではなく大域的な影響も受けているノード(集中部)はさらに度数が大きくなる。
【0111】
複雑ネットワークは、コミュニティ同定・分類方法などにより、各集中部の複雑ネットワークをサブネットワークとして類型化(クラスター分類)すること、または、階層化することも可能である。
【0112】
モデリング部124は、複雑ネットワークに関する指標を算定する機能を備えてもよい。指標は、例えば、複雑ネットワークを用いたマネジメントに活用することができる。指標は、ノード間をリンクで接続した複雑ネットワークの特徴および法則性(外乱に対する頑健性、再構成に対する柔軟性、スケーラビリティなど)を示す。複雑ネットワークの算定指標としては、以下の例が挙げられる(非特許文献10参照)。
・複雑系におけるパターン形成の秩序変数および制御変数の抽出
・性能低下、劣化、損傷、破損確率の計算
・スケールフリー指標
・ダイナミックケイパビリティ(外乱に対する頑健性、および、再構成または再構築の容易度など)
【0113】
モデリング部124は、さらに以下のような機能を備えてもよい。
・生成したサンプリングデータの一部を活用して、寿命予測における累積損傷、劣化および異常発生などに関するクライテリア関数(現象応答を変数とした多変数空間における曲面)の確率分布を算出する機能
・上記確率分布を用いて、損傷、劣化および異常発生の発生確率を算出する機能
【0114】
算出された発生確率(レアイベントの発生確率を含む)は、例えば、長寿命化などのレジリエンス・マネジメントの指標として活用することができる。
【0115】
図6は、モデリング部124により生成(モデリング)される複雑ネットワークの構成例を示す図である。図6に示すように、複雑ネットワークは、入力されたサンプリングデータに含まれる複数の応答変数yに相当するノードと、複数のノード間の関係を示すリンク(ノードを結ぶ線)と、を含む。複数のノードのうち、ノード601~604は、より多くの他のノードと接続されるノードであり、例えば、物理量が集中するノードに相当する。図6の例では、ノード601~604は、それぞれ応答変数y、y、yおよびyに対応する。
【0116】
また、複雑ネットワークでは、解析条件に相当する変数x、および、応答変数yに関するサンプリングデータセット(x,y)から抽出された特徴量zと、応答変数yとの関係も表される。図6では、例えば、ノード601(応答変数y)は、変数x、x、x、および、特徴量zと関係することが示されている。
【0117】
図7は、サンプリングデータセットの類型化に基づいて生成される複雑ネットワークの構成例を示す図である。図7は、解析条件x、xに応じてサンプリングデータセットを類型化する例を示す。
【0118】
例えば解析条件xについては、解析条件xに対応するサンプリングデータセットのうち、グラフニューラルネットワークを用いた類型化により代表ノードにおける応答変数yが選択され、選択された応答変数yに対応するノードを含む複雑ネットワーク701が生成される。
【0119】
同様に、解析条件xについては、解析条件xに対応するサンプリングデータセットのうち、グラフニューラルネットワークを用いた類型化により代表ノードにおける応答変数yが選択され、選択された応答変数yに対応するノードを含む複雑ネットワーク702が生成される。
【0120】
次に、生成される複雑ネットワークの具体例について説明する。以下では、対象システムが蓄電池システムである場合の例を説明する。すなわち、蓄電池システムでの複雑系現象(充放電現象の電気回路、発熱および冷却の熱回路網現象)を制御する場合について説明する。
【0121】
図8は、蓄電池システムの構成例、および、この蓄電池システムに対して生成される複雑ネットワークの例を示す図である。図8に示すように、蓄電池システムは、複数の蓄電池モジュール(蓄電池モジュール801a、801bなど)と、電池制御盤802と、冷却用制御盤803と、空冷ファン804a~804cと、を含む。
【0122】
各蓄電池モジュールは、接続線811などにより相互に電気的に接続される。また、各蓄電池モジュールは、接続線812により、電池制御盤802と電気的に接続される。各蓄電池モジュールは、多数の電池セルを含む。各セルも直列および並列に接続される。各セルは、充放電により電流が流れ、発熱する。このため、セルの電流および温度は、蓄電池モジュールおよび蓄電池システム内で、時間的および空間的な分布を持つ。また、充放電波形および温度分布に依存して、各セルの劣化度合も異なる。
【0123】
また、温度分布は、蓄電池システム内における冷却性能および環境にも依存する。蓄電池システム内の全セルを対象として充放電の挙動および温度分布の現象解析を行う場合、各セルおよび各蓄電池モジュールの現象を記述する微分方程式を数値解析するために離散化した各ノード(各節点または各要素)の電流、電圧および温度などが、状態を表す物理量となる。
【0124】
全ノードの物理量を応答変数として複雑ネットワークモデリングを行うよりも、現象の予測および制御に適する代表ノードの物理量を抽出した上で、複雑ネットワークモデリングを行うほうが効率的である。
【0125】
例えば、図8に示すように、蓄電池システム内の各蓄電池モジュールで温度ムラ821a~821cが発生する場合、温度ムラが発生してセルの劣化リスクが懸念されるノードの物理量、および、それらと関連する物理量のみを抽出して、応答変数として複雑ネットワークモデリングを行う。図8の右側に示す複雑ネットワーク内の領域822a~822cは、温度ムラ821a~821cに対応する複数の応答変数に対応するノードを含む領域(複雑ネットワーク内のノード群)に相当する。各ノードに対応する応答変数は、例えば温度、電流、および、電圧などである。解析条件x~xは、関連する応答変数に対応するノードとリンクにより接続される。
【0126】
蓄電池システムでの代表ノードの抽出手順について説明する。以下のシナリオおよび解析条件が設定され、蓄電池システムの運用中に3つの温度ムラ領域が発生する状況を例に説明する。
・シナリオ:冷却方式が空冷ファンによる冷却である。
・解析条件:充放電波形パターン条件、環境温度条件、システム構成条件が、多変数確率モデルで表現される解析条件xである。
【0127】
まず、モデリング部124は、解析条件xに関するサンプリングデータを対象として、グラフニューラルネットワークなどの類型化および因果相関解析手法を用いて、対象とする解析条件ごとに特徴量zを含まない複雑ネットワークを生成する。
【0128】
モデリング部124は、得られた複雑ネットワークから、既定値以上の各ノード間の関連の強さ、または、各ノードの物理量の大きさ(絶対値、変動幅など)などを指標として、現象の特徴を表現できる代表ノードを抽出する。
【0129】
複雑ネットワークが図8の右側に示すように類型化される場合(3つの領域822a~822cにクラスタリングされる)、モデリング部124は、領域ごとに代表ノードを抽出してもよい。また、モデリング部124は、複数のノードをまとめた代表ノードで新たに表現し直すような階層化のネットワークを部分的に含むように複雑ネットワークを生成してもよい。
【0130】
例えば、モデリング部124は、複雑ネットワークの代表ノードに関する応答(例えば応答変数y、y、y10)のみ選択するなど、グラフニューラルネットワークなどを用いて類型化および相関解析して関連性の強い応答を選択する。このような処理を、設定したシナリオおよび解析条件における各シナリオの解析条件ごとに行い、選択したサンプリングデータセットを集めて、特徴量を含む複雑ネットワークモデリングの入力データとする。
【0131】
次に、プラットフォーム100による情報処理について説明する。図9は、本実施形態のプラットフォーム100による情報処理の一例を示すフローチャートである。
【0132】
設定部121は、例えばユーザまたはサービス提供装置300(SoS部330)などからの指定に応じて、シナリオを設定する(ステップS101)。生成部122は、設定されたシナリオに対応する確率分布PAを用いて、解析条件のサンプリングデータに相当する複数のサンプリングデータSDAを生成する(ステップS102)。解析部123は、複数のサンプリングデータSDAを用いた解析処理により、応答(応答変数y)のサンプリングデータを生成する(ステップS103)。
【0133】
モデリング部124は、解析条件のサンプリングデータSDAと応答のサンプリングデータとを含むサンプリングデータSDBのデータセット(サンプリングデータセット)を用いて、対象領域および対象領域の物理量(現象応答)を選択する(ステップS104)。モデリング部124は、選択した対象領域および物理量を用いて、複雑ネットワークを生成し(ステップS105)、情報処理を終了する。
【0134】
(変形例1)
変形例1では、生成される複雑ネットワークが予め定められた要求を満たすまでシナリオを変更して、複雑ネットワークの生成が繰り返される。
【0135】
本変形例では、分析部の機能が、上記実施形態と異なる。図10は、変形例1の分析部120-2の機能構成の一例を示すブロック図である。図10に示すように、分析部120-2は、設定部121と、生成部122と、解析部123と、モデリング部124と、通信制御部125と、最適化部126-2と、を備えている。
【0136】
分析部120-2は、最適化部126-2をさらに備える点が、上記実施形態の分析部120と異なっている。
【0137】
最適化部126-2は、モデリング部124により生成されるネットワークモデルの指標を最適化するように、シナリオを変更する。シナリオを変更することは、シナリオが示す多変数確率分布(確率分布PA)を変更することに相当する。また、上記のように、シナリオを設定することは、解析条件の種類を設定することを含む。また、解析条件は、システム構成条件を含みうる。従って、シナリオを変更することは、例えばシステム構成を変更することを含む。
【0138】
生成部122は、変更された確率分布PAを用いて複数のサンプリングデータSDAを生成する。その後の解析部123などの機能は、上記実施形態と同様である。
【0139】
図11は、本変形例での情報処理の一例を示すフローチャートである。ステップS201~ステップS205は、上記実施形態の情報処理を示す図9のステップS101~ステップS105と同様であるため、説明を省略する。
【0140】
本変形例では、最適化部126-2は、生成された複雑ネットワークが要求を満たすか否かを判定する(ステップS206)。要求を満たすかは、例えば、以下のように判定される。
・特徴量を抽出できる場合、要求を満たすと判定される。
・スケールフリー指標などの算定指標が基準値を満たす場合、要求を満たすと判定される。
・サンプリングデータセットの多変数確率分布と、複雑ネットワークモデリング時に抽出される特徴量から生成される多変数確率分布と、が整合する場合、要求を満たすと判定される。
【0141】
要求を満たさない場合(ステップS206:No)、最適化部126-2は、シナリオを変更する(ステップS207)。その後、ステップS201に戻り、変更されたシナリオが設定されて処理が繰り返される。要求を満たす場合(ステップS206:Yes)、情報処理を終了する。
【0142】
(変形例2)
変形例2は、生成された複雑ネットワークを用いて対象システムを制御する機能、および、モニタリングデータを用いて多変数確率分布を更新する機能を備える例である。
【0143】
本変形例では、分析部の機能が、上記実施形態と異なる。図12は、変形例2の分析部120-3の機能構成の一例を示すブロック図である。図12に示すように、分析部120-3は、設定部121と、生成部122と、解析部123と、モデリング部124と、通信制御部125と、システム制御部127-3と、更新部128-3と、を備えている。
【0144】
分析部120-2は、システム制御部127-3および更新部128-3をさらに備える点が、上記実施形態の分析部120と異なっている。
【0145】
システム制御部127-3は、複雑ネットワークモデリングで抽出された特徴量の値を調整することにより、複雑系システムの1つ以上の応答を制御する。例えばシステム制御部127-3は、複数の特徴量を制御変数として対象システムを制御する。
【0146】
生成部122などにより、創発的現象(レアイベントも含む)の発生確率が算出される場合、システム制御部127-3は、発生確率が目標値になるように対象システムを制御してもよい。
【0147】
更新部128-3は、対象システムから計測されるモニタリングデータを用いて、多変数確率分布(確率分布PAなど)を更新する。例えば更新部128-3は、対象システムに関する現象のモニタリングデータが存在する場合に、逆解析により、多変数のうちモニタリングデータに対応する変数を同定し、同定した変数について、事前に設定した確率分布を事後分布に更新する。モニタリングデータは、実測データである必要はなく、例えば、シミュレーションにより模擬生成したサンプリングデータであってもよい。
【0148】
なお、生成された複雑ネットワークを用いて対象システムを制御する機能(システム制御部127-3)、および、モニタリングデータを用いて多変数確率分布を更新する機能(更新部128-3)は、独立に実行されうる。従って、分析部120-3は、システム制御部127-3および更新部128-3のうちいずれか一方を備えるように構成されてもよい。
【0149】
図13は、本変形例での情報処理の一例を示すフローチャートである。ステップS301~ステップS305は、上記実施形態の情報処理を示す図9のステップS101~ステップS105と同様であるため、説明を省略する。
【0150】
本変形例では、システム制御部127-3は、生成された複雑ネットワークに含まれる特徴量を制御変数として、対象システムを制御する(ステップS306)。
【0151】
また、更新部128-3は、モニタリングデータを用いて、確率分布を例えば事後分布に更新する(ステップS307)。
【0152】
次に、解析部123による解析処理の詳細について説明する。まず、量子古典ハイブリッド計算による現象解析を実行する場合の解析部123の構成例を説明する。
【0153】
この場合、解析部123は、主に以下の2つの機能を備えるように構成される。
(F1)変分量子アルゴリズム
(F2)(古典計算による)最適化アルゴリズム
【0154】
例えば解析部123は、生成部122により生成された多次元の複数のサンプリングデータSDAから生成されるハミルトニアンに基づくマトリクス(行列)を分解する演算を含む量子演算を実行し(上記F1)、量子演算による演算結果に対する最適化処理により、複数の出力データを求める(上記F2)。
【0155】
上記2つの機能についてさらに説明する。(F1)では、解析部123は、解析条件(負荷、構造、材料特性、境界条件および環境条件など)を用いて、有限要素法などの微分方程式の数値計算手法によりメッシュモデル(FEMメッシュ)を含む現象解析モデルを生成する。現象解析モデルは、例えば、解析条件に相当する変数xを入力して、現象応答(応答変数y)を出力するためのモデルである。解析部123は、現象解析モデルを用いて、量子古典ハイブリッド計算用のハミルトニアンおよびハミルトニアンのマトリクス形式を生成する(ハミルトニアン/マトリクス形式生成部)。一般に、ハミルトニアンのような物理量はマトリクス形式で表現することができる。
【0156】
例えば、連続体力学で表現される現象の場合、解析部123は、特許文献2などの手法により、エネルギー汎関数を出力する現象解析モデルを生成する。エネルギー汎関数φは、例えば、以下の(1)式で表されるFEMの要素ごとのエネルギー汎関数φEeを、(2)式に示すようにFEMの全要素について和を取ることにより算出される。
【数1】
【数2】
【0157】
なお、uは変位、σは相当応力、εは相当ひずみ、Fは境界に作用する外力ベクトル、Vは物体の体積、Sは表面積を示す。第2項は、相当応力と、相当ひずみ速度の増分と、の積分に相当する。第3項は、物体が外力に対してなす仕事(外力ベクトルと速度との積)に相当する。
【0158】
解析部123は、エネルギー汎関数からラグランジアンを計算し、ラグランジアンをルジャンドル変換することによりハミルトニアンを生成する。ハミルトニアンの生成方法はこれに限られず、他のどのような方法が用いられてもよい。
【0159】
また、解析部123は、現象を記述する微分方程式を、有限要素法およびガラーキン法により弱形式で表現することで、ハミルトニアンのマトリクス形式(剛性マトリクス、変位ベクトル、荷重ベクトル)を生成することができる。
【0160】
以下の(3)式および(4)式は、生成されるマトリクス形式の例を示す。Kは剛性マトリクス、Mは質量マトリクス、uは変位ベクトル、fは荷重ベクトル、kは時間ステップを表す。
【数3】
【数4】
【0161】
連続体力学で表現できる現象以外の現象についても、同様の手法を適用できる。例えば、電気回路および熱回路などの現象を記述する微分方程式もマトリクス形式で表現することが可能である。
【0162】
質量マトリクスMおよび剛性マトリクスKにより表される(4)式のマトリクスA(=M+ΔtK)が対称行列またはエルミート行列でない場合は、以下の(5)式に示すように、マトリクスの転置行列を加えて対称化することができる。
【数5】
【0163】
ここで、u’およびf’は、元のマトリクス形式には影響しないので任意性がある。対称化した行列は、次元は増えるが、スパースな行列であるため、スパースソルバーを活用して縮約することも可能である。
【0164】
一般的に、対称行列またはエルミート行列は、行列を対角化して固有値と固有ベクトルを求めることが可能となる。
【0165】
次に、解析部123は、前処理として、マトリクス形式におけるマトリクスを、パウリ演算子のテンソル積に関する線形和により分解することで、量子回路として表現する。解析部123は、量子回路を用いて、固有値および固有ベクトルを暫定的に求める。
【0166】
ここまでの処理が、マトリクスを分解する演算を含む量子演算(上記F1)に相当する。この後、解析部123は、量子演算による演算結果に対する最適化処理(上記F2)を実行する。
【0167】
すなわち、解析部123は、変分原理に基づく古典的な最適化アルゴリズム(古典計算による最適化アルゴリズム)により、変分原理の指標となる最適化指標(エネルギー関数、価値関数、または、コスト関数とも呼ばれる)を目的関数として、固有値および固有ベクトルを更新する。
【0168】
解析部123は、固有値と固有ベクトルの組み合わせにより、現象応答である応答変数yを求めることができる。応答変数yを含むサンプリングデータセット(x,y)が予め指定された数まで蓄積された段階で、解析部123は、逆解析アルゴリズムを実行する。
【0169】
逆解析アルゴリズムは、サンプリングデータとモニタリングデータとを整合させるための処理である。例えば解析部123は、変数xに関する確率分布を更新しながら、サンプリングデータがモニタリングデータと整合するまで繰り返し解析処理を行う。例えば、上記の更新部128-3による処理と同様に、確率分布が事後分布に更新される。モニタリングデータと整合したときのサンプリングデータ(応答変数yを含むサンプリングデータ)が、解析処理の結果として出力される。
【0170】
図14は、量子古典ハイブリッド計算の流れの例を示す図である。指標1401は、最適化指標の初期値に相当する。計算1402および計算1403は、それぞれ変分量子アルゴリズム(上記F1)および、最適化アルゴリズム(F2)に相当する。
【0171】
変分パラメータθは、各量子ビットの状態に関するパラメータセット、Jはパラメータ数、Lは変分原理における最適化指標である。複雑系システムの現象に関する状態量(未知のベクトルu)は、量子ビットの状態の網羅的な組み合わせ集合から古典的な最適化計算(計算1403)を通じて抽出される。
【0172】
次に、複雑系システムの現象に関するハミルトニアン(ラグランジアンにも変換可能)に付随するマトリクスをパウリ演算子のテンソル積に関する線形和により分解することで、量子回路として表現する例を以下に示す。
【0173】
以下では、弦の振動問題をポアソン方程式で記述して、FEMによる数値解析を行う例を説明する。より具体的には、弦を一次元でモデル化し、8要素に分割する場合について説明する。図15は、一次元でモデル化した弦を8つの有限要素に分割した例を示す図である。なお、要素の下のφ~φは、ガラーキン法の試行関数を表す。
【0174】
弦の挙動を表す方程式は、以下の(6)式のように、1次元の波動方程式で表される。
【数6】
【0175】
境界条件および初期条件が、(6)式内に記載された条件である場合、1次元の波動方程式は、ガラーキン法の試行関数φ(および形状関数)により、以下の(7)式に示す弱形式で表現できる。
【数7】
【0176】
さらに、弱形式は、時間ステップΔt,kステップでの変位をuとして時間に関して離散化することにより、(4)式と同様のマトリクス形式で表現できる。
【0177】
図15の例の場合、マトリクスAは、8×8次元の対称行列であり、以下の手順で求められる質量マトリクスMおよび剛性マトリクスKを用いて、M+ΔtKにより表される。
【0178】
弱形式は、時間方向にNewmark-β法で離散化すると、以下の(8)式から(10)式のように表される。ここで、β=0の場合は、中心差分法による陽解法となり、β=1/6の場合、線形加速度法の陰解法となる。
【数8】
【数9】
【数10】
【0179】
図15の例の場合、8要素に分割されるため、h=1/8として、剛性マトリクスKおよび質量マトリクスMは、それぞれ以下の(11)式および(12)式のように、9×9次元の対称行列で表される。なお、hは、有限要素の単位空間寸法を示す。
【数11】
【数12】
【0180】
ディレクレ境界条件であるu=u=0を適用すると、剛性マトリクスKよび質量マトリクスMは、それぞれ以下の(13)式および(14)式のように、8×8次元の対称行列で表される。
【数13】
【数14】
【0181】
一般に、エルミート行列であるマトリクスAは、以下の(15)式および(16)式のように表現できる。
【数15】
【数16】
【0182】
(15)式および(16)式では、σはパウリ行列(パウリ演算子)を表す。×印を丸で囲った記号はテンソル積を表す。nは、量子ゲートの数を表す。マトリクスのサイズNは、N=2となる。jは、ゲートの種類を表す(例えばパウリゲートX、Y、ZおよびI)。Trは行列のトレースを表す。
【0183】
ここで、剛性マトリクスKおよびエルミート行列Aを、対角項と非対角項Aに分けて考えると、以下の(17)式および(18)式で表される。
【数17】
【数18】
【0184】
今回のケースでは、対角項は単位行列Iの定数倍として表現できる(複雑なケースでは、パウリゲートZを用いる)。非対角項Aは、パウリゲート(特にXまたはY)の組み合わせで表現できる。
【0185】
例として、量子ビットが2個の場合を考えると、非対角項Aは、以下の(19)式に示すように、パウリ行列の組み合わせで表現できる。
【数19】
【0186】
同様に、量子ビットが3個の場合の非対角項Aは、以下の(20)式に示すように、パウリ行列の組み合わせで表現できる。
【数20】
【0187】
このように、現象を記述できるハミルトニアンなどの物理量に関連するエルミート行列であるマトリクスAをパウリ行列の積に分解することによって、マトリクスAに対応した量子回路を作成することができる。本実施形態では、マトリクスAの分解の仕方は一意ではなく、古典計算による最適化により収束するように、マトリクスAの分解の仕方を修正しながら、量子古典ハイブリッド計算が行われる。
【0188】
図16は、マトリクスAに対応する量子回路の例を示す図である。なお、図16は、量子ビットが2個の場合の非対角項Aに対応する量子回路の例を示す。
【0189】
例えば、非対角項Aは、2つの量子ビットをそれぞれ|q>、および、|q1>とすると、以下の(21)式で表すことができる。(21)式の右辺の第一項、第二項および第三項は、それぞれ図16に示す量子回路に対応する。
【数21】
【0190】
なお、任意の量子ゲートは、パウリ行列の組み合わせとして記述することが可能である。ここではパウリ行列のみを用いてエルミート行列Aの非対角項Aを表現しているが、その他の量子ゲートを併用して量子回路が構成されてもよい。一般的には、アダマールゲートH、制御NOT(制御X)ゲートC^、および、各軸周りの回転ゲートR^、R^、R^などが用いられる。
【0191】
コスト関数(最適化指標)を計算するためには、各演算子の期待値を求める必要があるが、その際にアダマールテストと呼ばれる量子回路が用いられる。図17は、アダマールテストの量子回路の構成例を示す図である。図17は、任意の状態|ψ>とユニタリ行列Uに対する期待値<ψ|U|ψ>を計算するアダマールテストの量子回路の例を示す。図17中のゲートGは、アダマールゲートHまたは回転ゲートR^(π/2)である。
【0192】
アダマールテストでは、任意の状態|ψ>の他に、期待値を測定するためのテストビット|0>を用意する。テストビットにゲートG(期待値の実部を測定する場合はアダマールゲートH、期待値の虚部を測定する場合は回転ゲートR^(π/2))を作用させ、その後、テストビットを制御ビットとした制御Uゲートを作用させる。最後に、テストビットにアダマールゲートHを作用させてから、測定が行われる。テストビットが|0>となる確率をP0、|1>となる確率をP1とすると、以下の(22)式に示す計算により、期待値が求められる。
【数22】
【0193】
解析部123は、以上の手法を用いて、コスト関数を計算し、コスト関数の値を最小化するように未知のベクトルu(変位ベクトルu)を変更する。これにより、微分方程式の解を得ることができる。
【0194】
次に、解析処理をレジリエンス・マネジメントに適用する例について説明する。以下では、インフラシステム(例えば蓄電池システム)のレジリエンス・マネジメントを例に説明する。解析処理の適用はレジリエンス・マネジメントに限られず、その他のどのような処理に適用されてもよい。例えば、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、環境性、経済性およびレジリエンスといった複数の価値を並立させるための解析、可視化および制御にも適用することができる。
【0195】
大規模な蓄電池システムでは、数万個以上の電池セルが多直列および多並列に接続され、電流および電圧の回路(ネットワーク)網(抵抗、コイル、コンデンサ)が形成され、熱についても回路(ネットワーク)網が形成される。
【0196】
使用条件および冷却性能条件により、充放電の時間的および空間的な波形パターンは様々である。冷却性能によっては、各セル間で温度ムラが生じる場合がある。電池セルの劣化は、充放電サイクル数、SOC(State Of Charge)、Cレート、および、温度などに大きく依存する。
【0197】
対象とする蓄電池システムの構成およびシナリオの候補としては、以下の項目の組み合わせが挙げられる。
・構造/構成/レイアウト条件
・冷却方式および冷却性能条件
・様々な電流波形パターンまたは電圧波形パターン
・冷却性能依存の様々な温度波形パターン
・充放電条件と温度条件の相関条件
・充電するときの電荷が残っている割合
・満充電まで待たずに充電を中断する条件
・充放電の合間の放置期間条件
・リユース/リファービッシュ/リパーパスなどの保守および更新のタイミング
【0198】
本実施形態では、想定される膨大なシナリオを類型化し、それぞれのシナリオ群について、少数の変数で、温度ムラが抑制され、電池のセル劣化が抑制されて長寿命になるように対象システムを制御する。シナリオ群の類型化は、例えば、定期的な保守および更新を行うシナリオの場合、行わないシナリオの場合、または、冷却方式が空冷のシナリオの場合および水冷方式のシナリオの場合などが挙げられる。
【0199】
図18は、機械系の振動モデルと、電気系の振動モデルとの対応関係を示す図である。機械系の振動モデルは、連続体力学による微分方程式が適用可能なモデルであり、例えば、質量-バネ-ダンパ系の振動モデルである。図18に示すように、機械系の振動モデルと、電気系の振動モデルとの間には対応関係があるため、電気回路の解析にも、上記のような連続体力学に関する微分方程式の数値解法を適用することができる。
【0200】
例えば、蓄電池システムに含まれる各回路網(電流および電圧の回路網、熱回路網など)の微分方程式は、それぞれ上記の(4)式に示すようなマトリクス形式で表すことができる。蓄電池システムの場合、マトリクス形式の各要素は、例えば以下のように対応する。
・マトリクスA:抵抗、コイル、コンデンサ(容量)
・ベクトルu:電荷または電流
・ベクトルf:電圧
【0201】
マトリクス形式で表現される式は、直交固有展開を用いて縮約することが可能である。直交固有展開を多質点系の2階の微分方程式に適用し、縮約化により高速化する例を以下に示す。
【0202】
多自由度の減衰強制振動の運動方程式は、以下の(23)式のように表される。(23)式を解くには、逆行列の計算が必要となるため、計算時間がかかる。ここで、u(t)は変位、[M]は質量マトリックス、[C]は減衰マトリックス、[K]は剛性マトリックス、F(t)は時間依存の加振荷重である。
【数23】
【0203】
実際の変位u(t)を変換マトリックス[φ]を用いて、以下の(24)式に示すように変換する。ここで、ξ(t)は縮約化された変位である。
【数24】
【0204】
変換マトリックス[φ]は、以下の(25)式のように定義される。ここで、{φj}(j=1,・・・,N)は、特徴量ベクトルである。解くべき方程式は、以下の(26)式のように表現される。
【数25】
【数26】
【0205】
ここで、特徴量ベクトルとして、以下の(27)式で示すような固有値解析から得られる固有ベクトルを用いた場合について示す。なおωは固有振動数である。
【数27】
【0206】
{φj}は、固有値解析で得られたj番目の固有値に対応する固有ベクトルである。この固有ベクトルを用いると、剛性マトリクスと質量マトリクスは対角化される。減衰マトリックスは一般的には対角化されないが、対角化されると仮定すると、以下の(28)式が成り立つ。
【数28】
【0207】
これらの結果を用いると、運動方程式の行列が対角成分のみになり、j番目の固有モードに対応する運動方程式は、以下の(29)式に示す常微分方程式で表される。ζ、ωは、以下の(30)式より得られるモード減衰比、および、固有振動数をそれぞれ表す。
【数29】
【数30】
【0208】
初期条件が以下の(31)式で表される場合、Duhamel積分(畳み込み積分)を用いて(29)式は以下の(32)式のように表される。ωは、以下の(33)式で定義される減衰固有振動数である。
【数31】
【数32】
【数33】
【0209】
(32)式は、以下の(34)式~(37)式に示すように展開することができる。
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
【0210】
解析部123は、得られたξを(24)式に代入することにより変位u(t)を計算することができる。減衰がない場合は、ζj=0となり、簡単に積分が可能である。このように特徴量ベクトルを用いて簡略化することで、微分方程式をより高速に解くことが可能となる。
【0211】
Duhamel積分は、効率のよい計算ができない場合がある。このような場合は、Duhamel積分の代わりにNigamの方法が用いられてもよい。
【0212】
減衰マトリックスが対角化されない場合は、誤差が大きくなる。回路シミュレーションにおいて、レジスタンスとキャパシタンスに比べてインダクタンスが無視できる場合は、等価回路は、以下の(38)式に示すような1階の微分方程式で記述される。
【数38】
【0213】
(38)式にC-1を乗じると、以下の(39)式が得られる。(39)式の形式解は、以下の(40)式に示すDuhamel積分で表される。
【数39】
【数40】
【0214】
以下の(41)式から求まる固有値λ、固有ベクトルφ(1≦i≦g)を用いると、以下の(42)式が成り立つ。
【数41】
【数42】
【0215】
g個の固有値を使用すると、(42)式は、(43)式で表される。ここで、Λ=diag(λ,・・・,λ)、Φ=[φ,・・・,φ]である。
【数43】
【0216】
固有ベクトル用いると、(40)式に含まれる指数関数に関連する箇所は、以下の(44)式に示すように計算できる。
【数44】
【0217】
Φ=[0,・・・,φ,・・・,0]Φ-1と定義すると、(40)式は、以下の(45)式に示すように簡略化することができ、より高速に解くことが可能となる。
【数45】
【0218】
2階の微分方程式で、減衰マトリックスの非対角成分の影響が大きく、剛性マトリクスと質量マトリクスが無視できない場合は、以下の(46)式~(48)式に示すように状態方程式を定義する。
【数46】
【数47】
【数48】
【0219】
これらの状態方程式も、Duhamel積分を用い、簡略化することができ、より高速に解くことが可能となる。
【0220】
なお、熱回路網法により、伝熱経路は、電気回路と同様の方程式に置き換えが可能である。従って、上記の方法は伝熱計算にも適用することができる。
【0221】
次に、図6のような複雑ネットワークを用いて、蓄電池システムを制御する例を説明する。この場合、図6の複雑ネットワークでは、例えば、入力変数x(解析条件変数x)は、蓄電池システムの使用条件(冷却性能条件など)および負荷波形であり、応答変数yは、電流、電圧および温度である。
【0222】
このとき、特徴量z1、を抽出できれば、特徴量z1、に大きな相関のあるノード(図6ではノード601~604)に着目し、これらのノードに関連する入力変数xについて温度ムラを抑制するように制御することができる。これにより、電池の劣化を抑えて長寿命化させるマネジメントが容易になる。
【0223】
入力変数xと特徴量zとの関係性から、例えば、特徴量zは温度ムラ抑制のための特徴量、特徴量zは冷却方式の装置稼働による消費電力に関する特徴量というように意味づけできる。これにより、温度ムラを抑制することによる長寿命化と、消費電力を抑えてカーボンフットプリントを最小化することを両立するためのマネジメントも効率的に実施可能となる。
【0224】
抽出した特徴量z、入力変数xおよび応答変数yの関係は、例えば因果相関モデルで表される場合と、確率分布のみで表される場合とがある。以下、これらの2つの場合それぞれについて、応答変数yを制御する方法の例を説明する。
【0225】
特徴量z、入力変数xおよび応答変数yの関係が因果相関モデルで表される場合、特徴量zおよび入力変数xに関する微分方程式を得ることができる。従って、例えばシステム制御部127-3は、入力変数xを用いて特徴量zを制御することにより、入力変数xを用いて効率的に応答変数yを制御することができる。
【0226】
このとき用いる制御手法としては、制御する応答変数yの数、および、制御変数として使用できる入力変数xの数に応じてPID(Proportional-Integral-Differential)制御、モデル予測制御および合意制御などが適用できる。
【0227】
例えば1つの応答変数yを、1つの入力変数xを制御変数として制御するような場合には単純なPID制御が用いられる。このとき、予め抽出した特徴量zに基づいて制御する応答変数yのノードを選択することで、より効率的な制御が可能である。
【0228】
また、複数の応答変数yを少数の入力変数xで制御するような場合には、モデル予測制御が用いられる。モデル予測制御を用いることで、複数の応答変数yからなる複雑なダイナミクスを制御できるだけでなく、応答変数yを一定の範囲で動作させるなどの制限を直接扱うことができる。また、セルの寿命を目的関数とすることも可能となる。このときにも、制御する応答変数yのノードを特徴量zに基づいて選択することで効率的な制御が可能である。
【0229】
また、複数の応答変数yを複数の入力変数xで制御するような場合には、合意制御が用いられる。合意制御は、特に大量のセルをそれぞれ制御することで、蓄電池システム全体を制御する場合に有効である。このとき、各セルの制御則の設計に特徴量zと応答変数yとの関係性を用いることで、効率的な制御が可能である。
【0230】
また、各セルの波形をもとに蓄電池システム全体の寿命を最大化することを目的とする制御の場合には、モデル予測制御を用いることで寿命を最大化する制御が可能となる。このとき、抽出した特徴量zと応答変数yとの関係性を用いることで、モデル予測制御で扱うモデルを応答変数yではなく特徴量zで記述することができる。これにより、モデルの次元が小さくなるため、効率的な制御が可能となる。
【0231】
次に、特徴量z、入力変数xおよび応答変数yの関係が確率分布モデルのみで表される場合の例を説明する。この場合、特徴量zを指標として応答変数yの動作範囲を設定することができる。望ましい特徴量zの範囲を定めて応答変数yのサンプリングを行うことで、応答変数yに関する望ましい動作範囲を得ることができる。また、応答変数yがこの動作範囲となるように入力変数xを用いて制御することで、間接的に特徴量zの制御も可能となる。
【0232】
この場合にも、制御する応答変数yの数および入力変数xの数に応じて、PID制御、モデル予測制御および合意制御などが適用できる。例えば温度ムラを制御する場合には、温度ムラに関する特徴量zを用いて、サンプリングにより応答変数yの温度分布に関する動作範囲を得ることができる。そして、ファン回転量などの入力変数xにより、応答変数yの温度分布を得られた動作範囲になるよう制御することで、温度ムラを制御することができる。
【0233】
このように、蓄電池システムの制御の際に、抽出した特徴量zと応答変数yとの関係を用いることで効率的な制御が可能となる。
【0234】
次に、本実施形態を、風力発電プラントのドライブトレイン構造のレジリエンス・マネジメントに適用した例を示す。
【0235】
例えば、風力発電プラントが風作用および地震荷重を受けた場合、負荷波形および据え付け公差による軸ずれの組み合わせで、創発的に過大な負荷波形を誘発する恐れがある。ドライブトレインにおける物理量(力など)の伝達経路を示す複雑ネットワークは、システム構成、構造、負荷条件および据付公差の組み合わせのシナリオに応じて、ランダムネットワークになる場合もあれば、フリースケールネットワークになる場合もある。なお、複雑ネットワークは、その他のスモールネットワークなどになる場合もある。物理量については、風および地震荷重の波形における疑似周期を仮定して、疑似周期における各位相での物理量で代表させるなどの前処理が行われてもよい。
【0236】
図19は、ランダムネットワークの例を示す図である。図20は、フリースケールネットワークの例を示す図である。図19のノード1901は、破損が懸念される箇所である軸受に相当する。図20のノード2001~2003は、例えば特徴量に大きな相関のある代表ノードに相当する。ノード2011は、破損が懸念される箇所である軸受に相当する。
【0237】
複雑ネットワークの形態に応じて、損傷確率の経時変化は大きく異なる。図21は、複雑ネットワークが、ランダムネットワークである場合、および、フリースケールネットワークである場合の損傷確率の経時変化の例を示す図である。図21の上部のグラフの横軸は経過時間(年など)を表し、縦軸は予測される損傷確率を表す。
【0238】
図21の下部のグラフは、横軸が累積損傷値(Cumulative damage value)、縦軸が確率密度(Probability density)であるグラフを表す。下部のグラフに示されるように、ランダムネットワークの場合、ファットテール現象が発生する場合がある。
【0239】
このような特性のある風力発電プラントのドライブトレイン構造について、ダウンタイムを削減するためのレジリエンス・マネジメントを行うときに、本実施形態を適用することができる。
【0240】
例えば、図6のような複雑ネットワークを用いて、ドライブトレイン構造を制御する場合、例えば、入力変数x(解析条件変数x)は、風作用および地震荷重の負荷波形であり、応答変数yは、ドライブトレイン構造に発生する応力である。
【0241】
このとき、特徴量z1、を抽出できれば、特徴量z1、に大きな相関のあるノード(図6ではノード601~604)に着目し、これらのノードを調整(例えば緩衝構造を設置して過大負荷を調整など)することで、過大負荷を緩衝し、アベイラビリティを容易に向上させることができる。
【0242】
次に、量子インスパイアード計算または量子コンピューティングによる現象解析を実行する場合の解析部123の構成例を説明する。以下では、対象システムが大規模な蓄電池システムである場合を例に説明する。また、以下では、蓄電池システムを構成する電池セル単体の電流電圧特性を対象に量子インスパイアード計算または量子コンピューティングを用いる例を説明する。
【0243】
図22は、各電池セルの電流電圧特性を表す等価回路モデルの例を示す図である。蓄電池システム2210は、複数の電池セル2211を含む。各電池セル2211は、等価回路2201で表現される。
【0244】
ある時刻tにおける電池セル2211の電圧v(t)は、以下の(49)式に示す回路方程式で与えられる。
【数49】
【0245】
電池電圧挙動の時間発展を計算するため、古典コンピュータを用いて、以下の(50)式に示すように離散時間における数値積分を行うとする。各RC並列要素における電圧v,v,vの時間発展を計算するためには、v,v,vに関する常微分方程式から、各時刻における各電圧v,v,vの変化率f(i,v)を求める必要がある。
【数50】
【0246】
陰解法によりf(i,v)を計算するときは任意の最適化手法を用いて、任意の陰解法スキームに対応するf(i,v)(実数最適解)を求めればよい。
【0247】
ここで、量子インスパイアード計算、または、量子コンピュータで扱えるのは基本的に二値変数のみである。このため、本実施形態では、二値変数を用いた実数の近似的表現を導入することで、実数最適化問題を二値変数最適化問題として扱う。二値変数最適化問題は、例えば、二次制約なし二値変数最適化問題(Quadratic unconstrained binary optimization:QUBO)である。
【0248】
これにより、例えば図22に示すような電流電圧特性を示す等価回路の解析に、量子インスパイアード計算、または、量子コンピュータが使用可能となる。例えば、解析部123は、複数の応答変数yの変化率を求める実数最適化問題を二値変数最適化問題に変換し、量子インスパイアード計算または量子コンピュータを用いた計算により二値変数最適化問題を解くことにより、複数の応答変数y(出力データ)を求めることができる。
【0249】
特にQUBOのような組み合わせ最適化問題を解くことに特化した量子インスパイアード計算、または、量子アニーリング方式の量子コンピュータを用いることで、蓄電池システムを構成する各電池セル2211の挙動を古典計算に比べて高速に解析可能となる。
【0250】
なお、サロゲートモデルによる現象解析を実行する場合、解析部123は、例えば特許文献1に記載の手法により解析処理を実行することができる。
【0251】
以上説明したとおり、実施形態によれば、複雑系のレジリエンスなどについての解析、可視化および制御を、より効率的に実行することができる。
【0252】
次に、実施形態の情報処理装置のハードウェア構成について図23を用いて説明する。図23は、実施形態の情報処理装置のハードウェア構成例を示す説明図である。
【0253】
実施形態の情報処理装置は、CPU51などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)52やRAM53などの記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F54と、各部を接続するバス61を備えている。
【0254】
実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムは、ROM52等に予め組み込まれて提供される。
【0255】
実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるように構成してもよい。
【0256】
さらに、実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0257】
実施形態の情報処理装置で実行されるプログラムは、コンピュータを上述した情報処理装置の各部として機能させうる。このコンピュータは、CPU51がコンピュータ読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0258】
実施形態の構成例について以下に記載する。
(構成例1)
解析対象に関連する複数の入力データそれぞれの分布を表す多次元の第1確率分布を用いて生成される複数の第1サンプリングデータと、複数の前記第1サンプリングデータを入力として求められる、前記解析対象の物理量を表す複数の出力データと、を含む複数の第2サンプリングデータの特徴を表す複数の特徴量を抽出し、抽出した前記特徴量に対応するノードを含む、前記物理量に対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルを生成する、
処理部
を備える情報処理装置。
(構成例2)
前記処理部は、
複数の前記特徴量を制御変数として前記解析対象を制御する、
構成例1に記載の情報処理装置。
(構成例3)
前記処理部は、
前記解析対象から計測される複数の前記入力データであるモニタリングデータを用いて、前記第1確率分布を更新する、
構成例1または2に記載の情報処理装置。
(構成例4)
前記処理部は、
生成される前記ネットワークモデルの指標を最適化するように、前記第1確率分布を変更し、
変更された前記第1確率分布を用いて複数の前記第1サンプリングデータを生成する、
構成例1から3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例5)
前記処理部は、
複数の前記特徴量に基づいて複数の第3サンプリングデータを生成し、複数の前記第3サンプリングデータの分布を表す多次元の第2確率分布と、前記第1確率分布とが整合するか否かを示す指標を最適化するように、複数の前記特徴量を抽出する、
構成例1から4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例6)
前記処理部は、
複数の前記第1サンプリングデータから生成されるハミルトニアンに基づくマトリクスを分解する演算を含む量子演算を実行し、前記量子演算による演算結果に対する最適化処理により、複数の前記出力データを求める、
構成例1から5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例7)
前記処理部は、
複数の前記第1サンプリングデータの変化率を求める実数最適化問題を二値変数最適化問題に変換し、量子インスパイアード計算または量子コンピュータを用いた計算により前記二値変数最適化問題を解くことにより、複数の前記出力データを求める、
構成例1から5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例8)
前記処理部は、
量子インスパイアード計算、量子コンピューティング計算、ラグランジアンモンテカルロ計算、ハミルトニアンモンテカルロ計算、または、マルコフ連鎖モンテカルロ計算に基づいて、前記第1確率分布から複数の前記第1サンプリングデータを生成する、
構成例1から7のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例9)
前記処理部は、
生成した複数の前記第1サンプリングデータの個数に対する、複数の前記第1サンプリングデータのうち対応する出力データが特定の条件を満たすサンプリングデータの個数の割合を表す発生確率を計算する、
構成例1から8のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例10)
前記処理部は、
前記発生確率が目標値になるように前記解析対象を制御する、
構成例9に記載の情報処理装置。
(構成例11)
前記処理部は、
前記第1確率分布を用いて複数の前記第1サンプリングデータを生成する、
構成例1から10のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例12)
前記処理部は、
複数の前記第1サンプリングデータを入力し、複数の前記出力データを求める、
構成例1から11のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例13)
前記処理部は、
複数の前記第1サンプリングデータを生成する生成部と、
複数の前記出力データを求める解析部と、
前記ネットワークモデルを生成するモデリング部と、
を備える、
構成例1から10のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例14)
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
解析対象に関連する複数の入力データそれぞれの分布を表す多次元の第1確率分布を用いて生成される複数の第1サンプリングデータと、複数の前記第1サンプリングデータを入力として求められる、前記解析対象の物理量を表す複数の出力データと、を含む複数の第2サンプリングデータの特徴を表す複数の特徴量を抽出し、抽出した前記特徴量に対応するノードを含む、前記物理量に対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルを生成するモデリングステップ、
を含む情報処理方法。
(構成例15)
コンピュータに、
解析対象に関連する複数の入力データそれぞれの分布を表す多次元の第1確率分布を用いて生成される複数の第1サンプリングデータと、複数の前記第1サンプリングデータを入力として求められる、前記解析対象の物理量を表す複数の出力データと、を含む複数の第2サンプリングデータの特徴を表す複数の特徴量を抽出し、抽出した前記特徴量に対応するノードを含む、前記物理量に対応する複数のノード間の関係を表すネットワークモデルを生成するモデリングステップ、
を実行させるためのプログラム。
【0259】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0260】
41 情報処理システム
100 プラットフォーム
110 記憶部
120 分析部
121 設定部
122 生成部
123 解析部
124 モデリング部
125 通信制御部
126-2 最適化部
127-3 システム制御部
128-3 更新部
130 操作部
200 エッジ端末
210 制御部
300 サービス提供装置
310 サービス部
320 ビジネス部
330 SoS部
331 出力制御部
332 管理部
400 共通サービス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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