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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028580
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】口腔内シート
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/03 20060101AFI20250221BHJP
   A61K 9/70 20060101ALN20250221BHJP
【FI】
A61F5/03 Z
A61K9/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133487
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】523315751
【氏名又は名称】岡本 育未
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】岡本 育未
【テーマコード(参考)】
4C076
4C098
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076AA89
4C076BB01
4C098AA02
4C098BB20
4C098BC12
4C098BC37
4C098BD20
(57)【要約】
【課題】口腔内における舌の位置を簡便に矯正することができる口腔内シートを提供する。
【解決手段】使用者の口腔内において上顎11に貼り付けられる嗜好性風味を有するシート本体部2と、シート本体部2に形成された通気確保部3と、を有する構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の口腔内において上顎(11)に貼り付けられる嗜好性風味を有するシート本体部(2)と、
前記シート本体部(2)に形成された通気確保部(3)と、
を有する口腔内シート。
【請求項2】
前記通気確保部(3)が、呼吸に伴う空気圧によって前記シート本体部(2)を破断する易破断部(3b)である請求項1に記載の口腔内シート。
【請求項3】
前記通気確保部(3)が、前記シート本体部(2)を貫通する貫通孔部(3a)である請求項1に記載の口腔内シート。
【請求項4】
前記貫通孔部(3a)が、前記シート本体部(2)の前端部に形成されている請求項3に記載の口腔内シート。
【請求項5】
前記貫通孔部(3a)の内縁に、前記シート本体部(2)の肉厚を増すための肉盛り部(4)が形成されている請求項4に記載の口腔内シート。
【請求項6】
前記シート本体部(2)が多層構造をなしており、最も上顎(11)側の最上層(2a)が他の層と比較して高い粘着性を有し、最も舌(10)側の最下層(2b)に嗜好性風味が付与されており前記最下層(2b)の厚みが前記シート本体部(2)の厚み全体の50%以上99%以下の範囲内である請求項1から5のいずれか1項に記載の口腔内シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、口腔内における舌の位置を矯正することが可能な口腔内シートに関する。
【背景技術】
【0002】
図5および図6に示すように、舌10は、口腔内において上顎11全体に接触し、舌10の先端が上の前歯12のやや後ろの破線丸印で囲ったスポット13付近に位置しているのが正しい状態であるとされている。ところが、近年、舌10の筋力不足などによって舌10の位置が下がる低舌位の状態が多く見受けられる。この低舌位の状態においては、図7に示すように、舌の先端が特に下の前歯14の裏側に当たった状態となり、顔の歪みやたるみ、口呼吸による口臭やいびきの発生、歯並びが悪くなることによる虫歯や歯周病の発生、発音や滑舌の低下、咀嚼力の低下や咀嚼音の発生、集中力の低下、姿勢の悪化など種々の問題を引き起こすおそれがある。
【0003】
この問題を解決すべく、例えば下記特許文献1においては、舌の位置を正しい位置に矯正するために口腔内に装着される口腔器具が提案されている。この口腔器具には、装着状態における舌先の正しい位置を示すタブ部24が形成されている。舌先をタブ部24に接触させることにより器具の位置を安定させることができるとともに、タブ部24と舌キャッチ部34により舌43の先端が位置決めされる。これにより、舌43を上げるための筋肉が鍛えられ、舌43をふさわしい位置に置くためのトレーニングになることが期待されている(特許文献1の段落0041などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-48036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る口腔器具は、口腔内に装着したときの違和感が大きいため長時間の使用に伴う負担が大きく、特に小さな子供への適用が難しい問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、口腔内における舌の位置を簡便に矯正することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明では、
使用者の口腔内において上顎に貼り付けられる嗜好性風味を有するシート本体部と、
前記シート本体部に形成された通気確保部と、
を有する口腔内シートを構成した。
【0008】
このようにすると、小さな子供でも口腔内に口腔内シートを容易に装着することができる。また、シート本体部に嗜好性風味を設けたので、舌先を積極的に上顎側に向かわせることができ、口腔内における舌の位置を矯正することができる。さらに、シート本体部に通気確保部を形成したので、この口腔内シートが上顎から脱落して気道に跨るように貼り付いたとしても呼吸の通り道を確保することができる。
【0009】
前記構成においては、
前記通気確保部が、呼吸に伴う空気圧によって前記シート本体部を破断する易破断部である構成とすることができる。このようにすると、口腔内シートが上顎から脱落して気道に跨るように貼り付いたとしても、シート本体部が易破断部によって破断されるため、呼吸の通り道を確保することができる。
【0010】
あるいは、前記構成において、
前記通気確保部が、前記シート本体部を貫通する貫通孔部である構成とすることもできる。このようにすると、口腔内シートが上顎から脱落して気道に跨るように貼り付いたとしても、貫通孔部によって呼吸の通り道を確保することができる。
【0011】
前記貫通孔部を有する構成においては、
前記貫通孔部が、前記シート本体部の前端部に形成されている構成とすることができる。このようにすると、舌の位置が最適位置のスポットに定まりやすく、この口腔内シートによる舌の位置の矯正効果が高まる。
【0012】
前記貫通孔部が前記シート本体部の前端部に形成されている構成においては、
前記貫通孔部の内縁に、前記シート本体部の肉厚を増すための肉盛り部が形成されている構成とすることができる。このようにすると、この肉盛り部を舌で上向きに押し続けることで、舌の位置の矯正効果がさらに高まる。
【0013】
前記のすべての構成においては、
前記シート本体部が多層構造をなしており、最も上顎側の最上層が他の層と比較して高い粘着性を有し、最も舌側の最下層に嗜好性風味が付与されており前記最下層の厚みが前記シート本体部の厚み全体の50%以上99%以下の範囲内である構成とすることができる。このようにすると、最上層の粘着力により、口腔内シートを安定的に上顎に貼り付けることができるとともに、嗜好性風味を有する最下層の長時間の持続性を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、使用者の口腔内において上顎に貼り付けられる嗜好性風味を有するシート本体部に通気確保部を形成した構成としたので、小さな子供でも口腔内に口腔内シートを容易に装着することができる。また、シート本体部に嗜好性風味を設けたので、舌先を積極的に上顎側に向かわせることができ、口腔内における舌の位置を矯正することができる。さらに、シート本体部に通気確保部を形成したので、この口腔内シートが上顎から脱落して気道に跨るように貼り付いたとしても呼吸の通り道を確保することができる。
【0015】
また、この口腔内シートを用いることにより、顔の歪みやたるみが少なくなり表情が若々しくなるとともに美肌・小顔になる効果が期待できるとともに、唾液の分泌が増えて体の免疫力の向上や、無呼吸症候群の症状改善も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明に係る口腔内シートの第一実施形態を示し、(a)は底面図、(b)は側面図
図2図1に示す口腔内シートを上顎に装着した状態を示す底面図
図3図1に示す口腔内シートの変形例を示し、(a)は底面図、(b)は側面図
図4】この発明に係る口腔内シートの第二実施形態を示し、(a)は底面図、(b)は側面図
図5】舌が正しい位置にあるときの口腔を側面から見た模式図
図6】上顎の底面図
図7】舌が低舌位の状態にあるときの口腔を側面から見た模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る口腔内シート1の第一実施形態を図1(a)(b)および図2に示す。この口腔内シート1は、口腔内における舌10の位置を矯正する際に用いられるシートであって、使用者の口腔内において上顎11に貼り付けられる嗜好性風味を有するシート本体部2と、シート本体部2に形成された通気確保部3と、を主要な構成要素としている。
【0018】
シート本体部は2層構造をなしており、第一の層2a(最も上顎11に近い最上層)が、第二の層2b(最も上顎11から遠い最下層)と比較して高い粘着性を有している。この粘着性を発揮する粘着材として、人体に悪影響を及ぼすおそれがないガムベース(チクル、ソルバ、ジェルトンなどの天然樹脂や、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレンなどの人工合成樹脂)や、ゼラチンからなるグミなどを用いることができる。
【0019】
第二の層2bには嗜好性風味が付与されており、使用者が意識的にまたは無意識のうちに舌10で第二の層2bを舐めるように構成されている。この嗜好性風味として、例えば、キシリトールなどの甘味、クエン酸などの酸味、それらを合わせた味などに香料を加えた種々の風味の中から限定されることなく適宜選択することができる。
【0020】
この実施形態においては、シート本体部2の厚みは約2mmである。このシート本体部2の厚み全体の50%以上99%以下の範囲内で第二の層2bの厚みが決められる。この実施形態においては、第二の層2bの厚みは約90%である。第二の層2bの厚みが50%よりも薄いと、使用者が第二の層2bを舐めることによって、短時間のうちにこの第二の層2bが消失してしまうおそれがあり、第二の層2bの厚みが99%よりも厚いと、口腔内シート1を上顎11にしっかりと貼り付けるのに十分な第一の層2aの厚みを確保することが難しくなるため、上記の範囲内とするのが好ましい。
【0021】
なお、シート本体部2の厚みは適宜変更することができ、例えば、0.5mm以上5mm以下の範囲内、好ましくは1mm以上4mm以下の範囲内、より好ましくは1.5mm以上3mm以下の範囲内とすることができる。また、シート本体部2の形状やサイズも適宜変更することができ、上顎11の形状に沿ったオーバル状(例えば、長軸4cm、短軸2cm)、長方形(例えば、長辺3cm、短辺2cm)などとすることもできる。
【0022】
通気確保部3は、この実施形態ではシート本体部2を貫通する貫通孔部3aである。図2に示すように、この貫通孔部3aは、シート本体部2の前端部(口腔内シート1を上顎11に貼り付けた際に、図6に記載のスポット13に対応する位置)に形成されている。この通気確保部3(貫通孔部3a)の大きさは適宜決めることができ、例えば、直径が3mm以上15mm以下の範囲内、好ましくは5mm以上13mm以下の範囲内とすることができる。
【0023】
この口腔内シート1は、粘着性を有する第一の層2aが使用者の上顎11に貼り付けられることによって、嗜好性風味が付与された第二の層2bが舌10(図5を参照)に臨んだ状態となる。そして、舌10が第二の層2bに接触することによって嗜好性風味を感じ取り、意識的にまたは無意識のうちに舌10で第二の層2bを舐めるようになる。この舌10の動作によって舌10の筋肉が次第に鍛えられ、舌10が正常な位置に矯正される。舌10の筋肉が鍛えられて位置矯正が一旦行われると、口腔内シート1を取り外した後も、舌10が常に正常な位置(スポット13)に維持されるようになる。
【0024】
図1に示す口腔内シート1の変形例を図3(a)(b)に示す。この変形例に係る口腔内シート1は、シート本体部2に貫通孔部3aからなる通気確保部3が形成されている点で共通するが、貫通孔部3aの内縁に、シート本体部2の肉厚を増すための肉盛り部4が形成されている点で相違する。
【0025】
この肉盛り部4は、シート本体部2の第二の層2b側に形成された円環状の盛り上がりをなす部分であって、ガムベースやゼラチンのように弾性を有し、使用者が舌10で舐めても容易に溶けて消失しないものが採用される。肉盛り部4におけるシート本体部2の表面からの盛り上がりの高さは、例えば、0.5mm以上2mm以下の範囲内、好ましくは1mm以上1.5mm以下の範囲内とすることができる。
【0026】
この発明に係る口腔内シート1の第二実施形態を図4(a)(b)に示す。この口腔内シート1は、使用者の口腔内において上顎11に貼り付けられる嗜好性風味を有するシート本体部2と、シート本体部2に形成された通気確保部3と、を主要な構成要素としている点で第一実施形態の構成と共通するが、通気確保部3が、呼吸に伴う空気圧によってシート本体部2を破断する易破断部3bである点で相違する。
【0027】
この第二実施形態においては、易破断部3bは、シート本体部2の表面に格子状に形成された切れ目線を有している。この切れ目線はシート本体部2の一方側の面に形成されており、他方側の面には到達していない。このため、易破断部3bに呼吸に伴う吸気圧が作用していない状態で易破断部3bにおいて破断が生じることはない。なお、この実施形態における易破断部3bの形状(格子状)は例示であって、使用者が呼吸可能な程度にシート本体部2が破断する限りにおいて、その形状を適宜変更することができる。また、切れ目線がシート本体部2の他方側の面に到達している構成とすることもできる。
【0028】
上記の口腔内シート1は、使用者の口腔内において上顎11に貼り付けられるシート本体部2と、シート本体部2に形成された通気確保部3と、を有する構成としたので、小さな子供でも口腔内に口腔内シート1を容易に装着することができる。また、シート本体部2に嗜好性風味を設けたので、舌先を積極的に上顎11側に向かわせることができ、口腔内における舌の位置を矯正することができる。さらに、シート本体部2に通気確保部3を形成したので、この口腔内シート1が上顎11から脱落して気道に跨るように貼り付いたとしても呼吸の通り道を確保することができる。
【0029】
また、上記の口腔内シート1は、シート本体部2に貫通孔部3aまたは易破断部3bからなる通気確保部3を形成したので、口腔内シート1が上顎11から脱落して気道に跨るように貼り付いたとしても、貫通孔部3aまたは易破断部3bによって呼吸の通り道を確実に確保することができる。
【0030】
また、上記の口腔内シート1は、シート本体部2を多層構造(第一の層2a、第二の層2b)で構成し、第一の層2aが第二の層2bと比較して高い粘着性を有する構成としたので、第一の層2aの粘着力により、口腔内シート1を安定的に上顎11に貼り付けることができる。また、嗜好性風味を有する第二の層2bの厚みがシート本体部2の厚み全体の50%以上99%以下の範囲内である構成としたので、嗜好性風味を有する第二の層2bの長時間の持続性を確保することができる。
【0031】
また、上記の第一実施形態に係る口腔内シート1は、貫通孔部3aをシート本体部2の前端部に形成したので、舌10の位置が最適位置のスポット13に定まりやすく、この口腔内シート1による舌10の位置の矯正効果を高めることができる。
【0032】
また、上記の第一実施形態の変形例に係る口腔内シート1は、貫通孔部3aの内縁に肉盛り部4を形成したので、この肉盛り部4を舌10で上向きに押し続けることで、舌10の位置の矯正効果をさらに高めることができる。
【0033】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上記の各実施形態においては、シート本体部2を2層構造としたが、3層以上の多層構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 口腔内シート
2 シート本体部
2a 第一の層(最上層)
2b 第二の層(最下層)
3 通気確保部
3a 貫通孔部
3b 易破断部
4 肉盛り部
10 舌
11 上顎
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7