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特開2025-28582レーザ印字装置のための位置補正装置、位置補正方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028582
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】レーザ印字装置のための位置補正装置、位置補正方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 21/16 20060101AFI20250221BHJP
   B41J 25/20 20060101ALI20250221BHJP
   B41J 2/475 20060101ALI20250221BHJP
   H04N 1/387 20060101ALI20250221BHJP
   H04N 1/393 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
B41J21/16
B41J25/20
B41J2/475 Z
H04N1/387 700
H04N1/387 800
H04N1/393
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133489
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】丸亀 知之
(72)【発明者】
【氏名】黒木 広幸
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 達也
【テーマコード(参考)】
2C065
2C187
【Fターム(参考)】
2C065CA03
2C187BH18
2C187BH23
2C187CD07
2C187DB04
2C187DB31
(57)【要約】
【課題】温度ドリフトやレーザ光が熱変換される熱影響による印字対象の変形等による印字ずれを容易に補正すること。
【解決手段】印字対象の基準マークの中心点を判定する第1の判定部と、基準マークの中心点を中心としたレーザマークを印字対象に形成するようにレーザ印字装置に指示するレーザ印字指示部と、印字対象に形成されたレーザマークの中心点を判定する第2の判定部と、第1の判定部による基準マークの中心点と第2の判定部によるレーザマークの中心点とのずれに基づいてレーザマークの中心点を基準マークの中心点に一致させるための補正量を算出する補正量算出部と、印字対象にレーザ印字される入力画像の各分割画像がレーザ印字される度に補正量の算出を行い、算出された補正量に基づいてレーザ印字する分割画像の位置補正を行う制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字対象に対するレーザ印字装置の位置を補正するための位置補正装置であって、
前記印字対象に予め設けられた基準マークの中心点を判定する第1の判定部と、
前記第1の判定部によって判定された前記基準マークの中心点を中心としたレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示するレーザ印字指示部と、
前記指示に応じて前記レーザ印字装置によって前記印字対象に形成されたレーザマークの中心点を判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部によって判定された前記基準マークの中心点と、前記第2の判定部によって判定された前記レーザマークの中心点とのずれを求め、前記ずれに基づいて、前記レーザマークの中心点を、前記基準マークの中心点に一致させるための補正量を算出する補正量算出部と、
前記印字対象にレーザ印字される入力画像を所定数の分割画像に分割し、各分割画像がレーザ印字される度に、前記第1の判定部、前記レーザ印字指示部、前記第2の判定部及び前記補正量算出部によって前記補正量の算出を行い、算出された前記補正量に基づいて、レーザ印字する分割画像の位置補正を行う制御部と、
を備える位置補正装置。
【請求項2】
前記補正量は、補正の方向、伸縮量、回転量、歪み量のうちの少なくとも何れかを含む、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項3】
前記レーザ印字指示部は、各分割画像がレーザ印字される度に、拡大率が異なる同形状のレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項4】
前記レーザ印字指示部は、各分割画像がレーザ印字される度に、形状の異なるレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項5】
前記レーザ印字指示部は、各分割画像がレーザ印字される度に、既に前記印字対象に形成されたレーザマークから予め決められた位置だけずれた位置に新たなレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項6】
前記印字対象を撮像して、第1の画像を得る撮像部をさらに備え、
前記レーザ印字指示部は、各分割画像の終端付近に新たなレーザマークを前記印字対象に形成するように前記レーザ印字装置に指示し、
前記補正量算出部は、前記新たなレーザマークと基準マークとの位置関係を前記第1の画像によって取得し、取得した位置関係を各分割画像における前記補正量の算出に利用する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項7】
前記入力画像の分割数は、レーザ光が熱変換される熱影響による前記印字対象自体の熱変形量が、分割画像間の境界部に目視可能な濃淡線が現れない熱変形量のうちに、各レーザマークの中心点を対応する各基準マークの中心点に一致させるための補正量を更新することができるように、予め決定された、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項8】
前記制御部は、各分割画像に対する位置補正を行う際に、前回レーザ印字された分割画像の位置補正量からの位置補正の更新量に基づいて前回レーザ印字された分割画像と今回レーザ印字される分割画像との隙間のサイズを算出し、算出した隙間のサイズの画像を用いて前回レーザ印字された分割画像と今回レーザ印字される分割画像との隙間を埋める画像補完処理を実行する、
請求項1に記載の位置補正装置。
【請求項9】
レーザ印字装置ための位置補正方法であって、
プロセッサが、印字対象に予め設けられた基準マークの中心点を判定する第1の判定ステップと、
前記プロセッサが、前記第1の判定ステップによって判定された前記基準マークの中心点を中心としたレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示するレーザ印字指示ステップと、
前記プロセッサが、前記指示に応じて前記レーザ印字装置によって前記印字対象に形成されたレーザマークの中心点を判定する第2の判定ステップと、
前記プロセッサが、前記第1の判定ステップによって判定された前記基準マークの中心点と、前記第2の判定ステップによって判定された前記レーザマークの中心点とのずれを求め、前記ずれに基づいて、前記レーザマークの中心点を、前記基準マークの中心点に一致させるための補正量を算出する補正量算出ステップと、
前記プロセッサが、前記印字対象にレーザ印字される入力画像を所定数の分割画像に分割し、各分割画像がレーザ印字される度に、前記第1の判定ステップ、前記レーザ印字指示ステップ、前記第2の判定ステップ及び前記補正量算出ステップによって前記補正量の算出を行い、算出された前記補正量に基づいて、レーザ印字する分割画像の位置補正を行う制御ステップと、
を含む位置補正方法。
【請求項10】
印字対象に予め設けられた基準マークの中心点を判定する第1の判定機能と、
前記第1の判定機能によって判定された前記基準マークの中心点を中心としたレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示するレーザ印字指示機能と、
前記指示に応じて前記レーザ印字装置によって前記印字対象に形成されたレーザマークの中心点を判定する第2の判定機能と、
前記第1の判定機能によって判定された前記基準マークの中心点と、前記第2の判定機能によって判定された前記レーザマークの中心点とのずれを求め、前記ずれに基づいて、前記レーザマークの中心点を、前記基準マークの中心点に一致させるための補正量を算出する補正量算出機能と、
前記印字対象にレーザ印字される入力画像を所定数の分割画像に分割し、各分割画像がレーザ印字される度に、前記第1の判定機能、前記レーザ印字指示機能、前記第2の判定機能及び前記補正量算出機能によって前記補正量の算出を行い、算出された前記補正量に基づいて、レーザ印字する分割画像の位置補正を行う制御機能と、
をプロセッサに実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ印字装置のための位置補正装置、位置補正方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリカーボネート等の印字対象に、レーザ印字装置でレーザ印字する場合、印字対象における所定の位置にレーザ印字がなされるように、印字位置の調整がなされる。
【0003】
しかしながら、いったん調整がなされた後であっても、使用時間の経過に応じてレーザ印字装置の温度が上昇するために、ガルバノスキャナ等の温度ドリフトの影響で、温度環境が調整時から変化してしまう。
【0004】
図30は、ガルバノスキャナの温度ドリフトの影響を例示するグラフであり、横軸が時間(分)を、縦軸が温度ドリフト量(mm)を示している。図30はまた、X軸方向の温度ドリフトと、Y軸方向の温度ドリフトとを示している。
【0005】
図30に示すように、ガルバノスキャナの温度ドリフト量は、時間の経過とともに大きくなる。すなわち、レーザ印字される位置は、いったん調整された後であっても、時間の経過とともに、設定位置から徐々にずれることになる。
【0006】
このずれが、無視できるほど小さいうちは問題ないが、例えば0.2mmを超えると視認可能となり、無視できなくなる。
【0007】
図30によれば、ガルバノスキャナの温度ドリフトにより、機器コールドスタートから240分後にX軸方向において、ずれが0.2mm以上となり、許容値を超えることが示されている。
【0008】
特許文献1には、レーザ加工装置の温度変化による加工位置ずれを低減させるレーザ加工およびその加工位置ずれ補正方法が開示されている。
【0009】
特許文献1では、エリアドリフト(一様方向のずれ)とスケールドリフト(収縮)や、それぞれの要因ごとに対応した温度測定箇所と補正係数を予め設定して、当該要因ごとに加工位置ずれを補正する技術が開示されている。具体的には、スキャンミラーやミラーマウントへ温度センサを設置し、温度センサによって測定されたスキャンミラーやミラーマウントの温度に基づいて、スキャンミラーやミラーマウントの補正角度を把握している。
【0010】
したがって、上述した温度センサに加え、これらミラーの角度を検出するエンコーダをさらに備えることにより、ミラーの角度を把握できるようになれば、補正角度に応じたミラー角度の制御が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-40843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、揺動するスキャンミラーやミラーマウントへの温度センサの設置、および、エンコーダの設置には、部品の交換を伴う。そして、部品の交換には、莫大なコストの発生を伴う。これは、レーザ印字装置のコストの増加をもたらす。
【0013】
また、補正に有効な温度を測定するために、揺動しているスキャンミラーやミラーマウントのどの場所に温度センサを設定すべきかを決定することは容易ではない。つまり、最適な温度測定位置を決定すること自体が困難であり、温度変化に対して温度ドリフトが正比例しないという結果になる恐れもある。これでは、温度センサを設置しても、高精度の補正は期待できない。
【0014】
さらには、カラー印刷装置のような印刷装置で印刷された図形や画像に、レーザ印字装置でレーザ印字された文字や図形等を重ね合わせる場合、印刷装置とレーザ印字装置とが、それぞれ独立した装置であれば、印刷装置による図形や画像の傾きやサイズ変化も、レーザ印字装置の温度ドリフトに加算されてしまう。この場合、単純に温度ドリフトの補正だけでは、ずれを解消することができない。
【0015】
また、印字対象にレーザ印字装置で印字する際には、レーザ光が熱変換される熱影響により印字対象自体も変形する。その変形量は印字対象の材料の種類や厚み、印画領域のサイズ等により変化するが、精密な印字が要求される場合にはその変形量が無視できなくなる。
【0016】
以上説明したように、莫大なコストをかけて、レーザ印字装置に温度センサやエンコーダを設置しても、温度ドリフトによる経時的な印字ずれを精度良く補正できない上に、レーザ印字装置とは別の印刷装置で印刷された図形や画像に、レーザ印字装置によるレーザ印字を重ね合わせる場合には、レーザ印字装置による温度ドリフトによる印字ずれに印刷装置による印刷ずれも重畳されたり、レーザ光が熱変換される熱影響により印字対象自体も変形したりするため、ずれの補正はさらに困難になるという問題がある。
【0017】
本発明は、上記のような問題を解決する、レーザ印字装置のための位置補正装置、位置補正方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様は、印字対象に対するレーザ印字装置の位置を補正するための位置補正装置であって、前記印字対象に予め設けられた基準マークの中心点を判定する第1の判定部と、前記第1の判定部によって判定された前記基準マークの中心点を中心としたレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示するレーザ印字指示部と、前記指示に応じて前記レーザ印字装置によって前記印字対象に形成されたレーザマークの中心点を判定する第2の判定部と、前記第1の判定部によって判定された前記基準マークの中心点と、前記第2の判定部によって判定された前記レーザマークの中心点とのずれを求め、前記ずれに基づいて、前記レーザマークの中心点を、前記基準マークの中心点に一致させるための補正量を算出する補正量算出部と、前記印字対象にレーザ印字される入力画像を所定数の分割画像に分割し、各分割画像がレーザ印字される度に、前記第1の判定部、前記レーザ印字指示部、前記第2の判定部及び前記補正量算出部によって前記補正量の算出を行い、算出された前記補正量に基づいて、レーザ印字する分割画像の位置補正を行う制御部と、を備える位置補正装置である。
【0019】
本発明の一態様は、上記の位置補正装置において、前記補正量は、補正の方向、伸縮量、回転量、歪み量のうちの少なくとも何れかを含む、位置補正装置である。
【0020】
本発明の一態様は、上記の位置補正装置において、前記レーザ印字指示部は、各分割画像がレーザ印字される度に、拡大率が異なる同形状のレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示する、位置補正装置である。
【0021】
本発明の一態様は、上記の位置補正装置において、前記レーザ印字指示部は、各分割画像がレーザ印字される度に、形状の異なるレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示する、位置補正装置である。
【0022】
本発明の一態様は、上記の位置補正装置において、前記レーザ印字指示部は、各分割画像がレーザ印字される度に、既に前記印字対象に形成されたレーザマークから予め決められた位置だけずれた位置に新たなレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示する、位置補正装置である。
【0023】
本発明の一態様は、上記の位置補正装置において、前記印字対象を撮像して、第1の画像を得る撮像部をさらに備え、前記レーザ印字指示部は、各分割画像の終端付近に新たなレーザマークを前記印字対象に形成するように前記レーザ印字装置に指示し、前記補正量算出部は、前記新たなレーザマークと基準マークとの位置関係を前記第1の画像によって取得し、取得した位置関係を各分割画像における前記補正量の算出に利用する、位置補正装置である。
【0024】
本発明の一態様は、上記の位置補正装置において、前記入力画像の分割数は、レーザ光が熱変換される熱影響による前記印字対象自体の熱変形量が、分割画像間の境界部に目視可能な濃淡線が現れない熱変形量のうちに、各レーザマークの中心点を対応する各基準マークの中心点に一致させるための補正量を更新することができるように、予め決定された、位置補正装置である。
【0025】
本発明の一態様は、上記の位置補正装置において、前記制御部は、各分割画像に対する位置補正を行う際に、前回レーザ印字された分割画像の位置補正量からの位置補正の更新量に基づいて前回レーザ印字された分割画像と今回レーザ印字される分割画像との隙間のサイズを算出し、算出した隙間のサイズの画像を用いて前回レーザ印字された分割画像と今回レーザ印字される分割画像との隙間を埋める画像補完処理を実行する、位置補正装置である。
【0026】
本発明の一態様は、レーザ印字装置ための位置補正方法であって、プロセッサが、印字対象に予め設けられた基準マークの中心点を判定する第1の判定ステップと、前記プロセッサが、前記第1の判定ステップによって判定された前記基準マークの中心点を中心としたレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示するレーザ印字指示ステップと、前記プロセッサが、前記指示に応じて前記レーザ印字装置によって前記印字対象に形成されたレーザマークの中心点を判定する第2の判定ステップと、前記プロセッサが、前記第1の判定ステップによって判定された前記基準マークの中心点と、前記第2の判定ステップによって判定された前記レーザマークの中心点とのずれを求め、前記ずれに基づいて、前記レーザマークの中心点を、前記基準マークの中心点に一致させるための補正量を算出する補正量算出ステップと、前記プロセッサが、前記印字対象にレーザ印字される入力画像を所定数の分割画像に分割し、各分割画像がレーザ印字される度に、前記第1の判定ステップ、前記レーザ印字指示ステップ、前記第2の判定ステップ及び前記補正量算出ステップによって前記補正量の算出を行い、算出された前記補正量に基づいて、レーザ印字する分割画像の位置補正を行う制御ステップと、を含む位置補正方法である。
【0027】
本発明の一態様は、印字対象に予め設けられた基準マークの中心点を判定する第1の判定機能と、前記第1の判定機能によって判定された前記基準マークの中心点を中心としたレーザマークを前記印字対象に形成するように、前記レーザ印字装置に指示するレーザ印字指示機能と、前記指示に応じて前記レーザ印字装置によって前記印字対象に形成されたレーザマークの中心点を判定する第2の判定機能と、前記第1の判定機能によって判定された前記基準マークの中心点と、前記第2の判定機能によって判定された前記レーザマークの中心点とのずれを求め、前記ずれに基づいて、前記レーザマークの中心点を、前記基準マークの中心点に一致させるための補正量を算出する補正量算出機能と、前記印字対象にレーザ印字される入力画像を所定数の分割画像に分割し、各分割画像がレーザ印字される度に、前記第1の判定機能、前記レーザ印字指示機能、前記第2の判定機能及び前記補正量算出機能によって前記補正量の算出を行い、算出された前記補正量に基づいて、レーザ印字する分割画像の位置補正を行う制御機能と、をプロセッサに実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、レーザ印字装置の部品の交換や、新たな部品の設置を伴わず、莫大なコストの増加をもたらすことなく、印字ずれを補正することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施形態に係る位置補正方法が適用された位置補正装置と、レーザ印字装置との関係を示す図である。
図2】位置補正装置によって印字位置が補正されるレーザ印字装置の外形を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る位置補正方法を実装した位置補正装置の電子回路構成例を示すブロック図である。
図4A】カラー画像および基準マークが印刷された印字対象の一例を示す平面図である。
図4B図4Aに示す印字対象に対してレーザ印字装置によって形成されたレーザマークを説明するための図である。
図5】位置補正装置の動作例を示すフローチャートである。
図6】複数の線分の組合せで形成されたレーザマークの例を示す概念図である。
図7】複数の線分の組合せで形成されたレーザマークの例を示す概念図である。
図8】複数の線分の組合せで形成されたレーザマークの例を示す概念図である。
図9】破線で形成された輪郭を有するレーザマークの例を示す概念図である。
図10】本発明の第2の実施形態によって、印字対象に、基準マークと同一形状のレーザマークが形成される状態を段階的に示す図である。
図11図10との比較のために、印字対象に、基準マークと異なる形状のレーザマークが形成される状態を段階的に示す図である。
図12】ともに円形状である基準マークとレーザマークとの位置関係の例を示す概念図である。
図13】本発明の第3の実施形態における基準マークの例を示す平面図である。
図14】本発明の第4の実施形態で実施される2値化によるレーザマークの位置判定の概念を示す図である。
図15】本発明の第5の実施形態で実施されるRGB変換および合成による処理によるレーザマークの位置判定の概念を示す図である。
図16】加算合成の一例を説明するための図である。
図17】本発明の第6の実施形態に係る位置補正装置の動作例を示すフローチャートである。
図18】本発明の第6の実施形態に係る入力画像の分割画像の例を示す図である。
図19】本発明の第6の実施形態に係るレーザ描画用データの作成例を示す図である。
図20】本発明の第6の実施形態に係るレーザ描画用データの作成例を示す図である。
図21】本発明の第6の実施形態に係るレーザ描画用データの作成例を示す図である。
図22】本発明の第6の実施形態に係るレーザマークの例を示す図である。
図23】本発明の第6の実施形態に係る分割画像間の隙間を埋める例を示す図である。
図24】第6の実施形態に係るレーザ印字の例を示す図である。
図25】第6の実施形態に係るレーザ印字の例を示す図である。
図26】第6の実施形態に係るレーザ印字の例を示す図である。
図27】第6の実施形態に係るレーザ印字の例を示す図である。
図28】第6の実施形態に係るレーザ印字の例を示す図である。
図29】円形状の基準マークの中心点と、矩形形状のレーザマークの中心点とが一致する状態を示す図である。
図30】ガルバノスキャナの温度ドリフトの影響を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の各実施形態に係る位置補正方法が適用された位置補正装置を、図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る位置補正方法が適用された位置補正装置と、レーザ印字装置との関係を示す図である。
【0032】
位置補正装置10は、印字対象に対するレーザ印字装置100の印字位置を補正するための装置である。
【0033】
位置補正装置10は、図1(a)に示すように、レーザ印字装置100の外部に設けられていても、あるいは図1(b)に示すように、レーザ印字装置100に内蔵されて設けられていてもよい。
【0034】
図2は、位置補正装置10によって印字位置が補正されるレーザ印字装置100の外形を示す斜視図である。
【0035】
図2に示す例は、レーザ印字装置100(例えば、凸版印刷株式会社製LP450)が、カラー印刷装置115(例えば、凸版印刷株式会社製eP600)と隣接して設置されている場合を示すが、レーザ印字装置100とカラー印刷装置115は、離れて設置されていてもよい。図2に示す例では、位置補正装置10は、図1(b)のように、レーザ印字装置100に内蔵されて設けられているが、位置補正装置10は、レーザ印字装置100の外部に設けられていてもよい。
【0036】
レーザ印字装置100は、印字対象に対して、レーザによる印刷および印字をする。印字対象は、例えばカードや冊子(例えば、パスポート用の冊子)のページである。印字対象の材質は、例えばプラスチックまたは紙である。プラスチックの材質は、例えばポリカーボネートである。このような印字対象に対して、カラー印刷装置115が、カラーリボンによってCMY成分をカラー印刷し、レーザ印字装置100が、K成分をレーザによりマークしてもよい。カラー印刷は顔料または染料のインキを印刷したものとできる。また不可視インキでの印刷を追加してもよい。不可視インキは蛍光インキや赤外吸収インキとできる。
【0037】
この場合、例えば顔写真やID番号のようなパーソナルデータを表現する画像を、CMY成分とK成分とに分解し、カラー印刷されたCMY成分に重ねて、K成分をレーザマーキングすることで、改ざんを困難にすることができる。また、K成分だけの画像をレーザで印字してもよい。
【0038】
レーザ印字装置100のレーザは、パルスレーザを適用できる。レーザは固体レーザとできる。固体レーザは半導体レーザとできる。レーザの発振波長の具体例は、1064nm、あるいは532nmである。レーザ印字装置100は、1つまたは複数のレーザを内蔵できる。パルスレーザの、パルス当たりのエネルギは0.1mJ以上が好ましい。この1パルスのエネルギは、印字対象の材質により調整できる。またパルス周期は、1KHz以上、1MHz以下とできる。このパルス周期により印字の強度を変調できる。
【0039】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る位置補正方法を実装した位置補正装置の電子回路構成例を示すブロック図である。
【0040】
位置補正装置10は、レーザ印字装置100による印字位置を補正するために、その電子回路として、バス11によって互いに接続されたCPU12、メモリインターフェース14、通信インターフェース15、例えばカメラである撮像部16、およびメモリ20を備えている。
【0041】
メモリ20は、基準マーク中心点判定プログラム21、レーザ印字指示プログラム22、レーザマーク中心点判定プログラム23、補正量算出プログラム24、およびレーザ印字装置制御プログラム25を記憶している。これらプログラム21~25は、メモリ20に予め記憶されていてもよいし、あるいはメモリカード等の外部記録媒体13からメモリインターフェース14を介してメモリ20に読み込まれ、記憶されたものであってもよい。
【0042】
メモリ20は、このようなユーザ書き換え不可能なエリアの他に、書き換え可能なデータを記憶するエリアとして、書込可能データエリア29も確保している。
【0043】
CPU12は、演算装置である。CPU12はICチップとして実装できる。CPU12は、f区数のベクトル演算回路を実装してもよい。CPU12は、FPGAとしてもよい。CPU12は、GPUを備えていてもよい。CPU12は、ソフトウェアとハードウェアとが協働するように、メモリ20に記憶されている各プログラム21~25に従い回路各部の動作を制御する。CPU12による演算結果に基づいて、通信インターフェース15からレーザ印字装置100に制御信号を送り、レーザ印字装置100の動作を制御する。
【0044】
通信インターフェース15は、レーザ印字装置100と通信する。通信インターフェース15とレーザ印字装置100は、シリアルケーブル、光ケーブル、および無線等で接続できる。通信インターフェース15と、レーザ印字装置100との通信には、デジタルデータを用いることもできる。
【0045】
図4Aは、カラー画像および基準マークが印刷された印字対象の一例を示す平面図である。
【0046】
印字対象Tには、図中において顔写真として示されているカラー画像の他に、例えばeP600のようなカラー印刷装置115によって、基準マークPが予め設けられている。
【0047】
基準マークPの形状は、図4Aに示す二重丸形状のように、同心円形状とできる。この場合、同心円の中心が、基準マークPの中心点である。
【0048】
基準マークPの色は、純色または混色とできる。基準マークPの色はまた、単色または多色で形成できる。
【0049】
各基準マークPの形状は、異なっていてもよい。基準マークPは連続した線で形成してもよいし、破線や点線のように断続した線で形成してもよい。また基準マークPの線幅は一定でもよいし、幅が異なる複数区画を有してもよい。
【0050】
OpenCVのテンプレートマッチングを用いて基準マークPを検出することを考慮すると、基準マークPは、1つの印字対象Tに、最低3つ設けることが好ましい。したがって、図4Aは、1つの印字対象Tに、3つの基準マークPである基準マークP1、P2、P3が設けられた例を示している。さらに、これら3つの基準マークP1、P2、P3の位置関係としては、基準マークP1と基準マークP2とを結んだ直線と、基準マークP2と基準マークP3とを結んだ直線とが直交する関係であることが好ましい。
【0051】
したがって、以下では、1つの印字対象Tに、3つの基準マークP1、P2、P3が設けられ、基準マークP1と基準マークP2とを結んだ直線と、基準マークP2と基準マークP3とを結んだ直線とが直交する関係である場合を例に説明する。
【0052】
撮像部16は、印字対象Tを撮像し、撮像によって取得された画像を、メモリ20へ出力する。
【0053】
基準マーク中心点判定プログラム21は、メモリ20に出力された画像に基づいて、印字対象Tに予め設けられたすべての基準マークPの中心点、すなわち、基準マークP1、P2、P3それぞれの中心点を判定する。判定された中心点の位置は、印字対象Tにおける座標で表すことができる。
【0054】
レーザ印字指示プログラム22は、基準マーク中心点判定プログラム21によって判定された基準マークP1、P2、P3の各中心点の座標を、レーザ印字装置100へ出力し、レーザ印字装置100に対して、基準マークP1、P2、P3の各中心点を中心としたレーザマークSを、印字対象Tに形成するように指示する。
【0055】
この指示に応じて、レーザ印字装置100は、基準マークP1、P2、P3の各中心点が中心となるようなレーザマークSを形成するように、印字対象Tに向けてレーザを照射する。
【0056】
図4Bは、図4Aに示す印字対象Tに対してレーザ印字装置100によって形成されたレーザマークを説明するための図である。
【0057】
レーザ印字装置100によるレーザ照射によって、印字対象Tには、基準マークP1、P2、P3の各中心点が中心となるように照射されたレーザによって、レーザマークS1、S2、S3が形成される。
【0058】
図4Bに示す例では、基準マークPが二重丸形状であるので、基準マークPとの識別が容易で、また、中心点を検出しやすいという観点から、レーザマークSの形状を十文字形状としている。しかしながら、このレーザマークSの形状は一例であって、基準マークPとの識別が容易で、中心点を検出しやすい形状であれば、十文字形状以外であってもよい。
【0059】
レーザマークSは、基準マークPよりも縦、横において大きく、すなわちレーザマークSの横幅、縦の高さを基準マークPよりも大きいことが好ましい。これによって基準マークPの中心点と、レーザマークSの中心点とが一致した場合であっても、レーザマークSを、基準マークPと容易に識別できる。
【0060】
また、レーザマークSの色も特に限定されないが、基準マークPとの識別が容易になるように、基準マークPと異なる色とすることが望ましい。したがって、例えば、レーザマークSの色は、暗い無彩色とできる。暗い無彩色としては、具体的に、黒色または灰色とできる。
【0061】
このように、レーザマークSの形状のみならず、色も、基準マークPと異なるようにすることで、基準マークPとレーザマークSとの識別がより容易となる。
【0062】
ところで、レーザ印字装置100が、基準マークPの中心点と、中心点が一致するレーザマークSを形成するようにレーザを照射しても、前述した温度ドリフト等により、基準マークPの中心点と、レーザマークSの中心点とは一致しない。
【0063】
図4Bは、レーザ印字装置100が、基準マークP1、P2、P3の各中心点と、中心点が一致するようにレーザを照射したにも関わらず、基準マークP1に対して形成されたレーザマークS1の中心点が、基準マークP1の中心点からずれ、同様に、基準マークP2に対して形成されたレーザマークS2の中心点が、基準マークP2の中心点からずれ、基準マークP3に対して形成されたレーザマークS3の中心点が、基準マークP3の中心点からずれている例を示している。
【0064】
撮像部16は、レーザマークS1、S2、S3を形成された印字対象Tを撮像し、撮像によって取得された画像をメモリ20へ出力する。
【0065】
レーザマーク中心点判定プログラム23は、メモリ20へ出力された画像から、レーザ印字装置100によって印字対象Tに形成されたすべてのレーザマークS、すなわち、レーザマークS1、S2、S3の中心点を判定する。そして、各レーザマークS1、S2、S3の中心点の座標を出力する。
【0066】
補正量算出プログラム24は、基準マーク中心点判定プログラム21によって判定された基準マークP1、P2、P3の各中心点と、レーザマーク中心点判定プログラム23によって判定されたレーザマークS1、S2、S3の各中心点とのずれd1、d2、d3をそれぞれ求める。
【0067】
ずれd1、d2、d3は、各基準マークP1、P2、P3の中心点と、各レーザマークS1、S2、S3の中心点とのずれの大きさ及び方向を含むベクトル情報とすることができる。これらずれd1、d2、d3は、前述した温度ドリフト等によるレーザ印字装置100の位置決め不良によって生じたものである。
【0068】
図4Bでは、基準マークP1の中心点と対応するレーザマークS1の中心点とのずれd1と、基準マークP2の中心点と対応するレーザマークS2の中心点とのずれd2と、基準マークP3の中心点と対応するレーザマークS3の中心点とのずれd3とを、印字対象Tの外側に拡大表示して示している。
【0069】
補正量算出プログラム24はさらに、ずれd1、d2、d3の大きさや方向に基づいて、各レーザマークS1、S2、S3の中心点を、対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致させるための補正量を算出する。補正量は、補正の方向、伸縮量、回転量、歪み量(例えば、縦横比)などを、単独で、あるいは何れかを組み合わせて含むことができる。
【0070】
例えば、図4Bに例示するように、1つの印字対象Tに3つの基準マークP1、P2、P3が設けられている場合、補正量算出プログラム24は、ずれd1、d2、d3の大きさや方向に基づいて、方向、伸縮量、回転量、歪み量(例えば、縦横比)などを含み得る補正量を算出する。
【0071】
レーザ印字装置制御プログラム25は、算出された補正量を、通信インターフェース15を介してレーザ印字装置100へ送信し、補正量に基づいて、レーザ印字装置100の印字動作を制御する。
【0072】
これによって、レーザ印字装置100は、補正量に基づいて印字位置が補正された状態で、印字対象Tに対してレーザ印字を行う。
【0073】
位置補正装置10は、前述した基準マーク中心点判定プログラム21による基準マークPの中心点の判定、レーザ印字指示プログラム22によるレーザマークSの形成、レーザマーク中心点判定プログラム23によるレーザマークSの中心点の判定、補正量算出プログラム24による補正量の算出、レーザ印字装置制御プログラム25によるレーザ印字装置100の制御を、印字対象T毎に実施する。すなわち、位置補正装置10は、レーザ印字装置100による印字位置の補正を、レーザ印字装置100が、新たな印字対象Tに対して印字する前に、毎回実施する。
【0074】
次に、以上のように構成された位置補正装置10の動作例について説明する。
【0075】
図5は、位置補正装置10の動作例を示すフローチャートである。
【0076】
本動作例の説明では、一例として、印字対象Tをパスポート用の冊子(以下、「パスポート冊子」と称する)とする。したがって、位置補正装置10は、レーザ印字装置100にパスポート冊子が搬送される毎に、図5に例示するフローに従って動作する。搬送されたパスポート冊子には、図4Aに例示されるように、3つの基準マークP1、P2、P3が印刷されている。
【0077】
位置補正装置10では、撮像部16によって、印字対象Tが撮像され、撮像によって取得された画像がメモリ20へ出力され、基準マーク中心点判定プログラム21によって、この画像に基づいて、印字対象Tに予め設けられたすべての基準マークPの中心点、すなわち、基準マークP1、P2、P3の各中心点が判定される。判定された中心点の位置は、印字対象Tにおける座標で表される(ST1)。
【0078】
次に、レーザ印字指示プログラム22によって、基準マークP1、P2、P3の各中心点の座標が、レーザ印字装置100へ出力され、レーザ印字装置100に対して、基準マークP1、P2、P3の各中心点を中心として、レーザマークSを形成するように指示される。
【0079】
この指示に応じて、レーザ印字装置100によって、基準マークP1、P2、P3の各中心点と、中心点が一致するレーザマークSを形成するように、印字対象Tに向けてレーザが照射される(ST2)。
【0080】
これによって、パスポート冊子に、各基準マークP1、P2、P3に対応するレーザマークS1、S2、S3がそれぞれ形成される。しかしながら、レーザ印字装置100が、基準マークPの中心点と、中心点が一致するレーザマークSを形成するようにレーザを照射しても、前述した温度ドリフト等により、基準マークP1、P2、P3の各中心点と、対応するレーザマークS1、S2、S3の各中心点とは一致しない。
【0081】
レーザマークS1、S2、S3が形成された印字対象Tは、撮像部16によって撮像され、撮像によって取得された画像が、メモリ20へ出力される。
【0082】
この画像に基づいて、レーザマーク中心点判定プログラム23によって、レーザマークS1、S2、S3の各中心点が判定され、レーザマークS1、S2、S3の各中心点の座標が出力される(ST3)。
【0083】
次に、補正量算出プログラム24によって、基準マークP1、P2、P3の各中心点と、対応するレーザマークS1、S2、S3の各中心点とのずれd1、d2、d3がそれぞれ求められる(ST4)。
【0084】
補正量算出プログラム24ではさらに、ずれd1、d2、d3の大きさや方向に基づいて、各レーザマークS1、S2、S3の中心点を、対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致させるための補正量が算出される(ST5)。
【0085】
補正量は、レーザ印字装置制御プログラム25によって、通信インターフェース15を介してレーザ印字装置100へ送信される。これによって、レーザ印字装置100は、補正量に基づいて制御されながら、印字対象Tに対してレーザ印字を行う(ST6)。
【0086】
このようにして、レーザ印字装置100によるレーザ印字が制御され、印字対象Tにおける正しい位置(例えば、パスポート冊子の正しい場所)にレーザ印字がなされる(ST7)。
【0087】
ST7におけるレーザ印字が終了し、次のパスポート冊子がレーザ印字装置100に搬送される(ST8:Yes)と、ステップST1に戻り、次のパスポート冊子に対しても、ステップST1~ST7の動作がなされ、印字対象Tにおける正しい位置にレーザ印字がなされる。
【0088】
すべてのパスポート冊子に対するレーザ印字が終了する(ST8:No)と、処理を終了する。
【0089】
上述したように、本発明の第1の実施形態に係る位置補正方法が適用された位置補正装置10によれば、印字対象T毎に、レーザ印字する直前に、レーザ印字装置100の印字位置を補正するので、経時的に発生する印字ずれによる影響を最小限に抑え、正しい位置へ、正しくレーザ印字することができ、もって、印字品質の安定化を図ることが可能となる。
【0090】
しかも、この補正は、レーザ印字装置100の部品の交換や、新たな部品の設置を伴わないので、安価に実現することができる。
【0091】
このように、本発明の第1の実施形態によれば、レーザ印字装置100のハードウェアを変更することなく、位置補正装置10に組み込まれたソフトウェアによって、さほどコストをかけることなく、精度の良いレーザ印字装置100のための位置補正を実現することが可能となる。
【0092】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について説明する。ここでは、既出の構成要素については同じ参照番号を用いることによって、説明を省略する。
【0093】
第2の実施形態は、基準マークPおよびレーザマークSによる印字対象Tのデザイン性の低下の影響を低減する技術に関する。このために、第2の実施形態では、レーザ印字装置制御プログラム25は、レーザ印字装置100に対して、基準マークPと同一の外形形状を有し、基準マークPとは異なるサイズを有するレーザマークSを形成させる。
【0094】
これによって、例えば、基準マークPのサイズが、レーザマークSのサイズよりも大きければ、基準マークPの中心点と、レーザマークSの中心点とがほぼ一致している時、レーザマークSは、基準マークPの内部に形成される。このため、基準マークPと、レーザマークSとの両方が形成されていても、あたかも1つのマークとしてしか見えない。したがって、印字対象Tは、基準マークPおよびレーザマークSが形成された場合であっても、基準マークPおよびレーザマークSの形成による印字対象Tのデザイン性の低下の影響を低減できるという効果を有する。
【0095】
例えば、図4Aに例示するように、印字対象Tに3つの基準マークP1、P2、P3が形成されている場合、レーザ印字装置100によってレーザマークS1、S2、S3が形成されると、合計して6つのマークが、印字対象Tに形成されることになるので、印字対象Tのデザイン性の低下をもたらす恐れがある。
【0096】
しかしながら、本実施形態によれば、基準マークPの中心点と、レーザマークSの中心点とがほぼ一致している時、基準マークPと、対応するレーザマークSとは、あたかも1つのマークとして見えるようになるので、印字対象Tに3つの基準マークP1、P2、P3が形成されている場合、合計して6つのマークが形成されるにも関わらず、3つのマークとしてしか認識されないので、印字対象Tのデザイン性の低下の影響を低減することができる。
【0097】
本実施形態ではさらに、レーザ印字装置制御プログラム25は、レーザ印字装置100に対して、複数の線分の組合せで形成されたレーザマークSを、印字対象Tに形成させることができる。
【0098】
図6図7、および図8は、複数の線分の組合せで形成されたレーザマークSの例を示す概念図である。
【0099】
図6は、長さの異なる複数の実線を、一定間隔で平行に配置することによって、全体的に円形状に見えるように形成されたレーザマークSの例である。
【0100】
図7は、長さの等しい複数の線分を、一定間隔で平行に配置することによって、全体的に四角形形状に見えるように形成されたレーザマークSの例である。
【0101】
図8は、長さの異なる複数の実線を、一定間隔で平行に配置することによって、全体的に菱形形状に見えるように形成されたレーザマークSの例である。
【0102】
本実施形態ではさらに、レーザ印字装置制御プログラム25は、レーザ印字装置100に対して、破線または点線で形成された輪郭を有するレーザマークSを、印字対象Tに形成させることもできる。
【0103】
図9は、破線で形成された輪郭を有するレーザマークSの例を示す概念図である。
【0104】
図9は、外径(輪郭)が破線で形成された円形状に見えるレーザマークSの例である。破線を点線に置換できることも、当業者であれば明らかであろう。
【0105】
図6図7図8、および図9のようなレーザマークSは、レーザ印字指示プログラム22が、レーザ印字装置100に対して、べた塗りではなく、ハッチングパターンで印字させることによって実現することができる。べた塗りしないことで、印字対象TにおいてレーザマークSをより目立たなくすることができるので、レーザマークSの形成による印字対象Tのデザイン性の低下の影響をさらに低減できるという効果を有する。
【0106】
本実施形態で奏される効果を、図10および図11を用いて説明する。
【0107】
図10は、本発明の第2の実施形態によって、印字対象Tに、基準マークPと同一形状のレーザマークSが形成される状態を段階的に示す図である。
【0108】
図11は、図10との比較のために、印字対象Tに、基準マークPと異なる形状のレーザマークSが形成される状態を段階的に示す図である。
【0109】
図10(a)は、カラー印刷装置115によって、顔写真のCMY成分と、3つの基準マークP1~P3とがカラー印刷された印字対象Tを示している。基準マークP1~P3は、いずれも円形状であるが、それぞれサイズ(半径)は異なり、基準マークP2、P1、P3の順に大きい。
【0110】
図10(b)は、図10(a)の状態から、レーザ印字装置100によってレーザマークS1~S3が形成された印字対象Tを示している。レーザマークS1~S3の形状は、基準マークP1~P3と同じ円形状である。さらに、レーザマークS1~S3の輪郭は、図9に示すように破線で形成されている。図10(c)は、図10(b)の状態からさらに、レーザ印字装置100によって、K成分が印画された印字対象Tを示している。
【0111】
図10(b)の状態では、3つの基準マークP1~P3に加えて、3つのレーザマークS1~S3が形成される。したがって、図10(b)および図10(c)の状態では、印字対象Tに、合計して6つのマークが形成されている。しかしながら、基準マークP1、P2、P3の各中心点と、レーザマークS1、S2、S3の各中心点とがほぼ一致していれば、レーザマークS1~S3は、対応する基準マークP1~P3の内部に、しかも破線で形成されるので、目立たない。これによって、印字対象Tには6つのマークが形成されているにも関わらず、あたかも3つのマークとしてしか見えなくなる。
【0112】
図11(a)は、図10(a)と同じである。
【0113】
図11(b)も、図11(a)の状態から、レーザ印字装置100によってレーザマークS1~S3が形成された印字対象Tを示しているが、レーザマークS1~S3の形状は、図4Bに示すような実線からなる十文字形状である。図11(c)は、図11(b)の状態からさらに、レーザ印字装置100によって、K成分が印画された印字対象Tを示している。
【0114】
図10(b)の状態では、3つの基準マークP1~P3に加えて、3つのレーザマークS1~S3が形成される。3つのレーザマークS1~S3は、実線からなる十文字形状であるので、対応する基準マークP1~P3と識別可能である。これによって、印字対象Tには、3つの基準マークP1~P3と、3つのレーザマークS1~S3とからなる6つのマークが認識されることになる。これは、印字対象Tのデザイン性の低下をもたらす恐れがある。
【0115】
しかしながら本実施形態によれば、図10を用いて説明したように、レーザマークSを、合わせて最低でも6箇所必要となる基準マークPとレーザマークSとが、あたかも3箇所しか見えなくすることができるので、印字対象Tのデザイン性の損失の影響を、低減することが可能となる。さらに、レーザマークSを、破線のような不連続な線で形成することによって、より目立たなくすることができる。
【0116】
ところで、基準マークPと、レーザマークSとが同じ形状である場合、基準マークPの中心点と、レーザマークSの中心点とが少しずれている場合、一般的に用いられるパターンマッチングでは、レーザマークSが、基準マークPの外側の円であるか内側の円であるかの判別が困難となる場合がある。これを、図12を用いて説明する。
【0117】
図12は、ともに円形状である基準マークPとレーザマークSとの位置関係の例を示す概念図である。
【0118】
図12(a)は、基準マークPの中心点と、レーザマークSの中心点とが一致している場合の位置関係である。この場合、基準マークPに対して同心円状にレーザマークSが形成されている。
【0119】
一方、図12(b)は、基準マークPの中心点と、レーザマークSの中心点とが少しずれている場合の位置関係である。この場合、基準マークPに対して同心円状にレーザマークSが形成されず、一般的に用いられるパターンマッチングでは、レーザマークSが、基準マークPの外側の円であるか内側の円であるかの判別が困難である。
【0120】
このような場合、基準マークPに対して、色変換した画像データを用いることで、特定の色消しを行うことによって、レーザマークSが、基準マークPの外側の円であるか内側の円であるかを容易に判別できるようになる。
【0121】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について説明する。ここでも、既出の構成要素については同じ参照番号を用いることによって、説明を省略する。
【0122】
第3の実施形態も、基準マークPおよびレーザマークSによる印字対象Tのデザイン性の低下の影響を低減する技術に関する。このために、第3の実施形態では、カラー印刷装置115によって、印字対象Tに印刷される基準マークPを、目立たないように、印字対象Tの境界に印刷する。
【0123】
図13は、本発明の第3の実施形態における基準マークPの例を示す平面図である。
【0124】
すなわち、本実施形態では、印字対象Tに印刷される基準マークPを、図12(a)と、図12(a)の一部拡大図である図12(b)とに示すように、印字対象Tを囲む点線によって形成された矩形形状の境界における頂点d1と、頂点d1の周囲の4つの点d2~d5とで形成する。
【0125】
この場合、4つの点d2~d5の中心に存在する頂点d1が、基準マークPの中心点に相当する。頂点d1の周囲の4つの点d2~d5のうち、2つの点(図13(b)に示す場合、点d2、d3)は、矩形形状の直交する2辺に位置し、他の2つの点(図13(b)に示す場合、点d4、d5)は、これら2辺のおのおのの延長上に位置する。
【0126】
このように、基準マークPを、複数の点d1~d5で形成することによって、目立たないようにすることも可能となる。
【0127】
以上説明したように、本実施形態によれば、印字対象Tに印刷される基準マークPを、目立たなくすることができるので、印字対象Tのデザイン性の損失の影響を、低減することが可能となる。
【0128】
さらに、本実施形態を、第2の実施形態と組み合わせることによって、本実施形態で奏される効果と、第2の実施形態で奏される効果とを合わせた効果を得ることもできる。
【0129】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について説明する。ここでは、既出の構成要素については同じ参照番号を用いることによって、説明を省略する。
【0130】
本実施形態では、撮像部16にカラーフィルターを適用し、さらに画像の2値化を行うことによって、レーザマークSの位置を精度良く判定する。
【0131】
本実施形態では、撮像部16が特定のカラーフィルターを使用し、CMYによるパーソナルデータと同時に印画されたマゼンタの円形状の基準マークP(例えば、基準マークP1、P2、P3)が印字された印字対象Tを撮像し、撮像によって得られた画像を、メモリ20へ出力する。
【0132】
図14は、本発明の第4の実施形態で実施される2値化によるレーザマークの位置判定の概念を示す図である。
【0133】
図14では、簡略のため、1つの基準マークP1および1つのレーザマークS1しか示していない。しかしながら、以下では、印字対象Tには、3つの基準マークP1、P2、P3が印字され、それに応じて3つのレーザマークS1、S2、S3が形成されたとして説明する。
【0134】
図14(a)に示すように、レーザマーク中心点判定プログラム23は、撮像部16によって撮像され、メモリ20へ出力された画像に基づいて、マゼンタの円形状の基準マークP1、P2、P3の中心点を判定し、各中心点の座標を出力する。
【0135】
補正量算出プログラム24は、基準マークP1、P2、P3の各中心点の位置関係から、印字対象Tの歪みを算出する。
【0136】
レーザ印字指示プログラム22は、マゼンダの円形状の基準マークP1、P2、P3の各中心点を中心としたK成分の円形状のレーザマークS1、S2、S3を印字対象Tに形成するように、レーザ印字装置100に指示する。この時、レーザ印字装置100には、基準マークP1、P2、P3の各中心点の座標を出力するのではなく、各中心点の座標が、補正量算出プログラム24によって算出された歪みに応じて補正された座標を出力する。これによって、レーザ印字装置100は、図14(b)に例示するように、円形状のレーザマークS1、S2、S3を、高い精度で、基準マークP1、P2、P3の中心点を中心として形成できるようになる。
【0137】
次に、撮像部16は、基準マークP1、P2、P3の色(この場合、マゼンダ)に含まれない色成分(この場合、緑色(G)成分)以外のカラーフィルター(この場合、赤色(R)フィルターが好適であるが、青色(B)フィルターでもよい)を介して印字対象Tを撮像し、図14(c)に例示されるような、撮像により取得された画像を、メモリ20へ出力する。
【0138】
この画像では、背景色である赤色(R)に対して、濃度差の小さいマゼンダの円形状の基準マークP1、P2、P3と、濃度差の大きいレーザによるK成分の円形状のレーザマークS1、S2、S3とが観察される。
【0139】
レーザマーク中心点判定プログラム23は、図14(d)に例示するように、この画像を、グレー変換し、2値化することによって、黒色のレーザマークS1、S2、S3のみを抽出する。
【0140】
補正量算出プログラム24は、この抽出結果に基づいて、レーザマークS1、S2、S3の伸縮など、カラーによるずれを補正するための補正量を算出する。
【0141】
レーザ印字装置制御プログラム25は、算出された補正量を、通信インターフェース15を介してレーザ印字装置100へ送信し、補正量に基づいて、レーザ印字装置100の動作を制御する。
【0142】
これによって、レーザ印字装置100は、補正量に基づいて印字位置が補正された状態で、印字対象Tに対してレーザ印字を行う。
【0143】
このようにして、本実施形態に係る位置補正装置は、印字対象Tにおける正しい位置にレーザ印字がなされるように、レーザ印字装置100の動作を制御することができる。
【0144】
なお、上記は基準マークPの色をマゼンタ(M)とした場合の説明であるが、基準マークPの色をシアン(C)とすることもできる。基準マークPの色をシアン(C)とした場合は、撮像部16が、青色(B)のカラーフィルターを用いることで同等の効果が得られる。撮像部16が、緑色(G)のカラーフィルターを用いることも可能であるが、基準マークPの色には、シアン(C)中の緑色(G)成分が少ないため、2値化閾値の設定範囲が狭くなるので、好ましくはない。
【0145】
また、基準マークPの色を黄色(Y)とすることもできる。基準マークPの色を黄色(Y)とした場合は、撮像部16が、赤色(R)または緑色(G)のカラーフィルターを使うことで同等の効果が得られる。
【0146】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態について説明する。ここでは、既出の構成要素については同じ参照番号を用いることによって、説明を省略する。
【0147】
本実施形態では、第4の実施形態のように撮像部16において特定のフィルターを使用することなく、撮像したカラー画像に対して、RGB変換と合成とを含む処理を施すことによって、レーザマークSの位置を精度良く判定する。
【0148】
本実施形態では、撮像部16が、CMYによるパーソナルデータと同時に印画されたマゼンタの円形状の基準マークP(例えば、基準マークP1、P2、P3)が印刷された印字対象Tを撮像し、撮像によって得られた画像を、メモリ20へ出力する。
【0149】
図15は、本発明の第5の実施形態で実施されるRGB変換および合成による処理によるレーザマークの位置判定の概念を示す図である。
【0150】
図15でもまた、図14と同様に、簡略のため、1つの基準マークP1および1つのレーザマークS1しか示していない。しかしながら、以下では、印字対象Tには、3つの基準マークP1、P2、P3が印字され、それに応じて3つのレーザマークS1、S2、S3が形成されたとして説明する。
【0151】
図15(a)に示すように、レーザマーク中心点判定プログラム23は、撮像部16によって撮像され、メモリ20へ出力された画像に基づいて、マゼンタの円形状の基準マークP1、P2、P3の中心点を判定し、各中心点の座標を出力する。
【0152】
補正量算出プログラム24は、基準マークP1、P2、P3の各中心点の位置関係から、印字対象Tの歪みを算出する。
【0153】
レーザ印字指示プログラム22は、マゼンダの円形状の基準マークP1、P2、P3の各中心点を中心としたレーザマークS1、S2、S3を印字対象Tに形成するように、レーザ印字装置100に対して指示する。ここでレーザマークS1、S2、S3は、基準マークP1、P2、P3とサイズ違いのK成分の円形状である。
【0154】
この時、レーザ印字装置100には、基準マークP1、P2、P3の各中心点の座標を出力するのではなく、各中心点の座標が、補正量算出プログラム24によって算出された歪みに応じて補正された座標を出力する。これによって、レーザ印字装置100は、図15(b)に例示するように、基準マークP1、P2、P3とサイズ違いのレーザマークS1、S2、S3を、高い精度で、基準マークP1、P2、P3の中心点を中心として形成できるようになる。
【0155】
次に、撮像部16は、このようにレーザマークS1、S2、S3が形成された印字対象Tを撮像し、撮像により取得された画像を、メモリ20へ出力する。
【0156】
レーザマーク中心点判定プログラム23は、この画像を、図15(c)に例示するように、RGB変換し、その後、図15(d)に例示するように、図15(a)で得られた画像と加算合成(色成分の加算)する。
【0157】
図16は、加算合成の一例を説明するための図である。
【0158】
例えば、図15(b)に例示するように、基準マークP1、P2、P3に対するレーザマークS1、S2、S3が形成された印字対象Tに対して、CMYの各色成分に対してRGB変換を行い、合成した場合、その結果は、図16に示す通りとなる。
【0159】
図16に例示する方法では、カラーのマークにマゼンタかイエローを用いるのが最適であるが、シアンマークであっても、レーザマークの黒と十分な濃度差が得られるため、実用上は問題ない。あるいは、さらに2値化するなどの処理を加えれば、レーザマークS1、S2、S3のさらに確実な位置判定処理が可能となる。
【0160】
このような加算合成の結果、図15(e)に例示するように、カラーの基準マークP1、P2、P3の濃度が極めて低くなり、黒のレーザマークS1、S2、S3のみが抽出されるようになる。
【0161】
これによって、レーザマーク中心点判定プログラム23は、レーザマークS1、S2、S3の中心点を容易に判定することが可能となる。
【0162】
本実施形態によれば、上述したように、近接しているカラーの基準マークPと、レーザマークSのそれぞれの位置情報を測定することが可能となり、K成分に必要な変形を行い、高精度な位置合わせを行うことが可能となる。
【0163】
さらには、色の判別を行うことで、基準マークPやレーザマークSといったマークの位置測定精度を確保したまま、極めて近傍に基準マークPを設定することも可能となり、デザイン性を損なわずに高精度の位置決めを行うことができる。
【0164】
補正量算出プログラム24は、この抽出結果に基づいて、レーザマークS1、S2、S3の伸縮など、カラーによるずれを補正するための補正量を算出する。
【0165】
レーザ印字装置制御プログラム25は、算出された補正量を、通信インターフェース15を介してレーザ印字装置100へ送信し、補正量に基づいて、レーザ印字装置100の動作を制御する。
【0166】
これによって、レーザ印字装置100は、補正量に基づいて印字位置が補正された状態で印字対象Tに対してレーザ印字を行う。
【0167】
このようにして、本実施形態に係る位置補正装置は、印字対象Tにおける正しい位置にレーザ印字がなされるように、レーザ印字装置100の動作を制御することができる。
【0168】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態について説明する。ここでは、既出の構成要素については同じ参照番号を用いることによって、説明を省略する。
【0169】
印字対象にレーザ印字装置100で印字する際には、レーザ光が熱変換される熱影響により印字対象自体も変形する。その変形量は印字対象の材料の種類や厚み、印画領域のサイズ等により変化するが、精密な印字が要求される場合にはその変形量が無視できなくなる。第6の実施形態は、その課題を解決するための技術に関する。
【0170】
図17は、本実施形態に係る位置補正装置10の動作例を示すフローチャートである。
【0171】
本動作例の説明では、一例として、上述した図5の動作例の説明の場合と同様に、印字対象Tをパスポート冊子とする。したがって、位置補正装置10は、レーザ印字装置100にパスポート冊子が搬送される毎に、図17に例示するフローに従って動作する。搬送されたパスポート冊子には、図4Aに例示されるように、3つの基準マークP1、P2、P3が印刷されている。
【0172】
位置補正装置10は、レーザ印字装置100に送信されてレーザ印字装置100が受信した画像データ(入力画像)を、所定数に分割する。ここでは、図18に例示されるように、位置補正装置10は、入力画像G0を3つの分割画像G1、G2、G3に分割する(ST101)。
【0173】
次いで、位置補正装置10は、各分割画像G1、G2、G3を順次、対象分割画像にしてステップST102からステップST104までの処理を実行する。
【0174】
ステップST102では、対象分割画像に対して、上述した図5のステップST1からステップST5までの処理が実行される。この結果、対象分割画像に対して、各レーザマークS1、S2、S3の中心点を、対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致させるための補正量が算出される。
【0175】
ステップST103では、位置補正装置10は、対象分割画像から、算出した補正量に基づいてレーザ描画用データを作成する(対象分割画像の更新)。図19図21に、レーザ描画用データの作成例が示される。
【0176】
図19のレーザ描画用データの作成例では、図19(a)に示されるように、レーザマークS1、S2、S3の中心点が、基準マークP1、P2、P3の中心点から図中右下方向にずれている。位置補正装置10は、当該図中右下方向にずれている補正量に基づいて、対象分割画像データの修正を行う。図19(b)の例では、分割画像G2が対象分割画像であって、対象分割画像G2の位置を当該補正量に基づいて移動させてずれをなくすように、対象分割画像G2のデータが修正される。この修正によって、修正後の対象分割画像G2’の位置は、各レーザマークS1、S2、S3の中心点が対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致する場合の位置になる。位置補正装置10は、対象分割画像G2’から対象分割画像G2’のレーザ描画用データを作成する。図19(c)の例では、対象分割画像G2’は、実際にレーザ走査することができるように、方形のデータにされる。
【0177】
図20のレーザ描画用データの作成例では、図20(a)に示されるように、レーザマークS1、S2、S3の中心点が、基準マークP1、P2、P3の中心点からCW方向(時計回りの回転方向)に傾いている。位置補正装置10は、当該CW方向に傾いている補正量に基づいて、対象分割画像データの修正を行う。図20(b)の例では、分割画像G2が対象分割画像であって、対象分割画像G2の位置を当該補正量に基づいて反時計回りの回転方向に回転させて傾きをなくすように、対象分割画像G2のデータが修正される。この修正によって、修正後の対象分割画像G2’の位置は、各レーザマークS1、S2、S3の中心点が対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致する場合の位置になる。位置補正装置10は、対象分割画像G2’から対象分割画像G2’のレーザ描画用データを作成する。図20(c)の例では、対象分割画像G2’は、実際にレーザ走査することができるように、方形のデータにされる。
【0178】
図21のレーザ描画用データの作成例では、図21(a)に示されるように、レーザマークS1、S2、S3の中心点が、基準マークP1、P2、P3の中心点から外側方向に広がっている。位置補正装置10は、当該外側方向に広がっている補正量に基づいて、対象分割画像データの修正を行う。図21(b)の例では、分割画像G2が対象分割画像であって、対象分割画像G2を当該補正量に基づいて縮小させて広がりをなくすように、対象分割画像G2のデータが修正される。この修正によって、修正後の対象分割画像G2’の位置は、各レーザマークS1、S2、S3の中心点が対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致する場合の位置になる。位置補正装置10は、対象分割画像G2’から対象分割画像G2’のレーザ描画用データを作成する。図21(c)の例では、対象分割画像G2’は、実際にレーザ走査することができるように、方形のデータにされる。
【0179】
ステップST104では、対象分割画像のレーザ描画用データがレーザ印字装置100へ送られ、レーザ印字装置100が印字対象Tに対して対象分割画像のレーザ描画用データのレーザ印字を行う。これにより、対象分割画像が印字対象Tにおける正しい位置にレーザ印字される。
【0180】
ステップST105では、次の分割画像があるか否かが判定される。次の分割画像がある場合は、次の分割画像を対象分割画像にしてステップST102からステップST104までの処理を実行する。一方、すべての分割画像を対象分割画像にしてステップST102からステップST104までの処理を実行完了である場合は、次の分割画像がないと判定され、ステップS106に進む。
【0181】
ステップST106は、上述した図5のステップST8と同じである。次のパスポート冊子がレーザ印字装置100に搬送される(ST106:Yes)と、ステップST101に戻り、次のパスポート冊子に対しても、ステップST101からステップST105の動作がなされ、対象分割画像ごとに印字対象Tにおける正しい位置にレーザ印字がなされる。
【0182】
すべてのパスポート冊子に対するレーザ印字が終了する(ST106:No)と、処理を終了する。
【0183】
上述のステップST101、ST103-ST105は、本実施形態の一例として、レーザ印字装置制御プログラム25によって実現される。具体的には、位置補正装置10の制御部としてのCPU12がメモリ20に格納されたレーザ印字装置制御プログラム25を実行することにより、ステップST101、ST103-ST105が実現される。上述のステップST102(ST1-ST5)及びステップST106(ST8)は、第1の実施形態と同じである。
【0184】
上述したように、本発明の第6の実施形態に係る位置補正方法が適用された位置補正装置10によれば、印字対象T毎に、レーザ印字する直前に、対象分割画像毎にレーザ印字装置100の印字位置を補正するので、レーザ光が熱変換される熱影響により印字対象自体が変形してもその経時的に発生する印字ずれによる影響を最小限に抑え、正しい位置へ、正しくレーザ印字することができ、もって、印字品質の安定化を図ることが可能となる。
【0185】
しかも、この補正は、レーザ印字装置100の部品の交換や、新たな部品の設置を伴わないので、安価に実現することができる。
【0186】
このように、本発明の第6の実施形態によれば、レーザ印字装置100のハードウェアを変更することなく、位置補正装置10に組み込まれたソフトウェアによって、さほどコストをかけることなく、精度の良いレーザ印字装置100のための位置補正を実現することが可能となる。
【0187】
なお、第6の実施形態では、基準マーク付近にはレーザマークが対象分割画像の個数だけ(入力画像の分割数だけ)描画される。このため、拡大率の異なる同形状のレーザマークを描画することによって、既に描画したレーザマークとの判別を容易にすることができる。又は、形状の異なるレーザマークを描画したり、予め決められた位置だけ既に描画したレーザマークからずれた位置に新たなレーザマークを描画したりすることによっても、既に描画したレーザマークとの判別を容易にすることができる。
【0188】
図22(a)は、拡大率の異なる同形状のレーザマークを描画する場合の例である。図22(a)には、入力画像の分割数が3である場合に、基準マークPの内側に、拡大率の異なる同形状(円形)のレーザマークS1、S2、S3が描画されている。
【0189】
図22(b)は、形状の異なるレーザマークを描画する場合の例である。図22(b)には、入力画像の分割数が3である場合に、基準マークPの内側に、形状の異なるレーザマーク(円形、四角形、三角形)S1、S2、S3が描画されている。
【0190】
また、第6の実施形態では、入力画像の分割数が多い場合は、基準マーク付近にレーザマークが多数配置される。すると、撮像部16によって撮像された画像には煩雑な図形が写ることから、各レーザマークを判別することが難しくなって、各レーザマークの中心点を対応する各基準マークの中心点に一致させるための補正量を算出する際にエラーが増大する可能性がある。この課題に対処するために、位置補正装置10は、各分割画像の終端付近に新たなレーザマークを設け、この新たなレーザマークと基準マークとの位置関係を撮像によって取得し、取得した当該位置関係を当該補正量の算出に利用してもよい。
あるいは、複数の基準マークを各分割画像の端部に近接して配置し、各分割画像に対応する基準マークの中心と、終端付近に新たに設けるレーザマークとの位置関係を撮像して当該補正量を算出してもよい。この方法を用いる場合、前記の複数の基準マークは同じ版で同じインキで印刷されていることが望ましい。また、同一印刷装置での別色での印刷でもよい。基準マークの形状はそれぞれ同じでも良いし、異なっていてもよい。また、基準マークの間に補助マークを設けてもよい。
【0191】
また、第6の実施形態では、各レーザマークの中心点を対応する各基準マークの中心点に一致させるために、各分割画像で異なる位置補正がなされる。このため、各分割画像の描画結果として分割画像間の境界部に目視可能な濃淡線が現れる可能性がある。これは美観的な品質低下になる。
この課題に対処するために、レーザ光が熱変換される熱影響による印字対象自体の変形量(熱変形量)が少ない(濃淡線が現れない熱変形量)うちに、各レーザマークの中心点を対応する各基準マークの中心点に一致させるための補正量を更新することができるように、入力画像の分割数を予め決定してもよい。これにより、濃淡線の発生を抑えることができる。
【0192】
熱変形量は、印字対象の材料種類や厚みによって大きく異なる。また、描画面積が大きい場合は、印字対象に蓄積する熱量が大きくなるため、印字条件に合わせた分割数を採用することが重要である。ここで、分割数が大きくなるにつれて、レーザマーク印画時間や補正演算に要する時間が増大するなど生産性悪化の影響が大きくなる。この課題に対処するために、位置補正装置10は、各分割画像に対する位置補正を行う際に、前回の対象分割画像の位置補正量からの位置補正の更新量に基づいて前回の対象分割画像と今回の対象分割画像との隙間のサイズを算出し、算出した隙間のサイズの画像を用いて前回の対象分割画像と今回の対象分割画像の隙間を埋めるようにしてもよい。
【0193】
図23は、対象分割画像間の隙間を埋める例である。図23に例示されるように、描画された対象分割画像G1’と対象分割画像G2’の隙間が、対象分割画像G2’の対象分割画像G1’側の端のラインのコピーによって補完されている。位置補正装置10は、今回の対象分割画像G2に対する位置補正を行う際に、前回の対象分割画像G1の位置補正量からの位置補正の更新量に基づいて、前回の対象分割画像G1’と今回の対象分割画像G2’との隙間のサイズ(隙間を埋めるのに必要なライン数)を算出する。位置補正装置10は、算出した隙間のサイズ分だけ対象分割画像G2’の対象分割画像G1’側の端のラインをコピーし、当該コピーを対象分割画像G2’の対象分割画像G1’側の端に追加することにより、対象分割画像G1’との隙間を補完した対象分割画像G2’を生成する。位置補正装置10は、当該補完後の対象分割画像G2’から対象分割画像G2’のレーザ描画用データを作成する。この対象分割画像G2’のレーザ描画用データが描画されることによって、対象分割画像G1’との隙間がなくなり、美観的な品質低下を防ぐことができる。
【0194】
図24図28は、第6の実施形態に係るレーザ印字の例である。図24図28のレーザ印字の例は、CMY万線模様である第1画像G10に対して、第2画像G20を用いてマゼンタ及びイエローの部分だけを選択的に黒色隠ぺいすることにより、シアンの色表現をテストするテスト画像を印字するものである。このとき、印字の進行につれて、レーザ光が熱変換される熱影響により印字対象自体が変形することが考えられる。ここでは、印字の進行につれて、印字対象が副走査方向に伸びる場合を例に挙げて説明する。
【0195】
上述した第1の実施形態のように印画開始前のみの位置合わせでは、印字進行中に印字対象が副走査方向に伸びると、副走査方向へのズレ量が蓄積し、次第に描画線のピッチが合わなくなる。この結果、マゼンタ及びイエローの部分だけを選択的に黒色隠ぺいすることができなくなって、シアンの色表現をテストするテスト画像を精度よく作成することができない。
【0196】
しかし、第6の実施形態によれば、図25に例示されるように第2画像G20を分割画像G21、G22、G23に3分割し、分割画像G21、G22、G23毎に位置合わせを行うことによって、伸びている副走査方向へのズレ量の蓄積を防いで描画線のピッチが合わなくなることを未然に防止する。これにより、シアンの色表現をテストするテスト画像を精度よく作成することを図る。なお、そのズレ量の蓄積を防ぐという着想は、角度やサイズや歪みにおけるズレ量に対しても同様に有効である。
【0197】
図26では、第1画像G10に対して、分割画像G21が、対象分割画像として位置補正されてから印字されている。この図26の位置補正では、各レーザマークS1、S2、S3の中心点が対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致するように位置補正されている。
【0198】
次いで、図27では、分割画像G21が印字された後に、第1画像G10に対して、分割画像G22が、対象分割画像として位置補正されてから印字されている。この図27の位置補正では、各レーザマークS11、S21、S31の中心点が対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致するように位置補正されている。
【0199】
次いで、図28では、分割画像G22が印字された後に、第1画像G10に対して、分割画像G23が、対象分割画像として位置補正されてから印字されている。この図28の位置補正では、各レーザマークS12、S22、S32の中心点が対応する基準マークP1、P2、P3の中心点に一致するように位置補正されている。
【0200】
図26図28に例示されるように、分割画像G21、G22、G23毎に位置合わせを行うことによって、伸びている副走査方向へのズレ量の蓄積が抑えられるので、描画線のピッチが合わなくなることを未然に防止することができる。これにより、シアンの色表現をテストするテスト画像を精度よく作成することが可能になる。
【0201】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0202】
例えば、基準マークPやレーザマークSの形状として、代表的な例はともに円形状であるが、基準マークPおよびレーザマークSの形状は、円形状に限定されず、互いに異なる任意の形状とすることもできる。
【0203】
図29は、円形状の基準マークPの中心点と、矩形形状のレーザマークSの中心点とが一致する状態を示す図である。
【0204】
図29に例示するように、基準マークPを、紅色の丸形状とし、レーザマークSを、矩形としたような組み合わせでもよい。
【0205】
また、本発明では、必要に応じてパターンマッチングを適用することができるが、例えば、OpenCVの使用において、撮像照明に外乱のない安定している状態であればSSD(画素値の差分の二乗和(二乗誤差))などを利用することができ、あるいは撮像照明に外乱が入るような環境ではNCC(正規化相互相関)を使用するなど、適宜適切な手法を使用することができるという具合に、そのアルゴリズムは特に限定しない。
【符号の説明】
【0206】
10・・位置補正装置
11・・バス
12・・CPU
13・・外部記録媒体
14・・メモリインターフェース
15・・通信インターフェース
16・・撮像部
20・・メモリ
21・・基準マーク中心点判定プログラム
22・・レーザ印字指示プログラム
23・・レーザマーク中心点判定プログラム
24・・補正量算出プログラム
25・・レーザ印字装置制御プログラム
29・・書込可能データエリア
100・・レーザ印字装置
115・・カラー印刷装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30