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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028598
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】吸込スクリュ式ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/70 20060101AFI20250221BHJP
   F04D 1/04 20060101ALI20250221BHJP
   F04D 7/04 20060101ALI20250221BHJP
   F04D 29/18 20060101ALI20250221BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20250221BHJP
   F04D 29/22 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
F04D29/70 G
F04D1/04
F04D7/04 M
F04D29/18 101
F04D29/54 A
F04D29/22 B
F04D29/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133512
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】種市 準
(72)【発明者】
【氏名】宇野 秀城
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AA27
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB53
3H130AC07
3H130BA45A
3H130BA45C
3H130CA06
3H130CA21
3H130CB06
3H130DC16X
3H130DC19X
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EB01A
3H130EB01C
(57)【要約】
【課題】スクリュ作用部先端への夾雑物の引っ掛かり以外の機序で吸込スクリュの背面に夾雑物が回り込んでしまった場合であっても、吸込スクリュの背面に夾雑物が回り込んで堆積するという問題を防止または抑制できる吸込スクリュ式ポンプを提供する。
【解決手段】この吸込スクリュ式ポンプ10は、シャフト12の先端に設けられてシャフト12と一体で回転する吸込スクリュ20と、吸込スクリュ20を自身内部に収容するとともにシャフト12の軸方向前方の中心に吸込口46が設けられ側方に吐出口47が設けられるケーシング40と、ケーシング40の背面に設けられてシャフト12の周囲を軸封する軸封部15と、を備え、吸込スクリュ20の背面とケーシング40の内面とが軸方向で対向する部分に、吸込スクリュ20の背面に回り込んだ夾雑物Eを破砕可能な破砕部80が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの軸方向前方から後方に向けて送液を移送する吸込スクリュ式ポンプであって、
前記シャフトの先端に設けられて該シャフトと一体で回転する吸込スクリュと、前記吸込スクリュを自身内部に収容するとともに前記シャフトの軸方向前方の中心に吸込口が設けられ側方に吐出口が設けられるケーシングと、前記ケーシングの背面に設けられて前記シャフトの周囲をメカニカルシールで軸封する軸封部と、を備え、
前記吸込スクリュの背面と前記ケーシングの内面とが軸方向で対向する部分に、前記吸込スクリュの背面に回り込んだ夾雑物を破砕可能な破砕部が設けられていることを特徴とする吸込スクリュ式ポンプ。
【請求項2】
前記破砕部は、前記吸込スクリュの背面に設けられた切り刃を有する請求項1に記載の吸込スクリュ式ポンプ。
【請求項3】
前記破砕部は、前記ケーシングのバックカバーに前記切り刃に対向して設けられて自身の溝形状の開口端縁で前記切り刃と協働して夾雑物をせん断する剪断溝を有する請求項2に記載の吸込スクリュ式ポンプ。
【請求項4】
前記剪断溝は、中心から放射状に複数形成されている請求項3に記載の吸込スクリュ式ポンプ。
【請求項5】
前記剪断溝は、回転方向に対して回転方向に沿う方向に傾く所定の傾きθを有する請求項3に記載の吸込スクリュ式ポンプ。
【請求項6】
前記剪断溝は、溝が径方向に連続する連通溝、若しくは、溝が径方向の途中部分で中断する非連通溝である請求項3に記載の吸込スクリュ式ポンプ。
【請求項7】
前記切り刃と前記剪断溝とは、互いが軸方向で対向する範囲が径方向の中央近傍の途中部分に限って設定されている請求項3に記載の吸込スクリュ式ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込スクリュ式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥等を送液として移送するポンプの場合、送液中のし渣等の夾雑物が閉塞しないように、通過粒径の大きな吸込スクリュ(羽根車)を有する吸込スクリュ式ポンプが使用される(例えば特許文献1参照)。
この種の吸込スクリュ式ポンプは、例えば図5に示す吸込スクリュ式ポンプ100のように、吸込スクリュ120がケーシング140内に収容される。ケーシング140の背面中央には軸封部115が設けられる。吸込スクリュ120は、シャフト112の先端に同軸に設けられた円錐台状のコーン部132と、コーン部132から径方向外側に螺旋状に延出する一枚の羽根134と、が一体形成されている。
【0003】
吸込スクリュ式ポンプ100が駆動されると、モータ(図示略)からの回転力によりシャフト112および吸込スクリュ120が一体となって回転する。これにより、吸込スクリュ式ポンプ100は、吸込スクリュ120が発生する旋回流の作用により、吸込口146からケーシング140内に送液を吸入するとともに、ケーシング140内の送液が加圧状態になって吐出口147から排出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-110316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、この種の吸込スクリュ式ポンプ100において、吸込スクリュ120に対して、コーン部132の背面138には、図6に示すように、バックカバー前面149に対向して、複数の裏羽根133が設けられる。
しかし、夾雑物Eによってはコーン部132の背面138にまで夾雑物Eが回り込んでバックカバー前面149との間に堆積する場合がある。そのため、その堆積した夾雑物Eが軸封部115への母液による潤滑を阻害して軸封部115のメカニカルシール等の損傷を招くという問題がある。なお、同図に示す白抜矢印は、吸込スクリュのコーン部背面に夾雑物Eが回り込むイメージを示している。
【0006】
このような問題点に対し、上記特許文献1記載の技術では、フロントカバー143の内周面に円環状段部を形成し、吸込口146の外側から見たときに、この円環状段部によって、羽根134のスクリュ作用部135の先端を覆い隠している。
これにより、同文献記載の技術では、吸込口146から吸いこまれた夾雑物Eの、吸込スクリュ羽根先端への引っ掛かりを防止または抑制し、コーン部背面に夾雑物が回り込んで堆積するという問題を解決している。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、コーン部132よりも上流側の位置で夾雑物Eの羽根134との引っ掛かりを防止または抑制し得るものの、吸込口146から吸いこまれた夾雑物Eのうち、スクリュ作用部135先端への夾雑物Eの引っ掛かり以外の機序でコーン部背面に夾雑物Eが回り込んでしまった場合までは対処できない。
よって、この種の吸込スクリュ式ポンプにおいて、吸込スクリュのコーン部背面に夾雑物が回り込んで堆積するという問題を解決する上で未だ改善の余地が残されている。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、吸込口から吸いこまれた夾雑物のうち、スクリュ作用部先端への夾雑物の引っ掛かり以外の機序で吸込スクリュのコーン部背面に夾雑物が回り込んでしまった場合であっても、コーン部背面に夾雑物が回り込んで堆積するという問題を防止または抑制し得る吸込スクリュ式ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る吸込スクリュ式ポンプは、シャフトの軸方向前方から後方に向けて送液を移送する吸込スクリュ式ポンプであって、前記シャフトの先端に設けられて該シャフトと一体で回転する吸込スクリュと、前記吸込スクリュを自身内部に収容するとともに前記シャフトの軸方向前方の中心に吸込口が設けられ側方に吐出口が設けられるケーシングと、前記ケーシングの背面に設けられて前記シャフトの周囲をメカニカルシールで軸封する軸封部と、を備え、前記吸込スクリュの背面と前記ケーシングの内面とが軸方向で対向する部分に、前記吸込スクリュの背面に回り込んだ夾雑物を破砕可能な破砕部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、吸込スクリュの背面とケーシングの内面とが軸方向で対向する部分に、吸込スクリュの背面に回り込んだ夾雑物を破砕可能な破砕部が設けられている。
そのため、吸込口から吸いこまれた夾雑物のうち、スクリュ作用部先端への夾雑物の引っ掛かり以外の機序で吸込スクリュの背面に夾雑物が回り込んでしまった場合であっても、その夾雑物を吸込スクリュの背面で破砕できるので、吸込スクリュの背面に夾雑物が回り込んで堆積するという問題を防止または抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明によれば、吸込スクリュの背面に夾雑物が回り込んで堆積するという問題を防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様に係る吸込スクリュ式ポンプの一実施形態の説明図であり、同図では、軸線を含む断面を示している。
図2図1の要部拡大図である。
図3図1での要部を説明する模式図であり、同図(a)は図1のA矢視部分を示し、(b)はB矢視部分を示している。
図4】本発明の一態様に係る吸込スクリュ式ポンプの変形例の説明図であり、同図は、図2の上側に示す剪断刃部分での一部の拡大模式図を示している。
図5】本発明の一態様に係る吸込スクリュ式ポンプに対する比較例の説明図であり、同図では、軸線を含む断面を示している。
図6図5での要部を説明する模式図であり、同図(a)は図5のA矢視部分を示し、(b)はB矢視部分を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る吸込スクリュ式ポンプ10は、シャフト(回転軸)12を水平姿勢に支持するフレーム14を備える。フレーム14の前部にはケーシング40が装備されている。ケーシング40の背面中央には軸封部15が設けられ、フレーム14の後部には軸支部16が設けられている。軸支部16は、シャフト12の軸方向の中間部を、軸方向前後の軸受18および軸受19を介して回転自在に支持している。
【0015】
本実施形態では、軸支部16の前側(図1では左側)の端面は、ボルト27で固定された軸受カバー52により閉止されている。また、軸支部16の後側(図1では右側)の端面は、ボルト28で固定された軸受カバー54により閉止されている。シャフト12は、前後の軸受カバー52、54をそれぞれ貫通し、その先端側及び基端側が、それぞれ軸受カバー52、54から突出されている。
【0016】
ケーシング40は、ボルト・ナットで相互に固定された、軸方向中央のケーシング本体44と、ケーシング本体44前方に設けられるフロントカバー43と、ケーシング本体44後方のバックカバー45と、を有する。
ケーシング40の内部に吸込スクリュ20の収容空間が画成されている。シャフト12の先端はケーシング40内に突設している。シャフト12の先端には羽根34を有する吸込スクリュ20が同軸に固定され、吸込スクリュ20はケーシング40の内部に片持ち支持される。シャフト12の基端部には、不図示のモータの出力軸が駆動力を伝達可能に接続される。
【0017】
ケーシング本体44の上部には、上方に開口する吐出口47が形成され、フロントカバー43には、中央に軸方向に沿って前方に張り出す吸込口46が形成されるとともに、フロントカバー43内面の円錐部が吸込スクリュ20の羽根34の周囲を覆っている。
バックカバー45には、その背面48の中央に、円筒状のホルダ部50が後方のフレーム14側に突出して一体形成されている。ホルダ部50の後端面に、例えばメカニカルシールを内蔵した軸封部15が同軸に装着され、この軸封部15によって、バックカバー45の背面中央の位置でシャフト12の先端側の後部を軸封している。
【0018】
ここで、本実施形態の吸込スクリュ20は、スクリュ本体21と、スクリュ本体21の後部に設けられるハブ30と、を備える。
スクリュ本体21は、シャフト12の先端に同軸に設けられた円錐台状のコーン部32と、コーン部32から径方向外側に螺旋状に延出する一枚の羽根34と、が一体形成されて構成されている。本実施形態では、上記シャフト12の先端部には雄ねじ39が形成され、雄ねじ39が吸込スクリュ20の基端側のコーン部32の端面中央部に開口したねじ穴41に螺合されている。
羽根23の先端部は、コーン部32の外周面の先端部よりも軸方向前方に張り出した非対称形状である。本実施形態の羽根34は、コーン部32の周囲に螺旋状に配設されるとともに、コーン部32の先端32sよりも先の吐出口47の側に突出するスクリュ作用部35を一体に有する。
【0019】
スクリュ本体21は、図2に拡大図示するように、コーン部32の内部に、後方に開口する空洞22を有する(コーン部32の内面が略円錐状の空洞22になっている)。コーン部32の先端部には、シャフト12への装着用のボルト挿通穴24が同軸に貫通形成されている。
スクリュ本体21には、コーン部32の基端部に、ハブ30の外周面が嵌合されるインロー凹部であるハブ装着部25が形成されている。ハブ装着部25の軸方向後方を向く面にはハブ装着ピン穴26が形成され、ハブ30は、コーン部32の空洞22の開口部を覆うように自身軸方向前側から同軸に係合される。
【0020】
ハブ30は、円盤部37と、円盤部37の中心に前方および後方に向けて張り出す円筒状複数の段部からなるボス部36とを有する。ボス部36の中心には、軸線に沿って装着用のねじ部31が形成されている。円盤部37は、スクリュ本体21側のハブ装着部25にインロー嵌合可能に凹の段部が適所に形成されている。
【0021】
ここで、本実施形態では、図2および図3に示すように、吸込スクリュ20の背面38とケーシング40の内面(本実施形態ではケーシング40を構成するバックカバー45の前面49)とが軸方向で対向する部分に、吸込スクリュ20の背面38に回り込んだ夾雑物Eを破砕可能な破砕部80が設けられている。本実施形態の破砕部80は、剪断刃81と、これに対向する剪断溝70とを備え、夾雑物Eを剪断によって破砕可能に構成されている。
【0022】
詳しくは、円盤部37の背面38には、周方向で反対側(180°離隔した位置)となる二箇所に剪断刃80が固定ボルト83によって着脱可能に付設されている(図3(a)参照)。各剪断刃80は、炭素工具鋼(例えばSK105)によって横断面視が略L字状に形成され、略L字状の突設側が刃部82になっており、熱処理後に研削で刃部82に刃付が施されている。
【0023】
これに対し、剪断溝70は、コーン部32の背面38に対向するバックカバー45の前面49に設けられている。本実施形態では、バックカバー45の前面に、周方向に離隔して複数の剪断溝70が形成されている。複数の剪断溝70は、各剪断刃80の刃部82との対向面に摺接するように対向配置される。これにより、各剪断溝70の溝縁部と刃部82の縁部との間に夾雑物Eを挟み、各剪断溝70の溝縁部と刃部82の縁部とが互いに摺接することで夾雑物Eを剪断可能になっている。
【0024】
ここで、本実施形態では、剪断刃81と剪断溝70とが軸方向で対向する範囲(以下、「破砕有効範囲」ともいう)を径方向の中央近傍の途中部分に限って設定している。つまり、本実施形態の破砕部80においては、図2に示すように、剪断刃81と剪断溝70とが軸方向で対向する範囲が径方向において、剪断刃81が径方向内側に位置するとともに、剪断溝70が径方向外側に位置するように互いを上下させている。
【0025】
さらに、本実施形態の複数の剪断溝70は、吸込スクリュ20のコーン部32の背面38とケーシング40の内面(バックカバー45の前面49)とが軸方向で対向する部分に、コーン部32の背面に回り込んだ夾雑物Eを径方向外側に向けて導く、夾雑物排出機能を奏するように形成されている。
【0026】
特に、本実施形態の複数の剪断溝70は、図3(b)に示すように、シャフト12の中心12cに対して放射状に複数(同図の例では8箇所)形成されている。本実施形態の剪断溝70は、シャフト12の回転方向Rに対して、回転方向Rに沿う方向に傾く所定の傾きθを有している。本実施形態の破砕部80において、剪断溝70に傾きθを設けた場合、剪断刃81の回転方向と傾きθの向きとが一致しているため、排出溝70を通して夾雑物Eをより排出し易くなり、夾雑物Eの排出性能を向上させる上でより好適である(図3参照)。
なお、各剪断溝70は、溝が径方向に連続する連通溝、若しくは、溝が径方向の途中部分で中断する非連通溝とすることができる。また、各剪断溝70は、溝深さを一定としてもよいし、溝深さが次第に変わるように形成してもよい。
【0027】
次に、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10の動作及び作用効果を説明する。
本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10は、電動モータ(図示略)からの回転力によりシャフト12及び吸込スクリュ20が一体となって回転すると、吸込スクリュ20が発生する旋回流の作用により、シャフト12の軸方向前方の吸込口46から後方に向けてケーシング40内に送液が吸入されるとともに、ケーシング40内の送液が加圧状態になって吐出口47から排出される。
【0028】
ここで、下水汚泥等を送液として移送するポンプの場合、送液中の夾雑物が閉塞しないように、通過粒径の大きな吸込スクリュ(羽根車)が採用されるところ、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10の吸込スクリュ20によれば、スクリュ作用部35がコーン部32よりも先の吸込口46の側に突出する1枚の羽根34を備えるので、無閉塞性を確保するポンプとして好適である。
【0029】
しかし、下水汚泥等を移送する吸込スクリュ付汚泥ポンプの場合、ポンプに流入してくる下水汚泥送液中に、輪ゴム類などの弾性・伸縮性の大きな夾雑物Eが混入するケースがある。この種の夾雑物Eが、吸込スクリュ20の背面に回り込んで堆積し、その堆積した夾雑物Eが軸封部15への母液による潤滑を阻害してメカニカルシールの損傷を招く場合がある。
【0030】
これに対し、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10によれば、上述したように、吸込スクリュ20の背面とケーシング40の内面とが軸方向で対向する部分に、吸込スクリュ20の背面38に回り込んだ夾雑物Eを破砕可能な破砕部80が設けている。
そのため、吸込口46から吸いこまれた夾雑物Eのうち、スクリュ作用部先端35への夾雑物Eの引っ掛かり以外の機序で吸込スクリュ20の背面48に夾雑物Eが回り込んでしまった場合であっても、その夾雑物Eを吸込スクリュ20の背面38で破砕できるので、吸込スクリュ20の背面38に夾雑物Eが回り込んで堆積するという問題を防止または抑制できる[発明1]。
【0031】
また、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10では、破砕部は、吸込スクリュ20の背面38に設けられた切り刃となる刃部82を有するので、回転する刃部82によって吸込スクリュ20の背面38で夾雑物Eを破砕する上で好適である[発明2]。
【0032】
また、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10では、破砕部80は、ケーシング40のバックカバー45に刃部82に対向して設けられて自身の溝形状の開口端縁で刃部82と協働して夾雑物Eをせん断する剪断溝70を有するので、夾雑物Eを剪断によって破砕する上で好適である[発明3]。
【0033】
また、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10では、剪断溝70は、中心から放射状に複数形成されているので、夾雑物Eをせん断するとともに、そのせん断した夾雑物Eを排出する上で好適である[発明4]。
【0034】
また、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10では、剪断溝70は、回転方向Rに対して回転方向Rに沿う方向に傾く所定の傾きθを有するので、夾雑物Eをせん断するとともに、そのせん断した夾雑物Eを排出する上でより好適である[発明5]。
【0035】
また、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10では、剪断溝70は、溝が径方向に連続する連通溝、若しくは、溝が径方向の途中部分で中断する非連通溝なので、夾雑物Eをせん断するとともに、そのせん断した夾雑物Eを排出する上でより好適である[発明6]。
【0036】
また、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10では、図2に示したように、剪断刃81の刃部82と剪断溝70とは、互いが軸方向で対向する範囲が径方向の中央近傍の途中部分に限って設定されているので、剪断機能を安定して発揮させて、吸込スクリュ式ポンプ10の長寿命化に優れた破砕部80とする上で好適である[発明7]。
【0037】
ここで、「破砕有効範囲」をこのように上下させて途中部分に限って設定する理由について説明する。例えば、「破砕有効範囲」を径方向の全体に亘って設定した場合、剪断刃81が夾雑物Eと径方向全体で接触してしまうと応力が分散し、剪断機能が十分に発揮されなくなって噛み込む可能性が高くなる。
これに対し、本実施形態の「破砕有効範囲」であれば、サイズの大きい夾雑物Eが破砕部80に流入してきた際に、「破砕有効範囲」を径方向の全体に亘って設定した場合と比較して、剪断刃81が夾雑物Eと径方向の途中部分に限って接触することで応力を集中させて、所期の剪断機能を発揮させて噛み込む可能性を低くすることができる。
また、仮に、剪断刃81と剪断溝70との間に夾雑物Eが噛み込んだとしても、噛み込んだ際の衝撃が小さくなる。そのため、剪断機能を安定して発揮させ、もってポンプの長寿命化に優れた破砕部とすることができる。
【0038】
さらに、本実施形態での破砕有効範囲において、「破砕有効範囲」よりも径方向内側の領域では、剪断刃81に対向する位置に剪断溝70を有しないため、破砕効果自体は「破砕有効範囲」よりも低いものの、シャフト12の軸中心線よりも径方向下半分の領域では、剪断溝70を意図的に設けないことによって、沈降してきた夾雑物Eが破砕刃80に向けて導入され易くなっており、破砕部80に沈降してきた夾雑物Eを破砕刃80の刃部82に対して効果的に接触させることができる。
そのため、剪断刃81の刃部82による夾雑物Eとの係合効果によって夾雑物Eを破砕刃80に円滑に導入しつつ効果的に裁断することができる。そして、「破砕有効範囲」よりも径方向外側での剪断溝70のみの領域では、剪断溝70の溝形状による排出効果によって夾雑物Eの排出機能が発揮され、破砕部80で破砕された夾雑物Eの排出性能を向上させることができる。よって、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10に採用された破砕部80であれば、剪断機能を安定して発揮させて、吸込スクリュ式ポンプ10の長寿命化に優れた破砕部として極めて優れる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の吸込スクリュ式ポンプ10によれば、吸込スクリュ20の背面38に夾雑物が回り込んで堆積するという問題を防止または抑制できる。なお、本発明に係る吸込スクリュ式ポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、「ケーシング40の内面」として、ケーシング40を構成するバックカバー45の前面49が対応する例を示したが、ケーシング40の構成によってはバックカバー45の有無には限定されず、ケーシング40の内壁の接液面において、吸込スクリュ20の背面38に対向する面を対応させることができる。
【0041】
また、例えば、上記実施形態では、破砕部80が、剪断刃81と、これに対向する剪断溝70とを備え、夾雑物Eを剪断によって破砕可能に構成される例を示したが、破砕部80の構成は、剪断刃81と、これに対向する剪断溝70とを備える構成のみに限定されない。
【0042】
例えば、図4に変形例を示すように、剪断刃81よりも外周側に、先端が鋭利な尖頭状突起32tを、円環状若しくは周方向に離隔して複数の箇所に更に設けることができる。尖頭状突起32tを追加的に設けることにより、剪断刃81によるせん断作用に加え、剪断刃81よりも外周側から内周側への夾雑物Eの侵入を尖頭状突起32tによって防止しつつ、仮に夾雑物Eが侵入した場合であっても、尖頭状突起32tの鋭利な先端によって切断作用を奏することができるので、夾雑物Eに対する破砕機能を強化するとともに、夾雑物Eの侵入防止機能を付加できる。
なお、上記「破砕有効範囲」に対し、「破砕有効範囲」よりも径方向外側での剪断溝70のみの領域では、剪断溝70の角部と吸込スクリュ20の背面間による破砕(磨砕)のみが行われるところ、尖頭状突起32tを設けている場合は、剪断溝70と尖頭状突起32tとの間での破砕機能も併せて発揮される。
【符号の説明】
【0043】
10 吸込スクリュ式ポンプ
12 シャフト(回転軸)
14 フレーム
15 軸封部
16 軸支部
18、19 軸受
20 吸込スクリュ
21 スクリュ本体
22 空洞
23 羽根
24 ボルト挿通穴
25 ハブ装着部
26 ハブ装着ピン穴
27、28 ボルト
30 ハブ
31 ねじ部
32 コーン部
32s 先端
34 羽根
35 スクリュ作用部
36 ボス部
37 円盤部
38 (円盤部の)背面
39 雄ねじ
40 ケーシング
41 ねじ穴
43 フロントカバー
44 ケーシング本体
45 バックカバー
46 吸込口
47 吐出口
48 背面
49 前面
50 ホルダ部
52、54 軸受カバー
60 固定ピン
70 剪断溝
80 破砕部
81 剪断刃
82 刃部(切り刃)
83 固定ボルト
100 吸込スクリュ式ポンプ
112 シャフト
115 軸封部
120 吸込スクリュ
132 コーン部
133 裏羽根
134 羽根
135 スクリュ作用部
138 背面
140 ケーシング
143 フロントカバー
145 バックカバー
146 吸込口
147 吐出口
149 バックカバー前面
E 夾雑物
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6