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特開2025-28628サブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法
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  • 特開-サブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法 図1
  • 特開-サブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法 図2
  • 特開-サブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028628
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】サブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/18 20060101AFI20250221BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20250221BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
B23K9/18 E
B23K9/095 501A
B23K9/18 F
B23K9/12 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133553
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】馬塲 勇人
(72)【発明者】
【氏名】本田 玲央
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB05
4E001DE03
(57)【要約】
【課題】送給可変速制御によってアーク長を制御するサブマージアーク溶接において、アーク長の変化に対するワイヤ送給速度の応答性を手動で調整することができるサブマージアーク溶接方法を提供する。
【解決手段】サブマージアーク溶接方法であって、アーク長の変化に対する溶接ワイヤの送給速度変化の応答性のゲインの設定を受け付け、アーク長に対応する溶接電圧を検出し、検出された電圧に基づいて、溶接ワイヤの送給速度を変化させることによってアーク長を制御し、検出された電圧と、所定アーク長に対応する所定電圧と、受け付けたゲインとに基づいて、溶接ワイヤの送給速度を変化させることによってアーク長を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、
アーク長に対応する溶接電圧を検出する電圧センサと、
前記電圧センサにて検出された溶接電圧に基づいて、前記ワイヤ送給装置による前記溶接ワイヤの送給速度を変化させることにより、アーク長を制御する制御装置と、
アーク長の変化に対する前記溶接ワイヤの送給速度変化の応答性を示すゲインの設定を受け付ける設定受付部と
を備え、
前記制御装置は、
前記電圧センサにて検出された溶接電圧と、所定アーク長に対応する所定電圧と、前記設定受付部にて受け付けた前記ゲインとに基づいて、前記ワイヤ送給装置による前記溶接ワイヤの送給速度を決定する
サブマージアーク溶接機。
【請求項2】
前記ゲインは、
前記電圧センサにて検出された溶接電圧の平均値又は実効値と、所定アーク長に対応する所定電圧との差分に対する、前記溶接ワイヤの送給速度の変化量の関係を示す比例ゲインを含む
請求項1に記載のサブマージアーク溶接機。
【請求項3】
サブマージアーク溶接方法であって、
アーク長の変化に対する溶接ワイヤの送給速度変化の応答性を示すゲインの設定を受け付け、
アーク長に対応する溶接電圧を検出し、
検出された溶接電圧と、所定アーク長に対応する所定電圧と、受け付けた前記ゲインとに基づいて、前記溶接ワイヤの送給速度を変化させることによってアーク長を制御する
サブマージアーク溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接電圧に応じて溶接ワイヤの送給速度を変化させる送給可変速制御によってアーク長を制御することが可能なサブマージアーク溶接方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
送給可変速制御では、ワイヤ送給速度を逐次変化させることで、アーク長を示すアーク電圧が一定に維持される。太径ワイヤを用いるサブマージアーク溶接では、溶接電流が多少変化してもワイヤ溶融速度が変化しにくく、定電圧特性の溶接電源を用いたGMA溶接で一般的に利用されるアーク長の自己制御作用が得られにくいため、送給可変速制御がアーク長制御に対して有効であることが知られている。
【0004】
送給可変速制御は、例えば、溶接電圧(アーク電圧)の実効値又は平均値に応じて、あるいは、設定電圧と溶接電圧の実効値又は平均値の差に応じて、送給速度又は送給速度の補正量を決定するように動作する。溶接電圧の実効値又は平均値が大きい場合、あるいは、設定電圧に対して溶接電圧の実効値又は平均値が大きい場合は、アーク長が大きいことを示しており、この場合は送給速度を大きくする方向に調整することで、アーク長を小さくして、アーク長に相関する溶接電圧の実効値又は平均値が小さくなるように制御される。逆も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-271944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した制御では、電圧の変化量に対する送給速度の変化量が大きいほど、送給速度の操作量が大きくなり、アーク長を示す溶接電圧の実効値又は平均値の変化は小さくなる。ただし、電圧の変化量に対する送給速度の変化量が大きすぎると、いわゆるハイゲインの状態になり、送給速度及び溶接電圧の実効値又は平均値が振動し、溶接が不安定化する。また、振動まで至らずとも、送給速度の変化量が大きいほど、送給ギアやチップ等のワイヤ送給周りの機器消耗速度が速くなる。
【0007】
なお、従来のサブマージアーク溶接用アナログ送給制御装置では、電圧調整目盛りや送給用のギア比を変えることが、結果的に上述の、電圧情報に応じた送給速度の応答性を変化させることに相当する。ただし、同送給装置では、送給速度の応答性のみを変化させることはできず、送給速度、及び電圧の実効値又は平均値の収束値も同時に変化する。電圧の実効値又は平均値の収束値は、溶接条件を調整するうえで最も重要な因子のひとつであり、安定した溶接が行えることや、所望のアーク長、溶込み深さが得られるように、電圧の実効値又は平均値の収束値が最優先で調整される。上述した電圧情報に応じた送給速度の応答性は、その結果として決まるだけである。すなわち、従来の溶接システムでは、送給速度の応答性を独立して操作することはできない。
【0008】
本開示の目的は、送給可変速制御によってアーク長を制御するサブマージアーク溶接において、アーク長の変化(溶接電圧の変化)に対するワイヤ送給速度の応答性を手動で調整することができるサブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面に係るサブマージアーク溶接機は、溶接ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、アーク長に対応する溶接電圧を検出する電圧センサと、前記電圧センサにて検出された溶接電圧に基づいて、前記ワイヤ送給装置による前記溶接ワイヤの送給速度を変化させることにより、アーク長を制御する制御装置と、アーク長の変化に対する前記溶接ワイヤの送給速度変化の応答性を示すゲインの設定を受け付ける設定受付部とを備え、前記制御装置は、前記電圧センサにて検出された溶接電圧と、所定アーク長に対応する所定電圧と、前記設定受付部にて受け付けた前記ゲインとに基づいて、前記ワイヤ送給装置による前記溶接ワイヤの送給速度を決定する。
【0010】
本開示の一側面に係るサブマージアーク溶接方法は、アーク長の変化に対する溶接ワイヤの送給速度変化の応答性を示すゲインの設定を受け付け、アーク長に対応する溶接電圧を検出し、検出された溶接電圧と、所定アーク長に対応する所定電圧と、受け付けた前記ゲインとに基づいて、前記溶接ワイヤの送給速度を変化させることによってアーク長を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、送給可変速制御によってアーク長を制御するサブマージアーク溶接において、アーク長の変化に対するワイヤ送給速度の応答性を手動で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るサブマージアーク溶接機の一構成を示す模式図である。
図2】本実施形態に係るサブマージアーク溶接機の一構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態に係るサブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本実施形態に係るサブマージアーク溶接機の一構成を示す模式図、図2は、本実施形態に係るサブマージアーク溶接機の一構成を示すブロック図である。本実施形態に係るサブマージアーク溶接機は、溶接電源1と、制御装置2と、トーチ3と、ワイヤリール4と、ワイヤ送給装置5と、フラックス供給装置6と、台車7と、電圧センサ8と、電流センサ9とを備える。本実施形態に係るサブマージアーク溶接機は、設定電圧と溶接電圧の差に対するワイヤ送給速度の調整量(ゲイン)をユーザが手動で調整することができる溶接システムである。
【0015】
トーチ3は、銅合金等の導電性材料からなり、母材Aの被溶接部へ溶接ワイヤWを案内するとともに、アークの発生に必要な溶接電流を供給する円筒形状のコンタクトチップを有する。コンタクトチップは、その内部を挿通する溶接ワイヤWに接触し、溶接電流を溶接ワイヤWに供給する。
【0016】
ワイヤ送給装置5は、ワイヤリール4に巻回された溶接ワイヤWを引き出してトーチ3へ送給する送給ローラ51と、当該送給ローラ51を回転させるモータ52とを有する。ワイヤ送給装置5は、送給ローラ51を回転させることによって、溶接ワイヤWをトーチ3へ供給する。溶接ワイヤWの送給速度は、アーク長が変動しないように溶接電圧に応じて調整される。ワイヤ送給装置5による、溶接ワイヤWの送給速度は、制御装置2によって制御される。
【0017】
フラックス供給装置6は、フラックスホッパ61、ノズル62及びバルブ63、図示しないフラックス回収機等を備える。フラックスホッパ61は、上部から投入されたフラックスBを蓄えており、フラックスBは、フラックスホッパ61の下部に接続されたノズル62を通じて母材Aの被溶接部に供給される。バルブ63は、フラックスホッパ61からノズル62への経路を開閉し、フラックスBの供給量を調整する。バルブ63の開閉及び開閉量は、制御装置2によって制御される。なお、バルブ63の開閉及び開閉量は手動で操作されるように構成してもよい。
【0018】
台車7は、溶接電源1、制御装置2、トーチ3、ワイヤリール4、ワイヤ送給装置5、フラックス供給装置6等を搭載し、母材Aの溶接線に沿って移動する搬送装置である。台車7は、車輪を回転させる走行モータを備える。走行する台車7によって、トーチ3及びフラックス供給装置6は母材Aの溶接線に沿って移動し、フラックスホッパ61に貯留された粒状のフラックスBが溶接線に沿って散布され、ワイヤ送給装置5によって溶接ワイヤWがフラックスBの中に送給される。台車7の走行速度は制御装置2によって制御される。
【0019】
電圧センサ8は、トーチ3に取り付けたアーク電圧検出リード線と、母材Aに取り付けたアーク電圧検出リード線との間の電圧を、溶接電圧(アーク電圧)として検出し、検出された電圧値を示す電圧値信号を制御装置2へ出力するセンサである。
【0020】
電流センサ9は、溶接電源1からトーチ3を介して溶接ワイヤWへ供給され、アークを通じて母材Aに流れる溶接電流を検出し、検出した電流値を示す電流値信号を制御装置2へ出力するセンサである。
【0021】
溶接電源1は、定電流特性を有するインバータ制御の交流溶接電源であり、商用電源の入力側から順に直列接続された整流器11、1次インバータ12、変圧器13、整流器14、直流リアクタ15、2次インバータ16を備える。溶接電源1は、給電ケーブルを介して、トーチ3のコンタクトチップ及び母材Aに接続される。溶接電源1は、商用電源を入力として、溶接ワイヤWと、母材Aとの間に溶接電力を供給してアークを発生させる。
【0022】
整流器11は、商用電源の交流を整流して1次インバータ12へ出力する。1次インバータ12は、十数kHz~数十kHzの高周波数で駆動し、高周波の交流を変圧器13の1次コイルに与える。変圧器13は交流を変圧し、変圧された交流は整流器14で整流され、直流リアクタ15を介して2次インバータ16へ出力される。2次インバータ16は、数十~数百Hzの低周波数で駆動し、低周波数の交流を出力する。交流の出力により、交流の溶接電圧がトーチ3と母材Aとの間に印加され、溶接電源1から供給された溶接電流は、電源ケーブルを介してトーチ3から溶接ワイヤWに流れる。溶接電流により、母材A及び溶接ワイヤW間に発生したアークの熱によって母材Aの溶接を行う。アークは、フラックス供給装置6によって供給されたフラックスBで覆われる。
【0023】
制御装置2は、溶接電源1の1次インバータ12及び2次インバータ16へそれぞれ制御信号を出力し、各インバータを独立してデジタル制御する回路である。また、制御装置2は、ワイヤ送給装置5による溶接ワイヤWの送給速度、フラックス供給装置6によるフラックスBの供給量、台車7の走行速度等を制御する。
【0024】
制御装置2はプロセッサであり、CPU、マルチコアCPU等の演算処理部21と、記憶部22と、設定受付部23と、ワイヤ送給速度制御部24と、フラックス供給制御部25と、台車走行速度制御部26とを有する。
【0025】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM等の不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリを含む記憶装置である。また、記憶部22は、送給可変速制御の応答性に係る比例ゲインを記憶する。
【0026】
設定受付部23は、ボタン、キー、ダイヤル等の入力装置であり、サブマージアーク溶接機の設定電流、溶接ワイヤWのワイヤ径、溶接ワイヤWの種類、送給可変速制御の応答性に係る比例ゲイン、その他の溶接条件を含む設定情報を受け付ける。比例ゲインは、アーク長の変化に対する溶接ワイヤWの送給速度変化の応答性を示す数値である。より具体的には、比例ゲインは、電圧センサ8にて検出された溶接電圧の平均値(交流溶接の場合は溶接電圧の絶対値の平均値を意味する。)又は実効値と、所定アーク長に対応する設定電圧(所定電圧)との差分に対する、溶接ワイヤWの送給速度の変化量との関係を示している。
【0027】
ワイヤ送給速度制御部24は、モータ52の駆動回路に接続されており、当該駆動回路へワイヤ送給速度に応じた回転制御信号を出力することによって、ワイヤ送給装置5による溶接ワイヤWの送給を制御する。送給ローラ51は回転制御信号に応じた速度で回転し、溶接ワイヤWがトーチ3を介して、母材Aの被溶接部へ供給される。
【0028】
アーク長は、溶接電圧(アーク電圧)に比例する。溶接電圧は、トーチ3のコンタクトチップと、母材Aとの間の電圧であり、電圧センサ8によって検出される。ワイヤ送給速度制御部24には、目標値である送給速度設定値が設定される。ワイヤ送給速度制御部24は、送給速度設定値と、電圧センサ8によって検出された溶接電圧の平均値又は実効値との差分を操作量として、アーク長が一定になるように溶接ワイヤWの送給速度を制御する。
【0029】
フラックス供給制御部25は、フラックス供給装置6のバルブ63を開閉させる駆動回路に接続されており、当該駆動回路へフラックス供給量に応じた開閉信号を出力することによって、フラックス供給装置6によるフラックスBの供給を制御する。なお、バルブ63の開閉が手動で操作される構成の場合、フラックス供給制御部25は不要である。
【0030】
台車走行速度制御部26は、台車7の走行モータを駆動する駆動回路に接続されており、当該駆動回路へ台車7の走行速度に応じた走行制御信号を出力することによって、台車7の走行を制御する。
【0031】
また、制御装置2の図示しない信号入出力端子には電圧センサ8、電流センサ9、1次インバータ12、2次インバータ16が接続されており、設定された溶接条件、検出された溶接電流及び溶接電圧に基づいて、定電流特性で動作するよう1次インバータ12をPWM制御する。母材A及び溶接ワイヤW間には、所用の溶接電圧が印加され、溶接電流が通電する。
【0032】
上記したワイヤ送給速度制御部24は、溶接ワイヤWの送給可変速制御によってアーク長を制御して溶接を安定化することを可能にするものである。特に本実施形態に係るサブマージアーク溶接機は、溶接電圧に応じたワイヤ送給速度の応答性をユーザが手動で調整できるように構成したものであり、特に応答性を調整するためのパラメータとして、ユーザが理解し易い比例ゲインを採用したものである。
【0033】
例えば、溶接電圧の平均値(交流溶接の場合は溶接電圧の絶対値の平均値を意味する。)をフィードバックし、その値と設定電圧の差が小さくなるように、送給速度をPI制御する場合を考える。このとき、送給応答性を操作するパラメータとしては、比例(P)ゲインと積分(I)ゲインが挙げられる。また、溶接電圧の平均値をとる時間(交流n周期分の移動平均をとる、溶接開始~現在までの総平均をとるなど)や、制御周期(送給速度指令値の更新周期)も、送給応答性を操作するパラメータとなる。
これらのパラメータの内、比例(P)ゲインは比較的効果がわかりやすい。比例(P)ゲインを大きく調整すれば、送給速度の変化が大きく、電圧変化が小さくなる。ゲインを小さく調整すれば、送給速度の変化が小さく、電圧変化が大きくなる。一方、後三者については、各パラメータの意味合いを一般ユーザが理解するのは容易でなく、調整が難しい。
そこで、比例(P)ゲインを、「送給応答性」のような名称及び意味合いのパラメータとして、このパラメータのみ、ユーザに調整を許可するような、サブマージアーク溶接システムを提供する。これにより、ユーザによる送給応答性の調整が可能となり、状況に応じた最適値に調整することが可能となる。
【0034】
図3は、本実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。以下の説明では、主に、アーク長制御及び走行速度制御を説明し、その他のアーク溶接制御の詳細は省略し、又は簡略化して説明する。制御装置2は、サブマージアーク溶接機の設定電流、溶接ワイヤWのワイヤ径、溶接ワイヤWの種類、送給可変速制御の応答性に係る比例ゲイン、その他の溶接条件を含む設定情報を受け付け(ステップS11)、サブマージアーク溶接制御を開始する(ステップS12)。
【0035】
次いで、制御装置2は、電圧センサ8にて溶接電圧を検出する(ステップS13)。そして、制御装置2は、検出された溶接電圧の平均値又は実効値と、設定電圧(所定電圧)との差分に基づいて、ワイヤ送給速度を決定する(ステップS14)。
【0036】
そして、制御装置2は、決定したワイヤ送給速度によって、溶接ワイヤWの送給可変速制御を行う(ステップS15)。具体的には制御装置2は、検出された溶接電圧の平均値又は実効値が、目標電圧としての設定電圧に近づくよう、ステップS11で受け付けた比例ゲインと、所定の積分ゲインとを用いてPI制御を行う。積分ゲインは予め制御装置2に設定された固定値である。
【0037】
設定電圧は、アーク長が所定長であるときの電圧である。溶接電圧の平均値又は実効値を設定電圧に一致させることによって、アーク長を一定に保持することができる。制御装置2は、検出された溶接電圧の平均値又は実効値と設定電圧の差電圧の符号によってモータ52の正転又は逆転が決定され、また、この差電圧の値によってワイヤ送給速度が決定される。具体的には、制御装置2は、(検出された溶接電圧の平均値又は実効値)-(設定電圧)の差電圧が正である場合、ワイヤ送給速度を増加させ、(検出された溶接電圧の平均値又は実効値)-(設定電圧)の差電圧が負である場合、ワイヤ送給速度を減少させる。差電圧に対するワイヤ送給速度の増減量は比例ゲインの値に比例する。
【0038】
以下、制御装置2は、所定の終了条件を満たすか否かを判定し(ステップS16)、終了条件を満たした場合(ステップS16:YES)、溶接処理を終了する。終了条件を満たしていない場合(ステップS16:NO)、制御装置2は、ステップS12~ステップS15の処理を繰り返し実行し、サブマージアーク溶接方法を実行する。
【0039】
以上の通り、本実施形態に係るサブマージアーク溶接機及びサブマージアーク溶接方法によれば、送給可変速制御によってアーク長を制御するサブマージアーク溶接において、アーク長の変化に対するワイヤ送給速度の応答性を手動で調整することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、比例ゲインを受け付けて、アーク長の変化に対するワイヤ送給速度の応答性を調整する例を説明したが、比例(P)ゲインと積分(I)ゲインを連動して変化させるなど、事前に用意した複数の操作パラメータの組み合わせを、ユーザに操作又は選択させるように構成してもよい。
【0041】
送給制御の方法は、上記したPI制御に限定されるものではなく、PD制御、PID制御、その他の公知の方法で制御するように構成してもよい。PD制御、PID制御における微分ゲインも、積分ゲインと同様、固定値とする。
【0042】
また、アーク長の変化に対するワイヤ送給速度の応答性を決定する操作パラメータも、上記した内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
1:溶接電源、2:制御装置、3:トーチ、4:ワイヤリール、5:ワイヤ送給装置、
6:フラックス供給装置、7:台車、8:電圧センサ、9:電流センサ、21:演算処理部、22:記憶部、23:設定受付部、24:ワイヤ送給速度制御部、25:フラックス供給制御部、26:台車走行速度制御部、A:母材、B:フラックス、W:溶接ワイヤ
図1
図2
図3