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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028634
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】オゾンインジケータ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20250221BHJP
   A61L 2/28 20060101ALI20250221BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20250221BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20250221BHJP
【FI】
G01N21/78 A
A61L2/28
C09K3/00 Y
A61L101:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133562
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】503242877
【氏名又は名称】株式会社タムラテコ
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 耕三
(72)【発明者】
【氏名】福田 由之
(72)【発明者】
【氏名】由井 善博
(72)【発明者】
【氏名】小竹 武
(72)【発明者】
【氏名】石渡 俊二
(72)【発明者】
【氏名】井上 知美
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058BB07
4C058DD15
(57)【要約】
【課題】 殺菌処理等の進捗状況を簡便に判断するためのオゾンインジケータを提供する。
【解決手段】 オゾンインジケータは、基材11並びに基材の表面に感応部12及び比較部13を有する。感応部は、オゾンガス暴露により観察色が変化する色素で形成され重なりを避けて配されてオゾンガスによる観察色変化の速度が異なる複数の変色部15a,…,15hで構成される。比較部は、一の変色部についてこれとの関連が明確なように当該変色部に接して配され当該変色部の観察色変化の略停止時の観察色が印刷された複数の指標部16a,…,16hで構成される。オゾンインジケータには、各変色部がその接する指標部の観察色に変化した時のCT値が当該変色部の近傍に記載され、複数の変色部が基材一方の側から他方の側に向けて各近傍のCT値に基づいて昇順に並べられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、
前記基材の表面に形成された感応部および比較部と、を有し、
前記感応部は、いずれもオゾンガスの暴露によりその観察色が変化する色素で形成され互いに重なりを避けて配されて前記オゾンガスによる観察色の変化の速度が異なる複数の変色部で構成され、
前記比較部は、それぞれの前記変色部について他の前記変色部に比べて当該変色部との関連が分かるように当該変色部の近傍にまたは当該変色部に接して配された前記オゾンガスによる当該変色部の観察色の変化が略終了した時の観察色が印刷により表現された複数の指標部で構成され、
前記オゾンガスによりそれぞれの前記変色部の監察色がその近傍または接する前記指標部の観察色にまで変化したときのCT値(数値)が当該変色部または当該指標部の近傍に記載され、
複数の前記変色部が前記基材表面のいずれか一方の側から他方の側に向けてそれぞれの近傍の前記CT値に基づいて昇順に並べられた
ことを特徴とするオゾンインジケータ。
【請求項2】
シート状の基材と、
前記基材の表面に形成された感応部、比較部および基準部と、を有し、
前記感応部は、いずれもオゾンガスの暴露によりその観察色が変化する色素で形成され互いに重なりを避けて配されて前記オゾンガスによる観察色の変化の速度が異なる複数の変色部で構成され、
前記比較部は、それぞれの前記変色部について他の前記変色部に比べて当該変色部との関連が分かるように当該変色部の近傍にまたは接するように配されて前記オゾンガスによる当該変色部の観察色の変化が略終了した時の観察色が印刷により表現された複数の指標部で構成され、
前記基準部は、それぞれの前記変色部または当該変色部に関連する前記指標部の近傍にまたはこれらのいずれかに接して他の前記変色部または他の前記指標部に比べて当該変色部および当該指標部との関連が分かるように配されて前記オゾンガスの暴露前における当該変色部の観察色が印刷により表現された複数の基準色部で構成され、
前記オゾンガスによりそれぞれの前記変色部の観察色がその近傍または接する前記指標部の観察色にまで変化したときのCT値(数値)が当該変色部、当該指標部または当該基準色部の近傍に記載され、
複数の前記変色部が前記基材表面のいずれか一方の側から他方の側に向けてそれぞれの近傍の前記CT値に基づいて昇順に並べられた
ことを特徴とするオゾンインジケータ。
【請求項3】
シート状の基材と、
前記基材の表面に形成された感応部、比較部および基準部と、を有し、
前記感応部は、いずれもオゾンガスの暴露による退色速度が異なる2つの色の食用色素で形成され互いに重なりを避けて配されて前記オゾンガスによる観察色の変化の速度が異なる複数の変色部で構成され、
前記比較部は、それぞれの前記変色部について他の前記変色部に比べて当該変色部との関連が分かるように当該変色部の近傍にまたは接するように配されて当該変色部への前記オゾンガスの暴露がそれぞれ異なる特定のCT値になった時の観察色が印刷により表現された複数の指標部で構成され、
前記基準部は、それぞれの前記変色部または当該変色部に関連する前記指標部の近傍にまたはこれらのいずれかに接して他の前記変色部または他の前記指標部に比べて当該変色部および当該指標部との関連が分かるように配されて前記オゾンガス暴露前の当該変色部
の観察色が印刷により表現された複数の基準色部で構成され、
前記オゾンガスによりそれぞれの前記変色部がその近傍または接する前記指標部の観察色にまで変化したときの前記特定のCT値(数値)が当該変色部、当該指標部または当該基準色部の近傍に記載され、
複数の前記変色部が前記基材表面のいずれか一方の側から他方の側に向けてそれぞれの近傍の前記特定のCT値に基づいて昇順に並べられた
ことを特徴とするオゾンインジケータ。
【請求項4】
前記観察色が変化する色素がブロモフェノールブルーまたはクマシーブリリアントブルーであり、
前記変色部の観察色の変化の速度を互いに異ならせるために前記変色部の形成にチオ硫酸ナトリウムが用いられた
請求項1または請求項2に記載のオゾンインジケータ。
【請求項5】
前記観察色が変化する色素が食用色素であり、
前記変色部の観察色の変化の速度を互いに異ならせるために前記変色部ごとに異なる食用色素が用いられた
請求項1または請求項2に記載のオゾンインジケータ。
【請求項6】
前記変色部のいずれかまたはいずれにも、異なる2色の食用色素が用いられた
請求項5に記載のオゾンインジケータ。
【請求項7】
前記比較部がオゾンガス耐性を有する樹脂のフィルムで保護された
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のオゾンインジケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンガスによる殺菌、有害物分解および脱色、脱臭等の処理において簡便に処理の進捗を確認するためのオゾンインジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人に限ってもスペイン風邪、エボラ出血熱、後天性免疫不全症候群(AIDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)および新型コロナウイルス(COVID-19)の感染症の世界的な流行が顕著になっている。これに伴い、我が国においても、病院および開業医院内の待合室等、短時間ではあっても体調不良の不特定多数が滞在する治療室、検査空間等の殺菌の重要性が高まっている。
【0003】
殺菌効果を有する気体として塩素、過酸化水素(ガス)およびオゾンガスが知られている。しかし、塩素ガスは毒性が強く外界への排出時に無害化が必要であり、過酸化水素ガスは過酸化水素水をガス化するための小さくはない装置が必要である。取り扱いに注意を要し関連する装置も本格的なこれらとは異なり、オゾンガスは携帯可能な小型の装置で発生させることができ、短時間で酸素にまで分解されてその痕跡が残らない特性を有する。また、オゾンガスには、例えば現在も再流行の可能性が高い新型コロナウイルスの活性を減弱させる効果があることが知られている(非特許文献1)。このようにオゾンガスは、塩素ガスおよび過酸化水素ガスに比べて小規模での取り扱いに優れることから、病院および開業医院内における居住空間およびそこで使用される医療器具等の殺菌処理に優れる。
【0004】
ところで、オゾンガスを用いる殺菌処理等の進捗状況は、処理環境におけるオゾンガスの濃度(ppm)と殺菌処理等の時間(分)との積であるCT値で評価可能なことが広く知られている(例えば非特許文献2)。CT値は、オゾンガス濃度計と計測されたオゾンガス濃度からCT値を算出する管理装置により求められ、算出したCT値は管理装置に表示することも可能である(特許文献1)。
【0005】
しかし、換気が良くないレントゲン室等を就業時間内にオゾンガスで(ACGIH(米国労働衛生専門官会議)が8時間重労働の許容濃度としている)0.05ppm以下に維持し、または習慣として診察等が無い定休日等に居住空間等をオゾンガスで殺菌処理等を行う場合には、オゾンガス濃度計と管理装置とによるCT値の厳密な管理までは必要としないことがある。このような、厳密なCT値の管理を要しない予防的なオゾンガスによる殺菌処理であっても、オゾン発生装置の稼働中に実際にどの程度殺菌処理が行われているかを時々確認することは、管理上重要である。したがって、オゾンが供給され殺菌処理が「現に継続(CT値が順調に増加)」していることが、何らかの簡便な手段により情報として得られることが望ましい。
【0006】
オゾンガスによる殺菌処理等の終了判断に関しては、着色剤の色変化を指標として到達CT値を知るオゾンインジケーターが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-019825号公報
【特許文献2】特開2022-122597号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】(世界初)オゾンによる新型コロナウイルス不活性化を確認、令和年2月14日、公立大学法人奈良県立医科大学、一般社団法人MBTコンソーシアム(インターネット、URL:http://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r2nendo/documents/press_2.pdf)
【非特許文献2】寝具類洗濯業務におけるオゾンガス消毒に関する報告書、平成19年1月19日、厚生労働省、寝具類洗濯専門部会(インターネット、URL:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/01/s0119-7.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2で提案されたオゾンインジケーターは、「殺菌処理等の終了後」にその処理が意図通り適切になされたか否かを、目視により簡便に評価するためのものである。このオゾンインジケーターは、殺菌処理等を行う空間のオゾンガスが滞留することが懸念される場所、オゾンガス濃度計から離れた場所等に配され、そのような場所でも意図したCT値に達したか否かの判断に用いられるものである。このようなインジケーターは、オゾンによる殺菌処理が現に継続しているか否かの判断には適さない。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、殺菌処理等の進捗状況を簡便に判断するためのインジケーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るオゾンインジケータは、シート状の基材ならびに基材の表面に形成された感応部および比較部を有する。感応部は、いずれもオゾンガスの暴露によりその観察色が変化する色素で形成され互いに重なりを避けて配されてオゾンガスによる観察色の変化の速度が異なる複数の変色部で構成される。ここで「オゾンガスによる観察色の変化の速度」とは、CT値の増加に伴う観察色の変化の程度をいう。「観察色」とは「色相、彩度、明度(色の三属性)の相互関係による色の感覚的な見え方」の意である。
【0012】
比較部は、それぞれの変色部について他の変色部に比べて当該変色部との関連が分かるように当該変色部の近傍にまたはこれに接して配されたオゾンガスによる当該変色部の観察色の変化が略終了した時の観察色が印刷により表現された複数の指標部で構成される。
【0013】
オゾンインジケータには、オゾンガスによりそれぞれの変色部の観察色がその近傍または接する指標部の観察色にまで変化したときのCT値(数値)が当該変色部または当該指標部の近傍に記載され、複数の変色部が基材表面のいずれか一方の側から他方の側に向けてそれぞれの近傍のCT値に基づいて昇順に並べられている。ここでの基材を規定する「シート状」とは、厚みに比べて表面積が大きなものをいい、可撓性を有さない材料をも含む意である。
【0014】
本発明に係る他のオゾンインジケータは、シート状の基材、ならびに基材の表面に形成された感応部、比較部および基準部を有する。感応部は、いずれもオゾンガスの暴露によりその観察色が変化する色素で形成され互いに重なりを避けて配されてオゾンガスによる観察色の変化の速度が異なる複数の変色部で構成される。比較部は、それぞれの変色部について他の変色部に比べて当該変色部との関連が分かるように当該変色部の近傍にまたは接するように配されてオゾンガスによる当該変色部の観察色の変化が略終了した時の観察色が印刷により表現された複数の指標部で構成される。
【0015】
基準部は、それぞれの変色部または当該変色部に関連する指標部の近傍にまたはこれらのいずれかに接して他の変色部または他の指標部に比べて当該変色部および当該指標部との関連が分かるように配され、オゾンガスの暴露前における当該変色部の観察色が印刷により表現された複数の基準色部で構成される。
【0016】
オゾンインジケータには、オゾンガスによりそれぞれの変色部がその近傍または接する指標部の観察色にまで変化したときのCT値(数値)が当該変色部、当該指標部または当該基準色部の近傍に記載され、複数の変色部が基材表面のいずれか一方の側から他方の側に向けてそれぞれの近傍のCT値に基づいて昇順に並べられている。
【0017】
観察色が変化する色素はブロモフェノールブルーまたはクマシーブリリアントブルーであり、変色部の観察色の変化の速度を互いに異ならせるために変色部の形成にチオ硫酸ナトリウムが用いられる。観察色が変化する色素に食用色素を用い、変色部の観察色の変化の速度を互いに異ならせるために変色部ごとに異なる食用色素を用いてもよい。いずれかの変色部の形成に異なる2色の食用色素を用いることができる。
【0018】
本発明に係る他のオゾンインジケータは、シート状の基材、ならびに基材の表面に形成された感応部、比較部および基準部を有する。感応部は、いずれもオゾンガスの暴露による退色速度が異なる2つの色の食用色素で形成され互いに重なりを避けて配されてオゾンガスによる観察色の変化の速度が異なる複数の変色部で構成される。
【0019】
比較部は、それぞれの変色部について他の変色部に比べて当該変色部との関連が分かるように当該変色部の近傍にまたは接するように配されて当該変色部へのオゾンガスの暴露がそれぞれ異なる特定のCT値になった時の観察色が印刷により表現された複数の指標部で構成される。基準部は、それぞれの変色部または当該変色部に関連する指標部の近傍にまたはこれらのいずれかに接して他の変色部または他の指標部に比べて当該変色部および当該指標部との関連が分かるように配されてオゾンガス暴露前の当該変色部の観察色が印刷により表現された複数の基準色部で構成される。
【0020】
このオゾンインジケータは、オゾンガスによりそれぞれの変色部がその近傍または接する指標部の観察色にまで変化したときの特定のCT値(数値)が当該変色部、当該指標部または当該基準色部の近傍に記載され、複数の変色部が基材表面のいずれか一方の側から他方の側に向けてそれぞれの近傍の特定のCT値に基づいて昇順に並べられている。
【0021】
オゾンインジケータの比較部を、オゾンガス耐性を有する樹脂のフィルムで保護するのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、殺菌処理等が順調に継続しているか否かを簡便に判断するためのオゾンインジケータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1はオゾンインジケータ1の概要を示す図である。
図2図2はオゾン曝露による試料の退色の程度を調べるための試験装置の正面図である。
図3図3は試験装置の平面図である。
図4図4は試料から減色測定部分を取り出す概念を示す図である。
図5図5は食用色素における退色が速い群のCT値と色濃度残存率との関係を示す図である。
図6図6は食用色素における退色が中程度の群のCT値と色濃度残存率との関係を示す図である。
図7図7は食用色素における退色が遅い群のCT値と色濃度残存率との関係を示す図である。
図8図8はオゾンガスに暴露される過程でのオゾンインジケータの観察色の変化を示す図である。
図9図9は低いオゾンガス濃度で連続1週間以上殺菌処理を行う場合に適するオゾンインジケータの概要を示す図である。
図10図10は異なる2つの色の食用色素を感応部に用いたオゾンインジケータの概要を示す図である。
図11図11は異なる2つの色の食用色素を感応部に用いた他の形態のオゾンインジケータの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本書面における「観察色」とは、「色相、彩度、明度(色の三属性)の相互関係による色の感覚的な見え方」の意である。
【0025】
図1はオゾンインジケータ1の概要を示す図である。オゾンインジケータ1は、基材11、感応部12および比較部13を有する。基材11は、オゾンインジケータ1の基礎的部分であり、厚紙またはポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用樹脂のやや細長い矩形のシート等で形成される。基材11は、図1において横長の矩形であり、感応部12および比較部13が形成される面が、白色または高い明度の色である。
【0026】
感応部12は、オゾンガスで退色する複数の変色部15a,15b,15c,15d,15e,15f,15g,15hからなる。変色部15a,・・・,15hは、全て同じ形状であり横に比べて縦が長い矩形である。変色部15a,・・・,15hは、その矩形の短辺を基材11の長手方向に揃えて、略等間隔に基材11の長手方向に並んでいる。変色部15a,・・・,15hは、最も小さなCT値で退色が略完了するもの(感度が高いもの)が最も左に配され、右に向けてより大きなCT値で退色が略完了するもの(感度が低いもの)の順に並ぶ。変色部15a,・・・,15hの形成方法等については後述する。
【0027】
変色部15a,・・・,15hはいずれも、その程度に差があるがCT値の増加とともに退色(変色)する。変色部15a,・・・,15hの下方には、それぞれの変色(退色)の進行が略完了するCT値が印刷される。図1における印刷されたCT値は区切りの良い数値であるが、区切りの良い悪いに関わらず各変色部15a,・・・,15hの退色が略終了するCTの数値が印刷される。
【0028】
比較部13は、基材11に印刷された複数の指標部16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16hからなる。各指標部16a,・・・,16hは、全て同じ形状の矩形であり、横幅は変色部15a,・・・,15hの横幅と同じで横幅よりも長さが長い。指標部16a,・・・,16hは、全て細い黒線で縁どられており、それぞれがその長手方向の端を異なる変色部15a,・・・,15hの端に接して基材11に配されている。各指標部16a,・・・,16hは、いずれもその下で接する変色部15a,・・・,15hの変色(退色)の進行が略停止したときの観察色に印刷で形成される。オゾンインジケータ1におけるCT値(数値)の印刷場所は、その数値がいずれの変色部15a,・・・,15hまたは指標部16a,・・・,16hに関連するかが明確であれば、図1に示される印刷場所に限られない。
【0029】
比較部13の印刷は、インクジェットプリンタにより行われる。比較部13は、印刷のインクが直接オゾンガスに触れないように、オゾンガス耐性を有するポリエチレン、ポリプロピレン、またはナイロン等によるノングレアフィルム(非光沢フィルム)で被覆され保護される。比較部13の印刷は、レーザープリンタによる印刷またはオフセット印刷等でも行える。比較部13の印刷は、観察色の経時変化が少ない印刷方式およびインクが選択される。
【0030】
オゾンインジケータ1は、オゾンガスが供給される殺菌空間に置かれ、変色部15a,・・・,15hは、殺菌処理の時間経過(オゾンガス処理におけるCT値の増加)とともに左から右に順に退色が完了する。変色部15a,・・・,15hの退色が完了したか否かは、目視により着目する変色部(15a,・・・,15hのいずれか)の観察色がその真上の指標部16a,・・・,16hの観察色と略同じか否かで判断される。すなわち、同じであればその変色部15a,・・・,15hの下の数値(CT値)にまでオゾンガスによる処理が行われたと判断される。
【0031】
次にオゾンインジケータ1の感応部12についてより詳細に説明する。感応部12においてCT値の増加とともに退色する着色剤には、特開2022-122597号公報に開示されたブロモフェノールブルー(以下「BPB」と略すことがある)、クマシーブリリアントブルー(以下「CBB」と略すことがある)が使用でき、また食用色素も用いることができる。感応部12は、例えばBPBを着色剤として基本液が調整され、これが親水性膜に塗布され、自然乾燥されて形成される。基本液は、着色剤としてのBPBがその濃度が0.02%となるように0.025mol/Lりん酸緩衝液(pH6.8)に溶解されたものである。ここで成分割合を示す「%」は、特に説明のない限り「重量%」をいう。
【0032】
BPBは富士フィルム和光純薬社販売試薬特級が使用される。0.025mol/Lりん酸緩衝液は、堀場製作所販売のLAQUA(登録商標)シリーズにおけるpH標準液セット101-Sから中性リン酸塩標準液(pH6.86)を用いて調整される。着色剤としてクマシーブリリアントブルーもBPBと同様に基本液として使用することができる。
【0033】
感応部12に使用される親水性膜は、ポリフッ化ビニリデン樹脂(以下「PVDF」と記す)製であり、メルク社が製造するポアサイズ5.0μm、直径47mmのメンブレンフィルター(登録商標「デュラポア」)が用いられる。自然乾燥により得たBPB使用の感応部12の外観は、青が強調された青紫色である。
【0034】
感応部12におけるBPBによる複数の変色部15a,・・・,15hは、それぞれの基本液の調整時にチオ硫酸ナトリウムの添加量を変えて形成される。チオ硫酸ナトリウムの添加の有無および添加量により、オゾンガスに対する感度を異ならせることが可能である。また、CBBは、BPBに比べてより大きなCT値で退色する、感度が低い着色剤であることから、BPBとCBBとを使い分けてさらにチオ硫酸ナトリウムの添加量を変えて、変色部15a,・・・,15hを形成することも可能である。
【0035】
オゾンガスによりその観察色が変化する食用色素を着色色素として基本液を調整し、変色部15a,・・・,15hを形成することができる。次に、食用色素を感応部12に用いる場合を想定し、種々の食用色素のオゾンガスに対する感度、つまりCT値の増加に伴う退色の程度を検討した。検討は、オゾンガス暴露試験用の密閉された試験装置2を用いて行った。
【0036】
図2は試験装置2の正面図、図3は試験装置2の平面図である。試験装置2は、容器21、オゾン発生器22、加湿装置23、温度計、湿度計24、オゾン濃度計25およびCT値記録装置からなる。 容器21は、直方体の中空の箱であり、上面は取り外し可能な蓋26で閉じられる。 容器21は、外部から内部の観察が容易なように、透明な塩化ビニル樹脂により製作されている。
【0037】
オゾン発生器22は、オゾンランプ(紫外線ランプ)および強制循環ファンを内蔵する据え置き型の公知のオゾンガス発生装置である。 加湿装置23は、圧電振動子に高周波
の交流電圧を加えて振動させ、発生する超音波により水から霧を発生させ、これを放出口27から外部に放出する装置である。 湿度計24は、容器21内の湿度を測定し表示する装置である。湿度計24は、容器21に収容されている。
【0038】
オゾン濃度計25は、容器21内に設置され、容器21内のオゾンガス濃度を測定するための公知の機器である。オゾン濃度計25は、外部に図示しないコントロール部を備え、コントロール部は、測定されたオゾン濃度をデジタル化してCT値記録装置に送信する。図2および図3における試料台28は、食用色素を用いて調製された試料29を載せるためのものである。
【0039】
CT値記録装置は、オゾン濃度計25から送信されるオゾン濃度と送信の間隔(時間)とからCT値(=オゾン濃度×間隔時間)の増分を算出し、分解処理を開始した時点からこの増分を積算してその表示装置に積算値を表示する。CT値記録装置は、パーソナルコンピュータが用いられる。
【0040】
試料29の調製は、次のようにして行った。先ず、0.025mol/Lりん酸緩衝液(pH6.8)に、食用色素を0.02%となるように溶解して「基本液」を作成した。0.025mol/Lりん酸緩衝液は、前述したと同じ堀場製作所販売のLAQUA(登録商標)シリーズにおけるpH標準液セット101-Sから中性リン酸塩標準液(pH6.86)を用いて調整した。
【0041】
試料29は、ポリフッ化ビニリデン樹脂(以下「PVDF」と記す)製の親水性膜に基本液を滴下し、これを自然乾燥(室内放置)して得た。PVDF親水性膜は、前述したと同じメルク社が製造するポアサイズ5.0μm、直径47mmのメンブレンフィルター(登録商標「デュラポア」)を用いた。
【0042】
試料29のオゾンガスによる退色試験では、試料台28に試料29を載せ、オゾン濃度計25の計測値が所定の濃度(5ppmまたは30ppm)になるように、オゾン濃度計25のコントロール部によりオゾン発生器12の動作が御された。容器21内の温度は、20℃に保たれるように試験装置2が設置された室内のエアコンの温度設定を行い、容器21内がこの温度範囲に収まることを容器21内に差し入れられた熱電対により定期的に確認した。
【0043】
オゾンガス曝露試験は常に同じ食用色素で調製した試料29を3点使用し、同じ食用色素についてオゾンガス曝露試験を終了させる最終CT値を種々換えて、オゾンガス曝露試験を行った。CT値0の場合は、調製した試料29をそのまま観察色(色濃度)の測定対象とした。
【0044】
図4は試料29から減色測定部分を取り出す概念を示す図である。所定のCT値までオゾンガスに曝された試料29は、濾紙32上に載せられる。使用する濾紙32は、アドバンテック社製の定性濾紙No.2である。濾紙32に載せられた試料29は、蛍光灯の照明のもとで、スタンドに固定されたデジタルカメラにより、統一された条件で撮影される。「統一された条件」とは、カメラ、カメラと被写体との距離、撮影環境の明るさ、撮影画素数、撮影感度、絞り値、シャッタースピード、ホワイトバランス等において同じ(統一された)条件の意である。
【0045】
撮影は、試料29を含む濾紙32全体を対象に行われ、画像データはパソコンに取り込まれて、解析ソフトImageJ1.52v(URL:https://imagej.jaleco.com/ からダウンロード)により試料29の色濃度が求められる。
【0046】
パソコンでは、取り込まれた画像が、ImageJ1.52vにより光の三原色(RGB)それぞれの要素に分解され、その中の着目する要素(レッド、グリーン、ブルー(以下「RGB」という)のいずれか一つ)について、試料29の一部分33およびこれと同一面積である濾紙32の一部分34の、それぞれの濃度が求められる。RGBの三要素に分解された画像は、明暗だけのモノクロであり、求められる「濃度」は実際には着目する要素における「明度」である。
【0047】
したがって、後述する「色濃度」とは、着目する色要素についての試料29の「濃度」の値から濾紙32の「濃度」の値を差し引いた値である。なお、後に説明する「色濃度」の各数値は、上述した(ImageJ1.52vを用いた)方法により求めた値に「-1」を掛け合わせた数値である。
【0048】
表1には、市販の食用色素を用いて試料を作成したときのRGB各要素についての色濃度を示す。表1におけるRGB各要素についての色濃度は、それぞれの食用色素を用いて調製した試料29を、オゾンガスに暴露させずにそのままデジタルカメラで撮影しImageJ1.52vにより求めた。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示される各食用色素は、以下に示されるものを使用した。
(a) 東京化成工業株式会社販売の食品着色料検査用対照試液Aセット
以下の食用色素は、それぞれ0.1%の水溶液として提供される。
【0051】
(A-1) 食用赤色2号(アマランス)
(A-2) 食用赤色3号(エリスロシン)
(A-3) 食用赤色40号(アルラレッドAC)
(A-4) 食用赤色102号(ニューコクシン)
(A-5) 食用赤色104号(フロキシン)
(A-6) 食用赤色105号(ローズベンガル)
(A-7) 食用赤色106号(アシッドレッド)
(A-8) 食用黄色4号(タートラジン)
(A-9) 食用黄色5号(サンセットイエローFCF)
(A-10) 食用緑色3号(ファストグリーンFCF)
(A-11) 食用青色1号 (ブリリアントブルーFCF)
(A-12) 食用青色2号(インジゴカルミン )
(b) 東京化成工業株式会社販売の食品着色料検査用対照試液Bセット
以下の食用色素は、それぞれ0.1%の水溶液として提供される。
【0052】
(B-3) ポンソーR(旧食用赤色101号)
(B-4) エオシン(旧食用赤色103号)
(B-5) ナフトールエローS(旧食用黄色1号)
(B-6) ライトグリーンSF黄色(旧食用緑色2号)
(B-7) オレンジ I(旧食用橙色1号)
(B-8) オレンジ II
(B-9) マルチウスイエロー
(B-10) ウラニン
(B-11) ギネアグリーンB(旧食用緑色1号)
(B-12) ブリリアントミリンググリーン
(B-13) アズールブルーVX
(B-14) アシッドバイオレット6B(旧食用紫色1号)
(c) (B-1) ニューコクシン(赤色1号):富士フィルム和光純薬製
(B-2) タートラジン(黄色4号):富士フィルム和光純薬製
表2は、表1の各食用色素を着色剤として調製した試料をオゾンガス暴露したときの、CT値と各食用色素代表色の色濃度の残存率との関係を示す。ここで「食用色素代表色」とは、表1の各食用色素における値が最も大きな(表1で網掛けされた)RGBのいずれかの色をいう。
【0053】
【表2】
【0054】
図5図7は、表1に示される各食用色素を用いて調整した試料29に対し試験装置2を使用してオゾンガスに曝したときの、CT値と色濃度の残存率との関係を示す図である。図5図7において残存率を求めた「色濃度」は、表1の各食用色素における値が最も大きな色要素(食用色素代表色)におけるものである。
【0055】
ここで色濃度の「残存率」とは、オゾンガス暴露前を100%とし色濃度が0のときを0%とする、「(オゾンガス暴露後の)色濃度÷CT値0(オゾンガス未暴露)の色濃度×100」で求められる値である。図5および図6において色濃度の残存率がマイナスの値なのは、ImageJ1.52vを用いた方法により求めた値に「-1」を掛け合わせた色濃度の数値が0未満になったことによるものである。
【0056】
表1の各食用色素は、オゾンガス暴露によるその退色感度が3群に分類できる。一つは図5に示されるCT値が800未満で残存率が10%以下になる「退色速度が速い群」、
次に図6に示されるCT値が800以上2600未満で残存率が10%以下になる「退色速度が中程度の速さの群」および図7に示されるCT値が2600以上で残存率が10%以下になる「退色速度が遅い群」である。
【0057】
「退色速度」とは、オゾンガスの暴露におけるCT値の増加に伴う退色の進捗の程度をいい、「退色速度が早い」を「退色感度が良い」と表現する場合がある。この3群の退色感度の異なる食用色素を組み合わせることにより、オゾンインジケータ1において「退色が略限界となる(略終了する)CT値が異なる複数の変色部15a,・・・,15h」からなる感応部12を構成することができる。
【0058】
図8はオゾンガスに暴露される過程でのオゾンインジケータ1の観察色の変化を示す図である。図8の(a)はオゾン暴露前のオゾンインジケータ1である。(b)、(c)はCT値の増加とともに各変色部15a,・・・,15hの退色が進行する様子を示す。各変色部15a,・・・,15hは、それぞれに対応する印刷されたCT値(数値)が小さい(退色感度が高い)変色部15aが最も左に配され、右に順により大きなCT値で退色が略完了する(退色感度が低い)変色部15b,・・・,15hが配される。各変色部15a,・・・,15hに使用される食用色素は、表2および図5図7を参考に決定される。
【0059】
オゾンカス雰囲気中に置かれたオゾンインジケータ1は、オゾンガス暴露開始後、小さなCT値に対応する変色部15a,15bから右に順に、これらに関連する指標部16a,16bとの間に観察色(色の感覚的な見え方)の差が僅かとなるかまたは無くなる。図8(b)のような状態のオゾンインジケータ1からは、目視によりオゾン暴露処理におけるCT値が500より大きく2000より小さいことが分かる。
【0060】
開業医の待合室を、例えば土曜日の午後の閉院時から月曜日の開院時まで濃度0.5ppmのオゾンガスにより殺菌処理を続けた場合、待合室に置かれたオゾンインジケータ1が開院時に図8(b)となっていたら、滅菌処理が16.7時間より長く且つ66.8時間(2.7日)より短い時間行われていたことをオゾンインジケータ1は示す。そして、開院時にオゾン発生装置がなお稼働し続けていれば、待合室の殺菌処理は休業中に正常に継続していたと判断できる。盆休み等でオゾンガスによる殺菌等の処理時間をさらに長く行うとき、オゾンインジケータ1はより退色感度が低い変色部15dにまで退色が終了する。殺菌処理でのオゾンガス濃度の維持目標が0.5ppmであり、休み明けにオゾンインジケータ1が図8(c)のような状態であれば、目視により少なくとも殺菌処理が2.7日より長く行われたと理解できる。
【0061】
図9は低いオゾンガス濃度で連続1週間以上殺菌処理を行う場合に適するオゾンインジケータ1Bの概要を示す図である。オゾンインジケータ1Bは、基材11、感応部12および比較部13を有する。感応部12はオゾンガスで退色する複数の変色部15a,15b,15c,15d,15e,15fで構成される。比較部13は、基材11に印刷された複数の指標部16a,16b,16c,16d,16e,16fで構成される。オゾンインジケータ1Bにおける変色部15a,・・・,15fおよび指標部16a,・・・,16fは、オゾンインジケータ1におけるこれらと、変色部15a,・・・,15fの退色が略完了するCT値を除き同じである。
【0062】
「低いオゾンガス濃度で連続1週間以上殺菌処理を行う場合」とは、日本産業衛生学会が作業環境における許容濃度として定める濃度0.1ppm未満のオゾンガスにより常時病院の待合室等の殺菌を行う場合等である。図9(a)に示されるオゾンインジケータ1Bを、低濃度のオゾンガスで満たされる待合室等に置いた24時間後および48時間後には、その外観がそれぞれ図9における(b)および(c)のように変化する。変色部15
aおよび変色部15bはそれぞれCT値が120および240でその退色が略完了するように調整されている。CT値が120とは、オゾンガス濃度0.09~0.85ppmで24時間暴露したときの値である。
【0063】
オゾンインジケータ1Bが一日目に図9(b)の状態であり翌日図9(c)の状態であることを目視により確認した病院職員は、オゾンガスによる殺菌処理が継続して行われていると判断することができる。このように、オゾンインジケータ1は、オゾン濃度計およびCT値積算装置等に頼らずに、オゾンガスによる殺菌処理等が順調に継続しているか否かを簡便に判断することができる。
【0064】
各変色部15a,・・・,15hのいずれかまたはすべてを、表2に記載された異なる2つの色の食用色素を1つの基本液に着色剤として使用することができる。異なる2つの色の食用色素は、オゾンガスによる退色の速さが同程度のもの、および退色の速さが異なるもの、いずれの組み合わせも採用可能である。
【0065】
図10は異なる2つの色の食用色素を感応部12に用いたオゾンインジケータ1Cの概要を示す図である。図10における(a)はオゾン暴露前の、(b)はオゾン暴露開始後の500<CT値<2000の状態の、(c)はオゾン暴露開始後の2000<CT値<4000の状態を示す。オゾンインジケータ1Cは、図1に示されるオゾンインジケータ1に、更に基準部14Cが付加されている。基準部14Cは、いずれも同じ形状の矩形であり、それぞれが変色部15a,・・・,15hそれぞれに対応する複数の基本色部17Ca,17Cb,17Cc,17Cd,17Ce,17Cf,17Cg,17Chで構成される。各基本色部17Ca,・・・,17Chは対応する変色部15a,・・・,15hの下辺に上辺を接した状態で基材11に配されている。
【0066】
各基本色部17Ca,・・・,17Chは対応する変色部15a,・・・,15hがオゾンガスにより退色する前の観察色で印刷され、オゾンガス暴露時にその観察色が変化しないようにノングレアフィルムで被覆されている。変色部、指標部および基本色部の個々の対応とは、例えば変色部15aが或る食用色素等によるものとすると、指標部16aはこの変色部15aの退色が略完了したときの観察色が印刷され、基本色部17Caはオゾン暴露による退色前の変色部15aの観察色が印刷されている、という相互関係である。
【0067】
退色感度が異なる2つの異なる色の食用色素の組み合わせで形成された変色部は、オゾンガスによる退色が進むにつれて退色感度の悪い食用色素の色相への影響が大きくなる。このような変色部(仮に変色部15cとする)は、オゾンガスによる退色の過程で退色感度の良い一方の食用色素の退色により色相が変化する。そうすると、この変色部15cの色相が、これに対応する退色前の色相を示す基準色部17Ccおよび退色完了後の色相を示す指標部16cとの目視による比較が容易である。オゾンガス暴露過程にある図10(b)のオゾンインジケータ1Cの変色部15cは、観察時点で基本色部17Ccの色相に略同じであればCT値が1000以上と目視で判断できる。変色部15cの色相が基本色部17Ccの色相と異なっていれば、その色相が基本色部17Ccの色相にどの程度近いかを目視で判断することにより、CT値が1000間近、または1000にはもう少し先かの判断が可能である。
【0068】
図11は異なる2つの色の食用色素を感応部に用いた他の形態のオゾンインジケータ1Dの概要を示す図である。オゾンインジケータ1Dは、基材11、感応部12、比較部13Dおよび基準部14Cからなる。基材11、感応部12および基準部14Cはオゾンインジケータ1Cにおけるものとその構成は略同じである。オゾンインジケータ1,1B,1Cの比較部13がいずれも退色が略完了した感応部12の色相(観察色)に印刷されていたのに対し、オゾンインジケータ1Dの比較部13Dは、感応部12(変色部15a,
・・・,15h)を形成する2色の食用色素の退色感度が低い一方の色の色相が強くなった後の特定のCT値における色相(観察色)が印刷されている。各変色部15a,・・・,15hに対応して印刷されるCT値は、2色の食用色素の退色感度が低い一方の色の色相が他方の色相よりも強くなるときの特定のCT値である。
【0069】
単一色の食用色素で形成された変色部は、オゾンガスによる変色過程で大きな色相の変化が見られない(変色過程で不連続な観察色変化がない)ため、指標部は変色部の退色が略完了したときの観察色に印刷される。一方、退色感度が異なる2つの色の食用色素で形成された変色部は、オゾンガスによる変色過程で大きな色相の変化が生じ、指標部を変化後の変色部の色相となった観察色に印刷しても、変色部と指標部との異同の判断が可能となる。
【0070】
本書面における「観察色」の語は、一般的な色調(彩度および明度による色の見え方)よりも広い、「色の三属性である色相、彩度、明度による色の感覚的な見え方」の意である。
【0071】
上述の実施形態において、オゾンインジケータ1,1Cにおける変色部15a,・・・,15hの全てを異なる2色の食用色素で形成してもよいし、特にオゾンガス処理上重要な特定のCT値とその前後のCT値で退色する変色部だけをそれぞれ2色の食用色素で形成してもよい。変色部15a,・・・,15h形成のための基本液に使用する着色剤として、BPB、CBBおよび食用色素を使い分けることができる。それぞれの個々に関連する変色部15a,・・・,15h、指標部16a,・・・,16hおよび(オゾンインジケータ1Cでは)基本色部17Ca,・・・,17Chの判断が容易であれば、オゾンインジケータ1,1Cにおける感応部12、比較部13および基準部14Cの形状および配置は、基材11の形状等に応じて任意に変更可能である。このことは印刷されたCT値(数値)の印刷場所についても同様である。
【0072】
「個々に関連する変色部、指標部および基準色部」とは、オゾンインジケータ1Cでは例えば変色部15a、指標部16aおよび基準色部17Caとの関連である。また「個々に関連する変色部、指標部および基準色部の判断が容易」な配置とは、オゾンインジケータ1Cを見た者が、変色部15aは他の指標部16b,・・・,16hおよび他の基準色部17Cb,・・・,17Cに比べて確実に指標部16aおよび基準色部17Caと強く関連すると判断できるようこれらが塊となったまたは相互に近づけた配置である。
【0073】
その他、オゾンインジケータ1,1B,1C、およびオゾンインジケータ1,1B,1Cの各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、オゾンガスによる殺菌処理等が順調に継続しているか否かを簡便に判断するために利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1,1B,1C,1D オゾンインジケータ
11 基材
12 感応部
13 比較部
14C 基準部
15a,15b,15c,15d,15e,15f,15g,15h 変色部
16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16h 指標部
16Da,16Db,16Dc,16Dd,16De,16Df,16Dg,16Dh 指標部
17Ca,17Cb,17Cc,17Cd,17Ce,17Cf,17Cg,17Ch 基本色部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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