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特開2025-28635生体恒常性改善剤及び生体恒常性改善用食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028635
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】生体恒常性改善剤及び生体恒常性改善用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20250221BHJP
【FI】
A23L33/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133565
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】523316518
【氏名又は名称】トリュフラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】小西 徹也
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 健
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018MD82
4B018ME14
4B018MF01
(57)【要約】
【課題】複数の代謝過程や生体恒常性維持に関わる生理因子の発現を刺激して生体恒常性を高めることの可能な生体恒常性改善剤を提供する。
【解決手段】トリュフの水性溶媒抽出成分を含有する、生体恒常性改善剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリュフの水性溶媒抽出成分を含有する、生体恒常性改善剤。
【請求項2】
前記生体恒常性改善は、デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロキシビタミンD3、及びアディポネクチンからなる群から選ばれる少なくとも2種の生体内における増加による生体恒常性改善である、請求項1に記載の生体恒常性改善剤。
【請求項3】
前記トリュフは、培養された子実体及び菌糸体の少なくとも一方である、請求項1に記載の生体恒常性改善剤。
【請求項4】
前記トリュフは、米糖、ふすま、及びブドウ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む糖類と、牛蒡、ナッツ類、及びベリー類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む食用材料との混合物を含有する培地による培養物であるトリュフである、請求項1に記載の生体恒常性改善剤。
【請求項5】
トリュフの水性溶媒抽出成分を有効成分とする、生体恒常性改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体恒常性改善剤及び生体恒常性改善用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食用キノコ類は健康機能を持つ代表的な食材として伝統的に知られており、機能性食品素材としても魅力的な素材であるために、多くの研究がなされている。中でもトリュフは、独特の芳香に加えて、他のキノコ類と同じように主栄養素であるタンパク質、炭水化物、脂質に加えて、ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素に富み、さらに非栄養素である食品因子と呼ばれる生物活性を持つポリフェノール、テルペノイド、多糖、ステロイドなどの含有量が多い。そのため、食品、医薬品、化粧品などへのトリュフの応用が期待されている(特許文献1)。
【0003】
近年、健康志向の高まりによって、健康な人、あるいは完全に健康ではないが病気でもない、いわゆる「未病」の人が健康維持するために機能性食品やサプリメントを摂取することが増加している。未病の改善は、正常な健康体内で行われている代謝制御過程に必要な素材の供給や、細胞内シグナルの調整を通した生体恒常性(ホメオスタシス)維持機能の賦活が標的になる。しかし、生体の恒常性は複数の代謝過程、あるいは生理因子が協調的にかかわることで維持されることから、サプリメントや機能性食品などの形であっても、特定の代謝過程、ステップを標的とする単一の医薬品作用を模した機能性関与成分や恒常性維持に関わる特定内分泌因子などを直接補充することは効果的ではなく、副作用の観点からも、その是非については未だ議論がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-112651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、複数の代謝過程や生体恒常性維持に関わる生理因子の発現を刺激して生体恒常性を高めることの可能な生体恒常性改善剤、及び、これを用いた食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の[1]~[8]を包含する。
[1]トリュフの水性溶媒抽出成分を含有する、生体恒常性改善剤。
[2]上記生体恒常性改善は、デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロキシビタミンD3、及びアディポネクチンからなる群から選ばれる少なくとも2種の生体内における増加による生体恒常性改善である、[2]に記載の生体恒常性改善剤。
[3]上記トリュフは、培養された子実体及び菌糸体の少なくとも一方である、[1]または[2]に記載の生体恒常性改善剤。
[4]上記トリュフは、米糖、ふすま、及びブドウ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む糖類と、牛蒡、ナッツ類、及びベリー類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む食用材料との混合物を含有する培地による培養物であるトリュフである、[1]~[3]のいずれかに記載の生体恒常性改善剤。
[5]トリュフの水性溶媒抽出成分を有効成分とする、生体恒常性改善用食品組成物。
[6]上記生体恒常性改善は、デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロキシビタミンD3、及びアディポネクチンからなる群から選ばれる少なくとも2種の生体内における増加による生体恒常性改善である、[5]に記載の生体恒常性改善用食品組成物。
[7]上記トリュフは培養された子実体及び菌糸体の少なくとも一方である、[5]または[6]に記載の生体恒常性改善用食品組成物。
[8]上記トリュフは米糖、ふすま、及びブドウ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む糖類と、牛蒡、ナッツ類、及びベリー類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む食用材料との混合物を含有する培地による培養物であるトリュフである、[5]~[7]のいずれかに記載の生体恒常性改善用食品組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の代謝過程や生体恒常性維持に関わる生理因子の発現を刺激して生体恒常性を高めることの可能な生体恒常性改善剤、及び、これを用いた食品組成物が提供可能となる。この生体恒常性改善剤及び食品組成物は、生体恒常性維持に関わる生理的因子を生理的な発現過程を刺激することで増強させ、生体恒常性維持機能を間接的に強化する機能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0009】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤は、トリュフの水性溶媒抽出成分を含有する。生体恒常性改善剤は、トリュフの水性溶媒抽出成分のみからなっていても、トリュフの水性溶媒抽出成分及び添加剤(以下に詳述する)からなる組成物であってもよい。生体恒常性改善剤は、液状、固体状、粉末状等任意の形状を取り得る。生体恒常性改善剤が組成物である場合、生体恒常性改善剤全量に対して、トリュフの水性溶媒抽出成分は有効量含有していればよく(すなわち、有効成分として含有されていればよく)、後述する経口投与又は非経口投与における有効成分投与量になるように適宜設計が可能である。生体恒常性改善剤におけるトリュフの水性溶媒抽出成分の含有量は、例えば50~100質量%、50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、90~100質量%とすることが可能である。
【0010】
上記生体恒常性改善剤を摂取することで、生体恒常性を維持、改善することができる。トリュフの水性溶媒抽出成分は、オレイン酸、植物ステロイドであるStigmast-4-en-3-ol、及びエルゴステロールのうち少なくとも1種の成分を含有してもよい。トリュフの水性溶媒抽出成分は、上記の成分を含むものに限定されない。トリュフの水性溶媒抽出成分には、メタボローム解析の結果によれば、オレイン酸を主とする不飽和脂肪酸類、スティグマステロール、エルゴステロールなどのステロイド類、及びエルゴチオネイン、フラバノン、フェノール酸などの抗酸化分子が存在すると考えられる。トリュフの水性溶媒抽出成分を含有する生体恒常性改善剤を摂取することで、生体恒常性を賦活する作用因子を間接的に増加させることができる。
【0011】
生体は健康な状態を保つために生体恒常性(ホメオスタシス)維持機能を有し、生体恒常性は神経系、免疫系、内分泌系の相互の働きにより維持される。恒常性維持機能の喪失は身体的、精神的不調に代表される未病につながる。本実施形態において、「生体恒常性改善」は、神経系、免疫系に影響する内分泌因子の発現増強により生体恒常性を賦活、改善することを意味する。
【0012】
本実施形態において、生体恒常性改善は、デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロキシビタミンD3、及びアディポネクチンからなる群から選ばれる少なくとも2種の生体内における増加による生体恒常性改善であってよく、3種の生体内における増加による生体恒常性改善であってよい。上記生体恒常性改善剤によれば、内分泌因子の発現強化を通して生体恒常性機能を改善することができる。デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロキシビタミンD3、及びアディポネクチンは、いずれも内分泌分子であり、生体の免疫機能維持にかかわる生理的因子として知られており、生体恒常性を賦活する作用因子である。
【0013】
(デヒドロエピアンドロステロン)
デヒドロエピアンドロステロン(以下、「DHEA」という。)は、副腎皮質から分泌する性ステロイドホルモンであり、その99%以上は、血中において硫化物となり、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(以下、「DHEA-s」という。)として存在している。これらのDHEA及びDHEA-sは、一般に、副腎アンドロゲンと呼ばれる。DHEAの血中レベルは一般に20歳頃をピークに減少することから抗老化因子として注目されている。DHEAは代謝を受けてアンドロステン類、テストステロン、エストロゲン等に変換されて機能を発揮する生理的因子であり、その作用は多岐にわたり、甲糖尿病、動脈硬化、脂質異常症、肥満、免疫、発がん、認知症、骨粗しょう症等の加齢に伴う病態の予防及び改善に加えて、ストレス軽減、鬱改善などのメンタル機能との関連も報告されている。
【0014】
DHEAはトリュフそのものには成分として含有されていないことから、トリュフの水性溶媒抽出成分の摂取により間接的に生体内でのDHEAの合成が促進されると考えられる。トリュフの水性溶媒抽出成分の摂取によって生体内でDHEAが増加するメカニズムは、本発明者の知見によれば、Stigmast-4-en-3-olがDHEAの合成前駆体として働くことによるものであると推察されるが、メカニズムは上記の内容に限定されない。
【0015】
(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)
1,25-ジヒドロキシビタミンD3(以下、「ジヒドロキシビタミンD3」という。)は、ビタミンD3の代謝物のひとつであり、活性型ビタミンD3とも呼ばれる。ビタミンD3は、骨や歯等の硬組織、筋肉の成長に必須な微量栄養素として知られている生体因子であり、細胞分裂や血管組織の保護、免疫系の維持などにも重要な役割を持つことが知られている。
【0016】
ジヒドロキシビタミンD3はトリュフそのものには成分として含有されていないことから、トリュフの水性溶媒抽出成分の摂取により間接的に生体内でのジヒドロキシビタミンD3の合成を促進すると考えられる。トリュフの水性溶媒抽出成分の摂取によって、生体内でジヒドロキシビタミンD3が増加するメカニズムは、本発明者の知見によれば、エルゴステロールがジヒドロキシビタミンD3の合成前駆体として働くことによるものであると推察されるが、メカニズムは上記の内容に限定されない。
【0017】
(アディポネクチン)
アディポネクチンは脂肪細胞から放出されるアディポサイトカインの1つである。アディポネクチンは脂肪燃焼の促進に関するPPAR-α、エネルギー供給のマスタースイッチであるAMPキナーゼを活性化して、脂肪燃焼を促進し、同時に脂肪酸合成や糖新生を阻害することで肝臓への脂肪蓄積を抑制する作用や、脂肪酸合成酵素の発現にかかわる転写因子であるREBP-1の発現を抑制することで脂肪酸のde novo合成を抑制する作用が知られており、高血糖や血中脂肪酸レベルの低下、インスリン感受性の改善などの作用を通して糖尿病の発症予防や改善に寄与することが知られている。また、アディポネクチンは、マクロファージの活性化を抑制して炎症性サイトカインであるTNFαの産生を阻害する一方で、抗炎症性サイトカインであるIL10の産生を促進する等の抗炎症作用を有することが知られており、脂肪肝の抑制、炎症、繊維化の抑制など、非アルコール性肝炎の発症抑制にも関わると考えられている。
【0018】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤によれば、DHEA、ジヒドロキシビタミンD3、及びアディポネクチンの発現増強を通して、自然免疫の指標であるナチュラルキラー細胞活性の増強を図ることができる。
【0019】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤では、トリュフの水性溶媒抽出成分に含まれる成分が、生体恒常性を賦活する作用因子を間接的に増加させることに加えて、直接的に生体恒常性を賦活する作用因子として働いてもよい。例えば、オレイン酸はLDLコレステロール低下作用や抗がん作用を有すること、及びStigmast-4-en-3-olは血糖値低下作用を有することが知られており、これらの成分は、エルゴチオネインやフェノール酸などの抗酸化・抗炎症作用因子と共に直接的に生体恒常性を賦活する作用因子としても働くことができる。
【0020】
(トリュフの水性溶媒抽出成分)
本実施形態に係るトリュフの水性溶媒抽出成分は、トリュフの子実体、菌糸体、又はこれらの処理物を乾燥して得られるトリュフ乾燥物を、粉砕、抽出することによって得ることができる。
【0021】
本実施形態において、トリュフは、子のう菌類セイヨウショウロ科に属する菌類であれば特に限定されない。トリュフとしては、例えば、白トリュフ(Tuber magnatum)、黒トリュフ(Tuber indicum及びTuber melanosporum)、Tuber aestivum、Tuber borchi、Tuber macrosporum、Tuber mesentericum、及びTuber uncinatum等が挙げられる。
【0022】
本実施形態において、トリュフは、例えば、天然品、人工栽培された子実体、液体培養された菌糸体、またはそれらの処理物であってよく、培養された子実体及び菌糸体の少なくとも一方であってもよい。
【0023】
トリュフ栽培用の培地としては、液体培地の他、通常使用される大鋸屑を使用することもできる。
【0024】
本実施形態において、トリュフは、米糖、ふすま、及びブドウ糖からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む糖類と、牛蒡、ナッツ類、及びベリー類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む食用材料との混合物を含有する培地による培養物であるトリュフであってもよい。上記トリュフを用いた生体恒常性改善剤は、摂取したヒトまたは動物に抗酸化作用、抗炎症作用も付与できることが期待される。
【0025】
乾燥方法としては、自然乾燥法、加熱乾燥法、送風乾燥法、蒸気乾燥法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等の方法が挙げられる。熱による成分の変質がなく、乾燥物の粉砕も容易であり、指向性に優れたものが得られる観点から、凍結乾燥法を用いてもよい。凍結乾燥法では、-20℃以下の雰囲気下で凍結工程を行い、凍結後、真空乾燥により乾燥する。トリュフ子実体または菌糸体は、粉砕操作を容易にする観点から、乾燥後、必要に応じて適当な大きさに、例えば、2cm程度以下の大きさに細断してもよい。
【0026】
粉砕方法としては、例えば、カッター等による微細断、ミル等による微粉砕、ローラーやグラインダー等による摩砕等が挙げられる。粉砕方法は、配合するものの種類や目的に応じて適宜選択すればよく、粒径は任意である。
【0027】
抽出方法としては、公知の一般的な連続式、バッチ式等の方法、炭酸ガス臨界抽出法が挙げられる。
【0028】
抽出溶媒としては、例えば、水、水及びエタノールなどの水混和性溶媒等の水性溶媒、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、及びエーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)等の有機溶媒が挙げられる。これらの抽出溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
抽出効率をより向上させる観点から、抽出溶媒として、熱水または低級1価アルコール類を用いてもよく、50℃~80℃の抽出溶媒を用いてもよく、50℃~80℃の低級1価アルコール類を用いてもよい。
【0030】
トリュフ乾燥物と抽出溶媒との配合割合は、トリュフ乾燥物1gに対して抽出溶媒0.01~100Lである。上記配合割合は、トリュフ乾燥物1gに対して抽出溶媒0.01~1Lであってよく、10~20mLであってよい。
【0031】
抽出溶媒へのトリュフ乾燥物の浸漬時間は、例えば、トリュフ乾燥物1gを抽出溶媒1Lに浸漬する場合、10分以上が好ましく、より好ましくは30分以上12時間以内である。
【0032】
本実施形態において、トリュフの水性溶媒抽出成分は、抽出溶液の状態で用いてよく、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過等の処理、及び活性炭などによる脱色、脱臭処理を加えた処理物として用いてよい。また、本実施形態において、トリュフの水性溶媒抽出成分として、抽出溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等して得られる乾燥物を用いてもよい。
【0033】
本実施形態に係るトリュフの水性溶媒抽出成分の形態は、例えば、溶液上、ペースト状、または粉末状であってよく、生体恒常性改善剤の形態や用途に応じて適宜選択することができる。
【0034】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤の形態としては、固形状、液状、及びゲル状等が挙げられる。具体的な形態としては、例えば、アンプル、カプセル、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、ゼリー等が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤は、経口投与されてよく、静脈投与等の非経口投与されてもよい。
【0036】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤が経口投与される場合、有効成分(トリュフの水性溶媒抽出成分を意味する。以下同様。)が1回当たり2g以上となるように投与されてもよく、3g以上となるように投与されてもよく、6g以上となるように投与されてもよい。また、有効成分が1日当たり4g以上となるように投与されてもよく、6g以上となるように投与されてもよく、12g以上となるように投与されてもよい。また、有効成分が1回当たり50g以下となるように投与されてもよく、25g以下となるように投与されてもよい。また、有効成分が1日当たり100g以下となるように投与されてもよく、50g以下となるように投与されてもよい。上記範囲であれば、生体恒常性を賦活する作用因子を間接的に十分に増加させることができる。
【0037】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤が非経口投与される場合、有効成分が1回当たり0.035g以上となるように投与されてもよく、0.35g以上となるように投与されてもよい。また、有効成分が1日当たり0.7g以上となるように投与されてもよく、7g以上となるように投与されてもよい。また、有効成分が1回当たり14g以下となるように投与されてもよく、3.5g以下となるように投与されてもよい。また、有効成分が1日当たり28g以下となるように投与されてもよく、7g以下となるように投与されてもよい。上記範囲であれば、生体恒常性を賦活する作用因子を間接的に十分に増加させることができる。
【0038】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤は、添加剤として、トリュフの水性溶媒抽出成分の効果を損なわない範囲内で、通常の食品、化粧品、医薬部外品、医薬品に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、キレート剤、賦形剤、安定剤、保存剤、結合材、崩壊剤等の成分を配合してもよい。
【0039】
本実施形態に係る生体恒常性改善用食品組成物は、トリュフの水性溶媒抽出成分を有効成分とする。本実施形態に係る生体恒常性改善用食品組成物のトリュフの水性溶媒抽出成分は、上記の生体恒常性改善剤のトリュフの水性溶媒抽出成分と同様である。
【0040】
本実施形態に係る生体恒常性改善用食品組成物は、通常、トリュフの水性溶媒抽出成分及びその他の成分からなる組成物として提供される。その他の成分としては、生体恒常性改善剤の添加剤として例示した上記成分が適用でき、食品として使用される成分がいずれも使用可能である。生体恒常性改善用食品組成物は、その全量に対してトリュフの水性溶媒抽出成分は有効量含有していればよく、含有量は食品の種類等に従って適宜設計が可能である。
【0041】
本実施形態に係る生体恒常性改善用食品組成物は、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント、又は特定保健用食品であってもよい。食品組成物の具体例としては、例えば、米類、パン類、麺類、乳製品、菓子類、ドリンク類、調味料、及びサプリメント等が挙げられる。
【0042】
本実施形態に係る生体恒常性改善剤又は生体恒常性改善用食品組成物における有効成分の含有量は、有効成分の好適な投与量を摂取できる範囲で、適宜設定されてよい。
【実施例0043】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
トリュフの水性溶媒抽出成分の摂取による生体恒常性機能に及ぼす効果について、20名の被験者にトリュフの水性溶媒抽出成分を含有する試験食品を12週間摂取してもらい、摂取開始前と12週間摂取後の血液成分を測定する試験を行った。具体的な試験方法を以下に示す。
【0045】
年齢が30歳以上65歳以下であり、BMIが18.5kg/m以上30.0kg/m未満であり、医師により適格性を確認された男女20名を被験者として、下記の試験食品を下記の摂取条件で、12週間摂取させた。
(試験食品)
米糖含む糖類と、牛蒡含む食用材料との混合物を含有する培地でTuber magnatum(イタリア原産)を培養して得られるトリュフ菌糸体を80℃~90℃の70%エタノール水溶液に4時間浸漬させて、トリュフの水性溶媒抽出成分を得た。得られたトリュフの水性溶媒抽出成分を1包(10g)あたり2800mg含むレモン味のゼリー状の加工食品を試験食品として用いた。試験食品1包あたりのエネルギーは9kcal、タンパク質は0.01g、脂質は0.01g未満、炭水化物は2.2g、ナトリウム(食塩相当)は7.2mgである。
(摂取条件)
朝食及び夕食の約30分前に1回に1包、1日に2包を毎日摂取させた。
【0046】
上記被験者に対して、摂取開始前と12週間摂取後のそれぞれにおいて、血液検査を実施した。
(血液検査項目)
DHEA、ジヒドロキシビタミンD3、アディポネクチン、中性脂肪、HbA1c、空腹時血糖、インスリン(基礎分泌)、LDLコレステロール、ナチュラルキラー細胞活性(Effector細胞(E)/Target細胞(T)=10:1及び20:1)
【0047】
(結果)
DHEA、ジヒドロキシビタミンD3及びアディポネクチンの血中濃度並びにナチュラルキラー細胞活性の測定結果を以下の表1に示す。表1において、変化量平均値は、12週間摂取後平均値と摂取開始前平均値との差を表す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、本発明のトリュフの水性溶媒抽出成分を含有する生体恒常性改善用食品組成物を摂取することで、DHEA、ジヒドロキシビタミンD3、及びアディポネクチンの血中濃度がいずれも増加傾向を示すことが認められた。同時に、自然免疫に関わるナチュラルキラー細胞活性の増強も認められた。
【0050】
また、HOMA-R、中性脂肪、インスリン(基礎分泌)、LDLコレステロール、空腹時血糖及びHbA1cについて、表2に記載の基準値に従って、試験食品摂取開始前における測定値により「基準値内グループ」と「基準値外グループ」とに分類し、2つのグループの血液成分の試験食品12週間摂取前後の変化を比較した。結果を表2に示す。表2において、変化量平均値は、12週間摂取後平均値と摂取開始前平均値との差を表す。なお、HOMA-Rは、下記式に従って算出した値である。
HOMA-R=インスリン(基礎分泌)×空腹時血糖/405
【0051】
【表2】
【0052】
生体恒常性は侵襲などの外的要因に対する防御と代謝異常等の内的要因に対する応答・調整により保たれる。ナチュラルキラー細胞活性の亢進などは前者の反応であり、血糖値維持などに関係する代謝変動は後者の反応である。HOMA-R、中性脂肪、インスリン(基礎分泌)、LDLコレステロール、空腹時血糖及びHbA1cなどの代謝症候群の指標の変動は、産生増加の見られた生体恒常性維持に働く内分泌因子であるDHEA、ジヒドロキシビタミンD3、アディポネクチンに知られるインスリン抵抗性の改善や脂肪酸代謝の促進などの作用から予想されるものであるが、生体恒常性の観点から、これらの変動の特徴として、異常に傾いた状態は正すが、正常なレベルにあるものに関してはあまり作用しない傾向がある。具体的には、例えば、インスリン(基礎分泌)の測定結果では、摂取開始時に基準値内であったグループに属する被験者では12週間摂取後のインスリン(基礎分泌)の変化量は+2.13μU/mLであり、あまり変化がない一方で、摂取開始時の測定値が基準値を超えていたグループに属する被験者では12週間摂取後のインスリン(基礎分泌)の変化量は-10.30μU/mLであり、大きく減少した。この他のHOMA-R、中性脂肪、LDLコレステロール、空腹時血糖及びHbA1cについても同様に、摂取開始時に測定値が基準値外であったグループでは、摂取後の測定値が基準値に向けて変化する傾向がみられた。これは、トリュフの水性溶媒抽出成分の摂取により、生体恒常性を賦活する作用因子が間接的に増加され、内分泌因子の発現強化により生体恒常性機能が改善されることを示している。