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特開2025-28701加飾方法、加飾用粉末、加飾用キット、及び加飾物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028701
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】加飾方法、加飾用粉末、加飾用キット、及び加飾物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20250221BHJP
   C09J 193/00 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J193/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133666
(22)【出願日】2023-08-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西山 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】遠山 麻依
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA191
4J040HA136
4J040HA356
4J040KA35
4J040KA42
4J040MA04
4J040NA05
4J040NA12
4J040PA44
(57)【要約】
【課題】耐水性に優れる加飾を施すことができる加飾方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る加飾方法の一態様は、基体上に接着剤を配する工程と、前記接着剤上に、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末を配する工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に接着剤を配する工程と、
前記接着剤上に、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末を配する工程と、
を含むことを特徴とする加飾方法。
【請求項2】
前記粉末成分が、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、請求項1に記載の加飾方法。
【請求項3】
前記油性成分が結合剤であり、
前記粉末成分と前記油性成分の状態が、前記粉末成分と前記油性成分との混合粉末、揮発性分散媒に前記混合粉末が分散されたスラリー、及び前記スラリーの半乾燥成形物からなる群から選択される少なくともいずれかである、請求項1に記載の加飾方法。
【請求項4】
前記加飾用粉末がメーキャップ用粉末である、請求項1に記載の加飾方法。
【請求項5】
前記接着剤が漆である、請求項1に記載の加飾方法。
【請求項6】
前記接着剤が、ベンガラ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、請求項5に記載の加飾方法。
【請求項7】
前記基体が、陶器、ガラス器、又は漆器である、請求項1に記載の加飾方法。
【請求項8】
金継ぎに用いられ、
前記基体の接合部に前記接着剤を配する工程を更に含む、請求項2に記載の加飾方法。
【請求項9】
粉末成分と、油性成分とを含有し、
基体上に配された接着剤上に配することに用いられることを特徴とする加飾用粉末。
【請求項10】
前記粉末成分が、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、請求項9に記載の加飾用粉末。
【請求項11】
前記油性成分が結合剤であり、
前記粉末成分と前記油性成分の状態が、前記粉末成分と前記油性成分との混合粉末、揮発性分散媒に前記混合粉末が分散されたスラリー、及び前記スラリーの半乾燥成形物からなる群から選択される少なくともいずれかである、請求項9に記載の加飾用粉末。
【請求項12】
メーキャップ用粉末からなる、請求項9に記載の加飾用粉末。
【請求項13】
粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末と、
接着剤と、
を有することを特徴とする加飾用キット。
【請求項14】
前記粉末成分が、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、請求項13に記載の加飾用キット。
【請求項15】
前記油性成分が結合剤であり、
前記粉末成分と前記油性成分の状態が、前記粉末成分と前記油性成分との混合粉末、揮発性分散媒に前記混合粉末が分散されたスラリー、及び前記スラリーの半乾燥成形物からなる群から選択される少なくともいずれかである、請求項13に記載の加飾用キット。
【請求項16】
前記加飾用粉末がメーキャップ用粉末である、請求項13に記載の加飾用キット。
【請求項17】
前記接着剤が漆である、請求項13に記載の加飾用キット。
【請求項18】
前記接着剤が、ベンガラ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、請求項17に記載の加飾用キット。
【請求項19】
基体上に配された接着剤と、
前記接着剤上に配された、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末と
を有することを特徴とする加飾物。
【請求項20】
前記粉末成分が、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、請求項19に記載の加飾物。
【請求項21】
前記加飾用粉末がメーキャップ用粉末である、請求項19に記載の加飾物。
【請求項22】
前記接着剤が漆である、請求項19に記載の加飾物。
【請求項23】
前記接着剤が、ベンガラ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、請求項22に記載の加飾物。
【請求項24】
前記基体が陶器、ガラス器、又は漆器である、請求項19に記載の加飾物。
【請求項25】
金継ぎが施されてなり、前記基体の接合部に前記接着剤が更に配される、請求項20に記載の加飾物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾方法、加飾用粉末、加飾用キット、及び加飾物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陶磁器の割れ、欠け、ヒビ等の破損部分を修繕する日本の伝統的な技法のひとつとして「金継ぎ」(「金繕い」とも称する)が知られている。金継ぎは、陶磁器の破損部分を漆で接着し、金や銀等の金属粉で装飾して仕上げ、美観と実用性を損なわないように修繕する技法である。しかしながら、漆塗膜は、長時間の浸水などの耐水性が弱い。そのため、金継ぎは、長時間水と接触する物(例えば、花瓶など)には使用できないという問題があった。陶磁器に用いることができ、耐水性を有する接着剤としては、例えば、ポリイミド、ポリアリルスルフォン、ポリトリアジンなどを基体とする有機接着剤や、シリコン系又はエポキシ系樹脂接着剤が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年、サステナビリティの観点から、各種産業分野において、廃棄物の低減が課題となっている。特に、化粧料業界では、大量に廃棄されるもののひとつとして、化粧料容器に小分け充填する前の中身(以下、「バルク」と称することがある)が挙げられる。化粧料業界では、商品を研究開発する際、幾通りもの色味の試作が行われる。このような試作品の中には、商品化されないバルクが数多く含まれており、化粧料としての品質や安全性が商品化できる水準であるにもかかわらず、廃棄されることとなる。そのため、不要になったバルクを、その特性などをそのまま活かしつつ、異なる製品に作り変える「アップサイクル」により、新たな価値を見出す試みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-287578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、耐水性に優れる加飾を施すことができる加飾方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る加飾方法の一態様は、基体上に接着剤を配する工程と、前記接着剤上に、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末を配する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、耐水性に優れる加飾を施すことができる加飾方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本実施形態において数値範囲を示す「~」は、別段の断りがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0009】
本発明は、加飾方法、加飾用粉末、加飾用キット、及び加飾物に関する。
【0010】
本実施形態において「加飾」とは、基体の表面に装飾を施す処理を意味する。装飾は、人工的に意図した形状、構造、及び大きさの装飾(例えば、所望の形状を有する線画、所望の形状を有する線画の少なくとも一部を塗りつぶした装飾など)であってもよく、人工的に意図しない形状、構造、及び大きさの装飾(例えば、偶発的な割れ、欠けを有する食器を修復する際の継ぎ目における装飾など)であってもよい。
【0011】
加飾の種類としては、特に制限はなく、基体の種類などに応じて、適宜選択することができ、例えば、基体が陶器、ガラス器、漆器などである場合は、金継ぎであることが好ましい。
【0012】
本実施形態において「金継ぎ」とは、基体上に接着剤を配し、該接着剤上に粉末成分を配することを意味する。一般的に、「金継ぎ」は、基体が陶磁器であり、接着剤が漆を主成分とするものであり、かつ粉末成分が金や銀等の金属粉を使用する方法に用いられるが、本実施形態における「金継ぎ」は、その手法を利用したものであり、基体、接着剤、及び粉末成分の組合せについては、以下に詳述するものが用いられる。
【0013】
(加飾用粉末)
一実施形態に係る加飾用粉末は、粉末成分と、油性成分とを含有し、基体上に配された接着剤上に配することに用いられ、更に必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
【0014】
一実施形態に係る加飾用粉末の剤形としては、粉末状であり、粉末成分と油性成分との混合粉末であることが好ましいが、前記混合粉末が揮発性分散媒に分散されたスラリーであってもよく、前記スラリーの半乾燥成形物であってもよい。このような剤形とするために、一実施形態に係る加飾用粉末において、油性成分は結合剤として配合されることが好ましく、粉末成分が油性成分により疎水化処理された疎水化処理粉末であることがより好ましい。
【0015】
本実施形態において、「疎水化処理粉末」とは、水に対する親和性の低い粉末を意味する。具体的には、「疎水化処理粉末」とは、粉末成分に対して親和性の高い油性成分で、粉末成分を表面処理することで、疎水性を付与した粉末を意味する。
【0016】
本実施形態において、「疎水性」とは、以下の方法によって評価を行い判定するものとする。即ち、イオン交換水50gと評価粉末0.1gとを透明密封容器に入れ、50℃で1日間保存した後、専門評価者が目視による観察を行い、評価粉末の大部分がイオン交換水表面に存在する場合に、疎水性であると評価する。
【0017】
一実施形態に係る加飾用粉末の粒径としては、粉末状である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、化粧料業界で一般的に粉末状化粧料と呼ばれる粉末の粒径であることがこのましい。後述する粉末成分の中でも、光輝性粉末は、粒径が大きいものが多い。そのため、一実施形態に係る加飾用粉末が、粉末成分として光輝性粉末を含有する場合、一実施形態に係る加飾用粉末中の光輝性粉末の粒径としては、体積平均粒径が、1,000μm以下が好ましく、5μm以上1,000μm以下がより好ましい。また、一実施形態に係る加飾用粉末が、粉末成分として光輝性粉末を含有しない場合、一実施形態に係る加飾用粉末の体積平均粒径は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0018】
一実施形態に係る加飾用粉末又は光輝性粉末の体積平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、LA-920、株式会社堀場製作所製)や粒度分布測定装置(例えば、マルチサイザーII、コールター社製)を用いて測定することができる。
【0019】
一実施形態に係る加飾用粉末としては、粉末成分と、油性成分とを含有するメーキャップ用粉末をそのまま使用することもできる。メーキャップ用粉末は、色調、発色、光沢等の外観のバリエーションが豊富であることから、基体上に配された接着剤上に配することにより、好適に加飾に用いることができる。また、メーキャップ用粉末は、化粧料のバルク由来のメーキャップ用粉末であることが、廃棄物の低減の点からより好ましい。
【0020】
本実施形態において、「メーキャップ用粉末」とは、メーキャップに使用される粉末を意味する。前記メーキャップ用粉末としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アイシャドウ、チーク(頬紅)、粉おしろい、ファンデーション、コンシーラー、コントロールカラー、口紅、サンスクリーン、アイライナー、アイブロウなどが挙げられる。これらの製品の剤型としては、固形状、粉末状、クリーム状、液状、スティック状などがあるが、一実施形態に係る加飾用粉末においては、粉末状のものが好適に用いられる。
【0021】
アイシャドウ(「アイカラー」と称することもある)は、目の周囲、特にまぶたに陰影を形成するために用いられる化粧料である。
【0022】
チーク(「頬紅」と称することもある)は、頬に塗布して顔色を明るく見せたり、頬に陰影をつけて立体感を出したりするために用いられる化粧料である。
【0023】
粉おしろい(「白粉」と称することもある)としては、顔に使用するフェイスパウダー、体に使用するボディパウダーなどが挙げられる。ボディパウダーとは、汗や皮脂による肌のベタつきを抑えるために用いられる化粧料である。フェイスパウダーとは、主にベースメイク(ファンデーション等)の仕上げに使用し、汗、皮脂、ベースメイクのべたつきやテカリを抑えるための化粧料である。粉おしろいとしては、粉末状のルースパウダー、パウダーをプレスして固形状にしたプレストパウダーなどが挙げられ、美白効果を有する美白パウダー、スキンケア効果を有するスキンケアパウダー、香りを付与するフレグランスパウダー、顔や体においを抑えるデオドラントパウダーなども含まれる。
【0024】
ファンデーションとは、肌の色を整えたり、肌のそばかすやしみ等を被覆したり、肌を紫外線から保護したりするために用いられる化粧料である。
【0025】
コンシーラーとは、肌の色を整えたり、肌のそばかすやしみ等を被覆したりするために用いられる化粧料である。一般的に、ファンデーションが肌全体に塗布するのに対し、コンシーラーは肌の一部に対して部分的に塗布するために用いられる。
【0026】
コントロールカラーとは、肌に色を付与し、肌の色を整えたり、肌のそばかすやしみ等を被覆したりするために用いられる化粧料である。コントロールカラーの色としては、例えば、ピンク、青、緑、黄色、オレンジ、紫などの様々な色がある。
【0027】
口紅とは、唇に色又は光沢を与え、唇の形等の外観を美しく見せるために用いられる化粧料である。
【0028】
サンスクリーンとは、肌を紫外線から防御することで、日焼けや肌の光老化を予防するために用いられる化粧料である。
【0029】
アイライナーとは、目の周囲、特に目の輪郭に沿ってラインを引くために用いられる化粧料である。
【0030】
アイブロウとは、眉の周囲にラインを引き、眉を書き足すために用いられる化粧料である。アイブロウとしては、例えば、アイブロウパウダー、アイブロウペンシルなどが挙げられる。
【0031】
<粉末成分>
粉末成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、体質顔料、色材、光輝性粉末、機能性粉末、金属石鹸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、粉末成分としては、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有することが好ましい。
【0032】
-体質顔料-
本実施形態において、「体質顔料」とは、それ自体に着色力や隠ぺい力はないが、塗料、インキ、絵の具、化粧料等の中に配合することにより、増量剤としての役割や、流動性、強度、光沢、粘度、付着性の調節等の性能面で補強を目的として配合される顔料を意味する。体質顔料は、化粧料においては、汗や皮脂の吸収による化粧崩れの防止、粉体形状、粒子径、硬度、表面状態の調整による使用感触の向上、化粧料の伸展性や付着性、白度、色調の調整、透明度の制御による化粧料の光沢の調整などの目的で使用されことがあり、例えば、ファンデーション等のベース用成分として用いられる成分である。
【0033】
前記体質顔料の具体例としては、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、合成金雲母、紅雲母、黒雲母、焼成タルク、焼成セリサイト、焼成白雲母、焼成金雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、シリコーンエラストマー粉末、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末などが挙げられる。
【0034】
-色材-
本実施形態において、「色材」とは、光の吸収及び反射を制御することにより、様々な物質を着色する材料を意味し、例えば、染料、顔料などが挙げられる。
【0035】
前記顔料は、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよい。また、前記染料は、有機染料であってもよく、無機染料であってもよい。
【0036】
有機顔料としては、例えば、ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料などが挙げられる。有機顔料の具体例としては、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号、赤色104号、赤色230号、赤色505号、橙色205号などが挙げられる。
【0037】
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;赤色酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄色酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒色酸化鉄、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料などが挙げられる。
【0038】
有機染料としては、例えば、アゾ系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料などが挙げられる。有機染料の具体例としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色218号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色504号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号、青色1号、橙色205号P、緑色201号、紫色401号P、黒色401号P、黄色401号、青色404号、D&C RED NO.6などが挙げられる。
【0039】
また、有機染料は、天然色素であってもよい。天然色素としては、例えば、クロロフィル、β-カロチン、カラメル、カルミン、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン、サロールイエロー、ハイビスカス色素、カプサインチン、ラッカイ酸、グルクミン、リボフラビン、シコニンなどが挙げられる。
【0040】
-光輝性粉末-
本実施形態において、「光輝性粉末」とは、干渉色、真珠光沢、又は金属光沢を有し、光沢を呈する板状又は球状の粉体を意味する。前記光輝性粉末は、「パール剤」と称されることもある。
【0041】
光輝性粉末としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、低次酸化チタン、着色酸化チタン、酸化鉄、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化コバルト、アルミなどを被覆した粉末などが挙げられる。
【0042】
光輝性粉末の具体例としては、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン処理雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、シリカ被覆アルミニウム末、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化鉄被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化チタン被覆ガラスフレーク、赤干渉ガラスパール、カルシウムアルミノケイ酸塩ガラス、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、マイカ、タルク、ガラス、合成フッ素金雲母、シリカ、ジメチルシリル化シリカなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、光輝性粉末は、パール顔料表面に樹脂粒子を被覆したもの(特開平11-92688号公報)、パール顔料表面に水酸化アルミニウム粒子を被覆したもの(特開2002-146238号公報)、パール顔料表面に酸化亜鉛粒子を被覆したもの(特開2003-261421号公報)、パール顔料表面に硫酸バリウム粒子を被覆したもの(特開2003-61229号公報)などを用いることもできる。
【0044】
-金属石鹸-
本実施形態において、「金属石鹸」とは、高級脂肪酸と、2価又は3価の金属(非アルカリ金属)との塩を意味する。
【0045】
高級脂肪酸としては、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ウンデシレン酸、トール酸などが挙げられる。
【0046】
2価又は3価の金属としては、カルシウム、マグネシウム、リチウム、バリウム、亜鉛などが挙げられる。
【0047】
金属石鹸の具体例としては、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸バリウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸カルシウム、イソステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸リチウム、イソステアリン酸バリウム、イソステアリン酸亜鉛、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸リチウム、アラキジン酸バリウム、アラキジン酸亜鉛、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸リチウム、ベヘン酸バリウム、ベヘン酸亜鉛、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸リチウム、リグノセリン酸バリウム、リグノセリン酸亜鉛、パルミトオレイン酸カルシウム、パルミトオレイン酸マグネシウム、パルミトオレイン酸リチウム、パルミトオレイン酸バリウム、パルミトオレイン酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸バリウム、オレイン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸マグネシウム、リシノール酸リチウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム、リノール酸マグネシウム、リノール酸リチウム、リノール酸バリウム、リノール酸亜鉛、α-リノレン酸カルシウム、α-リノレン酸マグネシウム、α-リノレン酸リチウム、α-リノレン酸バリウム、α-リノレン酸亜鉛、γ-リノレン酸カルシウム、γ-リノレン酸マグネシウム、γ-リノレン酸リチウム、γ-リノレン酸バリウム、γ-リノレン酸亜鉛、アラキドン酸カルシウム、アラキドン酸マグネシウム、アラキドン酸リチウム、アラキドン酸バリウム、アラキドン酸亜鉛、EPAカルシウム、EPAマグネシウム、EPAリチウム、EPAバリウム、EPA亜鉛、DHAカルシウム、DHAマグネシウム、DHAリチウム、DHAバリウム、DHA亜鉛ウンデシレン酸カルシウム、ウンデシレン酸マグネシウム、ウンデシレン酸リチウム、ウンデシレン酸バリウム、ウンデシレン酸亜鉛、トール酸カルシウム、トール酸マグネシウム、トール酸リチウム、トール酸バリウム、トール酸亜鉛などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
粉末成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加飾用粉末の全質量に対して、5質量%~95質量%が好ましく、7質量%~93質量%がより好ましい。
【0049】
<油性成分>
油性成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、脂溶性ビタミン類、親油性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本実施形態において、油分及び油分に可溶な成分を含めて、油性成分と称している。
【0050】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、エチルヘキシルグリセリンなどが挙げられる。
【0051】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0052】
ロウとしては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ゲイロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ポリオキシエチレン(以下、POEと標記する。)ラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどが挙げられる。
【0053】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、固形パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、キャンデリラワックス、水添ポリイソブテンなどが挙げられる。
【0054】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ウンデシレン酸、トール酸などが挙げられる。
【0055】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等)、分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、デシルテトラデカノール、オクチルドデカノール等)などが挙げられる。
【0056】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸セチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジステアリン酸グリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン(トリエチルヘキサノイン)、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル・フィトステリル)などが挙げられる。
【0057】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジフェニルジメチコン(ジフェニルジメチコン)、メチルトリメチコン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、未末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等のシリコーン化合物などが挙げられる。
【0058】
脂溶性ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK、又はこれらの誘導体(例えば、レチノイン酸、酢酸トコフェロール等)などが挙げられる。
【0059】
親油性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等)、グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α'-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0060】
油性成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加飾用粉末の全質量に対して、5質量%~95質量%が好ましく、7質量%~93質量%がより好ましい。
【0061】
<その他の成分>
一実施形態に係る加飾用粉末におけるその他の成分としては、本実施形態の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、増粘剤、防腐剤、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖、アミノ酸、アミノ酸誘導体、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、ビタミン類、消炎剤、美白剤、各種抽出物、賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、抗炎症剤、生薬抽出物、水溶性高分子、粘土鉱物、揮発性分散媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
-増粘剤-
増粘剤としては、例えば、水溶性高分子、粘土鉱物などが挙げられる。
【0063】
-防腐剤-
防腐剤としては、例えば、エチルパラベン、ブチルパラベン、クロルフェネシン(粉末成分でもある)、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0064】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0065】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等)、N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等)、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等)、リン酸エステル塩(例えば、POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸等)、スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等)、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等)、N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等)、硫酸化油(例えば、ロート油等)、POE-アルキルエーテルカルボン酸、POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン、カゼインナトリウムなどが挙げられる。
【0066】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等)、アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N'-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POE-アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。
【0067】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(例えば、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)などが挙げられる。
【0068】
非イオン性界面活性剤としては、油性成分としての親油性界面活性剤以外の親水性非イオン性界面活性剤が挙げられ、例えば、POE-ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンテトラオレエート等)、POE-ソルビット脂肪酸エステル(例えば、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等)、POE-グリセリン脂肪酸エステル(例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート等)、POE-脂肪酸エステル(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等)、POE-アルキルエーテル(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等)、プルロニック型(例えば、プルロニック等)、POE・POP-アルキルエーテル(例えば、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等)、テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物(例えば、テトロニック等)、POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ヒマシ油マレイン酸等)、POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウ等)、アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等)、POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル、POE-アルキルアミン、POE-脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸などが挙げられる。なお、「POE」は「ポリオキシエチレン」を意味し、「POP」は「ポリオキシプロピレン」を意味する。
【0069】
-保湿剤-
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、アルキレンオキシド誘導体、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物などが挙げられる。
【0070】
-酸化防止剤-
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類などが挙げられる。
【0071】
-酸化防止助剤-
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸などが挙げられる。
【0072】
-紫外線吸収剤-
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0073】
-金属イオン封止剤-
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウムなどが挙げられる。
【0074】
-糖-
糖としては、例えば、三炭糖(例えば、D-グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等)、四炭糖(例えば、D-エリトロース、D-エリトルロース、D-トレオース、エリスリトール等)、五炭糖(例えば、L-アラビノース、D-キシロース、L-リキソース、D-アラビノース、D-リボース、D-リブロース、D-キシルロース、L-キシルロース等)、六炭糖(例えば、D-グルコース、D-タロース、D-ブシコース、D-ガラクトース、D-フルクトース、L-ガラクトース、L-マンノース、D-タガトース等)、七炭糖(例えば、アルドヘプトース、ヘプロース等)、八炭糖(例えば、オクツロース等)、デオキシ糖(例えば、2-デオキシ-D-リボース、6-デオキシ-L-ガラクトース、6-デオキシ-L-マンノース等)、アミノ糖(例えば、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等)、ウロン酸(例えば、D-グルクロン酸、D-マンヌロン酸、L-グルロン酸、D-ガラクツロン酸、L-イズロン酸等)、オリゴ糖(例えば、ショ糖、グンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、α,α-トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオースベルバスコース類等)、多糖(例えば、セルロース、クインスシード、コンドロイチン硫酸、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸等)などが挙げられる。
【0075】
-アミノ酸-
アミノ酸としては、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等)、塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)などが挙げられる。
【0076】
-アミノ酸誘導体-
アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルβ-アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸などが挙げられる。
【0077】
-有機アミン-
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどが挙げられる。
【0078】
-高分子エマルジョン-
高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸エチルエマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックスなどが挙げられる。
【0079】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム等の緩衝剤などが挙げられる。
【0080】
-ビタミン類-
ビタミン類としては、油性成分としての脂溶性ビタミン類以外のビタミン類が挙げられ、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、又はこれらの誘導体(例えば、フルスルチアミン、リボフラビン酪酸エステル、ピリドキサール5'-リン酸等)、パントテン酸又はその誘導体(例えば、パンテノール、パントテニールエチル等)、ビオチンなどが挙げられる。
【0081】
-消炎剤-
消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸又はその誘導体、グリチルレチン酸又はその誘導体、サリチル酸又はその誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン、若しくはこれらの塩などが挙げられる。
【0082】
-美白剤-
美白剤としては、例えば、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸などが挙げられる。
【0083】
-各種抽出物-
各種抽出物としては、例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻などが挙げられる。
【0084】
-賦活剤-
賦活剤としては、例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体などが挙げられる。
【0085】
-血行促進剤-
血行促進剤としては、例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノールなどが挙げられる。
【0086】
-抗脂漏剤-
抗脂漏剤としては、例えば、硫黄、チアントールなどが挙げられる。
【0087】
-抗炎症剤-
抗炎症剤としては、例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリンなどが挙げられる。
【0088】
-生薬抽出物-
生薬抽出物としては、例えば、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸及びその誘導体、甘草、カリン、イチヤクソウなどが挙げられる。
【0089】
-水溶性高分子-
水溶性高分子として、天然の水溶性高分子、半合成の水溶性高分子、合成の水溶性高分子等の水溶性高分子などが挙げられる。
【0090】
天然の水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸)、微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等)、動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、デキストリン、ゼラチン等)などが挙げられる。
【0091】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等)、セルロース系高分子(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等)、アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)などが挙げられる。
【0092】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等)、ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,0000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等)、アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等)、ポリエチレンイミン、カチオンポリマーなどが挙げられる。
【0093】
-粘土鉱物-
粘土鉱物として、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸などが挙げられる。
【0094】
-揮発性分散媒-
揮発性分散媒としては、例えば、揮発性有機溶媒、水などが挙げられる。
【0095】
揮発性有機溶媒としては、低級アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等)、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等)、3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4価アルコール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等)、5価アルコール(例えば、キシリトール等)、6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等)、多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等)、2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、等)、2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等)、2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、グリセリンモノアルキルエーテル、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、マルトース、キシリトース等):ケトン(例えば、アセトン等)、炭化水素油(例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、ペンタン、へキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ノナン、デカン、p-メンタン、ピネン、イソドデカン、イソヘキサデカン、イソパラフィン、リモネン等)、フッ素化合物(例えば、パーフルオロポリエーテル等)などが挙げられる。
【0096】
一実施形態に係る加飾用粉末におけるその他の成分の含有量としては、本実施形態の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0097】
なお、一実施形態に係る加飾用粉末は、粉末状であるため、水は実質的に含有しないことが好ましい。本実施形態において、「実質的に含有しない」とは、加飾用粉末の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0098】
<製造方法>
一実施形態に係る加飾用粉末の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、粉末成分と、油性成分と、更に必要に応じてその他の成分とを混合する方法、粉末成分、更に必要に応じてその他の成分を油性成分で疎水化処理する方法、粉末成分を油性成分で疎水化処理し、更に必要に応じてその他の成分を添加して混合する方法などが挙げられる。
【0099】
一実施形態に係る加飾用粉末の材料を混合する方法としては、特に制限はなく、装置を使用してもよい。装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剪断力があり、全体を混合することができる撹拌羽根を備えた撹拌装置などが挙げられる。撹拌装置の具体例としては、ヘンシェルミキサー、ディスパーミキサーなどが挙げられる。
【0100】
一実施形態に係る加飾用粉末の材料として、揮発性分散媒を含む場合は、加飾用粉末の材料の混合後、又は疎水化処理後に揮発性分散媒を除去することが好ましい。揮発性分散媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空吸引する方法、加熱して乾燥する方法、自然乾燥する方法などが挙げられる。
【0101】
<用途>
一実施形態に係る加飾用粉末は、基体上に配された接着剤上に配することで、基体を加飾するために用いられる。一実施形態に係る加飾用粉末の使用方法としては、特に制限はないが、後述する加飾方法に記載の方法で使用することが好ましい。また、一実施形態に係る加飾用粉末は、後述する加飾用キットにおいても、好適に利用できる。
【0102】
-基体-
基体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セラミックス(例えば、ガラス、陶器、磁器等)、金属、樹脂(例えば、天然樹脂、合成樹脂等)、木材などの材質からなるものが挙げられる。基体は、1種の材質からなるものであってもよく、2種以上の材質からなるものであってもよい。
【0103】
基体の形状、構造、及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基体の形状の具体例としては、食器、花瓶、容器などが挙げられる。これらの中でも、陶器、磁器、ガラス器、又は漆器が好ましく、陶器、ガラス器、又は漆器がより好ましい。
【0104】
-接着剤-
接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述の(加飾用キット)の項目に記載のものなどが挙げられる。
【0105】
(加飾用キット)
一実施形態に係る加飾用キットは、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末と、接着剤と、を有し、更に必要に応じて、その他の構成を有していてもよい。なお、一実施形態に係る加飾用キットは、加飾用粉末を1種単独で有していてもよく、組成の異なる加飾用粉末を2種以上有していてもよい。
【0106】
一実施形態に係る加飾用キットは、粉末成分と、油性成分と、その他の構成とがそれぞれ独立した状態で存在していればよい。例えば、粉末成分と、油性成分と、その他の構成とが一体化した状態で製造、販売等されている場合に限られない。例えば、一実施形態に係る加飾用キットは、粉末成分、油性成分、及びその他の構成がそれぞれ独立して製造、販売等されていたとしても、粉末成分、油性成分、及びその他の構成が併用されることを前提としている場合、あるいは、粉末成分、油性成分、及びその他の構成が併用されることを実質的に誘導している場合などは、一実施形態に係る加飾用キットに含まれる。
【0107】
一実施形態に係る加飾用キットにおいて、粉末成分及び油性成分については、(加飾用粉末)の項目に記載にものと同様であるため、説明を省略する。
【0108】
<接着剤>
接着剤は、基体及び粉末成分と接着できる接着性を有する樹脂等の接着性成分(主成分)と、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0109】
<<接着性成分>>
接着剤としては、特に制限はなく、公知の接着剤の中から、基体の種類に応じて適宜選択することができるが、セラミックス、金属、樹脂などの材質に適用できる接着剤が好ましく、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコン樹脂系接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤、α-オレフィン(イソブチレン-無水マレイン酸樹脂)系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、変成シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ・変成シリコーン樹脂系接着剤、漆などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。一実施形態に係る加飾用キットが金継ぎに使用される場合は、接着剤は、これらの中でも、漆が好ましい。
【0110】
接着剤の剤形としては、特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、例えば、液状、エマルション、固形状(例えば、スティック状等)、スプレー状などが挙げられる。また、1剤で硬化するものであってもよく、2剤を混合して硬化するものであってもよい。
【0111】
-エポキシ樹脂系接着剤-
エポキシ樹脂系接着剤とは、エポキシ系樹脂を主成分とする接着剤である。エポキシ樹脂系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0112】
エポキシ樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、ベストンPMシリーズ(東都化学工業株式会社製)、ハイスーパー5、ハイスーパー30、スーパー、ハイクイック(以上、セメダイン株式会社製)、ボンドクイック5、ボンドEセット(以上、株式会社コニシ製)、F-05、F-05C、F-30、F-30C、R-2007/H-1040、R-2007/H-2002、3500、3600、6100、マゼラン52(以上、株式会社アルテコ製)、3M スコッチ・ウェルドシリーズ(スリーエム株式会社製)などが挙げられる。
【0113】
-アクリル樹脂系接着剤-
アクリル樹脂系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0114】
アクリル樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、ユメンシリーズ(大倉工業株式会社製)、コーポニールシリーズ(三菱ケミカル株式会社製)、ロックタイト(登録商標)シリーズ(ヘンケルジャパン株式会社製)、メタルロック(セメダイン株式会社製)、オリバイン(登録商標)シリーズ(トーヨーケム株式会社製)などが挙げられる。
【0115】
-シリコン樹脂系接着剤-
シリコン樹脂系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0116】
シリコン樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、超透明ボンド(神東産業株式会社製)、KMPシリーズ、PXシリーズ(以上、コニシ株式会社製)、PM165-R HI、セメダイン工作用速乾クリアなどが挙げられる。
【0117】
-エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤-
エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0118】
エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、パワーエース 速乾アクリア(株式会社アルテコ製)、クロバーボンド 多用途・速乾(クローバー株式会社製)、手芸用・クラフト用ボンド(株式会社KAWAGUCHI製)、ボンド木工用(コニシ株式会社製)、モルダインMD3000(関西パテ化工業株式会社製)、ポリマー#1000(株式会社マノール製)などが挙げられる。
【0119】
-α-オレフィン(イソブチレン-無水マレイン酸樹脂)系接着剤-
α-オレフィン(イソブチレン-無水マレイン酸樹脂)系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0120】
α-オレフィン(イソブテン-無水マレイン酸樹脂)系接着剤の市販品としては、例えば、SH20L、コニシボンドHB10(以上、コニシ株式会社製)、ユニストール(登録商標)(三井化学株式会社製)、イソバン(株式会社クラレ製)などが挙げられる。
【0121】
-ウレタン樹脂系接着剤-
ウレタン樹脂系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0122】
ウレタン樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、タキボンド#607、タキボンド#650(以上、タキロンシーアイ株式会社製)、ボンドウレタンコークシリーズ(コニシ株式会社製)、ルビロンシリーズ(トーヨーポリマー株式会社製)、PANDO(スリーボンド社製)などが挙げられる。
【0123】
-シリコーン樹脂系接着剤-
シリコーン樹脂系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0124】
シリコーン樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、1220シリーズ(スリーボンド社製)などが挙げられる。
【0125】
-変成シリコーン樹脂系接着剤-
変性シリコーン樹脂系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0126】
変性シリコーン樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、スーパーXシリーズ(セメダイン株式会社製)、1530シリーズ(スリーボンド社製)などが挙げられる。
【0127】
-エポキシ・変成シリコーン樹脂系接着剤-
エポキシ・変成シリコーン樹脂系接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、公知の方法で合成して使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0128】
エポキシ・変成シリコーン樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、EP001K(セメダイン株式会社製)、3950シリーズ(スリーボンド社製)などが挙げられる。
【0129】
-漆-
漆の種類としては、特に制限はなく、生漆、精製漆などが挙げられる。天然の漆液は、化学的にはウルシオール(カテコール誘導体)、ゴム質(植物多糖類及び酵素ラッカーゼを含むタンパク質類)、含窒素物(糖タンパク質)から構成され、油状成分であるウルシオール中にゴム質の水溶液が乳化分散して、油中水滴(W/O)型エマルションを形成している。漆の木から掻きとった漆液から夾雑物を除去したものが「生漆」であり、更に、ナヤシ、クロメという工程を経て精製漆に加工される(以下、「製漆工程」と称することがある)。製漆工程において、ナヤシというのは撹拌操作であり、クロメというのは加熱撹拌操作のことである。製漆工程を経た精製漆は、「透漆」とも呼ばれる。
【0130】
<<その他の成分>>
接着剤が含有するその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、重合禁止剤、無機微粒子等の各種添加剤などが挙げられる。
【0131】
接着剤におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0132】
接着剤として漆を使用する場合、漆以外のその他の成分としては、例えば、膠(これを含有するものを「膠漆」と称する)、小麦粉(これを含有するものを「麦漆」と称する)、上新粉(これを含有するものを「糊漆」と称する)、水酸化鉄や鉄粉等の鉄成分(これを含有するものを「黒漆」と称する)、ベンガラ(これを含有するものを「ベンガラ漆」と称する)、酸化チタン(これを含有するものを「白漆」と称する)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着剤が漆である場合、接着剤は、ベンガラ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含有することが好ましい。接着剤が漆に加えてベンガラを含有すると、接着剤上の加飾用粉末を配した後、好適に加飾用粉末の輝度を維持することができる。また、接着剤が漆に加えて酸化チタン含有すると、接着剤上の加飾用粉末を配した後、好適に加飾用粉末の明度及び輝度を維持することができる。
【0133】
接着剤としての漆におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、接着剤の全質部(100質量部)に対して、1質量部~50質量部が好ましく、5質量部~40質量部がより好ましい。
【0134】
<その他の構成>
一実施形態に係る加飾用キットのその他の構成としては、本実施形態の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、加飾用粉末の収容容器、接着剤の収容容器、接着剤や加飾用粉末を基体に配するための塗布具(例えば、筆、ハケ、ペン等)、複数の加飾用粉末の混合に使用するための容器(例えば、シャーレ、マルチウェルプレート、パレット等)、基体に配した接着剤や粉末成分の余分な部分を除去するための紙又は布、基体に配した接着剤の形状を整えるための研磨用具(例えば、サンドペーパー、やすり等)、加飾用キットの取扱説明書、加飾用粉末の色見本などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0135】
<用途>
一実施形態に係る加飾用キットは、基体を加飾するために用いられる。加飾としては、特に制限はないが、金継ぎであることが好ましい。基体としては、(加飾用粉末)の項目に記載にものと同様のものなどが挙げられる。一実施形態に係る加飾用キットの使用方法としては、特に制限はないが、後述する加飾方法に記載の方法で使用することが好ましい。
【0136】
(加飾方法)
一実施形態に係る加飾方法は、基体上に接着剤を配する工程と、前記接着剤上に、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末を配する工程と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含んでいてもよい。
【0137】
一実施形態に係る加飾方法において、基体、接着剤、及び加飾用粉末については、(加飾用粉末)の項目に記載にものと同様であるため、説明を省略する。
【0138】
<接着剤を配する工程>
接着剤を配する工程は、基体上に接着剤を配する工程である。基体上に接着剤を配する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、塗布具を使用して手で行ってもよく、塗工装置を用いて行ってもよい。
【0139】
塗布具としては、特に制限はなく、接着剤を配する部位の形状、構造、又は大きさに応じて適宜選択することができ、例えば、筆、ハケ、ペンなどが挙げられる。
【0140】
塗工装置を用いて行う場合、その塗工方法としては、特に制限はなく、接着剤を配する部位の形状、構造、又は大きさに応じて、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ディスペンスコート法、インクジェットコート法、スクリーン印刷法などが挙げられる。
【0141】
一実施形態に係る加飾方法が金継ぎである場合は、接着剤を配する工程は、塗布具を使用して手で行うことが好ましい。
【0142】
基体上に接着剤を配する領域としては、特に制限はなく、目的とする加飾に応じて適宜選択することができる。
【0143】
基体上に接着剤を配する領域の構造、形状、及び大きさとしては、特に制限はなく、目的とする加飾に応じて適宜選択することができる。
【0144】
基体上に配する接着剤の量としては、接着剤上に、加飾用粉末を配することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0145】
<加飾用粉末を配する工程>
加飾用粉末を配する工程は、接着剤上に、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末を配する工程である。
【0146】
接着剤上に、加飾用粉末を配する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、塗布具を使用して手で行ってもよく、塗工装置を用いて行ってもよい。
【0147】
加飾用粉末を配する工程において、塗布具及び塗工装置としては、接着剤を配する工程と同様のものを用いることができる。
【0148】
一実施形態に係る加飾方法が金継ぎである場合は、加飾用粉末を配する工程は、塗布具を使用して手で行うことが好ましい。
【0149】
接着剤上に加飾用粉末を配する領域の構造、形状、及び大きさとしては、特に制限はなく、目的とする加飾に応じて適宜選択することができる。
【0150】
接着剤上に配する加飾用粉末の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0151】
加飾用粉末を配する工程は、加飾用粉末の基体への接着性の点から、接着剤が乾燥、固化、又は硬化する前に行うことが好ましい。
【0152】
<その他の工程>
一実施形態に係る加飾方法は、本実施形態の効果を損なわない限り、更に必要に応じて、基体上に接着剤を配する工程、及び前記接着剤上に加飾用粉末を配する工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
【0153】
その他の工程としては、特に制限はなく、例えば、基体の接合部に接着剤を配する工程、複数の加飾用粉末を混合する工程、基体に配した接着剤や粉末成分の余分な部分を除去する工程、基体に配した接着剤の形状を整える工程、接着剤を乾燥、固化、又は硬化させる工程などが挙げられる。
【0154】
-基体の接合部に接着剤を配する工程-
基体の接合部に接着剤を配する工程において、接着剤は、接着剤を配する工程と同じものを使用してもよく、異なるものを使用してもよい。
【0155】
基体の接合部に接着剤を配する方法としては、特に制限はなく、接着剤を配する工程と同じ方法が挙げられる。
【0156】
本実施形態において、基体の「接合部」とは、基体の破損部位の取り合い部であってもよく、人工的に組み合わせた基体の取り合い部であってもよい。
【0157】
基体の接合部に接着剤を配する工程は、一実施形態に係る加飾方法が金継ぎである場合に含むことが好ましく、この場合、基体の接合部は、基体の破損部位の取り合い部であることが好ましい。
【0158】
基体の接合部に配する接着剤の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0159】
-複数の加飾用粉末を混合する工程-
一実施形態に係る加飾方法において、使用する加飾用粉末は、1種単独であってもよく、2種以上を併用してもよい。また、2種以上の加飾用粉末を、適宜混合して、所望の加飾用粉末を調製してもよい。
【0160】
複数の加飾用粉末を混合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。例えば、複数の加飾用粉末を均一に混合してもよく、不均一に混合してもよい。
【0161】
複数の加飾用粉末を不均一に混合する場合の具体例としては、一方の加飾用粉末の色と、他方の加飾用粉末の色が異なる場合、これらの2種の加飾用粉末を不均一に混合することで、マーブル状の色を呈する加飾を基体に施すことができる。また、一方の加飾用粉末が色材を含有し、他方の加飾用粉末が光輝性粉末を含有する場合、所望の色を呈する色材に、光輝性粉末の光沢を不均一に配した加飾を基体に施すことができる。
【0162】
-基体に配した接着剤や粉末成分の余分な部分を除去する工程-
一実施形態に係る加飾方法において、接着剤が所望の量を超える量で配された場合に、余分な接着剤は、基体上に配された後に除去することが好ましい。これにより、審美性の高い加飾を施すことができる。
【0163】
余分な接着剤を基体上から除去する方法としては、特に制限はなく、紙や布等でふき取る方法などが挙げられる。
【0164】
また、一実施形態に係る加飾方法において、粉末成分が所望の量を超える量で配された場合に、余分な粉末成分は、接着剤上に配された後に除去することが好ましい。これにより、審美性の高い加飾を施すことができる。
【0165】
余分な接着剤を基体上から除去する方法としては、特に制限はなく、紙や布等でふき取る方法、流動性の気体(例えば、空気等)を吹きかけて飛ばす方法などが挙げられる。
【0166】
-基体に配した接着剤の形状を整える工程-
基体に配した接着剤の形状を整える工程は、基体に配した接着剤上に加飾用粉末を配する前に、所望の加飾に応じて、接着剤形状を整える工程である。例えば、接着剤を研磨具で研磨し、所望の加飾を施す方法などが挙げられる。
【0167】
-接着剤を乾燥、固化、又は硬化させる工程-
接着剤を乾燥、固化、又は硬化させる工程は、接着剤上に加飾用粉末を配する工程の後に行われることが好ましい。接着剤を乾燥、固化、又は硬化させる方法としては、特に制限はなく、使用する接着剤の種類などに応じて、適宜選択することができる。
【0168】
(加飾物)
一実施形態に係る加飾物は、基体上に配された接着剤と、前記接着剤上に配された、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末と、を有し、更に必要に応じて、その他の部材を有していてもよい。
【0169】
一実施形態に係る加飾物において、基体、接着剤、及び加飾用粉末については、(加飾用粉末)の項目に記載にものと同様であるため、説明を省略する。
【0170】
一実施形態に係る加飾物において、その加飾は、金継ぎが施されたものであることが好ましい。
【0171】
<その他の部材>
一実施形態に係る加飾物のその他の部材としては、特に制限はなく、基体の種類などに応じて適宜選択することができる。
【0172】
一実施形態に係る加飾物の製造方法としては、特に制限はないが、一実施形態に係る加飾方法により製造されたものであることが好ましい。
【0173】
<用途>
一実施形態に係る加飾物の用途としては、特に制限はなく、基体の種類に応じて、適宜選択することができ、基体の本来使用される用途で使用されることが好ましい。
【実施例0174】
以下に処方例、実施例、及び比較例を挙げて実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの処方例、実施例、及び比較例により限定されるものではない。なお、処方例、実施例、及び比較例において、配合量は、特に断りのない限り、加飾用粉末の全質量に対する「質量%」を示し、全て純分換算した値である。
【0175】
(処方例1)
下記表1に示す組成及び配合量の加飾用粉末としてのメーキャップ用粉末A(アイシャドウ)を調製した。まず、下記表1に示す「粉末成分1」をヘンシェルミキサーで均一に混合した。次いで、下記表1に示す「粉末成分2」を、粉末成分1の混合物に添加し、ヘンシェルミキサーで均一に混合した。次に、下記表1に示す「油性成分」を95℃にて攪拌して混合し、溶解した。調製した粉末成分1及び粉末成分2の混合粉末に、溶解した油性成分を添加し、ヘンシェルミキサーで均一に混合し、疎水化処理混合粉末を得た。得られた疎水化処理混合粉末に、エタノールを添加し、攪拌によりスラリー化する湿式混合を行った。得られたスラリーを容器に充填し、真空吸引して溶媒を除去し、乾燥させメーキャップ用粉末A(アイシャドウ)を得た。
【0176】
【表1】
【0177】
(実施例1)
基体としての割れた陶器を以下の方法で修復した。生漆(株式会社つぐつぐ販売)0.30gを接着剤Aとして使用した。割れた陶器の一断片における割れの接面に、接着剤Aを筆で塗布し、割れる前の陶器において、前記一断片に隣接していた他の一断片を接着剤の塗布部に合わせ、接着した。接着した接合部に、更に接着剤Aを筆で塗布した後、処方例1のメーキャップ用粉末A0.03gを、乾燥した筆で蒔いた。
【0178】
(実施例2)
生漆(株式会社つぐつぐ販売)0.30gと、ベンガラ(株式会社つぐつぐ販売)0.05gとを混合して接着剤Bを調製した。実施例1において、接着剤Aを、接着剤Bに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0179】
(実施例3)
生漆(株式会社つぐつぐ販売)0.30gと、酸化チタン(体積平均粒径:0.25μm、石原産業株式会社製)0.05gとを混合して接着剤Cを調製した。実施例1において、接着剤Aを、接着剤Cに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0180】
(比較例1)
実施例1において、接着した接合部に、更に接着剤を筆で塗布した後、メーキャップ用粉末Aを蒔かなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0181】
(比較例2)
実施例2において、接着した接合部に、更に接着剤を筆で塗布した後、メーキャップ用粉末Aを蒔かなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0182】
(比較例3)
実施例2において、加飾用粉末として、メーキャップ用粉末Aを金粉に変更したこと以外は、実施例2と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0183】
(比較例4)
実施例3において、接着した接合部に、更に接着剤を筆で塗布した後、メーキャップ用粉末Aを蒔かなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0184】
(比較例5)
実施例3において、加飾用粉末として、メーキャップ用粉末Aを金粉に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0185】
<耐水性の評価>
実施例1~3、比較例3、及び5で修復した陶器について、加飾用粉末を蒔いた後、室温(25℃±5℃)にて24時間乾燥させた後、室温にて10分間水道水の流水に晒し、専門評価者3名が接合部を指で触り、加飾用粉末及び接着剤の付着性及び曳糸性を確認した。また、比較例1、2、及び4で修復した陶器については、接着剤の付着性及び曳糸性の確認が、実施例1~3、比較例3、及び5と同時になるように、接着剤を筆で塗布した後、室温(25℃±5℃)にて24時間乾燥させた後、室温にて10分間水道水の流水に晒し、専門評価者3名が接合部を指で触り、接着剤の付着性及び曳糸性を確認した。評価は、専門評価者3名がそれぞれ下記評価基準に基づき接合部の耐水性を評価し、専門評価者3名の平均評価点を算出し、下記判定基準に基づき判定した。判定結果は下記表2に示した。なお、判定「A」が最も良好であり、判定「B」は通常の金継ぎと同等であり、判定「C」は実用上問題がある。
-耐水性の評価基準-
3点:指で接触時に、付着性及び曳糸性が共にない
2点:指で接触時に、付着性があり、曳糸性はない
1点:指で接触時に、付着性及び曳糸性が共にある
-耐水性の判定基準-
A:3名の平均評価点が2.5点以上
B:3名の平均評価点が2.0点以上2.5点未満
C:3名の平均評価点が2.0点未満
【0186】
【表2】
【0187】
従来の金粉を使用した比較例3と比較して、メーキャップ用粉末を使用した実施例1~3では、耐水性が向上した。
【0188】
<加飾用粉末の付着性の評価>
実施例1~3、比較例3、及び5で修復した陶器について、加飾用粉末を蒔いた直後に、専門評価者3名が接合部を指で触り、加飾用粉末の付着性を確認した。評価は、専門評価者3名がそれぞれ下記評価基準に基づき加飾用粉末の付着性を評価し、専門評価者3名の平均評価点を算出し、下記判定基準に基づき判定した。判定結果は下記表3-1及び表3-2に示した。なお、判定「A」が良好であり、判定「B」は通常の金継ぎと同等である。比較例1、2、及び4は、加飾用粉末を蒔いておらず、加飾用粉末の付着性の評価は行わなかったため、表3-2において「N.D.」と示した。
-耐水性の評価基準-
2点:指で接触時に、加飾用粉末が指に付着する
1点:指で接触時に、加飾用粉末が指に付着しない
-耐水性の判定基準-
A:3名の平均評価点が1.5点以上
B:3名の平均評価点が1.5点未満
【0189】
<明度及び輝度の評価>
<<修復直後の評価>>
実施例1~3、比較例3、及び5で修復した陶器について、加飾用粉末を蒔いた直後(即ち、室温にて24時間乾燥させる前)に、専門評価者1名が接合部の明度及び輝度を目視にて確認し、明度及び輝度がそれぞれ高い順に、A>B>C>Dの4段階で評価した。また、比較例1、2、及び4で修復した陶器については、接合部の明度及び輝度の確認が、実施例1~3、比較例3、及び5と同時になるようにして、専門評価者1名が接合部の明度及び輝度を目視にて確認し、明度及び輝度がそれぞれ高い順に、A>B>C>Dの4段階で評価した。
【0190】
<<1カ月保管後の評価>>
次に、実施例1~3、比較例3、及び5で修復した陶器について、加飾用粉末を蒔いた後、室温にて1カ月間保管後に、専門評価者1名が接合部の明度及び輝度を目視にて確認し、修復直後の明度及び輝度に対する相対評価に基づき、明度及び輝度がそれぞれ高い順に、A>B>C>Dの4段階で評価した。例えば、修復直後の明度が「A」であり、室温にて1カ月間保管後の明度が「A」であった場合、明度は、修復直後と、室温にて1カ月間保管後とで変化していないことを示す。また、比較例1、2、及び4で修復した陶器については、接合部の明度及び輝度の確認が、実施例1~3、比較例3、及び5の1カ月間保管後と同時になるようにして、専門評価者1名が接合部の明度及び輝度を目視にて確認し、修復直後の明度及び輝度に対する相対評価に基づき、明度及び輝度がそれぞれ高い順に、A>B>C>Dの4段階で評価した。
【0191】
【表3-1】
【0192】
【表3-2】
【0193】
従来の金粉を使用した比較例3と比較して、メーキャップ用粉末を使用した実施例1~3では、加飾用粉末を蒔いた直後及び室温にて1カ月間保管後のいずれも、明度及び輝度が向上した。
【0194】
(処方例2)
処方例1において、組成及び配合量を下記表4に示す組成及び配合量に変更したこと以外は、処方例1と同様の方法で、加飾用粉末としてのメーキャップ用粉末B(アイシャドウ)を得た。
【0195】
【表4】
【0196】
(処方例3)
下記表5に示す組成及び配合量の加飾用粉末としてのメーキャップ用粉末C(口紅)を調製した。まず、下記表5に示す「油性成分」を100℃に加熱し、ディスパーミキサーを用いて均一に混合した。次いで、この油性成分の混合物に「粉末成分1」を加え、ディスパーミキサーを用いて均一に混合した。次いで、油性成分と粉末成分1との混合物に、下記表5に示す「粉末成分2」を加え、ディスパーミキサーを用いて均一に混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを容器に充填し、4℃にて一晩冷却してメーキャップ用粉末C(口紅)を得た。
【0197】
【表5】
【0198】
(処方例4)
処方例3において、組成及び配合量を下記表6に示す組成及び配合量に変更したこと以外は、処方例3と同様の方法で、加飾用粉末としてのメーキャップ用粉末D(口紅)を得た。
【0199】
【表6】
【0200】
(処方例5)
下記表7に示す組成及び配合量の加飾用粉末としてのメーキャップ用粉末E(ファンデーション)を調製した。まず、下記表7に示す「粉末成分1」をヘンシェルミキサーで均一に混合した。次いで、下記表7に示す「粉末成分2」を、粉末成分1の混合物に添加し、ヘンシェルミキサーで均一に混合した。次に、下記表7に示す「油性成分」を95℃にて攪拌して混合し、疎水化処理混合粉末を得た。得られた疎水化処理混合粉末を、パルぺライザーを用いて解砕し、メーキャップ用粉末E(ファンデーション)を得た。
【0201】
【表7】
【0202】
(実施例4)
実施例1において、加飾用粉末として、メーキャップ用粉末Aをメーキャップ用粉末Bに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0203】
(実施例5)
実施例1において、加飾用粉末として、メーキャップ用粉末Aをメーキャップ用粉末Cに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0204】
(実施例6)
実施例1において、加飾用粉末として、メーキャップ用粉末Aをメーキャップ用粉末Dに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0205】
(実施例7)
実施例1において、加飾用粉末として、メーキャップ用粉末Aをメーキャップ用粉末Eに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、割れた陶器を修復した。
【0206】
<耐水性の評価>
実施例1~3及び比較例1~4の耐水性の評価と同様の方法で、実施例4~7で修復した陶器の耐水性を評価し、判定した。判定結果は下記表8に示した。
【0207】
【表8】
【0208】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 基体上に接着剤を配する工程と、
前記接着剤上に、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末を配する工程と、
を含むことを特徴とする加飾方法である。
<2> 前記粉末成分が、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、前記<1>に記載の加飾方法である。
<3> 前記油性成分が結合剤であり、
前記粉末成分と前記油性成分の状態が、前記粉末成分と前記油性成分との混合粉末、揮発性分散媒に前記混合粉末が分散されたスラリー、及び前記スラリーの半乾燥成形物からなる群から選択される少なくともいずれかである、前記<1>又は<2>に記載の加飾方法である。
<4> 前記加飾用粉末がメーキャップ用粉末である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の加飾方法である。
<5> 前記接着剤が漆である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の加飾方法である。
<6> 前記接着剤が、ベンガラ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、前記<5>に記載の加飾方法である。
<7> 前記基体が陶器、ガラス器、又は漆器である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の加飾方法である。
<8> 金継ぎに用いられ、
前記基体の接合部に前記接着剤を配する工程を更に含む、前記<2>から<7>のいずれかに記載の加飾方法である。
<9> 粉末成分と、油性成分とを含有し、
基体上に配された接着剤上に配することに用いられることを特徴とする加飾用粉末である。
<10> 前記粉末成分が、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、前記<9>に記載の加飾用粉末である。
<11> 前記油性成分が結合剤であり、
前記粉末成分と前記油性成分の状態が、前記粉末成分と前記油性成分との混合粉末、揮発性分散媒に前記混合粉末が分散されたスラリー、及び前記スラリーの半乾燥成形物からなる群から選択される少なくともいずれかである、前記<9>又は<10>に記載の加飾用粉末である。
<12> メーキャップ用粉末からなる、前記<9>から<11>のいずれかに記載の加飾用粉末である。
<13> 粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末と、
接着剤と、
を有することを特徴とする加飾用キットである。
<14> 前記粉末成分が、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、前記<13>に記載の加飾用キットである。
<15> 前記油性成分が結合剤であり、
前記粉末成分と前記油性成分の状態が、前記粉末成分と前記油性成分との混合粉末、揮発性分散媒に前記混合粉末が分散されたスラリー、及び前記スラリーの半乾燥成形物からなる群から選択される少なくともいずれかである、前記<13>又は<14>に記載の加飾用キットである。
<16> 前記加飾用粉末がメーキャップ用粉末である、前記<13>から<15>のいずれかに記載の加飾用キットである。
<17> 前記接着剤が漆である、前記<13>から<16>のいずれかに記載の加飾用キットである。
<18> 前記接着剤が、ベンガラ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、前記<17>に記載の加飾用キットである。
<19> 基体上に配された接着剤と、
前記接着剤上に配された、粉末成分と、油性成分とを含有する加飾用粉末と
を有することを特徴とする加飾物である。
<20> 前記粉末成分が、体質顔料、色材、及び光輝性粉末からなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、前記<19>に記載の加飾物である。
<21> 前記加飾用粉末がメーキャップ用粉末である、前記<19>又は<20>に記載の加飾物である。
<22> 前記接着剤が漆である、前記<19>から<21>のいずれかに記載の加飾物である。
<23> 前記接着剤が、ベンガラ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくともいずれかを含有する、前記<22>に記載の加飾物である。
<24> 前記基体が陶器、ガラス器、又は漆器である、前記<19>から<23>のいずれかに記載の加飾物である。
<25> 金継ぎが施されてなり、前記基体の接合部に前記接着剤が更に配される、前記<20>から<24>のいずれかに記載の加飾物である。
【0209】
以上の通り、本発明を具体的な実施形態及び実施例に基づいて説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものにすぎず、本発明は上記実施形態及び実施例により限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、付加、変更等を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。