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特開2025-28820可変ドーパント濃度を有するシリコンカーバイドパワーデバイスのための製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028820
(43)【公開日】2025-03-05
(54)【発明の名称】可変ドーパント濃度を有するシリコンカーバイドパワーデバイスのための製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/66 20250101AFI20250226BHJP
   H10D 30/01 20250101ALI20250226BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/78 652T
H01L29/78 652H
H01L29/78 652J
H01L29/78 658A
H01L21/265 V
H01L21/265 Q
H01L29/78 658E
H10D30/66 101C
H10D30/66 101T
H10D30/66 101H
H10D30/66 101M
H10D30/01 301A
H10D30/01 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024126663
(22)【出願日】2024-08-02
(31)【優先権主張番号】102023000016734
(32)【優先日】2023-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】18/779,699
(32)【優先日】2024-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】312014443
【氏名又は名称】エスティマイクロエレクトロニクス インターナショナル エヌ.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】カマッレリ,カテノ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】サッジョ,マリオ ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】グアルネラ,アルフィオ
(72)【発明者】
【氏名】フラッツェット,アレッシア マリア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】可変ドーパント濃度を有するSiCパワーデバイスのための製造プロセスを提供する。
【解決手段】MOSFET 1の製造プロセスは、格子構造が空間対称性を有する半導体材料を含有する層から、空間対称性を有する格子構造及び第1の導電性を有するエピタキシャル層12成長させることと、エピタキシャル層において、第1の導電性とは反対の第2の導電性を有するボディ領域15を形成することと、ボディ領域の間のエピタキシャル層に、電流拡散層30を形成することと、を含む。ボディ領域を形成することは、ボディマスクを使用して、ボディチャネリングイオン注入を実施することを含む。電流拡散層を形成することは、格子構造が浅い損傷領域において変化するように、ボディマスクを通して前記ボディ領域に前記浅い損傷領域を形成することと、浅い損傷領域を注入マスクとして使用して、電流拡散チャネリングイオン注入を実施することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直伝導パワーデバイスのための製造プロセスであって、
格子構造が空間対称性を有する半導体材料を含有する層を形成し、空間対称性を有する前記格子構造及び第1の導電性を有する第1のエピタキシャル層を成長させることと、
前記第1のエピタキシャル層において、前記第1の導電性とは反対の第2の導電性を有する第1のボディ領域を形成することと、
前記第1のボディ領域の間の前記第1のエピタキシャル層において、前記第1の導電性を有する第1の電流拡散層を形成することと、
を含み、
前記第1のボディ領域を形成することが、
第1のボディマスクを使用して、第1のボディチャネリングイオン注入を実施することを含み、
前記第1の電流拡散層を形成することが、
前記格子構造が、第1の浅い損傷領域において変化するように、前記第1のボディマスクを通して前記第1のボディ領域に前記第1の浅い損傷領域を形成することと、
前記第1の浅い損傷領域を注入マスクとして使用して、第1の電流拡散チャネリングイオン注入を実施することと、を含む、製造プロセス。
【請求項2】
前記第1の浅い損傷領域を形成することが、
シリコン、アルゴン、ゲルマニウム、ヘリウムのイオンを含む群から選定される非反応性又は非ドーパントイオン種の非チャネルランダムイオン注入、及び
第1の化学エッチ、のうちの1つを実施することを含む、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
前記第1のボディ領域の第1のドーピングレベル及び前記第1の電流拡散層の第2のドーピングレベルが、前記第1のボディ領域における第1の全電荷が前記第1の電流拡散層における第2の全電荷よりも少なくとも5倍大きくなるように選択される、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項4】
前記第1のエピタキシャル層を形成し、空間対称性を有する前記格子構造及び前記第1の導電性を有する第2のエピタキシャル層を成長させることと、
前記第2のエピタキシャル層において、前記第2の導電性を有する第2のボディ領域を形成することと、
前記第2のエピタキシャル層の前記第2のボディ領域の間に、前記第1の導電性を有する第2の電流拡散層を形成することと、
を更に含み、
前記第2のボディ領域を形成することが、
第2のボディマスクを使用して、第2のボディチャネリングイオン注入を実施することを含み、
前記第2の電流拡散層を形成することが、
前記格子構造が、前記第2のボディ領域の第2の浅い損傷領域において変化するように、前記第2のボディマスクを通して前記第2のボディ領域に前記第2の浅い損傷領域を形成することと、
前記第2のボディ領域の前記第2の浅い損傷領域を注入マスクとして使用して、第2の電流拡散チャネリングイオン注入を実施することと、を含む、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項5】
前記第2のボディマスクが、それぞれの第1のボディ領域に対応する位置に開口部を有する、請求項4に記載の製造プロセス。
【請求項6】
前記第2のエピタキシャル層を成長させる前に、前記第1の浅い損傷領域を除去することを更に含む、請求項4に記載の製造プロセス。
【請求項7】
前記第2の浅い損傷領域を除去することを更に含む、請求項4に記載の製造プロセス。
【請求項8】
前記第2のボディ領域が、前記第2のエピタキシャル層の全体にわたって、それぞれの第1のボディ領域まで深さ方向に延在し、それぞれの第1のボディ領域と接触している、請求項4に記載の製造プロセス。
【請求項9】
前記第2の電流拡散層が、前記第2のエピタキシャル層の全体にわたって、前記第1のエピタキシャル層まで深さ方向に延在し、前記第1のエピタキシャル層と接触している、請求項4に記載の製造プロセス。
【請求項10】
前記第1のボディ領域の前記第1のドーピングレベルが、前記第2のボディ領域の第3のドーピングレベルと異なり、かつ/又は前記第1の電流拡散層の前記第2のドーピングレベルが、前記第2の電流拡散層の第4のドーピングレベルと異なる、請求項3に記載の製造プロセス。
【請求項11】
前記第2の浅い損傷領域を形成することが、
シリコン、アルゴン、ゲルマニウム、ヘリウムのイオンを含む群から選定される非反応性又は非ドーパントイオン種の第2の非チャネルランダムイオン注入、及び
第2の化学エッチ、のうちの1つを実施することを含む、請求項4に記載の製造プロセス。
【請求項12】
空間対称性を有する前記格子構造及び前記第1の導電性を有する、前記第1のエピタキシャル層の部分を成長させることと、
前記第1のエピタキシャル層の最後に成長した部分において、前記第2の導電性を有する前記第1のボディ領域の部分を形成することと、
前記第1のエピタキシャル層の前記最後に成長した部分の前記第1のボディ領域の部分の間に前記第1の電流拡散層の部分を形成することと、
を反復して繰り返すことを更に含み、
前記第1のエピタキシャル層の前記最後に成長した部分の前記第1のボディ領域の前記部分を形成することが、
前記第1のボディマスクを使用して、それぞれのボディチャネリングイオン注入を実施することを含み、
前記第1の電流拡散層の前記部分を形成することが、
前記格子構造が、前記第1のエピタキシャル層の前記最後に成長した部分の前記第1のボディ領域の前記部分の前記第1の浅い損傷領域において変化するように、前記第1のボディマスクを通して前記第1のエピタキシャル層の前記最後に成長した部分の前記第1のボディ領域の前記部分に浅い損傷領域を形成することと、
前記第1のエピタキシャル層の前記最後に成長した部分の前記第1のボディ領域の前記部分の前記第1の浅い損傷領域を注入マスクとして使用して、それぞれの電流拡散チャネリングイオン注入を実施することと、を含む、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項13】
前記半導体材料が、シリコンカーバイドを含有する、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項14】
垂直伝導パワーデバイスであって、
格子構造が空間対称性を有する半導体材料を含有する基板と、
前記基板上に配置され、空間対称性を有する前記格子構造及び第1の導電性を有する、第1のエピタキシャル層と、
前記第1のエピタキシャル層における、前記第1の導電性とは反対の第2の導電性を有する第1のボディ領域と、
前記第1のボディ領域の間の前記第1のエピタキシャル層における、前記第1の導電性を有する第1の電流拡散層と、
を備える、垂直伝導パワーデバイス。
【請求項15】
前記第1のボディ領域の第1のドーピングレベル及び前記第1の電流拡散層の第2のドーピングレベルが、前記第1のボディ領域における第1の全電荷が前記第1の電流拡散層における第2の全電荷よりも少なくとも5倍大きくなるように選択される、請求項14に記載のパワーデバイス。
【請求項16】
前記第1のエピタキシャル層上に配置され、空間対称性を有する前記格子構造及び前記第1の導電性を有する、第2のエピタキシャル層と、
前記第2のエピタキシャル層における、前記第2の導電性を有する第2のボディ領域と、
前記第2のエピタキシャル層の前記第2のボディ領域の間の前記第1の導電性を有する第2の電流拡散層と、を更に備え、
前記第2のボディ領域が、前記第2の電流拡散層の面に垂直な方向に前記第2の電流拡散層の全体にわたって延在し、それぞれの第1のボディ領域に対応する位置にあり、それぞれの第1のボディ領域に接触している、請求項14に記載のパワーデバイス。
【請求項17】
前記半導体材料が、シリコンカーバイドを含有する、請求項14に記載のパワーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2023年8月4日に出願され、「PROCESSO DI FABBRICAZIONE PER DISPOSITIVI DI POTENZA IN CARBURO DI SILICIO CON CONCENTRAZIONE DI DROGANTE VARIABILE」と題された伊国特許出願第102023000016734号の優先権を主張し、これは、法律によって許容される最大範囲で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示の例示的な実施形態は、可変ドーパント濃度を有するシリコンカーバイドパワーデバイスのための製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、例えば1.1eVより大きい広いバンドギャップ、低いオン状態抵抗、高い熱伝導率、高い作動周波数、及び高い電荷キャリア飽和速度を有する半導体材料は、具体的には、電力用途(すなわち、例えば600V~1300Vに含まれる作動電圧、又は高温などの特定の作動条件)のための、シリコンの電子デバイスよりも高い性能を有するダイオード及びトランジスタなどの電子デバイスを得ることを可能にする。
【0004】
詳細には、ポリタイプのうちの1つのシリコンカーバイド(SiC)、例えば3C-SiC、4H-SiC、及び6H-SiCのウェハから出発してそのような電子デバイスを得ることが知られており、これらは上に列挙した特性によって区別される。SiCタイプの半導体を使用して得ることができる電子パワーデバイスは、例えば、垂直伝導MOSFET又はJFETであり得る。
【0005】
イオン注入は、今日、ドーパントをシリコンカーバイドに導入するための統合された技術である。実際に、他の半導体材料(シリコンなど)と比較してSiCの拡散性が低いため、ドーパントの拡散は、使用するのに好都合な技術ではない場合がある。更に、エピタキシャル成長は、具体的には局所的に閉じ込められたドーピングに対して、効果的な代替案ではない可能性がある。
【0006】
知られているように、使用されるイオンのエネルギー及びタイプに加えて、SiCの結晶構造は、注入中に、得られる深さ分布に影響を及ぼす。実際に、いわゆるチャネリングは、アモルファスターゲットと比較して、結晶材料におけるドーパントイオンの浸透の深さをかなり増加させることがある。この現象は、入射イオンビームの方向が主結晶軸又は面に対して実質的に平行であり、明確に規定され含有される範囲内(すなわち、いわゆる「臨界チャネリング角」内)にある場合に起こり得る。これらの方向では、イオンの経路の長さ当たりのエネルギー損失の低減は、より小さく、イオンがターゲット内でより深く移動し得るという利益を伴う。実際に、注入がSiC技術を使用して結晶軸に沿って実施される場合、最も深いチャネリングイオンは、同じ注入エネルギーが使用されると仮定すると、対応するランダム注入に対して予想される範囲よりも何倍も大きい距離にわたって浸透する場合がある。
【0007】
形状及びドーピングプロファイルの両方に関して局所的に閉じ込められた注入領域を形成するために、注入中にSiCダイ又はチップを局所的に遮蔽するように構成された、例えば酸化シリコン(SiO)のハード注入マスクを使用することが知られている。しかしながら、本出願人は、ハードマスクの使用が、マスク自体の除去後に、マスクが適用される層の平坦性の問題を引き起こす場合があることを見出した。実際に、ハードマスクは、SiC基板上に格子応力を引き起こす場合がある。
【0008】
更に、ハードマスクの使用は、その寸法の減少(専門用語、「微細化」)の結果として、すなわち、使用中にパワーデバイスから抽出され得る電流を増加させることを目的としたデバイスの「ピッチ」の減少の結果として、同じダイにおいて得ることができる基本セル(elementary cell)の密度の漸進的増加に適合しない場合があり、すなわち、スケーリングが困難である場合がある。実際、基本セルの微細化及びそれらの結果として生じる相互接近を考慮すると、マスクの使用に基づくプロセスは、ダイの互いの上部に配置された層に属する領域間の整合の問題を提示する場合があり、設計仕様に対応しないレイアウトのために望ましくない電気現象が発生する可能性がある。とりわけ、デバイスの電気的特性(オン状態抵抗、ゲートエリアの高電界からの遮蔽など)のパラメータ化の目的のための、可変ドーピングプロファイルを有するSiCダイの領域の画定は、注入マスクを使用して複雑であることが証明され得る。
【発明の概要】
【0009】
結果として、本開示の様々な実施形態の目的は、従来技術の欠点及び制限を克服するか、又は少なくとも軽減することである。
【0010】
本開示の様々な実施形態によれば、付属の特許請求の範囲で定義されるように、可変ドーパント濃度を有するシリコンカーバイドパワーデバイスのための製造プロセスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の様々な実施形態のより良い理解のために、添付の図面を参照して、非限定的な例として、その好ましい実施形態が提供される。
図1】本開示の一実施形態によるパワーデバイスを通る断面図である。
図2A】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図2B】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図2C】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図2D】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図2E】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図2F】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図2G】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図2H】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図2I】本開示の一実施形態による製造プロセスの連続的な機械加工ステップにおける半導体ウェハを通る断面図である。
図3図2A図2Iのプロセスに関する簡略ブロック図である。
図4】本開示の異なる実施形態によるパワーデバイスを通る断面図である。
図5図4の拡大詳細図である。
図6】本開示の異なる実施形態による製造プロセスに関する簡略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施形態に従って製造されたパワーデバイスは、図1にその一部が図示されており、番号1で示されている。パワーデバイス1は、例えば、MOSFET、具体的にはパワーMOSFET、より更に具体的にはシリコンカーバイド(SiC)技術を使用して得られる垂直伝導MOSFETであり、添付の図には図示されていないダイ又はチップに収容される。以下、パワーデバイス1は、結果として、交換可能に「MOSFET」とも呼ばれ、これは、いかなる一般性の損失も含意するものではない。
【0013】
図1は、互いに直交する軸X、Y、Zの基準系におけるMOSFET 1を断面図で示す。
【0014】
MOSFET 1は、互いに同じであり、ドレイン端子D、ゲート端子G、及びソース端子Sを共有するように同じダイに配置された複数の基本セル(そのうちの1つだけが添付の図面に図示されている)を備え、すなわち、基本セルは、互いに並列に電気的に接続されている。
【0015】
MOSFET 1は、半導体材料のボディ2に形成される。ボディ2は、軸Zの方向において互いに対向する、前面2aによって上部、及び後面2bによって底部で区切られる。ボディ2は、基板、又は他に1つ以上のエピタキシャル層を成長させ、ポリタイプのうちの1つのシリコンカーバイド、ここでは4H-SiCポリタイプから作製される、基板を備えてもよい。
【0016】
一実施形態では、具体的には、ボディ2は、後面2bによって底部で区切られた基板10と、基板10上の第1のエピタキシャル層12と、第1のエピタキシャル層12の上に延在し、前面2aによって上部で区切られた第2のエピタキシャル層22と、を備える。
【0017】
基板10は、単結晶半導体材料、例えばポリタイプのうちの1つのシリコンカーバイド、ここではポリタイプ4H-SiCから作製され、空間対称性を有する格子構造を有し、第1及び第2のエピタキシャル層12、22は、同じ材料で作製され、同じ結晶構造を保持する。
【0018】
ドリフト領域101、第1の電流拡散層(以下、単に「第1のCSL」)30、及び複数の深いボディ領域15(図1にはそのうちの2つが図示されている)は、第1のエピタキシャル層12に形成される。第2の電流拡散層(以下、単に「第2のCSL」)40、複数の浅いボディ領域20(そのうちの2つが図1に図示されている)、及び複数のソース領域25(そのうちの2つが図1に図示されている)は、第2のエピタキシャル層22に形成される。
【0019】
図1の半導体材料のボディ2、すなわち基板10及びドリフト領域101は、例えばN型の第1の導電性を有する。深いボディ領域15は、第1の導電性と反対のP型の第2の導電性を有し、第1のドーピングレベル(又はドーパント濃度)P1を有する。第1のCSL 30は、N型であり、第2のドーピングレベルN1を有する。浅いボディ領域20は、P型であり、第3のドーピングレベルP2を有する。第2のCSL 40は、N型であり、第4のドーピングレベルN2を有する。第1及び第3のドーピングレベルP1、P2は、互いに異なっていてもよく、同様に、第2及び第4のドーピングレベルN1、N2は、互いに異なっていてもよい。いずれにしても、第1のドーピングレベルP1及び第2のドーピングレベルN1は、深いボディ領域15及び第1のCSL 30の全体積を考慮した場合に、深いボディ領域15における第1の全電荷QP1が第1のCSL 30における第2の全電荷QN1よりも著しく大きくなるように選択される。典型的には、深いボディ領域15における第1の全電荷QP1は、第1のCSL 30における第2の全電荷QN1よりも少なくとも5倍大きい。最後に、複数のソース領域25は、第1の導電性を有する。
【0020】
第1のエピタキシャル層12において、隣接する深いボディ領域15は、第1のCSL 30の部分によって軸Xに沿って分離され、第2のエピタキシャル層22において、隣接する浅いボディ領域20は、第2のCSL 40の部分によって軸Xに沿って分離される。更に、各浅いボディ領域20は、それぞれの深いボディ領域15に少なくとも部分的に重なり、それと接触し、第2のCSL 40は、第1のCSL 30に少なくとも部分的に重なり、それと接触する。
【0021】
各ソース領域25は、前面2aから延在し、それぞれの浅いボディ領域20に少なくとも部分的に含有される。各基本セルのソース領域25のうちの少なくとも1つは、前面2aからそれぞれの浅いボディ領域20まで延在するボディコンタクト領域28を含む。更に、各ソース領域25及び第2のCSL 40は、それぞれの浅いボディ領域20においてチャネル領域27を横方向に区切る。
【0022】
深いボディ領域15、浅いボディ領域20、ソース領域25、及びボディコンタクト領域28は、Y軸に平行な方向に帯状に延在している。
【0023】
第1及び第2のエピタキシャル層12、22の重ね合わせは、使用時に、すなわち、ゲート端子Gとソース端子Sとの間の電圧(VGS)が基本セルの導通しきい値電圧(VTH)よりも大きいときに、電流が、各チャネル領域27、第2のCSL 40及び第1のCSL 30、並びにドリフト領域101を通って、ソース端子Sとドレイン端子Dとの間を流れ得るようになっている。第1及び第2のCSL 30、40は、実際には、電荷キャリアが遭遇する抵抗を局所的に調整する(より一般的には、MOSFET 1のオン状態抵抗の値を改善する)機能を有する濃縮層を形成し、ドリフト領域101は、使用時に電荷キャリアのドリフト層を形成する。
【0024】
図1のボディ2、より一般的にはMOSFET 1は、本開示の主題の様々な実施形態を形成する製造プロセスによって得られ、その連続するステップは、図2A図2Iに図示され、図3のフローチャートに概略的に示される。
【0025】
図2Aは、シリコンカーバイド(4H-SiCポリタイプ)のウェハ100の断面図を示し、ここでは、(N型の)第1の導電性と、軸Zの方向に互いに対向する第1の表面100a及び第2の表面100bと、を有する。ウェハ100は、最初に基板10を備え、その上に、第1のエピタキシャル成長(第1のステップS1)によって、例えば、軸Zに沿った厚さが1μm~60μmに含まれる第1のエピタキシャル層12が形成される。第1のエピタキシャル層12の結晶又は格子構造は、チャネリング現象を利用することによってイオン注入を可能にする。
【0026】
深いボディ領域15及びその後の第1のCSL 30は、チャネリングイオン注入によって形成される。チャネリング注入は、注入中のイオンビームがチャネリング方向:例えば、SiCでは、000-1方向又は11-23方向と整合されるときに得られる。典型的には、基板は、000-1方向に成長したインゴットから切断され、表面は、直径150mm又は200mmの基板に対して4°傾斜している(ウェハの切断のため)。000-1ウェハ上にチャネリング注入を行うために、注入中のイオンビームは、4°の傾きで配向され、11-23方向に成長したウェハについては、13°又は21°の傾きで配向される。
【0027】
製造プロセスの第2のステップS2を特定する図2Bを参照すると、深いボディマスク105がウェハ100の第1の表面100a上に適用される。深いボディマスク105は、深いボディ領域15が形成されるウェハ100の部分を露出させる。深いボディマスク105を使用して、P型、すなわち、ウェハ100の第1の導電性とは反対の第2の導電性に対応するドーパントイオンの第1のチャネリングイオン注入が実施される(ここでは、チャネリング注入を示すために軸Zに対して傾斜した矢印110によって示される)。第1のチャネリングイオン注入は、例えば、アルミニウム(Al)又はホウ素(B)のイオン及び20keV~2000keVに含まれる注入エネルギーを使用して実施される。したがって、深いボディ領域15は、第1の表面100aから始まる軸Zに沿った0.5~5μmに含まれる第1の厚さT及び軸Xに沿った1~10μmに含まれる第1の寸法Lによって画定され、1×1017~1×1019原子/cmのオーダーの第1のドーピングレベルP1を有する。
【0028】
一実施形態によれば、ウェハ100は、その後、ドーパントイオンの活性化のため、かつ注入によって引き起こされ得る結晶格子内の欠陥の低減のためのアニーリングのステップを受ける。
【0029】
第3のステップS3(図2C)の間、深いボディマスク105は、以下に説明されるように、第1のCSL 30の自己整合形成の目的のために複数の第1の意図的に損傷させた領域(単に「IDR」とも呼ばれる)50を作り出すために使用される。第1の損傷領域50は、ウェハ100の表面領域であり、深いボディマスク105が再び使用されると仮定すると、第1の損傷領域50は、それぞれの深いボディ領域15に対応する領域に得られる。
【0030】
本出願人は、チャネリングの効果がウェハ100の表面領域の意図的な損傷によって変化することを実際に見出した。当該損傷は、例えば、非反応性又は非ドーパント種(図2Cの矢印120によって示される)の第1のランダムイオン注入(すなわち、非チャネルイオン注入)によって得ることができ、これは、ウェハ100の導電特性を局所的に変化させることなく、ウェハ100の結晶格子に損傷を引き起こす。この目的に適した化学種には、例えば、シリコン(Si)、アルゴン(Ar)、ゲルマニウム(Ge)、ヘリウム(He)のイオンが含まれる。
【0031】
したがって、本開示の態様によれば、第1の損傷領域50は、第1のCSL 30を形成するための後続の注入ステップにおいて局所的にチャネリングを変化又は抑制するように、第1の表面100aに形成され、それぞれの深いボディ領域15と整合され(軸X及びYに沿って)、それぞれの深いボディ領域15に画定される。各第1の損傷領域50は、ウェハ100において第1の表面100aから始まり、例えば0.05~0.2μm(両端値を含む)に含まれる最大深さまで延在する。各第1の損傷領域50の厚さ(軸Zに沿った深さ)は、均一であるか、又は他に0.05μmの最小値と0.2μmの最大値との間で変動してもよい。図2Cに図示されるように、第3のステップS3においても深いボディマスク105を使用するおかげで、各第1の損傷領域50は、それぞれの深いボディ領域15の第1の寸法Lに実質的に等しい軸Xに沿った広がりを有する。
【0032】
第1の損傷領域50を形成するために、1013原子/cmを超える注入ドーズ量及び所望の深さのために結晶体系から原子を変位させるのに十分なエネルギー(例えば、30~300keVの範囲のエネルギー)が使用され得る。損傷を引き起こす注入は、チャネリング条件がない状態で実施され、生成された損傷を除去しないように、プロセス中のウェハ100のアニーリングは、回避される。
【0033】
更なる実施形態によれば、第1の損傷領域50は、深いボディ領域15において、深いボディマスク105を通して第1の表面100aを局所的にエッチングする1つ以上のステップによって得られる。例えば、RIE(反応性イオンエッチング)プロセスは、物理的エッチングの特性、すなわち、Arイオンによるプラズマイオン衝撃を用いて使用されてもよい。得ることができる深さは、例えば、0.1μmに等しい。
【0034】
第1の損傷領域50におけるウェハ100の格子構造は、ウェハ100の非損傷領域の格子構造とは異なる。具体的には、ウェハ100は、損傷された場合、意図的な損傷が存在しないウェハ100の部分の空間対称性を有さないアモルファス構造、又は無秩序な結晶構造若しくは格子構造を有する。
【0035】
深いボディマスク105が除去されると、第1の損傷領域50は、図1のMOSFET 1の第1のCSL 30が存在しない第1のエピタキシャル層12の部分の上に延在する。言い換えれば、第1の損傷領域50は、第1のCSL 30が注入されるウェハ100の部分に対して相補的な部分に形成される(第3のステップS3)。図2Dは、製造プロセスの第4のステップS4を参照し、実際に、第1の損傷領域50が、N型、すなわち第1の導電性に対応するドーパントイオンの第2のチャネリングイオン注入(ここでは、チャネリング注入を示すために軸Zに対して傾斜した矢印130によって示される)に関して注入マスクとしてどのように作用するかを示す。
【0036】
詳細には、ウェハ100全体が第2のチャネリングイオン注入にさらされるが、第1のCSL 30は、表面損傷のないウェハ100の部分、すなわち深いボディ領域15の外側に実質的に排他的に得られる。このようにして、深いボディ領域15は、第2のチャネリングイオン注入から遮蔽され、同時に、第1のCSL 30は、注入条件によって決定される所望の深さまで、第1のエピタキシャル層12内の深いボディ領域15に対して自己整合的な方法で画定される。
【0037】
第2のチャネリングイオン注入(矢印130)は、例えば、リン(P)又は窒素(N)のイオン及び20keV~2000keVに含まれる注入エネルギーを使用して実施される。これらのパラメータは、複数の深いボディ領域15の間の第2のドーピングレベルN1であって、例えば、1017原子/cm、又は他にそれを収容する半導体ウェハの部分のドーピングレベルの2~20倍のオーダーの、第2のドーピングレベルN1と、第1の表面100aから始まり、MOSFET 1において、例えば、深いボディ領域15の第1の厚さT1に等しい、軸Zに沿った深さと、を規定する。具体的には、深いボディ領域15の第1のドーピングレベルP1及び第1のCSL 30の第2のドーピングレベルN1は、深いボディ領域15における第1の全電荷QP1が第1のCSL 30における第2の全電荷QN1よりも少なくとも5倍大きくなるように、深いボディ領域15及び第1のCSL 30の総体積にも関連して選択される。
【0038】
このステップでは、第1の損傷領域50に最大厚さ0.3μmの薄い注入層が形成され得る。言い換えれば、CSLは、損傷領域に表面的に閉じ込められ得る。本出願人は、そのような薄いCSLの存在が、後続のステップで形成される重なっている層に関連して、MOSFET 1の作動に影響を及ぼさないことを見出した。しかしながら、以下にも説明されるように、また、本開示の様々な実施形態の主題を形成する製造プロセスに適用されるように、損傷領域に重なる層における可能な結晶学的欠陥を防止するために、第1の損傷領域50は、後続の機械加工ステップの前に、例えば、水素(H)環境におけるウェハ100のエッチングによって選択的に除去される。
【0039】
このようにして、図1のMOSFET 1の第1のエピタキシャル層12の処理が完了する。具体的には、ドリフト領域101自体も、このようにして、第1のCSL 30及び深いボディ領域15によって占有されていない第1のエピタキシャル層12の部分に画定される。
【0040】
次に(図2E、ステップS5)、第2のエピタキシャル層22が、第2のエピタキシャル成長によってウェハ100上に形成される。詳細には、第2のエピタキシャル層22は、ウェハ100と同様に、シリコンカーバイド(4H-SiCポリタイプ)、すなわち、チャネリング現象を利用することによって、イオン注入が可能な材料から作製され、例えば、1×1015~1×1017原子/cmのオーダーのドーピングを有する。第2のエピタキシャル層22は、0.1μm~3μmに含まれ、例えば1.5μmに等しい第2の厚さTにわたって成長させる(第1の表面100aから始まり測定される)。
【0041】
ウェハ100及び第2のエピタキシャル層22は、ワークウェハ118を形成し、これは、基本的にボディ2に対応し、ボディ2の前面2aと後面2bとの間に延在する。ワークウェハ118は、第5のステップS5に続くステップについて説明したように処理されて、第2のエピタキシャル層22内に存在するMOSFET 1の構造を画定する。
【0042】
図2F(第6のステップS6)を参照すると、第2のエピタキシャル層22上に浅いボディマスク125が適用され、これは、浅いボディ領域20が形成される第2のエピタキシャル層22の部分を露出させる。具体的には、浅いボディマスク125は、軸Zの方向において、必ずしも同じ寸法ではないそれぞれの深いボディ領域15に対応する位置に開口部を有する。浅いボディマスク125を使用して、P型、すなわち第2のエピタキシャル層22の第1の導電性と反対の第2の導電性に対応するドーパントイオンの第3のチャネリングイオン注入が実施される(ここでは、チャネリング注入を示すために軸Zに対して傾斜した矢印140によって示される)。第3のチャネリングイオン注入は、例えば、アルミニウム(Al)又はホウ素(B)のイオン及び20keV~2000keVに含まれる注入エネルギーを使用して実施される。このように画定された浅いボディ領域20は、第2のエピタキシャル層22の第2の厚さTに等しい深さ、1~10μmに含まれる軸Xに沿った第2の寸法L、及び1×1017~1×1019原子/cmのオーダーの第3のドーピングレベルP2を有する。
【0043】
図2Fのワークウェハ118において、したがって図1のMOSFET 1において、前面2aから始まる浅いボディ領域20の深さは、第2のエピタキシャル層22の厚さに対応する。更に、浅いボディマスク125は、MOSFET 1の浅いボディ領域20が、軸Zに平行な方向において、深いボディ領域15に整合させるようなものである。上述したように、各浅いボディ領域20は、それぞれの深いボディ領域15に重なり、それに接触する。第1及び第2の寸法L、Lは、互いに異なり、具体的には、各浅いボディ領域20は、それぞれの深いボディ領域15の対応する寸法よりも小さい軸Xに沿った寸法を有する。
【0044】
第1及び第2の寸法L、Lは、以下でより詳細に説明するように、MOSFET 1の電気的性能に対応するMOSFET 1の設計パラメータである。したがって、第1及び第2の寸法L、Lは、それぞれの深いボディマスク105及び浅いボディマスク125を調整して選択され得、その結果、各深いボディ領域15は、所望の性能に従って、それぞれの浅いボディ領域20の広がりよりも大きい(図1)、小さい、又は同じ軸Xに沿った寸法を交互に有することになる(それぞれ、L>L、L<L、又はL=L)。
【0045】
第7のステップS7(図2G)の間、浅いボディマスク125は、第2のCSL 40の自己整合形成の目的で意図的に損傷させた複数の第2の領域70を作り出すために使用される。第2の損傷領域70は、第2のエピタキシャル層22の表面領域であり、チャネリングを局所的に変化又は抑制するために、それぞれの浅いボディ領域20と整合され(軸X及びYに沿って)、それぞれの浅いボディ領域20に画定される。
【0046】
上記の損傷は、例えば、非反応性又は非ドーパント種の第2のランダム(すなわち、非チャネル)イオン注入(図2Gにおいて矢印150によって示される)によって、すなわち、第2のエピタキシャル層22の結晶格子に、その導電特性を局所的に変化させることなく損傷を引き起こすように、得ることができる。この目的のために設計された化学種には、例えば、シリコン(Si)、アルゴン(Ar)、ゲルマニウム(Ge)、ヘリウム(He)のイオンが含まれる。
【0047】
第2の損傷領域70を形成するために、1013原子/cmを超える注入ドーズ量及び所望の深さのために結晶体系から原子を変位させるのに十分なエネルギー(例えば、30~300keVの範囲のエネルギー)が使用され得る。各第2の損傷領域70は、第2のエピタキシャル層22において前面2aから始まり、例えば、0.05~0.2μm(両端値を含む)に含まれる最大深さまで延在する。
【0048】
浅いボディマスク125が除去されると、損傷領域70は、図1のMOSFET 1の第2のCSL 40が存在しない第2のエピタキシャル層22の部分の上に延在する。言い換えれば、第2の損傷領域70は、第2のCSL 40が注入される第2のエピタキシャル層22の部分と相補的な部分に形成される(第7のステップS7)。図2Hは、製造プロセスの第8のステップS8に関し、実際に、第2の損傷領域70が、N型、すなわち第1の導電性に対応するドーパントイオンの第4のチャネリングイオン注入(ここでは、チャネリング注入を示すために軸Zに対して傾斜した矢印160によって示される)に関して注入マスクとしてどのように作用するかを示す。
【0049】
詳細には、第2のエピタキシャル層22全体が第4のチャネリングイオン注入にさらされるが、チャネリングによる第2のCSL 40の形成は、事実上、表面損傷のないエピタキシャル層22の部分、すなわち浅いボディ領域20の外側でのみ得られる。このようにして、浅いボディ領域20は、第4のチャネリングイオン注入から遮蔽され、同時に、第2のCSL 40は、第2のエピタキシャル層22内に、複数の浅いボディ領域20に対して自己整合的な方法で画定される。
【0050】
第4のチャネリングイオン注入(矢印160)は、例えば、窒素又はリンイオン及び20keV~2000keVに含まれる注入エネルギーを使用して実施される。当該パラメータは、複数の浅いボディ領域20の間の第4のドーピングレベルN2であって、例えば、1017原子/cm、又は他にそれを収容する半導体層の部分のドーピングレベルの2~20倍のオーダーの、第4のドーピングレベルN2と、前面2aから始まり、MOSFET 1において、例えば、浅いボディ領域20の第2の厚さTに等しい、軸Zに沿った深さと、を規定する。
【0051】
第4のチャネリングイオン注入の終わりに、MOSFET 1の第2のCSL 40は、第1のCSL 30に接触して重なり、深いボディ領域15に少なくとも部分的に接触して重なる。
【0052】
次いで、第2の損傷領域70は、例えば、ワークウェハ118の水素環境(H)におけるエッチングによって選択的に除去される。
【0053】
図4及び図5の拡大詳細図に図示される一実施形態では、ここではそれぞれ115及び130によって示される深いボディ領域及び第1のCSLは、既に説明したステップS1~S4と同様のステップS1’~S4’を、プログラムされた反復回数Qだけ繰り返すことによって得ることができる。実際には、各反復において、第1のエピタキシャル層12の部分を成長させ(S1’、図6)、深いボディマスク105を使用して、ドーパントイオンのチャネリングイオン注入が実施され(S2’、図6)、したがって、それぞれの濃度P11、...、P1K、...、P1Qを有する深いボディ領域115の部分が得られ、深いボディ領域115(S3’、図6)のそれぞれの部分の表面上に、深いボディマスク105を通した1つ以上の局所的エッチングステップによって、意図的に損傷させた領域(図示せず)が形成され、それぞれの濃度N11、...、N1K、...、N1Qを有する第1のCSL 130の部分が、損傷領域を注入マスクとして使用して、チャネリングイオン注入によって形成される(S4’、図6)。ドーパント種の濃度P11、...、P1K、...、P1Q、及びN11、...、N1K、...、N1Qは、いずれの場合も、深いボディ領域115における第1の全電荷QP1’が、第1のCSL 130(図4で追加される)における第2の全電荷QN1’よりも著しく大きく、典型的には少なくとも5倍大きいように、設計選好に従って選択され得る。更に、ドーパント種の濃度P1K、...、P1Q、及びN11、...、N1K、...、N1Qは、エピタキシャル層の各K番目の部分(図5)において、深いボディ領域115の部分における第1の層全電荷QP1Kが、第1のCSL 130の部分における第2の層全電荷QN1Kよりも著しく大きく、典型的には少なくとも5倍大きくなるように選択され得る。
【0054】
次いで、プロセスは、既に説明したステップS5~S8に進む。
【0055】
MOSFET 1の基本セルは、ボディ2の製造プロセスの第8のステップS8に続いて形成される。詳細には、1つの基本セルのみが図示されている図2Iを参照すると、ソース領域25(第1の導電性を有する)及びボディコンタクト領域28(第2の導電性を有する)が、存在する場合には、注入、拡散などのセクタで知られている形成技術によって画定される。
【0056】
各ソース領域25及び各ボディコンタクト領域28は、エピタキシャル層22の前面2aから始まり、それぞれの浅いボディ領域20において、かつ例えば0.2μm及び2μmのそれぞれの深さにわたって延在する。ソース領域25は、典型的にはドリフト領域101のNドーピングレベルよりも大きく、1×1018~1×1020原子/cmのオーダーの、N+で示されるドーピングレベルを有し、各々が軸Xに沿って例えば2μmの広がりを有する。ボディコンタクト領域28は、1×1018~1×1020原子/cmのオーダーのP+で示されるドーピングを有する。
【0057】
このようにして、図1のMOSFET 1の第2の層22が完了し、実際にはボディ2全体も完了する。
【0058】
次に、複数のゲート領域35が、セクタの典型的な技術を使用して、堆積及びリソグラフィ画定のステップによってボディ2の前面2a上に形成される。ゲート領域35は各々、ボディ2の前面2aに接触するゲート絶縁層36(例えば酸化シリコン)と、ゲート絶縁層36に直接重なるゲート導電層37(例えば、ポリシリコン層)と、ゲート導電層37を覆い、ゲート絶縁層36とともにゲート導電層37を封止するパッシベーション層38と、によって形成される。詳細には、各ゲート領域35のゲート絶縁層36は、第2のCSL 40のそれぞれの部分の上、第2のCSL 40の当該それぞれの部分に隣接してその部分を区切る2つのチャネル領域27上、及びそれぞれのチャネル領域27に隣接する2つのソース領域25上に部分的に延在する。ゲート領域35のゲート導電層37は、ここでは図示されていない方法で電気的に並列に接続され、MOSFET 1のゲート端子Gを形成する。
【0059】
MOSFET 1は、例えば金属材料及び/又は金属シリサイドのソースメタライゼーション領域26を更に備え、これは、MOSFET 1のソース端子Sを形成し、ボディ2の前面2aの上に延在し、ソース領域25及びボディコンタクト領域28と直接電気的に接触している。ボディコンタクト領域28は、実際には、ソース端子Sの電位で、浅いボディ領域20、したがって深いボディ領域15をバイアスするために使用される。
【0060】
最後に、MOSFET 1は、導電性材料、例えば、金属又はシリサイドのドレインメタライゼーション領域11を備え、これは、基板10と直接電気的に接触してボディ2の後面2bの上に(ソースメタライゼーション領域26と反対の方向に)延在し、MOSFET 1のドレイン端子Dを形成する。
【0061】
本開示のプロセスの様々な実施形態に従って製造されたMOSFET 1は、改善された電気的性能を呈する。含有される注入エネルギーの使用は、おそらくチャネリング現象のおかげで、ドーパントイオンの低減された横方向分散を得ることを可能にし、したがって、制御され得、設計段階で確立されたものと一致する、ボディ2におけるドーパントイオンの濃度プロファイルを得ることを可能にする。更に、第1及び第2の層12、22が、含有される注入エネルギーを使用して画定されることを仮定すると、薄いマスクを使用することが可能であり、そのため、より大きな横方向の画定を得ることがより容易である。
【0062】
既に注入された領域(ここでは、例えば、チャネル注入で得られる)上にランダム注入条件(すなわち、チャネリングがない)で実施される意図的に損傷させた領域(IDR)に頼る技術は、具体的には、損傷後のステップで形成される領域が、例えば、異なるドーピングレベル又は反対のドーピングレベルを示す既に存在する領域に対して自己整合され得るので、横方向の画定を更に改善することを可能にする。損傷によってチャネリングを局所的に変化又は抑制することによって、実際に、(チャネリングによって)後続のステップで形成される領域の広がりを随意に選択し、既に存在する領域を後続のチャネリング注入から保護し、その所望のドーピングレベルを保持することが可能である。表面的に損傷された領域は、実際に、その後のチャネル注入に関して注入マスクとして作用する。
【0063】
このようにして、エピタキシャル成長させた(ここではシリコンカーバイドの)層内で、層自体の寸法に沿って(ここでは例えば平面XYにおいて)及び層の重ね合わせの方向に(ここでは軸Zに沿って)可変であり得るプロファイルを用いて、ドーピングレベルを正確に、かつより低い生産コスト(含有される注入エネルギー、自己整合)で規定することが可能である。
【0064】
MOSFET 1において、これは、ボディ領域とドレイン領域との間の接合を規定する際に、及び導電チャネルの濃度を制御する際に、より大きな柔軟性をもたらし、微細化方向におけるMOSFET 1のスケーラビリティに関して、したがって基本セルの数の増加に関して、全体的な利益を伴う。
【0065】
第1及び第2の寸法L、Lは、第1及び第2の厚さT、T、並びに第1及び第3のドーピングレベルP1、P2と同様に、実際には、MOSFET 1の電気的性能に対応するMOSFET 1の設計パラメータである。詳細には、深いボディ領域15及び浅いボディ領域20は、ボディ2の強い電界に関して、ボディ2に重なる層、具体的には、ゲート絶縁層36を遮蔽する機能を有する全体的なボディ構造を形成する。改善された遮蔽は、結果として、パワーデバイスの低減されたスイッチングオン電圧をもたらし得る。
【0066】
深いボディ領域15の存在は、MOSFET 1がオフ状態にあり、ソース端子Sとドレイン端子Dとの間の電圧(VDS)が高いとき、例えば、400Vよりも高いとき、電界のより高い値が、前面2aから離れたボディ2の深さにおいて得られることを意味する。これにより、電界は、ボディ2のより浅い部分(ここでは第2のCSL 40)において、具体的にはゲート絶縁層36の近傍において、より低い値をとる。結果として、MOSFET 1は、信頼性の高い性能を呈する。
【0067】
第1及び第2の寸法L、L、並びに同時に第1及び第2の厚さT、T、並びに第1及び第3のドーピングレベルP1、P2は、個々の基本セルの寸法に関しても、所望の電気的パラメータ(正確には電界に対する遮蔽など)を得るために機能するボディ構造に対する形状(MOSFET 1では、例えば逆Tの形状)及びドーピングプロファイルを提供するように選択される。
【0068】
同時に、第1及び第2のCSL 30、40も電流拡散構造を形成し、その寸法(ボディ構造の形状及び寸法に関連して)及びそのドーピングプロファイルは、本開示の様々な実施形態によるプロセスによって柔軟に選択され得る。具体的には、異なるCSLの間の異なるドーパント濃度は、チャネル濃度の、したがってデバイスの電気パラメータの効果的な変調を可能にし、更に、使用中のボディ領域のピンチング及びオン状態抵抗の制御されない変動などの望ましくない現象に対抗する。
【0069】
最後に、付属の特許請求の範囲において定義される本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明及び図示されるものに対して修正及び変形が行われ得ることが明らかである。
【0070】
例えば、ボディ構造は、図示されたものとは異なる形状を有してもよい。深いボディ領域は、浅いボディ領域よりも(軸Xに沿って)広がりが小さくてもよく、この場合、浅いボディ領域は、第1のCSLに少なくとも部分的に重なり、それと接触する。あるいは、深いボディ領域及び浅いボディ領域は、(軸Xに沿って)同一の広がりを有してもよい。
【0071】
製造プロセスの変形例(図示せず)では、第1及び第2のCSL 30、40のチャネリングイオン注入は、前述の第1及び第2の厚さT、Tよりも小さい又は大きいそれぞれの深さを規定するようなものである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】