(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028912
(43)【公開日】2025-03-05
(54)【発明の名称】医療用チューブの先端位置検出システム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/095 20060101AFI20250226BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20250226BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20250226BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20250226BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20250226BHJP
F21V 7/04 20060101ALI20250226BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20250226BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250226BHJP
【FI】
A61M25/095
A61J3/00 310Z
G02B6/00 301
F21S2/00 610
F21V8/00 230
F21V8/00 241
F21V8/00 267
F21V7/04 400
F21V7/04 500
F21V7/00 300
G02B6/00 326
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024202423
(22)【出願日】2024-11-20
(62)【分割の表示】P 2021537306の分割
【原出願日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2019143894
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(71)【出願人】
【識別番号】519285857
【氏名又は名称】MDI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599045903
【氏名又は名称】学校法人 久留米大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】幸 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】望月 学
(72)【発明者】
【氏名】今村 保夫
(72)【発明者】
【氏名】木下 正啓
(72)【発明者】
【氏名】岩田 欧介
(57)【要約】
【課題】患者に挿入されたチューブの先端の位置を、簡易、正確、且つ安全に検出する。
【解決手段】チューブ先端位置検出システム1は、光を発射する光源装置50と、液体が通過可能な流路11を有する中空のチューブ10と、チューブの基端の端面12に光源装置からの光が入射可能なように、チューブの基端に設けられたコネクタ20と、チューブの先端に設けられた発光部30とを備える。光源装置からの光は、チューブを通過して発光部から発射され体表面に透過する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に挿入されるチューブの先端の位置を検出するための医療用チューブの先端位置検出システムであって、
光を発射する光源装置と、
液体が通過可能な流路を有する中空のチューブと、
前記チューブの基端の端面に前記光源装置からの光が入射可能なように、前記チューブの基端に設けられたコネクタと、
前記チューブの先端に設けられた発光部とを備え、
前記光源装置からの光を前記チューブを通過させて前記発光部から発射させ、前記発光部からの光を体表面に透過させることを特徴とする医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項2】
前記光源装置が発射する光の波長は360nm~3000nmである請求項1に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項3】
前記コネクタは、前記チューブが挿入された筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に形成された雌ネジとを備える請求項1又は2に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項4】
前記チューブの基端の前記端面が、前記オス部材の先端の開口に露出している請求項3に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項5】
前記発光部は、前記チューブから出射した光を反射させる反射部材を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項6】
前記反射部材は、前記チューブの先端の端面に対向する側に、球面または錐面を備える請求項5に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項7】
前記反射部材はチタンからなる請求項5又は6に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項8】
前記反射部材が前記チューブに直接接触して設けられている請求項5に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項9】
前記反射部材が、金属蒸着層である請求項8に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項10】
前記発光部は、前記チューブから出射した光を屈折させる屈折部材を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項11】
前記発光部は、前記チューブを通過した光が屈折して出射するように形成された前記チューブの先端を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項12】
前記発光部は、前記チューブを貫通する孔、または、前記チューブの内面もしくは外面に設けられた凹部を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項13】
前記チューブを通過する光が前記チューブの外面から出射するのを防止するための漏れ光防止層が、前記チューブの外面に設けられており、
前記発光部において前記漏れ光防止層が除去されている請求項1~4,8~11のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項14】
前記発光部は、ハウジングを備え、
前記ハウジングに、前記チューブを通過した液体を外界に流出させることが可能な孔が設けられている請求項1~13のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項15】
前記発光部は、透光性を有するハウジングを備える請求項1~14のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項16】
前記チューブの外面の表面粗さRaは1.2μm以下である請求項1~15のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項17】
前記チューブの外面が、前記チューブより低屈折率の被覆材で覆われている請求項1~16のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【請求項18】
前記チューブの前記流路に挿抜可能なスタイレット又は光ファイバーを更に備える請求項1~17のいずれか一項に記載の医療用チューブの先端位置検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に挿入したチューブの先端の位置を検出するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床医療において、患者の体腔内に各種の医療用チューブを挿入して治療を行う経管栄養が広く行われている。例えば、咀嚼や嚥下が困難となった患者に対して外部から液状の栄養剤を補給するために、口又は鼻から挿入された医療用チューブ(経口・経鼻チューブと呼称される。以下、単に「チューブ」という。)を介して栄養剤を胃に直接的に送り込む経口・経鼻経管栄養が行われている。
【0003】
経口・経鼻経管栄養を行う場合には、チューブの先端が胃内に確実に位置している必要がある。チューブの気管・気管支への誤挿入は極めて危険である。患者の体内でのチューブ先端位置を正確に確認する必要がある。
【0004】
X線透視は、チューブ先端位置を確認する方法として最も確実である。しかしながら、確認のために患者をX線装置まで移動させる必要があり、患者の身体に対する負担が大きい。チューブは、数日にわたって患者に留置され続ける。その間、咳反射や嘔吐などによってチューブの先端が移動することがある。このため、所定時間ごとに先端の位置を確認する必要がある。そのたびにX線透視を行うと、患者の負担は一層大きくなり、また、X線被曝量も増大する。
【0005】
チューブを介して吸引した液体のpHを測定して、チューブの先端が胃内にあるか否かを判定する方法が用いられることもある。しかしながら、この方法は、胃酸分泌抑制がされている患者に対しては信頼性が低下する。
【0006】
特許文献1には、予め光ファイバーを挿入したチューブを患者に挿入し、光ファイバーの先端から放射される光を体外から観察することにより、チューブ先端位置を確認する方法が記載されている。この方法は、簡易であり、患者負担は少ない。
【0007】
しかしながら、チューブを介して栄養剤を胃に送り込むためには、光ファイバーをチューブから引き抜く必要がある。その後、光ファイバーをチューブに再挿入することは、挿入される光ファイバーがチューブを損傷させ、チューブの損傷箇所から光ファイバーが突出して消化管壁を損傷させる等の事故を生じさせうる。このため、特許文献1の方法は、最初にチューブを患者に挿入するときにのみ使用可能であり、その後の、チューブ先端位置の定期的な確認には使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2015/133119A1
【特許文献2】特開2015-119837号公報
【特許文献2】特開2018-029753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、患者に挿入されたチューブの先端の位置を、簡易、正確、且つ安全に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、患者に挿入されるチューブの先端の位置を検出するための医療用チューブの先端位置検出システムに関する。前記システムは、光を発射する光源装置と、液体が通過可能な流路を有する中空のチューブと、前記チューブの基端の端面に前記光源装置からの光が入射可能なように、前記チューブの基端に設けられたコネクタと、前記チューブの先端に設けられた発光部とを備える。前記光源装置からの光を前記チューブを通過させて前記発光部から発射させ、前記発光部からの光を体表面に透過させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、患者に挿入されたチューブの先端の位置を、簡易、正確、且つ安全に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1にかかる医療用チューブの先端位置検出システムの概略構成を示す。
【
図2】
図2Aは、本発明の実施形態1にかかるコネクタの斜視図である。
図2Bは、コネクタの断面図である。
【
図3】
図3Aは、本発明の実施形態1にかかる発光部の斜視図である。
図3Bは、発光部の断面図である。
【
図4】
図4Aは、本発明の実施形態1の別の発光部の断面図である。
図4Bは、発光部の反射部材の反射面の正面図である。
【
図5】
図5Aは、本発明の実施形態1の更に別の発光部の断面図である。
図5Bは、発光部の反射部材の反射面の正面図である。
【
図7】
図7Aは、本発明の実施形態2にかかる発光部の斜視図である。
図7Bは、発光部の断面図である。
【
図8】
図8Aは、本発明の実施形態2にかかる発光部の先端側から見た分解斜視図である。
図8Bは、発光部の基端側から見た分解斜視図である。
【
図9】
図9Aは、本発明の実施形態2の別の発光部の断面図である。
図9Bは、発光部の先端側から見た分解斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態2の更に別の発光部の断面図である。
【
図13】
図13Aは、本発明の実施形態3の更に別の発光部の斜視図である。
図13Bは、発光部の断面斜視図である。
【
図14】
図14Aは、本発明の実施形態3の更に別の発光部の斜視図である。
図14Bは、発光部の断面斜視図である。
【
図15】
図15Aは、本発明の実施形態3の更に別の発光部の斜視図である。
図15Bは、発光部の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の本発明のシステムにおいて、前記光源装置が発射する光の波長は360nm~3000nmであってもよい。この波長の光は、人体に対する透過率が高いので、チューブ先端位置を検出するのを容易にする。また、この波長の光は、人体に対して低侵襲であるので、安全性に優れる。
【0014】
前記コネクタは、前記チューブが挿入された筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に形成された雌ネジとを備えていてもよい。これにより、従来の経口・経鼻チューブの代わりに本発明のコネクタを備えたチューブを使用して、経口・経鼻経管栄養を行うことができる。チューブがオス部材に挿入されているので、チューブの基端の端面に光源装置からの光を入射させるのが容易である。
【0015】
前記チューブの基端の前記端面が、前記オス部材の先端の開口に露出していてもよい。かかる態様は、チューブの基端の端面に光源装置からの光を入射させるのに有利である。
【0016】
前記発光部は、前記チューブから出射した光を反射させる反射部材を含んでいてもよい。反射部材は、チューブから出射した光を、半径方向(チューブの長手方向に対して垂直な方向)を含む様々な方向に反射させる。このため、患者の体内での発光部の向きにかかわらず、発光部からの光を患者の体表面から観察することが容易になる。
【0017】
前記反射部材は、前記チューブの先端の端面に対向する側に、球面または錐面を備えていてもよい。これは、簡単な構成で、チューブから出射した光を、半径方向を含む様々な方向に反射させることを可能にする。
【0018】
前記反射部材はチタンからなっていてもよい。チタンは防食性や生体適合性に優れるので、かかる態様は、長期間にわたって良好な光反射特性を維持するのに有利である。
【0019】
前記反射部材が前記チューブに直接接触して設けられていてもよい。かかる態様は、発光部の構成の簡単化、及び、発光部が設けられたチューブの製造の容易化に有利である。かかる態様では、発光部においてハウジングを省略することができる。
【0020】
前記反射部材が、金属蒸着層であってもよい。かかる態様によれば、チューブに反射部材を容易に設けることができる。
【0021】
前記発光部は、前記チューブから出射した光を屈折させる屈折部材を含んでいてもよい。屈折部材は、チューブから出射した光を、半径方向を含む様々な方向に屈折させる。このため、患者の体内での発光部の向きにかかわらず、発光部からの光を患者の体表面から観察することが容易になる。
【0022】
前記発光部は、前記チューブを通過した光が屈折して出射するように形成された前記チューブの先端を含んでいてもよい。かかる態様によれば、チューブを通過した光は、半径方向を含む様々な方向に屈折されてチューブから出射する。このため、患者の体内での発光部の向きにかかわらず、発光部からの光を患者の体表面から観察することが容易になる。
【0023】
前記発光部は、前記チューブを貫通する孔、または、前記チューブの内面もしくは外面に設けられた凹部を含んでいてもよい。かかる態様によれば、チューブを通過した光は、孔または凹部にて屈折されてチューブから半径方向を含む様々な方向に出射する。このため、患者の体内での発光部の向きにかかわらず、発光部からの光を患者の体表面から観察することが容易になる。
【0024】
前記チューブの外面に、前記チューブの外面からの漏れ光を防止するための漏れ光防止層が設けられていてもよい。前記発光部において前記漏れ光防止層が除去されていてもよい。かかる態様によれば、チューブを通過した光は、漏れ光防止層が除去された領域から屈折されて半径方向を含む様々な方向に出射する。このため、簡単な方法で、患者の体内での発光部の向きにかかわらず、発光部からの光を患者の体表面から観察することが可能になる。
【0025】
前記発光部は、ハウジングを備えていてもよい。前記ハウジングに、前記チューブを通過した液体を外界に流出させることが可能な孔が設けられていてもよい。かかる態様によれば、チューブの流路を通過した液体を、ハウジングの孔を介して患者に投与することが可能になる。また、ハウジングを利用して、反射部材又は屈折部材を、チューブの先端の端面に対して所望する位置に保持することが可能になる。
【0026】
前記発光部は、透光性を有するハウジングを備えていていてもよい。かかる態様によれば、チューブの先端から出射した光がハウジングを通過する際の光損失が少なくなる。これは、発光部の明るさを確保するのに有利であり、チューブ先端位置を検出するのを容易にする。
【0027】
前記チューブの外面の表面粗さRaは1.2μm以下であってもよい。かかる態様によれば、光がチューブを通過する際の光損失が少なくなる。これは、発光部の明るさを確保するのに有利であり、チューブ先端位置を検出するのを容易にする。
【0028】
前記チューブの外面が、前記チューブより低屈折率の被覆材で覆われていてもよい。かかる態様によれば、光がチューブを通過する際の光損失が少なくなる。これは、発光部の明るさを確保するのに有利であり、チューブ先端位置を検出するのを容易にする。
【0029】
本発明のシステムが、前記チューブの前記流路に挿抜可能なスタイレット又は光ファイバーを更に備えていてもよい。スタイレット及び光ファイバーは、チューブの挿入性を向上させる。また、スタイレットは、X線透視によりチューブの位置を確認するのを可能にする。光ファイバーは、発光部の明るさを向上させ、チューブ先端位置を検出するのを容易にする。
【0030】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
【0031】
(実施形態1)
図1は、経口・経鼻経管栄養に適用した本発明の実施形態1にかかるシステム1の概略構成を示す。経口・経鼻チューブ(以下、単にチューブという)10が患者90の鼻腔から挿入され、その先端は胃91に達している。チューブ10は、湾曲変形が可能な可撓性を有している。チューブ10は、その全長にわたって連続する流路11(後述する
図2B、
図3B参照)が形成された中空の筒状物である。栄養剤等の液体は、流路11を通って患者の胃91に投与される。チューブ10の基端にはコネクタ20が設けられている。チューブ10の先端には、発光部30が設けられている。コネクタ20は、光源装置50に繰り返し接続及び分離が可能である。コネクタ20を光源装置50に接続したとき、光源装置50に内蔵された光源(図示せず)からの光は、チューブ10を通過して発光部30から発射される。発光部30からの光は患者90の身体を透過して体表面を光らせる。術者は、患者90の体表面での発光位置からチューブ10の先端の位置を確認することができる。
【0032】
図2Aはコネクタ20の斜視図であり、
図2Bはコネクタ20の断面図である。コネクタ20は、筒形状のオス部材21を備えるオスコネクタである。オス部材21の外周面22は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)である。円筒形状の外筒23が、オス部材21と同軸に配置されている。外筒23は、オス部材21から半径方向に離間し、オス部材21を取り囲んでいる。外筒23のオス部材21に対向する内周面には雌ネジ24が設けられている。オス部材21の先端は、外筒23の先端から突出している。筒状の基筒27が、オス部材21と同軸に、オス部材21とは反対側に向かって延びている。貫通孔29が、オス部材21の先端から基筒27の先端まで、コネクタ20を貫通している。チューブ10が、基筒27からオス部材21まで、貫通孔29に挿入されている。チューブ10の基端に、平坦な端面12が形成されている。端面12は、チューブ10の長手方向に垂直である。端面12は、オス部材21の先端の開口に露出され、オス部材21の先端面と共通する一平面を構成している。チューブ10は、例えば基筒27の位置において、貫通孔29の内面と接着等によりコネクタ20に固定されている。
【0033】
コネクタ20(特にオス部材21の外周面22及び雌ネジ24)は、経口・経鼻経管栄養に一般的に用いられる経口・経鼻チューブの基端に設けられるオスコネクタ(例えば特許文献2,3参照)と互換性を有するように構成されている。従って、従来の経口・経鼻チューブの代わりにコネクタ20を備えたチューブ10を使用して、経口・経鼻経管栄養を行うことができる。
【0034】
コネクタ20は、硬い材料(硬質材料)からなり、外力によって実質的に変形しない機械的強度(剛性)を有している。具体的には、コネクタ20の材料は、制限はないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、硬質ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)等の樹脂を用いることができる。コネクタ20は、上記の樹脂を用いて、射出成形法等により全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0035】
図3Aは発光部30の斜視図であり、
図3Bは発光部30の断面図である。発光部30は、反射部材31とハウジング35とを備える。ハウジング35は、全体として、その長手方向の一端(先端)がドーム状(半球状)に膨らみ、他端(基端)が開口した、中空の砲弾形状を有する。ハウジング35の開口にチューブ10の先端が挿入されている。ハウジング35は、チューブ10に、接着等により液密に固定されている。反射部材31は、球形を有し、ハウジング35の内腔36の最深部に収容されている。チューブ10の先端に、平坦な端面13が形成されている。端面13は、チューブ10の長手方向に垂直である。反射部材31は、端面13に対向し且つ端面13から離間している。反射部材31の中心は、チューブ10の中心軸上に位置する。反射部材31の外径は、制限されないが、チューブ10の外径と同じか、これよりわずかに大きいことが好ましい。チューブ10を通過し端面13から出射した光は、反射部材31の球面32で反射され、ハウジング35を通過する。
【0036】
ハウジング35に、ハウジング35を半径方向に貫通する孔(側孔)37が設けられている。ここで、「半径方向」とは、チューブ10の中心軸(これは反射部材31の中心を通る)に直交する直線の方向を意味する。孔37は、端面13と反射部材31との間の、ハウジング35の内腔36とハウジング35の外界とを連通させている。本実施形態1では、2つの孔37が設けれているが、孔37の数は1つまたは3つ以上であってもよい。
【0037】
反射部材31は、不透光性材料で構成されうる。不透光性材料は、制限されないが、チタン、ステンレス鋼、コバルト合金、アルミニウム、鉄等の金属が好ましい。チタン、ステンレス鋼、コバルト合金は、防食性や生体適合性に優れ、長期間にわたって良好な光反射特性を維持することができる。中でも、チタンが好ましい。ステンレス鋼、アルミニウム、鉄は、安価である。チタン、アルミニウム等は、非磁性体または低磁性体であるので、MRI検査時に吸引されにくい。反射部材31の球面32は、端面13から出射した光を反射する反射面として機能するように、光沢を有することが好ましく、特に鏡面加工されていることが好ましい。反射部材31は、チューブ10を消化管に挿入しやすくするための錘としても機能しうる。チューブ10の先端部に必要な荷重を確保するために、ハウジング35内に、反射部材31とは別の錘が収容されていても良い。この場合、別の錘は、反射部材31に対して端面31とは反対側に配される。
【0038】
反射部材31は、透光性材料で構成されてもよい。透光性材料であっても、端面13から出射した光の少なくとも一部を反射することができれば、反射部材31として使用することができる。透光性材料は、プラスチック、ガラス等であってもよい。プラスチック、ガラスは、低電気伝導体であるので、MRI検査時に発熱による火傷等が生じない。透光性材料の表面に、光を反射させるための加工(反射加工)が施されていてもよい。反射加工としては、制限されないが、例えば、各種コーティング、梨地加工、金属蒸着、鏡面加工等を例示できる。反射部材31は、鏡であってもよい。
【0039】
反射部材31に入射した光の一部は反射部材31の表面で反射され、残りの光は反射部材31に入射してもよい。この場合、光は、反射部材31に入射する際、及び、反射部材31から出射する際に、屈折してもよい。即ち、反射部材31が、屈折部材(後述する実施形態2参照)としても機能してもよい。
【0040】
ハウジング35の材料は、制限されないが、透光性と柔軟性とを備えることが好ましく、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、シリコーン、アクリル、ポリプロピレン等の樹脂を用いることができる。
【0041】
チューブ10の材料は、制限されないが、柔軟性と透光性とを備えることが好ましく、例えば、ポリウレタン、アクリル、シリコーン、ポリエチレン、スチレン系エラストマー、ポリブタジエン等の樹脂を用いることができる。
【0042】
本実施形態1では、基端の端面12(
図2B参照)から入射した光が、チューブ10(チューブ10の内面と外面との間の、チューブ10の厚さを構成する部分、以下「チューブ10の厚み部分」という)を透過して先端の端面13(
図3B参照)から出射し、発光部30が発光する。発光部30の明るさ(光束)を確保するためには、端面12から端面13までの間での光損失を少なくすることが好ましい。このためには、端面12から端面13までの間でチューブ10の外面から外界に出射する光(漏れ光)を低減することが有効である。漏れ光を低減する手段としては、制限されないが、例えば、(1)チューブ10の外面を平滑化する、(2)チューブ10の外面を、チューブ10より低屈折率の被覆材で覆う、(3)チューブ10の外面に、銀、アルミニウム等の金属蒸着層を設ける、(4)チューブ10を、高屈折率の内層と低屈折率の外層との二層構造にする、等のうちの1つまたは2つ以上の組み合わせを採用しうる。
【0043】
上記(1)に関して、チューブ10の外面の表面粗さRaは、1.2μm以下、更に1.0μm以下、特に0.4μm以下であることが好ましい。チューブ10の外面を平滑化するための方法は、制限されないが、例えばチューブ10の樹脂材料を口金から押し出し成形する場合に、口金温度を通常より高く設定する方法を採用しうる。
【0044】
上記(2)に関して、チューブ10の外面を覆う被覆材としては、チューブ10の材料によるが、例えばシリコンオイル、フッ素、UV硬化型低屈折率材料を例示することができる。これらはチューブ10を構成する上記樹脂材料より低屈折率であるので、チューブ10内部から被覆材層へ出射する光が低減する。チューブ10の外面をフッ素で覆う方法としては、制限されないが、液体のフッ素をチューブ10の外面に塗布する方法、フッ素ガスをチューブ10の外面に噴霧する方法、等を例示できる。
【0045】
上記(4)に関して、二層構造のチューブ10は、屈折率が異なる2種類の材料を、高屈折率材料が内層、低屈折率材料が外層となるように、二層共押出成形することで製造しうる。あるいは、チューブ10が、低屈折率の内層及び外層と、これらの間の高屈折率の中間層とからなる三層構造を有していてもよい。チューブ10が、更なる多層構造(例えば五層構造)を有していてもよい。いずれの場合も、光は、高屈折率層を通過する。
【0046】
発光部30の明るさ(光束)を確保するためには、チューブ10の端面12,13での光損失を低減することも有効である。このためには、端面12,13が平滑であることが好ましく、具体的には端面12,13の表面粗さRaが1.2μm以下、更に1.0μm以下、特に0.4μm以下であることが好ましい。このような平滑な端面12,13は、例えば端面12,13を研磨加工することにより得ることができる。
【0047】
図1に戻り、光源装置50は、光を発射する光源(図示せず)を備える。光は、可視光又は近赤外光であることが好ましく、光の波長は、制限されないが、360nm以上、更には630nm以上であることが好ましく、3000nm以下、更には780nm以下であることが好ましい。この範囲の波長の光は、人体に対する透過率が高く、且つ、人体に対して低侵襲であり安全性が高い。可視光は、肉眼で観察可能であるため、発光部30の位置を容易に確認できる。近赤外光は、可視光よりも透光性に優れ、赤外線カメラ等の専用カメラを介して観察可能である。カメラを用いることにより、撮影した画像(静止画及び動画のいずれでもよい)を記録として残すことが容易である。具体的には、可視光として波長が630nmの光を、また、近赤外光として波長が780nmの光を用いうる。光源としては、発光ダイオード(LED)を使用することができる。光源装置50は、コネクタ20を着脱可能なソケット(差し込み口)51を備える。光源は、コネクタ20をソケット51に接続したとき、チューブ10の端面12に対向するように配置されている。光源は、端面12に光を効率良く入射させることができるように、レンズを備えていても良い。ソケット51は、コネクタ20のソケット51に対する着脱に連動して光源の発光がオン/オフされるスイッチ(図示せず)を備えていてもよい。これは、コネクタ20が接続されていないときに光源装置50から発射された光が術者や患者の目に入るのを確実に防止するのに有利である。光源装置50は、複数のソケット51を備えていてもよく、この場合、複数のソケット51のそれぞれは互いに異なる波長の光を発する光源を備えてもよい。例えば、第1ソケットは630nmの波長の光を発射する光源を備えていてもよく、第2ソケットは780nmの波長の光を発射する光源を備えていてもよい。あるいは、単一のソケット51に対して、異なる波長の光を発する複数の光源(例えば630nmの波長の光を発射する第1光源と780nmの波長の光を発射する第2光源)を切り替えることができるように構成されていてもよい。光源装置50の電源は、商用電源及び電池(蓄電池を含む)のいずれであってもよい。電源として電池を用いた場合、光源装置50の携帯性の向上、小型化、軽量化が容易になる。
【0048】
本実施形態1のシステム1の使用方法を説明する。
【0049】
一般的な経口・経鼻チューブと同様に、チューブ10を患者90の鼻腔に挿入する。コネクタ20を光源装置50に接続すると、発光部30が発光する。発光部30からの光は、人体を透過する。術者は、患者90の体表面での発光位置から、発光部30の位置を確認することができる。光は、その波長によっては肉眼で観察可能である。必要に応じて赤外線カメラで撮影して発光位置を確認してもよい。コネクタ20は、チューブ10を患者90に挿入する前から光源装置50に接続しておいてもよいし、発光部30が胃に到達したと思われる時点で光源装置50に接続してもよい。
【0050】
あらかじめスタイレットを流路11に挿入したチューブ10を患者90に挿入してもよい。スタイレットの基端はコネクタ20から導出することができる。この場合、スタイレットをチューブ10から引き抜いたのち、コネクタ20を光源装置50に接続する。
【0051】
光ファイバーを、その先端が発光部30に達するように流路11に挿入したチューブ10を患者90に挿入してもよい。光源装置50を用いて、発光部30に加えて、光ファイバーの先端も発光させる。発光部30からの光束が増大するので、発光部30の位置をより正確に確認することができる。チューブ10の先端が胃に到達したのを確認後、光ファイバーをチューブ10から引き抜く。
【0052】
チューブ10にスタイレット又は光ファイバーを挿入した場合には、チューブ10単体の場合に比べて、チューブ10の曲げ弾性率や強度が増大するので、チューブ10の人体に対する挿入性が向上する。スタイレットや光ファイバーはチューブ10よりも高い曲げ弾性率を有することが好ましい。チューブ10よりも高い曲げ弾性率のスタイレットや光ファイバーは、チューブ10よりも低い曲げ弾性率のそれらよりもチューブ10に対する組み立て性に優れる。
【0053】
チューブ10を最初に患者に挿入する際、チューブ10の位置をより正確に確認するために、X線透視を併用してもよい。ハロゲン化物は、X線透視下で確認できることが知られている。ハロゲン化物を、チューブ10に含ませることができる。具体的には、チューブ10の外面にハロゲン化物をコーティングする、チューブ10を構成する材料にハロゲン化物を練り込む、チューブ10を構成する樹脂にハロゲン化物を重合させる、等の方法によりチューブ10にX線造影性を備えさせることができる。チューブ10に光ファイバーを挿入する場合には、上記と同様の方法により光ファイバーにハロゲン物を含ませて、光ファイバーにX線造影性を備えさせてもよい。スタイレットは金属細線を含み、X線造影性を有している。このため、チューブ10にスタイレットを挿入する場合には、チューブ10にX線造影性を備えさせる必要はない。
【0054】
チューブ10の先端(即ち、発光部30)が胃に到達したのを確認後、コネクタ20を、栄養剤を搬送するチューブの下流端に設けられたコネクタ(メスコネクタ)に接続する(例えば、特許文献3の
図16A参照)。栄養剤は、チューブ10の流路11を通過し、ハウジング35の孔37を通って患者に投与される。
【0055】
チューブ10は、数日にわたって患者90に留置される。この間にチューブ10がカールアップする等して発光部30が移動することがある。このため、所定時間ごと(例えば栄養剤を患者90に投与する直前)に、コネクタ20を光源装置50に接続し、発光部30を発光させて、その位置を確認する。
【0056】
以上のように、本実施形態1によれば、チューブ10の先端に設けた発光部30を発光させ、発光部30からの光を患者90の身体を介して観察する。このため、チューブ10の先端の位置を簡易且つ正確に検出することができる。発光部30から発せられる光は、X線とは異なり、安全性が高い。反射部材31は端面13からの光を様々な方向に反射するので、発光部30の向きにかかわらず、発光部30からの光を患者90の体表面から観察することができる。
【0057】
上述した特許文献1では、チューブ先端位置を確認するためには、チューブに光ファイバーを挿入する必要がある。チューブ10を患者に挿入し、光ファイバーを引き抜いてしまった後に、チューブ先端位置を再確認するためには、チューブに光ファイバーを再挿入する必要がある。これは、光ファイバーがチューブを貫通して消化管壁を損傷させるという事故を生じさせうる。これに対して、本実施形態1では、チューブ10自身が光の伝送路となり、チューブ10の先端に発光部30が設けられている。特許文献1では必須の光ファイバーが本実施形態1では不要である。このため、本実施形態1では、特許文献1で起こりうる上記の事故は起こりえない。チューブ10を患者90に挿入後、チューブ10の先端の位置をいつでも確認することができる。本実施形態1のシステム1は、安全性に優れる。
【0058】
本実施形態1では、チューブ10自身が導光部材として機能するため、チューブ10とは別に光ファイバーのような導光部材が不要である。このため、本実施形態1のシステム1は、構成は簡単であり、安価である。
【0059】
上記の実施形態では、発光部30が球形の反射部材31を備え、端面13から出射した光は反射部材31の球面32で反射された。しかしながら、本発明の反射部材はこれに限定されない。
【0060】
例えば、
図4A及び
図4Bに示すように、発光部30aが、四角錐面32aを反射面として備える反射部材31aを含んでいてもよい。四角錐面32aは、チューブ10と同軸に、端面13から離間し且つ対向して配置される。端面13から出射した光は、四角錐面32aで反射され、ハウジング35を通過する。反射部材31aが、四角錐面32aに代えて、三角錐面、五角錐面、等の任意の角錐面(好ましくは正角錐面)を備えていてもよい。
【0061】
あるいは、
図5A及び
図5Bに示すように、発光部30bが、円錐面32bを反射面として備える反射部材31bを含んでいてもよい。円錐面32bは、チューブ10と同軸に、端面13から離間し且つ対向して配置される。端面13から出射した光は、円錐面32bで反射され、ハウジング35を通過する。反射部材31bは、円錐面32bとは反対側の平坦面33bと、円錐面32bと平坦面33bとをつなぐ円筒面34bとを備える。このような反射部材31bは、金属材料を切削(例えば旋盤切削)により容易に製造することができる。
【0062】
反射部材は、球面32及び凸錐面32a,32b以外の任意の凸曲面を、端面13に対向する側に反射面として備えていてもよい。反射部材の反射面は、凸面である必要はなく、凹面であってもよい。反射部材は、全体として塊形状を有している必要はなく、例えば、端面13に対向するリング形状を有していてもよい。リング形状の反射部材は、端面13から離間していてもよく、または、端面13に接触していてもよい(例えば後述する
図6A参照)。チューブ10の先端から流出した栄養剤が、リング形状の反射部材の中央の開口を通過するように構成してもよい。
【0063】
ハウジング35自身が反射部材としての機能を有していてもよい。例えば、ハウジング35に、端面13に対向する面を反射面として設ける。端面13から出射した光をハウジング35の当該反射面で反射させる。反射面は、球面、錐面、リング形状などの任意の形状を有していてもよい。反射面は、凸面に限定されず、凹面であってもよい。反射面は、端面13から離間していてもよく、または、端面13に接触していてもよい。ハウジング35が反射面を備える場合、発光部が、ハウジング35とは別部材として反射部材を備える必要がなくなる。このため、発光部の構成が簡単化される。なお、ハウジング35の反射面に入射した光の一部は、当該反射面に入射し、ハウジング35の外面から出射してもよい。光は、ハウジング35に入射する際、及び、ハウジング35から出射する際に、屈折してもよい。即ち、ハウジング35が、反射部材に加えて、屈折部材(後述する実施形態2参照)としても機能してもよい。ハウジング35の反射面に、金属蒸着層や各種コーティング層が設けられていてもよい。
【0064】
反射部材が、チューブ10に直接接触して設けられていてもよい。このような反射部材を、本発明では「直接接触型反射部材」という。例えば、
図6Aに示すように、発光部30cが、チューブ10の端面13に設けられた直接接触型反射部材31cを含んでいてもよい。あるいは、
図6Bに示すように、発光部30dが、チューブ10の内面の端面13近傍の領域に設けられた直接接触型反射部材31dを含んでいてもよい。あるいは、
図6Cに示すように、発光部30eが、チューブ10の内面の端面13からわずかに離れた領域に設けられた直接接触型反射部材31eを含んでいてもよい。直接接触型反射部材としては、制限されないが、金属蒸着層、各種コーティング層を例示でき、特に金属蒸着層が好ましい。あるいは、チューブ10とは別部材として作成した反射部材をチューブ10に固定して、直接接触型反射部材としてもよい。光は、チューブ10の厚み部分から直接接触型反射部材に入射し、当該反射部材で反射され、チューブ10の厚み部分を再度通過し、チューブ10(例えば、チューブ10の外面)から出射する。直接接触型反射部材を含む発光部は、構成が簡単であり、チューブに発光部を設けるのが容易である。また、発光部がハウジング35を備える必要がなくなる。ハウジング35を省略した場合、光がハウジング35を通過することによる光損失が生じない。さらに、チューブ10と反射部材との間に栄養剤が介在することにより光損失が生じるという事態が生じる可能性が低い。直接接触型反射部材は、チューブ10の外面に設けられていてもよい。
【0065】
一般に、患者の体内での発光部の向きを制御することは困難であるので、光は発光部から半径方向を含む様々な方向に出射することが好ましい。このためには、発光部は、より多くの光を、チューブ10の長手方向ではなく、略半径方向に沿って出射することが望まれる。
図6Bでは、チューブ10の端面13での開口を規定する開口端に、円錐面状の面取り13dを形成し、面取り13dにも反射部材31dを設けている。これにより、面取り13dに入射した光を、半径方向外向きに反射させることができる。端面13からチューブ10の長手方向に略沿って出射する光は相対的に少なくなる。
図6Cでは、反射部材31eが、端面13から離れて設けられている。多くの光は、反射部材31eで反射されて、チューブ10から略半径方向に沿って出射する。端面13に到達する光は少ない。このため、端面13からチューブ10の長手方向に略沿って出射する光は相対的に少なくなる。
【0066】
チューブ10からの光の出射を高めるために、漏れ光を低減するためにチューブ10に設けた低屈折率の被覆材や、金属蒸着層、低屈折率材料層等(以下、これらを総称して「漏れ光防止層」という)を、光が出射する領域において除去してもよく、これに加えて、または、これに代えて、チューブ10の外面の光が出射する領域に微細な凹凸を設けてもよい。「微細な凹凸」は、梨地面のような不規則な凹凸であってもよいし、ローレット加工面や蛇腹形状のような規則的な凹凸であってもよい。微細な凹凸は、チューブ10から光を様々な向きに出射させる拡散作用も有する。
【0067】
(実施形態2)
本実施形態2は、発光部に関して実施形態1と異なる。
図7Aは、本実施形態2の発光部230の斜視図である。
図7Bは、発光部230の断面図である。
図7Bに示されているように、本実施形態2の発光部230は、実施形態1の反射部材31(
図3B参照)に代えて、屈折部材231を備える。屈折部材231は、屈折率が異なる第1プリズム233と第2プリズム237とが組み合わされて構成される。
【0068】
図8Aは発光部230の先端側から見た分解斜視図、
図8Bは発光部230の基端側から見た分解斜視図である。
図8A及び
図8Bでは、ハウジング35(
図7A及び
図7B参照)の図示を省略している。第1プリズム233は、第2プリズム237に対向する凹錐面234と、チューブ10に対向する平坦面235と、凹錐面234の外周端縁と平坦面235の外周端縁とをつなぐ円筒面236とを備える。第2プリズム237は、第1プリズム233に対向する凸錐面238と、第1プリズム233とは反対側の凸曲面(球面)239とを備える。凹錐面234は、正四角錐面をこれと同軸の円筒面236で切断した形状を有している。凸錐面238は、凹錐面234と同じ幾何学的形状を有する。
図7Bに示されているように、凹錐面234の4つの側面と凸錐面238の4つの側面とが互いに面接触するように第1プリズム233と第2プリズム237とが接合され組み合わされる。第1プリズム233の平坦面235は、チューブ10の端面13に対して平行であり且つ離間している。第1プリズム233の円筒面236と第2プリズム237の凸曲面239とは、ハウジング35の内面に密着する。第1及び第2プリズム233,237は、チューブ10と同軸に配置される。第1及び第2プリズム233,237の外径は、制限されないが、チューブ10の外径と同じか、これよりわずかに大きいことが好ましい。
【0069】
第1プリズム233及び第2プリズム237は、透光性を有する硬質材料で構成される。第1及び第2プリズム233,237の材料は、制限はないが、光学材料として一般的に用いられている材料が好ましく、具体的には、ガラスや、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどの樹脂材料が好ましい。第1プリズム233及び第2プリズム237は、屈折率が異なる材料で構成される。
【0070】
チューブ10を通過し端面13から出射した光は、平坦面235に入射し、一部の光は凹錐面234と凸錐面238との接合面、凸曲面239及びハウジング35を順に通過し、別の一部の光は、円筒面236及びハウジング35を順に通過する。光は、平坦面235、凹錐面234と凸錐面238との接合面、凸曲面239、及び円筒面236等の、屈折率が変化する境界面(屈折面)を通過する際に屈折される。屈折部材231は端面13からの光を様々な方向に屈折させるので、実施形態1の反射部材31と同様に、発光部230の向きにかかわらず、発光部230からの光を患者90の体表面から観察することができる。
【0071】
上記の実施形態では、第1プリズム233と第2プリズム237との接合面(凹錐面234及び凸錐面238)の形状が、正四角錐面の一部であったが、本発明はこれに限定されない。第1プリズム233と第2プリズム237との接合面の形状が、任意の正多角錐面の一部であってもよく、あるいは円錐面であってもよい。第1プリズム233と第2プリズム237との接合面の形状は、錐面に限定されず、球面や任意の曲面であってもよい。第1プリズム233が凸面を備え、第2プリズム237が当該凸面と接合される凹面を備えてもよい。
【0072】
上記屈折面に入射した光の一部または全部が、接合面で反射されてもよい。
【0073】
屈折部材が、3つ以上のプリズムで構成されていてもよい。
【0074】
屈折部材が、単一のプリズムで構成されていてもよい。例えば、屈折部材が、第2プリズム237のみで構成されていてもよい。この場合、端面13から出射した光は、凸錐面238及び凸曲面239を通過する際に屈折される。
【0075】
第2プリズム237がハウジング35と同一材料を用いてハウジング35に一体化されていてもよい。この場合、第1プリズム233は、あってもよいし、省略してもよい。
【0076】
図9Aは、本実施形態2の別の発光部230aの断面図である。発光部230aは単一のプリズムからなる屈折部材231aを備える。
図9Bは、発光部230aの先端側から見た分解斜視図である。
図9Bでは、ハウジング35(
図9A参照)の図示を省略している。屈折部材(プリズム)231aは、チューブ10に対向する平坦面235aと、平坦面235aとは反対側の凸錐面234aと、平坦面235aの外周端縁と凸錐面234aの外周端縁とをつなぐ円筒面236aとを備える。凸錐面234aは、正四角錐面をこれと同軸の円筒面236aで切断した形状を有している。
図9Aに示されているように、平坦面235aは、チューブ10の端面13に対して平行であり且つ離間している。円筒面236aは、ハウジング35の内面に密着する。屈折部材231aは、チューブ10と同軸に配置される。端面13から出射した光は、平坦面235aに入射し、一部の光は凸錐面234a及びハウジング35を順に通過し、別の一部の光は、円筒面236a及びハウジング35を順に通過する。光は、平坦面235a、凸錐面234a、及び円筒面236a等の、屈折率が変化する境界面(屈折面)を通過する際に屈折される。凸錐面234aは、任意の角錐面または円錐面であってもよい。
【0077】
図10は、本実施形態2の更に別の発光部230bの断面図である。
図10の発光部230bでは、ハウジング35に、ハウジング35と同一材料の屈折部材(プリズム)231bが一体化されている。即ち、ハウジング35の内面に、凹錐面234bが設けられている。凹錐面234bは、正四角錐面をこれと同軸の円筒面(ハウジング35の内周面)で切断した形状を有している。凹錐面234bは、チューブ10と同軸に、端面13から離間し且つ対向して配置される。端面13から出射した光は、凹錐面234bに入射する際に屈折され、屈折部材231bを通過し、ハウジング35の外面から出射する。凹錐面234bは、任意の角錐面または円錐面であってもよい。
【0078】
屈折部材の屈折面の形状は、凸面(凸曲面または凸錐面)、凹面(凹曲面または凹錐面)、平面など、任意である。屈折面に、実施形態1で説明した微細な凹凸が設けられていてもよい。
【0079】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態2にも適用される。
【0080】
(実施形態3)
本実施形態3は、発光部に関して実施形態1,2と異なる。本実施形態3の発光部は、光がチューブ10から出射する際に屈折され様々な方向に出射するように形成されたチューブ10の先端を含む。
【0081】
図11Aは本実施形態3の発光部330の側面図、
図11Bは発光部330の斜視図である。発光部330は、実施形態1の反射部材31,31a~31eや実施形態2の屈折部材231,231a,231bを備えない。発光部330は、チューブ10の先端に形成された4つの楔形の切欠き331を含む。4つの切欠き331は、チューブ10の周方向に互いに隣接して等間隔で配置されている。各切り欠き331は、チューブ10の長手方向に平行な第1面331aと、第1面331aに対して傾斜した第2面331bとで構成される。切欠き331の最深部で、第1面331aと第2面331bとがつながる。
【0082】
チューブ10を通過した光は、第1面331a及び第2面331bから出射する際に屈折される。第1及び第2面331a,331bは、チューブ10の周方向に等角度間隔で配置されているので、第1及び第2面331a,331bのそれぞれを出射した光は、様々な方向に進む。実施形態1,2と同様に、発光部330の向きにかかわらず、発光部330からの光を患者90の体表面から観察することができる。
【0083】
発光部330は、実施形態1,2のハウジング35と同様のハウジングを備えていてもよい。切欠き331が形成されたチューブ10の先端は、ハウジング内に収納される。ハウジングは、チューブ10を消化管に挿入しやすくするための錘を内蔵していてもよい。錘は、切欠き331からチューブ10の長手方向に離間して配置される。
【0084】
切欠き331の形状は、上記の略直角三角形に限定されず、二等辺三角形など任意の三角形であってもよい。あるいは、切欠き331は、三角形以外の任意の多角形(例えば台形)や、任意の曲線であってもよい。また、切欠き331の数も、上記の実施形態に限定されない。切欠き331が周方向に等間隔で配置されていなくてもよい。
【0085】
上記の実施形態では、発光部330が複数の切欠き331を備えていたが、本発明はこれに限定されない。チューブ10を通過した光がチューブ10の長手方向に対して斜めに出射するように、光を屈折させる形状がチューブ10の先端に設けられていればよい。例えば、チューブ10の先端の端面が、内径が先端に向かって大きくなる円錐面や、外径が先端に向かって小さくなる円錐面であってもよい。この場合も、光を様々な方向に屈折させて出射させることができる。
【0086】
図12Aは、本実施形態3の別の発光部330aの斜視図である。
図12Bは、発光部330aの断面斜視図である。チューブ10の先端部分が、チューブ10の長手方向に沿った複数の切り込みによって複数の分岐部332に分割されている。複数の分岐部332は、半径方向外側に向かってフレア状に湾曲されている。周方向に隣り合う分岐部332は、互いに離間している。チューブ10を通過した光は、各分岐部332の側面及び先端面から出射する。光は、分岐部332の各面を出射する際に屈折される。複数の分岐部332が湾曲する向きが互いに異なるので、各分岐部332の各面を出射した光は、様々な方向に進む。発光部330aの向きにかかわらず、発光部330aからの光を患者90の体表面から観察することができる。複数の分岐部332が形成されるチューブ10の先端部分において、チューブ10に設けた漏れ光防止層が除去されていてもよい。
【0087】
図13Aは、本実施形態3の更に別の発光部330bの斜視図である。
図13Bは、発光部330bの断面斜視図である。チューブ10の先端部分が、半径方向内側に向かって湾曲されている。チューブ10の先端の端面13は、略凹円錐面を形成している。チューブ10を通過した光は、端面13から出射する。光は、端面13を出射する際に屈折される。端面13が略凹円錐面状に湾曲しているので、端面13を出射した光は、凸レンズから出射した光のごとく、一旦収束された後、発散する。このため、発光部330bの向きにかかわらず、発光部330bからの光を患者90の体表面から観察することができる。
【0088】
図14Aは、本実施形態3の更に別の発光部330cの斜視図である。
図14Bは、発光部330cの断面斜視図である。チューブ10の先端近傍に、チューブ10を半径方向に貫通するスロット状の複数の孔333が形成されている。チューブ10を通過する光の多くは、端面13に到達する前に、孔333の側面(孔333を規定する面であって、チューブ10の内面と外面とをつなぐ面)から出射する。光は、側面を出射する際に屈折される。複数の孔333が周方向に略等間隔で配置されているので、各孔333の側面を出射した光は、様々な方向に進む。端面13からチューブ10の長手方向に略沿って出射する光は相対的に少ない。発光部330cの向きにかかわらず、発光部330cからの光を患者90の体表面から観察することができる。孔333の長手方向は、チューブ10の長手方向に平行であってもよいが、
図14A及び
図14Bに示すように、チューブ10の長手方向に対してわずかに傾斜していることが好ましい。これは、発光部330cから光を広範囲に拡散して出射させるのに有利である。孔333の数は、任意である。
【0089】
図15Aは、本実施形態3の更に別の発光部330dの斜視図である。
図15Bは、発光部330dの断面斜視図である。チューブ10の先端近傍に、チューブ10を半径方向に貫通する略楕円形(または略円形)の1つ以上(本例では2つ)の孔334が形成されている。チューブ10を通過する光の一部は、端面13に到達する前に、孔334の側面(孔334を規定する面であって、チューブ10の内面と外面とをつなぐ面)から出射する。光は、側面を出射する際に屈折される。複数の孔334が周方向に離散的に配置されており、各孔334の側面が略楕円形(または略円形)の閉曲面を構成しているので、各孔334の側面を出射した光は、様々な方向に進む。端面13からチューブ10の長手方向に略沿って出射する光は相対的に少ない。発光部330dの向きにかかわらず、発光部330dからの光を患者90の体表面から観察することができる。孔334の数は、任意であるが、多い方が好ましく、具体的には4つ以上であることが好ましい。孔334の数が多いほど、発光部330dから光をより広範囲に拡散して出射させることができる。
【0090】
発光部330c,330dにおいて、孔333,334の形状は、任意であり、例えば、楕円形、円形、各種多角形(三角形、四角形、五角形など)、円弧形、「V」字形等であってもよい。孔333,334の数は、任意であり、複数である必要はなく、1つであってもよい。孔333,334の配置も任意である。複数の孔333,334を設ける場合、周方向に略等間隔であってもよいし、周方向に略等間隔でなくてもよい。チューブ10の周方向に沿って配置した複数の孔333,334の列を、チューブ10の長手方向の異なる複数の位置に設けてもよい。
【0091】
発光部330c,330dが、チューブ10を貫通する孔333,334に代えて、チューブ10を非貫通の凹部を有していてもよい。凹部は、チューブ10の内面及び外面のいずれに設けられていてもよい。光は、凹部を規定する面を出射する際に屈折される。
【0092】
チューブ10の先端の端面13、及び/又は、チューブ10の内面及び/又は外面の先端近傍の領域に、高屈折率層(チューブ10の材料より高屈折率である層)、または、実施形態1で説明した微細な凹凸を設けてもよい。あるいは、チューブ10の内面及び/又は外面の先端近傍の領域において、漏れ光防止層を除去してもよい。高屈折率層の付与、微細な凹凸の付与、及び、漏れ光防止層の除去のうちの2以上を組み合わせてもよい。光は、これらの処理が施された領域(発光領域)から屈折されて出射する。発光領域を設ける位置は任意である。実施形態1で説明した直接接触型反射部材を設ける位置と同様に、発光領域を、チューブ10の端面13からわずかに離れて設けることは、チューブ10の端面13に到達する光が少なくなるので、光を様々な方向に出射させるのに有利である。
【0093】
発光部330a~330dは、実施形態1,2のハウジング35と同様のハウジングを備えていてもよい。光が屈折されて出射するように構成されたチューブ10の先端部分は、ハウジング内に収納される。ハウジングは、チューブ10を消化管に挿入しやすくするための錘を内蔵していてもよい。錘は、チューブ10の先端から、チューブ10の長手方向に離間して配置される。
【0094】
以上のように、本実施形態3の発光部は、半径方向を含む様々な方向に光が出射するようにチューブ自身に設けられた構成を含む。本実施形態3の発光部は、実施形態1の反射部材や実施形態2の屈折部材を備える必要がない。このため、発光部を構成する部材数が少なく、発光部の構成が簡単である。また、チューブと反射部材または屈折部材が離間していることによって生じうる光損失は、本実施形態3では生じない。但し、本実施形態3の発光部に、実施形態1の反射部材または実施形態2の屈折部材を組み合わせてもよい。
【0095】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態3にも適用される。
【0096】
上記の実施形態1~3は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態1~3に限定されず、適宜変更することができる。
【0097】
上記の実施形態1~3では本発明を経口・経鼻経管栄養に適用したが、本発明はこれ以外の、チューブを人体に挿入する任意の分野に適用できる。例えば、動脈又は静脈にカテーテル(チューブ)を挿入する場合にも本発明を適用しうる。チューブを流れる液体は、栄養剤、薬剤、造影剤、血液など任意である。適用する分野に応じて、コネクタ、発光部、チューブなどの構成を変更しうる。
【0098】
チューブの基端に設けられるコネクタは、上記の実施形態1~3に示したオスコネクタ20に限定されない。コネクタが、雌ネジ24を備えていなくてもよく、更には外筒23を備えていなくてもよい。オス部材21の形状は任意に変更しうる。コネクタが、メスコネクタであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は医療分野において広範囲に利用することができる。例えば経管栄養、特に経口・経鼻経管栄養において本発明を好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 医療用チューブの先端位置検出システム
10 チューブ
11 流路
12 チューブの基端の端面
13 チューブの先端の端面
20 コネクタ
21 オス部材
23 外筒
24 雌ネジ
30,30a~30e,230,230a,230b,330,330a~330d 発光部
31,31a~31e 反射部材
32 球面
32a,32b 錐面
35 ハウジング
37 ハウジングの孔
231,231a,231b 屈折部材
333,334 チューブを貫通する孔
50 光源装置