IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニッシンの特許一覧 ▶ 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターの特許一覧

<>
  • 特開-フィルター 図1
  • 特開-フィルター 図2
  • 特開-フィルター 図3
  • 特開-フィルター 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028982
(43)【公開日】2025-03-05
(54)【発明の名称】フィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/18 20060101AFI20250226BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20250226BHJP
   B01D 33/04 20060101ALI20250226BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
B01D39/18
B01D39/16 A
B01D39/16 E
B01D33/04 F
B23Q11/00 U
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024206032
(22)【出願日】2024-11-27
(62)【分割の表示】P 2020124451の分割
【原出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】519101498
【氏名又は名称】株式会社ニッシン
(71)【出願人】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】作間 雄次
(72)【発明者】
【氏名】柳 捷凡
(57)【要約】
【課題】ろ紙単体に比べてろ過性能の劣化が小さく、もって大幅に上回る再使用回数が得られるフィルターを提供すること。
【解決手段】フィルター10は、フィルター躯体11の表面に補強層12が積層されロール状に巻かれてなり、連続して繰り出され被処理液の流通路を堰き止めるように張設され、かつ連続移動する状態において、被処理液をメッシュ孔に通流させ、被処理液中の固形不純物を捕捉するフィルター10であり、フィルター躯体11がロール状に巻かれるメッシュウエブ製であり、補強層12がフィルター躯体11の一方または両方の面に固着されるセルロースナノファイバーであり、所要厚さの薄膜状で網目構造に設けられ、フィルター躯体11に対し強度を補強するとともに、高く安定した捕捉性能を付与するセルロースナノファイバー層である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ孔を有するフィルター躯体と、前記フィルター躯体の表面に積層された補強層とがロール状に巻かれてなるフィルターにおいて、微粒子状の固形不純物を含む被処理液が流通路を流れて移動する過程で前記フィルター躯体が前記被処理液の流れを堰き止める状態にセットされることで、前記被処理液のうちの前記固形不純物を除いた部分を前記メッシュ孔に通流させ、前記被処理液中の固形不純物を前記流通路の前記フィルター躯体より下流側に通流させず捕捉するフィルターであって、
前記フィルター躯体が、ロール状に巻かれるメッシュウエブ製であり、
前記補強層が、前記フィルター躯体の一方または両方の面に固着される配向性が無いセルロースナノファイバーであり、所要厚さの薄膜状で網目構造に設けられるセルロースナノファイバー層であって、
前記補強層は、前記配向性が無いセルロースナノファイバーが前記フィルター躯体に突き刺さる構造を有する
ことを特徴とするフィルター。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーが、前記フィルター躯体に含浸している
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーの繊維において、前記フィルター躯体の繊維間で繊維同士が絡みついている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルター。
【請求項4】
前記フィルター躯体の前記メッシュ孔の大きさが所望の捕捉性能が得られる口径よりも大きく、前記セルロースナノファイバー層の網状構造が前記メッシュ孔に被さる
ことを特徴とする請求項1-3のうちのいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項5】
前記フィルター躯体は、ろ紙、ろ布、不織布、または単層メッシュフィルムのいずれか1つである
ことを特徴とする請求項1-4のうちのいずれか1項に記載のフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性液を通流させるとともに水性液中の固形不純物を捕捉する再使用可能なフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
砥石研削加工等において金属工作物の被加工面に供給され、潤滑・冷却・洗い流し等のために使われた後のクーラント液には、金属の切粉、砥粒などの固形分、および潤滑油や防錆油などの不純油を含んでいる。このため、クーラント液を循環して使い続けることは、研削精度の低下、ひいては工作物の品質の低下を惹き起こす要因となる。
【0003】
そこで、フィルターをロール状に巻かれた状態から繰り出し固形不純物を含む水性液の流れを堰き止める状態にセットし、フィルターを面方向に連続移動する。そして、フィルターに水性液を通流させるとともに固形不純物を捕捉する(特許文献1、2参照)。
【0004】
以下の特許文献1の説明で使用する符号は、各特許文献中で使用している符号である。
【0005】
特許文献1に示される連続濾過装置は、ロール体3から引き出される濾過フィルター4が、供給用ローラ20を介して濾過ドラム10の外周面に巻き付けられた後、排出用ローラ30を介して汚濁槽2の外部に導かれており、濾過ドラム10と排出用ローラ30とが回転することにより、濾過フィルター4を連続的に濾過ドラム10に巻き付けて移動しつつ、真空ポンプ5の負圧により汚濁液1の固形物と浄化液体とを濾過フィルター4を境界面として分離し、濾過フィルター4に付着した固形物を濾過フィルター4と共にガイドローラ60を介して回収容器70内に回収することができる。
【0006】
このように、特許文献1に示される連続濾過装置によれば、使用済みの濾過フィルター4は、回収容器70から回収し固形物が付着した状態で焼却処理され、再使用しない技術を提供している。
【0007】
濾過フィルター4を目詰まりによって一回のみの使用で廃棄しなければならない場合、濾過フィルター4をコストの増大、環境負荷の増大などを招来する。使用済みの濾過フィルター4を繰り返し利用するためには、フィルターに付着した固形分を付着面にブラッシングすることにより分離・除去し、次いで、付着面と反対側からノズル噴射により洗浄水を勢いよく噴射することによりフィルターの目詰りを解消し、次いで、フィルターに付着した不純油をフィルターから分離・除去することが必要になる。
【0008】
特許文献2に示される切削液の濾過装置は、被処理液がバツフルプレート12間を上昇する過程で沈降する被処理液中の粗粒度の切削屑をバツフルプレート12上に受けて滑落させ、濾過タンク1内底面を走行する排出コンベア14上に受け止められ折返し部14aに搬送されスクレーパ15で掻落されスラツジボツクス16内に回収し、バツフルプレート12間を上方へ通過した被処理液をスクリーンベルト濾材27の下側走行部分を上方へ通過させ、この際に微細粒度の切削屑をスクリーンベルト濾材27で捕捉する。
【0009】
スクリーンベルト濾材27を繰り返し使用すると、スクリーンベルト濾材27のメッシュ孔に微細粒度の切削屑が詰まりフィルター精度が低下するので、切削屑を取り除くため、非濾過時にブラシローラ40でスクリーンベルト濾材27をブラッシングするとともに、逆洗ノズル39でスクリーンベルト濾材27の裏面に浄化液を噴射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-305430号公報
【特許文献2】特開昭58-170511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に示される切削液の濾過装置によれば、スクリーンベルト濾材27を再使用できる技術を提供している。しかしながら、この技術に示されるスクリーンベルト濾材27を再使用する実例はこれまでのところ全く見受けられない。そこで、本発明者がフィルターを再使用することについて実験を通じて検討したところ、以下のような問題点があることが分かった。
【0012】
まず、ろ紙は再使用回数が増えるに連れて紙力が低下する。特に、ろ紙を再使用するために、ろ紙の固形分が付着した面にブラッシングして固形分を掃き落とす工程が入ることや、ろ紙が曲がりくねって巻き掛け走行するので、ろ紙が紙力を大きく低下するものとなっている。また、ろ紙が紙力を大きく低下すると、メッシュ孔が大きく広がるようになり、ろ過性能が低下していく。
【0013】
さらに、ろ紙が紙力を低下すると、ろ過中にフィルターの側縁に亀裂が入り、亀裂が一度入るとろ紙の巻き掛け走行が円滑に行われないときに大きく変化するテンションにより、亀裂に応力集中が起きて急激に大きな亀裂に発展しろ紙が破裂してしまうという危険がある。ろ過中にろ紙の破裂を招くと、ろ紙を交換する手間がかかるという問題にとどまらず、それまでのろ過済みの液にろ過していない液が混ざってしまい、最初からろ過をやり直さなければならないという大きな問題になる。
【0014】
そのため、ろ紙の破裂を招く恐れがないという安全性の面からはろ紙の再使用回数を小さく抑えることの要求が存在する。そのため、実験を通じてフィルターの種類ごとに側縁に小さな亀裂が生じる恐れがある再使用回数について必要回数データ取りし、その中の最小の再使用回数よりも小さい再使用回数に抑えて使用することが1つの問題解決手法である。
【0015】
他方、市販されているろ紙やろ布について、再使用回数を大きくする工夫をして、フィルター材料のコストパフォーマンスを高めることが他の1つの問題解決手法である。上記の状況において、従来は、ろ紙の再使用できる回数を大幅に増やす改善提案は見受けられない。
【0016】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ろ紙等をベースに補強層を積層することでフィルター全体としての強度が増大しかつ強度の劣化が少なくおよびメッシュ孔が大きくなり難くろ過性能の劣化が小さく、もってろ紙単体に比べて大幅に上回る再使用回数が得られるフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る第1の態様のフィルターは、上記目的を達成するため、メッシュ孔を有するフィルター躯体と、前記フィルター躯体の表面に積層された補強層とをロール状に巻かれてなり、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めて連続移動する状態において、前記被処理液を前記メッシュ孔に通流させ、前記被処理液中の固形不純物を下流側に通流させず捕捉するフィルターである。
【0018】
本発明に係るフィルターは、特に、前記フィルター躯体が、ロール状に巻かれるメッシュウエブ製であり、前記補強層が、前記フィルター躯体の一方または両方の面に固着されるセルロースナノファイバーであり、所要厚さの薄膜状で網目構造に設けられ、前記フィルター躯体に対し強度を補強するとともに、前記フィルター躯体のメッシュ孔の捕捉性能よりも高く安定した捕捉性能を付与するセルロースナノファイバー層であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るフィルターは、前記セルロースナノファイバーが、前記フィルター躯体に含浸していることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る第2の態様のフィルターは、第1の態様の構成に加え、前記セルロースナノファイバー層が前記フィルター躯体に突き刺さり係止しているとともに、前記セルロースナノファイバーの繊維が前記フィルター躯体の繊維間での繊維同士の絡みついていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る第3の態様のフィルターは、第1または第2の態様の構成に加え、前記フィルター躯体の前記メッシュ孔の大きさが所望の捕捉性能が得られる口径よりも大きく、前記セルロースナノファイバー層の網状構造が前記メッシュ孔に被さり、前記網状構造の厚さに応じて所望の捕捉性能が得られるようになっている。
【0022】
本発明に係る第4の態様のフィルターは、第1-3の態様の構成に加え、前記フィルター躯体は、ろ紙、ろ布、不織布、または単層メッシュフィルムのいずれか1つである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ろ紙等をベースに補強層を積層することでフィルター全体としての強度が増大しかつ強度の劣化が少なくおよびメッシュ孔が大きくなり難くろ過性能の劣化が小さく、もってろ紙単体に比べて大幅に上回る再使用回数が得られるフィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施の形態に係るフィルターが適用される不純物除去装置を処理工程順に並べたブロック図である。
図2図2(A)は本実施の形態に係るフィルターの斜視図を示し、図2(B)はフィルター躯体の一部拡大断面図を示し、図2(C)はフィルター躯体の片面に補強層を固着したフィルターの一部拡大断面図を示し、図2(D)はフィルター躯体の両面に補強層を固着したフィルターの一部拡大断面図を示す。
図3図3は、フィルター躯体の一方の面に補強層が積層されてなるフィルターの概略の製作工程図である。
図4図4は、フィルター躯体の両方の面に補強層が積層されてなるフィルターの概略の製作工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係るフィルターについて図面を参照して説明する。
【0026】
[フィルターの適用例]
図1は、本実施の形態に係るフィルターが適用される一例の不純物除去装置をシンボリックな図で表しかつ処理工程順に並べたブロック図である。不純物除去装置は、例えば、フィルター供給ユニット1と、ろ過タンクユニット2と、ブラッシングユニット3と、メッシュ孔目詰り解消ユニット4と、乾燥ユニット5と、フィルター巻取ユニット6とを有する。
【0027】
次に、不純物除去装置の処理工程を説明する。本実施の形態に係るフィルター10は、ロール状に巻かれており、フィルター供給ユニット1に支持された状態から一定速度で連続して繰り出され、ろ過タンクユニット2に導かれ固形不純物を含む水性液の流れを堰き止める状態にセットされ面方向に移動する。そして、フィルター10は、ろ過タンクユニット2において、水性液についてはフィルターの堰き止め面に作用する上流側の液圧と下流側の液圧との圧力差(上流側の液圧を昇圧させるか、または下流側の液圧を減圧させること)を利用してメッシュ孔に能動的に通流させ、固形不純物についてはメッシュ孔を通流させず液圧の圧力差で密着させた状態に捕捉する。次いで、フィルター10は、堰き止め位置からブラッシングユニット3に移動しブラッシングにより捕捉した固形不純物を掃き落とされる。続いて、フィルター10は、メッシュ孔目詰り解消ユニット4に移動され、捕捉面と反対側の面からメッシュ孔に流体圧力を加えてメッシュ孔の目詰りとなっている微細固形不純物を捕捉面より離脱させることでメッシュ孔の目詰りを解消する。その後、フィルター10は、乾燥ユニット5で乾燥されてからフィルター巻取ユニット6において再びロール状に巻かれることにより、繰り返し使用できるものである。
【0028】
このように、フィルター10は、ロール状に巻かれた状態から一定速度で連続して繰り出され、微粒子状の固形不純物を含む被処理液の流通路を堰き止めるように膜状に張設され、かつ連続移動する状態において、堰き止め位置における上流側フィルター表面と下流側フィルター表面との間に積極的に生じさせる液圧差(上流側の液圧を昇圧させるか、または下流側の液圧を減圧させること)により被処理液をメッシュ孔に通流させ、被処理液中の固形不純物を下流側に通流させず捕捉するフィルターである。
【0029】
[フィルターの概略の構成]
図2(A)は本実施の形態に係るフィルター10のロール形態の斜視図を示す。図2(B)はフィルターを構成するメッシュ孔11aを有するフィルター躯体11の一部拡大断面図を示し、図2(C)はフィルター躯体11の片面に補強層12を固着してなるフィルター10の一部拡大断面図を示し、図2(D)はフィルター躯体11の一方の面に補強層12Aを固着し、他方の面に補強層12Bを固着してなるフィルター10の一部拡大断面図を示す。なお、図2(C)と図2(D)に示すフィルター10は図3図4に示す製法に限定されて製作されるものではない。
【0030】
[フィルターの概略の製作工程例]
図3は、フィルター躯体11の一方の面に補強層12が積層されてなるフィルター10の概略の製作工程図である。フィルター製作装置20は、フィルター躯体供給ユニット21と、補強層形成ユニット22と、乾燥ユニット23と、フィルター巻取ユニット24とを備える。フィルター躯体供給ユニット21にロール状に巻かれているフィルター躯体11は、補強層形成ユニット22において片面(下面)にセルロースナノファイバー層12が所要厚さの薄膜層として塗布または吸着され、次いで、乾燥ユニット23で水分を除去されてからロール圧を加えられさらにヒーターロールなどにより乾燥され、最後に、フィルター巻取ユニット24においてロール状に巻き取られ、もって、フィルター躯体11の片面に補強層12が積層固着されたフィルター10が製作される。
【0031】
補強層12のフィルター躯体11への積層は、技術限定されるものではないが、例えば、ロールコート法を採用できる。ロールコート法によれば、セルロースナノファイバーが所要濃度に分散した混合液に浸漬させたグラビアロールと、その上の転圧ロールとの間にフィルター躯体11を通し、グラビアロールのセルに汲み上げた混合液をフィルター躯体11に転移させることで達成できる。
【0032】
図4は、フィルター躯体11の両方の面に補強層12が積層されてなるフィルター10の概略の製作工程図である。フィルター製作装置30は、フィルター躯体供給ユニット31と、第1の補強層形成ユニット32と、第1の乾燥ユニット33と、第2の補強層形成ユニット34と、第2の乾燥ユニット35と、フィルター巻取ユニット36とを備える。フィルター躯体供給ユニット31にロール状に巻かれているフィルター躯体11は、第1の補強層形成ユニット32において一方の面(下面)にセルロースナノファイバー層12Aが所要厚さの薄膜層として塗布または吸着され、次いで、第1の乾燥ユニット33で水分を除去されてからロール圧を加えられさらにヒーターロールなどにより乾燥され、続いて、第2の補強層形成ユニット34において他方の面(下面)にセルロースナノファイバー層12Bが所要厚さの薄膜層として塗布または吸着され、次いで、第2の乾燥ユニット35で水分を除去されてからロール圧を加えられさらにヒーターロールなどにより乾燥され、最後に、フィルター巻取ユニット36においてロール状に巻き取られ、もって、フィルター躯体11の両面に補強層12A,12Bが積層固着されたフィルター10が製作される。
【0033】
[フィルターの詳細な構成]
フィルター躯体11は、補強層12が積層される前の形態がロール状に巻かれるメッシュウエブが用意される。フィルター躯体11は、具体的には、ろ紙、ろ布、不織布、または単層メッシュフィルムの中のいずれか1種を用いることができる。フィルター躯体11は、目の細かさが異なる幾つかの種類、例えばφ1,2,4,6,8,10μmなどが作られた定量ろ紙や定量ろ布等が市販されているので、これらの中から、ろ過対象の大きさ、単位時間当たりのろ過量などの目的に応じて適切なものを選択できる。
【0034】
ろ紙は、一般的には綿繊維(セルロース)を用いることができ、あるいは生物学的に不活性な、酢酸セルロースと硝酸セルロースの混合物であるもの、ガラス繊維ろ紙からなるもの、PTFEメンブレンを親水化処理したもの、高純度の微細シリカ繊維を使用した石英ろ紙を用いることができる。
【0035】
ろ布は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、耐熱ナイロン、ポリイミド、PPS、ガラス、PTFE、ガラスPTFEのいずれかの原料製の糸であって、スパン糸(短繊維糸)、マルチフィラメント(長繊維糸)、またはモノフィラメント(長単繊維糸)のいずれかの糸で、平織、綾織、朱子織、二重織、ニードルパンチングフェルトの加工を施し、メッシュフィルターとしてものであればよい。
【0036】
不織布は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等のいずれかからなるスパン糸(短繊維糸)より不織加工によりメッシュフィルターとしたものであればよい。
【0037】
単層メッシュフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等のいずれかの二軸延伸フィルムにニードルパンチングまたはレーザー加工によりピンホールが互いに近接する分布状態で面全体に設けられているものである。
【0038】
補強層12は、太さが1-100nmでかつ長さに規定がなく様々であり配向性が全く無く複雑に絡み合うセルロースナノファイバーを水に分散した状態でフィルター躯体11の一方または両方の面に例えばロールコーターにより積層され、吸水ロール等で水分を除去されかつ加圧されることにより平坦化され、その際に、セルロースナノファイバーがフィルター躯体11に突き刺さり、強く固着するのでフィルター躯体11が湾曲してもブラッシングされても容易に剥離しない密着強度が得られる。
【0039】
[補強層12の固着力]
セルロースナノファイバーがフィルター躯体11に含浸し、またロール圧により突き刺さることについては、セルロースナノファイバーは、鉄の5倍程度の強度がある針状体であることに基づくものである。セルロースナノファイバー12を積層した後の平坦化するための加圧により、セルロースナノファイバーがフィルター躯体11に含浸しフィルター躯体11の強度が高まるとともに、フィルター躯体11のメッシュ孔の孔壁内に斜めに入り込んでいるセルロースナノファイバーがメッシュ孔の孔壁に突き刺さり係止し、並びに、フィルター躯体11のメッシュ孔以外の面部に対し略垂直方向に配向しているセルロースナノファイバーが突き刺さり係止するとともに、セルロースナノファイバーの繊維において、フィルター躯体の繊維間で繊維同士が絡みつくものである。
【0040】
補強層12(12A,12B)が乾燥され、もって補強層12(12A,12B)は、所要厚さの薄膜状で網目構造が得られ、フィルター躯体11に強い密着強度で積層されるセルロースナノファイバー層となる。補強層12(12A,12B)は、フィルター躯体11のメッシュ孔11aに被さり、メッシュ孔11aの大きさよりも細かい目を長期間にわたり安定して実現できる。
【0041】
フィルター躯体11の片面または両面に補強層12(12A,12B)が固着されたフィルター10は、最終形態としてロール状に巻き取られものである。これは再使用のために、不純物除去装置に装着される形態とするためである。
【0042】
フィルター10は、フィルター躯体11に対し所要厚さの薄膜状で網目構造に設けられセルロースナノファイバー層12により破裂強度を大幅に高めるとともに、網目構造を長時間にわたり保持してフィルター躯体11のメッシュ孔の捕捉性能よりも高く安定した捕捉性能を長時間にわたり保持するものとなる。
【0043】
フィルター10は、フィルター躯体11のメッシュ孔の大きさが所望の捕捉性能が得られる口径よりも大きく、セルロースナノファイバー層の網状構造がメッシュ孔に被さり、網状構造の厚さに応じて所望の捕捉性能が得られるようになっている。
【0044】
本実施形態に係るフィルター10によれば、ロール状に巻かれた状態から繰り出され固形不純物を含む水性液の流れを堰き止める状態にセットされ面方向に移動しつつ固形不純物を捕捉することができ、固形不純物を除去、メッシュ孔の目詰りを解消して繰り返し再使用できるフィルターであって、特に、固形不純物の捕捉性能を制御でき、ろ紙のみの場合に比べ大幅に上回る安定した捕捉性能を得られ、またろ紙のみの場合に比べて大幅に上回る繰り返し使用回数が得られる。
【0045】
本発明によれば、メッシュウエブ製のフィルター躯体と薄膜多孔質の補強層とからなり、補強層の厚みを制御することにより微粒子状の固形不純物の捕捉性能を制御することができるとともに、従来のフィルターに比べ大幅に上回る安定した捕捉性能を得られ、また従来のフィルター(ろ紙)の繰り返し使用回数を大幅に上回る繰り返し使用回数が得られるという効果を奏するものであり、コストパフォーマンスが高まった有用なフィルターを提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…フィルター供給ユニット、
2…ろ過タンクユニット、
3…ブラッシングユニット、
4…メッシュ孔目詰り解消ユニット、
5…乾燥ユニット、
6…フィルター巻取ユニット、
10…フィルター、
11…フィルター躯体、
12…補強層(セルロースナノファイバー層)、
20…フィルター製作装置、
21…フィルター躯体供給ユニット、
22…補強層形成ユニット、
23…乾燥ユニット、
24…フィルター巻取ユニット、
30…フィルター製作装置、
31…フィルター躯体供給ユニット、
32…第1の補強層形成ユニット、
33…第1の乾燥ユニット、
34…第2の補強層形成ユニット、
35…第2の乾燥ユニット、
36…フィルター巻取ユニット。
図1
図2
図3
図4