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特開2025-29047少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029047
(43)【公開日】2025-03-05
(54)【発明の名称】少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20250226BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20250226BHJP
   A61B 5/087 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/113
A61B5/087
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024209069
(22)【出願日】2024-11-29
(62)【分割の表示】P 2020570849の分割
【原出願日】2019-06-19
(31)【優先権主張番号】102018210051.9
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リングカムプ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ランゲユルゲン イェンス
(72)【発明者】
【氏名】レブハルト フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ラドラー フィリップ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移動性を制限しない、少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】交流電磁場が体に照射され、体の反対側で受信され、そして、受信された交流電磁場の位相が、時間の関数として、照射された交流電磁場の位相と比較され、少なくとも1つの呼吸パラメータが、比較の結果から決定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置であって、
少なくとも1つの送信構造を介して交流電磁場が体に照射される前記少なくとも1つの送信構造と、
前記体に照射された交流電磁場を前記体を通過した後に受信する少なくとも1つの受信構造と、
前記少なくとも1つの送信構造に接続され、且つ、前記少なくとも1つの送信構造に印加することができる交流電圧を生成する信号発生器と、
比較として、前記受信構造から供給される信号の位相と前記交流電圧の位相との差を時間の関数として決定する比較部と、
前記受信構造から供給される信号の位相と前記交流電圧の位相との比較結果から、前記少なくとも1つの呼吸パラメータを決定する評価部と、
を具備し、
前記少なくとも1つの呼吸パラメータは、
吸気または呼気が起こっているかどうか、
吸気または呼気の始まり、
吸気または呼気の終わり、
吸気および/または呼気の進行
のうちから選択される少なくとも1つである、
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置および方法に関し、電磁場(electromagnetic field)が身体に照射され、身体の反対側で受信され、次いで、受信された交流フィールド(alternating field)の位相が、時間の関数として、照射された交流フィールドの位相と比較され、少なくとも1つの呼吸パラメータが、比較の結果から決定される。
【背景技術】
【0002】
呼吸のモニタリングには多くの実用的な応用がある。例えば、特殊な状況や運動時などの呼吸活動の測定は、多くの科学的検査において中心的な役割を果たしている。このような検査は、外部の影響の関数としての呼吸行動のより良い理解を提供する。
【0003】
呼吸のモニタリングは、また、患者の機械的人工換気(mechanical ventilation)にとって重要である。ここでは、例えば自発呼吸(spontaneous breathing)に代えて人工呼吸(artificial respiration)を行うことは避けるべきである。
【0004】
確立された方法の大部分は、心電図(ECG:electrocardiogram)とインピーダンスカルジオグラフィー(ICG:impedance cardiography)とを組み合わせて、心臓成分(cardiac component)を推定し、インピーダンス信号からその心臓成分を減算して、結果信号から呼吸成分(respiratory component)を得る。呼吸パラメータの検出は、心臓成分の推定を通して間接的に導かれるので、必然的に心臓モデル(cardiac model)の質に依存する。さらに、主に呼吸頻度(respiratory frequency)はその過程で決定される。1回呼吸量(tidal volume)および自発呼吸に関する直接的な情報を提供することは不可能である。
【0005】
他の方法は、呼吸誘導プレチスモグラフィー(RIP:respiratory inductive plethysmography)を用いて、胸部の拡張および腹部の拡張を測定することである。ここでは、2つの弾性バンドを患者の胸部および腹部の周囲に配置する。コイルは、バンドに組み込まれ、バンドの拡張に伴ってインダクタンスが変化する。この方法は、弾性バンドのために、患者にとって不快で拘束的に見えることがある。ひずみゲージ(strain gauge)を用いても同様の方法が考えられるが、これ以上の利点はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、対応するパラメータを決定することが可能であるにもかかわらず、快適な着用であり、着用している人の移動性を制限しない、少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置、請求項10および12に記載の少なくとも1つの呼吸パラメータを測定するための方法、請求項24に記載の呼吸装置(respiratory apparatus)、請求項25に記載の造影剤注入装置(device for injecting a contrast agent)、および請求項26に記載の撮像装置(device for imaging)によって達成される。各従属クレームは、本発明による測定装置及び本発明による方法の有利な実施形態を提供する。
【0008】
本発明によれば、少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置が提供される。測定装置は、少なくとも1つの送信構造(transmitting structure)と少なくとも1つの受信構造(receiving structure)とを含む。有利には、少なくとも1つの送信構造は、アンテナまたは電極(electrode)であり得る。少なくとも1つの受信構造は、アンテナまたは電極であることが好ましい。
【0009】
前記少なくとも1つの送信構造及び/又は前記少なくとも1つの受信構造は、人、動物又はファントム(phantom)の体外に取り付け可能に設計されることが好ましい。送信構造及び/又は受信構造は、例えば、くっついて離れないように(adhesive)設計することができる。送信構造及び/又は受信構造と体(body)との間の導電性接触は有利であり得るが、必ずしも必要ではない。
【0010】
本発明による測定装置は、少なくとも1つの送信構造に電気的に結合された少なくとも1つの信号発生器(signal generator)を含む。送信構造に印加され得るAC電圧は、信号発生器によって発生され得る。このようにして、送信構造によって交流電磁場(alternating electromagnetic field)を生成することができる。
【0011】
本発明の有利な実施形態では、受信構造および送信構造のアンテナは、近接場に(in the near field)交互に配置されるように配置される。次に、送信構造のアンテナは、アンテナ間に結合インピーダンスが形成されるという意味において、受信構造の対応するアンテナに結合される。このインピーダンスZ12は、送信アンテナおよび受信アンテナとして機能する2つのダイポールの例について、以下のように表すことができる。
【数1】
【0012】
この過程では、誘電率(permittivity)の項が優勢となり、複数のアンテナは波長との関係でより近い(H. Wheeler, “The Radiansphere around a Small Antenna,” Proc. IRE, vol. 47, no. 8, pp. 1325-1331, 1959)。したがって、誘電率の変化の検出に基づく測定であれば、例えば、r(アンテナ間の距離)のλ(波長)に対する比をできるだけ小さくするために、可能な限り大きな波長λを有することが有利である。有利には、最適な波長(または周波数)が選択され、これは、身体に関しては、吸気(inspiration)および呼気(expiration)の間の位相の明確なシフトを見ることができるほど十分に小さいが、前述の意味において有意な結合を依然として得るのに十分に大きい。しかしながら、本発明は、アンテナが近接場に配置されていない、つまり、前述の意味において結合されていない場合にも実施することができる。
【0013】
アンテナを互いに近接場に配置する場合、アンテナ間の距離が波長λの4倍以下、有利には波長λの3倍以下、有利には波長λの2倍以下であると有利である。オプションとして、IEEEの近傍場の定義を基礎としてもよい。ここで、外側境界(outer boundary)は、アンテナ表面からの距離λ/(2π)として定義され、ここで、λは自由空間(free space)(IEEE Standard for Terms for Antennas, IEEE Std 145-2013を参照)における波長である。したがって、アンテナ対(antenna pair)のアンテナ間距離は、λ/(2π)以下であることが有利である。
【0014】
送信構造および受信構造の結合システム(coupled system)は、送信アンテナの共振周波数でおよび/または受信アンテナによって送信アンテナ内に生成される共振周波数の共振周波数で、有利に動作する。
【0015】
上記の意味での結合により、送信アンテナ及び受信アンテナがそれぞれ共用共振(shared resonance)を形成する場合に有利である。共振の質は、特定の用途に適合するように、特に有利に適合または変化させることができる。その過程で、高品質は、より小さいダイナミックレンジを有する高感度をもたらす。これに対応して、低品質は、より大きなダイナミックレンジを有する低感度をもたらす。ここで、ダイナミクスは、位相オフセット[0...2π]に明確に割り当てることができる測定範囲(measurement range)として定義される。位相オフセットが2πを超える場合、位相オフセットは、アンテナ間の距離に明確に対応しなくなる。位相オフセットの進行(progression of the phase offset)に基づいてアンテナ間の距離を識別することも可能であるため、これは、必ずしも問題ではない。しかし、呼吸が全振幅(full amplitude)を通過するときに0から2πの範囲を超えないように、波長を選択することが有利である。
【0016】
例えば、高解像度を除いて、測定されなければならないボリューム範囲(volume range)は小さいので、高品質は、新生児または未熟児に使用するのに適している。大きなボリューム範囲を測定しなければならないので、低品質は、成人に使用するのに適しているかもしれないが、低解像度で十分である。
【0017】
本発明の有利な実施形態では、送信アンテナおよび/または受信アンテナは、蛇行形状構成(meander-shaped configuration)を有することができる。アンテナは、特に有利には高い誘電率(permittivity)を有する基板(substrate)に適用することができる。このように、アンテナの電気的長さ(electrical length)は、その数学的または幾何学的長さに比べて増加する。
【0018】
また、送信アンテナおよび/または受信アンテナとしてセラミックアンテナ(ceramic antennas)を使用することも有利に可能であり、この場合、波はセラミック上を流れる。パッチアンテナ(patch antennas)の使用も可能である。
【0019】
これにより、アンテナ対の測定範囲がより明確になり、外部からアンテナの近接場に入る高誘電率体(high permittivity bodies)(腕や手など)からの妨害を受けにくくなる。このような指向特性(directional characteristics)は、例えば、アンテナの背後の、つまり体に対して遠位の、グランドに接続された表面(surface)によって達成することができる。代替又は追加として、非ユニポーラ放射特性(non-unipolar radiation characteristics)を有するアンテナトポロジ(antenna topology)を使用することができる。有利には、アンテナの背後に、つまり体に対して遠位の、低誘電率体(low-permittivity body)を導入することも可能である。もう1つの選択肢は、吸収体材料(absorber material)を体に対して遠位に配置することである。
【0020】
有利な実施形態では、複数のアンテナを差動接触(differentially contacted)させることができる。この目的のために、複数のアンテナは、例えば、ツイスト導体対(twisted conductor pair)と接触されてもよく、このツイスト導体対は、2つの電流を有し、この2つの電流が180°だけ位相シフトされている。
【0021】
複数のアンテナは、一般に、体から離れて配置することもできる。特に、誘電性または絶縁性の材料は、アンテナと体との間に存在してもよい。具体的な特殊なケースとして、アンテナと体との間に、空気が存在する。
【0022】
任意の実施形態では、送信アンテナおよび/または受信アンテナのうちの少なくとも1つは、患者のための支持面(support surface)または患者用ベッドの側部要素(side element)などの表面に配置することもできる。
【0023】
本発明の有利な実施形態では、送信構造は、受信構造と同一であり得る。この場合、1つの構造、例えば、送信構造及び受信構造として機能する1つのアンテナが存在する。これは、体の誘電率の変化の結果としてアンテナの共振周波数(resonant frequency)が変化する、という事実を利用することができる。この変化をシグナルとして決定することができる。例えば、時間と共に変化する周波数をアンテナに適用することができ、どのような周波数共振が存在するかを各ケースにおいて決定することができる。この共振から、呼吸パラメータを決定することができる。あるいは、共振が呼吸過程(respiration process)において或る距離で存在する、周波数を適用して、共振の変化または位相の時間的変化を決定することも可能である。呼吸パラメータは、それから決定することもできる。特に、上述したような指向特性(directional characteristics)を有するアンテナを用いて、被測定体(body to be measured)内のみに照射することが有利である。
【0024】
有利には、例えば円周導体(circumferential conductors)として、2つの絶縁導体(insulated conductors)を患者の胸部の周りに配置することが可能である。このプロセスにおいて、1つの導体は、例えば胸部領域を横切って腹側に案内され、1つの導体は、例えば背部領域を横切って背側に案内される。従って、患者の胸部は、導体対(conductor pair)の間に誘電体(dielectric)のように配置され得る。呼吸により、胸部の誘電率が変化し、これに伴い、導体により案内されて胸部を流れる、電磁波(electromagnetic waves)の伝播時間(propagation time)が変化する。これは、時間の経過に伴う位相の変化として検出され得る。導体対を差動的に適用すること、つまり、電圧が1つの導体で上昇し電圧が第2の導体で同じ程度に低下し、交流電磁場の極性が反転すると直ぐに逆になることは、プロセスにおいて有利である。さらに、外部からの妨害を低減するために、一側面で導体をシールドすることが有利である。
【0025】
有利な実施形態では、呼吸(吸気または呼気)に関する情報を、波の減衰(送信(S21パラメータ)と反射(S11パラメータ)の両方)を介して、提供することも可能である。位相情報に加えて、減衰(attenuation)は、呼吸パラメータの決定をサポートする追加パラメータとして測定することができ、または、減衰は、本発明による装置によって独立して検出されて、少なくとも1つの呼吸パラメータの決定に使用され得る。
【0026】
また、本発明の測定装置は、受信構造体から供給される信号の位相と、送信構造体に印加される交流電圧の位相とを比較可能な、比較部を備える。受信構造体が信号を供給するという事実は、受信構造体が信号を生成することを意味すると理解され得るが、受信構造体は、能動素子である必要はない。また、信号が受信構造から発生して受信されるという意味において、信号が受信構造から受信されることを意味すると理解することができる。比較部は、この目的のために、受信構造体に電気的に結合され得る。有利には、少なくとも2つの受信構造から受信された信号間の位相の比較が可能である。
【0027】
本発明によれば、測定装置は、受信構造から受信された信号の位相と、交流電圧の位相および/または送信構造によって生成された交流電磁場の位相との、比較の結果から、少なくとも1つの呼吸パラメータを決定することができる評価部をさらに備える。
【0028】
測定装置は、好ましくは、少なくとも1つの呼吸パラメータを測定するための本発明による方法を実施するように構成される。この方法において、交流電磁場は、少なくとも1つの送信構造体を介して、例えば人、動物又はダミーの体内に照射され、ここで、交流電圧が、少なくとも1つの送信構造体に適用される信号発生器によって発生される。体内に照射された交流電磁場は、体内を通過した後、好ましくは体の反対側にて、少なくとも1つの受信構造体によって受信される。このプロセスにおいて、反対側は、好ましくは、体の軸に関して、交流電磁場が照射される側と反対側に位置する任意の側とすることができる。比較ステップでは、少なくとも1つの受信構造から受信された信号の位相が、時間の関数としてAC電圧の位相と比較され、この比較の結果から、少なくとも1つの呼吸パラメータが決定される。任意に、送信構造又は受信構造を胸部の左側に配置し、それに対応して受信構造又は送信構造を腹部の左側に配置し、それに対応して受信構造又は送信構造を腹部の右側に配置して、信号が肺及び横隔膜を通過するようにすることも可能である。
【0029】
送信構造は、有利には、ケーブルを介して信号発生器に接続され得る。この場合、交流電圧の位相は、好ましくは抵抗で測定され、その抵抗を介してケーブルが供給される。同様に、受信構造は、ケーブルを介して比較部に接続され得る。そして、有利には、比較部と基準電位(reference potential)との間に有利に接続されたターミネータ(terminator)において、受信構造体から受信された信号の位相を測定することが可能である。有利には、信号発生器の出力の位相、またはそのために定義された基準(reference)、または時間的に一定の基準が、比較部の受信側入力の位相、またはそのために定義された基準、または時間的に一定の基準と比較される。
【0030】
受信構造から受信された信号の位相が、AC電圧の位相または照射された交流電磁場の位相と比較されるという事実は、好ましくは、これらの位相の差が見出されることを意味する。
【0031】
特に、プロセスにおいて、受信信号の位相とAC電圧又は照射信号の位相との間のこの位相差が時間の関数として決定され得ることが好ましい。したがって、この位相差は、好ましくは、いくつかの異なる時点について決定され、次いで、呼吸パラメータは、位相差の時間的進行から決定される。
【0032】
有利には、体を通過する電磁波の伝搬時間(propagation time)は、交流電圧の位相と受信信号の位相との比較から、推測され得る。また、このような伝搬時間は、伝搬時間の時間的進行(chronological progression)から少なくとも1つの呼吸パラメータを確認できるように、好ましくは、時間の関数として決定される。
【0033】
位相または伝搬時間は、送信構造と受信構造との間の体の瞬間的な膨張に対応し、任意には、送信構造と受信構造との間の体積(the volume)の誘電特性(dielectric properties)の変化に対応する。交流電磁場は、好ましくは、少なくとも1つの送信構造を介して、体の胸部および/または腹部に照射される。この目的のために、少なくとも1つの伝達構造を胸部または腹部に取り付けることができる。そして、好ましくは、胸部および/または腹部の反対側の少なくとも1つの受信構造体によって、交流電磁場が受信される。このプロセスにおいて、送信構造体及び受信構造体は、電磁波が体を横方向に通過するように、腹部及び/又は胸部において横方向に取り付けられることが特に好ましい。
【0034】
この場合、位相または伝搬時間は、肺(横隔膜、肋骨弓などを含む)の瞬間的な拡張に対応する。呼吸によって肺の拡張が変化すると、位相差又は伝搬時間も変化する。位相差の変化または伝搬時間の変化は、一方では、吸息中の体または胸部の膨張に基づいており、他方では、電磁波が通過する体の領域の誘電特性(dielectric properties)の変化に基づいている。一方では、体の組織及び臓器が移動し、他方では、肺の中の空気の量が変化し、それによって、電気的特性(electrical properties)が変化する。
【0035】
有利には、人、動物またはファントムの呼吸の深さは、例えば、位相偏差(phase deviation)、つまり、選択された時間ウィンドウにおける、最小位相差(minimum phase difference)と最大位相差(maximum phase difference)との間の差を介して、導き出され得る。この場合、少なくとも1つの呼吸パラメータは、人、動物またはダミーの呼気の体積(volume of a breath of air)であり得る。
【0036】
本発明の有利な実施形態では、照射される交流電磁場または送信構造体に印加される交流電圧は、可変および/または変化する周波数で生成され得る。そして、少なくとも1つの呼吸パラメータは、有利には、複数の周波数のうちの1つで決定され得、その複数の周波数では、照射された交流電磁場と受信された交流電磁場との間の結合、又は、送信構造体と受信構造体との間の結合が最大である、および/または、受信された交流電磁場又は受信構造体から受信された信号の振幅が最大である。また、最大変化が、呼吸サイクルにわたって、受信構造から受信された信号の位相とAC電圧の位相との間の位相差となる、呼吸パラメータの決定のための周波数を選択することも可能である。このようにして、最適な測定周波数(optimal measuring frequency)を確認することができる。最適な測定周波数は、特に体の大きさに依存して、異なる人、動物またはファントムについて異なる可能性がある。
【0037】
有利には、複数の周波数で同時に測定し、異なる複数の周波数で決定された、少なくとも1つの呼吸パラメータの複数の値を、互いに比較するか、または、例えば平均化によってこれらを互いにオフセットすることも可能である。また、時分割多重処理では、時間的に短い間隔で連続して複数の周波数を送信し、又は、周波数分割多重処理では、複数の周波数を同時に送信し、例えばその時間的な傾きの評価(the assessment of the temporal gradients)などの妥当性チェック(plausibility check)のために、各測定周波数を用いてもよい。この妥当性チェックは、とりわけ、測定シリーズ(measuring series)から、動きのアーチファクト(movement artefacts)を排除するために使用することができる。さらに、信号品質を向上させるために、適応フィルタリング技術(adaptive filtering techniques)、相関フィルタ(correlation filters)、または機械学習の方法(methods of machine learning)によって、その異なる複数の測定周波数を使用することも可能である。
【0038】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つの送信構造は、第1のケーブルを介して信号発生器に接続され得る。このプロセスにおいて、第1のケーブルは、好ましくは、所定の波動インピーダンス(wave impedance)を有する。そして、送信構造は、好ましくは、第1の抵抗を介して供給され、その抵抗の値は、第1のケーブルの波動インピーダンスに等しい。少なくとも1つの受信構造は、第2のケーブルを介して比較部に有利に接続され、第2のケーブルは、好ましくは、所定の波動インピーダンスを有する。そして、受信構造は、好ましくは、第2の抵抗を介して終端され、その抵抗の値は、第2のケーブルの波動インピーダンスに等しい。例えば、第1のケーブルおよび第2のケーブルの波動インピーダンスとともに、第1の抵抗および第2の抵抗は、50オームとすることができる。任意に、送信構造の波動インピーダンスは、ケーブルの波動インピーダンスに等しくすることもできる。受信構造の波動インピーダンスについても同様であることが好ましい。
【0039】
有利には、AC電圧および/または照射される交流電磁場は、10MHz以上、好ましくは30MHz以上、好ましくは100MHz以上、および/または、1000MHz以下、好ましくは500MHz以下、好ましくは300MHz以下の周波数で生成される。
【0040】
本発明の有利な実施形態では、2つ、3つ、4つ以上の送信構造を設けることができ、および/または、2つ、3つ、4つ以上の受信構造を設けることができる。これにより、より正確な測定結果を得ることができる。複数の送信構造および複数の受信構造が使用される場合、すべての送信構造の時分割多重化は、最適な送信構造受信構造対(transmitting structure-receiving structure pairing)を見出すことが可能である。
【0041】
1つの送信構造および複数の受信構造が提供される場合、異なる複数の受信構造の複数の信号によって確認された複数の結果を使用して、結果の妥当性をチェックすることができる。たとえば、すべての受信構造で勾配(gradient)が非常に高い場合は、測定された体が動いていることを意味する。この場合、測定値は破棄できる。また、複数の送信構造の場合、そのような妥当性チェックは、時分割多重化プロセスにおいて行われ得る。位相差の決定の時間分解能(temporal resolution)を十分に高く選択すれば、異なる複数の受信信号の時間オフセットを考慮することも可能である。個々の測定値の時間的関係が急激に変化する場合も同様に、体の動きを示すことがある。さらに、信号品質を向上させるために、適応フィルタリング技術、相関フィルタ、または機械学習の方法によって、異なる複数の受信信号を使用することも可能である。
【0042】
2つの送信構造と2つの受信構造との組合せ、1つの送信構造と3つの受信構造との組合せ、および、1つの送信構造と2つの受信構造との組合せが特に有利であることが証明されている。例えば、2つの送信構造および2つの受信構造を使用する場合、同じ対の間の多重化が有利であり得る。1つの送信構造および複数の受信構造は、異なる複数の受信構造の複数の信号を互いに比較することができるので、上述した妥当性チェックのために特に有利である。
【0043】
本発明の有利な実施形態では、呼吸パラメータとして、吸気または呼気が行われているかどうかを決定することが可能である。この目的のために、受信信号の位相と照射された交流電磁場の位相との間の位相差の勾配は、例えば、位相差の時間微分として決定することができる。勾配の符号は、吸気または呼気のどちらが起こっているかを示す。位相差における局所最小(local minima)および位相差における局所最大(local maxima)のシーケンスの決定(determination of sequences)は、また、吸気または呼気が存在するかどうかを決定するために使用され得る。例えば、局所的な最大値が局所的な最小値に続く場合、吸気(inspiration)が存在すると判断できる。局所的な最小値が局所的な最大値に続く場合、呼気(expiration)が存在すると判断できる。この例示的な決定は、他の基準方向について類似の例において類似して行うことができ、例えば、体においてフィットする、波長の数に依存させることもできる。例えば、吸気又は呼気の開始は、時間に対する位相差の導関数を形成することによって、立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジの平均化、相関等によって、決定することができる。
【0044】
呼吸頻度(呼吸周波数)(respiratory frequency)は、呼吸パラメータとして決定され得る。これは、例えば、2つの最大位相差の間または2つの最小位相差の間の時間間隔(time interval)から決定することができ、呼吸頻度は、時間間隔の逆数である。同様に、最小/最大位相差と最大/最小位相差との間の時間間隔を決定することが可能である。このプロセスでは、時間間隔は、特定の呼吸フェーズの持続時間に対応する。また、フーリエ変換により、時間信号から呼吸頻度を決定することもできる。ここで必要なことは、フーリエ変換によって決定されたスペクトルから、最大の絶対値を有するレート(rate)を確認することだけである。
【0045】
1回換気量(tidal volume)は、呼吸パラメータとして決定することもできる。1回換気量は、位相差の局所最小値と局所最大値との間の差と相関する。最も単純な場合には、この差と1回換気量との相関は線形である、と仮定できる。より正確な決定のために、1回換気量と前述の差との間の関数を、解析的に近似するか、または、実験的に測定することができる。
【0046】
本発明の有利な実施形態では、本発明による方法を使用して、人工呼吸器(mechanical ventilation)を制御することができる。人工呼吸器は、規則的な呼吸サイクルをもたらし、このことは、照射された交流電磁場の位相と受信された交流電磁場の位相との間の差が、規則的に進行する、ことを意味する。人工呼吸器を受けている人が自発呼吸を行うと、この規則的な呼吸サイクルが、特徴的な形で中断される。そして、本発明による方法は、吸気または呼気を開始する呼吸装置に信号を送るために有利に使用することができる。そして、呼吸装置は、人をサポートし且つ自発呼吸に反して換気を提供しないように、有利に吸気(空気供給)または呼気(機械的人工換気の中断)をサポートすることを始めることができる。異なる複数の受信信号は、例えば、適応フィルタリング技術、相関フィルタ、または機械学習の方法によって、計算において考慮され得る。
【0047】
本発明の方法又は本発明の装置は、造影剤の注入を呼吸に最適に適応させるために、造影剤を注入する装置(例えば、CT/MRI/超音波)にも用いることができる。このプロセスにおいて、その注入は、患者がちょうど呼気を開始しているとき、または、吸気を開始しているとき、または、患者の呼吸を止めているときに、有利に行うことができる。
【0048】
本発明による方法または本発明による装置は、CT、X線、CBCT、MRI、超音波などの画像処理にも使用して、画像の撮影中に呼吸パラメータ(例えば、吸気、呼気、瞬間的な胸部および/または腹部の拡張)を記録することができる。
このようにして、例えば、異なる複数の部分画像(partial images)の融合は、走査撮像プロセス(scanning imaging process)において、同じ呼吸パラメータを有する複数の部分画像のみが結合されて全体画像を形成するか、または、呼吸パラメータが適切な場合にのみ(例えば、呼気の終わり、吸気の終わり、または定義された状態においてのみ)部分画像が記録されるか、または、部分画像および/または全体画像の記録中の呼吸パラメータの時間的進行が、画像データを修正するために使用されるかまたは組み合わせ評価のために使用されるか、のいずれかの効果に最適化され得る。
【0049】
本発明の有利な実施形態では、交流電磁場は、好ましくは時間的に連続して、多数の異なる周波数を使用して適用され得る。そして、好ましくは、受信された交流電磁場の位相と照射された交流電磁場の位相との比較から、少なくとも1つの呼吸パラメータを決定することが可能である。このようにして得られた結果は、特定の呼吸パラメータの最終値を得るために、互いに比較され、および/または、互いにオフセットされ得る。
【0050】
本発明の有利な実施形態では、受信された交流電磁場の位相と照射された交流電磁場の位相との間の差の時間的変化は、時間の関数として、例えば、グラフ表示で表すことができる。これにより、少なくとも1つの呼吸パラメータの経時的な変化を観察することができる。このようにして、例えば、長期試験(long-term tests)を実施すること(例えば、傾向を監視すること)が可能となり、直接的なフィードバックを伝達することが可能である。
【0051】
AC電圧は、好ましくは、体を潜在的に流れる電流が、許容される患者補助電流(permissible patient auxiliary current)以下、例えば100μA以下になるように、送信構造に適用される。
【0052】
本発明の有利な実施形態では、心拍および/または体の動きの影響などの少なくとも1つの外乱変数(disturbance variable)を決定し、それを呼吸パラメータの計算から除去するために、少なくとも1つのさらなる電極および/または少なくとも1つのさらなる測定周波数を、使用および評価することができる。このようにして、心拍の影響は、例えば、スケーリングされたフーリエ線形結合器(a scaled Fourier linear combiner)を用いて、または、他の適応フィルタリング技術を用いて、信号から抽出され得る。有利には、例えば、周波数フィルタ、適応フィルタ、相関フィルタ、および/または平滑化フィルタ、および/または信号の微分によって、上記の方法で決定された少なくとも1つの呼吸パラメータの計算から、少なくとも1つの外乱変数を除去することも可能である。たとえば、移動平均やSavitzky-Golayなどのその他のスムージング方法を使用できる。
【0053】
測定された信号は、また、呼吸装置またはその周辺によって供給または測定される、瞬間的な呼吸状態(吸気、呼気)の値、圧力の値、および/または流量の値のような、他の測定信号と相関させることができる。
【0054】
本発明による方法は、多くの有利な実施形態において、非診断的方法(non-diagnostic method)として実施することができる。たとえば、呼吸の挙動(respiratory behavior)を科学的に理解するために用いることができる。この目的のために、呼吸の挙動または少なくとも1つの呼吸パラメータは、試験対象が特定のタスクを実行するかまたは特定のストレスにさらされている間、本発明による方法によってモニタされ得る。本発明による方法の有利な適用においては、体は、例えば、応急処置クラス(first aid classes)または衝突試験(crash tests)中の呼吸運動(breathing exercises)のために使用されるような、ファントムの体であってもよい。本発明の方法を用いることにより、呼吸活動の影響やこのような体に及ぼす外部から作用する力の影響を調べることができる。
【0055】
本発明によれば、さらに、上述の方法を実行し、そして、少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて呼吸を制御するように構成された、呼吸装置が提供される。このような呼吸装置は、例えば、潜水中に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の測定装置の基本設計をブロック図で示す。
図2】異なる複数の測定周波数における受信信号の位相の曲線を示す。
図3】異なる複数の呼吸量についての位相偏差を示す。
図4】一例として、照射された信号と受信された信号との間の位相差の決定、ならびに、呼吸パラメータの例示的な決定を示す。
図5】非閉塞呼吸および閉塞呼吸の間の位相差を示す。
図6】蛇行形状のアンテナ構造を示す。
図7図6に示すアンテナ構造を側面図で示す。
図8】円周導体の形態の送信構造および受信構造の実施形態を示す。
図9】患者から離れて配置された送信構造および受信構造の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、いくつかの図に基づいて、本発明を一例として説明する。同一の参照番号は同一または対応する特徴を示す。実施例に記載された特徴は、また、特定の実施例とは独立して実施され、実施例間で結合され得る。
【0058】
図1は、本発明による測定装置の設計例をブロック図の形式で示している。体1を介して交流電磁場(alternating electromagnetic field)を照射することにより、プロセスにて呼吸パラメータを決定する。交流電磁場は、例えばアンテナ又は電極とすることができる送信構造体2によって、体1内に照射され、同様にアンテナ又は電極とすることができる受信構造体3によって受信される。照射される信号を生成するために、ここではケーブル(例えば同軸ケーブル)を介して供給されるAC電圧が、送信電極2に適用される。このようなケーブルは、規定された波動インピーダンス(wave impedance)を有することができる。プロセスでは、AC電圧は、終端抵抗(terminating resistance)を有する送信アンプ4によって増幅される。ここで、この終端抵抗の値は、ケーブルの波動インピーダンスに等しいことが好ましく、このケーブルを介して送信電極2が、送信アンプ4に接続される。
【0059】
AC電圧は、発振器(oscillator)5を介して送信アンプ4に供給され、発振器5は、所定の周波数及び位相を持つAC電圧を生成する。この目的のために、発振器5は、制御部(control unit)6によって制御され、制御部6は、例えば、ヒューマンマシンインターフェース(human-machine interface)またはマシンツーマシンインターフェース(machine-to-machine interface)などの適切なインターフェースによって制御することができる。
【0060】
送信電極2から体1内に照射された交流電界(alternating field)は、終端抵抗を有する受信アンプ8に例えば同軸ケーブルを介して接続された受信構造3で受信される。終端抵抗の絶対値は、受信アンプ8がこのケーブルを介して受信電極3に接続される、ケーブルの波動インピーダンスに等しいことが好ましい。受信増幅器8は、位相検出器(phase detector)9に接続され、位相検出器9は、受信構造3によって受信され且つ受信増幅器8によって増幅された、信号の位相を測定することができる。位相検出器9は、さらに、送信信号を生成する発振器5に接続されている。位相検出器9は、発振器5から照射される信号の位相に関する情報を受信する。これにより、位相検出器9は、照射信号の位相と検出信号の位相とを比較し、例えば、これらの信号間の位相差を求めることができる。この位相差は、時間の関数として、つまり少なくとも2つ以上の時点について、決定されることが特に好ましい。次いで、位相検出器9は、好ましくは時間依存の位相差を、評価部(evaluation unit)10に送ることができ、評価部10は、位相差から少なくとも1つの呼吸パラメータを決定する。評価部10は、この目的のために、平均化、微分、最小値および最大値の決定、適応フィルタリング、相関フィルタリング、並びに、周波数フィルタリングなどの、適切な計算ステップまたは補正ステップを実行することができる。次いで、評価部10は、確認された結果、つまり呼吸パラメータを、インターフェース7に渡すことができ、このインターフェース7は、人または呼吸器装置のような機械がアクセス可能である。
【0061】
図2は、3つの異なる測定周波数での自然な呼吸の間の位相の時間経過曲線を示し、点線、破線および実線で表される。破線は、点線の周波数の2倍での測定を示し、実線は、点線の周波数の3倍での測定を示す。点線の周波数の3倍での測定が、最大の位相偏差を示し、従って、測定周波数として最も適している、ことは明らかである。
【0062】
図3は、異なる呼吸量(breathing volumes)に対する位相偏差を示す。位相偏差は、垂直軸上にプロットされ、呼吸量は、水平軸上の基準量(reference volume)に対してプロットされる。呼吸量と位相シフトとの間に、ほぼ比例関係が存在する、ことは明らかである。呼吸量が多いほど、位相のずれは大きくなる。
【0063】
図4は、一例として、送信された信号と受信された信号とから、呼吸量の進行(progression of the breathing volume)を判定する方法を示す。送信信号(大振幅)及び受信信号(小振幅)の時間曲線は、図4(A)の部分にプロットされている。送信信号と受信信号との間には、位相オフセットPhiが存在している。位相オフセットPhiは、角振動数(angular frequency)を乗じた、送信信号及び受信信号の最大(maximum)又は最小(minimum)のような、同じ位相間の時間的な差である。
【0064】
この位相オフセットPhiは、位相差とも呼ばれ、図4(B)の部分では、秒単位の時間に対してプロットされている。点線で示すような位相オフセットの進行が得られる。ここで例として示すように、位相オフセットは、吸気中に増加する。呼気中の位相オフセットは、減少する。隣接する最大値または最小値との距離の逆数が、呼吸頻度(respiratory frequency)である。
【0065】
図4(C)は、位相オフセット又は位相差の時間的推移(chronological progression)を示す。ここでΔPhiがプロットされており、ΔPhiは、図4(B)にてプロットされている、最大位相オフセットPhiと最小位相オフセットPhiとの差である。呼吸量は時間とともに増加するので、ΔPhiは時間とともに増加する。
【0066】
図5は、非閉塞呼吸(unobstructed breathing)および閉塞呼吸(obstructed breathing)の部分を有する、本発明による方法で測定された位相の経時曲線を示す。符号51で示す部分には、閉塞の位相ストリング(obstructed phase string)が見られる。閉塞呼吸の間における、位相偏差、つまり最大位相差(maximum phase difference)と最小位相差(minimum phase difference)との間の差は、非閉塞呼吸の場合よりもかなり小さい。このようにして、本発明による方法は、障害(obstruction)を同定するために使用することができる。さらに、閉塞中の呼吸困難(labored breathing during the obstruction)も明らかであり、これは、例えば、人工呼吸器(mechanical ventilation)を制御するために使用することができる。
【0067】
図6は、基板61上に配置されたアンテナ構造2の一例を示す。ここで、基板61は、高い誘電率を有していてもよく、これにより、アンテナの電気的長さ(electrical length)をその幾何学的長さ(geometric length)に比べて長くすることができる。ここで、アンテナは、ダイポールアーム2a,2bを蛇行状に(in a meander-shaped manner)配置することにより、電気的長さ(つまり、導体2a,2bの長さ)に対して機械的幅(mechanical width)を短くした、ダイポールアンテナとして設計されている。
【0068】
図7は、図6に示すアンテナの一実施形態を基板61の表面に平行な方向から見た側面図である。この例では、アンテナ2は、アンテナ2とは反対側でグランド面(ground plane)72上に配置された、基板61上に配置されている。グランド72は、アンテナ2を後方の外乱(rear-side disturbances)から遮蔽することができる。
【0069】
図8は、アンテナとして機能する2つの絶縁導体(insulated conductor)81a、81bが患者82の胸部の周りに配置される、例示的な実施形態を示す。このプロセスにおいて、一方の導体81aは、例えば胸部領域を横切って腹側に案内され、一方の導体81bは、例えば背部領域を横切って背側に案内される。
【0070】
ここでは、腹側導体81a及び背側導体81bと共に、位相対向で(in phase opposition)活性化可能な端子(terminal)Aと端子Bとからなる差動設計としての送信構造83、受信構造84(同じように異なる)、を示す。ここでは、端子Aと端子Bとの間に電圧を印加することができる。例えば、インピーダンスを測定すると、人82の体の変化を推測することができる。
【0071】
図9は、送信アンテナ2及び受信アンテナ3を人91の体から離して配置した構成を示している。ここで、交流電界(alternating field)92が送信構造83から放射され、呼吸によって変調された電界93が受信構造84によって受信される。アンテナは、人91の体から離れて配置される。したがって、交流電界92,93は、空気中の領域(region in the air)を通過する。
【0072】
本発明による方法は、測定を直接行うことができ、心臓成分(cardiac component)に対する信号の調整を必要としないので、従来の方法と比較して有利である。しかし、心臓成分は、信号品質を増加させるように、考慮されてもよい。さらに、導電率(conductivity)の決定を伴わないため、電極または皮膚の導電率の変化の結果として生じる、アーチファクト(artefacts)および測定信号のドリフト(drift)を最小限に抑えることができる。さらに、本発明による方法は、振幅のみを考慮した場合に生じるであろう、運動アーチファクト(movement artefacts)が非常に低い。胸部周りのバンドと比較して、装着される電極および/またはアンテナの数が少ないため、使用者の装着快適性は、かなり高い。既存のECG電極を使用することも可能である。
【0073】
本発明の記載された透過測定(transmission measurement)は、測定量(measured volume)を明確に規定することを可能にし、反射測定(reflecting measurements)よりも有利である。反射測定(reflecting measurements)は、侵入深さ(penetration depth)が誘電特性(dielectric properties)に依存するため測定組織(measured tissue)の構造に依存するので、測定量が明確に規定されない。本発明による方法は、機械的人工換気中の自発呼吸を識別することを可能にする。その測定は、本質的に運動アーチファクトが低く、それにより、後処理がほとんど必要なく、追加のセンサシステムが不要であるが、信号品質を高めるために使用することができる。他の測定と比較して、ユーザは制限されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9