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特開2025-2915微粒子の製造方法、および、微粒子製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002915
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】微粒子の製造方法、および、微粒子製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/06 20060101AFI20241226BHJP
   B01J 13/16 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B01J2/06
B01J13/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103300
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】523241379
【氏名又は名称】株式会社ナノリサーチ京都
(71)【出願人】
【識別番号】515065970
【氏名又は名称】AC Biode株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰久
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 亮馬
(72)【発明者】
【氏名】水沢 厚志
【テーマコード(参考)】
4G005
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BA02
4G005BB08
4G005CA01
4G005DA13Y
4G005DB17X
4G005DB17Y
4G005DB17Z
4G005EA01
4G005EA02
4G005EA03
(57)【要約】
【課題】より粒子径が小さく、かつ、単分散である微粒子の製造方法、および、製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態の微粒子の製造方法は、算出平均粒子径が10μm以下であり、原料を含む液の液滴を生成すること、および、該液滴を反応液中で反応させることを含む。本発明の実施形態の微粒子製造装置は、算術平均粒子径が10μm以下の液滴を生成する液滴生成部と、該液滴生成部で生成された液滴を反応させる反応部と、を含む。本発明の実施形態のアルギン酸微粒子は、算術平均粒子径が10μm以下であり、該平均粒子径の変動係数(CV値)が30%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
算術平均粒子径が10μm以下であり、原料を含む液の液滴を生成すること、および、該液滴を反応液中で反応させることを含む、微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記反応液中で前記原料を含む液の液滴を架橋または界面重合することを含む、請求項1に記載の微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記原料を含む液の粘度が0.1cps~300cpsである、請求項1に記載の微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記原料を含む液を微細化することを含む、請求項1に記載の微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記原料を含む液がアルギン酸ナトリウム水溶液であり、前記反応液が塩化カルシウム水溶液である、請求項1から4のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
【請求項6】
算術平均粒子径が10μm以下の液滴を生成する液滴生成部と、該液滴生成部で生成された液滴を反応させる反応部と、を含む、微粒子製造装置。
【請求項7】
前記液滴生成部が、微細化促進部を含む、請求項6に記載の微粒子製造装置。
【請求項8】
算術平均粒子径が10μm以下であり、該算術平均粒子径の変動係数(CV値)が30%以下である、アルギン酸微粒子。
【請求項9】
算術平均粒子径が1μm以下である、請求項8に記載のアルギン酸微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の製造方法、および、微粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子の製造方法としては様々な方法が提案されている。微粒子の製造方法は、微粒子の用途、原料等に応じて選択され得る。例えば、粒子径の小さい微粒子を製造する方法としては、界面重合法が一般的に用いられる。また、より具体的な方法としては、乳化により液滴を生成する方法(特許文献1)や原料を含む液滴を微細化し、微粒子を製造する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-78756号公報
【特許文献2】特開2020-81982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような製造方法では、粒子径の制御が難しく、粒子径の小さい微粒子の製造が困難となり得る。また、得られる微粒子の粒子径のバラつきも大きくなり得る。本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、より粒子径が小さく、単分散である微粒子を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態の微粒子の製造方法は、算術平均粒子径が10μm以下であり、原料を含む液の液滴を生成すること、および、該液滴を反応液中で反応させることを含む。
2.上記1に記載の微粒子の製造方法は、上記反応液中で原料を含む液の液滴を架橋または界面重合することを含んでいてもよい。
3.上記1または2に記載の微粒子の製造方法において、上記原料を含む液の粘度は0.1cps~300cpsであってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の微粒子の製造方法は、上記原料を含む液を微細化することを含んでいてもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の微粒子の製造方法において、上記原料を含む液はアルギン酸ナトリウム水溶液であり、上記反応液は塩化カルシウム水溶液であってもよい。
6.本発明の実施形態の別の局面においては微粒子製造装置が提供される。この微粒子製造装置は、算術平均粒子径が10μm以下の液滴を生成する液滴生成部と、該液滴生成部で生成された液滴を反応させる反応部と、を含む。
7.上記6に記載の微粒子製造装置において、上記液滴生成部は、微細化促進部を含んでいてもよい。
8.本発明の実施形態のさらに別の局面においては、アルギン酸微粒子が提供される。このアルギン酸微粒子は、算術平均粒子径が10μm以下であり、該算術平均粒子径の変動係数(CV値)が30%以下である。
9.上記8に記載の微粒子は、算術平均粒子径が1μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、より粒子径が小さく、かつ、単分散である微粒子の製造方法、および、微粒子製造装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の微粒子製造装置の模式図である。
図2】実施例1のろ過工程後のろ紙のSEM写真(倍率5000倍)である。
図3】実施例1のろ過工程後のろ紙のSEM写真(倍率10000倍)である。
図4】実施例2のろ過工程後のろ紙のSEM写真(倍率15000倍)である。
図5】実施例2のろ過工程後のろ紙のSEM写真(倍率20000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.微粒子の製造方法
本発明の実施形態の微粒子の製造方法は、算術平均粒子径が10μm以下であり、原料を含む液の液滴を生成すること、および、該液滴を反応液中で反応させることを含む。反応液中で液滴を反応させれば、液滴の粒子径(例えば、10μm以下の粒子径)と同程度の粒子径を有する微粒子が得られ得る。また、微粒子の粒子径を容易に制御し得る。さらに、得られる微粒子のバラつきが抑制され、より単分散の微粒子が得られ得る。
【0009】
原料を含む液(以下、原料液ともいう)の液滴の算術平均粒子径は10μm以下である。上記のとおり、本発明の実施形態の微粒子の製造方法では、液滴の粒子径と同程度の粒子径を有する微粒子が得られ得る。液滴の粒子径は、製造する微粒子の粒子径に応じて調整され得る。液滴の算術平均粒子径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。液滴の算術平均粒子径は、例えば、0.5μm以上である。
【0010】
原料液は算術平均粒子径が10μm以下である液滴を生成することができるものであればよく、任意の適切な方法で調製され得る。原料液としては、例えば、溶液または分散液のように任意の適切な液体に原料が含まれているものが挙げられる。また、原料液として液状ポリマーおよび液状ゴムのように原料自体が液状であるものを用いてもよい。
【0011】
原料は目的とする微粒子の構成に応じて任意の適切な原料が用いられる。例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、および、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸エステル等が挙げられる。また、原料はヘキサメチレンジアミンとセバコイルジクロライド等のナイロンの重合に用いるモノマー成分であってもよい。原料液における原料の含有割合は、任意の適切な割合に設定され得る。例えば、0.1重量%~30重量%であり、好ましくは0.5重量%~10重量%であり、より好ましくは1重量%~5重量%である。本発明の実施形態の製造方法であれば、原料の含有割合が高い原料液を用いた場合であっても、粒子径の小さい微粒子が得られ得る。原料の含有割合が高い原料液を用いれば、例えば、より耐久性に優れた微粒子が得られ得る。なお、原料として2以上の成分を用いる場合、原料として用いられる成分の合計が上記範囲であればよい。
【0012】
原料液の調製に用いる液体としては、用いる原料に応じて任意の適切な液体が用いられる。例えば、水、非プロトン性極性溶媒、プロトン性極性溶媒等が挙げられる。また、ミリスチン酸塩化物、ステアリン酸塩化物等の脂肪族酸塩化物を非プロトン性極性有機溶剤に溶解した液体、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンをプロトン性極性溶媒または非プロトン性極性有機溶剤に溶解した液体、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネートを非プロトン性極性有機溶剤に溶解した液体等が挙げられる。脂肪酸塩化物、脂肪族ジアミン、および、イソシアネートを用いる場合、これらは得られる微粒子を構成する成分(すなわち、原料)となり得る。また、脂肪酸塩化物、脂肪族ジアミン、および、イソシアネートは、添加剤としても機能し得る。液体は1種のみであってもよく、2種以上の液体を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
原料液は原料および液体以外の任意の適切な成分をさらに含んでいてもよい。例えば、金微粒子、銀微粒子等の微粒子、触媒、色材等の塗料、ナイロンおよびウレタン等の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の添加剤、乳酸菌、酵母などの微生物、抗原、抗体、ウイルス、医薬品等の薬、細胞、DNA等が挙げられる。これらの成分は1種のみを含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの成分は任意の適切な含有割合で用いられる。
【0014】
1つの実施形態において、マイクロカプセルである微粒子が得られ得る。この実施形態において、マイクロカプセルに内包させる成分を原料液に添加してもよい。内包させる成分の含有割合は任意の適切な割合に設定され得る。内包させる成分の含有割合は、例えば、原料液の0.0001重量%~80重量%であり、好ましくは0.001重量%~30重量%であり、より好ましくは0.01重量%~10重量%である。
【0015】
原料液の粘度は任意の適切な値に設定され得る。1つの実施形態において、原料液の粘度は好ましくは0.1cps~1000cpsであり、より好ましくは0.1cps~300cpsであり、さらに好ましくは0.5cps~300cpsであり、さらにより好ましくは1cps~100cpsであり、特に好ましくは3cps~50cpsである。本発明の実施形態の製造方法によれば、上記のような粘度の原料液を用いても、粒子径の小さい微粒子が製造され得る。
【0016】
原料液の液滴は任意の適切な方法で生成され得る。例えば、ネブライザー、噴霧化装置、ミスト装置、微細化促進機構を備える液体霧化装置、リバウンドフォッグ、マイクロフォッグ等を用いて生成され得る。好ましくは、微細化促進機構を備える液体霧化装置が用いられる。微細化促進機構を備える液体霧化装置を用いれば、より算術平均粒子径が小さい液滴が生成され得る。また、原料液として粘度の高い液体を用いても算術平均粒子径が10μm以下である液滴を生成し得る。
【0017】
原料液の生成条件は製造する微粒子の粒子径に応じて任意の適切な条件に設定され得る。例えば、液滴生成装置として、ノズルネットワーク社製の「リバウンドフォッグ」を用いる場合、空気圧100kPa、空気量2.3NL/分、噴霧量0.07ml/分の条件であれば、算術平均粒子径がおよそ0.95μmの微粒子が得られ得る。また、空気圧300kPa、空気量5.0NL/分、噴霧量0.11mL/分の条件であれば、算術平均粒子径がおよそ0.8μmの微粒子が得られ得る。
【0018】
好ましくは原料液を微細化し、液滴を生成する。微細化することにより、より算術平均粒子径が小さい液滴を生成し得る。微細化は任意の適切な方法で行うことができる。例えば、微細化促進機構を備える液体霧化装置を用いる方法、噴霧化弁を振動させ微細化する方法、噴霧化してできた液滴に振動や衝突などの衝撃を加え微細化する方法などが挙げられる。
【0019】
生成された液滴は、反応液中で任意の適切な反応に供される。例えば、架橋(界面架橋)、重合(界面重合)等が挙げられる。好ましくは架橋、または、界面重合である。反応液中で架橋、または、界面重合すれば、生成した原料液滴を反応液に射出させるだけで、簡便に界面で架橋または重合が速やかにすすみ、架橋または重合された微粒子が得られ得る。反応液中での反応は1種のみでもよく、2種以上の反応が行われてもよい。2種以上の反応を行う場合、同時に反応させてもよく、逐次反応させてもよい。
【0020】
架橋反応としては、例えば、アルギン酸微粒子の界面架橋等が挙げられる。界面重合としては、例えば、ヘキサメチレンジアミンとセバコイルジクロライドとを用いたナイロン微粒子の界面重合、脂肪族酸塩化物と脂肪族ジアミンによるナイロン微粒子の界面重合、イソシアネートとアミンとを用いたポリウレタン微粒子の界面重合等が挙げられる。具体的には、ナイロン66微粒子を調製する場合、5重量%アジビン酸ジクロリドのヘキサン溶液を調製し、原料液とする。この原料液を、50℃に加熱した、炭酸ナトリウムを中和剤として含む4重量%ヘキサメチレンジアミン水溶液(反応液)に、例えば、噴霧器を用いて噴霧化射出すれば、ナイロン66微粒子、または、カプセルが得られ得る。
【0021】
反応液は、反応液中で行う反応に合わせて任意の適切な組成で調製され得る。例えば、反応液中で架橋させる場合、反応液は架橋剤、溶媒等を含み得る。また、反応液中で界面重合させる場合、反応液は任意の適切なモノマー成分、溶媒、中和剤等を含み得る。また、反応液に用いられる液体としては任意の適切な液体を用いることができる。例えば、水、ヘキサンなどの有機溶媒、シリコンオイル、大豆油等が挙げられる。液体は1種のみであってもよく、2種以上の液体を組み合わせて用いてもよい。また、原料液に含まれる液体と同じものであってもよく、異なる液体であってもよい。
【0022】
反応後、反応液から微粒子を分離回収することにより、微粒子が得られ得る。分離方法としては、例えば、反応後の反応液をろ紙でろ過し、微粒子を析出させ、次いでろ紙から洗いこみ微粒子を回収する方法、遠心分離法等が挙げられる。
【0023】
以下、アルギン酸粒子を一例として本発明の実施形態の製造方法について具体的に説明する。アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、および、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸エステルを水に溶解し、原料液を調製する。アルギン酸塩およびアルギン酸エステルは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。原料液におけるアルギン酸塩およびアルギン酸エステルの含有割合(濃度)は、好ましくは0.01重量%~10重量%であり、より好ましくは0.1重量%~5重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%~3重量%である。
【0024】
原料液は任意の適切な他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、任意の適切な薬品、香料、金微粒子、銀微粒子等の微粒子、触媒、色材等の塗料、ナイロン、ウレタン等の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の添加剤、乳酸菌、酵母などの微生物、抗原、抗体、ウイルス、薬、細胞、DNA等が挙げられる。原料液がこれらの成分を含む場合、これらを内包するマイクロカプセル(アルギン酸ボール)が得られ得る。好ましくは金微粒子が用いられる。金微粒子とアルギン酸ナトリウムとを含む原料液を用いれば、原料液を噴霧化し反応液に射出することにより、金微粒子を含有したアルギン酸ボールが容易に得られ得る。
【0025】
金微粒子の含有割合は、任意の適切な値に設定され得る。原料液における金微粒子の含有割合(濃度)は、好ましくは0.0001重量%~5重量%であり、より好ましくは0.001重量%~2重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%~3重量%である。金微粒子としては、任意の適切な平均粒子径のものを用いることができる。例えば、金微粒子の平均粒子径は、10nm~数百nm程度であり得る。金微粒子の平均粒子径が上記範囲であれば、得られるアルギン酸微粒子がX線マーカーゲルとして好適に用いられ得る。
【0026】
アルギン酸を含む液滴は任意の適切な方法で生成され得る。例えば、上記の装置を用いることができる。より粒子径の小さい微粒子(例えば、1μm以下)が製造でき、また原料溶の選択の幅が広くなるという点から微細化促進機構を備える液体霧化装置が好ましく用いられる。微細化促進機構を備える液体霧化装置としては、市販品を用いてもよい。具体的には、ノズルネットワーク社製の製品名リバウンドフォッグ等が挙げられる。
【0027】
上記微細化促進機構を備える液体霧化装置を用いる場合、液滴の生成条件は、製造するアルギン酸微粒子の平均粒子径に応じて任意の適切な値に設定され得る。上記のとおり、本発明の実施形態の製造方法によれば、液滴の粒子径と同程度の粒子径を有する微粒子が得られ得る。平均粒子径が1μm以下のアルギン酸微粒子を製造する場合、例えば、空気圧100kPa、空気量2.3NL/分、噴霧量0.07ml/分の条件で液体霧化装置から噴霧することで、液滴を生成し得る。
【0028】
アルギン酸微粒子を製造する場合、好ましくは反応液中で架橋反応(界面架橋)を行う。反応液としては、例えば、塩化カルシウム水溶液、乳化カルシウム水溶液等が用いられる。好ましくは塩化カルシウム水溶液が用いられる。反応液として用いられる塩化カルシウム水溶液の塩化カルシウムの含有割合(濃度)は、原料液に含まれるアルギン酸ナトリウムの含有割合に応じて任意の適切な値に設定され得る。反応液として用いられる塩化カルシウム水溶液の塩化カルシウムの含有割合(濃度)は、好ましくは0.1重量%~30重量%であり、より好ましくは0.5重量%~20重量%であり、さらに好ましくは1重量%~10重量%である。
【0029】
架橋反応は、例えば、液滴が導入された反応液を任意の適切な時間静置すればよい。静置する時間は、例えば、1μm以下のアルギン酸微粒子の場合、数分程度で十分である。アルギン酸微粒子の平均粒子径が大きくなるほど、拡散距離が長くなるため、静置時間は長くなり得る。
【0030】
次いで、反応液からアルギン酸微粒子を分離回収することでアルギン酸微粒子が得られ得る。分離回収方法としては、反応後の反応液をろ紙でろ過し、微粒子を析出させ、次いでろ紙から洗いこみ微粒子を回収する方法が挙げられる。ろ過に用いるろ紙の孔径は微粒子の粒子径に応じて任意の適切なものが用いられる。1つの実施形態において、孔径が0.5μm程度のろ紙を用いて自然ろ過(重力沈降)でアルギン酸微粒子を回収し得る。
【0031】
B.微粒子製造装置
本発明の実施形態の微粒子製造装置は、算術平均粒子径が10μm以下の液滴を生成する液滴生成部と、該液滴生成部で生成された液滴を反応させる反応部と、を含む。本発明の実施形態の微粒子製造装置によれば、より小さい粒子径の微粒子(例えば、算術平均粒子径が1μm以下の微粒子)を容易に製造することができる。液滴生成部は好ましくは微細化促進部を含む。微細化促進部を含んでいれば、より微細な液滴を噴霧することができる。
【0032】
図1は本発明の実施形態の微粒子製造装置の模式図である。微粒子製造装置100は、液滴生成部10と、反応部20とを含む。液滴生成部10は、任意の適切な原料液から算術平均粒子径が10μm以下の液滴を生成する。液滴生成部10は、代表的には原料液を収納する液容器30と、原料液を射出するノズル50とを備える。ノズル50は、一流体ノズルであってもよく、二流体ノズルであってもよい。1つの実施形態において、液滴生成部は、液体流を噴射させるための液体噴射部と、液体流に2つの気体流を衝突させるために気体流を噴射するための第1気体噴射部および第2気体噴射部と、液体噴射部から噴射した液体に対し第1気体噴射部から噴射された気体流と第2気体噴射部から噴射された気体流とを衝突させて2本の液柱を形成し、液体を霧化させるエリアである気液混合エリア部と、気液混合エリア部が内部に形成された噴霧出口部と、を有する(図示せず)。このような構成を含むことにより、より少ない空気量で微細化された原料溶液が射出され得る。
【0033】
液滴生成部10は、好ましくは微細化促進部40を含む。微細化促進部を含むことにより、より算術平均粒子径が小さい液滴を射出することができ、結果としてより粒子径が小さい微粒子が得られ得る。微細化促進部は、内部空間を有し、当該内部空間において霧をさらに微細化し得る。微細化促進部は、例えば、上記気液混合エリア部から出る霧の噴霧方向に設けられる。内部空間を有する微細化促進部の形状は、例えば、筒形状、ラッパ形状、L字形状などが挙げられる。微細化促進部を有していれば、大きい粒子径の液滴は微細化促進部の壁面に接触付着して液滴となり、小さい粒子径の微粒子はそのまま放出されるため、放出される微粒子の平均粒子径が結果としてより小さくなり得る。なお、壁面に接触付着した液滴は回収され、再利用され得る。このような構成を備える装置は、例えば、特開2013-103175号公報、および、特開2011-212665号公報、特開2011-98285号公報等に具体的に開示されている。これらの公報の記載は参考として本明細書に援用される。
【0034】
反応部20は、液滴生成部で生成された液滴に任意の適切な反応をさせる部分である。例えば、図示例のように、液滴生成部10のノズル50から、反応部20に液滴60が導入され得る。反応部は、例えば、反応液を含む反応浴であってもよい。反応部での反応としては、例えば、上記架橋反応、および、界面重合が挙げられる。反応液としては、上記A項に記載のものを用いることができる。
【0035】
C.アルギン酸微粒子
本発明の実施形態のアルギン酸微粒子は、算術平均粒子径が10μm以下であり、該算術平均粒子径の変動係数(CV値)が30%以下である。従来の微粒子の製造方法では、算術平均粒子径が10μm以下である微粒子の製造は困難であり、算術平均粒子径が10μm以下となった場合であっても得られた微粒子の粒子径のバラつきが大きいものであった。アルギン酸微粒子の算術平均粒子径が10μm以下であり、その算術平均粒子径のCV値が30%以下であれば、任意の適切な成分を内包したドラッグデリバリーシステムおよびマーカーゲルなどの生体適合性があり、反応性の高いカプセルまたは粒子として機能し得る。
【0036】
アルギン微粒子の算術平均粒子径は10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下であり、特に好ましくは1μm以下である。アルギン微粒子の算術平均粒子径は、例えば、0.3μm以上である。アルギン酸微粒子の算術平均粒子径が上記範囲であれば、反応性が高いカプセルまたは粒子として機能し得る。
【0037】
アルギン酸微粒子の算術平均粒子径の変動係数(CV値)は30%以下であり、好ましくは0.1%~20%であり、より好ましくは0.1%~10%である。CV値が上記範囲であれば単分散性が高いアルギン酸微粒子が得られ得る。CV値は、例えば、下記式から算出することができる。
CV値(%)=(σ/D)×100(σ:算術平均粒子径の標準偏差、D:算術平均粒子径)
【0038】
1つの実施形態において、アルギン酸粒子は、マイクロカプセル(アルギン酸ボール)となり得る。例えば、上記A項に記載のとおり、アルギン酸ナトリウムを含む原料液に医薬品等の薬品、香料、金粒子、銀微粒子等の微粒子、触媒、色材等の塗料、ナイロン、ウレタン等の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の添加剤、乳酸菌、酵母などの微生物、抗原、抗体、ウイルス、薬、細胞、DNA等の任意の成分を加えることにより、これらの成分を内包したマイクロカプセルが得られ得る。
【0039】
本発明の実施形態のアルギン酸微粒子は任意の適切な方法により得られ得る。1つの実施形態において、アルギン酸微粒子は上記微粒子の製造方法および/または微粒子製造装置を用いることで得られ得る。
【0040】
D.アルギン酸微粒子の用途
本発明の実施形態のアルギン酸微粒子は任意の適切な用途に用いられ得る。例えば、医薬品、食品、化粧品、塗料、農薬に用いることができる。好ましくは医薬品、および、食品に用いられる。
【0041】
例えば、アルギン酸微粒子が乳酸菌および酵母等の微生物を内包する場合、得られるアルギン酸微粒子は土壌改良剤のような土壌改良用途に好適に用いられ得る。アルギン酸微粒子は、内包される微生物に障害を与えない、緩和な条件で微生物を内包する微粒子を調製し得る。また、アルギン酸微粒子に内包されていれば、環境変化による微生物の死滅、および、低活性化が抑制され、長期的に安定した土壌改良効果を発揮し得る。また、プラスミドDNA等を内包するアルギン酸微粒子は、非ウイルス性遺伝子送達システムに好適に用いることができる。アルギン酸微粒子に内包されていれば、酵素およびpHによる分解から内包するプラスミドDNAが保護され得る。また、アルギン酸微粒子が生体適合性を有し、生体に好適に用いられ得る。また、上記のとおり、アルギン酸微粒子が金微粒子を内包する場合、低侵襲X線マーカーゲルとして好適に用いられ得る。ガンの放射線治療の際、腫瘍近傍に金を留置し、正常組織に対する影響を抑え、十分な線量を腫瘍に照射する治療法が用いられ得る。アルギン酸微粒子は生体適合性が高く、金微粒子を内包するアルギン酸微粒子であれば、放射線治療に用いられる低侵襲X線マーカーとして好適に用いることができる。上記のとおり、本発明の実施形態の微粒子は10μm以下の粒子径であり得る。そのため、より細い注射針(例えば、30G(外径0.13mm))で注入することが可能になり、生体への負荷も低減し得る。
【実施例0042】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0043】
[実施例1]
マイクロフォグユニット(ノズルネットワーク社製、製品名:リバウンドフォッグ)を備えた噴霧器の液容器にアルギン酸ナトリウム水溶液(濃度1.5重量%、粘度40cps)を注液した。次いで、空気圧100kPa、空気量2.3NL/分、噴霧量(射出量)0.07ml/分の条件で、反応液(塩化カルシウム水溶液(濃度10重量%))にアルギン酸ナトリウム水溶液を1200秒間射出した。射出した液滴の算術平均粒子径(SMD)は0.95μmであった。その後、液滴を射出した塩化カルシウム水溶液を10分間静置した。次いで、セルロースろ紙(孔径1.0μm)でろ過した。次いで、ろ紙を透過型電子顕微鏡(SEM)で観察し、アルギン酸粒子の有無を確認した。アルギン酸粒子が得られていた場合には、SEM写真から粒子径を測定した。図2は実施例1のろ過工程後のろ紙のSEM写真(倍率5000倍)である。図3は実施例1のろ過工程後のろ紙のSEM写真(倍率10000倍)である。SEM観察から、算術平均粒子径が1μm以下(約0.95μm)であるアルギン酸粒子が得られたことを確認した。得られた微粒子のCV値は18.2%であった。なお、算術平均粒子径は、SEM写真で観察した粒子の粒子径をそれぞれ測定し、観察した粒子の平均粒子径として算出した。
【0044】
[実施例2]
噴霧器の射出条件を空気圧300kPa、空気量5.0NL/分、噴霧量0.11ml/分の条件に変更したこと、および、射出時間を600秒としたこと以外は実施例1と同様にしてアルギン酸粒子を得た。図4は実施例2のろ過工程後のろ紙のSEM写真(倍率15000倍)である。図5は実施例2のろ過工程後のろ紙のSEM写真(倍率20000倍)である。SEM観察から、算術平均粒子径が1μm以下(約0.8μm)であるアルギン酸粒子が得られたことを確認した。得られた微粒子のCV値は9.8%であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の実施形態の製造方法、および、製造装置は、粒子径が小さく、より単分散な微粒子を製造することができる。これらの製造方法、および、製造装置で得られた微粒子は、医薬品、食品、化粧品、農薬に好適に用いることができる。また、本発明の実施形態のアルギン酸微粒子は、医薬品等の医療用用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 液滴生成部
20 反応部
30 液容器
40 微細化促進部
50 ノズル
60 液滴
100 微粒子製造装置
図1
図2
図3
図4
図5