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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029232
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20250227BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 W
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133728
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 光太
(72)【発明者】
【氏名】原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健一
(72)【発明者】
【氏名】小西 信
(72)【発明者】
【氏名】中原 正仁
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS01
5H730BB21
5H730BB57
5H730BB84
5H730BB91
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE22
5H730EE57
5H730EE59
5H730EE73
5H730FD01
5H730FD31
5H730FD61
5H730FF09
5H730FG01
5H730XX04
5H730XX12
5H730XX15
5H730XX19
5H730XX25
5H730XX32
5H730XX35
5H730XX38
5H730XX41
5H730XX50
(57)【要約】
【課題】発熱を抑制することができる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置(1a)は、一次側巻線(TR1)と一次側巻線とは絶縁された二次側巻線(TR2A)とを有する絶縁トランス(TR)と、出力電圧が可変でかつ出力電圧によって一次側巻線を励起する交流電源(PS)と、を有する電源入力回路と、二次側巻線に接続されると共に、一次側巻線の励起によって二次側巻線から入力された交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する電源出力回路(2aA)と、交流電源の出力電圧及び電源出力回路から負荷に出力する直流電圧を制御する電圧制御部(10)と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側巻線と前記一次側巻線とは絶縁された二次側巻線とを有する絶縁トランスと、出力電圧が可変でかつ出力電圧によって前記一次側巻線を励起する交流電源と、を有する電源入力回路と、
前記二次側巻線に接続されると共に、前記一次側巻線の励起によって前記二次側巻線から入力された交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する電源出力回路と、
前記交流電源の出力電圧及び前記電源出力回路から前記負荷に出力する直流電圧を制御する電圧制御部と、を備えた
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記交流電源は、出力電圧及び出力周波数が可変であり、
前記電圧制御部は、前記交流電源の出力電圧及び出力周波数並びに前記電源出力回路から前記負荷に出力する直流電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源出力回路を含む複数の電源出力回路を備え、
前記絶縁トランスは、前記一次側巻線とは絶縁された前記二次側巻線を含む複数の二次側巻線を有し、
前記複数の電源出力回路は、前記複数の二次側巻線のそれぞれに接続されると共に、前記一次側巻線の励起によって前記複数の二次側巻線から入力された交流電圧を直流電圧に変換して複数の負荷へ出力する
ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項4】
前記電源出力回路を含む複数の電源出力回路を備え、
前記絶縁トランスは、前記一次側巻線を含む複数の一次側巻線と、前記複数の一次側巻線のそれぞれに対応して配置され、前記複数の一次側巻線とは絶縁された前記二次側巻線を含む複数の二次側巻線と、を有し、
前記複数の電源出力回路は、前記複数の二次側巻線のそれぞれに接続されると共に、前記複数の一次側巻線の励起によって前記複数の二次側巻線から入力された交流電圧を直流電圧に変換して複数の負荷へ出力する
ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源出力回路は、予め設定された電圧と前記負荷に出力される直流電圧との差が予め設定された閾値を超えた場合に報知する報知部を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電源装置。
【請求項6】
前記電源出力回路は、予め設定された電圧と前記負荷に出力される直流電圧との差が予め設定された閾値を超えた場合に、前記負荷への直流電圧の出力を遮断する遮断部を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流の商用電源の交流電圧を直流電圧に変換し、負荷に直流電圧を印加する電源装置が知られている(特許文献1参照)。この電源装置は、商用電源から電源トランスの一次巻線に供給された交流電圧によって電源トランスの二次巻線に誘起された交流電圧を整流及び平滑化し、負荷に印加する直流電圧をレギュレータで調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-209573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、商用電源は、-85V~+115Vの範囲で電圧の変動が想定される。このため、特許文献1に記載の電源装置は、電源トランスの一次巻線に供給される電圧が低い場合でも負荷に印加する直流電圧を維持するように電源トランスが構成されていると、一次巻線に供給される電圧が高い場合には、一次巻線に供給される電圧が低い場合よりもレギュレータで調整する際の電位差が大きくなり、電源装置が発熱しやすいという課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するものであって、発熱を抑制することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電源装置は、一次側巻線と一次側巻線とは絶縁された二次側巻線とを有する絶縁トランスと、出力電圧が可変でかつ出力電圧によって一次側巻線を励起する交流電源と、を有する電源入力回路と、二次側巻線に接続されると共に、一次側巻線の励起によって二次側巻線から入力された交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する電源出力回路と、交流電源の出力電圧及び電源出力回路から負荷に出力する直流電圧を制御する電圧制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電圧制御部によって絶縁トランスの一次側巻線を励起する交流電源の出力電圧を制御するので、絶縁トランスの二次側巻線からの交流電圧を、負荷へ印加するための直流電圧に変換する際の発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る電源装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図2】実施の形態1の変形例に係る電源装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図3】実施の形態2に係る電源装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
(1)構成の詳細な説明
図1は、実施の形態1に係る電源装置1aの全体構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、電源装置1aは、交流電源PSと、絶縁トランスTRと、複数の電源出力回路2aA、2aB、・・・、2aNと、上位制御システム10と、を備えており、例えば、商用交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して、図示しない電気製品等の負荷に出力する。なお、実施の形態1において、交流電源PS及び絶縁トランスTRは、電源入力回路を構成する。また、本開示において、Nは、2以上の任意の自然数である。
【0010】
交流電源PSは、交流を絶縁トランスTRに出力する。詳しくは、交流電源PSは、商用交流電源からの交流周波数及び交流電圧を変化させることで、商用交流電源よりも高周波数の正弦波交流を絶縁トランスTRに出力する可変式の電源である。
【0011】
絶縁トランスTRは、交流電源PSから負荷に出力する出力直流電圧Vdcを作るための電圧を取得する。絶縁トランスTRは、交流電源PSに接続されている一次側巻線TR1と、複数の二次側巻線TR2A、TR2B、・・・、TR2Nと、を有している。複数の二次側巻線TR2A~TR2Nは、それぞれ、電源出力回路2aA~2aNに接続されている。
【0012】
電源出力回路2aAは、整流ダイオードブリッジ11Aと、平滑コンデンサ12Aと、制御回路部13Aと、を有しており、整流ダイオードブリッジ11A及び平滑コンデンサ12Aによって、整流平滑回路が構成されている。整流平滑回路は、入力側に二次側巻線TR2Aが接続されており、出力側に制御回路部13Aが接続されている。制御回路部13Aは、マイコン制御部14Aと、レギュレータ回路15Aと、を有している。レギュレータ回路15Aは、出力直流電圧Vdcを制御する。なお、制御回路部13Aには、図示しない直流電源からマイコン制御部14A及びレギュレータ回路15Aを駆動するための電流が供給されている。
【0013】
電圧制御部としての上位制御システム10は、電源装置1aの全体を制御する機能及び電源装置1aの稼動状態を監視する機能を備えている。上位制御システム10は、電源出力回路2aA~2aNの各マイコン制御部と接続されている。具体的には、上位制御システム10は、電源出力回路2aAと設定電圧指令信号通信ライン及び通信ラインによって接続されている。設定電圧指令信号通信ラインは、上位制御システム10からの設定電圧指令信号SVRefAを電源出力回路2aAに伝達する。通信ラインは、マイコン制御部14Aが収集する装置稼動情報をモニター信号SMoAとして上位制御システム10に伝達する。例えば、通信ラインが上位制御システム10に伝達する装置稼動情報は、負荷に印加する出力直流電圧Vdc、及び負荷に印加する出力直流電流If及びレギュレータ回路15Aの温度に関する情報を含む。また、上位制御システム10は、信号ラインによって交流電源PSと接続されている。信号ラインは、上位制御システム10から、交流電源PSの出力電源を制御するための交流電源出力指令値SVPSを交流電源PSに伝達する。
【0014】
マイコン制御部14Aは、整流平滑回路からの正極側の直流電圧V+、負極側の直流電圧V-及び負荷に出力される出力直流電圧Vdcを検出する配線が接続されている。また、マイコン制御部14Aは、レギュレータ回路15Aの制御素子16n、16pを駆動制御する不図示のアンプを有している。アンプは、上位制御システム10からの設定電圧指令信号SVRefAと、検出した出力直流電圧Vdcの値と、レギュレータ回路15Aに入力される直流電圧V+及び直流電圧V-と、を監視比較して、出力直流電圧Vdcを安定させるように、レギュレータ回路15Aの制御素子16n、16pを駆動制御する。マイコン制御部14Aは、負荷に印加される電圧、電流及びレギュレータ回路の温度等の装置稼動情報の監視を行い、上位制御システム10にモニター信号SMoAとして逐次伝達する。
【0015】
電源出力回路2Bは、整流ダイオードブリッジ11Bと、平滑コンデンサ12Bと、制御回路部13Bと、を有しており、制御回路部13Bは、マイコン制御部14Aと、レギュレータ回路15Aと、を有している。なお、電源出力回路2aA~2aNの構成は、互いに同様であるため、電源出力回路2aB~2aNについての図示及び説明を一部省略する。
【0016】
以下、電源出力回路2aAの動作について説明する。交流電源PSは、出力直流電圧Vdcを得るために、上位制御システム10から交流電源出力指令値SVPSを受けて、絶縁トランスTRの一次側巻線TR1に対し、交流電源出力指令値SVPSに応じた電圧を印加する。一次側巻線TR1に電圧が印加されると、一次側巻線TR1及び二次側巻線TR2Aの巻き数比に応じた交流が、絶縁トランスTRの二次側巻線TR2Aから出力される。二次側巻線TR2Aから出力された交流は、整流ダイオードブリッジ11A及び平滑コンデンサ12Aで構成される整流平滑回路によって整流及び平滑されて直流に変換され、レギュレータ回路15Aの制御素子16n、16pに入力される。
【0017】
例えば、レギュレータ回路15Aは、金属酸化膜半導体電解効果トランジスタ(MOSFET;Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であるn型MOSFET(以下「nMos」という。)を有する制御素子16nと、p型MOSFET(以下「pMos」という。)を有する制御素子16pと、が配置された相補型の回路として形成されており、整流・平滑された直流電源のV+側にnMosが接続され、直流電源のV-側にpMosが接続され、nMosとpMosとの接続中間点から直流電圧を負荷に出力するように構成されている。
【0018】
そして、制御素子16n、16pのそれぞれのMOSFETは、マイコン制御部14Aからの制御駆動指令をそれぞれのゲート入力部Gに受け、負荷側に印加される電流をシンクまたはソースさせながら出力直流電圧Vdcを制御指令電圧に安定化制御するように構成されている。なお、電源出力回路2aB~2aNの動作は、電源出力回路2aAの動作と同様であるため、説明を省略する。なお、負荷への印加電流が大きい場合、図示していないが、レギュレータ回路は、並列に設けられることとなる。このことは、後述する実施の形態2についても同様である。
【0019】
一方、絶縁トランスTRの電源となる交流電源PSは、絶縁トランスTRの一次側巻線TR1に交流を印加する電源であり、印加する交流の出力指令値は、周波数値と電圧値とが含まれる。上位制御システム10は、負荷に印加する出力電圧値、及び負荷状況に応じて得られた装置の稼動情報から、レギュレータ回路15Aの制御素子16n、16pが電圧制御を行う際の熱損失を抑制して、安定した出力直流電圧Vdcを得るための指令値を交流電源PSに伝達する。なお、交流周波数指令値は、電源入力回路のリアクタンスを考慮して、概ね400~500Hz程度である。
【0020】
図2は、実施の形態1の変形例に係る電源装置1bの全体構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、電源装置1bは、交流電源PSと、絶縁トランスTRと、複数の電源出力回路2bA、2bB、・・・、2bNと、上位制御システム10と、を備えており、電源出力回路2bAは、スイッチSW1Aを有している。電源装置1bのマイコン制御部14Aは、負荷に印加される出力直流電圧Vdc、出力直流電流If及びレギュレータ回路15Aの温度監視と異常検知を行う。電源装置1bのマイコン制御部14Aは、過電流、過電圧、温度異常等の異常を検知した場合、スイッチSW1Aに異常遮断信号SEMSを出力し、当該系統のスイッチSW1Aを遮断する。言い換えると、電源装置1bのマイコン制御部14Aは、予め設定された閾値を超える電流、予め設定された閾値を超える電圧、及び予め設定された閾値を超える温度等の異常を検知した場合、スイッチSW1Aに異常遮断信号SEMSを出力することで、当該系統のスイッチSW1Aを遮断することで、負荷への直流電圧の出力を遮断する。なお、制御回路部13AにはスイッチSW1Aとは異なる経路で直流電流が供給されているため、スイッチSW1Aの遮断は、制御回路部13Aの動作に影響がない。また、このようなマイコン制御部14Aは、予め設定された電圧と負荷に出力される直流電圧との差が予め設定された閾値を超えた場合に、負荷への直流電圧の出力を遮断する遮断部を構成する。
なお、マイコン制御部14Aは、予め設定された閾値を超える電流、予め設定された閾値を超える電圧、及び予め設定された閾値を超える温度のうち少なくとも1つを検知した場合、負荷への直流電圧の出力を何らかの手段で遮断する機能を有していればよく、例えば、マイコン制御部は、異常遮断信号を電源装置と負荷との間に配置された図示しないスイッチに出力することで、当該スイッチを作動させることにより、負荷への直流電圧の出力を遮断するように構成されていてもよい。
また、例えば、マイコン制御部は、閾値を超える電流、電圧及び温度のうちいずれか1つを検知した場合、電源入力回路の特定の部位において回路を遮断することで、負荷への直流電圧の出力を遮断するように構成されていてもよいし、電源出力回路の特定の部位において回路を遮断することで、負荷への直流電圧の出力を遮断するように構成されていてもよい。また、マイコン制御部は、閾値を超える電流、電圧及び温度のうちいずれか1つを検知した場合、絶縁トランスの一次側巻線に接続されている回路を遮断することで、負荷への直流電圧の出力を遮断するように構成されていてもよいし、絶縁トランスの二次側巻線に接続されている回路を遮断することで、負荷への直流電圧の出力を遮断するように構成されていてもよい。
【0021】
なお、マイコン制御部14Aは、負荷に印加される出力直流電圧Vdc、出力直流電流If及びレギュレータ回路15Aの温度を直接監視するように構成されているものに限定されない。例えば、マイコン制御部14Aは、電源出力回路2cAにおける特定部位の電圧及び電流を監視することによって、間接的に負荷に印加される出力直流電圧Vdc及び出力直流電流Ifを監視するように構成されていてもよいし、電源装置の所定部位の温度又は所定位置の気温等を監視することによって、レギュレータ回路15Aの温度を間接的に監視するように構成されていてもよい。
【0022】
また、電源出力回路2bAは、マイコン制御部14Aの異常を検出して、スイッチSW1Aによって特定の系統を遮断した場合、上位制御システム10で該当する系統の異常を液晶表示装置、LED等の図示しない表示部によって表示する等、当該系統の電源出力回路2bAに異常が生じたことを報知するように構成されていてもよい。なお、マイコン制御部14Aは、予め設定された電圧と負荷に出力される直流電圧との差が予め設定された閾値を超えた場合に報知する報知部を構成する。
【0023】
電源出力回路2bBは、スイッチSW1Bを有している。なお、電源出力回路2bB~2bNの構成は、電源出力回路2bAと同様であるため、説明を省略する。
【0024】
(2)実施例の要点と特徴
以上のとおり、本開示の実施の形態1に係る電源装置1a、1bは、上位制御システム10によって絶縁トランスTRの一次側巻線TR1を励起する交流電源PSの出力電圧を制御するので、絶縁トランスの二次側巻線TR2A~TR2Nからの交流電圧を、負荷へ印加するための直流電圧に変換する際の発熱を抑制することができる。例えば、電源装置1a、1bは、商用交流電源よりも高い周波数の交流電源を絶縁トランスTRの一次側巻線TR1に印加し、複数の二次側巻線TR2A~TR2Nに励起された交流を、接続されたそれぞれの電源出力回路2aA~2aN、2bA~2bNで直流に変換するように構成されている。絶縁トランスTRは、磁束密度の関係によって、周波数が高い方がサイズを小さくできる。このため、電源装置1a、1bは、従来よりも小型化することが可能になる。
【0025】
また、電源装置1a、1bは、上位制御システム10を備えており、絶縁トランスTRの二次側巻線TR2A~TR2Nのそれぞれに接続された電源出力回路2aA~2aN、2bA~2bNに設けられたマイコン制御部14A~14Nは、負荷に印加される出力直流電圧Vdc、出力直流電流If、又はレギュレータ回路15A~15Nの温度等の装置稼動情報の監視を行い、装置稼動情報を、上位制御システム10に伝達する機能を有しているので、上位制御システム10によって負荷に対する印加条件をリアルタイムで監視することができ、絶縁トランスTRに入力される交流電源PSの印加条件を最適化した値で出力するよう交流電源PSに指令して、直流変換することができる。このことにより、レギュレータ回路15A~15Nでは、電圧ドロップを抑制した直流電圧制御が可能になると共に、さらにnMosとpMosで構成された相補回路において、負荷に印加される電流をシンクとソースの作用により直流電圧を安定化する制御のため、電圧ドロップが小さいことによる発熱抑制の効果があり、冷却構造も小さくでき、電源装置の小型化を図ることができる。
【0026】
実施の形態2.
(1)構成の詳細な説明
次に、図3を参照して、実施の形態2に係る電源装置1cについて説明する。
実施の形態2に係る電源装置1cは、実施の形態1に係る電源装置1a、1bが一つの一次側巻線に対して複数の二次側巻線を備えているのに対し、複数の一次側巻線と各一次側巻線に対応して配置されている複数の二次側巻線とを備えている点が異なる。なお、電源装置としての基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、実施の形態1と同一、または同等である部分についてはその説明を省略する。
【0027】
図3において、絶縁トランスTRA、TRB、・・・、TRNは、一次側巻線TR1A、TR1B、・・・、TR1Nと、二次側巻線TR2A、TR2B、・・・、TR2Nが、それぞれ一対のトランスを構成しており、それぞれの二次側巻線TR2A~TR2Nに、電源出力回路2cA、2cB、・・・、2cNがそれぞれ接続されている。各電源出力回路の構成は実施の形態1と同様である。
【0028】
絶縁トランスTRA~TRNの一次側巻線TR1A~TR1Nのそれぞれの一端には、スイッチSW11A、SW11B、・・・、SW11Nを介して交流電源PSの出力が接続されており、他端には、交流電源PSのN側に接続されている。従って、絶縁トランスと直流電源出力回路は一対の構成の多出力電源装置となっている。交流電源PSは、実施の形態1と同様、出力の周波数と電圧とが外部からの指令により可変出力できるもので、商用交流周波数よりも高い周波数の交流を一次側巻線TR1A~TR1Nに印加することが可能になっている。
【0029】
電源装置1cにおいて、上位制御システム10およびマイコン制御部は実施の形態1と同様であり、電源出力の稼動情報からの異常伝達により、マイコン制御部が異常系統の遮断を行う手段についても実施の形態1と同様であるが、電源装置1cにおいては、絶縁トランスの一次側に接続してある各系統のスイッチを遮断することによって、各負荷への直流電圧の出力を遮断する点が、実施の形態1とは異なる。
【0030】
(2)実施例の要点と特徴
以上のとおり、本開示の実施の形態2に係る電源装置1cは、多出力とした電源装置であるが、絶縁トランスは、それぞれ電源出力に対応するように個々に備えている。また、電源装置1cは、実施の形態1と同様、商用交流電源よりも高い周波数の交流を絶縁トランス一次側に印加可能になっており、商用交流電源よりも高い周波数の交流が印加されることにより、磁束密度の関係から周波数が高い方がサイズを小さくすることができる。また、複数電源出力対応に備えた個々の絶縁トランスは、電流容量が小さいトランスサイズでよく、絶縁トランスと、直流生成の電源出力回路と、を一枚の基板に実装することで電源装置を小型化することができる。
【0031】
なお、上述したいずれの実施の形態においても、電源装置は、複数の電源出力回路を備えているものに限らず、単一の電源出力回路を備えているものであってもよい。また、本開示は、各実施の形態の自由な組合せ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0032】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0033】
(付記1)
一次側巻線と前記一次側巻線とは絶縁された二次側巻線とを有する絶縁トランスと、出力電圧が可変でかつ出力電圧によって前記一次側巻線を励起する交流電源と、を有する電源入力回路と、
前記二次側巻線に接続されると共に、前記一次側巻線の励起によって前記二次側巻線から入力された交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する電源出力回路と、
前記交流電源の出力電圧及び前記電源出力回路から前記負荷に出力する直流電圧を制御する電圧制御部と、を備えた
ことを特徴とする電源装置。
(付記2)
前記交流電源は、出力電圧及び出力周波数が可変であり、
前記電圧制御部は、前記交流電源の出力電圧及び出力周波数並びに前記電源出力回路から前記負荷に出力する直流電圧を制御する
ことを特徴とする付記1記載の電源装置。
(付記3)
前記電源出力回路を含む複数の電源出力回路を備え、
前記絶縁トランスは、前記一次側巻線とは絶縁された前記二次側巻線を含む複数の二次側巻線を有し、
前記複数の電源出力回路は、前記複数の二次側巻線のそれぞれに接続されると共に、前記一次側巻線の励起によって前記複数の二次側巻線から入力された交流電圧を直流電圧に変換して複数の負荷へ出力する
ことを特徴とする付記1または2記載の電源装置。
(付記4)
前記電源出力回路を含む複数の電源出力回路を備え、
前記絶縁トランスは、前記一次側巻線を含む複数の一次側巻線と、前記複数の一次側巻線のそれぞれに対応して配置され、前記複数の一次側巻線とは絶縁された前記二次側巻線を含む複数の二次側巻線と、を有し、
前記複数の電源出力回路は、前記複数の二次側巻線のそれぞれに接続されると共に、前記複数の一次側巻線の励起によって前記複数の二次側巻線から入力された交流電圧を直流電圧に変換して複数の負荷へ出力する
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項記載の電源装置。
(付記5)
前記電源出力回路は、予め設定された電圧と前記負荷に出力される直流電圧との差が予め設定された閾値を超えた場合に報知する報知部を備えた
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項記載の電源装置。
(付記6)
前記電源出力回路は、予め設定された電圧と前記負荷に出力される直流電圧との差が予め設定された閾値を超えた場合に、前記負荷への直流電圧の出力を遮断する遮断部を備えた
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項記載の電源装置。
【符号の説明】
【0034】
1a 電源装置、1b 電源装置、1c 電源装置、2aA 電源出力回路、2aB 電源出力回路、2aN 電源出力回路、2bA 電源出力回路、2bB 電源出力回路、2bN 電源出力回路、2cA 電源出力回路、2cB 電源出力回路、2cN 電源出力回路、10 上位制御システム(電圧制御部)、11A 整流ダイオードブリッジ、11B 整流ダイオードブリッジ、12A 平滑コンデンサ、12B 平滑コンデンサ、13A 制御回路部、13B 制御回路部、14A マイコン制御部(報知部、遮断部)、14B マイコン制御部(報知部、遮断部)、14N マイコン制御部(報知部、遮断部)、15A レギュレータ回路、15B レギュレータ回路、15N レギュレータ回路、16n 制御素子、16p 制御素子、G ゲート入力部、SW11A スイッチ、SW11B スイッチ、SW11N スイッチ、SW1A スイッチ、SW1B スイッチ、TR 絶縁トランス(電源入力回路)、TRA 絶縁トランス(電源入力回路)、TRB 絶縁トランス(電源入力回路)、TR1 一次側巻線、TR1A 一次側巻線、TR1B 一次側巻線、TR1N 一次側巻線、TR2A 二次側巻線、TR2B 二次側巻線、TR2N 二次側巻線、PS 交流電源(電源入力回路)。
図1
図2
図3