(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029238
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20250227BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133749
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 健
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB16
2C056KB33
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】インク循環経路に配置された各インクヘッドからのインク吐出精度の向上を図ることが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】経路長が異なる複数のインク循環経路と、前記各インク循環経路の途中に設けられたインクヘッドとを備え、前記各インクヘッドに掛かるインク圧力が略等しく構成されているインクジェット記録装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路長が異なる複数のインク循環経路と、前記各インク循環経路の途中に設けられたインクヘッドとを備え、
前記各インクヘッドに掛かるインク圧力が略等しく構成されている
インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記各インク循環経路に流れるインク圧力の調整により、前記各インクヘッドに掛かるインク圧力が略等しく構成されている
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記複数のインク循環経路は、インク供給路とインク回収路とを共通経路として共有し、
前記各インク循環経路は、前記インク供給路と前記インク回収路との間に前記各インクヘッドを接続するための個別経路を含む
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記複数のインク循環経路は、前記個別経路に狭窄部を設けることにより、前記各インクヘッドに掛かるインク圧力が調整されている
請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記個別経路は、前記インク供給路と前記各インクヘッドとを接続する個別供給路と、前記インク回収路と前記各インクヘッドとを接続する個別回収路とであり、
前記狭窄部は、前記個別供給路と前記個別回収路の両方に設けられている
請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記複数のインク循環経路のうち経路長が短いインク循環経路ほど、前記狭窄部による狭窄度合いが高いことにより、前記各インクヘッドに掛かるインク圧力が略等しく調整されている
請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記複数のインク循環経路は、前記狭窄部の長さによって前記狭窄度合いが調整されている
請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記共通経路に対して前記各インクヘッドが等間隔で接続されている場合において、前記経路長が長い順に前記複数のインク循環経路に順位[x]を付与したとき、[x]番目のインク循環経路に設けた前記狭窄部の長さ[L]は、順位[x]の二乗に比例する
請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
さらに、前記狭窄部の長さ[L]は、前記共通経路に対する前記各インクヘッドの接続間隔[d]に比例する
請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記狭窄部は、前記個別経路に内設された筒状部材からなる
請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記複数のインク循環経路は、前記筒状部材の長さによって前記狭窄部の狭窄度合いが調整されている
請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記複数のインク循環経路は、前記個別経路に対して直列に内設された前記筒状部材の数により前記狭窄部の狭窄度合いが調整されたものである
請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記複数のインク循環経路は、前記筒状部材の開口面積により前記狭窄部の狭窄度合いが調整されたものである
請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記複数のインク循環経路は、前記筒状部材の開口径により前記狭窄部の狭窄度合いが調整されたものである
請求項13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記複数のインク循環経路は、前記筒状部材に設けられた貫通孔の数により前記狭窄部の狭窄度合いが調整されたものである
請求項13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記複数のインク循環経路のうち、複数の前記筒状部材が直列に内設されているインク循環経路は、前記筒状部材の貫通孔の位相のずれによって前記狭窄部の狭窄度合いが調整されている
請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記インク供給路はインクタンクに貯留されたインクを前記各インクヘッドに供給し、前記インク回収路は前記各インクヘッドから回収したインクをインクタンクに貯留させる
請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、ヘッドに設けられた複数のノズルからインクを射出することにより、記録媒体に画像を形成する。このようなインクジェット記録装置の中には、複数のヘッドに対してインクを循環供給するための循環経路を備えたものがある。例えば下記特許文献1には、各ヘッドに接続された各個別供給経路および各個別回収経路に、流体抵抗を変化できる側流体抵抗可変部を設けた構成が記載されている。これらの流体抵抗可変部は、復元可能に変形可能な液体経路と、液体経路の周囲を覆う真空チャンバとを備えており、真空チャンバを加圧することで、液体経路を押しつぶして流体抵抗を高くする。これにより、循環経路のメンテナンス作業において、メンテナンスを行う特定のヘッドからのみインクを吸引し、それ以外のヘッドからのインクの吸引を抑制できるため、無駄に消費される液体量(インク量)を抑制できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記インクの循環経路は、共通のインク供給経路とインク回収経路との間に、個別供給経路と個別回収経路を介してヘッドを並列に接続させた構成である。このため、共通のインク供給経路およびインク回収経路に対するヘッドの接続位置により、ヘッド毎のインク循環経路は、経路長が異なるものとなる。さらにヘッド毎にインクが分岐して流れているため、上流側のヘッドと下流側のヘッドの共通インク供給経路ではインクの流量に差がでる。これにより、各ヘッドに対するインクの圧力損失にも差が生じる。このような圧力損失の差は、各ヘッドにかかるインク圧力の制御を困難とし、各ヘッドからのインク吐出精度の向上を妨げる要因となっている。
【0005】
そこで本発明は、インク循環経路に配置された各インクヘッドからのインク吐出精度の向上を図ることが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、経路長が異なる複数のインク循環経路と、前記各インク循環経路の途中に設けられたインクヘッドとを備え、前記各インクヘッドに掛かるインク圧力が略等しく構成されているインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、インク循環経路に配置された各インクヘッドからのインク吐出精度の向上を図ることが可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置の要部の構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニットの構成図である。
【
図3】
図3は、ヘッド位置と狭窄部長さとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を適用したインクジェット記録装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置1の要部の構成図であり、インク供給部の構成を示す。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、ヘッドユニット10、インク供給ユニット20、圧力調整ユニット30を備えている。
【0010】
このうちヘッドユニット10およびインク供給ユニット20は、インク経路100を構成する。インク経路100は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、およびレッド(R)等の各色に対応して設けられている。ここでは、1つのインク経路100のみを図示したが、各色に対応するインク経路100c,100m、100y、100k、100rが、1つの圧力調整ユニット30を共有する。
【0011】
以下、各ユニットの構成を、インク供給ユニット20、ヘッドユニット10、圧力調整ユニット30の順に説明する。
【0012】
≪インク供給ユニット20≫
インク供給ユニット20は、インク2が貯留されたメインタンク21、共通サブタンク23、供給側サブタンク25、および戻り側サブタンク26を備えている。
【0013】
メインタンク21と共通サブタンク23とは、配管22によって接続されている。配管22は、ポンプ22pを有する。ポンプ22pは、共通サブタンク23内のフロートセンサーからの信号に基づいて作動し、メインタンク21から共通サブタンク23にインク2を供給する。これにより、共通サブタンク23内のインク量が所定量に保たれる。
【0014】
また、共通サブタンク23と供給側サブタンク25とは、配管24によって接続されている。配管24は、ポンプ24pおよび脱気モジュール24fを有する。ポンプ24pは、供給側サブタンク25内のフロートセンサーからの信号に基づいて作動し、共通サブタンク23から供給側サブタンク25にインクを供給する。これにより、供給側サブタンク25内のインク量が所定量に保たれる。また脱気モジュール24fは、インク内に溶けている気泡を除去する。
【0015】
また、共通サブタンク23と戻り側サブタンク26とは、配管27によって接続されている。配管27は、ポンプ27pを有する。ポンプ27pは、戻り側サブタンク26内のフロートセンサーからの信号に基づいて作動し、戻り側サブタンク26から共通サブタンク23にインクを戻す。これにより、戻り側サブタンク26内のインク量が所定量に保たれる。なお供給側サブタンク25と戻り側サブタンク26とは、共通のサブタンクであってもよい。
【0016】
≪ヘッドユニット10≫
図2は、実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニット10の構成図であり、
図1におけるヘッドユニット10部分を拡大した図である。
図1および
図2に示すように、ヘッドユニット10は、複数のインクヘッド11、共通インク供給路12、個別供給路13、共通インク回収路14、および個別回収路15を備える。これらは次のようである。
【0017】
<インクヘッド11>
インクヘッド11は、インクの供給ポート110および排出ポート111を有する。またここでの図示は省略したが、各インクヘッド11は、供給ポート110に連通する圧力室と、圧力室に連通する複数のノズルとを有する。各インクヘッド11は、インクヘッド11内にある圧力室から供給されたインクに駆動電圧を加えることにより、各ノズルからのインクの吐出を制御する。また、各圧力室は、排出ポート111に連通しており、圧力室内部にある気泡や増粘したインクは、排出ポート111からインクヘッド11の外に排出される。これにより、各インクヘッド11は、常時、圧力室内部にインクが充填された状態に保たれ、常に正常にインクを吐出できる構成となっている。
【0018】
各インクヘッド11は、以降に説明する共通インク供給路12と共通インク回収路14との間に、個別供給路13および個別回収路15を介して並列に接続されている。これにより、共通インク供給路12と、各個別供給路13と、各インクヘッド11と、各個別回収路15aと、共通インク回収路14とで、経路長の異なる各インク循環経路が構成されている。各インク循環経路は、供給側サブタンク25から戻り側サブタンク26までのインクヘッド11を含むインクの循環経路である。各インクヘッド11を含むインク循環経路は、経路長が異なること、および共通インク供給路12における各個別供給路13の分岐部間を流れるインク量が違うことにより圧力損失に差が生じている。
【0019】
<共通インク供給路12>
共通インク供給路12は、各インクヘッド11にインクを供給するため配管である。この共通インク供給路12は、各インクヘッド11に共通の配管であり、供給側サブタンク25に接続されている。
【0020】
<個別供給路13>
個別供給路13は、共通インク供給路12から枝分かれした配管であり、共通インク供給路12に対して各インクヘッド11の供給ポート110を並列に接続する。各個別供給路13は、狭窄部131を有している。狭窄部131は、次のようである。
【0021】
[狭窄部131]
狭窄部131は、個別供給路13におけるインク圧力を調整するためのものである。狭窄部131は、供給側サブタンク25から各インクヘッド11までの経路長によることなく、各インクヘッド11に掛かるインク圧力が略等しくなるように設けられている。このような狭窄部131は、経路長が異なるインク循環経路に生じる圧力損失の差に応じて設けられている。
【0022】
ここで、各個別供給路13は、供給側サブタンク25に近い順に個別供給路13a,13b,…とする(
図2参照)。また各個別供給路13a,13b,…に配置された狭窄部131を、狭窄部131a,131b,…とし、各個別供給路13a,13b,…に接続されたインクヘッド11を、インクヘッド11a,11b,…とする。
【0023】
図3は、ヘッド位置と狭窄部長さとの関係を示す図である。
図3において、横軸のヘッド位置[x]は、供給側サブタンク25から各インクヘッド11までの距離の順位、すなわちインク循環経路の経路長の順位を示している(
図2参照)。供給側サブタンク25から最も遠く配置されたインクヘッド11のヘッド位置[x]は、ヘッド位置[x]=1である。
図3に示した例は、1つのヘッドユニット10が8個のインクヘッド11を備えている場合であり、供給側サブタンク25に最も近く配置されたインクヘッド11aのヘッド位置[x]=8である。また
図3において、縦軸の狭窄部長さ[L]は、各インクヘッド11に接続された個別供給路13における狭窄部131の長さである。
【0024】
図3に示すように、ヘッド位置[x]が大きいほど、すなわち供給側サブタンク25に近いインクヘッド11ほど、このインクヘッド11に接続されている個別供給路13の狭窄部131の狭窄部長さ[L]が長い。つまり、経路長が短いインク循環経路ほど、狭窄部長さ[L]が長いことによる狭窄部131の狭窄度合いが高く、狭窄の程度が大きいため、狭窄による圧力損失が大きい。
【0025】
また狭窄部長さ[L]は、ヘッド位置[x]の二乗([x2])に比例する。ただしこの場合、各個別供給路13a,13b,…の開口面積、および狭窄部131a,131b,…の開口面積は同一であり、各個別供給路13a,13b,…が、共通インク供給路12に対して等しい間隔[d]に接続されていることとする。さらに、狭窄部長さ[L]は、共通インク供給路12に対する各インクヘッド11の接続間隔[d]に比例する。
【0026】
図4は、個別流路における狭窄部の構成を示す図である。
図4に示すように、各狭窄部131a,131b,…は、例えば各個別供給路13a,13b,…に内設された筒状部材によって構成されている。
狭窄部131a,131b,…を構成する筒状部材において、貫通孔130aの開口径[r]が同一の場合、それぞれの長さ[La],[Lb],…は、ヘッド位置[x]の二乗([x
2])に比例する。ヘッド位置[x]とは、狭窄部131a,131b,…を有する各個別供給路13a,13b,…が接続されたているインクヘッド11の位置である。このような筒状部材を用いた狭窄部131a,131b,…は、成型が容易である。
【0027】
<共通インク回収路14>
図1および
図2に戻り、共通インク回収路14は、各インクヘッド11からインクを回収するため配管である。この共通インク回収路14は、各インクヘッド11に共通の配管であり、戻り側サブタンク26に接続されている。
【0028】
<個別回収路15>
個別回収路15は、共通インク回収路14から枝分かれした配管であり、共通インク回収路14に対して各インクヘッド11の排出ポート111を並列に接続する。各個別回収路15は、狭窄部151を有している。
【0029】
狭窄部151は、先に説明した個別供給路13の狭窄部131と同様のものである。この狭窄部151は、戻り側サブタンク26から各インクヘッド11までの経路長によることなく、各インクヘッド11に掛かるインク圧力が略等しくなるように設けられている。すなわち、
図2~
図4を用いて説明したように、戻り側サブタンク26に近いインクヘッド11ほど、このインクヘッド11に接続されている個別回収路15の狭窄部151の狭窄部長さ[L]が長い。各狭窄部151a,151b,…の長さ[L]は、個別供給路13の狭窄部131の長さ[L]と同様に、共通インク回収路14および各個別回収路15a,15b,…の長さによって適切な値に設定されることする。
【0030】
≪圧力調整ユニット30≫
図1に戻り、圧力調整ユニット30は、全てのインク経路100における供給側サブタンク25および戻り側サブタンク26の圧力をモニターし、各インク経路100のヘッドユニット10を循環するインクの流量を制御する。このような圧力調整ユニット30は、全てのインク経路100の供給側サブタンク25に接続された供給側エアタンク31と、戻り側サブタンク26に接続された戻り側エアタンク32とを有する。
【0031】
供給側エアタンク31には、供給側圧力計31a,31bが接続されている。これらの供給側圧力計31a,31bは、ヘッドユニット10と共にキャリッジに搭載された供給側圧力計31aと、プリンタ側に搭載された供給側圧力計31bである。また、供給側エアタンク31には、供給側圧力計31bと並列に加圧パージ室31cおよび圧力計31dが設けられている。加圧パージ室31cは、パージ圧を保つことにより、ヘッドメンテナンスを所定の圧力でパージすることができる。これらの加圧パージ室31cおよび圧力計31dは、プリンタ側に搭載されている。
【0032】
また戻り側エアタンク32には、戻り側圧力計32a,32bが接続されている。これらの戻り側圧力計32a,32bは、ヘッドユニット10と共にキャリッジに搭載された戻り側圧力計32aと、プリンタ側に搭載された戻り側圧力計32bである。
【0033】
本構成において、
図1を参照してインク2の流れを説明する。ユーザーによって設置されたメインタンク21は中にインク2が入っている。メインタンク21内のインク2は、ポンプ22pによりフィルタ(未図示)を通過し、共通サブタンク23内のフロートセンサーが検知する所定の量まで、共通サブタンク23に溜められる。
【0034】
供給側サブタンク23内の圧力は、供給側エアタンク31を介して供給側圧力計31a,31bによりモニターされる。また、供給側エアタンク31内の圧力は、プリンタ側に搭載された供給側圧力計31bでの測定値に基づいて、レギュレーター(図示省略)によって制御される。このことにより、供給側サブタンク25内の圧力は、供給側エアタンク31内の圧力により制御される。
【0035】
同様に、戻り側サブタンク26内の圧力は、戻り側エアタンク32を介して戻り側圧力計32a,32bによりモニターされる。また、戻り側エアタンク32内の圧力は、プリンタ側に搭載された戻り側圧力計32bでの測定値に基づいて、レギュレータ(図示せず)によって制御される。このことにより、戻り側サブタンク26内の圧力は、戻り側エアタンク32内の圧力により制御される。
【0036】
供給側エアタンク31と戻り側エアタンク32との圧力との差分により、供給側サブタンク25内のインクは、共通インク供給路12を通って各個別供給路13から各インクヘッド11に流れた後、共通インク回収路14から戻り側サブタンク26に送られる。
【0037】
また、供給側サブタンク25内のインクが減少することにより、供給側サブタンク25内のフロートセンサーが液面の低下を検知し、ポンプ24pを作動させることにより、供給側サブタンク25内のインク量を一定に保つ。ポンプ24pによりインクを送液するときは、インクが脱気モジュール24fを通過することにより、インク内に溶けている空気がインクから除去される。これにより、射出に適したインクをインクヘッド11へ供給することができる。
【0038】
戻り側サブタンク26内のインクが増加することにより、戻り側サブタンク26内のフロートセンサーが液面の増加を検知し、ポンプ27pを作動させることにより戻り側サブタンク26内のインクを共通サブタンク23に戻す。これにより、インクを各インクヘッド11に循環させるような経路が形成される。
【0039】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、経路長が異なる各インク循環経路の個別供給路13と個別回収路15とに、狭窄部131,151を設けたことで、各インク循環経路に生じる圧力損失を狭窄部131,151によって相殺し、インクヘッド11に掛かるインク圧力を略等しく構成した。これにより、各インクヘッド11からのインク吐出精度の向上を図ることができる。この結果、インクジェット記録装置1による印刷物の画質の向上を図ることができる。
【0040】
≪変形例1≫
図5は、狭窄部の変形例1を示す図である。
図5に示すように、個別供給路13に設けられた狭窄部131は、所定の長さ[L’]の筒状部材130を、複数個(図示した例では3個)繋げることで、
図3に示した各狭窄部長さ[L]としたものであってもよい。各筒状部材130は、中心軸に貫通孔130aを有することが好ましい。
【0041】
この場合、各筒状部材130の開口面積は同一であれば、筒状部材130の合計の長さを、
図3に示した各狭窄部長さ[L]とすることができる。また、個別供給路13に内設した筒状部材130間は、隙間を有していてもいなくてもよい。
【0042】
このような変形例1の構成とすることにより、1種類の筒状部材130で異なる長さ[L]の狭窄部131を、構成することが可能である。
【0043】
なお、筒状部材130は、1種類の長さ[L’]のものに限定されることはなく、複数種類の長さ[L’]のものを用意してもよい。複数種類の長さ[L’]の筒状部材130を組み合わせて用いることにより、
図3に示した様々な狭窄部長さ[L]の狭窄部131を容易に実現できる。以上は、個別回収路15の狭窄部151についても同様である。
【0044】
≪変形例2≫
図6は、狭窄部の変形例2を示す図である。
図6に示すように、個別供給路13に設けられた狭窄部131’は、貫通孔130aの開口面積によって、個別供給路13におけるインク圧力を調整する。この場合、供給側サブタンク25に近いインクヘッド11(
図2参照)ほど、このインクヘッド11に接続されている個別供給路13における狭窄部131’の貫通孔130aの数を少なくする。
【0045】
図6に示すように、供給側サブタンク25に最も近い個別供給路13aの狭窄部131’は、1つの貫通孔130aを有する。また、次に供給側サブタンク25に近い個別供給路13bの狭窄部131b’は、2つの貫通孔130aを有する。
【0046】
このような変形例2の構成であっても、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、貫通孔130aの開口面積は、貫通孔130aの数の他、貫通孔130aの径によって調整されていてもよい。また、貫通孔130aの開口面積は、貫通孔130aの数および径によって調整されていてもよい。さらに本変形例2は、
図4に示した実施形態の構成や変形例1の構成と組み合わせ、狭窄部131’における貫通孔130aの開口面積と、狭窄部131’の長さによって、個別供給路13のインク圧力を調整してもよい。以上は、個別回収路15の狭窄部151についても同様である。
【0048】
≪変形例3≫
図7は、狭窄部の変形例3を示す図であり、斜視図と平面図である。
図7に示すように、個別供給路13に設けられた狭窄部131が、複数の筒状部材130を繋げたものである場合、各筒状部材130は貫通孔130aの位相をずらして個別供給路13に内設されていてもよい。ただし、各筒状部材130の貫通孔130aが、隣接する筒状部材130で完全に塞がれることのないように、複数の筒状部材130が個別供給路13に内設されていることとする。
【0049】
変形例3の構成によれば、隣接する筒状部材130における貫通孔130aの位相のズレ度合いにより、インク圧力を調整した個別供給路13が得られる。以上は、個別回収路15の狭窄部151についても同様である。
【0050】
≪変形例4≫
図8は、狭窄部の変形例4を示す図であり、斜視図と平面図である。
図8に示すように、個別供給路13に設けられた狭窄部131”が、複数の筒状部材130”を繋げたものである場合、各筒状部材130”は複数の貫通孔130aを有するものであってもよい。そして、各筒状部材130”は、複数の貫通孔130aの位相をずらして個別供給路13に内設されていてもよい。ただし、各筒状部材130”の貫通孔130aが、隣接する筒状部材130”で塞がれることのないように、複数の筒状部材130”が個別供給路13に内設されていることとする。
【0051】
変形例4の構成であっても、隣接する筒状部材130”における貫通孔130aのズレ度合いにより、インク圧力を調整した個別供給路13が得られる。以上は、個別回収路15の狭窄部151についても同様である。
【0052】
なお、以上説明した変形例1~変形例4は、相互に組み合わせ可能であり、組み合わせることにより、インク圧力の細かな調整が容易となる。
【符号の説明】
【0053】
1…インクジェット記録装置
2…インク
11,11a~11d…インクヘッド
12…共通インク供給路
13,13a~13d…個別供給路(個別経路)
14…共通インク回収路
15,15a~15d…個別回収路(個別経路)
23…共通サブタンク(インクタンク)
25…供給側サブタンク(インクタンク)
26…戻り側サブタンク(インクタンク)
110…供給ポート(インクヘッド)
111…排出ポート(インクヘッド)
130,130”…筒状部材
130a…貫通孔
131,131’,131”,131a~131c,131a’~131b’…狭窄部
151,131a~131c…狭窄部
[d]…間隔
[L],[La]~[Ld]…狭窄部の長さ
[r]…開口径
[x]…順位