(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029244
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】セルロース配合再生ゴム
(51)【国際特許分類】
C08L 17/00 20060101AFI20250227BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20250227BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C08L17/00
C08K3/04
C08L91/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133760
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】川添 真幸
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB012
4J002AC131
4J002AE003
4J002DA036
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD023
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】含有するセルロースの分散性が高く、加硫再生ゴムとしたときに引張応力が優れる再生ゴムを提供する。
【解決手段】ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満である廃粉ゴムが、セルロースおよびオイルと混合され且つ脱硫されて得られた再生ゴムであって、廃粉ゴム100質量部に対して、このセルロースを1~20質量部、およびこのオイルを10~100質量部含む再生ゴムとすることにより、上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、前記カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満である廃粉ゴムが、セルロースおよびオイルと混合され且つ脱硫されて得られた再生ゴムであって、
前記廃粉ゴム100質量部に対して、前記セルロースを1~20質量部、および前記オイルを10~100質量部含む、再生ゴム。
【請求項2】
前記セルロースが粉末セルロースである、請求項1に記載の再生ゴム。
【請求項3】
前記セルロースがセルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルである、請求項1に記載の再生ゴム。
【請求項4】
前記廃粉ゴムと混合された前記オイルが石油由来オイルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の再生ゴム。
【請求項5】
前記廃粉ゴムと混合された前記オイルが非石油由来且つ天然物由来オイルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の再生ゴム。
【請求項6】
ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、前記カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満である廃粉ゴム、セルロース、オイル、ならびに脱硫剤を加熱混合し、脱硫粉ゴムを得る脱硫工程と、前記脱硫粉ゴムを用いて再生ゴムを形成する再生ゴム形成工程と、を備え、
前記脱硫工程における前記セルロースの量が前記廃粉ゴム100質量部に対して1~20質量部であり、前記オイルの量が前記廃粉ゴム100質量部に対して10~100質量部である、再生ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース配合再生ゴム、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷低減などの観点から、廃タイヤ等の使用済みゴム製品(廃ゴム製品)を廃粉ゴムとしてから脱硫処理して再生ゴムに加工することが行われている。しかし、この再生ゴムは、加硫後の物性が新ゴム(ヴァージンゴム)と比較して劣るという課題がある。
【0003】
そこで、様々な検討がなされており、例えば特許文献1では、廃ゴム製品を粉砕処理した後、所定の条件で脱硫処理および官能化処理を施して再生ゴム自体の反応性を高めて、加硫後のゴム物性を良好にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような処理を行った再生ゴムであっても、加硫再生ゴムとしたときに特に引張応力が充分でない場合が多くあった。これに対して、再生ゴム製造時にフィラーを添加して上記した引張応力を向上させる方法が考えられるが、このフィラーは再生ゴム中に分散させにくいという課題があり、特にフィラーとして近年注目されているセルロースを用いる場合にはこの課題が大きい。
【0006】
そこで本発明は、含有するセルロースの分散性が高く、加硫再生ゴムとしたときに引張応力が優れる再生ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満である廃粉ゴムが、セルロースおよびオイルと混合され且つ脱硫されて得られた再生ゴムであって、廃粉ゴム100質量部に対して、このセルロースを1~20質量部、およびこのオイルを10~100質量部含む再生ゴムが、含有するセルロースの分散性が高く、加硫再生ゴムとしたときに引張応力が優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の<1>~<6>である。
<1>ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、前記カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満である廃粉ゴムが、セルロースおよびオイルと混合され且つ脱硫されて得られた再生ゴムであって、前記廃粉ゴム100質量部に対して、前記セルロースを1~20質量部、および前記オイルを10~100質量部含む、再生ゴム。
<2>前記セルロースが粉末セルロースである、<1>に記載の再生ゴム。
<3>前記セルロースがセルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルである、<1>に記載の再生ゴム。
<4>前記廃粉ゴムと混合された前記オイルが石油由来オイルである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の再生ゴム。
<5>前記廃粉ゴムと混合された前記オイルが非石油由来且つ天然物由来オイルである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の再生ゴム。
<6>ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、前記カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満である廃粉ゴム、セルロース、オイル、ならびに脱硫剤を加熱混合し、脱硫粉ゴムを得る脱硫工程と、前記脱硫粉ゴムを用いて再生ゴムを形成する再生ゴム形成工程と、を備え、前記脱硫工程における前記セルロースの量が前記廃粉ゴム100質量部に対して1~20質量部であり、前記オイルの量が前記廃粉ゴム100質量部に対して10~100質量部である、再生ゴムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、含有するセルロースの分散性が高く、加硫再生ゴムとしたときに引張応力が優れる再生ゴムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満である廃粉ゴムが、セルロースおよびオイルと混合され且つ脱硫されて得られた再生ゴムであって、廃粉ゴム100質量部に対して、このセルロースを1~20質量部、およびこのオイルを10~100質量部含む再生ゴムである。また、上記廃粉ゴム、セルロース、オイル、ならびに脱硫剤を加熱混合し、脱硫粉ゴムを得る脱硫工程と、この脱硫粉ゴムを用いて再生ゴムを形成する再生ゴム形成工程と、を備え、脱硫工程におけるセルロースの量が廃粉ゴム100質量部に対して1~20質量部であり、オイルの量が廃粉ゴム100質量部に対して10~100質量部である再生ゴムの製造方法である。以下においては、これらを「本発明の再生ゴム」、「本発明の再生ゴムの製造方法」ともいう。
【0011】
なお、本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、特段の断りがない限り、「~」の前に記載される数値を下限値、および「~」の後に記載される数値を上限値とする数値範囲を意味する。
【0012】
以下、本発明の再生ゴムに用いられる材料や成分、その含有量などについて、詳細に説明する。
【0013】
[廃粉ゴム]
廃粉ゴムは、廃ゴム製品を粉状に加工して得られたものであり、例えば、廃タイヤ等の廃ゴム製品を粗砕、異物分離、分級、細粗砕、異物分離、および分級をこの順序で行って得られたものなどが例示される。特に、トラック用および/またはバス用の廃タイヤのトレッド部を粉状に加工して得られた廃粉ゴムであると、成分比の均一性が優れるためより好ましい。
【0014】
そして、本発明の再生ゴムに用いられる廃粉ゴムは、ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満の廃粉ゴムである。この廃粉ゴムに含まれるポリマー成分の主体(ポリマー成分の75質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上)はゴム成分であるが、これ以外に樹脂成分なども一部含まれていてよい。この廃粉ゴムのポリマー成分含有率の下限は42質量%以上であるのがより好ましい。上限は80質量%以下が例示され、75質量%以下であるのがより好ましい。また、カーボンブラック含有率は20~30質量%であるのがより好ましい。さらに、カーボンブラック以外の無機材料合計含有率上限は12質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。さらには、オイル含有率の上限は8質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
なお、カーボンブラック以外の無機材料としては、例えばシリカ、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)などが示される。ここで、この「シリカ」とは、二酸化ケイ素(SiO2)からなる、あるいは二酸化ケイ素を主成分とする(例えば80質量%以上、さらには90質量%以上含む)粒子物質を意味する。また、オイルとしては、後述する石油由来オイルなどが示される。
【0015】
限定されるものではないが、再生ゴムのタイヤ等への利用のし易さなどの観点から、この廃粉ゴムに含まれるポリマー成分はジエン系ゴムを含むのがより好ましく、このポリマー成分のうち天然ゴム(NR)が75質量%以上、さらには80質量%以上含まれるのがさらに好ましい。このジエン系ゴムは、ポリマー主鎖に二重結合を有するゴム成分であり、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが例示される。
【0016】
さらに、このポリマー成分に含まれるジエン系ゴムの重量平均分子量は、50000~3000000であることが好ましく、100000~2000000であることがより好ましい。
ここで、本発明において「重量平均分子量」とは、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定したものを意味する。また、このGPC測定は、測定器としてカラム(Polymer Laboratories社製、MIXED-B)を使用し、40℃において行う。
【0017】
また、本発明の再生ゴムに用いられる廃粉ゴムに含まれるカーボンブラックは、特に限定されず、ゴム製品に配合されている公知の任意のカーボンブラックが含まれていてよい。例えば、カーボンブラックの具体例としては、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF、FT、MT等の各種グレードのものが示される。そして、このカーボンブラックは、1種を単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。なお、2種以上を含む場合には、それらの合計が前述した含有量となっていればよい。
ここで、この「カーボンブラック」とは、工業的に品質制御して製造された直径3~500nm程度の一次粒子からなる炭素微粒子を意味する。
【0018】
さらに、本発明の再生ゴムに用いられる廃粉ゴムには、前述した組成を満たす限りにおいて、ステアリン酸、レシチン、シランカップリング剤、老化防止剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤(例えば、硫黄など)、加硫促進剤、加硫促進助剤などのゴム製品に一般的に使用される各種添加剤が含まれていてよい。しかしながら、本発明の再生ゴムに用いる廃粉ゴム中には、セルロースは実質的に含まれない。つまり、この廃粉ゴムはセルロースを実質的に含まない。
ここで、この「セルロースは実質的に含まれない(セルロースを実質的に含まない)」とは、廃粉ゴム中に含まれるセルロースの含有率が0.1質量%未満であることを意味する。
【0019】
[セルロース]
本発明の再生ゴムに配合される(前述した廃粉ゴムと混合される)セルロースは、例えば、粉末セルロースであってよい。これにより、比較的安価なセルロース配合再生ゴムとすることができる。ここで、この粉末セルロースには、後述するナノセルロースの粉末(例えばセルロースナノクリスタルの粉末など)は包含されない。この粉末セルロースとしては、概ね球状(形状未制御)の粉末セルロースとしてビスコパール(レンゴー社製品)など、繊維状の粉末セルロースとしてKCフロック(日本製紙社製品)などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
なお、この粉末セルロースの平均粒子径(D50)は、限定されるものではないが、1000μm以下であるのが好ましく、800μm以下であるのがさらに好ましく、600μm以下であるのがさらに好ましく、400μm以下であるのがさらに好ましく、250μm以下であるのがさらに好ましく、100μm以下であるのがさらに好ましい。下限は、5μm以上であってよく、さらには10μm以上であってもよい。ここで、この「平均粒子径(D50)」とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積基準の平均粒子径(体積積算分布50%径(D50))である。
【0020】
本発明の再生ゴムに配合される(前述した廃粉ゴムと混合される)セルロースは、セルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルであると好ましい。これらは前述した粉末セルロースよりもさらに再生ゴム中に分散させ難いものであるが、本発明の再生ゴムの構成はこれらの分散性も高めることができる。そして、これらを含む本発明の再生ゴムは、加硫再生ゴムとしたときに引張応力がより優れたものとなり易い。これらは、総称して「ナノセルロース」とも呼ばれ、平均繊維径が1~1000nmの極細繊維であり、平均繊維長さが0.5~5μmであるアモルファスを含むナノセルロースがセルロースナノファイバー(CNF、例えば日本製紙社製のCellenpiaなど)であり、これはミクロフィブリル化セルロースとも呼ばれる。また、平均繊維径が1~1000nmの極細繊維であり、平均繊維長さが0.1~0.5μmである結晶性の(例えば針状結晶、あるいは球状結晶の)ナノセルロースがセルロースナノクリスタル(CNC、例えばフィラーバンク社製のセルロースナノクリスタルなど)である。
【0021】
なお、セルロースナノファイバーおよびセルロースナノクリスタルの平均繊維径は前述したように1~1000nmであるが、これは1~200nmであるのが好ましい。また、これらの平均アスペクト比(平均繊維長さ/平均繊維径)は好ましくは10~1000、より好ましくは50~500である。平均繊維径が上記範囲未満および/または平均アスペクト比が上記範囲を超えると、再生ゴム中への分散性が低下し易い傾向がある。また平均繊維径が上記範囲を超過および/または平均アスペクト比が上記範囲未満であると、補強性能が低下し易い傾向がある。
【0022】
ここで、この「平均繊維径」および「平均繊維長さ」とは、TEM観察またはSEM観察により、構成する繊維の大きさに応じて適宜倍率を設定して電子顕微鏡画像を得て、この画像中の少なくとも50本以上において測定したときの繊維径および繊維長さの平均値を意味する。そして、このようにして得られた平均繊維長さおよび平均繊維径から、平均アスペクト比を算出する。
【0023】
なお、これらのセルロース(ナノセルロースの場合は原料となるセルロース)は、木材由来または非木材(バクテリア、藻類、綿など)由来のいずれでもよく、特段限定されない。また、上記したナノセルロースの作製方法としては、例えば、原料となるセルロースに水を加え、ミキサー等により処理して、水中にセルロースを分散させたスラリーを調製し、これを高圧式や超音波式などの装置によって直接機械的なせん断力をかけて解繊する方法や、このスラリーに酸化処理やアルカリ処理、酸加水分解などの化学処理を施し、セルロースを変性して解繊しやすくしてから分散機などによって機械的なせん断力をかけて解繊する方法が例示される。このように化学処理を施してから解繊することにより、セルロースを低いエネルギーでより細かく均質に解繊することができ、化学変性ナノセルロース(化学修飾ナノセルロース)なども容易に得ることができる。なお、化学処理としては、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(以下、「TEMPO」という)、4-アセトアミド-TEMPO、4-カルボキシ-TEMPO、4-アミノ-TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPO、4-フォスフォノオキシ-TEMPO、リン酸エステル、過ヨウ素酸、水酸化アルカリ金属および二硫化炭素などの化学処理剤による処理を挙げることができる。また、セルロースの機械的解繊を行ってから化学処理を行ってもよい。さらに、前述した化学処理に加えて、解繊工程のあとにセルラーゼ処理、カルボキシメチル化、エステル化、カチオン性高分子による処理などを施すこともできる。
【0024】
本発明の再生ゴムは、このようなセルロースが廃粉ゴムを脱硫する際にオイルとともに配合されて製造される。そして、廃粉ゴム100質量部に対して、このセルロースを1~20質量部含む。この上限は、セルロースの分散性などの観点から、18質量部以下であるのがより好ましく、15質量部以下であるのがさらに好ましく、12質量部以下であるのがさらに好ましい。下限は、加硫再生ゴムとしたときの引張応力などの観点から、2質量部以上であるのがより好ましく、3質量部以上であるのがさらに好ましく、5質量部以上であるのがさらに好ましく、8質量部以上であるのがさらに好ましい。
【0025】
[オイル]
本発明の再生ゴムに配合される(前述した廃粉ゴムと混合される)オイルは、廃粉ゴムの脱硫工程において上記したセルロースとともに配合することにより、セルロースの分散性を高める成分である。そして、このオイルは、例えば、石油由来オイルであってよい。この石油由来オイルは、石油から得られたオイルであって、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract)オイル(シェルルブリカンツジャパン社製品)などのプロセスオイル等が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0026】
なお、このオイルは、非石油由来且つ天然物由来オイルであるのがより好ましい。つまり、石油由来ではなく、且つ、動植物、微生物、またはそれらの一部から得られたオイルであるのがより好ましい。前述したセルロースとの親和性がより高く、その分散性を高め易いからである。特に、この観点から、非石油由来且つ天然物由来オイルのうち木材由来オイルがより好適である。この木材由来オイルとしては、トール油(松材などの木材からのクラフトパルプ製造時に得られる粗トール油、トール油脂肪酸、トールロジン、蒸留トール油等)などが好ましいものとして例示されるが、これに限定されるものではない。なお、この木材由来オイルは、脂肪酸および樹脂酸(例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、およびデヒドロアビエチン酸からなる群から選ばれる1以上)を合計で50質量%超含むものがより好適であり、この脂肪酸に対する樹脂酸の質量比(樹脂酸/脂肪酸)が0.9以上、さらには1.0以上、さらには1.1以上であるものがさらに好適である。なお、この上限は2.0以下であるのがより好ましく、1.8以下であるのがさらに好ましく、1.5以下であるのがさらに好ましい。
【0027】
本発明の再生ゴムは、このようなオイルが廃粉ゴムを脱硫する際にセルロースとともに混合されて製造される。そして、廃粉ゴム100質量部に対して、このオイルを10~100質量部含む。この上限は、セルロースの分散性や加硫再生ゴムとしたときの引張応力などの観点から、80質量部以下であるのがより好ましく、60質量部以下であるのがさらに好ましく、50質量部以下であるのがさらに好ましく、40質量部以下であるのがさらに好ましく、35質量部以下であるのがさらに好ましい。下限は、セルロースの分散性などの観点から、12質量部以上であるのがより好ましく、15質量部以上であるのがさらに好ましく、20質量部以上であるのがさらに好ましく、25質量部以上であるのがさらに好ましい。なお、前述した廃粉ゴムがオイルを含有するものであっても、上記にはこの廃粉ゴム由来のオイルの量は含まれず、これは脱硫の際に配合されたオイルの量(配合量)である。しかしながら、この配合量が上記を満たしつつ、廃ゴム由来のオイルの量とこの配合されたオイルの量との合計量も、上記した廃粉ゴム100質量部(廃粉ゴム由来オイルを含んだ量)に対して10~100質量部とするのがより好ましく、15~80質量部とするのがさらに好ましく、20~50質量部とするのがさらに好ましい。そして、本発明の再生ゴムは、廃粉ゴム由来のオイルの量よりもこの配合されたオイルの量の方が多い(含有量が高い)構成である。
【0028】
なお、限定されるものではないが、本発明の再生ゴムでは、セルロースの分散性などの観点から、前述したセルロースの量に対するこのオイルの量の比が所定の範囲内となっていると好ましい。
具体的には、セルロースに対するオイルの質量比(オイル/セルロース)が1~10であるのが好適である。この下限は2以上であるのがより好ましい。この上限は8以下であるのがより好ましく、5以下であるのがさらに好ましい。これも、配合されたセルロースとオイルとの質量比であるが、さらに、これを満たしつつ、配合されたセルロースの量に対する廃ゴム由来のオイルの量および配合されたオイルの量の合計の質量比も上記範囲内とするのがより好ましい。
【0029】
[その他の成分]
本発明の再生ゴムには、本発明の効果に影響を与えない範囲において、上記以外の成分が含まれていてよい。また、未反応の脱硫剤なども含まれていてよい。しかしながら、本発明の再生ゴムには、新ゴム成分(ヴァージンのゴム成分)は含まれない。つまり、廃粉ゴムから再生ゴムを形成する過程で、新ゴム成分は配合されない。したがって、本発明の再生ゴムに含まれるゴム成分は全て前述した廃粉ゴム由来のゴム成分(再生ゴム成分)である。さらに、本発明の再生ゴムには加硫剤は含まれない。つまり、本発明の再生ゴムは実質的に未加硫の再生ゴムである。
【0030】
[製造方法]
本発明の再生ゴムは、以下のような製造方法(本発明の再生ゴムの製造方法)によって得られたものであるのが好ましい。
具体的には、前述した、ポリマー成分含有率が40質量%以上、カーボンブラック含有率が15~35質量%、カーボンブラック以外の無機材料合計含有率が15質量%以下、およびオイル含有率が10質量%未満である廃粉ゴム、セルロース、およびオイルと、脱硫剤とを加熱混合し、脱硫粉ゴムを得る脱硫工程と、この脱硫粉ゴムを用いて再生ゴムを形成する再生ゴム形成工程と、を備え、脱硫工程におけるセルロースの量が廃粉ゴム100質量部に対して1~20質量部であり、オイルの量が廃粉ゴム100質量部に対して10~100質量部である製造方法が好適である。そして、これらの量は、前述したようなセルロース量、オイル量、およびこれらの質量比となるようにしてもよい。さらに、脱硫工程で配合されるセルロースは、前述したような粉末セルロース、セルロースナノファイバー、またはセルロースナノクリスタルであると好適である。また、脱硫工程で配合されるオイルについても、前述したような石油由来オイルまたは非石油由来且つ天然物由来オイルであると好適である。ここで、この本発明の再生ゴムの製造方法におけるオイルの量は、脱硫工程で混合されるオイルの量(配合量)を意味し、廃粉ゴム由来のオイルの量は含まれない。
【0031】
例えば、粉砕工程や細砕工程として廃タイヤ等の廃ゴム製品を粗砕、異物分離、分級、細粗砕、異物分離、および分級をこの順序で行って得られた上記組成の廃粉ゴムを用いて、脱硫工程として所定量のセルロース、所定量のオイル、および脱硫剤を加熱混合(150~250℃、3~5時間の条件等)して脱硫粉ゴムを得て、この脱硫粉ゴムを用いて再生ゴム形成工程としてリファイニング(ロール)、ストレーニング、シーティング等を行って再生ゴムを形成する方法などであってよい。また、本発明の効果に影響を与えない範囲において、他の添加成分の使用も可能である。しかしながら、前述したように、本発明の再生ゴムの製造方法では新ゴム成分および加硫剤の添加混合は行わない。
なお、上記した脱硫剤としては、ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(ノクタイザーSS、大内新興化学社製)などが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0032】
以上のような本発明の再生ゴムの製造方法等によって得られた本発明の再生ゴムは、廃粉ゴムの脱硫工程において配合されたセルロースの分散性が同時に配合されたオイルの作用によってより高まったものとなり、加硫再生ゴムとしたときに引張応力が優れる再生ゴムとなる。つまり、本発明の再生ゴムは、セルロースをオイルとともに脱硫工程で添加混合することにより、セルロースの分散性がより高まったセルロース配合再生ゴム(セルロース含有再生ゴム)となっている。
【0033】
そして、この本発明の再生ゴムをゴム組成物に配合しても、得られるゴム組成物の力学特性などが低下しにくく、つまり実用的なリサイクルゴム材料として好適に利用することができる。特に、タイヤ用ゴム組成物への配合材料とするとより好適である。
【0034】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0035】
(再生ゴムおよび加硫再生ゴム試験片の作製および評価)
下記表1に示す再生ゴムおよび加硫再生ゴム試験片を作製した。
【0036】
具体的には、まず下記表1の上段に示す質量部の各成分と、脱硫剤(ジベンズアミドジフェニルジスルフィド:ノクタイザーSS、大内新興化学社製)1質量部とを、オートクレーブ内で200℃程度に加熱して4時間混合し、脱硫工程を行った。その後、この処理物をオートクレーブから放出し、常法によりリファイニング(ロール)、ストレーニング、冷却等を行って再生ゴムを得た。なお、セルロースナノファイバーは、水分散液としてから脱硫工程で添加した。さらに、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて、上記で得られた各再生ゴムに加硫促進剤および硫黄を所定量混合して混錬し、これを所定の金型中において170℃10分間プレス加硫して加硫再生ゴム試験片も作製した。
【0037】
そして、得られた参考例、比較例1~4、および実施例1~3の再生ゴムについて、ISO 11345(E法)に準拠してフィラー(比較例1~4および実施例1~3は脱硫工程で配合したセルロースも含めたフィラー)の分散性の測定を行い評価した。なお、この分散性の評価は、10点満点で7点以上を〇、9点以上を◎とした。
また、得られた参考例、比較例1~4、および実施例1~3の加硫再生ゴム試験片について、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251:2010に準拠して行い、100%モジュラス(M100:MPa)を室温(20℃)にて測定した。なお、下記表1では、参考例の加硫再生ゴム試験片のM100値を100とする指数(index%)で表した。
【0038】
【0039】
上記表1中における各成分の詳細な内容は以下の通りである。
・廃タイヤ粉ゴム:PolyDyne80(105μmメッシュパス30質量%以上の粉ゴム、ポリマー成分含有率42質量%以上、カーボンブラック含有率25~30質量%、カーボンブラック以外の無機材料の合計含有率8質量%以下、オイル含有率5質量%以下、Lehigh Technologies社製)
・粉末セルロース:ビスコパールD-30(平均粒子径(D50)20~40μm、レンゴー社製)
・セルロースナノファイバー:酸化セルロースナノファイバー(CNF;日本製紙社製,Cellenpia)
・TDAE:TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract)オイル(エキストラクト4号;石油由来、シェルルブリカンツジャパン社製)
・トール油:松由来の粗トール油(松材からのクラフトパルプ製造(アルカリ蒸解)の際に得られる黒液を酸で中和して得られた、脂肪酸および樹脂酸を合計で80質量%以上含むもの。脂肪酸に対する樹脂酸の質量比(樹脂酸/脂肪酸)は約1.2であり、樹脂酸として少なくともアビエチン酸、ネオアビエチン酸、およびパラストリン酸を含む。)
【0040】
まず、分散性の結果から、脱硫工程において廃タイヤ粉ゴムに所定量のセルロース(粉末セルロースまたはセルロースナノファイバー)および所定量のオイル(TDAEまたは粗トール油)を配合して加熱混合することにより、配合したセルロースも含めたフィラーの分散性が高い再生ゴムが得られることが示された(実施例1~3)。特に、オイルとして松由来の粗トール油を用いた実施例3は、この分散性が極めて高かった。
一方で、オイルの配合量が所定の範囲外である比較例1、2や、セルロースの配合量が多い比較例4は、セルロースも含めたフィラーの分散性(特に脱硫工程で添加したセルロースの分散性)が低かった。
【0041】
さらに、加硫再生ゴム試験片の試験結果から、フィラーの分散性が高い再生ゴムから得られた実施例1~3の加硫再生ゴム試験片は、参考例の加硫再生ゴム試験片よりも引張応力が優れたものであることが明らかとなった。特に、オイルとして松由来の粗トール油を用いた実施例3は、引張応力も極めて優れていた。
一方で、フィラーの分散性が低い再生ゴムから得られた比較例1、2、4の加硫再生ゴム試験片は、引張応力が参考例の加硫再生ゴム試験片より低く、さらに、フィラーの分散性は高いがセルロースの配合量が少ない再生ゴムから得られた比較例3の加硫再生ゴム試験片も、引張応力が参考例の加硫再生ゴム試験片より低かった。