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  • -再生ゴム含有ゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029245
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】再生ゴム含有ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20250227BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20250227BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250227BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 17/00 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20250227BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L1/02
C08L17/00
C08L91/00
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133761
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】川添 真幸
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA03
3D131AA06
3D131BA05
3D131BA12
3D131BB04
3D131BC07
3D131BC22
3D131BC39
3D131LA28
4J002AB013
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC132
4J002AE004
4J002DA036
4J002DJ016
4J002DJ017
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD024
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】再生ゴムを含みながら、発熱し難く且つ耐カット性が優れたゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム、カーボンブラックおよび/またはシリカ、ならびにセルロース含有再生ゴムが配合され、このジエン系ゴム100質量部に対して、上記カーボンブラックおよびシリカを合計で30~100質量部ならびに上記セルロース含有再生ゴムを5~25質量部含むゴム組成物とすることにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム、カーボンブラックおよび/またはシリカ、ならびにセルロース含有再生ゴムが配合されたゴム組成物であって、
前記ジエン系ゴム100質量部に対して、前記カーボンブラックおよび前記シリカを合計で30~100質量部ならびに前記セルロース含有再生ゴムを5~25質量部含む、ゴム組成物。
【請求項2】
前記セルロース含有再生ゴムが、セルロースを0.5~16質量%含有するセルロース含有再生ゴムである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記セルロース含有再生ゴムに含まれるセルロースが粉末セルロースである、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記セルロース含有再生ゴムに含まれるセルロースがセルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルである、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記セルロース含有再生ゴムが石油由来オイルを含有するセルロース含有再生ゴムである、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記セルロース含有再生ゴムが非石油由来且つ天然物由来オイルを含有するセルロース含有再生ゴムである、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ゴム含有ゴム組成物、およびその再生ゴム含有ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷低減などの観点から、廃タイヤ等の使用済みゴム製品(廃ゴム製品)を廃粉ゴムとしてから脱硫処理して再生ゴムに加工し、新ゴム成分(ヴァージンのゴム成分)とともにゴム組成物に配合して再利用することなどが行われている。しかし、この再生ゴムは加硫後の物性が新ゴム(ヴァージンゴム)と比較して劣るため、再生ゴムを配合したゴム組成物の物性が悪くなり、実用レベルに達していなかったり、使用対象が制限されたりするという課題がある。
【0003】
そこで、様々な検討がなされており、例えば特許文献1では、廃ゴム製品を粉砕処理した後、所定の条件で脱硫処理および官能化処理を施して再生ゴム自体の反応性を高めて、加硫後のゴム物性を良好にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-212377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような処理を行った再生ゴムを配合したゴム組成物であっても、力学特性などの性能が充分に得られない場合が多くあった。特に、建設車両用などのタイヤ製造に用いるゴム組成物は、耐カット性と低発熱性(発熱し難い特性)とが両立されたものが求められるが、このようなゴム組成物に再生ゴムを用いると、耐カット性と低発熱性とを両立させることが極めて難しく(特に低発熱性の維持が難しく)、当業界においては、建設車両用などのタイヤ製造に適した、耐カット性と低発熱性とが両立された再生ゴム含有ゴム組成物の開発が求められていた。
【0006】
そこで本発明は、再生ゴムを含みながら、発熱し難く且つ耐カット性が優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、ジエン系ゴム、カーボンブラックおよび/またはシリカ、ならびにセルロース含有再生ゴムが配合され、このジエン系ゴム100質量部に対して、上記カーボンブラックおよびシリカを合計で30~100質量部ならびに上記セルロース含有再生ゴムを5~25質量部含むゴム組成物が、再生ゴムを含みながら、発熱し難く且つ耐カット性が優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の<1>~<7>である。
<1>ジエン系ゴム、カーボンブラックおよび/またはシリカ、ならびにセルロース含有再生ゴムが配合されたゴム組成物であって、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、前記カーボンブラックおよび前記シリカを合計で30~100質量部ならびに前記セルロース含有再生ゴムを5~25質量部含む、ゴム組成物。
<2>前記セルロース含有再生ゴムが、セルロースを0.5~16質量%含有するセルロース含有再生ゴムである、<1>に記載のゴム組成物。
<3>前記セルロース含有再生ゴムに含まれるセルロースが粉末セルロースである、<1>または<2>に記載のゴム組成物。
<4>前記セルロース含有再生ゴムに含まれるセルロースがセルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルである、<1>または<2>に記載のゴム組成物。
<5>前記セルロース含有再生ゴムが石油由来オイルを含有するセルロース含有再生ゴムである、<1>~<4>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<6>前記セルロース含有再生ゴムが非石油由来且つ天然物由来オイルを含有するセルロース含有再生ゴムである、<1>~<4>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再生ゴムを含みながら、発熱し難く且つ耐カット性が優れたゴム組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のタイヤの実施形態の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、ジエン系ゴム、カーボンブラックおよび/またはシリカ、ならびにセルロース含有再生ゴムが配合され、このジエン系ゴム100質量部に対して、上記カーボンブラックおよびシリカを合計で30~100質量部ならびに上記セルロース含有再生ゴムを5~25質量部含むゴム組成物、ならびに、このゴム組成物を用いたタイヤである。以下においては、これらを「本発明のゴム組成物」、および「本発明のタイヤ」ともいう。
【0012】
なお、本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、特段の断りがない限り、「~」の前に記載される数値を下限値、および「~」の後に記載される数値を上限値とする数値範囲を意味する。
【0013】
以下、本発明のゴム組成物に含まれる成分や材料、その含有量などについて、詳細に説明する。
【0014】
[ジエン系ゴム(新ゴム成分のジエン系ゴム)]
本発明のゴム組成物に配合される新ゴム成分(ヴァージンのゴム成分)のジエン系ゴムは、ポリマー主鎖に二重結合を有するゴム成分であり、具体的には、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、合成イソプレンゴム(IR)などが例示される。そして、このようなジエン系ゴムを単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
特に、本発明のゴム組成物においては、この新ゴム成分のジエン系ゴムがNRおよび/またはIRを含むのが好ましい。さらに、建設車両用タイヤに用いる観点などから、このジエン系ゴムが、NRおよび/またはIRを合計で好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むジエン系ゴムであるとより好適であり、NRおよび/またはIRからなるジエン系ゴムであってもよい。特に、この新ゴム成分のジエン系ゴムがNRからなるのが好適である。
【0016】
また、このジエン系ゴムの重量平均分子量はいずれも、50000~3000000であることが好ましく、100000~2000000であることがより好ましい。さらに、これらはいずれも、ビニルモノマーによりグラフト変性されているものや有機過酸によりエポキシ化されているものであってもよい。
ここで、本発明において「重量平均分子量」とは、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定したものを意味する。また、このGPC測定は、測定器としてカラム(Polymer Laboratories社製、MIXED-B)を使用し、40℃において行う。
【0017】
なお、本発明のゴム組成物にはジエン系ゴム以外の新ゴム成分が含まれていてもよいが、含有する新ゴム成分のうち90質量%以上がジエン系ゴムであるのが好ましく、95質量%以上がジエン系ゴムであるのがより好ましく、含有する新ゴム成分がジエン系ゴムからなる(100質量%ジエン系ゴムである)のがさらに好ましい。
【0018】
[カーボンブラック]
本発明のゴム組成物に配合されるカーボンブラックは、特段限定されず、タイヤ等の用途で用いられる公知の任意のカーボンブラックを用いることができる。例えば、カーボンブラックの具体例としては、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF、FT、MT等の各種グレードのものを使用することができる。そして、このカーボンブラックは、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。なお、このカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、特に建設車両用タイヤに用いる観点などから、70~145m2/gのものであるのが好ましく、85~130m2/gであるのがより好ましい。なお、このカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が70m2/g未満であると、ゴム組成物の耐カット性を維持し難くなり易い傾向がある。また、このカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が145m2/gを超えると、ゴム組成物の低発熱性を維持し難くなり易い傾向がある。
なお、この「カーボンブラック」とは、工業的に品質制御して製造された直径3~500nm程度の一次粒子からなる炭素微粒子を意味する。また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に従って測定された値である。
【0019】
そして、本発明のゴム組成物では、建設車両用タイヤに用いる観点などから、このカーボンブラックを上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対して30~60質量部含むのが好ましい。さらに、この量は、このジエン系ゴム100質量部に対して35質量部以上であるのがより好ましく、また50質量部以下、さらには45質量部以下であるのがより好ましい。なお、このカーボンブラックの量が上記したジエン系ゴム100質量部に対して30質量部未満であると、ゴム組成物の耐カット性を維持し難くなり易い傾向がある。また、このカーボンブラックの量が上記したジエン系ゴム100質量部に対して60質量部を超えると、ゴム組成物の低発熱性を維持し難くなり易い傾向がある。
ここで、この量は上記したカーボンブラックの配合量であって、後述するセルロース含有再生ゴム中に上記した所定のカーボンブラックが含まれる場合でも、本発明のゴム組成物における所定のカーボンブラックの作用の十分な発揮という観点から、配合量として上記範囲内とするのが好ましい。しかしながら、配合量が上記を満たしつつ、セルロース含有再生ゴム由来の量も含めた(これと配合量との)合計量も上記範囲内としてもよい。
【0020】
[シリカ]
本発明のゴム組成物に配合されるシリカは、特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている公知の任意のシリカを用いることができる。具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられ、このようなシリカを単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、建設車両用タイヤに用いる観点などから、本発明のゴム組成物に含まれるシリカのCTAB比表面積が110~200m2/gであるのがより好ましく、150~180m2/gであるのがさらに好ましい。
なお、この「シリカ」とは、二酸化ケイ素(SiO2)からなる、あるいは二酸化ケイ素を主成分とする(例えば80質量%以上、さらには90質量%以上含む)粒子物質を意味する。また、シリカのCTAB比表面積は、「ISO5794/1」に従って測定された値である。
【0021】
そして、本発明のゴム組成物では、建設車両用タイヤに用いる観点などから、このシリカを上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対して10~40質量部含むのが好ましい。さらに、この量は、このジエン系ゴム100質量部に対して20質量部以上であるのがより好ましく、また30質量部以下であるのがより好ましい。なお、このシリカの量が上記したジエン系ゴム100質量部に対して10質量部未満または40質量部超であると、ゴム組成物の耐カット性を維持し難くなり易い傾向がある。
ここで、この量も上記したシリカの配合量であって、後述するセルロース含有再生ゴム中にシリカが含まれる場合でも、本発明のゴム組成物におけるシリカの作用の十分な発揮という観点から、配合量として上記範囲内とするのが好ましい。しかしながら、配合量が上記を満たしつつ、セルロース含有再生ゴム由来の量も含めた(これと配合量との)合計量も上記範囲内としてもよい。
【0022】
そして、本発明のゴム組成物は、上記したカーボンブラックまたはシリカのうち少なくとも1つが配合され、且つ、上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対してこのカーボンブラックおよびシリカを合計で30~100質量部含む。さらに、この量は、このジエン系ゴム100質量部に対して40質量部以上であるのがより好ましく、50質量部以上であるのがさらに好ましく、55質量部以上であるのがさらに好ましい。また90質量部以下であるのがより好ましく、80質量部以下であるのがさらに好ましく、75質量部以下であるのがさらに好ましい。なお、この量が上記したジエン系ゴム100質量部に対して30質量部未満であると、ゴム組成物の耐カット性が十分とならない。また、この量が上記したジエン系ゴム100質量部に対して100質量部を超えると、ゴム組成物の低発熱性を維持できない。
さらに、このカーボンブラックおよびシリカの合計含有量が上記範囲を満たしつつ、カーボンブラックの含有量および/またはシリカの含有量が前述した範囲内となるような構成とするとより好適である。
【0023】
[ロジン系樹脂]
本発明のゴム組成物は、特に建設車両用タイヤに用いる観点などから、ロジン系樹脂が配合されているのが好ましい。本発明のゴム組成物に配合されるロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジンおよびフマル化ロジン等の変性ロジン、これらのロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステルおよびトリエチレングリコールエステルなどのエステル誘導体、ならびにロジン変性フェノール樹脂等が挙げられ、このようなロジン系樹脂を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、重合ロジンまたはロジンエステル誘導体がより好ましいものとして挙げられる。特に、建設車両用タイヤに用いる観点から、本発明のゴム組成物に含まれるロジン系樹脂の軟化点は90~120℃であるのがより好ましく、95~115℃であるのがさらに好ましい。同様の理由から、本発明のゴム組成物に含まれるロジン系樹脂の酸価は80~130KOHmg/gであるのがより好ましく、90~120KOHmg/gであるのがさらに好ましい。
なお、ロジン系樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2015に準拠した方法で測定された値である。また、ロジン系樹脂の酸価は、樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定された値である。
【0024】
そして、本発明のゴム組成物では、このロジン系樹脂を上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対して0.2~10質量部含むのが好ましい。さらに、この量は、上記したジエン系ゴム100質量部に対して1質量部以上であるのがより好ましく、2質量部以上であるのがさらに好ましく、3質量部以上であるのがさらに好ましく、4質量部以上であるのがさらに好ましく、また9質量部以下であるのがより好ましく、8質量部以下であるのがさらに好ましい。なお、このロジン系樹脂の量が上記したジエン系ゴム100質量部に対して0.2質量部未満であると、ゴム組成物の耐カット性を維持し難くなり易い傾向がある。また、このロジン系樹脂の量が上記したジエン系ゴム100質量部に対して10質量部を超えると、ゴム組成物の低発熱性を維持し難くなり易い傾向がある。
ここで、この量も上記したロジン系樹脂の配合量であって、後述するセルロース含有再生ゴム中にロジン系樹脂が含まれる場合でも、本発明のゴム組成物におけるロジン系樹脂の作用の十分な発揮という観点から、配合量として上記範囲内とするのが好ましい。しかしながら、配合量が上記を満たしつつ、セルロース含有再生ゴム由来の量も含めた(これと配合量との)合計量も上記範囲内としてもよい。
【0025】
[セルロース含有再生ゴム]
本発明のゴム組成物には、セルロースを含有する再生ゴムであるセルロース含有再生ゴムが配合される。つまり、本発明のゴム組成物は再生ゴム含有ゴム組成物である。そして、本発明のゴム組成物は、所定の組成において再生ゴムとしてこのセルロース含有再生ゴムを含むことにより、再生ゴムを含みながら耐カット性および低発熱性がいずれも優れたゴム組成物となっている。このセルロース含有再生ゴムは、廃ゴム製品からリサイクルして得られた再生ゴムのうちセルロースを含むものであって、本発明のゴム組成物に配合する前の段階では実質的に未加硫である。限定されるものではないが、例えば、廃タイヤ等の廃ゴム製品を粗砕、異物分離、分級、細粗砕、異物分離、および分級をこの順序で行って得られた廃粉ゴム(廃タイヤ粉ゴム等)に、セルロース、オイル、および脱硫剤(例えばジベンズアミドジフェニルジスルフィド(ノクタイザーSS、大内新興化学社製)など)を添加して加熱混合して脱硫し、脱硫粉ゴムを得て、この脱硫粉ゴムを用いて形成されたセルロース含有再生ゴム(再生粉ゴム等)などが例示される。
【0026】
このセルロース含有再生ゴム中のセルロース含有率は、本発明の効果が十分に発揮され易くなることから、0.5~16質量%であるのが好ましい。この下限は、1質量%以上であるのがより好ましく、2質量%以上であるのがさらに好ましく、3質量%以上であるのがさらに好ましく、4質量%以上であるのがさらに好ましく、5質量%以上であるのがさらに好ましい。上限は、14質量%以下であるのがより好ましく、12質量%以下であるのがさらに好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましく、9質量%以下であるのがさらに好ましく、8質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0027】
そして、このセルロース含有再生ゴムに含まれるセルロースは、例えば、粉末セルロースであってよい。これにより、比較的安価なセルロース含有再生ゴムとすることができる。ここで、この粉末セルロースには、後述するナノセルロースの粉末(例えばセルロースナノクリスタルの粉末など)は包含されない。この粉末セルロースは、概ね球状(形状未制御)の粉末セルロースとしてビスコパール(レンゴー社製品)など、繊維状の粉末セルロースとしてKCフロック(日本製紙社製品)などが例示されるが、これに限定されるものではない。
なお、この粉末セルロースの平均粒子径(D50)は、限定されるものではないが、1000μm以下であるのが好ましく、800μm以下であるのがさらに好ましく、600μm以下であるのがさらに好ましく、400μm以下であるのがさらに好ましく、250μm以下であるのがさらに好ましく、100μm以下であるのがさらに好ましい。下限は、5μm以上であってよく、さらには10μm以上であってもよい。ここで、この「平均粒子径(D50)」とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積基準の平均粒子径(体積積算分布50%径(D50))である。
【0028】
そして、このセルロース含有再生ゴムに含まれるセルロースは、セルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルであると好ましい。これらが含まれるセルロース含有再生ゴムは、特に、本発明のゴム組成物の耐カット性をより向上させ易いからである。これらは、総称して「ナノセルロース」とも呼ばれ、平均繊維径が1~1000nmの極細繊維であり、平均繊維長さが0.5~5μmであるアモルファスを含むナノセルロースがセルロースナノファイバー(CNF、例えば日本製紙社製のCellenpiaなど)であり、これはミクロフィブリル化セルロースとも呼ばれる。また、平均繊維径が1~1000nmの極細繊維であり、平均繊維長さが0.1~0.5μmである結晶性の(例えば針状結晶、あるいは球状結晶の)ナノセルロースがセルロースナノクリスタル(CNC、例えばフィラーバンク社製のセルロースナノクリスタルなど)である。
【0029】
なお、セルロースナノファイバーおよびセルロースナノクリスタルの平均繊維径は前述したように1~1000nmであるが、これは1~200nmであるのが好ましい。また、これらの平均アスペクト比(平均繊維長さ/平均繊維径)は好ましくは10~1000、より好ましくは50~500である。平均繊維径が上記範囲未満および/または平均アスペクト比が上記範囲を超えると、再生ゴム中への分散性が低くなる傾向がある。また平均繊維径が上記範囲を超過および/または平均アスペクト比が上記範囲未満であると、補強性能が低下し易い傾向がある。
【0030】
ここで、この「平均繊維径」および「平均繊維長さ」とは、TEM観察またはSEM観察により、構成する繊維の大きさに応じて適宜倍率を設定して電子顕微鏡画像を得て、この画像中の少なくとも50本以上において測定したときの繊維径および繊維長さの平均値を意味する。そして、このようにして得られた平均繊維長さおよび平均繊維径から、平均アスペクト比を算出する。
【0031】
なお、これらのセルロース(ナノセルロースの場合は原料となるセルロース)は、木材由来または非木材(バクテリア、藻類、綿など)由来のいずれでもよく、特段限定されない。また、上記したナノセルロースの作製方法としては、例えば、原料となるセルロースに水を加え、ミキサー等により処理して、水中にセルロースを分散させたスラリーを調製し、これを高圧式や超音波式などの装置によって直接機械的なせん断力をかけて解繊する方法や、このスラリーに酸化処理やアルカリ処理、酸加水分解などの化学処理を施し、セルロースを変性して解繊しやすくしてから分散機などによって機械的なせん断力をかけて解繊する方法が例示される。このように化学処理を施してから解繊することにより、セルロースを低いエネルギーでより細かく均質に解繊することができ、化学変性ナノセルロース(化学修飾ナノセルロース)なども容易に得ることができる。なお、化学処理としては、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(以下、「TEMPO」という)、4-アセトアミド-TEMPO、4-カルボキシ-TEMPO、4-アミノ-TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPO、4-フォスフォノオキシ-TEMPO、リン酸エステル、過ヨウ素酸、水酸化アルカリ金属および二硫化炭素などの化学処理剤による処理を挙げることができる。また、セルロースの機械的解繊を行ってから化学処理を行ってもよい。さらに、前述した化学処理に加えて、廃粉ゴムとの親和性をより高めるために、解繊工程のあとにセルラーゼ処理、カルボキシメチル化、エステル化、カチオン性高分子による処理などを施すこともできる。
【0032】
さらに、このセルロース含有再生ゴムは、前述したような、オイルを含有するセルロース含有再生ゴムであるのが好ましい。特に廃粉ゴムの脱硫時に上記したセルロースとともにオイルを添加することにより、再生ゴム中へのセルロースの分散性がより高まるからである。セルロース含有再生ゴム中のオイル含有率は、本発明の効果が十分に発揮され易くなることから、4~50質量%であるのが好ましい。この下限は、8質量%以上であるのがより好ましく、12質量%以上であるのがさらに好ましく、15質量%以上であるのがさらに好ましく、18質量%以上であるのがさらに好ましく、20質量%以上であるのがさらに好ましい。上限は、40質量%以下であるのがより好ましく、35質量%以下であるのがさらに好ましく、30質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
そして、このセルロース含有再生ゴムは、例えば、石油由来オイルを含有するものであってよい。この石油由来オイルは、石油から得られたオイルであって、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract)オイル(シェルルブリカンツジャパン社製品)などのプロセスオイル等が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0034】
あるいは、このセルロース含有再生ゴムは、非石油由来且つ天然物由来オイルを含有するものであるのが好ましい。つまり、石油由来ではなく、且つ、動植物、微生物、またはそれらの一部から得られたオイルを含むものであるのが好ましい。前述したセルロースとの親和性がより高く、その分散性を高め易いからである。特に、この観点から、非石油由来且つ天然物由来オイルのうち木材由来オイルがより好適である。この木材由来オイルは、トール油(松材などの木材からのクラフトパルプ製造時に得られる粗トール油、トール油脂肪酸、トールロジン、蒸留トール油等)などが好ましいものとして例示されるが、これに限定されるものではない。なお、この木材由来オイルは、脂肪酸および樹脂酸(例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、およびデヒドロアビエチン酸からなる群から選ばれる1以上)を合計で50質量%超含むものがより好適であり、この脂肪酸に対する樹脂酸の質量比(樹脂酸/脂肪酸)が0.9以上、さらには1.0以上、さらには1.1以上であるものがさらに好適である。なお、この上限は2.0以下であるのがより好ましく、1.8以下であるのがさらに好ましく、1.5以下であるのがさらに好ましい。
【0035】
このセルロース含有再生ゴムには、これら以外に廃ゴム製品(廃粉ゴム等)由来の成分などが含まれてよい。例えば、廃ゴム製品由来のポリマー成分(ゴム成分、樹脂成分等)や、廃ゴム製品由来の無機充填剤(カーボンブラック、シリカ等)などが含まれてよい。廃ゴム製品から得られた廃粉ゴムの一例としては、ポリマー成分の含有率が40質量%以上、カーボンブラックの含有率が15~35質量%、カーボンブラック以外の無機材料の合計含有率が15質量%以下、およびオイルの含有率が10質量%未満である廃粉ゴムが示され、これにセルロース、オイル等が添加されて脱硫されたセルロース含有再生ゴムなどが好ましい例として示される。そして、このポリマー成分の主体(ポリマー成分の75質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上)はゴム成分であるが、樹脂成分なども一部含まれていてよい。なお、この廃粉ゴムのポリマー成分含有率の下限は42質量%以上であるのがより好ましい。上限は80質量%以下が例示され、75質量%以下であるのがより好ましい。また、カーボンブラック含有率は20~30質量%であるのがより好ましい。さらに、カーボンブラック以外の無機材料の合計含有率上限は12質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。なお、カーボンブラック以外の無機材料としては、例えばシリカ、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)などが示される。さらには、このオイル含有率(廃粉ゴム中のオイル含有率)の上限は8質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
そして、このセルロース含有再生ゴムには、廃ゴム製品(廃粉ゴム)由来の成分以外に、再生ゴムの製造時に使用された材料、例えば未反応の脱硫剤なども含まれていてよい。また、このセルロース含有再生ゴムに含まれるゴム成分の主体(ゴム成分の75質量%以上、好ましくは80質量%以上)がジエン系ゴム(再生ジエン系ゴム)であるのが好ましく、主体が天然ゴム(再生天然ゴム)であるのがより好ましい。
【0036】
なお、このセルロース含有再生ゴム中のカーボンブラック含有率は、30質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下であるのがより好ましい。また、このセルロース含有再生ゴム中のシリカ含有率は、10質量%以下であるのが好ましく、8質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
本発明のゴム組成物は、このようなセルロース含有再生ゴムを上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対して5~25質量部含む。これにより、再生ゴムを含有しながら、発熱を抑えつつ耐カット性を向上させることができる(これらをいずれも高めることができる)。この含有量は、このジエン系ゴム100質量部に対して6質量部以上であるのがより好ましく、7質量部以上であるのがさらに好ましく、8質量部以上であるのがさらに好ましく、また20質量部以下であるのがより好ましく、18質量部以下であるのがさらに好ましく、15質量部以下であるのがさらに好ましい。なお、このセルロース含有再生ゴムの含有量が上記したジエン系ゴム100質量部に対して5質量部未満または25質量部超であると、ゴム組成物の低発熱性を維持できなくなるため好ましくない。また、他の力学特性等も十分とならない可能性がある。
ここで、前述したカーボンブラック、シリカ、オイルなどがセルロース含有再生ゴムに含まれる場合でも、このセルロース含有再生ゴムの配合量として上記範囲内とする。つまり、前述したカーボンブラック、シリカ、またはオイルを含むセルロース含有再生ゴムである場合、このセルロース含有再生ゴムの含有量とは、それに含まれるカーボンブラック、シリカ、またはオイルも含めたセルロース含有再生ゴムとしての含有量である。
【0038】
[その他の成分]
本発明のゴム組成物は、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、さらに、上記以外の無機充填剤(例えばクレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、上記以外の樹脂成分、プロセスオイル、ワックス、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、レシチン、老化防止剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤(例えば、硫黄など)、加硫促進剤、加硫促進助剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を適量配合することができ、これらの添加剤を公知の方法で混練してゴム組成物とすることができる。
しかしながら、本発明のゴム組成物には、セルロース含有再生ゴム以外にセルロースを含む材料は配合されない。つまり、本発明のゴム組成物には、セルロース含有再生ゴム由来のセルロース以外のセルロースは実質的に含まれない。ここで、この「実質的に含まれない」とは、含有率が0.1質量%未満であることを意味する。
【0039】
例えば、本発明のゴム組成物におけるプロセスオイルの含有量は、上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対して1~10質量部であるのが好ましく、2~8質量部であるのがより好ましい。これにより、本発明のゴム組成物の硬度を調整することができ、その加工性もより向上させることができる。本発明のゴム組成物におけるステアリン酸、亜鉛華、および老化防止剤の含有量は、いずれも、上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対して1~5質量部であるのが好ましい。
また、本発明のゴム組成物における加硫剤の含有量は、上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対して0.3~3.0質量部であるのが好ましく、0.5~2.5質量部であるのがより好ましい。さらに、本発明のゴム組成物における加硫促進剤の含有量は、一次促進剤単独もしくは二次とのブレンドで、上記した新ゴム成分のジエン系ゴム100質量部に対して0.3~3.0質量部であるのが好ましく、0.5~2.0質量部であるのがより好ましい。
【0040】
本発明のゴム組成物は、シリカを含む場合において、このシリカの分散性をより高めるなどのために、さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。このシランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に限定されない。そして、この加水分解性基も限定されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシ基、アルケニルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基がケイ素原子と結合したアルコキシシリル基であることがより好ましい。加水分解性基がアルコキシシリル基である場合、そのアルコキシ基の炭素数は1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0041】
また、有機官能基も限定されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であればよく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリル基、アミノ基、スルフィド基(特に、ポリスルフィド基(-Sn-:nは2以上の整数))、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
そして、このようなシランカップリング剤を、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、このシランカップリング剤は、硫黄含有シランカップリング剤であるのが好ましい。
【0042】
そして、本発明のゴム組成物においては、シリカ100質量部に対して、このシランカップリング剤を1~20質量部含むのが好ましく、2~15質量部含むのがより好ましい。
【0043】
[製造方法等]
本発明のゴム組成物の製造方法は、常法にしたがえばよく、特段限定はされない。製造方法の一例としては、新ゴム成分のジエン系ゴムと、カーボンブラックまたはシリカと、セルロース含有再生ゴムと、必要に応じて他の成分とを、バンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混錬機を用いて常温あるいは高温下において所定の配合で混練、混合することにより本発明のゴム組成物を製造することができる。なお、加硫系成分(硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤など)を使用する場合には、これ以外の成分を先に高温下で混合し、冷却してから加硫系成分を混合するのが好ましい。
【0044】
以上のようにして得られた本発明のゴム組成物は、再生ゴムを含みながら、耐カット性が優れたものとなる。同時に、発熱し難くなっており、つまり低発熱性も優れたものとなる。
【0045】
そして、この本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて、発熱し難く、且つ耐カット性が優れた本発明のタイヤを得ることができる。なお、本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、この空気入りタイヤに充填する気体としては、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、およびその他の気体を使用することができる。
【0046】
特に、本発明のゴム組成物を少なくともタイヤの路面と接するキャップトレッド部(例えば図1の符号3の部分)および/またはタイヤの側面を構成するサイドウォール部(例えば図1の符号2の部分)に用いることで、優れた建設車両用タイヤを得ることができる。さらに、本発明のゴム組成物を少なくともキャップトレッド部に用いた建設車両用タイヤとするとより好適である。なお、キャップトレッド部および/またはサイドウォール部の一部(例えばこの表層など)に本発明のゴム組成物を部分的に用いてもよい。さらに、これら以外の部材(例えば図1の符号1のビード部など)にも本発明のゴム組成物を用いて本発明のタイヤを構成してもよく、あるいは、本発明のタイヤの全体(ゴム組成物により構成されている部分の全体)が本発明のゴム組成物により構成されたものであっても構わない。
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0048】
(ゴム組成物の作製および評価)
下記表1に示す組成のゴム組成物を作製した。
【0049】
具体的には、まず下記表1の上段に示す質量部の各成分(加硫促進剤および硫黄を除く)を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近まで温度を上げてから5分間混合した後、ミキサーから放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られた各マスターバッチに加硫促進剤および硫黄を所定量混合して混錬し、これを所定の金型中において170℃10分間プレス加硫して、標準例、比較例1~3、および実施例1~3のゴム組成物(加硫ゴム試験片)を作製した。
【0050】
そして、得られた標準例、比較例1~3、および実施例1~3のゴム組成物(加硫ゴム試験片)について、以下のようにして発熱性および耐カット性の評価を行った。
【0051】
<発熱性>
得られた各加硫ゴム試験片について、東洋精機製作所社製、粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件でtanδ(60℃)を測定した。
この結果を下記表1の下段に示した。なお、結果は標準例の値を100とする指数で表し、低発熱性であるほどこの指数が大きくなるように換算した。つまり、この指数が大きいほど発熱し難いことを意味する。
【0052】
<耐カット性>
得られた各加硫ゴム試験片について、JIS K6260に準拠して耐屈曲亀裂成長性を測定した。
この結果も下記表1の下段に示した。なお、結果は屈曲回数が30000回の時における標準例の亀裂長さの値を100とする指数で表した。この指数が大きいほど耐カット性が優れることを意味する。
【0053】
【表1】
【0054】
上記表1中における各成分の詳細な内容は以下の通りである。
・NR:天然ゴム(TSR20、ガラス転移温度(Tg):-62℃)
・再生ゴム:廃タイヤ粉ゴム(PolyDyne80:105μmメッシュパス30質量%以上の粉ゴム、ポリマー成分含有率42質量%以上、カーボンブラック含有率25~30質量%、カーボンブラック以外の無機材料の合計含有率8質量%以下、オイル含有率5質量%以下、Lehigh Technologies社製)100質量部に脱硫剤(ジベンズアミドジフェニルジスルフィド:ノクタイザーSS、大内新興化学社製)1質量部を添加して加熱混合し、脱硫した脱硫粉ゴムから形成された再生ゴム
・セルロース含有再生ゴム1:廃タイヤ粉ゴム(PolyDyne80)100質量部に粉末セルロース(ビスコパールD-30:平均粒子径(D50)20~40μm、レンゴー社製)10質量部、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract)オイル(エキストラクト4号;石油由来、シェルルブリカンツジャパン社製)30質量部、および脱硫剤(ジベンズアミドジフェニルジスルフィド:ノクタイザーSS、大内新興化学社製)1質量部を添加して加熱混合し、脱硫した脱硫粉ゴムから形成されたセルロース含有再生ゴム
・セルロース含有再生ゴム2:廃タイヤ粉ゴム(PolyDyne80)100質量部に酸化セルロースナノファイバー(CNF;日本製紙社製,Cellenpia)10質量部、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract)オイル(エキストラクト4号;石油由来、シェルルブリカンツジャパン社製)30質量部、および脱硫剤(ジベンズアミドジフェニルジスルフィド:ノクタイザーSS、大内新興化学社製)1質量部を添加して加熱混合し、脱硫した脱硫粉ゴムから形成されたセルロース含有再生ゴム(CNFは水分散させてから添加)
・セルロース含有再生ゴム3:廃タイヤ粉ゴム(PolyDyne80)100質量部に粉末セルロース(ビスコパールD-30:平均粒子径(D50)20~40μm、レンゴー社製)10質量部、トール油(粗トール油)30質量部、および脱硫剤(ジベンズアミドジフェニルジスルフィド:ノクタイザーSS、大内新興化学社製)1質量部を添加して加熱混合し、脱硫した脱硫粉ゴムから形成されたセルロース含有再生ゴム
※粗トール油:松材からのクラフトパルプ製造(アルカリ蒸解)の際に得られる黒液を酸で中和して得られた脂肪酸および樹脂酸を合計で80質量%以上含むもの。脂肪酸に対する樹脂酸の質量比(樹脂酸/脂肪酸)は約1.2であり、樹脂酸として少なくともアビエチン酸、ネオアビエチン酸、およびパラストリン酸を含む。
・カーボンブラック:ショウブラックN339(窒素吸着比表面積(N2SA):88m2/g、ギャボットジャパン社製)
・シリカ:Zeosil 1165MP(CTAB吸着比表面積:159m2/g、ローディア社製)
・シランカップリング剤:Si69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックデグッサ社製)
・プロセスオイル:エキストラクト4号S(シェルルブリカンツジャパン社製)
・ロジン系樹脂:ロジン変性樹脂(ハリタックAQ-90A、ロジンエステル、ハリマ化成グループ社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛(ZnO、正同化学工業社製)
・老化防止剤:オゾノン6C(精工化学社製)
・加硫促進剤:ノクセラーNS-P(大内新興化学工業社製)
・硫黄:ミュークロン OT-20(四国化成工業社製)
【0055】
この結果から、天然ゴム、カーボンブラック、シリカ、およびセルロース含有再生ゴムを含有するゴム組成物において、天然ゴム100質量部に対して、カーボンブラックを40質量部、シリカを25質量部、およびセルロース含有再生ゴム(セルロースを約7質量%含有)を10質量部含む構成とすることにより(実施例1~3)、標準例などとの比較から、再生ゴムを含有しながら低発熱性および耐カット性がいずれも優れたゴム組成物となることが示された。特に、天然物由来オイルを含有するセルロース含有再生ゴムを含む実施例3は、発熱し難く且つ耐カット性がより優れたものであった。そして、これらは特に建設車両用タイヤのキャップトレッド部やサイドウォール部への使用に適したゴム組成物であると認められた。
一方で、セルロースを含まない再生ゴム含有ゴム組成物は、低発熱性が十分ではなかった(比較例1)。また、セルロース含有再生ゴムの配合量が範囲外である場合も低発熱性が十分ではなかった(比較例2、3)。
【符号の説明】
【0056】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 キャップトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
図1