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  • -セルロース含有ゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029247
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】セルロース含有ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20250227BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20250227BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250227BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20250227BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20250227BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250227BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/013
C08L1/02
C08K5/09
C08L91/00
B60C1/00 Z
C08J3/22 CEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133763
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】川添 真幸
【テーマコード(参考)】
3D131
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA03
3D131AA06
3D131BA05
3D131BA12
3D131BB04
3D131BC33
3D131BC39
3D131LA28
4F070AA06
4F070AC72
4F070AD02
4F070AE01
4F070FB03
4F070FC03
4J002AB012
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AE053
4J002DA036
4J002EF057
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD023
4J002FD027
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】発熱し難く、且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れたセルロース含有ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム、無機充填剤、セルロース含有マスターバッチ、ならびに脂肪酸と樹脂酸との混合物が配合されたゴム組成物であって、このセルロース含有マスターバッチがジエン系ゴム、セルロース、および脂肪酸と樹脂酸との混合物を含み、ジエン系ゴムの合計100質量部に対して、無機充填剤を30~100質量部、セルロースを0.5~10質量部、ならびに脂肪酸と樹脂酸との混合物を合計で0.2~8質量部含有するゴム組成物とすることにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム、無機充填剤、セルロース含有マスターバッチ、ならびに脂肪酸と樹脂酸との混合物が配合されたゴム組成物であって、
前記セルロース含有マスターバッチがジエン系ゴム、セルロース、および脂肪酸と樹脂酸との混合物を含み、
前記ジエン系ゴムの合計100質量部に対して、前記無機充填剤を30~100質量部、前記セルロースを0.5~10質量部、ならびに前記脂肪酸と樹脂酸との混合物を合計で0.2~8質量部含有する、ゴム組成物。
【請求項2】
前記セルロースが粉末セルロースである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記セルロースがセルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸と樹脂酸との混合物が粗トール油である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸と樹脂酸との混合物が、脂肪酸に対する樹脂酸の質量比(樹脂酸/脂肪酸)が0.9以上の混合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース含有ゴム組成物、およびそのセルロース含有ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどを構成するゴム組成物は、弾性率(伸び)、硬度(硬さ)などの特性が優れたものが求められている。そして、このような特性を向上させるために、ゴム組成物中にカーボンブラックやシリカなどの無機充填剤を配合する技術が知られている。
【0003】
さらに、資源の有効利用や軽量化などの観点から、ゴム組成物中にセルロース(セルロースの極細繊維であるナノセルロースも含む)を充填剤として配合する技術も開発されている。例えば、特許文献1には、変性セルロースナノファイバー及びゴム成分を含む、大きなひずみを与えた場合でも十分な補強性を持ったゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-095611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マスターバッチ(ゴムマスターバッチ)の製造などにおいて、セルロースはゴム成分との親和性が高くないため、これを均質に分散させることが難しいという課題がある。特にナノセルロースは、マスターバッチ製造時の凝固や乾燥などの水分を除去する工程等において凝集して集束しやすい性質を有するため、特許文献1のような変性ナノセルロースであっても、ナノセルロースが均質に分散してナノレベルまで解繊された状態を保つことはかなり難しい。そして、含有するセルロースが均質に分散していないマスターバッチをゴム組成物の製造に用いると、このセルロースの機能(特にゴム組成物中での充填剤としての機能)が十分に発揮されない。
【0006】
また、建設車両用などのタイヤ製造に用いるゴム組成物は、発熱し難く(低発熱性であり)、且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れたものが求められる場合があるが、このようなゴム組成物の製造において、含有するセルロースが均質に分散していないマスターバッチを用いると、発熱し難く、且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れたものを得ることが難しい。なお、セルロースを分散させたマスターバッチを用いずに、ゴム組成物の製造においてゴム成分とともにセルロースを直接配合してこれを均質に分散させることはさらに難しい。
【0007】
そこで本発明は、発熱し難く、且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れたセルロース含有ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、ジエン系ゴム、無機充填剤、セルロース含有マスターバッチ、ならびに脂肪酸と樹脂酸との混合物が配合され、このセルロース含有マスターバッチがジエン系ゴム、セルロース、および脂肪酸と樹脂酸との混合物を含み、ジエン系ゴムの合計100質量部に対して、無機充填剤を30~100質量部、セルロースを0.5~10質量部、ならびに脂肪酸と樹脂酸との混合物を合計で0.2~8質量部含有するゴム組成物が、発熱し難く、且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は次の<1>~<6>である。
<1>ジエン系ゴム、無機充填剤、セルロース含有マスターバッチ、ならびに脂肪酸と樹脂酸との混合物が配合されたゴム組成物であって、前記セルロース含有マスターバッチがジエン系ゴム、セルロース、および脂肪酸と樹脂酸との混合物を含み、前記ジエン系ゴムの合計100質量部に対して、前記無機充填剤を30~100質量部、前記セルロースを0.5~10質量部、ならびに前記脂肪酸と樹脂酸との混合物を合計で0.2~8質量部含有する、ゴム組成物。
<2>前記セルロースが粉末セルロースである、<1>に記載のゴム組成物。
<3>前記セルロースがセルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルである、<1>に記載のゴム組成物。
<4>前記脂肪酸と樹脂酸との混合物が粗トール油である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<5>前記脂肪酸と樹脂酸との混合物が、脂肪酸に対する樹脂酸の質量比(樹脂酸/脂肪酸)が0.9以上の混合物である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<6><1>~<5>のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発熱し難く、且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れたセルロース含有ゴム組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のタイヤの実施形態の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について説明する。
本発明は、ジエン系ゴム、無機充填剤、セルロース含有マスターバッチ、ならびに脂肪酸と樹脂酸との混合物が配合されたゴム組成物であって、このセルロース含有マスターバッチがジエン系ゴム、セルロース、および脂肪酸と樹脂酸との混合物を含み、ジエン系ゴムの合計100質量部に対して、無機充填剤を30~100質量部、セルロースを0.5~10質量部、ならびに脂肪酸と樹脂酸との混合物を合計で0.2~8質量部含有するゴム組成物、ならびに、このゴム組成物を用いたタイヤである。以下においては、これらを「本発明のゴム組成物」、および「本発明のタイヤ」ともいう。
【0013】
なお、本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、特段の断りがない限り、「~」の前に記載される数値を下限値、および「~」の後に記載される数値を上限値とする数値範囲を意味する。
【0014】
以下、本発明のゴム組成物に含まれる成分や材料、その含有量などについて、詳細に説明する。
【0015】
[ジエン系ゴム]
本発明のゴム組成物に配合されるジエン系ゴムは、ポリマー主鎖に二重結合を有するゴム成分であり、具体的には、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、合成イソプレンゴム(IR)などが例示される。そして、このようなジエン系ゴムを単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
特に、本発明のゴム組成物においては、このジエン系ゴムがNRおよび/またはIRを含むのが好ましい。特に、建設車両用タイヤに用いる観点などから、このジエン系ゴムが、NRおよび/またはIRを合計で好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むジエン系ゴムであるとより好適であり、NRおよび/またはIRからなるジエン系ゴムであってもよい。特に、NRからなるのが好適である。
【0017】
また、このジエン系ゴムの重量平均分子量はいずれも、50000~3000000であることが好ましく、100000~2000000であることがより好ましい。さらに、これらはいずれも、ビニルモノマーによりグラフト変性されているものや有機過酸によりエポキシ化されているものであってもよい。
ここで、本発明において「重量平均分子量」とは、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定したものを意味する。また、このGPC測定は、測定器としてカラム(Polymer Laboratories社製、MIXED-B)を使用し、40℃において行う。
【0018】
なお、本発明のゴム組成物にはジエン系ゴム以外のゴム成分が含まれていてもよいが、含有するゴム成分のうち90質量%以上がジエン系ゴムであるのが好ましく、95質量%以上がジエン系ゴムであるのがより好ましく、含有するゴム成分がジエン系ゴムからなる(100質量%ジエン系ゴムである)のがさらに好ましい。
【0019】
[セルロース含有マスターバッチ]
本発明のゴム組成物に配合されるセルロース含有マスターバッチは、ジエン系ゴム、セルロース、および脂肪酸と樹脂酸との混合物を含む。以下、これらについて詳細に説明する。
【0020】
<セルロース含有マスターバッチのジエン系ゴム>
このセルロース含有マスターバッチに含まれるジエン系ゴムは、ゴムラテックス(ゴム成分が水中にコロイド状に分散した水分散体)とすることが可能なジエン系ゴムであれば特に限定されない。例えば、天然ゴム(NR)のラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)のラテックス、クロロプレンゴム(CR)のラテックスなどを用いることができる。特に、建設車両用タイヤに用いる観点などから、このジエン系ゴムとして天然ゴム(NR)を用いるのがより好ましい。つまり、このセルロース含有マスターバッチに含まれるジエン系ゴムが天然ゴム(NR)を主成分として含むのがより好ましく、天然ゴム(NR)からなるのがさらに好ましい。なお、この「主成分」とは、セルロース含有マスターバッチに含まれるジエン系ゴムの全質量のうち80質量%以上含まれることを意味し、この割合は90質量%以上であるのがより好ましい。また、このジエン系ゴムの重量平均分子量等は前述と同様であってよい。
そして、このセルロース含有マスターバッチを、本発明のゴム組成物に含まれるジエン系ゴムの総量に対するセルロース含有マスターバッチ由来のジエン系ゴムの割合が20~50質量%、さらには25~40質量%となるように配合するのが好ましい。
【0021】
<セルロース含有マスターバッチのセルロース>
このセルロース含有マスターバッチに含まれるセルロースは、例えば、粉末セルロースであってよい。これにより、比較的安価なセルロース含有マスターバッチとすることができる。ここで、この粉末セルロースには、後述するナノセルロースの粉末(例えばセルロースナノクリスタルの粉末など)は包含されない。この粉末セルロースとしては、概ね球状(形状未制御)の粉末セルロースとしてビスコパール(レンゴー社製品)など、繊維状の粉末セルロースとしてKCフロック(日本製紙社製品)などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
なお、この粉末セルロースの平均粒子径(D50)は、限定されるものではないが、1000μm以下であるのが好ましく、800μm以下であるのがさらに好ましく、600μm以下であるのがさらに好ましく、400μm以下であるのがさらに好ましく、250μm以下であるのがさらに好ましく、100μm以下であるのがさらに好ましい。下限は、5μm以上であってよく、さらには10μm以上であってもよい。ここで、この「平均粒子径(D50)」とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積基準の平均粒子径(体積積算分布50%径(D50))である。
【0022】
そして、このセルロース含有マスターバッチに含まれるセルロースは、セルロースナノファイバーおよび/またはセルロースナノクリスタルであると好ましい。これらが均質に分散して含まれるセルロース含有マスターバッチは、特に、本発明のゴム組成物の耐摩耗性や耐チッピング性をより向上させ易いからである。これらは、総称して「ナノセルロース」とも呼ばれ、平均繊維径が1~1000nmの極細繊維であり、平均繊維長さが0.5~5μmであるアモルファスを含むナノセルロースがセルロースナノファイバー(CNF、例えば日本製紙社製のCellenpiaなど)であり、これはミクロフィブリル化セルロースとも呼ばれる。また、平均繊維径が1~1000nmの極細繊維であり、平均繊維長さが0.1~0.5μmである結晶性の(例えば針状結晶、あるいは球状結晶の)ナノセルロースがセルロースナノクリスタル(CNC、例えばフィラーバンク社製のセルロースナノクリスタルなど)である。
【0023】
なお、セルロースナノファイバーおよびセルロースナノクリスタルの平均繊維径は前述したように1~1000nmであるが、これは1~200nmであるのが好ましい。また、これらの平均アスペクト比(平均繊維長さ/平均繊維径)は好ましくは10~1000、より好ましくは50~500である。平均繊維径が上記範囲未満および/または平均アスペクト比が上記範囲を超えると、分散性が低下し易い傾向がある。また平均繊維径が上記範囲を超過および/または平均アスペクト比が上記範囲未満であると、補強性能が低下し易い傾向がある。
【0024】
ここで、この「平均繊維径」および「平均繊維長さ」とは、TEM観察またはSEM観察により、構成する繊維の大きさに応じて適宜倍率を設定して電子顕微鏡画像を得て、この画像中の少なくとも50本以上において測定したときの繊維径および繊維長さの平均値を意味する。そして、このようにして得られた平均繊維長さおよび平均繊維径から、平均アスペクト比を算出する。
【0025】
なお、これらのセルロース(ナノセルロースの場合は原料となるセルロース)は、木材由来または非木材(バクテリア、藻類、綿など)由来のいずれでもよく、特段限定されない。また、上記したナノセルロースの作製方法としては、例えば、原料となるセルロースに水を加え、ミキサー等により処理して、水中にセルロースを分散させたスラリーを調製し、これを高圧式や超音波式などの装置によって直接機械的なせん断力をかけて解繊する方法や、このスラリーに酸化処理やアルカリ処理、酸加水分解などの化学処理を施し、セルロースを変性して解繊しやすくしてから分散機などによって機械的なせん断力をかけて解繊する方法が例示される。このように化学処理を施してから解繊することにより、セルロースを低いエネルギーでより細かく均質に解繊することができ、化学変性ナノセルロース(化学修飾ナノセルロース)なども容易に得ることができる。なお、化学処理としては、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(以下、「TEMPO」という)、4-アセトアミド-TEMPO、4-カルボキシ-TEMPO、4-アミノ-TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPO、4-フォスフォノオキシ-TEMPO、リン酸エステル、過ヨウ素酸、水酸化アルカリ金属および二硫化炭素などの化学処理剤による処理を挙げることができる。また、セルロースの機械的解繊を行ってから化学処理を行ってもよい。さらに、前述した化学処理に加えて、解繊工程のあとにセルラーゼ処理、カルボキシメチル化、エステル化、カチオン性高分子による処理などを施すこともできる。
【0026】
このセルロース含有マスターバッチは、このようなセルロースがジエン系ゴムのラテックスに混合されて製造される。そして、本発明のゴム組成物では、上記したジエン系ゴムの合計(ゴム組成物に配合するジエン系ゴムとセルロース含有マスターバッチ由来のジエン系ゴム固形分との合計)100質量部に対して、このセルロース含有マスターバッチ由来のセルロースを0.5~10質量部含むようにこのセルロース含有マスターバッチを調製および配合する。この上限は、セルロースの分散性などの観点から、8質量部以下であるのがより好ましく、6質量部以下であるのがさらに好ましく、4質量部以下であるのがさらに好ましい。下限は、加硫ゴムとした際の物性などの観点から、1質量部以上であるのがより好ましく、2質量部以上であるのがさらに好ましい。
【0027】
なお、このセルロースは、セルロース含有マスターバッチに含まれるジエン系ゴム100質量部(ジエン系ゴムラテックスの固形分100質量部)に対して1~20質量部含むようにすると上記範囲内とし易いため好適である。この上限は、15質量部以下であるのがより好ましく、12質量部以下であるのがさらに好ましい。下限は、3質量部以上であるのがより好ましく、5質量部以上であるのがさらに好ましく、8質量部以上であるのがさらに好ましい。
【0028】
<セルロース含有マスターバッチの脂肪酸と樹脂酸との混合物>
このセルロース含有マスターバッチに含まれる脂肪酸と樹脂酸との混合物は、セルロースを均質に分散させるための成分であって、脂肪酸と樹脂酸とがいずれも含まれ且つこれらが合計で50質量%超(好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)含まれている限り他は限定されず、不ケン化物などの成分がさらに含まれていてもよい。このような脂肪酸と樹脂酸との混合物としては、粗トール油が好ましいものとして例示される。ここで、この「粗トール油」とは、木材チップに水酸化ナトリウム等の化学薬品を加え、高温、高圧下で分解(アルカリ分解)してパルプ繊維を取り出すクラフト法において副生物として回収されるものであり、パルプ繊維を固めていたリグニン、樹脂成分と化学薬品とが混じった液体を濃縮した黒液を硫酸等の酸で中和することで得ることが出来る。なお、この粗トール油を精留することにより得られるのがトールロジンおよびトール油脂肪酸であり、これらを分離する際に副生物として回収されるのが蒸留トール油である。そして、粗トール油の原料である木材の種類は、特に限定されないが、松由来の粗トール油であることが好ましい。松の種類についても、特に限定されるものではなく、馬耳松、テューダ松、エリオッティ松などが挙げられる。しかしながら、例えば、脂肪酸を含む原料と樹脂酸を含む原料とをそれぞれ準備し、これらを混合して使用しても構わない。
本発明のゴム組成物は、所定の組成において、後述するように脂肪酸と樹脂酸との混合物が配合され、且つ脂肪酸と樹脂酸との混合物を含有するセルロース含有マスターバッチを含むことにより、ゴム組成物中でのセルロースの充填剤としての機能が十分に発揮される構成となっている。なお、これは脂肪酸と樹脂酸との混合物であることが重要であり、樹脂酸のみまたは樹脂酸のみでは本発明の効果が十分に発揮されない。
【0029】
なお、セルロースの分散性をより高め易いことなどから、この脂肪酸としてオレイン酸および/またはリノール酸を含む混合物であるのがより好ましく、オレイン酸およびリノール酸をいずれも含み且つリノール酸よりもオレイン酸の方が多く含まれる混合物であるのがさらに好ましい。
また、同様の理由から、樹脂酸としてアビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、およびデヒドロアビエチン酸からなる群から選ばれる1以上を含む混合物であるのがより好適であり、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、およびパラストリン酸からなる群から選ばれる1以上を含む混合物であるのがさらに好適である。
【0030】
特に、本発明の効果がより発揮され易いことから、この脂肪酸と樹脂酸との混合物が、脂肪酸に対する樹脂酸の質量比(樹脂酸/脂肪酸)が0.9以上の混合物であるのがより好ましく、この質量比が0.9以上の粗トール油であるのがさらに好ましい。
そして、この下限は、1.0以上であるのがより好ましく、1.1以上であるのがさらに好ましい。上限は、2.0以下であるのがより好ましく、1.8以下であるのがさらに好ましく、1.5以下であるのがさらに好ましい。
【0031】
なお、このセルロース含有マスターバッチには、本発明の効果に影響を与えない範囲において、上記以外の成分が含まれていてよい。また、後述する無機充填剤などが含まれていてもよいが、その場合、本発明のゴム組成物に含まれる量として後述するような範囲内とする。あるいは、このセルロース含有マスターバッチは、ジエン系ゴム、セルロース、および脂肪酸と樹脂酸との混合物からなるものであっても構わない。
このセルロース含有マスターバッチの製造方法の一例を説明すると、まず、ジエン系ゴムのゴムラテックスにセルロースを添加し、さらに脂肪酸と樹脂酸との混合物を添加して、必要であればさらに他の成分を配合し、固形分濃度が60質量%以下であるスラリー状態の原料分散液を取得する。この分散方法は、特に限定されず、機械的方法などで行えばよい。前述したナノセルロースを用いる場合には、ナノセルロースの水分散液としてからゴムラテックスに混合してもよい。そして、この得られた原料分散液を攪拌しながら凝固剤(無機塩など)を添加して高分子成分を凝固させ、ろ過などにより凝固物と水分とを概ね分離し、必要に応じて凝固物を洗浄して凝固剤の除去を行い、さらに必要に応じて凝固物の乾燥処理(例えば50~100℃の条件下で0.5~30時間乾燥する処理)などを行ってセルロース含有マスターバッチを得ることができる。
【0032】
[脂肪酸と樹脂酸との混合物]
本発明のゴム組成物は、前述したセルロース含有マスターバッチに含まれる脂肪酸と樹脂酸との混合物とは別に、脂肪酸と樹脂酸との混合物がさらに配合される。そして、本発明のゴム組成物に配合される脂肪酸と樹脂酸との混合物は、前述したセルロース含有マスターバッチに含まれる脂肪酸と樹脂酸との混合物と同様のものを使用できる。そして、本発明のゴム組成物では、上記したジエン系ゴムの合計(ゴム組成物に配合するジエン系ゴムとセルロース含有マスターバッチ由来のジエン系ゴム固形分との合計)100質量部に対して、この配合される脂肪酸と樹脂酸との混合物とセルロース含有マスターバッチ由来の脂肪酸と樹脂酸との混合物とを合計で0.2~8質量部含むようにする。この上限は、、加硫ゴムとした際の物性などの観点から、7.5質量部以下であるのがより好ましい。下限は、セルロースの分散性などの観点から、0.5質量部以上であるのがより好ましく、1質量部以上であるのがさらに好ましく、2.5質量部以上であるのがさらに好ましく、3.5質量部以上であるのがさらに好ましく、5質量部以上であるのがさらに好ましく、6質量部以上であるのがさらに好ましい。
【0033】
さらに、この脂肪酸と樹脂酸との混合物は、セルロース1質量部に対して、この配合される脂肪酸と樹脂酸との混合物とセルロース含有マスターバッチ由来の脂肪酸と樹脂酸との混合物とを合計で0.4~10質量部含むのが好ましい。この上限は、8質量部以下であるのがより好ましく、6質量部以下であるのがさらに好ましく、4質量部以下であるのがさらに好ましい。下限は、1質量部以上であるのがより好ましく、2質量部以上であるのがさらに好ましい。
【0034】
[無機充填剤]
本発明のゴム組成物に配合される無機充填剤(無機フィラー)は、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。特に、本発明のゴム組成物は、この無機充填剤としてカーボンブラックおよび/またはシリカを含むのが好ましく、カーボンブラックを含むのがより好ましい。
なお、この「カーボンブラック」とは、工業的に品質制御して製造された直径3~500nm程度の一次粒子からなる炭素微粒子を意味する。また、この「シリカ」とは、二酸化ケイ素(SiO2)からなる、あるいは二酸化ケイ素を主成分とする(例えば80質量%以上、さらには90質量%以上含む)粒子物質を意味する。
【0035】
カーボンブラックとしては、特段限定されず、タイヤ等の用途で用いられる公知の任意のカーボンブラックを用いることができる。例えば、カーボンブラックの具体例としては、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF、FT、MT等の各種グレードのものを使用することができる。そして、このカーボンブラックについても、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。なお、このカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、特に、建設車両用タイヤに用いる観点などから、70~145m2/gであるのが好ましく、85~130m2/gであるのがより好ましい。なお、このカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が145m2/gを超えると、ゴム組成物の低発熱性を維持し難くなり易い傾向がある。
なお、このカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)とは、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に従って測定された値である。
【0036】
また、シリカも特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている公知の任意のシリカを用いることができる。具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられ、このようなシリカを単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
そして、本発明のゴム組成物は、上記したような無機充填剤(無機フィラー)を含み、且つ、上記したジエン系ゴムの合計100質量部に対してこの無機充填剤を合計で30~100質量部含む。なお、前述したセルロース含有マスターバッチ中に無機充填剤が含まれる場合には、その量も含めた合計量として上記範囲内とする。さらに、この量は、このジエン系ゴムの合計100質量部に対して35質量部以上であるのがより好ましい。また90質量部以下であるのがより好ましく、80質量部以下であるのがさらに好ましく、70質量部以下であるのがさらに好ましく、60質量部以下であるのがさらに好ましい。なお、この量が上記したジエン系ゴムの合計100質量部に対して30質量部未満であると、ゴム組成物の耐摩耗性や耐チッピング性が十分とならない。また、この量が上記したジエン系ゴムの合計100質量部に対して100質量部を超えると、ゴム組成物の低発熱性を維持できない。
【0038】
[その他の成分]
本発明のゴム組成物は、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、さらに、上記以外の有機充填剤(有機フィラー、例えばレシチンなど)、樹脂成分、プロセスオイル、ワックス、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、可塑剤、硬化剤、シランカップリング剤、加硫剤(例えば、硫黄など)、加硫促進剤、加硫促進助剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を含むことができ、これらの添加剤を公知の方法で混練してゴム組成物とすることができる。
しかしながら、本発明のゴム組成物には、セルロース含有マスターバッチ以外にセルロースを含む材料は配合されない。つまり、本発明のゴム組成物には、セルロース含有マスターバッチ由来のセルロース以外のセルロースは実質的に含まれない。ここで、この「実質的に含まれない」とは、含有率が0.1質量%未満であることを意味する。
【0039】
例えば、本発明のゴム組成物におけるプロセスオイルの含有量は、上記したジエン系ゴムの合計100質量部に対して1~10質量部であるのが好ましく、2~8質量部であるのがより好ましい。これにより、本発明のゴム組成物の硬度を調整することができ、その加工性もより向上させることができる。本発明のゴム組成物におけるステアリン酸、亜鉛華、および老化防止剤の含有量は、いずれも、上記したジエン系ゴムの合計100質量部に対して1~5質量部であるのが好ましい。
また、本発明のゴム組成物における加硫剤の含有量は、上記したジエン系ゴムの合計100質量部に対して0.3~3.0質量部であるのが好ましく、0.5~2.5質量部であるのがより好ましい。さらに、本発明のゴム組成物における加硫促進剤の含有量は、一次促進剤単独もしくは二次とのブレンドで、上記したジエン系ゴムの合計100質量部に対して0.3~3.0質量部であるのが好ましく、0.5~2.0質量部であるのがより好ましい。
【0040】
[製造方法等]
本発明のゴム組成物の製造方法は、常法にしたがえばよく、特段限定はされない。製造方法の一例としては、ジエン系ゴムと、無機充填剤と、所定のセルロース含有マスターバッチと、脂肪酸と樹脂酸との混合物と、必要に応じて他の成分とを、バンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混錬機を用いて常温あるいは高温下において所定の配合で混練、混合することにより本発明のゴム組成物を製造することができる。なお、加硫系成分(硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤など)を使用する場合には、これ以外の成分を先に高温下で混合し、冷却してから加硫系成分を混合するのが好ましい。
【0041】
以上のようにして得られた本発明のゴム組成物は、発熱し難く、且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れたセルロース含有ゴム組成物となる。
【0042】
そして、この本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて、発熱し難く、且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れた本発明のタイヤを得ることができる。なお、本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、この空気入りタイヤに充填する気体としては、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、およびその他の気体を使用することができる。
【0043】
特に、本発明のゴム組成物を少なくともタイヤの路面と接するキャップトレッド部(例えば図1の符号3の部分)および/またはタイヤの側面を構成するサイドウォール部(例えば図1の符号2の部分)、より好ましくはキャップトレッド部に用いることで、優れた建設車両用タイヤを得ることができる。なお、キャップトレッド部および/またはサイドウォール部の一部(例えばこの表層など)に本発明のゴム組成物を部分的に用いてもよい。さらに、これら以外の部材(例えば図1の符号1のビード部など)にも本発明のゴム組成物を用いて本発明のタイヤを構成してもよく、あるいは、本発明のタイヤの全体(ゴム組成物により構成されている部分の全体)が本発明のゴム組成物により構成されたものであっても構わない。
【0044】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0045】
(ゴム組成物の作製および評価)
下記表1に示す組成のゴム組成物を作製した。
【0046】
具体的には、まず下記表1の上段に示す質量部の各成分(加硫促進剤および硫黄を除く)を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近まで温度を上げてから5分間混合した後、ミキサーから放出し、室温まで冷却した。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、これらに加硫促進剤および硫黄を所定量混合して混錬し、これを所定の金型中において170℃10分間プレス加硫して、比較例1~3および実施例1~2のゴム組成物(加硫ゴム試験片)を作製した。
【0047】
そして、得られた比較例1~3および実施例1~2のゴム組成物(加硫ゴム試験片)について、以下のようにして発熱性、耐摩耗性、および耐チッピング性の評価を行った。
【0048】
<発熱性>
得られた各加硫ゴム試験片について、東洋精機製作所社製、粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件でtanδ(60℃)を測定した。
この結果を下記表1の下段に示した。なお、結果は比較例1の値を100とする指数で表し、低発熱性であるほどこの指数が大きくなるように換算した。つまり、この指数が大きいほど発熱し難いことを意味する。
【0049】
<耐摩耗性>
得られた各加硫ゴム試験片について、JIS K6264-1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗量を測定した。
この結果も下記表1の下段に示した。なお、結果は比較例1の値を100とする指数で表し、磨耗量が少ないほどこの指数が大きくなるように換算した。つまり、この指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
【0050】
<耐チッピング性>
得られた各加硫ゴム試験片について、JIS K6260のデマッチャ屈曲亀裂成長試験に準拠し、ストローク57mm、速度300±10rpm、屈曲回数10万回後の亀裂成長[単位mm]を測定した。
この結果も下記表1の下段に示した。なお、結果は比較例1の値を100とする指数で表した。つまり、この指数が大きいほど耐チッピング性に優れることを示す。
【0051】
【表1】
【0052】
上記表1中における各成分の詳細な内容は以下の通りである。
・NR:天然ゴム(TSR20、ガラス転移温度(Tg):-62℃)
・セルロース含有マスターバッチ1: 天然ゴムラテックス(NR:HYTEX HA,高アンモニアタイプ,固形分濃度60質量%、SIME DARBY PLANTATION SDN BHD製)を固形分量として30質量部、および粉末セルロース(ビスコパールD-30:平均粒子径(D50)20~40μm、レンゴー社製)を3質量部混合して得られたセルロース含有マスターバッチ
・セルロース含有マスターバッチ2: 天然ゴムラテックス(NR:HYTEX HA,高アンモニアタイプ,固形分濃度60質量%、SIME DARBY PLANTATION SDN BHD製)を固形分量として30質量部、粉末セルロース(ビスコパールD-30:平均粒子径(D50)20~40μm、レンゴー社製)を3質量部、および粗トール油を1.8質量部混合して得られたセルロース含有マスターバッチ
・セルロース含有マスターバッチ3:天然ゴムラテックス(NR:HYTEX HA,高アンモニアタイプ,固形分濃度60質量%、SIME DARBY PLANTATION SDN BHD製)を固形分量として30質量部、セルロースナノファイバー(酸化セルロースナノファイバー:日本製紙社製,Cellenpia)を3質量部、および粗トール油を1.8質量部混合して得られたセルロース含有マスターバッチ
※セルロース含有マスターバッチ2、3に用いた粗トール油(松由来の粗トール油)は脂肪酸および樹脂酸を合計で80質量%以上含み、脂肪酸に対する樹脂酸の質量比(樹脂酸/脂肪酸)は約1.2であり、含まれる脂肪酸のうちオレイン酸が約50%、リノール酸が約35%であり、樹脂酸として少なくともアビエチン酸、ネオアビエチン酸、およびパラストリン酸を含む。
・カーボンブラック:ショウブラックN339(窒素吸着比表面積(N2SA):88m2/g、ギャボットジャパン社製)
・プロセスオイル:エキストラクト4号S(シェルルブリカンツジャパン社製)
・粗トール油:セルロース含有マスターバッチ2、3に用いているものと同じ
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛(ZnO、正同化学工業社製)
・老化防止剤:オゾノン6C(精工化学社製)
・加硫促進剤:ノクセラーNS-P(大内新興化学工業社製)
・硫黄:ミュークロン OT-20(四国化成工業社製)
【0053】
この結果から、天然ゴム、カーボンブラック、粗トール油、および粗トール油を含むセルロース含有マスターバッチを含有するゴム組成物において、天然ゴム(セルロース含有マスターバッチに含まれる天然ゴムも含めた合計)100質量部に対して、カーボンブラックを40質量部、セルロースを3質量部、粗トール油を合計で7.2質量部含む構成とすることにより(実施例1~2)、発熱し難く、且つ、耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも優れたゴム組成物となることが示された。そして、これらは特に建設車両用タイヤのキャップトレッド部やサイドウォール部への使用に適したゴム組成物であると認められた。
一方で、セルロースの配合量が範囲外であると発熱し易くなり且つ耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも向上しなかった(比較例2)。また、粗トール油を別途配合しないで作製したゴム組成物は、発熱し易くなった(比較例3)。
【符号の説明】
【0054】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 キャップトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
図1