(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029249
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】路面切削機および道路切削工法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/12 20060101AFI20250227BHJP
【FI】
E01C23/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133766
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】323001258
【氏名又は名称】株式会社草川精機
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100229116
【弁理士】
【氏名又は名称】日笠 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】▲草▼川 茂
(72)【発明者】
【氏名】加古 万千香
(72)【発明者】
【氏名】多田 光司
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA03
2D053AA04
2D053AB03
2D053AD01
2D053FA01
(57)【要約】
【課題】削り取った舗装道路の切削廃材の重量を機上で正確に測定できる路面切削機および同路面切削機を用いた道路切削工法を提供する。
【解決手段】舗装道路の表面を切削して切削廃材を外部に搬出する路面切削機1において、切削廃材を外部に搬出するベルトコンベヤ4に、動揺や振動が存在する動的な状態での荷重測定が可能な荷重測定装置6を配設し、ベルトコンベヤ4で搬送される切削廃材の重量を測定するとともに、荷重測定装置6の測定結果を集計処理装置7で積算し、切削廃材の積算重量を表示装置8に表示する。これにより、積算重量を確認しながら切削廃材を運搬車両に積み込むことができるようになり、最大積載量に応じた適正量の積載が可能になる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装道路の表面を切削して切削廃材を外部に搬出する路面切削機であって、
前記切削廃材を外部に搬出する搬出経路を設定する搬送装置と、
動揺や振動が存在する動的な状態での荷重測定が可能な荷重測定装置と、
前記荷重測定装置の測定結果を集計する集計処理装置と、
前記集計処理装置の集計結果を表示する表示装置と、を有し、
前記荷重測定装置が前記搬出経路に配置され、前記集計処理装置において、前記搬出経路上を搬送される切削廃材の重量が積算されるとともに、その積算結果が前記表示装置に表示される
ことを特徴とする路面切削機。
【請求項2】
前記搬送装置は、ベルトコンベヤの形態とされ、
前記荷重測定装置は、前記ベルトコンベヤの往き側ベルトの下方に配置され、前記往き側ベルトに載置されて搬送される前記切削廃材の重量を順次測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の路面切削機。
【請求項3】
前記荷重測定装置は、荷重によるたわみの瞬時変位を光学的に測定する測定ユニットを備えたセンサブロックと、前記センサブロックをコンベヤフレームに装着するベースユニットと、前記センサブロック上に配置され、前記往き側ベルトにかかる荷重を前記センサブロックに伝達するトッププレートとを有している
ことを特徴とする請求項2に記載の路面切削機。
【請求項4】
前記トッププレートは、前記往き側ベルトとの摩擦抵抗を低減させる摩擦緩衝機構を備えている
ことを特徴とする請求項3に記載の路面切削機。
【請求項5】
前記荷重測定装置は、前記搬出経路の下流側先端の近傍位置に配置されている
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の路面切削機。
【請求項6】
前記表示装置は、前記搬送装置の操作部の近傍に配置されている
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の路面切削機。
【請求項7】
前記集計処理装置は、前記集計結果を外部に送信する送信手段を備えている
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の路面切削機。
【請求項8】
自走式の路面切削機を用いた道路切削工法において、
前記路面切削機に備えられ、切削廃材を運搬車両に積載する搬送装置に、動揺や振動が存在する動的な状態での荷重測定が可能な荷重測定装置を配置し、
前記路面切削機による路面切削時に、前記搬送装置で搬送される切削廃材の重量を前記荷重測定装置で連続的に測定しつつ、測定された重量を積算して積算重量を算出し、
算出された前記積算重量を表示装置に表示することで、前記運搬車両への積載量を制御する
ことを特徴とする道路切削工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は路面切削機および道路切削工法に関し、より詳細には、舗装道路の路面を削り取った切削廃材の重量を測定する測定技術および道路切削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装道路の延命を図る予防的修繕工法の一つとして道路切削工事が知られている。
道路切削工事は、アスファルト舗装の表面に連続的に凹凸が発生し、路面の平坦性が極端に悪くなった場合などに、その部分(要補修部分)を削り取って再舗装する工事であり、この工事によって舗装道路の路面形状や路面のすべり抵抗値の回復が図られている。
【0003】
この種の道路切削工事において要補修部分の削り取りは、自走式の路面切削機(いわゆるロードカッタ)により行われる。路面切削機は、周知のとおり、前・後輪を備えた自走可能な車両と、この車両に昇降可能に取り付けられた切削機と、切削機によって削り取った路面の切削廃材(被削材)を搬出するコンベヤとを備えており、切削機で削り取った切削廃材は、上記コンベヤを用いて機外の運搬車両(たとえば、ダンプトラック)に積み込まれ、運搬車両によって廃棄物処理場に運び込まれる。
【0004】
ところで、この一連の作業において、切削廃材の運搬に使用される運搬車両には最大積載量が設定されているため、1回の運搬で可能な限り最大積載量に近い積載量の切削廃材を積み込むことが望まれる。そうすることで、切削廃材の運搬に必要とされる運搬車両の延べ台数を減らすことができ、道路切削工事のコストを抑えることができる。
【0005】
しかし、従来の道路切削工事では、削り取った切削廃材の重量をその場で正確に測定する手段が存在しないことから、運搬車両への積載量は目測によるか、あるいは、路面切削距離と、切削する舗装の厚みとから切削廃材の重量を演算予測し、この予測に基づいて積載量を決定していた(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のやり方には以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0008】
すなわち、運搬車両への積載量を目測あるいは予測に基づいて決定する従来のやり方では、正確な積載量を把握することができない。そのため、過積載を回避するためには、最大積載量よりも少ない重量(たとえば、最大積載量から2割程度少ない重量)を目標値として積載量を決定しなければならず、道路切削工事に要する切削廃材の運搬車両の延べ台数が本来必要な台数よりも多くなるという問題があった。
【0009】
この点に関して、廃棄物処理場に運び込まれた切削廃材の重量を出願人が調査したところ、実際に廃棄物処理場に運び込まれる切削廃材は、運搬車両の最大積載量から1~4割程度減じた重量に過ぎないことが判明した。
【0010】
このように、従来のやり方では、道路切削工事に本来必要とされる運搬車両の台数(適正台数)に比して最大2倍近い台数の運搬車両が用いられており、道路切削工事にかかる運搬車両の運用コスト(台数増加に伴う人的ロスや燃料ロス、さらには、車両交代に要する時間的なロスなど)が過大になるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、削り取った舗装道路の切削廃材の重量を機上で正確に測定できる路面切削機および同路面切削機を用いた道路切削工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る路面切削機は、舗装道路の表面を切削して切削廃材を外部に搬出する路面切削機であって、上記切削廃材を外部に搬出する搬出経路を設定する搬送装置と、動揺や振動が存在する動的な状態での荷重測定が可能な荷重測定装置と、上記荷重測定装置の測定結果を集計する集計処理装置と、上記集計処理装置の集計結果を表示する表示装置と、を有し、上記荷重測定装置が上記搬出経路に配置され、上記集計処理装置において、上記搬出経路上を搬送される切削廃材の重量が積算されるとともに、その積算結果が上記表示装置に表示されることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、動揺や振動が存在する動的な状態での荷重測定が可能な荷重測定装置が切削廃材の搬出経路に配置されるので、搬出経路上を搬送される切削廃材の重量が荷重測定装置によって測定される。測定された切削廃材の重量は集計処理装置において積算され、積算結果が表示装置に表示される。そのため、表示装置に表示される積算結果(重量の積算値)を確認することで、運搬車両に積載した切削廃材の積載量(積算重量)を正確に把握することができる。
【0014】
そして、本発明に係る路面切削機は、その好適な実施態様として、以下の構成を備えている。
【0015】
(1)上記搬送装置は、ベルトコンベヤの形態とされ、上記荷重測定装置は、上記ベルトコンベヤの往き側ベルトの下方に配置され、上記往き側ベルトに載置されて搬送される上記切削廃材の重量を順次測定することを特徴とする。
【0016】
この態様によれば、搬送装置としてベルトコンベヤが用いられるので、走行しながら連続的に削り取られる切削廃材を途切れることなく連続的に搬出することができる。また、ベルトコンベヤの往き側ベルトの下方に荷重測定装置を配置することで、構造上、往き側ベルトと帰り側ベルトとの間に生じる空スペースを利用して荷重測定装置を配置することができる。
【0017】
(2)上記荷重測定装置は、荷重によるたわみの瞬時変位を光学的に測定する測定ユニットを備えたセンサブロックと、上記センサブロックをコンベヤフレームに装着するベースユニットと、上記センサブロック上に配置され、上記往き側ベルトにかかる荷重を上記センサブロックに伝達するトッププレートとを有していることを特徴とする。
【0018】
この態様によれば、測定ユニットを備えたセンサブロックはベースユニットを介してコンベヤフレームに装着されるので、コンベヤで構成される搬出経路の任意の位置に荷重測定装置を配置することができる。
【0019】
(3)上記トッププレートは、上記往き側ベルトとの摩擦抵抗を低減させる摩擦緩衝機構を備えていることを特徴とする。
【0020】
この態様によれば、往き側ベルトの下方に配置された荷重測定装置のトッププレートに、往き側ベルトとの摩擦抵抗を低減させる摩擦緩衝機構が配置されているので、切削廃材の荷重測定にあたり、往き側ベルトとの摩擦による測定誤差を低減できる。
【0021】
(4)上記荷重測定装置は、上記搬出経路の下流側先端の近傍位置に配置されていることを特徴とする。
【0022】
この態様によれば、搬出経路の下流側先端の近傍に荷重測定装置が配置されるので、運搬車両に積載される直前の切削廃材の重量を測定できる。そのため、運搬車両の積載量との誤差を極めて小さくすることができる。
【0023】
(5)上記表示装置は、上記搬送装置の操作部の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0024】
この態様によれば、搬出経路上を搬送される切削廃材の積算重量を把握(視認)しながら、搬送装置を操作(起動/停止)することができ、運搬車両の積載量を正確に調節することができる。
【0025】
(6)上記集計処理装置は、上記集計結果を外部に送信する送信手段を備えていることを特徴とする。
【0026】
この態様によれば、集計処理装置で集計された積算重量を外部に送信できるので、受信手段としてタブレット端末などの携帯端末を用意することで、たとえば、運搬車両の運転席や工事の管理事務所など路面切削機の外部において、運搬車両の積載量を把握することができるようになる。
【0027】
また、本発明に係る道路切削工法は、自走式の路面切削機を用いた道路切削工法において、上記路面切削機に備えられ、切削廃材を運搬車両に積載する搬送装置に、動揺や振動が存在する動的な状態での荷重測定が可能な荷重測定装置を配置し、上記路面切削機による路面切削時に、上記搬送装置で搬送される切削廃材の重量を上記荷重測定装置で連続的に測定しつつ、測定された重量を積算して積算重量を算出し、算出された上記積算重量を表示装置に表示することで、上記運搬車両への積載量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、路面切削機における切削廃材の搬出経路に動的荷重の測定が可能な荷重測定装置が配置され、搬出経路上を搬送される切削廃材の重量がこの荷重測定装置によって測定されるとともに、その測定結果が集計処理装置において積算され、表示装置に表示されるので、搬出経路を経て機外に搬出される切削廃材の積算重量を正確に把握することができる。
【0029】
そのため、本発明によれば、切削廃材の運搬について、運搬車両の最大積載量まで切削廃材を積載できるようになり、適正台数の運搬車両で、人的ロス、燃料ロス、時間的ロスなどを最小限に抑えた運用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る路面切削機を用いた道路切削工事において、切削廃材を搬出する様子を模式的に示した側面図である。
【
図2】同路面切削機に用いられる荷重測定装置の外観構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】同荷重測定装置のセンサブロックの概略構成を示す説明図であり、
図3(a)は同センサブロックの平面図を、
図3(b)は同センサブロックの側面図を、
図3(c)はA-A断面図を、
図3(d)は
図3(b)において一点鎖線で囲った部位の部分拡大図を示している。
【
図4】同荷重測定装置のベースユニットの概略構成を示す説明図であり、
図4(a)は平面図を、
図4(b)はB-B断面図を、
図4(c)は底面図を示している。
【
図5】同荷重測定装置をベルトコンベヤに装着した状態をベルトを切り欠いて示した斜視図である。
【
図6】同荷重測定装置が装着されたベルトコンベヤの断面図である。
【
図7】同荷重測定装置が装着されたベルトコンベヤの一部を切り欠いて示した部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0032】
本発明に係る路面切削機1は、舗装道路の予防的修繕工法の一つである道路切削工事において、アスファルト舗装などの舗装道路の路面(表面)RSを削り取る装置であって、周知のとおり、前・後輪を備えた自走可能な車両2と、この車両2に昇降可能に取り付けられた切削機3と、切削機3によって削り取った路面の切削廃材を路面切削機1の外部(機外)に搬出するベルトコンベヤ(搬送装置)4とを主要部として備えており、切削機3で削り取った路面RSの切削廃材は、ベルトコンベヤ4を介して機外の運搬車両(たとえば、ダンプトラック)DTに積載されるようになっている(
図1参照)。
【0033】
ここで、車両2は、ディーゼルエンジンなどの原動機(図示せず)を備えた自走可能な車両で構成される。
図1に示す例では、車両2は、原動機を有する車両本体2aと、車両本体2aに連結された作業装置部2bとで構成されており、作業装置部2bに上述した切削機3が昇降可能に備えられている。なお、図示例では、車両2として、前・後輪を備えたホイール式の車両が例示されているが、自走可能であれば、車輪に代えて/車輪とともに、無限軌道を備えていてもよい。また、車両本体2aと作業装置部2bとが一体に構成されていてもよい。
【0034】
切削機3は、路面RSを削り取るための切削機であって、本実施形態では、原動機によって回転駆動される略円筒状のドラムの外周面に複数の切削用ビットを配設してなるドラム構造(図示せず)の切削機が用いられている。作業装置部2bには、このドラム機構を昇降させる昇降機構(図示せず)が備えられていて、路面RSを切削する際には、上記ドラムを路面RSへの切り込み位置まで下降させるようになっている。
【0035】
ベルトコンベヤ4は、切削廃材を機外に搬出する搬出経路を設定する搬送装置であって、基端側(搬送方向上流側)の端部が切削機3に臨んで配置されるとともに、先端側(搬送方向下流側)の端部が路面切削機1の機外に延出するように配置される。具体的には、ベルトコンベヤ4の基端側の端部は、切削機3で削り取った切削廃材が自動的に往き側ベルト32a上に載置されるように配設されており、切削機3で削り取った切削廃材が順次ベルトコンベヤ4によって機外に搬出されるようになっている。また、ベルトコンベヤ4の先端側の端部は、先端から落下する切削廃材が運搬車両DTの荷台に収容されるように、機外に突出している。なお、図示例では、切削廃材の搬出経路を1基のベルトコンベヤ4で構成した場合を示したが、2基以上のベルトコンベヤ4を直列に配置して搬出経路を構成してもよい。
【0036】
路面切削機1には、上述した切削機3およびベルトコンベヤ4を操作するための操作盤5が備えられている。操作盤5は、たとえば、作業装置部2bの側面に備えられており、ユーザは操作盤5を操作することによって、切削機3の起動/停止、ドラム機構の回転速度制御、ドラム機構の昇降制御、ベルトコンベヤ4の起動/停止などの各種制御が行えるようになっている。
【0037】
本発明は、このように構成される路面切削機1について、切削機3で削り取った切削廃材の重量を路面切削機1の機上で測定できるように改良したものであり、本発明に係る路面切削機1は、上述した構成に加えて、切削廃材の重量を測定する荷重測定装置6と、荷重測定装置6の測定結果を集計する集計処理装置7と、集計処理装置7の集計結果を表示する表示装置8とを備えている。
【0038】
荷重測定装置6は、ベルトコンベヤ4の往き側ベルト32aに載置されて搬送される切削廃材の重量を測定する装置であって、本実施形態では、動揺や振動が存在する動的な状態での荷重測定が可能な荷重測定装置(たとえば、株式会社センシング京都社製の「動的荷重測定装置」(特許第3090686号、特許第5604200号)など)が用いられる。この荷重測定装置6は、装置に付加される荷重による弾性部位の瞬時変位から瞬時荷重と加速度とを算出するとともに、これらと装置の振動加速度からベルトコンベヤ4で搬送される切削廃材の重量を瞬時に測定する。
【0039】
図2は、本実施形態で用いられる荷重測定装置6を示している。図示の荷重測定装置6は、荷重によるたわみの瞬時変位を光学的に測定する測定ユニット14を備えたセンサブロック11と、センサブロック11をコンベヤフレーム35に装着するベースユニット12と、センサブロック11上に配置され、往き側ベルト32aにかかる荷重をセンサブロック11に伝達するトッププレート13とを有している。
【0040】
センサブロック11は、
図3(a)、(b)に示すように、長手方向の中央部11aが鉛直方向に変位可能な構造を有する金属製のブロック体で構成されている。
【0041】
センサブロック11の長手方向の両端は、センサブロック11をベースユニット12上に固定する固定部11b、11bとなっている。各固定部11bには、それぞれ複数(図示例では4個)のネジ孔15,15,…が形成されていて、このネジ孔15,15,…に固定ネジ16,16,…を装着することにより、センサブロック11がベースユニット12上に固定される(
図2参照)。
【0042】
一方、センサブロック11の中央部11aは、センサブロック11を短手方向に貫通する2つの水平貫通孔11c,11cが形成された中空構造とされるとともに、下面側が上方にわずかに窪んだ凹陥部11dの形態とされている。これにより、長手方向の両端が固定されたセンサブロック11は、中央部11aがベースユニット12から浮いた状態でブリッジ状に保持され、上方から荷重が付与されたときには、中空構造に伴う弾性に抗しながら、中央部11aが下方にたわむようになっている。
【0043】
センサブロック11の中央部11a、より具体的には、上記水平貫通孔11c,11cの間に形成された非中空部分には、上下方向に貫通する鉛直貫通孔11eが形成されている(
図3(c)参照)。この鉛直貫通孔11eは、センサブロック11とトッププレート13とを連結する連結ボルト17を挿通する孔であって、
図2に示すように、この鉛直貫通孔11eを貫通して突出する連結ボルト17にトッププレート13が装着されるようになっている。なお、この鉛直貫通孔11eの上端側は、孔の周囲が円環状に上方に突出した作用部11hとされており、トッププレート13にかかった荷重はこの作用部11hを介してセンサブロック11に作用するようになっている。
【0044】
また、センサブロック11の側面には、測定ユニット14を装着するための掘込部11f、11gが形成されている。測定ユニット14は、荷重によるセンサブロック11のたわみの瞬時変位を光学的に測定するユニットであって、センサアーム18と、ワイドマスク19とを有している。センサアーム18は、基端側が固定部11bに形成された(いずれか一方の)掘込部11fに装着されて固定端とされ、先端側が自由端とされたアーム上の部材であって、先端に光学センサ(図示せず)が備えられている。一方、ワイドマスク19は、図示しない発光部と細い射光孔とを備えたマスクであって、中央部11aの掘込部11gに装着される。
【0045】
これにより、センサブロック11の中央部11aが荷重を受けて鉛直方向(下方)にたわんだときのワイドマスク19の位置変化(瞬時変位)がセンサアーム18の光学センサによって検出される。なお、センサブロック11には、図示しない演算処理部が備えられており、測定ユニット14で測定される瞬時変位と、図示しない加速度センサ(たとえば、ベースユニット12に装着される加速度センサ)で得られる振動加速度とに基づいて、センサブロック11に作用した荷重(重量)を瞬時に測定できるようになっている。
【0046】
ベースユニット12は、センサブロック11をコンベヤフレーム35に装着するための金属製の部材であって、
図4に示すように、センサブロック11を収容するセンサ収容部21と、センサ収容部21を後述するベースブラケット28に装着する基台部22とを有している。
【0047】
センサ収容部21は、
図4(a)、(b)に示すように、上方が開放(開口)された略矩形の箱型の形態とされており、図示例では、このセンサ収容部21には2基のセンサブロック11,11が収容されるようになっている。より詳細には、
図2に示すように、2基のセンサブロック11,11がセンサ収容部21の短手方向に並んで配設される。
図4(a)にハッチングで示したエリア21aは、センサブロック11の固定部11bの配設位置であり、このエリアにセンサブロック11の固定部11bがねじ止め固定される。また、符号21bは、センサブロック11の鉛直貫通孔11eに連通する貫通孔であり、この貫通孔21bに下方から連結ボルト17が装着される。
【0048】
基台部22は、センサ収容部21をベースブラケット28に装着するための基台を構成する部材であって、本実施形態では、略V字状に形成されたフレームで構成されている。そして、V字の尖頭側の端部には、ベースブラケット28のボルト29に差し込み装着するためのU字状の切り欠き22aが形成される一方、2つに開いた開放側の端部にはベースブラケット28のボルト29に挿通する貫通孔22b、22bが形成されていてる。なお、
図4(c)において、符号22cで示すのは、センサ収容部21の貫通孔21bに連通する貫通孔である。
【0049】
トッププレート13は、往き側ベルト32aにかかる荷重をセンサブロック11に伝達するものであって、
図2に示すように、蓋体25と、蓋体25に備えられる摩擦緩衝機構26とを主要部として備えている。
【0050】
蓋体25は、センサ収容部21の蓋を構成する金属製の部材であって、センサ収容部21の開口部にこの蓋体25を装着することで、センサブロック11をセンサ収容部21内に収容する。これにより、土埃などのホコリが多い環境下においてもホコリの影響を受けることなく荷重測定が可能になる。また、蓋体25の裏面(下面)には、図示しないネジ穴が設けられており、このネジ穴に連結ボルト17が装着される。
【0051】
摩擦緩衝機構26は、ベルトコンベヤ4の往き側ベルト32aとトッププレート13とが摺動接触する際の摩擦抵抗を低減させる機構部であって、本実施形態では、トッププレート13の上面に複数の回転ローラ27,27,…を配置することにより構成されている。より詳細には、回転ローラ27は、いずれも図示しない軸受けを介して回転自在に支持されており、往き側ベルト32aとの摺動接触により、往き側ベルト32aの進行方向に回転することで、摩擦抵抗を低減するようになっている。なお、本実施形態では、摩擦緩衝機構26として、複数の回転ローラ27,27,…を用いる構成を示したが、往き側ベルト32aとの摩擦抵抗を低減できる機構であれば他の機構、たとえば、球体軸受のような機構を採用することも可能である。また、図示例では、センサブロック11の配置に対応させて回転ローラ27を2列配置した場合を示したが、回転ローラ27は1列であってもよい。
【0052】
図5は、荷重測定装置6をベルトコンベヤ4の先端付近(切削廃材の搬出経路の下流側先端の近傍位置)に装着した状態を示している(
図1の符号Xの位置)。図示のように、荷重測定装置6は、ベルトコンベヤ4の往き側ベルト32aの下方に配置され、往き側ベルト32aに載置されて搬送される切削廃材の重量を順次測定する。
【0053】
ここで、ベルトコンベヤ4の構造について
図5を用いて簡単に説明する。
ベルトコンベヤ4は、周知のとおり、ヘッドプーリ31とテールプーリ(図示せず)との間に搬送用のベルト32を架け回して回転させることで、ベルト32に載置された被搬送物(本実施形態では切削廃材)を搬送する装置であり、ヘッドプーリ31とテールプーリとの間には複数のプーリ類、たとえば、往き側ベルト32aを支えるキャリヤローラ33、帰り側ベルト32bを支えるリターンローラ34などが配設されている。これらのプーリ類は、ベルトコンベヤ4を形成するコンベヤフレーム35に取り付けられていて、ドライブプーリとなるプーリ(たとえば、テールプーリ)を除く他のプーリ類はいずれも回転自在にコンベヤフレーム35に装備されている。
【0054】
なお、図示例では、コンベヤフレーム35として、搬送方向に一対の鋼材からなる縦フレーム35a,35aを配置するとともに、縦フレーム35a,35a間に鋼材からなる複数の横フレーム35b,35b,…を配置したストリンガーフレームを用いた場合を示したが、鋼材でトラスを組んだトラスフレームが用いられてもよい。また、図示例では、キャリヤローラ33として、ローラをV字状に配置した構造を示したが、キャリヤローラ33は水平に配置されていてもよい。図中の符合36は、ベルトコンベヤ4を覆うカバー(図示せず)を支持する支持フレームを示している。
【0055】
本実施形態では、このように構成されるベルトコンベヤ4のコンベヤフレーム35に荷重測定装置6が装備される。具体的には、荷重測定装置6は、ベルトコンベヤ4の先端付近において、横フレーム35b,35b間に形成される空スペースに配設される。
【0056】
荷重測定装置6の装備にあたっては、まず、コンベヤフレーム35に、ベースブラケット28を装着する。ベースブラケット28は、荷重測定装置6のベースユニット12をコンベヤフレーム35に取り付けるための基台となる部材である。本実施形態では、ベースブラケット28としてL型鋼を用いており、このL型鋼をコンベヤフレーム35(図示例では、横フレーム35b)に溶接・固定している。
【0057】
ベースブラケット28は、一片にベースユニット装着用のボルト29が起立状態で溶接された金具であり、ボルト29が鉛直方向に起立するようにコンベヤフレーム35に取り付けられる。本実施形態では、ベースユニット12の基台部22に、ボルト29と係合する切り欠き22aと貫通孔22b,22bとが形成されているので、これに対応して3基のベースブラケット28がコンベヤフレーム35に取り付けられる。
【0058】
そして、ベースユニット12の取り付けにあたっては、基台部22の尖頭側に形成された切り欠き22aを一方のベースブラケット28のボルト29に差し込みつつ、開放側に形成された2つの貫通孔22b,22bをそれぞれ他方のベースブラケット28,28のボルト29,29に挿通し、最後に各ボルト29,29,29にナットを装着することで、ベースユニット12がコンベヤフレーム35に固定される。なお、この取り付けにあたり、ベースユニット12の高さ位置の調節は、たとえば、ベースブラケット28とベースユニット12との間に図示しないスペーサを介装することなどにより行われる。この高さ調節により、摩擦緩衝機構26と往き側ベルト32aとの接触状態を調整することができ、センサブロック11での荷重測定に適した高さ位置にベースユニット12を配置することができる。
【0059】
これにより、
図6に示すように、往き側ベルト32aの下方に荷重測定装置6が配置され、ベルトコンベヤ4で搬送される切削廃材が荷重測定装置6上を通過することで、荷重測定装置6の演算処理部が通過する切削廃材の重量を瞬時に測定する。
【0060】
集計処理装置7は、荷重測定装置6の演算処理部と電気的に接続された処理装置であって、後述する積算処理、表示装置8の表示制御などを行う制御プログラムを有するマイコンで構成されている。本実施形態では、この集計処理装置7は、作業装置部2bに装備されており、荷重測定装置6の演算処理部で演算される切削廃材の重量を集計するように構成されている。すなわち、集計処理装置7は、ベルトコンベヤ4で連続的に搬送される切削廃材の重量を、路面切削機1の機上において瞬時に積算し、ベルトコンベヤ4で搬出される切削廃材の積算重量を算出する。
【0061】
表示装置8は、集計処理装置7の集計結果を表示する装置であって、本実施形態では、集計処理装置7と電気的に接続された表示装置、たとえば、液晶ディスプレイなどので構成され、集計処理装置7で積算された切削廃材の積算重量などが表示される。また、本実施形態では、この表示装置8は、ベルトコンベヤ4の操作部を構成する操作盤5の近傍に配置され、路面切削機1のオペレータは、表示装置8に表示される積算重量を視認しながら、操作盤5の操作ができるようになっている。つまり、路面切削機1のオペレータは、ベルトコンベヤ4を介して運搬車両DTに積載される切削廃材の積算重量を確認しながら積載作業を行うことができるようになっており、路面切削機1のオペレータは、運搬車両DTの積載量を最大積載量に応じた最適な積載量に制御することができる。
【0062】
次に、このように構成された路面切削機1を用いた道路切削工事について
図1を参照しながら説明する。
【0063】
本発明に係る道路切削工事は、路面切削機1で自走しながら舗装道路の路面RSの切削が行われる。図示例では、進行方向Fの前方に運搬車両DTが配置されており、路面切削機1の進行に合わせて運搬車両DTを前進させる。
【0064】
前進にあたり、路面切削機1のオペレータは、操作盤5を操作して、切削機3を起動するとともに、切削機3(ドラム機構)の高さ位置を設定し、ベルトコンベヤ4を起動させる。これにより、路面切削機1の前進に応じて、切削機3による舗装道路の路面RSの切削が開始され、切削機3によって削り取られた切削廃材は次々と連続的にベルトコンベヤ4の基端に載せられる。そして、ベルトコンベヤ4に載置された切削廃材は、ベルトコンベヤ4の先端に向かって搬送され、先端に到達した切削廃材から順に落下して運搬車両DTの荷台に積載される。
【0065】
このとき、路面切削機1は、ベルトコンベヤ4によって設定される搬出経路上(本実施形態では、ベルトコンベヤ4の先端付近)のベルト32の直下に荷重測定装置6が配置されているので、搬出経路上を搬送される切削廃材の重量が荷重測定装置6によって連続的に測定されるとともに、測定された重量が集計処理装置7で積算され、切削廃材の積算重量が表示装置8に表示される。
【0066】
したがって、路面切削機1のオペレータは、表示装置8に表示される積算結果を確認することで、運搬車両DTへの積載量を正確に把握することができる。そのため、本発明に係る路面切削工法によれば、路面切削機1のオペレータは、運搬車両DTへの切削廃材の積み込みにあたり、表示装置8を確認することで運搬車両DTの最大積載量まで切削廃材を積載できる(積載量の制御ができる)ようになる。その結果、道路切削工事における運搬車両DTの運用に関して、適正台数の運搬車両DTで、人的ロス、燃料ロス、時間的ロスなどを最小限に抑えた運用が可能になり、道路切削工事に係るコストを大幅に削減することができる。
【0067】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0068】
たとえば、上述した実施形態では、荷重測定装置6をベルトコンベヤ4の下流側先端の近傍(
図1の符号Xで示す位置)に配置した場合を示したが、荷重測定装置6は、切削廃材の搬出経路上であればいずれの位置に配置されていてもよく、たとえば、ベルトコンベヤ4の中間位置や、切削機3に近いベルトコンベヤ4の上流側の端部近傍位置などに配置することも可能である。
【0069】
また、上述した実施形態では、表示装置8を操作盤5の近傍に配置した場合を示したが、表示装置8の配設位置は適宜変更可能である。たとえば、路面切削機1の運転席などに配置することもできる。また、上述した実施形態では、集計処理装置7と表示装置8とを有線接続した場合を示したが、たとえば、集計処理装置7に集計結果を外部に送信する無線通信装置(送信手段)を備えさせることで、路面切削機1の機外に表示装置8を配置することができる。さらには、表示装置8として、たとえば、無線通信可能な携帯端末装置であるスマートフォンやタブレット端末の表示部を表示装置8として使用することも可能である。
【0070】
また、上述した実施形態では、荷重測定装置6のセンサブロック11として、長手方向の両端を固定部11b,11bとして、中央部11aが鉛直方向に変位可能な構造のブロック体を用いたが、たとえば、長手方向の一端のみを固定部とする片持ち構造のブロック体で構成されていてもよい。また、上述した実施形態では、荷重による鉛直方向の瞬時変位をワイドマスク19とセンサアーム18の光学センサとによって検出する構成を示したが、他の方法で荷重による瞬時変位を検出するように構成することもできる。要は、動揺や振動が存在する動的な状態での荷重測定が可能な装置であれば、他の構成の荷重測定装置6を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 路面切削機
2 車両
2a 車両本体
2b 作業装置部
3 切削機
4 ベルトコンベヤ(搬送装置)
5 操作盤
6 荷重測定装置
7 集計処理装置
8 表示装置
11 センサブロック
12 ベースユニット
13 トッププレート
14 測定ユニット
18 センサアーム
19 ワイドマスク
21 センサ収容部
22 基台部
25 蓋体
26 摩擦緩衝機構
28 ベースブラケット
31 ヘッドプーリ
32 ベルト
32a 往き側ベルト
32b 帰り側ベルト
33 キャリヤローラ
RS 路面(表面)
DT 運搬車両