(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002928
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ボビン付きアルファ巻きコイル及びボビン付きアルファ巻きコイル製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/28 20060101AFI20241226BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20241226BHJP
H01F 41/08 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01F27/28 123
H01F27/30
H01F41/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103323
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 定勝
【テーマコード(参考)】
5E043
【Fターム(参考)】
5E043AA01
5E043AB01
5E043FA03
(57)【要約】
【課題】電線を細くすることなく低背かつ低床面積のコイルを提供する。
【解決手段】上部鍔部42、下部鍔部46及び切欠部52が形成された中央部鍔部44並びに上部鍔部42と中央部鍔部44との間に位置する上部胴部23及び下部鍔部46と中央部鍔部44との間に位置する下部胴部30を有するボビン60と、ボビン60の上部胴部23に巻回された上部巻線部26、ボビン60の下部胴部30に巻回された下部巻線部28、及び、上部巻線部26と下部巻線部28とをコイル最内周部分において連結する連結部22が1本の電線20から構成されてなるアルファ巻きコイルとを備え、アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面でアルファ巻きコイルを断面視した場合において、上部巻線部26及び下部巻線部28はいずれも、コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を有するボビン付きアルファ巻きコイル10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部鍔部、下部鍔部及び外周部から内周部にかけて切欠部が形成された中央部鍔部並びに前記上部鍔部と前記中央部鍔部との間に位置する上部胴部及び前記下部鍔部と前記中央部鍔部との間に位置する下部胴部を有するボビンと、
前記ボビンの前記上部胴部に巻回された上部巻線部、前記ボビンの前記下部胴部に巻回された下部巻線部、及び、前記上部巻線部と前記下部巻線部とをコイル最内周部分において連結する連結部が1本の電線から構成されてなるアルファ巻きコイルとを備え、
前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記上部巻線部及び前記下部巻線部はいずれも、前記コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を有することを特徴とするボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項2】
前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記電線のうち前記コイル最内周部分から前記外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、前記上部巻線部及び前記下部巻線部のいずれにおいても、前記アルファ巻きコイルの中心軸に平行な方向に沿った「nが偶数である第n周目巻線部分」の中心軸の位置が、前記アルファ巻きコイルの中心軸に平行な方向に沿った「nが奇数である第n周目巻線部分」の中心軸の位置に対して、前記アルファ巻きコイルの中心軸に平行な方向に沿って偏倚していることを特徴とする請求項1に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項3】
前記上部巻線部における偏倚方向と前記下部巻線部における偏倚方向とが、同一方向、又は、反対方向であることを特徴とする請求項2に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項4】
前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記電線のうち前記コイル最内周部分から前記外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、前記上部巻線部及び前記下部巻線部のいずれにおいても、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に隣接する第n+1周目巻線部分及び/又は第n-1周目巻線部分」とが接触状態にあり、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に近接する第n+2周目巻線部分及び/又は第n-2周目巻線部分」とが非接触状態にあることを特徴とする請求項1に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項5】
前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記電線のうち前記コイル最内周部分から前記外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、前記上部巻線部及び前記下部巻線部のいずれにおいても、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に隣接する第n+1周目巻線部分及び/又は第n-1周目巻線部分」、及び、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に近接する第n+2周目巻線部分及び/又は第n-2周目巻線部分」がともに接触状態にあることを特徴とする請求項1に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項6】
前記巻回構造を安定化させるための巻回構造安定化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項7】
前記巻回構造安定化手段として、前記電線の外周に形成された自己融着層を有することを特徴とする請求項6に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項8】
前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記電線のうち前記コイル最内周部分から前記外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、
前記上部胴部及び前記下部胴部は、前記電線の第1周目巻線部分が巻回されている第1胴体及び前記電線の第2周目巻線部分に対応する第2胴体を備えることを特徴とする請求項1に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項9】
前記第1胴体は、前記電線と接する部分に、前記電線の直径に対応した内径を有する円弧状凹部を有することを特徴とする請求項8に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項10】
前記上部鍔部と前記中央部鍔部との間隔及び前記中央部鍔部と前記下部鍔部との間隔はいずれも、前記電線の直径を2倍した長さよりも短いことを特徴とする請求項8に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項11】
前記第2胴体の高さ寸法(前記アルファ巻きコイルの中心軸に沿った高さ寸法)は、前記電線の直径寸法よりも短いことを特徴とする請求項8に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項12】
前記ボビンは、前記アルファ巻きコイルの中心軸に沿った空芯部を有するとともに当該空芯部に沿って第1反り防止手段を有することを特徴とする請求項1に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項13】
前記ボビンは、前記第1反り防止手段として、前記アルファ巻きコイルの中心軸に沿って形成され、前記空芯部側に突出する複数の直線状突出部を有することを特徴とする請求項12に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項14】
前記上部鍔部及び前記下部鍔部はいずれも、外表面に第2反り防止手段を有することを特徴とする請求項1に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項15】
前記第2反り防止手段は、内周部から外周部に向かって形成された複数の直線状突出部であることを特徴とする請求項14に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項16】
前記上部鍔部・前記中央部鍔部間及び前記下部鍔部・前記中央部鍔部間のいずれにおいても、前記第1胴体が前記第2胴体の前記中央部鍔部側に位置することを特徴とする請求項8に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項17】
前記上部鍔部・前記中央部鍔部間及び前記下部鍔部・前記中央部鍔部間のいずれにおいても、前記第2胴体が前記第1胴体の前記中央部鍔部側に位置することを特徴とする請求項8に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項18】
前記上部鍔部・前記中央部鍔部間及び前記下部鍔部・前記中央部鍔部間の一方においては、前記第1胴体が前記第2胴体の前記中央部鍔部側に位置し、他方においては、前記第2胴体が前記第1胴体の前記中央部鍔部側に位置することを特徴とする請求項8に記載のボビン付きアルファ巻きコイル。
【請求項19】
請求項8に記載のボビン付きアルファ巻きコイルを製造するボビン付きアルファ巻きコイル製造方法であって、
前記上部鍔部、前記下部鍔部及び外周部から内周部にかけて前記切欠部が形成された前記中央部鍔部並びに前記上部鍔部と前記中央部鍔部との間に位置する前記上部胴部及び前記下部鍔部と前記中央部鍔部との間に位置する前記下部胴部を有する前記ボビンと、前記アルファ巻きコイルの元となる1本の前記電線とを準備し、
前記中央部鍔部の前記切欠部に前記電線の前記連結部となる部分を通した後、前記電線を、「前記上部巻線部側の前記第1胴体の周囲」、及び、「前記下部巻線部側の前記第1胴体の周囲」のそれぞれに巻回して1ターン目巻回工程を実施し、
前記電線を、「前記1ターン目巻回工程で前記上部巻線部側の前記第1胴体の周囲に巻回された前記電線と前記上部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記上部巻線部側の前記第1胴体から遠い鍔部」、及び、「前記1ターン目巻回工程で前記下部巻線部側の前記第1胴体の周囲に巻回された前記電線と前記下部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記下部巻線部側の前記第1胴体から遠い鍔部」のそれぞれをガイドとして巻回して2ターン目巻回工程を実施し、
前記電線を、「前記2ターン目巻回工程で前記上部巻線部側の前記第2胴体の外周側に巻回された前記電線と前記上部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記上部巻線部側の前記第2胴体から遠い鍔部」、及び、「前記2ターン目巻回工程で前記下部巻線部側の前記第2胴体の外周側に巻回された前記電線と前記下部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記下部巻線部側の前記第2胴体から遠い鍔部」のそれぞれをガイドとして巻回して3ターン目巻回工程を実施し、
前記電線を、「前記3ターン目巻回工程で前記上部巻線部側の前記第1胴体の外周側に巻回された前記電線と前記上部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記上部巻線部側の前記第1胴体から遠い鍔部」、及び、「前記3ターン目巻回工程で前記下部巻線部側の前記第1胴体の外周側に巻回された前記電線と前記下部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記下部巻線部側の前記第1胴体から遠い鍔部」のそれぞれをガイドとして巻回して4ターン目巻回工程を実施し、
以下同様の方法で、必要とするターン数になるまで巻回工程を繰り返し実施することにより前記ボビン付きアルファ巻きコイルを製造することを特徴とするボビン付きアルファ巻きコイル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン付きアルファ巻きコイル及びボビン付きアルファ巻きコイル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランス、チョークコイル等に用いられるコイルには、軸方向に巻き線数を重ねていくコイルと、径方向に巻き線数を重ねていくコイルがある。アルファ巻きコイルは、後者のコイルに分類されるコイルであるが、巻線端末を2本とも外周部から取り出せるように構成したコイルである。すなわち、アルファ巻きコイルは、上部巻線部と、下部巻線部と、前記上部巻線部と前記下部巻線部とをコイル最内周部分において連結する連結部とが1本の電線から構成され、巻線端末を2本とも外周部から取り出せるように構成したコイルである(例えば、特許文献1及び2参照。)。
上記のように構成されたアルファ巻きコイルは、径方向に巻き線数を重ねていくコイルであることから、薄型のコイルを構成でき、コイルの低背化の要求に応えるコイルとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-114222号公報
【特許文献2】特開2014-197600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の高密度実装化が進み、従来よりも床面積の小さいコイルが要望されており、アルファ巻きコイルの場合も同様である。そこで、電線を細くすることで単位面積当たりの巻線数を増やしてコイルの床面積を小さくすることが考えられる。しかしながら、電線を細くしてコイルの床面積を小さくした場合、電線からの発熱が増大してしまい放熱対策の工夫、追加部材等が必要になる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、電線を細くすることなく低背かつ低床面積のコイルを提供することを目的とする。また、本発明は、本発明のボビン付きアルファ巻きコイルを製造するためのボビン付きアルファ巻きコイル製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上部鍔部、下部鍔部及び外周部から内周部にかけて切欠部が形成された中央部鍔部並びに前記上部鍔部と前記中央部鍔部との間に位置する上部胴部及び前記下部鍔部と前記中央部鍔部との間に位置する下部胴部を有するボビンと、前記ボビンの前記上部胴部に巻回された上部巻線部、前記ボビンの前記下部胴部に巻回された下部巻線部、及び、前記上部巻線部と前記下部巻線部とをコイル最内周部分において連結する連結部が1本の電線から構成されてなるアルファ巻きコイルとを備え、前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記上部巻線部及び前記下部巻線部はいずれも、前記コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を有することを特徴とする。
【0007】
(2)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(1)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記電線のうち前記コイル最内周部分から前記外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、前記上部巻線部及び前記下部巻線部のいずれにおいても、前記アルファ巻きコイルの中心軸に平行な方向に沿った「nが偶数である第n周目巻線部分」の中心軸の位置が、前記アルファ巻きコイルの中心軸に平行な方向に沿った「nが奇数である第n周目巻線部分」の中心軸の位置に対して、前記アルファ巻きコイルの中心軸に平行な方向に沿って偏倚していることを特徴とする。
【0008】
(3)上記(2)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルにおいては、前記上部巻線部における偏倚方向と前記下部巻線部における偏倚方向とが、同一方向、又は、反対方向であってもよい。
【0009】
(4)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(1)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記電線のうち前記コイル最内周部分から前記外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、前記上部巻線部及び前記下部巻線部のいずれにおいても、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に隣接する第n+1周目巻線部分及び/又は第n-1周目巻線部分」とが接触状態にあり、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に近接する第n+2周目巻線部分及び/又は第n-2周目巻線部分」とが非接触状態にあることが好ましい。
【0010】
(5)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(1)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記電線のうち前記コイル最内周部分から前記外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、前記上部巻線部及び前記下部巻線部のいずれにおいても、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に隣接する第n+1周目巻線部分及び/又は第n-1周目巻線部分」、及び、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に近接する第n+2周目巻線部分及び/又は第n-2周目巻線部分」がともに接触状態にあることも好ましい。
【0011】
(6)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(1)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記巻回構造を安定化させるための巻回構造安定化手段を有することが好ましい。
【0012】
(7)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(6)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記巻回構造安定化手段として、前記電線の外周に形成された自己融着層を有することが好ましい。
【0013】
(8)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(1)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面で前記アルファ巻きコイルを断面視した場合において、前記電線のうち前記コイル最内周部分から前記外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、前記上部胴部及び前記下部胴部は、前記電線の第1周目巻線部分が巻回されている第1胴体及び前記電線の第2周目巻線部分に対応する第2胴体を備えることが好ましい。
【0014】
(9)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(8)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記第1胴体は、前記電線と接する部分に、前記電線の直径に対応した内径を有する円弧状凹部を有することが好ましい。
【0015】
(10)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(8)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記上部鍔部と前記中央部鍔部との間隔及び前記中央部鍔部と前記下部鍔部との間隔はいずれも、前記電線の直径を2倍した長さよりも短いことが好ましい。
【0016】
(11)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(8)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記第2胴体の高さ寸法(前記アルファ巻きコイルの中心軸に沿った高さ寸法)は、前記電線の直径寸法よりも短いことが好ましい。
【0017】
(12)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(1)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記ボビンは、前記アルファ巻きコイルの中心軸に沿った空芯部を有するとともに当該空芯部に沿って第1反り防止手段を有することが好ましい。
【0018】
(13)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(12)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記ボビンは、前記第1反り防止手段として、前記アルファ巻きコイルの中心軸に沿って形成され、前記空芯部側に突出する複数の直線状突出部を有することが好ましい。
【0019】
(14)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(1)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記上部鍔部及び前記下部鍔部はいずれも、外表面に第2反り防止手段を有することが好ましい。
【0020】
(15)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(14)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記第2反り防止手段は、内周部から外周部に向かって形成された複数の直線状突出部であることが好ましい。
【0021】
(16)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(8)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記上部鍔部・前記中央部鍔部間及び前記下部鍔部・前記中央部鍔部間のいずれにおいても、前記第1胴体が前記第2胴体の前記中央部鍔部側に位置するものであってもよい。
【0022】
(17)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(8)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記上部鍔部・前記中央部鍔部間及び前記下部鍔部・前記中央部鍔部間のいずれにおいても、前記第2胴体が前記第1胴体の前記中央部鍔部側に位置するものであってもよい。
【0023】
(18)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、上記(8)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルであって、前記上部鍔部・前記中央部鍔部間及び前記下部鍔部・前記中央部鍔部間の一方においては、前記第1胴体が前記第2胴体の前記中央部鍔部側に位置し、他方においては、前記第2胴体が前記第1胴体の前記中央部鍔部側に位置するものであってもよい。
【0024】
(19)本発明のボビン付きアルファ巻きコイル製造方法は、上記(8)に記載のボビン付きアルファ巻きコイルを製造するボビン付きアルファ巻きコイル製造方法であって、前記上部鍔部、前記下部鍔部及び外周部から内周部にかけて前記切欠部が形成された前記中央部鍔部並びに前記上部鍔部と前記中央部鍔部との間に位置する前記上部胴部及び前記下部鍔部と前記中央部鍔部との間に位置する前記下部胴部を有する前記ボビンと、前記アルファ巻きコイルの元となる1本の前記電線とを準備し、前記中央部鍔部の前記切欠部に前記電線の前記連結部となる部分を通した後、前記電線を、「前記上部巻線部側の前記第1胴体の周囲」、及び、「前記下部巻線部側の前記第1胴体の周囲」のそれぞれに巻回して1ターン目巻回工程を実施し、前記電線を、「前記1ターン目巻回工程で前記上部巻線部側の前記第1胴体の周囲に巻回された前記電線と前記上部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記上部巻線部側の前記第1胴体から遠い鍔部」、及び、「前記1ターン目巻回工程で前記下部巻線部側の前記第1胴体の周囲に巻回された前記電線と前記下部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記下部巻線部側の前記第1胴体から遠い鍔部」のそれぞれをガイドとして巻回して2ターン目巻回工程を実施し、前記電線を、「前記2ターン目巻回工程で前記上部巻線部側の前記第2胴体の外周側に巻回された前記電線と前記上部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記上部巻線部側の前記第2胴体から遠い鍔部」、及び、「前記2ターン目巻回工程で前記下部巻線部側の前記第2胴体の外周側に巻回された前記電線と前記下部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記下部巻線部側の前記第2胴体から遠い鍔部」のそれぞれをガイドとして巻回して3ターン目巻回工程を実施し、前記電線を、「前記3ターン目巻回工程で前記上部巻線部側の前記第1胴体の外周側に巻回された前記電線と前記上部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記上部巻線部側の前記第1胴体から遠い鍔部」、及び、「前記3ターン目巻回工程で前記下部巻線部側の前記第1胴体の外周側に巻回された前記電線と前記下部鍔部及び前記中央部鍔部のうち前記下部巻線部側の前記第1胴体から遠い鍔部」のそれぞれをガイドとして巻回して4ターン目巻回工程を実施し、以下同様の方法で、必要とするターン数になるまで巻回工程を繰り返し実施することにより前記ボビン付きアルファ巻きコイルを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のボビン付きアルファ巻きコイルは、アルファ巻きコイルの中心軸を含む平面でアルファ巻きコイルを断面視した場合において、上部巻線部及び下部巻線部はいずれも、コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を有する。このため、本発明のボビン付きアルファ巻きコイルによれば、電線を細くすることなく単位面積当たりの巻線数を増やすことができ、その結果、低背かつ低床面積のコイルを提供することができる。
【0026】
本発明のボビン付きアルファ巻きコイル製造方法においては、上記したように1ターン目巻回工程~4ターン目巻回工程を順次実施するとともに、以下同様の方法で、必要とするターン数になるまで巻回工程を繰り返し実施することによりボビン付きアルファ巻きコイルを製造する。このため、本発明のボビン付きアルファ巻きコイル製造方法によれば、本発明のボビン付きアルファ巻きコイルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10の外観図である。
【
図2】アルファ巻きコイル12の中心軸を含む平面における断面図である。
【
図3】アルファ巻きコイル12の巻線部24の要部拡大断面図である。
【
図5】ボビン60における上部胴部23及び下部胴部30の近傍を拡大して示す図である。
【
図11】ボビン構造60-1を有するボビン60を用いてボビン付きアルファ巻きコイル10を製造する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のボビン付きアルファ巻きコイル及びボビン付きアルファ巻きコイル製造方法の実施形態について説明する。
【0029】
図1は、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10の外観図である。
図1(A)はボビン付きアルファ巻きコイル10の斜視図であり、
図1(B)は
図1(A)の直線A-Aとアルファ巻きコイル12(符号を図示せず。)の中心軸とを含む平面によるボビン付きアルファ巻きコイル10の断面図であり、
図1(C)はボビン付きアルファ巻きコイル10の正面図である。
図2は、アルファ巻きコイル12の中心軸を含む平面における断面図である。
図2(A)はアルファ巻きコイル12全体の断面図であり、
図2(B)はアルファ巻きコイル12の巻線部24の要部拡大断面図である。
図3は、アルファ巻きコイル12の巻線部24の要部拡大断面図である。
図3(A)~
図3(D)は「nが奇数である第n周目巻線部分」の中心軸の位置に対する「nが偶数である第n周目巻線部分」の中心軸の位置の偏倚方向に関するバリエーションを示す図である。詳細は後述する。
【0030】
ボビン付きアルファ巻きコイル10は、
図1~
図3に示すように、上部鍔部42、下部鍔部46及び外周部から内周部にかけて切欠部52が形成された中央部鍔部44並びに上部鍔部42と中央部鍔部44との間に位置する上部胴部23及び下部鍔部46と中央部鍔部44との間に位置する下部胴部30を有するボビン60と、ボビン60の上部胴部23に巻回された上部巻線部26、ボビン60の下部胴部30に巻回された下部巻線部28、及び、上部巻線部26と下部巻線部28とをコイル最内周部分において連結する連結部22が1本の電線20から構成されてなるアルファ巻きコイル12とを備える。連結部22は切欠部52を通って上部巻線部26と下部巻線部28とを連結する。アルファ巻きコイル12の中心軸を含む平面でアルファ巻きコイル12を断面視した場合において、上部巻線部26及び下部巻線部28はいずれも、コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を有する。このため、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10によれば、電線20を細くすることなく単位面積当たりの巻線数を増やすことができ、その結果、低背かつ低床面積のコイルを提供することができる。また、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10によれば、ボビン60を備えるため、アルファ巻きコイル12の構造安定性を高くすることが可能となる。
【0031】
実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10において、上部巻線部26及び下部巻線部28がいずれも、コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を有するとは、
図2を参照して、以下のように言い換えることができる。すなわち、アルファ巻きコイル12の中心軸を含む平面でアルファ巻きコイル12を断面視した場合において、電線20のうちコイル最内周部分から外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、上部巻線部26及び下部巻線部28のいずれにおいても、アルファ巻きコイル12の中心軸に平行な方向に沿った「nが偶数である第n周目巻線部分」の中心軸の位置が、アルファ巻きコイル12の中心軸に平行な方向に沿った「nが奇数である第n周目巻線部分」の中心軸の位置に対して、アルファ巻きコイル12の中心軸に平行な方向に沿って偏倚している。
【0032】
例えば、
図2(B)を参照すると、下部巻線部28において、nが2(偶数)である下段部34の第2周目巻線部分の中心軸の位置は、nが1(奇数)である上段部32の第1周目巻線部分の中心軸の位置に対して、アルファ巻きコイルの12の中心軸に平行な方向に沿って偏倚している。同様に、nが4(偶数)である下段部34の第4周目巻線部分の中心軸の位置は、nが3(奇数)である上段部32の第3周目巻線部分の中心軸の位置に対して、アルファ巻きコイルの10の中心軸に平行な方向に沿って偏倚している。これは、上部巻線部26においても同じである。
【0033】
実施形態におけるアルファ巻きコイル12においては、
図3に示すように、上部巻線部26における偏倚方向と下部巻線部28における偏倚方向とは、同一方向であってもよいし、反対方向であってもよい。すなわち、上部巻線部26における奇数周目となる巻線部分と上部巻線部26における偶数周目となる巻線部分は、上部巻線部26の上段部32又は下段部34のいずれに配置されていてもよく、また、下部巻線部28における奇数周目となる巻線部分と下部巻線部28における偶数周目となる巻線部分も、上段部32又は下段部34のいずれに配置されていてもよい。様々な巻線レイアウトが可能となる。
【0034】
図3(A)は、上部巻線部26と下部巻線部28の巻線の配置が、上部巻線部26と下部巻線部28の中間面Xに対して対称な位置に配線されている状態である。上部巻線部26において、電線20の巻き始めを上部巻線部26の下段部34からとしている。このため、奇数周目の巻線部が上部巻線部26の下段部34に配置され、偶数周目の巻線部が上部巻線部26の上段部32に配置されている。一方、下部巻線部28においては、電線20の巻き始めを下部巻線部28の上段部32からとしている。このため、奇数周目の巻線部が下部巻線部28の上段部32に配置され、偶数周目の巻線部が下部巻線部28の下段部34に配置されている。これにより、上部巻線部26と下部巻線部28の巻線配置が、上部巻線部26と下部巻線部28の中間面Xに対して、対称な配置となる。
【0035】
図3(B)は、上部巻線部26と下部巻線部28の巻線の配置が、上部巻線部26と下部巻線部28の中間面Xに対して対称な位置に配線されている状態である。上部巻線部26において、電線20の巻き始めを上部巻線部26の上段部32からとしている。このため、奇数周目の巻線部が上部巻線部26の上段部32に配置され、偶数周目の巻線部が上部巻線部26の下段部34に配置されている。一方、下部巻線部28においては、電線20の巻き始めを下部巻線部28の下段部34からとしている。このため、奇数周目の巻線部が下部巻線部28の上段部32に配置され、偶数番目の巻線部が下部巻線部28の上段部32に配置されている。これにより、上部巻線部26と下部巻線部28の巻線配置が、上部巻線部26と下部巻線部28の中間面Xに対して、対称な配置となる。
【0036】
図3(C)は、上部巻線部26と下部巻線部28の巻線の配置が、上部巻線部26と下部巻線部28の中間面Xに対して非対称な位置に配線されている状態である。上部巻線部26において、電線20の巻き始めを上部巻線部26の上段部32からとしている。このため、奇数周目の巻線部が上部巻線部26の上段部32に配置され、偶数周目の巻線部が上部巻線部26の下段部34に配置されている。同様に、下部巻線部28においては、電線20の巻き始めを下部巻線部28の上段部32からとしている。このため、奇数周目の巻線部が下部巻線部28の上段部32に配置され、偶数周目の巻線部が下部巻線部28の下段部34に配置されている。これにより、上部巻線部26と下部巻線部28の巻線配置が、上部巻線部26と下部巻線部28の中間面Xに対して、非対称な配置となる。
【0037】
図3(D)は、上部巻線部26と下部巻線部28の巻線の配置が、上部巻線部26と下部巻線部28の中間面Xに対して非対称な位置に配線されている状態である。上部巻線部26において、電線20の巻き始めを上部巻線部26の下段部34からとしている。このため、奇数周目の巻線部が上部巻線部26の下段部34に配置され、偶数周目の巻線部が上部巻線部26の上段部32に配置されている。同様に、下部巻線部28においては、電線20の巻き始めを下部巻線部28の下段部34からとしている。このため、奇数周目の巻線部が下部巻線部28の上段部32に配置され、偶数番目の巻線部が下部巻線部28の上段部32に配置されている。これにより、上部巻線部26と下部巻線部28の巻線配置が、上部巻線部26と下部巻線部28の中間面Xに対して、非対称な配置となる。
【0038】
実施形態におけるアルファ巻きコイル12においては、
図2及び
図3に示すように、アルファ巻きコイル12の中心軸を含む平面でアルファ巻きコイル12を断面視した場合において、電線20のうちコイル最内周部分から外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、上部巻線部26及び下部巻線部28のいずれにおいても、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に隣接する第n+1周目巻線部分及び/又は第n-1周目巻線部分」とが接触状態にあり、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に近接する第n+2周目巻線部分及び/又は第n-2周目巻線部分」とが非接触状態にある。
【0039】
例えば、
図2(B)を参照すると、nを1とした場合、上段部32の第1周目巻線部分と、当該第1周目巻線部分に隣接する第2巻線部分とが接触状態にあり、第1周目巻線部分と、当該第1周目巻線部分に近接する第3巻線部分とが非接触状態にある。また、nを2とした場合、下段部34の第2周目巻線部分と、当該第2周目巻線部分に隣接する第1巻線部分及び第3巻線部分とが接触状態にあり、第2周目巻線部分と、当該第2周目巻線部分に近接する第4巻線部分とが非接触状態にある。また、nを3とした場合、上段部32の第3周目巻線部分と、当該第3周目巻線部分に隣接する第2巻線部分及び第4巻線部分とが接触状態にあり、第3周目巻線部分と、当該第3周目巻線部分に近接する第1巻線部分とが非接触状態にある。また、nを4とした場合、下段部34の第4周目巻線部分と、当該第4周目巻線部分に隣接する第3巻線部分とが接触状態にあり、第4周目巻線部分と、当該第4周目巻線部分に近接する第2巻線部分とが非接触状態にある。
【0040】
このように、上段部32の電線20同士及び下段部34の電線20同士は非接触状態にあり、上段部32の電線20と下段部34の電線20は接触状態にある。これにより、巻線部の高さ寸法を小さくすることができる。上段部32の電線20同士及び下段部34の電線20同士は非接触状態であることにより、例えば、上段部32の隣接する第1周目巻線部分と第3周目巻線部分の電線20間が広くなり、電線20間に配置される下段部34の第2周目巻線部分がこの電線20間に入り込む。このため、巻線部24の高さ寸法を抑えることができ、ボビン付きアルファ巻きコイル10の低背化を図ることができる。
【0041】
図4は、電線20の断面図である。実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10は、
図4に示すように、巻回構造を安定化させるための巻回構造安定化手段を有する。そして、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10は、上記の巻回構造安定化手段として、電線20の外周に形成された自己融着層36を有する。
【0042】
図4に示すように、電線20の断面は円形であり、外周部に自己融着層36が形成されている。この自己融着層36により、接触している電線20同士が固着され、巻線部24の上部巻線部26及び下部巻線部28の巻回構造が安定化する。なお、
図4以外の図においては、自己融着層36を図示していない。
【0043】
次に、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10におけるボビン60について詳しく説明する。
図5は、ボビン60における上部胴部23及び下部胴部30の近傍を拡大して示す図である。
図5(A)は、電線20が巻回されていない状態を示す図であり、
図5(B)は、電線20の第1周目巻線部分と第2周目巻線部分が巻回された状態を示す図である。
図5(B)においては、電線20は断面を示している。
図6は、ボビン60の斜視図である。
【0044】
実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10においては、アルファ巻きコイル12の中心軸を含む平面でアルファ巻きコイル12を断面視した場合において、電線20のうちコイル最内周部分から外周側へ向かって第n周目の巻線部分を「第n周目巻線部分」としたとき、上部胴部23及び下部胴部30は、電線20の第1周目巻線部分が巻回されている第1胴体48-1,50-1及び電線20の第2周目巻線部分に対応する第2胴体48-2,50-2を備える。このため、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10によれば、ボビン60に電線20を巻回することによりアルファ巻きコイル12を形成することができる。
【0045】
第1胴体48-1,50-1は、電線20と接する部分に、電線20の直径に対応した内径を有する円弧状凹部を有する。これにより、第1胴体48-1,50-1が電線20を巻回する際のガイドとなり、電線20の第1周目を円滑に巻回することができる。また、第2胴体48-2、50-2は、電線20と接触する位置に先端部を有し、電線20を巻回するためのガイドとなり、電線20の第2周目を円滑に巻回することができる。
【0046】
実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10においては、
図5(A)に示すように、上部鍔部42と中央部鍔部44との間隔(H1+H2)及び中央部鍔部44と下部鍔部46との間隔はいずれも、電線20の直径を2倍した長さよりも短い。このため、上部巻線部26及び下部巻線部28はいずれも、コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を有することとなり、ボビン付きアルファ巻きコイル10の低背化が図られる。
【0047】
また、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10においては、
図5(A)に示すように、第2胴体48-2、50-2の高さ寸法H2(アルファ巻きコイル12の中心軸に沿った高さ寸法)は、電線20の直径寸法よりも短い。このため、上部巻線部26及び下部巻線部28はいずれについても、コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を効果的に実現できる。
【0048】
例えば、
図5(A)に示す第1胴体48-1の高さ寸法H1は、電線20の第1周目巻線部分をガイドするため、
図5(B)に示すように電線20の径と同じである。奇数周目巻回部と偶数周目巻回部が千鳥状に巻回されるため、第2周目巻線部分の電線20は、第1周目巻線部分の電線20の斜め上方に配置される。このため、第2胴体48-2の高さ寸法H2は、電線20の直径寸法よりも短い。また、第n周目巻線部分に隣接する第n+1周目巻線部分が、第n周目巻線部分とn+2周目巻線部分との間に一部入り込む。従って、上部鍔部42と中央部鍔部44との間隔及び中央部鍔部44と下部鍔部46との間隔はいずれも、電線20の直径を2倍した長さよりも短くなる。
【0049】
実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10においては、
図6に示すように、ボビン60は、アルファ巻きコイル12の中心軸に沿った空芯部62を有するとともに当該空芯部62に沿って第1反り防止手段64を有する。これにより、電線20を巻回する際に空芯部62側にかかる力に対抗して胴部の曲がりを防止することができる。「空芯部」とは、ボビン中央部にある中空の貫通開口部のことをいう。
【0050】
ボビン60は、第1反り防止手段64として、アルファ巻きコイル12の中心軸に沿って形成され、空芯部62側に突出する複数の直線状突出部を有する。当該直線状突出部は胴部の曲がりを防止するための強化手段であり、これにより、電線20を巻回する際に空芯部62側にかかる力に対抗して胴部の曲がりを一層確実に防止することができる。
【0051】
また、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10においては、
図6に示すように、上部鍔部42及び下部鍔部46はいずれも、外表面に第2反り防止手段66を有する。これにより、電線20を巻回する際に外側面方向にかかる力に対抗して上部鍔部42と下部鍔部46の曲がりを防止することができる。
【0052】
第2反り防止手段66は、内周部から外周部に向かって形成された複数の直線状突出部である。当該直線状突出部は上部鍔部42と下部鍔部46との曲がりを防止するための強化手段であり、これにより、電線20を巻回する際に外側面方向にかかる力に対抗して上部鍔部42と下部鍔部46の曲がりを一層確実に防止することができる。
【0053】
実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10においては、巻線部24における電線20の配置は、
図3(A)~
図3(D)に示すように、4通りの配置が可能である。これらの電線20の配置は、それぞれに対応したボビン60で製造可能である。以下、
図3(A)~
図3(D)の配置に対応した、ボビン付きアルファ巻きコイル10におけるボビン60の構造(ボビン構造)を説明する。
【0054】
図7は、ボビン構造60-1の正面図である。
図7に示すボビン構造60-1は、
図3(A)の電線20が巻回されるボビン構造である。上部鍔部42・中央部鍔部44間及び下部鍔部46・中央部鍔部44間のいずれにおいても、第1胴体48-1,50-1が中央部鍔部44側に位置し、上部鍔部42・中央部鍔部44間においては、第2胴体48-2が第1胴体48-1の上部鍔部42側に位置し、下部鍔部46・中央部鍔部44間においては、第2胴体50-2が第1胴体50-1の下部鍔部46側に位置している。
【0055】
図8は、ボビン構造60-2の正面図である。
図8に示すボビン構造60-2は、
図3(B)の電線20が巻回されるボビン構造である。上部鍔部42・中央部鍔部44間及び下部鍔部46・中央部鍔部44間のいずれにおいても、第2胴体48-2,50-2が中央部鍔部44側に位置し、上部鍔部42・中央部鍔部44間においては、第1胴体48-1が第2胴体48-2の上部鍔部42側に位置し、下部鍔部46・中央部鍔部44間においては、第1胴体50-1が第2胴体50-2の下部鍔部46側に位置している。
【0056】
図9は、ボビン構造60-3の正面図である。
図9に示すボビン構造60-3は、
図3(C)の電線20が巻回されるボビン構造である。上部鍔部42・中央部鍔部44間においては、第2胴体48-2が中央部鍔部44側に位置し、第1胴体48-1は第2胴体48-2の上部鍔部42側に位置し、下部鍔部46・中央部鍔部44間においては、第1胴体50-1が中央部鍔部44側に位置し、第2胴体50-2は第1胴体50-1の下部鍔部46側に位置している。
【0057】
図10は、ボビン構造60-4の正面図である。
図10に示すボビン構造60-4は、
図3(D)の電線20が巻回されるボビン構造である。上部鍔部42・中央部鍔部44間においては、第1胴体48-1が中央部鍔部44側に位置し、第2胴体48-2は第1胴体48-1の上部鍔部42側に位置し、下部鍔部46・中央部鍔部44間においては、第2胴体50-2が中央部鍔部44側に位置し、第1胴体50-1は第2胴体50-2の下部鍔部46側に位置している。
【0058】
次に、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル製造方法について説明する。
図11は、ボビン構造60-1を有するボビン60を用いてボビン付きアルファ巻きコイル10を製造する様子を示す図である。
図11(A)は1ターン目巻回工程の様子を示す正面図であり、
図11(B)は2ターン目巻回工程の様子を示す正面図であり、
図11(C)は3ターン目巻回工程の様子を示す正面図であり、
図11(D)は4ターン目巻回工程の様子を示す正面図であり、
図11(E)は5ターン目巻回工程の様子を示す正面図であり、
図11(F)は6ターン目巻回工程の様子を示す正面図であり、
図11(G)は7ターン目巻回工程の様子を示す正面図であり、
図11(H)は8ターン目巻回工程の様子を示す正面図であり、
図11(I)は8ターン目巻回工程実施後の巻線完了状態を示す断面図である。
図11(A)~
図11(H)においては、下部巻線部28を製造していないように見えるが、実際は、下部巻線部28も上部巻線部26と同様に製造する。
【0059】
実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル製造方法は、
図11に示すように、ボビン付きアルファ巻きコイル10を製造するボビン付きアルファ巻きコイル製造方法である。まず、上部鍔部42、下部鍔部46及び外周部から内周部にかけて切欠部52が形成された中央部鍔部44並びに上部鍔部42と中央部鍔部44との間に位置する上部胴部23及び下部鍔部46と中央部鍔部44との間に位置する下部胴部30を有するボビン60と、アルファ巻きコイル12の元となる1本の電線20とを準備する。実施形態においては、ボビン60としてボビン構造60-1を有するものを準備する。
【0060】
次に、中央部鍔部44の切欠部52に電線20の連結部22となる部分を通した後、電線20を、「上部巻線部26側の第1胴体48-1の周囲」、及び、「下部巻線部28側の第1胴体50-1の周囲」のそれぞれに巻回して1ターン目巻回工程を実施する(
図11(A)参照。)。
【0061】
次に、電線20を、「1ターン目巻回工程で上部巻線部26側の第1胴体48-1の周囲に巻回された電線20と上部鍔部42及び中央部鍔部44のうち上部巻線部26側の第1胴体48-1から遠い鍔部(実施形態の場合、上部鍔部42)」、及び、「1ターン目巻回工程で下部巻線部28側の第1胴体50-1の周囲に巻回された電線20と下部鍔部46及び中央部鍔部44のうち下部巻線部28側の第1胴体50-1から遠い鍔部(実施形態の場合、下部鍔部46)」のそれぞれをガイドとして巻回して2ターン目巻回工程を実施する(
図11(B)参照。)。
【0062】
次に、電線20を、「2ターン目巻回工程で上部巻線部26側の第2胴体48-2の外周側に巻回された電線20と上部鍔部42及び中央部鍔部44のうち上部巻線部26側の第2胴体48-2から遠い鍔部(実施形態の場合、中央部鍔部44)」、及び、「2ターン目巻回工程で下部巻線部28側の第2胴体50-2の外周側に巻回された電線20と下部鍔部46及び中央部鍔部44のうち下部巻線部28側の第2胴体50-2から遠い鍔部(実施形態の場合、中央部鍔部44)」のそれぞれをガイドとして巻回して3ターン目巻回工程を実施する(
図11(C)参照。)。
【0063】
次に、電線20を、「3ターン目巻回工程で上部巻線部26側の第1胴体48-1の外周側に巻回された電線20と上部鍔部42及び中央部鍔部44のうち上部巻線部26側の第1胴体48-1から遠い鍔部(実施形態の場合、上部鍔部42)」、及び、「3ターン目巻回工程で下部巻線部28側の第1胴体50-1の外周側に巻回された電線20と下部鍔部46及び中央部鍔部44のうち下部巻線部28側の第1胴体50-1から遠い鍔部(実施形態の場合、下部鍔部46)」のそれぞれをガイドとして巻回して4ターン目巻回工程を実施する(
図11(D)参照。)。
【0064】
以下同様の方法で、必要とするターン数(実施形態の場合、8ターン)になるまで巻回工程を繰り返し実施する(
図11(E)~
図11(H)参照。)。このようにすることにより、ボビン付きアルファ巻きコイル10を製造することができる(
図11(I)参照。)。ボビン付きアルファ巻きコイル10は、電線20が自己融着層36を有しているため、電線20同士が強固に固着されており、巻回状態を保ったままボビン付きアルファ巻きコイル10が完成する。電線20の両端は直線状となっており端子として利用可能である。
【0065】
実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10は、アルファ巻きコイル12の中心軸を含む平面でアルファ巻きコイル12を断面視した場合において、上部巻線部26及び下部巻線部28はいずれも、コイル最内周部分から外周側へ向かって千鳥状をなす巻回構造を有する。このため、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10によれば、電線20を細くすることなく単位面積当たりの巻線数を増やすことができ、その結果、低背かつ低床面積のコイルを提供することができる。
【0066】
実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル製造方法においては、上記したように1ターン目巻回工程~4ターン目巻回工程を順次実施するとともに、以下同様の方法で、必要とするターン数になるまで巻回工程を繰り返し実施することによりボビン付きアルファ巻きコイル10を製造する。このため、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル製造方法によれば、実施形態に係るボビン付きアルファ巻きコイル10を製造することができる。
【0067】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。例えば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0068】
(1)本発明に使用される電線の径とターン数は、適宜設計することができる。
【0069】
(2)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルにおけるアルファ巻きコイルは、真円に限らず、長円、楕円、卵形でもよいし、多角形でもよい。
【0070】
(3)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルにおけるボビンは、真円に限らず、長円、楕円、卵形でもよいし、多角形でもよい。
【0071】
(4)本発明のボビン付きアルファ巻きコイルに、コアを組み合わせてもよい。
【0072】
(5)上記の実施形態においては、「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に近接する第n+2周目巻線部分及び/又は第n-2周目巻線部分」とが非接触状態にあるものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は「第n周目巻線部分」と「当該第n周目巻線部分に近接する第n+2周目巻線部分及び/又は第n-2周目巻線部分」とが接触状態にあるものであってもよい。この場合、ボビン付きアルファ巻きコイルをさらに低床面積化できる。
【0073】
(6)上記の実施形態においては、ボビン付きアルファ巻きコイル10は、巻回構造安定化手段として電線20の外周に形成された自己融着層36を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係るボビン付きアルファ巻きコイルは、巻回構造安定化手段として接着剤からなる接着層や固定用のテープ等を有していてもよい。
【0074】
(7)上記の実施形態においては、ボビン60は複数の直線状突出部である第1反り防止手段64及び第2反り防止手段66を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。ボビンにおける第1反り防止手段及び第2反り防止手段は、直線状突出部に限定されるものではなく、胴部、上部鍔部、下部鍔部等の曲がりを防止することができる形状であればよい。また、ボビンは第1反り防止手段及び第2反り防止手段の一方又は両方を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10・・・ボビン付きアルファ巻きコイル
12・・・アルファ巻きコイル
20・・・電線
22・・・連結部
23・・・上部胴部
24・・・巻線部
26・・・上部巻線部
28・・・下部巻線部
30・・・下部胴部
32・・・上段部
34・・・下段部
36・・・自己融着層
42・・・上部鍔部
44・・・中央部鍔部
46・・・下部鍔部
48-1,50-1・・・第1胴体
48-2,50-2・・・第2胴体
52・・・切欠部
60・・・ボビン
60-1,60-2,60-3,60-4・・・ボビン構造
62・・・空芯部
64・・・第1反り防止手段
66・・・第2反り防止手段