(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029304
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】除雪装置
(51)【国際特許分類】
E01H 5/04 20060101AFI20250227BHJP
【FI】
E01H5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133847
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】512224257
【氏名又は名称】土▲樋▼パルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土▲樋▼ 優
【テーマコード(参考)】
2D026
【Fターム(参考)】
2D026AB02
2D026CB02
2D026CC01
2D026CG01
2D026CG02
2D026CK01
(57)【要約】
【課題】 オーガとブロアとを独立して回転駆動できるようにして、雪の負荷による影響を極力低減できるようにして機能性の向上を図り、PTO軸の回転方向が如何様になっていてもブロアが正転方向になるように装着できるようにして汎用性の向上を図る。
【解決手段】 オーガ用油圧ポンプ21によって駆動されオーガ11を回転させるオーガ用油圧モータ22を備えたオーガ回転機構20と、フロントPTO軸DfまたはリヤPTO軸Drの何れか一方の回転をブロア13に伝達して回転させるブロア回転機構30とを備え、ブロア回転機構30を減速機31を備えて構成し、減速機31の第1軸33の一端側にフロントPTO軸Dfに接続するための第1接続部36を設け、第2軸34の一端側にリアPTO軸Drに接続するための第2接続部37を設け、第2軸34の他端側をブロア13のブロア回転軸に連係させた。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を伝達するPTO軸を備えたトラクタに作業機の一つとして接続される除雪装置であって、回転させられて雪を集約するオーガと、該オーガを回転可能に保持するオーガケースと、該オーガケースに設けられ該オーガケースの後方から見て一方回転方向の正転方向に回転させられて上記オーガによって集約された雪を排出するブロアとを備えた除雪装置において、
上記オーガケースに設けられ、上記エンジンの動力により作動されるオーガ用油圧ポンプによって駆動され上記オーガを回転させるオーガ用油圧モータを備えたオーガ回転機構と、
上記オーガケースに設けられ、上記PTO軸の回転を上記ブロアに伝達して該ブロアを回転させるブロア回転機構とを備え、
該ブロア回転機構を、上記オーガケースに取付けられる減速機を備えて構成し、該減速機を、上記オーガケースに取付けられるギヤボックスと、該ギヤボックスに回転可能に設けられる第1軸と、上記ギヤボックスに回転可能に設けられ上記第1軸に平行な軸線を有した第2軸と、上記ギヤボックス内に収納され上記第1軸の回転を上記第2軸に伝達するとともに該第1軸の回転を逆転させて減速するギヤ伝動機構とを備えて構成し、
該減速機の第1軸の一端側に上記PTO軸に接続するための第1接続部を設け、上記第2軸の一端側に上記PTO軸に接続するための第2接続部を設け、該第2軸の他端側を上記ブロアの回転軸に連係させたことを特徴とする除雪装置。
【請求項2】
上記トラクタが、上記PTO軸としてフロント側のフロントPTO軸と、該トラクタを後方から見た該フロントPTO軸の回転方向と同方向の回転方向であるリア側のリヤPTO軸とを備えた場合、上記第1軸の第1接続部及び上記第2軸の第2接続部の何れか一方を上記フロントPTO軸に接続可能に形成し、上記第1軸の第1接続部及び上記第2軸の第2接続部の何れか他方を上記リアPTO軸に接続可能に形成したことを特徴とする請求項1記載の除雪装置。
【請求項3】
上記第1軸の第1接続部及び上記第2軸の第2接続部を上記ギヤボックスから突出するスプライン軸で構成し、上記減速機に着脱可能に設けられ、上記第1軸の第1接続部及び上記第2軸の第2接続部の何れか一方の使用時に、何れか他方を覆うカバーを備えたことを特徴とする請求項1または2記載の除雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに作業機の一つとして接続される除雪装置に係り、特に、トラクタのPTO軸の回転を利用する除雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図8に示すように、この種の除雪装置Saは、回転させられて雪を集約するオーガ100と、オーガ100を回転可能に保持するオーガケース101と、オーガケース101に設けられオーガケース101の後方から見て一方回転方向に回転させられてオーガ100によって集約された雪を排出するブロア102とを備えて構成されている。この除雪装置Saが装着されるトラクタTは、フロント側に、エンジンEの動力を変速機Caを介して伝達するフロントPTO軸Dfが備えられている一方、リア側に、エンジンEの動力をミッションケースM内のミッション機構及び変速機Cbを介して伝達するリアPTO軸Drが備えられている。
【0003】
そして、この除雪装置Saは、オーガケース101から露出したオーガ100をトラクタTの前方に向けて露出するように配置してトラクタTに設けた図示外の複数のリンクをオーガケース101に接続することにより装着するようにしている。オーガケース101には、PTO軸Dfの回転を連結シャフト103を介してオーガ100及びブロア102に機械的に伝達しこのオーガ100及びブロア102に連動して回転させる伝動機構104が設けられている(例えば、特許第4520338号公報等に掲載)。
【0004】
この除雪装置Saを接続したトラクタTにより除雪を行うときは、運転者はトラクタTを前進させ、PTO軸Dfを回転させる。これにより、連結シャフト103を介してオーガ100及びブロア102が連動して回転し、オーガ100によって雪が集約され、ブロア102によって集約された雪が吸引されて図示外のシュータから排出されていく。
【0005】
このように、除雪装置SaをトラクタTのフロント側に装着して除雪を行うようにしているのは、以下の理由による。旧来から、トラクタにおいてはPTO軸がリア側にのみ設けられているものが多くあることから、このタイプのものにおいては、除雪装置を、オーガケースから露出したオーガをトラクタの後方に向けて露出するように配置して装着しており、除雪を行うときは、運転者はトラクタを後進させて、除雪装置を駆動している(例えば、実用新案登録第3137977号公報等参照)。しかしながら、除雪装置をトラクタのリア側に接続して除雪を行う場合、運転者は後ろ向きになって後方を見ながらトラクタを後進させるので、操作性が悪く、首や肩などの負担が大きくなり、長時間の作業ができにくく作業性にも劣る。これに対して、
図8に示すリア側のリヤPTO軸Drのみならずフロント側にもフロントPTO軸Dfを備えているタイプのトラクタにおいては、除雪装置Saをフロント側に接続することにより、トラクタTを前進させ、運転者が前向きになって除雪装置Saを操作でき、操作性,作業性の向上を図ることができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4520338号公報
【特許文献2】実用新案登録第3137977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の除雪装置Saにおいては、PTO軸Dfの回転を伝動機構104を介してオーガ100及びブロア102に機械的に伝達しこのオーガ100及びブロア102を連動して回転させているので、例えば、オーガ100に作用する雪の負荷が大きくなった場合、ブロア102の回転にも影響を与えることから、ブロア102の雪の吸引力が低下してしまい、雪がブロア102のところに詰まってしまって、稼動を停止せざるを得ないことがあるという問題があった。特に、PTO軸Dfのトルクが小さい場合には、この現象が生じやすくなる。また、一般にブロアとオーガには夫々シャーボルトが付いているが、雪が詰まるとこのシャーボルトが切れてその交換作業を行う事態も生じ、作業性を著しく損ねる。
【0008】
また、積雪条件や周囲の環境などの条件によっては、除雪装置を、オーガケースから露出したオーガをトラクタの後方に向けて露出するように装着して用いたい場合もある。そのときは、除雪装置をトラクタのリア側に配置し、リヤPTO軸Drに接続し、運転者が後ろ向きになって後方を見ながらトラクタを後進させるようにはなるが、所望の除雪作業を行うことが期待できる。しかしながら、トラクタの中にはリアPTO軸の回転方向を可変にしたものもあるものの、一般的には、
図8に示すように、トラクタTを後方から見たフロントPTO軸Dfの回転方向と、トラクタTを後方から見たリヤPTO軸Drの回転方向とが、同方向であることが多く、そのため、この場合には、オーガケースの後方から見て一方回転方向に回転させられるブロアにおいては、リヤPTO軸Drにそのまま接続したのでは、オーガケースの後方から見て他方回転方向に回転させられることになり、即ち、ブロアが逆転することになり、実質的にリヤPTO軸Drに接続することができないという問題がある。これを解消するためには、別途、回転方向を変更する機構を設けなければならないので、それだけ、部品点数が多くなり、組み立ての作業工数も増すことから、装着効率が悪くなって好ましくない。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、オーガとブロアとを独立して回転駆動できるようにして、雪の負荷による影響を極力低減できるようにして機能性の向上を図るとともに、PTO軸の回転方向が如何様になっていてもブロアの回転方向がオーガケースの後方から見て一方回転方向の正転方向になるように装着できるようにして汎用性の向上を図った除雪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の除雪装置は、エンジンEの動力を伝達するPTO軸を備えたトラクタに作業機の一つとして接続される除雪装置であって、回転させられて雪を集約するオーガと、該オーガを回転可能に保持するオーガケースと、該オーガケースに設けられ該オーガケースの後方から見て一方回転方向の正転方向に回転させられて上記オーガによって集約された雪を排出するブロアとを備えた除雪装置において、
上記オーガケースに設けられ、上記エンジンEの動力により作動されるオーガ用油圧ポンプによって駆動され上記オーガを回転させるオーガ用油圧モータを備えたオーガ回転機構と、
上記オーガケースに設けられ、上記PTO軸の回転を上記ブロアに伝達して該ブロアを回転させるブロア回転機構とを備え、
該ブロア回転機構を、上記オーガケースに取付けられる減速機を備えて構成し、該減速機を、上記オーガケースに取付けられるギヤボックスと、該ギヤボックスに回転可能に設けられる第1軸と、上記ギヤボックスに回転可能に設けられ上記第1軸に平行な軸線を有した第2軸と、上記ギヤボックス内に収納され上記第1軸の回転を上記第2軸に伝達するとともに該第1軸の回転を逆転させて減速するギヤ伝動機構とを備えて構成し、
該減速機の第1軸の一端側に上記PTO軸に接続するための第1接続部を設け、上記第2軸の一端側に上記PTO軸に接続するための第2接続部を設け、該第2軸の他端側を上記ブロアのブロア回転軸に連係させた構成としている。
【0011】
これにより、例えば、ブロアを正転方向に回転させるために、第2軸の回転方向がオーガケースの後方から見て一方回転方向に回転させられ、このため、第1軸の回転方向はオーガケースの後方から見て他方回転方向に回転させられることが条件になる場合について説明すると、ブロア回転機構の減速機にPTO軸を接続するときは、減速機の第1軸の第1接続部、若しくは、第2軸の第2接続部のいずれかを選択して接続する。この選択は、トラクタの後方から見たPTO軸の回転方向をみて、ブロアが正転方向に回転できる側に接続する。この場合、PTO軸の回転方向が如何様になっていても、減速機の第1軸の第1接続部、若しくは、第2軸の第2接続部のいずれかを選択してPTO軸を接続することができるので、逐一、回転方向を変更する機構を設けなくても良く、そのため、汎用性を向上させることができる。
【0012】
そして、この除雪装置により除雪を行うときは、トラクタを進行させながら、PTO軸の回転をブロア回転機構によりブロアに伝達してブロアを回転させるとともに、オーガ用油圧ポンプを作動させ、オーガ用油圧モータによりオーガ回転機構を駆動させてオーガを回転させる。これにより、オーガによって雪が集約され、ブロアによって集約された雪が吸引されて排出されていく。この場合、例えば、オーガに作用する雪の負荷が大きくなっても、ブロアとオーガとは、夫々、PTO軸によるブロア回転機構と、オーガ用油圧モータを備えたオーガ回転機構とで、互いに、独立して回転駆動させられるので、ブロアにオーガに関連した回転の影響が反映することがなく、そのため、ブロアによる雪の吸引力が低下して雪がブロアのところに詰まる事態が無くなり、負荷による稼動停止や修理などの影響を低減して、機能性の向上を図ることができる。特に、PTO軸のトルクが小さい場合には、PTO軸の負担が少なくなることから、極めて有効になる。
【0013】
また、オーガ回転機構は、油圧モータでオーガを駆動するが、過剰負荷がかかった時には、一般に油圧回路にはリリーフバルブを設けるので、このリリーフバルブが開いてオイルを逃がすことができることから、過剰負荷に容易に対応することができる。更に、過剰負荷に対してシャーボルトを設けたメカ式で対応する際、シャーボルトが切れた場合には、シャーボルトを交換するが、除雪においては寒い環境下になることから交換作業が極めて面倒で煩雑になる。しかしながら、油圧モータの場合、シャーボルトの交換作業がなくなるので、この面倒で煩雑な交換作業から解放される。
【0014】
そして、必要に応じ、上記トラクタが、上記PTO軸としてフロント側のフロントPTO軸と、該トラクタを後方から見た該フロントPTO軸の回転方向と同方向の回転方向であるリア側のリヤPTO軸とを備えた場合、上記第1軸の第1接続部及び上記第2軸の第2接続部の何れか一方を上記フロントPTO軸に接続可能に形成し、上記第1軸の第1接続部及び上記第2軸の第2接続部の何れか他方を上記リアPTO軸に接続可能に形成した構成としている。
【0015】
これにより、除雪をするときは、本除雪装置は、トラクタのフロント側に装着する場合(以下「フロント装着」という)と、トラクタのリア側に装着する場合(以下「リア装着」という)との何れかを選択できる。以下、各場合について説明する。ここでは、例えば、ブロアを正転方向に回転させるために、第2軸の回転方向がオーガケースの後方から見て一方回転方向に回転させられ、このため、第1軸の回転方向はオーガケースの後方から見て他方回転方向に回転させられることが条件になる場合であって、フロントPTO軸及びリアPTO軸が、トラクタの後方から見て他方回転方向に回転する場合について説明する。
【0016】
<フロント装着の場合>
オーガケースから露出したオーガをトラクタの前方に向けて露出するように配置してトラクタに設けた複数のリンクをオーガケースに接続することにより装着する。そして、減速機の第1軸の第1接続部にフロントPTO軸を例えば連結シャフトを介して接続する。これにより、フロントPTO軸はトラクタの後方から見て他方向回転し、減速機の第1軸はトラクタの後方から見て他方向回転し、第2軸はオーガケースの後方から見て一方回転方向に回転することになることから、第2軸はブロアを正転せしめることになる。
【0017】
<リア装着の場合>
また、積雪条件や周囲の環境などの条件によっては、除雪装置を、リア側に装着したい場合もある。この場合には、オーガケースから露出したオーガをトラクタの後方に向けて露出するように配置してトラクタに設けた複数のリンクをオーガケースに接続することにより装着する。そして、今度は、減速機の第2軸の第2接続部にリアPTO軸を例えば連結シャフトを介して接続する。これにより、リアPTO軸はトラクタの後方から見て他方向回転するが、減速機の第2軸はオーガケースの後方から見て一方回転方向に回転することになるので、第2軸はブロアを正転せしめることになる。この場合、第1軸は空回りするだけである。そして、この除雪装置により除雪を行うときは、トラクタをバックで進行させるので、運転者が後ろ向きになって後方を見ながらトラクタを後進させるようにはなるものの、所望の除雪作業を行うことができる。
【0018】
また、必要に応じ、上記第1軸の第1接続部及び上記第2軸の第2接続部を上記ギヤボックスから突出するスプライン軸で構成し、上記減速機に着脱可能に設けられ、上記第1軸の第1接続部及び上記第2軸の第2接続部の何れか一方の使用時に、何れか他方を覆うカバーを備えた構成としている。
【0019】
これにより、第1軸の第1接続部にフロントPTO軸を接続した場合も、第2軸の第2接続部にリアPTO軸を接続した場合も、いずれの場合も、第1軸の第1接続部であるスプライン及び第2軸の第2接続部であるスプラインが同期して回転するが、PTO軸が接続されない側のスプラインがカバーで覆われているので、他にぶつかって損傷する等の事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、オーガとブロアとは、夫々、ブロア回転機構とオーガ回転機構とで、互いに、独立して回転駆動させられるので、ブロアにオーガに関連した回転の影響が反映することがなく、そのため、雪の負荷による影響を極力低減できるようにして機能性の向上を図ることができる。また、PTO軸の回転方向が如何様でもブロアの回転方向がオーガケースの後方から見て一方回転方向の正転方向になるようにPTO軸を接続できるので、汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る除雪装置をトラクタのフロント側に装着した状態(A)とトラクタのリア側に装着した状態(B)とを合わせて示す側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る除雪装置を示す背面側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る除雪装置を示す正面側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る除雪装置のブロア回転機構が取付けられたオーガケースをブロア回転機構の要部拡大図とともに示す背面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る除雪装置のブロア回転機構を示す側面断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る除雪装置の構成及びその駆動系をトラクタのフロント側に装着した状態で示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る除雪装置の構成及びその駆動系をトラクタのリア側に装着した状態で示す図である。
【
図8】従来の除雪装置の一例をその駆動系とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る除雪装置について詳細に説明する。尚、上記と同様のものには同一の符号を付して説明する。
図1乃至
図7に示すように、実施の形態に係る除雪装置Sが接続されるトラクタのタイプには種々あるが、ここで挙げるトラクタTは、シャシ1に、ショベル等の種々の作業機が接続される複数のリンク2から構成されるフロント接続部3と、レーキなどの作業機を接続するための複数のリンク4から構成されるリア接続部5とが設けられている。フロント側には、エンジンEの動力を変速機Caを介して伝達するフロントPTO軸Dfが備えられている一方、リア側には、エンジンEの動力をミッションケースM内のミッション機構及び変速機Cbを介して伝達するリアPTO軸Drが備えられている。実施の形態に係る除雪装置Sは、トラクタTに作業機の一つとしてフロント接続部3若しくはリア接続部5に接続される。
【0023】
また、トラクタの中にはリアPTO軸Drの回転方向を可変にしたものもあるものの、ここで挙げるタイプのトラクタTにおいては、一般に、トラクタTを後方から見たフロントPTO軸Dfの回転方向と、トラクタTを後方から見たリアPTO軸Drの回転方向とが、同方向(トラクタTを後方から見て他方回転方向Rb)に設定されている。そして、このトラクタTにおいて、フロントPTO軸Dfは、エンジンEの回転を変速機Caを介して伝達されるが、その回転数は固定であり、例えば1000RPMに設定されている。一方、リアPTO軸Drは、エンジンEの回転がミッションケースM内のミッション機構を介して伝達されるので、その回転数は可変であり、例えば540RPM、750RPM、1000RPM等、複数段に設定されている。
【0024】
除雪装置SのフロントPTO軸Df及びリアPTO軸Drには連結シャフト10が接続される。連結シャフト10の両端部は周知のユニバーサルジョイント構造に形成されており、一端がフロントPTO軸DfまたはリアPTO軸Drに接続され、他端が後述のブロア回転機構30に接続される。
【0025】
図1乃至
図7に示すように、除雪装置Sは、回転させられて雪を集約するオーガ11と、オーガ11を回転可能に保持するオーガケース12と、オーガケース12に設けられオーガケース12の後方から見て一方回転方向Raの正転方向に回転させられてオーガ11によって集約された雪を排出するブロア13とを備えて構成されている。オーガケース12の背面側には、フロント接続部3の複数(実施の形態では3つ)のリンク2に接続され、若しくは、リア接続部5の複数(実施の形態では3つ)のリンク4に接続される接続部14が形成されている。これにより、オーガケース12は、オーガケース12から露出したオーガ11をトラクタTの前方に向けて露出するように配置してトラクタTのフロント側に装着され(後述の
図1(A)に示す「フロント装着」)、若しくは、オーガケース12から露出したオーガ11をトラクタTの後方に向けて露出するように配置してトラクタTのリア側に接続される(後述の
図1(B)に示す「リア装着」)。
【0026】
オーガ11は、トラクタTの幅方向に沿う回転主軸15と、この回転主軸15にその中央を境として左右に夫々固定された螺旋状の一方ブレード11a及び他方ブレード11bとを備え、回転主軸15を中心に一方向に回転させられて雪を回転主軸15の中央に集約する。オーガケース12は、オーガ11の回転主軸15の両端を回転可能に軸支するとともに、オーガ11の回転主軸15の中央に対応した部位に開口し雪を吸入する吸入口16及び排出口17を有している。排出口17には、雪を排出するシュータ18が突設されている。符号19はシュータの角度を可変にする電動モータを備えた可変装置である。また、オーガケース12は、トラクタTの車軸方向を軸心にして回転可能、且つ、リンク2,4に対して上下方向に揺動可能になっており、図示外のアクチュエータにより、地面に対するその姿勢が調整可能になっている。
【0027】
ブロア13は、オーガケース12の吸入口16内に設けられ、集約された雪を吸入口16から吸入して排出口17から排出させる。ブロア13は、
図5に示すように、オーガケース12に軸支されるブロア回転軸13aを有し、先端部側に雪を取込む羽根13bが設けられている。
【0028】
除雪装置Sは、オーガケース12に設けられ、エンジンEの動力により作動されるオーガ用油圧ポンプ21によって駆動されオーガ11を回転させるオーガ用油圧モータ22を備えたオーガ回転機構20と、オーガケース12に設けられ、PTO軸の回転を連結シャフト10を介してブロア13に伝達してこのブロア13を回転させるブロア回転機構30とを備えて構成されている。
【0029】
詳しくは、オーガ回転機構20は、オーガケース12の外側の一側端側に設けられるオーガ用油圧モータ22と、オーガ用油圧モータ22の回転軸及びオーガ11の回転主軸15の一端間に設けられるチェーン伝動機構23とを備えて構成されている。チェーン伝動機構23は、オーガ用油圧モータ22の回転軸に設けられる主スプロケット23aと、オーガ11の回転主軸15の一端に設けられる従スプロケット23bと、主スプロケット23a及び従スプロケット23b間に掛渡されるエンドレスのチェーン23cとから構成されている。
【0030】
オーガ用油圧モータ22を駆動するオーガ用油圧ポンプ21は、ギヤポンプからなり、シャシ1に設けられており、
図6及び
図7に示すように、ミッションケースM内の変速機(図示せず)を介してエンジンEの動力により作動される。また、シャシ1には、オーガ用油圧ポンプ21へオイルを供給するオイルタンク24が搭載されている。25はオイルタンク24からオーガ用油圧ポンプ21に至るオーガ用オイル送給管、26はオーガ用油圧ポンプ21からオーガ用油圧モータ22にオイルを供給するオーガ用オイル供給管路、27はオーガ用油圧モータ22からの排出オイルを排出するオーガ用オイル排出管路である。28はオーガ用オイル供給管路26とオーガ用オイル排出管路27との間に架設され、オーガ用油圧ポンプ21が停止したときに一方向弁を通してオーガ用オイル排出管路27からオーガ用オイル供給管路26にオイルを流して圧力を安定させる圧力安定管路である。尚、オーガ用オイル供給管路26には、オーガ用油圧モータ22の負荷が所定以上になったときオイルをオイルタンク24に逃がすリリーフ弁が介装された図示外の逃がし管路が接続されている。
【0031】
ブロア回転機構30は、オーガケース12の背面側に取付けられる減速機31を備えて構成されている。減速機31は、オーガケース12に取付けられるギヤボックス32と、ギヤボックス32に回転可能に設けられる第1軸33と、ギヤボックス32に回転可能に設けられ第1軸33に平行な軸線を有した第2軸34と、ギヤボックス32内に収納され第1軸33の回転を第2軸34に伝達するとともに第1軸33の回転を逆転させて減速するギヤ伝動機構35とを備えて構成されている。実施の形態では、ギヤ伝動機構35は、平ギヤの組合せからなり、例えば、第1軸33の回転を2/3に減速するギヤ比に設定されている。
【0032】
また、減速機31の第1軸33の一端側には、PTO軸に接続するための第1接続部36が設けられているとともに、第2軸34の一端側にも、PTO軸に接続するための第2接続部37が設けられている。第2軸34の他端側は、ブロア13のブロア回転軸13aに連係させられている。詳しくは、連結シャフト10は、その一端がフロントPTO軸DfまたはリアPTO軸Drに連結される一方、他端は減速機31の第1軸33の第1接続部36または第2軸34の第2接続部37に接続される。連結シャフト10の他端はメス型のスプライン(図示せず)で形成されており、第1接続部36及び第2軸34の第2接続部37は、ギヤボックス32から突出し、連結シャフト10のメス型のスプラインに噛合する同形状で同じ大きさのオス型のスプライン軸で形成されている。
【0033】
このため、フロントPTO軸Dfは、連結シャフト10を介して、第1軸33の第1接続部36にも第2軸34の第2接続部37にも接続可能になっており、リアPTO軸Drは、連結シャフト10を介して、第1軸33の第1接続部36にも第2軸34の第2接続部37にも接続可能になっている。しかし、ここでは、回転方向の関係で、フロントPTO軸Dfは、連結シャフト10を介して第1軸33の第1接続部36に接続され、リアPTO軸Drは、連結シャフト10を介して第2軸34の第2接続部37に接続される。
【0034】
また、実施の形態においては、
図5乃至
図7に示すように、減速機31に着脱可能に設けられ、第1軸33の第1接続部36及び第2軸34の第2接続部37の何れか一方の使用時に、何れか他方を覆うカップ状のカバー40が備えられている。そのため、第1軸33の第1接続部36にフロントPTO軸Dfを接続した場合も、第2軸34の第2接続部37にリアPTO軸Drを接続した場合も、いずれの場合も、第1軸33の第1接続部36であるスプライン軸及び第2軸34の第2接続部37であるスプライン軸が同期して回転するが、PTO軸が接続されない側のスプラインがカバー40で覆われているので、他にぶつかって損傷する等の事態を防止することができる。
【0035】
従って、実施の形態に係る除雪装置SをトラクタTに取り付けて除雪を行うときは、本除雪装置Sは、トラクタTのフロント側に装着する場合(以下「フロント装着」という)と、トラクタTのリア側に装着する場合(以下「リア装着」という)との何れかを選択できる。以下、各場合毎に説明する。
【0036】
<フロント装着の場合>
図1(A)及び
図6に示すように、オーガケース12から露出したオーガ11をトラクタTの前方に向けて露出するように配置してトラクタTに設けた複数のリンク2をオーガケース12に接続することにより装着する。そして、減速機31の第1軸33の第1接続部36にフロントPTO軸Dfを連結シャフト10を介して接続する。これにより、フロントPTO軸DfはトラクタTの後方から見て他方回転方向Rbに回転(
図6中A視)し、減速機31の第1軸33はトラクタTの後方から見て他方回転方向Rbに回転し(
図6中A視)、第2軸34はオーガケース12の後方から見て一方回転方向Raに回転する(
図6中A視)ことになることから、第2軸34はブロア13を正転せしめる。
【0037】
詳しくは、この除雪装置Sにより除雪を行うときは、トラクタTを進行させながら、オーガ用油圧ポンプ21を作動させ、オーガ用油圧モータ22によりオーガ回転機構20を駆動させてオーガ11を回転させるとともに、PTO軸の回転をブロア回転機構30によりブロア13に伝達してブロア13を回転させる。これにより、オーガ11によって雪が集約され、ブロア13によって集約された雪が吸引されて排出されていく。この場合、例えば、オーガ11に作用する雪の負荷が大きくなっても、オーガ11とブロア13とは、夫々、オーガ用油圧モータ22を備えたオーガ回転機構20と、PTO軸によるブロア回転機構30とで、互いに、独立して回転駆動させられるので、ブロア13にオーガ11に関連した回転の影響が反映することがなく、そのため、ブロア13による雪の吸引力が低下して雪がブロア13のところに詰まる事態が無くなり、負荷による稼動停止や修理などの影響を低減して、機能性の向上を図ることができる。特に、PTO軸のトルクが小さい場合には、PTO軸の負担が少なくなることから、極めて有効になる。
【0038】
また、オーガ回転機構20は、オーガ用油圧モータ22でオーガ11を駆動するが、過剰負荷がかかった時には、一般に油圧回路にはリリーフバルブを設けるので、このリリーフバルブが開いてオイルを逃がすことができることから、過剰負荷に容易に対応することができる。更に、過剰負荷に対してシャーボルトを設けたメカ式で対応する際、シャーボルトが切れた場合には、シャーボルトを交換するが、除雪においては寒い環境下になることから交換作業が極めて面倒で煩雑になる。しかしながら、油圧モータの場合、シャーボルトの交換作業がなくなるので、この面倒で煩雑な交換作業から解放される。
【0039】
<リア装着の場合>
また、積雪条件や周囲の環境などの条件によっては、除雪装置Sを、リア側に装着したい場合もある。この場合には、
図1(B)及び
図7に示すように、オーガケース12から露出したオーガ11をトラクタTの後方に向けて露出するように配置してトラクタTに設けた複数のリンク4をオーガケース12に接続することにより装着する。そして、今度は、減速機31の第2軸34の第2接続部37にリアPTO軸Drを例えば連結シャフト10を介して接続する。これにより、リアPTO軸DrはトラクタTの後方から見て他方回転方向Rbに回転する(
図7中A視)が、減速機31の第2軸34はオーガケース12の後方から見て一方回転方向Raに回転する(トラクタTの後方であってオーガケース12の前方から見れば他回転方向Rbに回転(
図7中A視)する)ことになるので、第2軸34はブロア13を正転せしめる。この場合、第1軸33は空回りするだけである。そして、この除雪装置Sにより除雪を行うときは、トラクタTをバックで進行させるので、運転者が後ろ向きになって後方を見ながらトラクタTを後進させるようにはなるものの、所望の除雪作業を行うことができる。他の作用,効果は上記と同様である。
【0040】
このように、本発明の実施の形態に係る除雪装置Sによれば、トラクタTのフロント側にもリア側にも特別な装置を別途設けなくても装着することができ、所謂リバーシブルに装着することができるので、汎用性を向上させることができる。また、オーガ11とブロア13とは、夫々、オーガ回転機構20とブロア回転機構30とで、互いに、独立して回転駆動させられるので、ブロア13にオーガ11に関連した回転の影響が反映することがなく、そのため、雪の負荷による影響を極力低減できるようにして機能性の向上を図ることができる。
【0041】
尚、本発明の実施の形態においては、回転方向の関係で、フロントPTO軸Dfは、連結シャフト10を介して第1軸33の第1接続部36に接続し、リアPTO軸Drは、連結シャフト10を介して第2軸34の第2接続部37に接続したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、トラクタT側の回転方向の条件が異なれば、これに合わせて、接続を変えて良く、適宜変更して差支えない。また、本発明の実施の形態の説明においては、フロントPTO軸Df及びリアPTO軸Drの両方を備えたトラクタTに装着する場合を示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、フロントPTO軸Dfのみ備えたトラクタT、あるいは、リアPTO軸Drのみ備えたトラクタTにも、装着して用いてよいことは勿論である。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
S 除雪装置
T トラクタ
1 シャシ
2 リンク
3 フロント接続部
4 リンク
5 リア接続部
Df フロントPTO軸
Dr リアPTO軸
E エンジン
Ca 変速機
M ミッションケース
Cb 変速機
10 連結シャフト
11 オーガ
11a 一方ブレード
11b 他方ブレード
12 オーガケース
13 ブロア
13a ブロア回転軸
13b 羽根
14 接続部
15 回転主軸
16 吸入口
17 排出口
18 シュータ
19 可変装置
20 オーガ回転機構
21 オーガ用油圧ポンプ
22 オーガ用油圧モータ
23 チェーン伝動機構
24 オイルタンク
25 オーガ用オイル送給管
26 オーガ用オイル供給管路
27 オーガ用オイル排出管路
28 圧力安定管路
30 ブロア回転機構
31 減速機
32 ギヤボックス
33 第1軸
34 第2軸
35 ギヤ伝動機構
36 第1接続部
37 第2接続部
40 カバー