(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029374
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250227BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20250227BHJP
B61B 3/02 20060101ALI20250227BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G1/00 501C
B61B3/02 C
B61B13/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133963
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西川 直
【テーマコード(参考)】
3D101
3F022
5F131
【Fターム(参考)】
3D101BA05
3D101BB16
3D101BB34
3D101BE05
3F022AA08
3F022EE05
3F022JJ08
3F022MM61
3F022NN05
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA10
5F131BA01
5F131BA11
5F131BA17
5F131CA32
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5F131DA05
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5F131DA42
5F131DC05
5F131DC26
5F131DD02
5F131DD22
5F131DD94
(57)【要約】
【課題】停電等による電力供給異常が発生場合であっても、当該電流供給異常が解消した後の復旧作業の手間を少なく抑えることが可能な搬送車を提供すること。
【解決手段】物品を搬送する搬送車であって、物品を保持する保持装置と、保持装置を昇降させる昇降装置と、制御装置5と、外部からの電力供給を受けて、少なくとも昇降装置に電力を供給する電源ユニット6と、を備え、昇降装置は、保持装置を昇降駆動する昇降駆動機構40と、昇降駆動機構40による保持装置の昇降動作を機械的に拘束する拘束機構41と、を備え、電源ユニット6から昇降駆動機構40に供給される電圧を対象電圧とし、昇降駆動機構40が保持装置の昇降方向の位置を維持するために必要な下限の電圧を必要下限電圧として、制御装置5は、対象電圧を監視する電圧監視部51を備え、対象電圧が、電源ユニット6の正常動作中の電圧よりも低く必要下限電圧より高い値に設定された判定しきい値以下となった場合に、拘束機構41を作動させる予備拘束動作を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送車であって、
前記物品を保持する保持装置と、
前記保持装置を昇降させる昇降装置と、
制御装置と、
外部からの電力供給を受けて、少なくとも前記昇降装置に電力を供給する電源ユニットと、を備え、
前記昇降装置は、前記保持装置を昇降駆動する昇降駆動機構と、前記昇降駆動機構による前記保持装置の昇降動作を機械的に拘束する拘束機構と、を備え、
前記電源ユニットから前記昇降駆動機構に供給される電圧を対象電圧とし、前記昇降駆動機構が前記保持装置の昇降方向の位置を維持するために必要な下限の電圧を必要下限電圧として、
前記制御装置は、前記対象電圧を監視する電圧監視部を備え、前記対象電圧が、前記電源ユニットの正常動作中の電圧よりも低く前記必要下限電圧より高い値に設定された判定しきい値以下となった場合に、前記拘束機構を作動させる予備拘束動作を実行する、搬送車。
【請求項2】
前記電源ユニットは、電力を一時的に蓄える蓄電装置を備え、
前記蓄電装置の電圧が前記昇降駆動機構に供給されるように構成されている、請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記昇降駆動機構は、回転体と、前記回転体に巻き取り及び繰り出し自在に巻回された被巻取部材と、前記回転体を回転駆動する昇降駆動モータと、を備え、前記被巻取部材により前記保持装置を吊り下げた状態で、前記回転体からの前記被巻取部材の繰り出しによって前記保持装置を下降させ、前記回転体への前記被巻取部材の巻き取りによって前記保持装置を上昇させるように構成され、
前記昇降駆動モータは、サーボモータであり、
前記制御装置は、前記保持装置の昇降方向の位置を保持する場合であって、前記対象電圧が前記判定しきい値より大きい場合には、前記昇降駆動モータの駆動力制御により前記保持装置の昇降方向の位置を保持する位置保持動作を実行し、
前記必要下限電圧は、前記昇降駆動モータによる前記位置保持動作が可能な下限の電圧、又は、前記昇降駆動モータの駆動用ドライバの正常動作に必要な電圧である、請求項1又は2に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
このような搬送車の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号及び名称を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の天井搬送車(1)は、搬送物(6)を吊り下げ支持する支持機構(23)と、支持機構(23)を昇降させる昇降操作機構(24)とを備える。昇降操作機構(24)は、先端部に支持機構(23)を連結支持した巻き取りベルト(24a)を巻回する巻回体(28)と、巻回体(28)を回転駆動する昇降用モータ(29)と、を備え、モータドライバの制御により昇降用モータ(29)にて巻回体(28)を正逆に回転駆動させて、巻き取りベルト(24a)を巻き取り及び繰り出し操作することで、支持機構(23)を走行移動部(16)に対して昇降移動させるように構成されている。
【0004】
即ち昇降操作機構(24)は、巻き取りベルト(24a)を巻き取って一対の搬送物支持部32を上昇高さまで上昇させることで、支持機構(23)に支持されている搬送物6が支持用高さまで上昇し、巻き取りベルト(24a)を繰り出して一対の搬送物支持部32を下降高さまで下降させることで、支持機構(23)に支持された搬送物(6)が移載用高さまで下降するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、天井搬送車(1)の走行中等に、昇降用モータ(29)のトルクによって支持機構(23)及び搬送物(6)を支持用高さに維持する制御を行う場合がある。このような場合に、停電等による電力供給異常が発生すると、昇降用モータ(29)のトルクを維持することができなくなり、巻き取りベルトが繰り出されて支持機構(23)が下降して搬送物(6)が落下してしまう事態が生じ得る。これを防ぐために、昇降用モータや昇降操作機構(24)にブレーキを設けることも考えられる。
【0007】
しかし、停電等による電力供給異常が発生してからブレーキを作動させるため、支持機構(23)及び搬送物(6)がある程度下降することになる。そのため、停電等による電力供給異常が解消した後の復旧作業において、支持機構(23)を元の高さに戻す作業が必要になるなど、復旧作業の手間が多くなり易いという課題がある。
【0008】
そこで、停電等による電力供給異常が発生場合であっても、当該電流供給異常が解消した後の復旧作業の手間を少なく抑えることが可能な搬送車の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に鑑みた、搬送車の特徴構成は、
物品を搬送する搬送車であって、
前記物品を保持する保持装置と、
前記保持装置を昇降させる昇降装置と、
制御装置と、
外部からの電力供給を受けて、少なくとも前記昇降装置に電力を供給する電源ユニットと、を備え、
前記昇降装置は、前記保持装置を昇降駆動する昇降駆動機構と、前記昇降駆動機構による前記保持装置の昇降動作を機械的に拘束する拘束機構と、を備え、
前記電源ユニットから前記昇降駆動機構に供給される電圧を対象電圧とし、前記昇降駆動機構が前記保持装置の昇降方向の位置を維持するために必要な下限の電圧を必要下限電圧として、
前記制御装置は、前記対象電圧を監視する電圧監視部を備え、前記対象電圧が、前記電源ユニットの正常動作中の電圧よりも低く前記必要下限電圧より高い値に設定された判定しきい値以下となった場合に、前記拘束機構を作動させる予備拘束動作を実行する点にある。
【0010】
本構成によれば、停電や電源ユニットの不具合等によって昇降駆動機構に供給される電圧が低下した場合であっても、当該電圧の低下により昇降駆動機構が保持装置の昇降方向の位置を維持することができなくなる前に、拘束機構により保持装置の昇降動作を機械的に拘束することができる。
従って、停電や電源ユニットの不具合等が生じた場合であっても、保持装置が意図せず下降することが回避される。
また、搬送車の復旧処理として保持装置の昇降方向の位置の復元が必要な場合には、当該復旧処理の手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】第2の実施形態に係る搬送車の制御構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施形態
搬送車1の第1の実施形態について図面に基づいて説明する。
搬送車1は、走行経路10に沿って走行して、所定の形状を有する容器8を搬送するように構成されている。以下、その走行経路10に沿って配置された給電線12から非接触で電力の供給を受ける搬送車1が、物品搬送設備100に適用される場合を例示して、搬送車1の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、物品搬送設備100は、規定の走行経路10と、走行経路10を走行して容器8を搬送する搬送車1と、走行経路10に沿って設けられた複数の移載対象箇所13と、を備えている。
【0014】
また、物品搬送設備100は、給電線12と、給電線12に接続されて給電線12に交流電流を供給する電源装置(図示せず)とを有する給電システムを備えるものであり、ワイヤレス給電技術を用いて、搬送車1に駆動用電力を供給する。給電線12は、走行経路10に沿って配設されており、受電装置60に対して、走行経路10に沿った方向である経路方向に直交する経路幅方向の両側に配置されている。尚、給電システムは、送電の効率が低下することや、故障時に設備の全体が停止することなどを抑制するために、一系統だけではなく、複数系統設けられていることが望ましい。
【0015】
走行経路10は、床面から上方に離間した位置に設定されている。本例では、走行経路10は、天井付近に設けられたレール11を用いて構成されている。搬送車1は、いわゆる天井搬送車1として構成されており、レール11に沿って走行する。移載対象箇所13は、走行経路10よりも下方に配置されている。搬送車1は、容器8を昇降させることにより、移載対象箇所13との間で容器8を移載するように構成されている。
【0016】
本実施形態では、物品搬送設備100は、搬送車1を複数備えている。複数の搬送車1のそれぞれは、設備を統括管理する上位制御装置(図示せず)から搬送指令を受けて、当該搬送指令に応じたタスクを実行するように構成されている。例えば搬送指令には、容器8の搬送元と搬送先との情報が含まれる。搬送指令を受けた搬送車1は、搬送元から搬送先まで容器8を搬送する。搬送元や搬送先には、移載対象箇所13が含まれる。
【0017】
物品搬送設備100で取り扱われる容器8としては、様々なものがある。本例では、物品搬送設備100は、半導体製造工場に用いられる。そのため、基板(ウェハやパネル等)を収容する基板収容容器8(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクル収容容器8(いわゆるレチクルポッド)などが、容器8とされる。この場合、搬送車1は、基板収容容器8やレチクル収容容器8などの容器8を、走行経路10に沿って各工程間に亘って搬送する。
【0018】
本実施形態では、移載対象箇所13は、容器8に対する処理を行う処理装置14と、処理装置14に隣接して配置された載置台15と、を備えている。本明細書において「容器8に対する処理」とは、容器8に収容された被収容物(基板やレチクル)に対する処理を意味する。搬送車1は、処理装置14による処理を終えた容器8を載置台15から受け取り、又は、処理装置14による処理が済んでいない容器8を載置台15に引き渡す。なお、処理装置14は、例えば、薄膜形成、フォトリソグラフィー、エッチングなどの種々の処理を行う。
【0019】
図2及び
図3に示すように、搬送車1は、レール11を走行する走行装置2と、容器8(物品)を収容する収容部7と、を備えている。また、搬送車1は、容器8を保持する保持装置3と、保持装置3を昇降させる昇降装置4と、制御装置5(
図4参照)と、外部からの電力供給を受けて、少なくとも昇降装置4に電力を供給する電源ユニット6と、を備える。収容部7には、物品を保持する保持装置3と、保持装置3を昇降させる昇降装置4などが備えられている。
【0020】
走行装置2は、レール11を走行することで、搬送車1の全体を走行経路10に沿って移動させるように構成されている。本実施形態では、走行装置2は、レール11を転動する複数の走行輪20と、複数の走行輪20のうち少なくとも一部を駆動する走行駆動機構21と、を備えている。走行駆動機構21は、走行駆動モータ210(例えば、サーボモータ)と、これを制御する駆動用ドライバ211(駆動回路)とを備えている。
【0021】
図4に示すように、本実施形態における電源ユニット6は、給電システムより電力を受け取る受電装置60、直流変換用整流回路61(例えば、PSB基板等)、電圧調整用DC-DCコンバータ62を備えるものであり、これにより搬送車1の各部へ電力が供給される。
【0022】
受電装置60は、給電線12に対向するように搬送車1に配置されたピックアップコイル601(
図3参照)と、搬送車1の内部において配線基板上に形成された図示しない受電ユニット等を備える。
【0023】
給電システムが、誘導線である給電線12に高周波電流を流し、給電線12の周囲に磁界を発生させると、受電装置60のピックアップコイル601が、給電線12に流れる交流電流により誘導起電力を生じさせる。即ち、走行装置2、昇降装置4、保持装置3、制御装置5を駆動するための電力が、給電線12から非接触で電源ユニット6の受電装置60に供給される。尚、本実施形態においては、電源ユニット6から、走行装置2、昇降装置4、保持装置3、制御装置5に電力が供給される構成が示されているが、これに限られるものではなく、電源ユニット6からの電力供給は、少なくとも昇降装置4に対して行われるようにすればよく、走行装置2、保持装置3、及び制御装置5には別の電源から電力が供給されるように構成しても良い。
【0024】
図2に示すように、保持装置3は、昇降自在に備えられて物品を吊り下げ状態で支持する装置であり、収容部7の内側に備えられている。
【0025】
保持装置3は、容器8を保持可能に構成されている。保持装置3は、昇降装置4に吊り下げられた保持本体部30と、保持本体部30に支持された一対の保持体31と、一対の保持体31を駆動する保持駆動機構32と、を備えている。保持駆動機構32は、保持駆動モータ320(例えば、サーボモータ)と、これを制御する駆動用ドライバ321(駆動回路)とを備えている。
【0026】
本実施形態における保持装置3は、一対の保持体31を、容器8の被把持部(図示せず)に係止させることによって容器8を保持する、チャックユニットを採用しているが、この構成に限定されるものではない。その他の構成として、例えば、保持装置3として、容器8を支持して出退するフォークを備えたフォーク式の移載ユニットを備える構成としても良い。なお、ここでは、支持対象物を支持する部材であって出退装置によって出退される出退部材を「フォーク」と称しており、「フォーク」は特定の形状に限定されるものではない。
【0027】
図4に示すように、昇降装置4は、保持装置3を昇降駆動する昇降駆動機構40と、昇降駆動機構40による保持装置3の昇降動作を機械的に拘束する拘束機構41と、を備える。昇降駆動機構40は、回転体と、回転体に巻き取り及び繰り出し自在に巻回された昇降ベルト400(被巻取部材の一例)と、回転体を回転駆動する昇降駆動モータ401(例えば、サーボモータ)と、昇降駆動モータ401を制御する駆動用ドライバ402(駆動回路)とを備えている。
【0028】
本実施形態における回転体とは、被巻取部材を巻き取る部材を意味するものであり、例えば、公知の回転ドラムなどが挙げられる。被巻取部材の一例として昇降ベルトを挙げたたが、昇降装置4の回転体に巻き取られる部材であれば特に限定されるものではなく、他にも例えば、ワイヤ等を使用しても良い。
【0029】
また、昇降駆動モータ401には、保持装置3の昇降動作を機械的に拘束する拘束機構41が設けられている。拘束機構41は、拘束動作と拘束解除動作の両方を実行可能に構成されており、そのような拘束機構41としては、例えば昇降モータ保持ブレーキなどが挙げられる。
【0030】
図2に示すように、昇降装置4は、保持装置3を収容部7と走行経路10よりも下方に配置された移載対象箇所13との間で昇降させるように構成されている。昇降ベルト400は保持装置3に連結されている。昇降ベルト400により保持装置3を吊り下げた状態で、回転体からの昇降ベルト400の繰り出しによって保持装置3を下降させ、回転体への昇降ベルト400の巻き取りによって保持装置3を上昇させるように構成されている。
【0031】
収容部7は、搬送対象の容器8を収容可能に構成されている。本実施形態では、収容部7は、走行装置2に吊下げ支持されており、レール11よりも下方に配置されている。収容部7は、保持装置3に保持された容器8を収容可能に構成されている。搬送車1が走行経路10に沿って容器8を搬送する場合には、容器8は収容部7に収容される。
【0032】
図4に示すように、制御装置5は、搬送車1の動作全体を制御するコントローラ50と、対象電圧を監視する電圧監視部51とを備える。コントローラ50としては、例えば、OPC基板を使用することができる。また、コントローラ50は、搬送車1の動作全体を制御する場合に限らず、昇降装置4のみを制御するような構成としても良い。尚、本実施形態における対象電圧とは、電源ユニット6から昇降駆動機構40に供給される電圧のことを意味する。
【0033】
搬送車1は、複数の給電システムを乗り換えながら、連続して電力の供給を受けて、物品搬送設備100内を自在に走行する。物品搬送設備100には、不図示の上位制御装置が備えられており、それぞれの搬送車1の制御装置5に対して搬送指令を出して物品を搬送させている。
【0034】
搬送車1は、搬送指令に基づいて自律走行し、例えば、半導体基板等を収容する所定の移載対象箇所13(収容庫など)において、昇降装置4によって保持装置3を下降させて搬送対象の容器8を保持した後、保持装置3を上昇させて容器8を収容部7に収容する。次いで、当該搬送車1は、走行経路10に沿って別の所定の移載対象箇所13に移動し、そこで、昇降装置4によって保持装置3を下降させて、先に収容した容器8を降ろす。このようにして、搬送車1は、所定の移載対象箇所13の間で物品を搬送する。尚、この上位制御装置は、それぞれの給電システムから電力を供給される搬送車1が予め規定された受電台数以内となるように、搬送元及び搬送先に応じて搬送車1を選択し、選択された搬送車1に搬送指令を出している。
【0035】
本発明に係る搬送車1では、電源ユニット6から昇降駆動機構40に供給される電圧を対象電圧として、昇降駆動機構40が保持装置3の昇降方向の位置を維持するために必要な下限の電圧を「必要下限電圧」として設定されている。より詳細には、「必要下限電圧」とは、昇降駆動モータ401を制御する駆動用ドライバ402のエラーによって昇降駆動機構40が保持装置3の昇降方向の位置を維持することができなくなる場合の電圧値だけでなく、昇降駆動モータ401が電力不足によってトルク不足になる場合の電圧値の双方を含む概念である。
【0036】
図4に示すように、制御装置5は上述のとおり対象電圧を監視する電圧監視部51を備える。そして、対象電圧が電源ユニット6の正常動作中の電圧(この電圧のことを正常電圧と称する)よりも低く必要下限電圧より高い値に設定された「判定しきい値」以下となったことが電圧監視部51によって検知された場合に、コントローラ50が昇降駆動モータ401の拘束機構41を作動させる予備拘束動作(昇降動作を機械的拘束する動作)を実行するように構成されている。例えば、正常電圧が320Vであり、必要下限電圧が200Vであり、判定しきい値を250Vに設定した場合、対象電圧が250V以下となったときに、コントローラ50が拘束機構41を作動させて昇降駆動モータ401を停止し、保持装置3が意図せず下降することを防ぐ。尚、正常電圧に幅がある場合は、その下限の電圧値を正常電圧として解釈する。
【0037】
また、電源ユニット6は、電力を一時的に蓄える蓄電装置を備えており、蓄電装置の電圧が昇降駆動機構40に供給されるように構成されていても良い。本実施形態においては、搬送車1の走行動作や昇降動作中に直流変換用整流回路61(PSB基板など)で電力が瞬間的に不足する場合に不足の電力を補うために蓄電装置が設置される。そのような蓄電装置としては、例えば、キャパシタ(例えば、回生充電用キャパシタなど)や小型の蓄電池などが挙げられる。
【0038】
また、コントローラ50が、保持装置3の昇降方向の位置を保持する場合であって、対象電圧が判定しきい値より大きい場合には、昇降駆動モータ401の駆動力制御により保持装置3の昇降方向の位置を保持する位置保持動作を実行する場合、必要下限電圧は、昇降駆動モータ401による位置保持動作が可能な下限の電圧、又は、昇降駆動モータ401の駆動用ドライバ402の正常動作に必要な電圧となる。
【0039】
尚、搬送車1には、保持装置3又は保持装置3に保持された容器8の昇降方向の位置が、予め定められた基準高さよりも低いことを検知する「物品高さ検知センサ」を、例えば収容部7などに備えていても良い。この場合、物品高さ検知センサが検知している間は、容器8を正常な位置に戻さない限り、搬送車1を正常な運転モードに復旧させることができない。そのため、従来の搬送車であれば、容器8の高さを戻す作業が必要となる。
【0040】
一方、本構成によれば、昇降駆動機構40に供給される電圧の低下により昇降駆動機構40が保持装置3の昇降方向の位置を維持することができなくなる前、即ち、保持装置3が下降して容器8の昇降方向の位置が予め定められた基準高さよりも低い位置になる前に、拘束機構41により保持装置3の昇降動作を機械的に拘束することができる。従って、停電や電源ユニット6の不具合等が生じた場合であっても、保持装置3が意図せず下降することが回避されて、容器8の昇降方向の位置は予め定められた基準高さに保持されるため、物品高さ検知センサが検知することはなく、従って、容器8の高さを戻す作業も不要となる。
【0041】
2.第2の実施形態
次に、搬送車1の第2の実施形態について、
図5を用いて説明する。本実施形態では、搬送車1の動作全体を制御するコントローラ50と、対象電圧を監視する電圧監視部51とが、一体に構成されている点で、上記第1の実施形態とは異なる。以下では、本実施形態に係る搬送車1について、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0042】
第1の実施形態においては、搬送車1の動作全体を制御するコントローラ50と、対象電圧を監視する電圧監視部51とがそれぞれ別個に設けられていたが、本実施形態においては、コントローラ50が、搬送車1の動作全体を制御すると共に、対象電圧を監視するように構成されている。
【0043】
本実施形態においては、コントローラ50が、走行駆動モータ210の駆動用ドライバ211、昇降駆動モータ401の駆動用ドライバ402、及び保持駆動モータ320の駆動用ドライバ321とLAN9によって接続されており、LAN9の経由で各ドライバ211,321,402の電圧を監視するように構成されている。対象電圧が判定しきい値以下となったことがコントローラ50によって検知された場合に、コントローラ50が昇降駆動モータ401の拘束機構41を作動させる予備拘束動作を実行する。
【0044】
なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0045】
3.本実施形態のまとめ
以下、上記において説明した搬送車に係る実施形態のまとめを以下に記載する。
【0046】
搬送車は、物品を搬送する搬送車であって、
前記物品を保持する保持装置と、
前記保持装置を昇降させる昇降装置と、
制御装置と、
外部からの電力供給を受けて、少なくとも前記昇降装置に電力を供給する電源ユニットと、を備え、
前記昇降装置は、前記保持装置を昇降駆動する昇降駆動機構と、前記昇降駆動機構による前記保持装置の昇降動作を機械的に拘束する拘束機構と、を備え、
前記電源ユニットから前記昇降駆動機構に供給される電圧を対象電圧とし、前記昇降駆動機構が前記保持装置の昇降方向の位置を維持するために必要な下限の電圧を必要下限電圧として、
前記制御装置は、前記対象電圧を監視する電圧監視部を備え、前記対象電圧が、前記電源ユニットの正常動作中の電圧よりも低く前記必要下限電圧より高い値に設定された判定しきい値以下となった場合に、前記拘束機構を作動させる予備拘束動作を実行する。
【0047】
本構成によれば、停電や電源ユニットの不具合等によって昇降駆動機構に供給される電圧が低下した場合であっても、当該電圧の低下により昇降駆動機構が保持装置の昇降方向の位置を維持することができなくなる前に、拘束機構により保持装置の昇降動作を機械的に拘束することができる。
従って、停電や電源ユニットの不具合等が生じた場合であっても、保持装置が意図せず下降することが回避される。
また、搬送車の復旧処理として保持装置の昇降方向の位置の復元が必要な場合には、当該復旧処理の手間を低減することができる。
【0048】
ここで、前記電源ユニットは、電力を一時的に蓄える蓄電装置を備え、
前記蓄電装置の電圧が前記昇降駆動機構に供給されるように構成されている、と好適である。
【0049】
本構成によれば、停電や電源ユニットの不具合等が生じた場合であっても、瞬間的な電力の不足を蓄電装置により補い、昇降駆動機構に供給される電圧の急激な低下を回避することができる。従って、制御装置による予備拘束動作の実行の確実性を高めることができる。
【0050】
また、前記昇降駆動機構は、回転体と、前記回転体に巻き取り及び繰り出し自在に巻回された被巻取部材と、前記回転体を回転駆動する昇降駆動モータと、を備え、前記被巻取部材により前記保持装置を吊り下げた状態で、前記回転体からの前記被巻取部材の繰り出しによって前記保持装置を下降させ、前記回転体への前記被巻取部材の巻き取りによって前記保持装置を上昇させるように構成され、
前記昇降駆動モータは、サーボモータであり、
前記制御装置は、前記保持装置の昇降方向の位置を保持する場合であって、前記対象電圧が前記判定しきい値より大きい場合には、前記昇降駆動モータの駆動力制御により前記保持装置の昇降方向の位置を保持する位置保持動作を実行し、
前記必要下限電圧は、前記昇降駆動モータによる前記位置保持動作が可能な下限の電圧、又は、前記昇降駆動モータの駆動用ドライバの正常動作に必要な電圧である、と好適である。
【0051】
本構成によれば、電源ユニットから昇降駆動機構に供給される電圧が正常である場合には、昇降駆動モータの駆動力制御により保持装置の昇降方向の位置保持動作を実行するため、拘束機構による拘束と拘束解除とを切り替える動作を頻繁に行う必要性をなくし、保持装置の昇降動作を迅速に行うことが容易となる。
一方、停電や電源ユニットの不具合等によって昇降駆動機構に供給される電圧が低下した場合には、昇降駆動モータの駆動力制御による位置保持動作を適切に行うことが困難になるが、本構成によれば、上記のとおり、昇降駆動機構に供給される電圧の低下により昇降駆動機構が保持装置の昇降方向の位置を維持することができなくなる前に、拘束機構により保持装置の昇降動作を機械的に拘束することができる。従って、停電や電源ユニットの不具合等が生じた場合であっても、保持装置が意図せず下降することが回避される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示に係る技術は、走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:搬送車
2:走行装置
20:走行輪
21:走行駆動機構
210:走行駆動モータ
211:駆動用ドライバ
3:保持装置
30:保持本体部
31:保持体
32:保持駆動機構
320:保持駆動モータ
321:駆動用ドライバ
4:昇降装置
40:昇降駆動機構
400:昇降ベルト(被巻取部材)
401:昇降駆動モータ
402:駆動用ドライバ
41:拘束機構
5:制御装置
50:コントローラ
51:電圧監視部
6:電源ユニット
60:受電装置
601:ピックアップコイル
61:直流変換用整流回路
62:電圧調整用DC-DCコンバータ
7:収容部
8:容器(物品)
9:LAN
10:走行経路
11:レール
12:給電線
13:移載対象箇所
14:処理装置
15:載置台
100:物品搬送設備